2017-04-23 (Sun)
恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を読んで、久々に音楽、特にピアノ曲が聴きたくなって
部屋中のCDとか動画サイトで音源を漁りまくっていたゆさです、こんばんは。
(この記事も聴きながら書いています)
同書は浜松市のピアノコンクールを舞台に、4人の主人公と彼らをとりまく人々の心の動きが
ピアニストたちの演奏とともに描かれていく小説です。
あちこちで話題になってますしわたしの周辺でも好意的な感想が多かったので楽しみで、
パッと開いたら2段組みで500ページ超えててうおお?ってなったけど
読み始めたらあっという間でした。おもしろかった。
タイトルはたぶん、主役の1人である塵くんの父親が養蜂家であることと
三次予選前に塵くんが散歩中に見かけた冬の雷からきているのかな。
その後、塵くんが調律師さんに言った「天まで届く音にして」のセリフには心の奥底までしびれた。

ピアニストたちの来歴や思考やパフォーマンスが細かく描写されているので
彼らの弾き方もピアノの鍵盤からあふれでる音色も全部違って聴こえてくる感じがするし、
主催者や審査員、調律師、記者や家族など様々な視点の言い分やコンクールの在り方もさりげなく語られて
群像劇になっていますね。
わたし自身も学生時代にピアノを習ってましたし、合唱ですがコンクールに参加した経験もあるので
予選前のピアニストたちの気持ちとかめちゃめちゃわかってしまってムズムズしたし
付き添ってくれたレッスンの先生や部活顧問の先生はこんなこと考えてたかもしれないなと思ったし
審査員の先生方がルールを取るか音楽を取るかの試されてる感とかものすごく想像ついちゃって
そこも読んでて面白かったです。
楽譜通りに弾くのは正しいけど自分が弾く意味とか考えちゃうし
年齢とかメンタルとか審査員の好みとか意識しちゃうのわかるし
そういう緊張感と無縁のコンテニストを見ると、焦ったり打ちのめされたりするけど
本番の時間はあっという間にやってきて過ぎ去っていく。
一次、二次、三次と予選がすすむ中で
登場人物たちがコンクールの雰囲気に慣れたり新たな課題を発見してもがく姿は抱きしめたくなります。
がんばってるよお~君たち。

ホフマンが塵くんをギフトと表現していたとき、なんとなく意味の想像はついて
読み進めていくうちに「やっぱりな」みたいな確信に変わったのは
学生時代にコンクールで彼みたいな人たちを何度か見た経験があるからかもしれない。
ギフトの概念を知ったのはル=グウィンの『ギフト』からですけども
『少年ノート』のユタカくんや『陰陽師 瘤取り晴明』のときの源博雅くんみたいな、
ストレートに音楽を信じていて人々に演奏したいと思わせてしまう演奏ができる塵くんは
とても危ういし魅せられてしまいます。
コンクールに1人か2人はああいう人がヒョッと出てきますよな…コンクールであることを忘れて
「あの人の音好き」とか「すごい」としか言えない演奏をする人たち。
そういう瞬間があるからコンクールって楽しいんですよな^^
高島さんは『葬送』のショパンみたいな緊張感があったし
栄伝さんとアナトールさんは君嘘の公生くんやかをりさんを思い出した。
特に栄伝さんは内省的すぎるほど内省的で
そんなに考え込まなくて大丈夫だよとか、余計なお世話ですが声をかけたくなったというか
だから彼女が肩の力を抜いて弾けるレベルまで自力でたどり着けたときは「よかったー!」ってなって
本を持ったまま部屋の中をぐるぐる回ってしまった。。
そして彼らのいいところは本番前に思いつめるほど思い詰めてても
本番ではきっちりパフォーマンスできるところなんですよ…そういう人たちだから上位に残っていくんですけど。

ピアノの調律や音響についても書かれていて、
以前に宮下奈都『羊と鋼の森』を読んだこともあるので
クールなプロフェッショナルがピアニストたちの要望を聞いて会場の音響と合わせて調整していくのが
ワクワクしましたね~。
浅野さんの「お望みどおり、何でもするよ」の一言が頼もしい。
ピアノをなるべくステージの前の方に置きたいとか、いや奥に並べたいとか
観客がぎっしりの会場は思った以上に音を吸収するとか
床が少しくぼんだところでは音の響きが違うみたいなところは「そう、そうなの!」って思わず声に出ちゃったよ。
ちょっとしたことで音響ってずいぶん変わりますのでね…
そしてそれは容赦なく審査員の耳に影響する。音響とても大事。うん。
(そういえば去年の本屋大賞が『羊と鋼の森』で、今年が表題作ですから
2年続けて音楽関係の本が受賞したんですね。
この2冊が、クラシック音楽業界が少しでも盛り上がる一助になってくれるといいな)

コンクールの結果も頼むから全員受からせてやってくれよってなりましたね…仕方ないんだけど。
(とか思ってたら恩田さんもインタビューで似たようなこと答えてらしてホッとした→こちら
宮下奈都『よろこびの歌』、中田永一『くちびるに歌を』、二ノ宮知子『のだめカンタービレ』、
武田綾乃『響け!ユーフォニアム』などを読んでいたときや
ミュージカル『コーラス・ライン』などを観たときも登場人物全員に肩入れしてしまって
みんなこんなにがんばってるんだから報われてほしい…とか、祈るような気持ちでした。
発表の瞬間てすごくストレスたまるけどカタルシスでもあるよね。
終盤で、塵くんが海辺で巻き貝と渦巻雲を眺めながら
ホフマンとの思い出を追想しつつフィボナッチ数列をつぶやくところは
『天と地の方程式』のラストをふと思い出して、
そういえば雷の音って音階であらわせるんだろうか?と気になってぐぐってみたら
何人か音階で聞こえるとおっしゃってる意見がヒットしてひえぇってなった。


余談ですが、音楽について書いたり描いたりしたものを見るといつも
ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの『ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド』に
こんなことが書かれているのを思い出します。

「音楽:きわめて重要なもので、常に善であり、おそらく魔法でもあり、
特に竪琴で奏でた場合にはその傾向が強い。どうやら闇の王は音痴らしい」

闇の王が音痴かどうかは知らないけど、
言われてみれば小説や映画で歌がうまい悪役キャラクターがパッと思いつかないけど誰かいましたっけ…。
ミュージカルやディズニーの悪役みたいな、ストーリーの筋として歌を歌うんじゃなくて
「歌がうまい設定」になってる悪キャラ。
あと、歌を歌うと物が修復できるとか世界が救われるみたいな
歌がストーリーのキーポイントになってる物語も結構ありますけど、
そのときに歌う役割というのはだいたい女声に振り分けられてる気もする。
男声だと夢の守り人のユグノあたりが思いつきますが他にもいるかなあ。


週末に西の方へ旅をしてきますのでちょっと留守にします~Twitterには出没しています。
帰って来たらレポ書くですよ☆
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2017-03-14 (Tue)
『茨木のり子の献立帖』を読んでいます。
作家のおやつとか画家の食卓みたいな本がありますが、あんな感じの本で
茨木さんが生前に書き残したレシピノートから再現した料理写真と
台所実測図や日常の写真、日記の一部などから
彼女が普段の生活の中でご家族やご友人と何を食べていたかが紹介されています。
茨木さんに限りませんがこういう本読むと「ああこの人、ほんとに生きて生活してたんだなあ」という
ごく当たり前のことをしみじみと感じずにはいられない。
茨木さんの詩は生活感があるけど、何よりもぴしっと伸びた背筋を感じさせる詩が多いので
三大欲求の面に触れるとなんだかホッとしますのです。ご飯はいいね。

通勤医の夫さんは普段は家にいらっしゃらない方だったので
茨木さんは自宅で家事をこなしながら詩のお仕事をされていたんだよね。
レシピも誰でも作れそうなものからちょっと手間暇かかりそうなものまで色々。
カレーに始まりサラダ、水炊き、茶椀蒸し、ナポリタン、リゾット、揚げ物、漬物、スープ、焼き魚、お汁に卵焼き。
ポテトキャセロールとか栗ぜんざいとか、鶏とびわの甘酢あんかけとか
マカロニナポリタン(うどん代用鶏もつ)とかおいしそう。
「ヤンソンさんの誘惑 スエーデン」はてっきりトーベ・ヤンソンのことかと思ったら
スウェーデンのクリスマス料理の名前なんですね。
じゃがいもやアンチョビなどを使った家庭料理ですごくおいしそうで作ってみたくなりました。
ノートには基本的にレシピと簡単な調理法しか書かれてないみたいですが
「1時間ほど煮るのが水炊きのコツ」とか、ガスパチョにパンくず入れると分離しにくいとか
蒸し物を何度も蒸し直さないとかちょっとしたメモ書きがあったり、
ご友人に教えてもらったレシピにその人の名前をつけたり
教えてもらったらノートに「〇〇さんより」と書いていたりするのが
お人柄が偲ばれるなあと思う。
チーズケーキのレシピの「衿子さんより」の添え書きは岸田衿子さん(岸田今日子さんのお姉様)ですね。
茨木さんが川崎洋さんと創刊した詩誌『櫂』に参加したりお互いに著書で言及したり
ずっとお付き合いがあったんですよな…。
お知り合いが亡くなられたとき茨木さんが岸田さんに「衿子さん私より先にしんじゃいやよ」と言われたと
岸田さんがどこかで語ってらして切なくなった覚えがあります。
(岸田さんも6年前になくなりましたけども)

レシピと一緒に書かれた日記も一部収録され仕事に家事に大忙しな日々が綴られていて
個人的にはこれが一番読めてうれしい。茨木さんの字はかわいい!
買い物や外食や初詣や同窓会に出かけたり、手紙書いたり書き物の仕事したり
丸善に万年筆を直しに行ったり、雑誌や中公新書や「日本史概説」を読んでいたり
関東大震災から50年目の防災訓練のこととか
大谷友右衞門(四代目中村雀右衛門)や幸田文のエッセイに一考したりとか
暮しの手帖展で花森安治に会ったとか、ドラマの大岡越前や勝海舟をご覧になっていたりとか
ディオニソスよ見捨てたまふなと呟いたりとか
すっきり晴れた夜空にシリウスと木星を見たりとか。
そして合間に色んな詩人の詩集を読んでひとこと感想を書き留めている。
茨木さんの日記は手短でまるでご本人の詩のようにてきぱきとして
その時その時の気持ちも一言主のように言い切っておられて
やっぱりそういうとこ上手いなあと思います。
あと、茨木さんの手料理を喜んで食べる夫の安信さんも日記に「Y」として登場していて
「Y、よろこぶ」「Y、ごきげん」「Yとランデブー」などと書かれてるのかわいい^^
お酒はおふたりともいける口だったらしくて
そういえば本のレシピも焼き鳥やお豆腐など、おつまみみたいなのも載ってます。

甥の宮崎治さんが茨木さんのお料理について言及されているのは何度か読んだことありますけど
今回の本にもエッセイを寄せておられました。
茨木さんは外食でおいしいと思ったものを台所で再現できる特技があったとかで
食事中に「このソースに何が入ってるか当ててみなさい」と言われたとか
レストランのウエイターに「これどうやって作るの」と尋ねるのを見たとか、
ずっと彼女の詩集を読んできた身には、なんて"らしい"のかと感心するエピソードがちらほら。
毎日毎日ごはん作るの大変だったろうし楽しくもあったろうし、
新しい味を知ると作ってみたくなるとか、たまには奮発しておいしいもの食べに行こうとか
茨木さんも考えることあったかなあ。

茨木さんの60代の頃の詩に『食卓に珈琲の匂い流れ』というのがあって
この本にも一部が引用されていましたが
(添えられた写真に写っている藍色のテーブルクロスに白い四角模様が点々とあるのが
なんだか渋好みの茨木さんらしい感じ)、
茨木さんは東伏見の自宅から夫妻で吉祥寺によく出かけて映画を見たりコーヒーを飲んだとか
ちらほら書き残されているんですよね。
日記に書いたことを詩にも書いていて、繋がってるなあと思いました。
夫さんが秋口に「コートいらないからこれ欲しい」というほど気に入って買った椅子の記述があって
その椅子はずっと保管されてて後年『倚りかからず』のモデルになったそうで…。
(茨木さんは夫さんの遺品をほぼそのままにしていたらしい)
あと『夏の声』に出てくる「いくじなしのむうちゃん!」の記述が8月の日記にあって
本当に真夏に聞こえた声だったんですね。

ごはんの本読むとごはんを作って食べたくなります。
ぐりとぐらのカステラまた作りたいし赤毛のアンのマリラの料理も気になるし
ブシメシのお味噌汁すごいおいしそうだったし、パパと親父のウチご飯の唐揚げと鍋やりたいし
カルテットの4人がごはん作って食べるシーンがいつも楽しそうだし
(フードスタイリストの飯島奈美さんのお仕事が光っておられる…☆
そして家森さんがワシにもくれ!とかあれー?ってジブリみあるのかわいい、中の人が聖司くんだからかな)、
きのう何食べた?のトーストに苺ジャムごろごろ乗っけたやつにアイス乗せるのやりたい~。

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本日の猫さま。
わたしの読書中ずっと膝でおねんねされていました。

dokushoneko2.jpg
そういえば茨木さんの詩に猫はいたっけ…と手元の詩集をパラパラとめくったら
『もっと強く』という詩にこんな一節がありました。
「猫脊をのばしあなたは叫んでいいのだ 今年もついに土用の鰻と会わなかったと」
わあ。 >> ReadMore
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2017-01-17 (Tue)
『ぐるぐるの図書室』を読みました。
まはら三桃さん、菅野雪虫さん、濱野京子さん、廣嶋玲子さん、工藤純子さんの5人の作家さんたちが
デビュー10周年記念に書きおろした放課後の学校図書室が舞台のリレー短編集です。
皆さま2006年にデビューされたので「2006年組」と呼ばれているそう。
工藤純子さんは読んだことないけど、他の作家さんはずいぶん前から読んでた気がしていて
去年で10年だったと聞いて「おおっそんなに経つ…いやでもまだ10年…」とか
何だか長いような短いような不思議な気持ちに。
どの作家さんも深いお話作りをされるのでこれからもゆっくり追いかけていこうと思います。
とりあえず工藤純子さんの本を今度読んでみよう。

5つのお話に共通しているのは、
・主人公たちが全員同じ学校に通う小学5年生
・放課後の図書室の扉に茜色のきれいな貼り紙を見つけて入室する
・白い服の司書から図書室の仕事を頼まれたり本を薦められたりする
の3点。
あとはそれぞれの作家さんの持ち味が存分に発揮されています。
日常の学校や図書室が舞台だったり、まったく違う世界でのお話もあって
キャンディボックスやクッキー缶の色々な味を楽しむような気分で読みました。
茜色の紙が見えるのは誰でもというわけではなく、
本を読む子とも限らず全然興味のない子でも見える子は見えるっていう
決して本好きな子ばかりではないのが現実感ありますね。
見えるのは「いま、その本を必要としている子」たちで、他にも見える子がきっといて
この本はたまたまこの5人の場合を書いたんだろうなと思う。
(ランガナタンが言った「すべての人にその本を」みたいな感じの)
子どもたちは過去と未来を行き来したり、妖怪のためにご飯を作ったり、秘境で絶体絶命になりかけたり
わかり合える相手を探してみたり、書きかけの読書感想文のために大冒険をしたりして
本を通した体験を終えるとみんな少しだけ元気になっているのがいいなと。
しかも冒険の始まりがすべて1冊の本であるというところに
ビブリオ・ファンタジーとかドラクエのぼうけんの書とか二ノ国のマジックマスターみたいなロマンを感じる☆
人生の節目に本があるって素敵だ。

ひとくちに小学5年生といっても主人公たちの性格や人間性は様々で
ひたすら元気な子や何となくふわふわしてる子、責任感の強い子や厭世的な子まで様々。
ただどことなく地に足が着くか着いてないかみたいな危うさとか、
目の前の出来事をストンと受け入れて大冒険するにはギリギリ可能な子たちな感じは
共通しているように思いました。
だからこそ誰かの助けが必要で、それが彼らの場合は本だったってことかもしれなくて
それをあの司書さんは見抜いて彼らに声をかけたのかもしれない。
何という理想のレファレンス!
図書館で働いてると完璧なレファレンスなんて都市伝説じゃないかと思いがちですが
こういう物語や夜明けの図書館とか読んでるとやっぱりがんばろう…!って思う。

狂言回しの司書さんの口調がどのお話も同じように描いてあるのはあえて統一されたんだろうな。
(この本の発売後に行われたトークセッションで(遠くて行けなかった)、
図書室も扉は木なのか、ガラス張りなのか、何階にあるのかなど話し合われたと聞いた)
彼女のいでたちが背が高くて黒のロングヘアに白いワンピースという描写で、
白いワンピースの人といえば竹下文子さんの『青い羊の丘』にもそんな人が出てたな…と
ふと思い出しました。
主人公たちにだけ見えてるっぽかったけど他の子たちはどうなのかな、
茜色の紙が見えれば司書さんのことも見えて、紙が見えなかったらやっぱり見えないとかなのかな…
そもそも人間なのかどうかもわかりませんけども
(人でないとしたら精霊なのか神様なのか妖怪なのかどう呼べばいいのかもわからないけど)、
人間誰でも人生の中で一度はこういう人に出会う、みたいな雰囲気の人に感じました。
図書館や本の神様がどんな形をしているかというのはたまに妄想しますが、
日本にそういう神っていましたっけ…思金神とかは知恵の神だしな…。
(書物が御神体みたいな神社ってないですよね)
西洋だと書物や図書館の守護聖人はアレクサンドリアのカタリナとかローマのラウレンティウスですかね。


巻末に5人の作家さんたちによる座談会が掲載されていて、
本との出会いや、どんな本を読んできたか、これからの読書の展望みたいなトークが交わされていました。
空想することがお好きだったという工藤さんが「子どもの頃に授業中に色んなことを想像しても
他のクラスメイトはやってないから「自分は変なのかも」と思っていたけど、
読書好きのお友達ができて一緒に物語を書いたらとても気持ちよかった」とおっしゃっていたり
菅野さんが「読んだ本を友達にプレゼンするときちょっと盛って面白く話した」とおっしゃるのとか
わ、わかる…!と同意しまくり。
まはらさんの「わからないところはとりあえずそのままにして読み進めてもいい、読書に訓練は必要」とか
濱野さんの「講演などで本は読まなきゃいけないものではなく読まなくても生きていけると話すけど
同時に読書をしないのはもったいないと伝えています」とか
名言もたくさん飛び出していた。
菅野さんの「わたし絵本もマンガも大好き!どのジャンルにもどんどん手を出して!」にも全力で頷いた。
この年齢にならなきゃ読んじゃいけないとか、この年齢でこれ読むのはみっともないとかたまに聞くけど
そんなのはないんだよー!
本は本だしその人はその人、あなたはあなただよって伝えたい。。

あと、まはらさんが「弓道がテーマの小説『たまごを持つように』を書いたとき弓道の取材をしたけど
弓を引く感触を探る気持ちで書くためにあえてその場では引かなかった」みたいなお話をされていて
それはわたしも何となくわかる気がしました。
歴史もののお話を書くために色々調べはするけど、必ず意識するのが書く対象の年齢なんです。
わたしたちは未来人ですから歴史上の人たちがどう生きて死んだかある程度わかっているけど、
ご当人は自分がどうなっていくのかまったく知らないわけです。
なのでうっかり「その人物がその時までに経験してないこと」を書かないように結構、神経使います。
結果を知ってるとどうしても伏線張りたくなったりしますけどね…
ニヤリとするくらいはやってもいいけど、できるだけやらずに描きたいなあといつも思います。
リアリティとフィクションのバランスって難しい。
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2016-11-15 (Tue)
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池袋西武ギャラリーの夏目友人帳大原画展に行ってきました☆
連載10周年を記念して2013年に開催されて以来(リブロ池袋があった頃だなァ)3年ぶりに
今度はアニメ5期放送記念の開催です。
原作者緑川さんのカラー原画や直筆原稿、無数のニャンコ先生グッズ、
アニメの設定画やアフレコ台本や声優さんたちからのメッセージほか
読者投票があったり夏目とニャンコ先生(神谷さんと和彦さん)による音声ガイドも聞けるよー。
会場の様子→こちら 大ヒット祈願ニャンコ先生は今宮神社からの出張かなあ。

緑川さんの描くやさしさと暖かさと少しの怖さが同居する原画ほんと美しい…!
扉やコミックスで見たものから、懸賞やイベント用に描かれたものまであって
「これあそこで見たな」「これ初めて見る!」など再会と初めましてを両方楽しめました。
直筆原稿は修正の跡や「10%」とかのトーン指示が描きこまれていて
こうして原稿はできあがっていくんだなあとワクワクしたし、
カラー原画は雑誌やコミックスの表紙で見るのとは違って色彩が鮮やか!
印刷技術も日々進化していますが、やっぱりこれが原画展の醍醐味だと思います。
3年前にも思ったけど緑川さんはペンやコピックのタッチがやさしいですね、
コピックは無限の可能性を秘めた画材だわ…。
読者が選んだ「好きなお話」「好きなセリフ」ランキングの1位が露神様で納得、
あのお話本当につよいね!
発表時から評価高いし定期的な読者アンケートで常に不動の地位を保ってる。わたしも大好きです。
音劇で神谷さんと和彦さんが着た羽織服も展示されていてすごく綺麗だった、
緑川さんは夏目友人帳のキャラクターたちに大きな柄の着物を着せることが多いですが
音劇で神谷さんたちも大きくモダンな柄のお着物を召されたんですね。

訪れていた人も若い人からご家族連れ、塔子さん滋さんみたいなご年配のご夫婦までいらして
幅広い年齢層に愛されているなあと感じたし、
その人たちが絵を見ながら「このお話は~」とか「これあの時のじゃない?」「こんなキャラいたねえ」とか
楽しそうにお話されているのを横耳に聞いてるとますます楽しくなって
心の中で「わかります~」「ですよね~」とか同意しまくった。
ファンイベントは仲間がいることがわかるからいいですね。

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展示室の一番奥にあったニャンコ先生神社☆ここだけ写真撮影可でした。
お賽銭箱あったらよかったけどなかった、
つか先生だったらお金よりもお酒や七辻屋のお饅頭やエビフライの方がお好きかなあ。

あと、撮影禁止だったけど隣に絵馬コーナーがあって
漫画のキャラクターたちが自由に描いたみたいになってました。
ニャンコ先生は肉球の署名で「イカ焼き食いたい」とか書いてるし
夏目(小学生)は「カレーを一緒に食べられる友達がほしい」とかでウルッときます。
主要キャラのほか中級たちや子ぎつね、蛍から柴田くんまで色んな願い事がありました。
藤原夫妻は揃って貴志くんの幸せを願っていて泣きそうになったよ。

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公式パンフは買うつもりでしたが友人帳メモ用紙とニャンコ先生かんざしは予定外だった、
でも買ったよ!
特に友人帳みたいな「作中にあるもの」がグッズ化されて出てくるの大好物です。
記念品もいいけど日常的に使える物はテンションあがるというか
キャラクターが使ってるのと同じもしくは似た物を次元を超えて共有したい気持ちっていうんですか、
あのキャラとわたし今同じもの持ってる!ことに萌えたりするのですよ。
というわけで白泉社さんは和紙などで忠実に再現したレイコさん直筆入り友人帳をお願いします。ほしい。
かんざしは着物に友人帳アイテムがつけられる!と燃えてゲットしました。うひひ(^皿^)

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スタンプラリーもやってきたよ。
池袋駅から乙女ロード沿いのお店にスタンプが設置されていて、
全部集めると虎猫ぬいぐるみを着こんだニャンコ先生のステッカーがもらえます。
お店にも夏目グッズが売っていまして
特に池袋GiGOの巨大ニャンコ先生ぬいぐるみのお腹にはダイブしたくなった。

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スタンプラリー中に東急ハンズの前を通りかかったら
パティスリー・スワロウテイルさんのニャンコ先生ケーキを発見ーーー!!うおおおお!!!
まったく知らなくて完全に不意打ちくらってフワー!って声出そうになりました。
別にハンズにスタンプがあったわけではないんだけどたまたま寄ったわたしグッジョブ\(^o^)/
店員さんに伺ったらLaLa40周年記念の期間限定でちょうどこの日からの販売だったそうで
この後まだ予定があったので持ち歩く時間を考えて一瞬迷いましたが、
「待ってどうせこの後三越行くから屋上で食べればいいじゃない」という考えが電撃のようにひらめき
ケーキを買って地下鉄で移動。
というわけで写真は三越屋上のスペースで撮影しました。雨降ってなくてよかった。
スワロウテイルさんのケーキはちょっとお高いけどクオリティ高くてすばらしいのだ。

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秋の火災予防運動の一環でライオン口のライオンさんたちも火の用心。たすきかっこいい。
(ちなみに銀座三越のライオンさんは消防服を着ているそうです)

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三越訪問の目的はこれ~京都の洛趣展。この日が最終日でした。

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とらやのスペースに行ったらトラりん、じゃなかった尾形光琳の虎柄の羊羹のディスプレイ。
光琳はとらやのお菓子を友達に贈ったりしているよね。

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京都のとらやのお菓子をゲット!九重の月と洛陽のみちです。
九重の月の九重は宮中のことで、つまり京都を照らす月なのだなあと。
洛陽のみちは、かつて唐の洛陽に例えられた京都の街の紅葉をあらわしていて
(京都の街を洛中、鴨川の向こうを洛外などと呼ぶのはこれが由来)、
両方ともあんこぎっしりで大変おいしゅうございました。
とらやのお菓子は甘すぎず味もすっきりしていて食べやすい。

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感動した菓匠花見さんの今月のお菓子、「参道」。
店頭で名前を伺ったとたん神社やお寺の参道がぶわっと鮮やかにイメージできて
参道の先に広がる境内や鳥居まで思い浮かんで止まらなくなって、すごいデザインだと思いました。
銀杏の舞い散る石畳だなんて!どこまで奥深いのでしょう和菓子の世界。


そういえば昨夜はスーパームーンが見られる日でしたけど、
関東は夕方から雨だったため夜空のお月見はかないませんでした。
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ので、千と千尋花札から月見酒を引っぱりだしてきました。
九重の月のお菓子で満月も食べられたし、無月でもお月見を楽しめる方法はいっぱいあるのだ。
(それにしてもハクはともかく銭婆の紅茶すげえな、寿ラテアートやってみたい)


ところで11月15日は七五三ということできものの日でもありまして。
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さっきも少し書いたけど、夏目友人帳のカラーは大きくて大胆な柄の着物が登場することが多くて
原画展を見ていたら久々に大きな柄物を着たくなって出してきました。
本当は原画展に着ていけたらよかったけど雨の予報だったから…。

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会場で買ったニャンコ先生のかんざし早速つけてみた☆
先生もかわいいし金色の友人帳もほんと素敵で、連れて帰って来てよかったなー。

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すっかりテンション上がって鳥獣戯画の帯と根付も引っぱり出してきました。
着物はお気に入りの猫柄。

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ニャンコ先生乱入!(笑)
わたしは短髪派なのでかんざしつけるタイミングは来ないかなと思っていたのですが
ある時「かんざしは帯にさしてもかわいいんですよ」って教えてくださった
某着物ショップの店員さんのことは一生忘れない。
髪飾りという視点しかなかった時期にはきっと思いつかなかったコラボをお蔭で楽しめています。
感謝とともに、わたしもあんな風に和服の楽しさを布教できる人になりたいなあ。
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2016-11-11 (Fri)
今年も雪見だいふくの季節がやってきたので買いに行きまして
新作のクリーミースイートポテト味が濃厚すぎてお茶が欲しくなったゆさです、こんばんは。
ほんとにスイートポテトの味がしたよ!
箱入りの苺ソースのチーズケーキ味も食べたら濃厚でおいしかったので
もう一箱買ってくるか検討中…あれ2個入りとか出してくれませんかね。
今年の雪見だいふくは濃厚路線でいくようですな、来年は何味が出てくるかな。


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今年も図書館総合展に出張してきました。
何度も来てるのに限られた時間内で出展ブースを効率よく回る方法が未だにわからず
2~3回同じ場所を回って「あれーさっき気づかなかったけどこんなのあったんだ!」ってなるのもしばしば。
もうちょっと周りに注意を払える人間になりたい。
例によって色んなソフトやシステムに心奪われながら見学したり体験させてもらって
図書館界の進化について本気出して考えました。
とりあえず職場にペッパーが1人ほしい、ルンバみたく癒される気がする。

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キハラさんブースの充実っぷりが今年もすごい、
禁帯出と館内に続き貴重書と書庫マグネットが出たよー!
今のところマグネットは4種類ですが別売りのシールとか見てると寄贈書や学書とかあるので
次年度以降に出てくるだろう可能性を考えています。楽しみ←
マステは犬と猫、ブックパンケーキ。猫のステッカーはお買い物するともらえるやつです。

去年の記事にも割と散財したようなこと書きましたけど、今年はダークホースがいましたので出費は倍。
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おまわりさんこいつです、ブックトラックUSB!!
価格が普通のUSBの3倍はするうえ数量限定と聞いていたので在庫があるか不安でしたが
ブースのカウンターをちらりと見たらご丁寧に箱入りで限定品っぽさが醸し出されてて
実際にこの目で見るまでは買うかどうか迷ってたのに思わず手が伸びてゲットしてしまった!
あなにくし実物の力。いとをかしキハラさんのデザイン力。
8GBでセキュリティついてるからちょっとした量のデータ保存とかに使おうかな。

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USBはこんな感じにディスプレイしてありました。
両脇の阿蘇のメイスイペットボトル(100円)、パッケージにご注目。
キハラのわんこはともかく「禁帯出」と「館内」シールのパッケージ!
図書館ペットボトルって感じ…こんなの飲みながらカウンターでお仕事したいよ…(館内は飲食禁止です)。

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他にもブースを巡って買ったりもらったりしたもの。
「図書館の自由に関する宣言」は図書館戦争で有名になりましたが
日図協さんのブースでポストカードを見つけてゲット!誰に贈ろうかな。
土佐和紙の見本はブースでアンケートに答えたらいただけました。
帝京大学の本おみくじ今年も引いたよ~。

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土佐和紙を使った修復実演を見学。
昔の本は酸性紙が多くてちょっとしたことですぐベリっといってヒィ!ってなるのですけど
ちぎった和紙を貼ると元通りになったりします。
(貼るのは極薄の和紙で文字が透けるので問題なく読めるのだ)
糊をつけるとき網戸のあみを使うと便利だとか、
貼った後は水分を逃がすために紙を挟んだりアイロンかけるといいですよ~など
職場で実践できるようなお知恵を拝借しました。
専門家さんの話を直接聞ける機会ってなかなかないのでな…
修復の専門家ってNDLくらいしか常駐いませんのでね。

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図書館におすすめの本コーナーとか、社会福祉団体とか、出版社のブースもあるよ。
写真は偕成社さんです。ノンタンとはらぺこあおむし!
80周年おめでとうございます~~あおむしのぬいぐるみと穴の開いたリンゴのディスプレイもあった。

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帝京大学メディアライブラリーセンターの「共読ライブラリー」は今年も立体的。
去年みたいな2階建てではなかったけど、本棚がいくつか立ってて
おすすめ本と紹介文がポップにディスプレイされてるのおもしろいです。
学生さんが生き生きと説明してる姿を見ると元気が出ます。がんばってる姿はかっこいい。
左奥の黒板にメッセージを残すと本おみくじが1回引けるのだ。

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ポスターセッションもやってます。
Kumoriさんのポスターは今年もかわいかった!参加者が自分でしおりを書いてぶら下げる参加型でした。
しおりの裏にはナルニア国物語、アリス、はてしない物語などからの引用があるよ。

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災害コーナー。
これまでにも阪神や新潟、東日本の震災が登場してきましたが今年は熊本。
倒れた本棚や散らばった本の再現と、対策についての展示がありました。
全国各地、土地や気候が異なるなら災害の状況も規模も異なりますので
その都度その場に合った対策を取らなくてはなりません。
来年は鳥取・島根の特集だろうか…会場には募金箱もあったので寄付してきました。

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夕方のフォーラムを終えて外へ出るとすっかり日が落ちていました、冬至ももうすぐだねー。
みなとみらい駅の観覧車がレインボーできれい。

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駅のクリスマスツリー☆
今年は海の生き物がたくさんいました。

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小雨が降ってたけど、ちょうど横浜のイルミネーションが始まる日だったので少し見学。
星が降ってきて木にひっかかったような。

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イルカ!
| その他本のこと | COM(1) | TB(0) |
2016-10-09 (Sun)
左右社の『〆切本』を読みました。
夏目漱石から現代作家までによる、〆切に関する随筆や手紙や日記を集めたアンソロジーです。
タイトルと表紙見たとたんに笑える気持ちと笑えない気持ちが同時におこって
なかみを読んでやっぱり笑って震えて胸が苦しくなって元気出た。
仕事や趣味でものを書いてる人にはものすごくクる本だと思います。とてもおすすめ。


扉を開くと真っ先に掲載されているのが白川静による「締切」の漢字の解説だったから
そこから!?ってなったし、かえって企画した編集部の本気度もよくわかった。
(ちなみに締は祭卓の足を結んで締めるの意、切は七(切断した骨)に刀を加える→切るの意)
白川さんも〆切に追われたことあったんだろうか…このアンソロには載ってないけども。

ざっと引用するだけでも悲喜交々なのですが
「ああ、いやだ、いやだ。小説なんか書くのはいやだ」田山花袋
「精神的にも肉体的にも直きに疲労する。だから二十分とは根気が続かない」谷崎潤一郎
「〆切が五日のところ十五日迄延ばしたのですが、とうてい書く気が出ず上京して断りました」梶井基次郎
「純粋な考え方からすれば、むろん断るべきであった」江戸川乱歩
「第一回分四十枚ばかりを書いた。結末がどうなるかという見通しは全然ついていないのである」江戸川乱歩
「書けないときに書かすと云うことはその執筆者を殺すことだ」横光利一
「どうしても書けぬ。あやまりに文芸春秋社に行く」「どうしてもといわれるが、筆が進まぬ」高見順
「かんにんしてくれ給へ。どうしても書けないんだ」吉川英治
「才能がないのではないかと、悲観するのは、新しい小説にとりかかる前、いつも感じる気持ちである」遠藤周作

やばいお腹痛くなってきた。(中断)
あと泉鏡花は「昼よりも夜の方が余程筆が早い」と書いているように夜型だったらしいのですが
この時間帯なら書けるみたいなのも確かにあると思うし、
坂口安吾が「眠るべからざる時に眠りをむさぼる。その快楽が近年の私には最も愛すべき友である」とか
木下順二が「フォークナーか誰かは、鉛筆を何本も削ってばかりいるというのではなかったか」と書いてたり
仕事がつらくて2~3時間はボンヤリしちゃう菊池寛とか
原稿の合間にオペラや文楽へ出かけてしまう有吉佐和子とか
仕事以外のことをやってしまうというのもよくある話だと思う。
試験勉強期間は部屋の掃除や本棚の整理がはかどるとか。(わたしだ)

"〆切はゴムのように延びず"というのは、わたしが高校時代に在籍した部活の格言でしたが
まあ当然ですが延ばした事例はいくらでもあるようで、
島崎藤村は「来年一ぱいには全部を書き終りたいと思ひます。丁度一年だけ後れる訳になります」とか
〆切を1年も延ばしたつわものだったりする。
長谷川町子は「カツオの表情がどうも気に入りません。描き直すので1時間だけ待っていただけませんか」と
配達の人を玄関先に待たせて仕上げたらしい4コマを描いています。
(そういえばサザエさんに出てくる伊佐坂先生はいつも〆切に追われてますね)
ただ、個人的にすごく怖かったのはそのあとのコマで
原稿を描きなおした長谷川さんがボツ原稿を破ったら、なんと破ったのは描きなおした方(!)で
仕方ないのでボツ原稿をそのまま渡したという話…
思い出したくもないですがわたしも似たような経験があるのでほんとに怖かった、
人間、慌ててると手が滑って何するかわからないから気をつけましょうもの書きの皆様…。

長谷川さんで思い出したけど、漫画家さんの〆切前の悲鳴はしょっちゅう耳にしますけど
このアンソロには載ってないけど、武内直子が前に描いてたエッセイ漫画に
セーラームーンの原稿間に合わないどうしようって編集(おさぶさん)に電話したら
「ええ~っノート(付録)だけで本編のないなかよしが200万部も書店に並ぶなんてやだ~!」と泣かれて
どうにかこうにか仕上げたみたいな話があったね…。
手塚治虫は逃亡の常習犯で映画館や駅やホテルに探しに来られては連れ戻されたらしいし
藤子不二雄コンビは眠いときはペンを手に突き刺しながら原稿描いたそうだし
鳥山明も「あと1コマで終わる!」とか言ってる自画像を漫画に描いたことあるし
きっと昨日も今日もどこかで漫画家と編集者の奮闘が起きてるのでしょうね…
漫画家の皆様お疲れさまです。いつも面白い漫画をありがとうございます。
そういえば先月、こち亀が連載終了するというので秋元治がテレビに出てたけど
「常に原稿をいくつかストックしておいて落とさないようにしていた」とおっしゃってて
すげぇ本当にこういう人いるんだって思った。
〆切前に仕上げる作家というと国木田独歩や川端康成、三島由紀夫などを聞いたことがある。
逆に伝説並の遅筆だったのは、トットてれびでもやってたけど向田邦子ですね…
〆切過ぎてから書くとかザラだったらしい。

「仕事はのばせばいくらでものびる。
しかしそれでは、死という締切までにでき上る原稿はほとんどなくなってしまう」外山滋比古

編集者とのやり取りも。
「様子をみにきたのですよといはれてほろりとする」林芙美子とか、
「ただいま大宮でカンヅメになり仕事中です」と手紙に書いた太宰治とか
「カンヅメなるものを非難拒否していたが、やむにやまれずカンヅメされることを受諾」した高見順とか
相当やり合ってきた時間を彷彿とさせる文章が。。
執筆中に体調を崩す人もいて、パブロフの犬というか職業病だったり仮病(?)だったり様々。
寺田寅彦は書くときに頭痛や胃痛がしたそうですが
「大した事はなく、遊んで居ればいゝといふ誠に我儘病で慚愧の至り」と編集に手紙を出しています。
井上ひさしは原稿の依頼を引き受けてからの行動を缶詰病と呼んでいて
最初は「傑作を書く」などと言ってハイになり、次に睡眠をむさぼり、やがて放浪癖が目立ち、
しまいには「次号廻しにしてください」「殺してください」などと言い始めますが
ホテルなどに缶詰にされると全快するらしい。
梅崎春生と編集者の「ほんとに風邪ひいたんですか」「ほんとだよ」のやり取りみたいに
本当に体調を崩しても疑われることもあったとか、
何本も連載抱えてた松本清張が「ゲラ入れだけでも徹夜になる」とかぼやいてるの見ると
延ばしてあげてほしいとも思ってしまうけど、
編集者も「原稿依頼はたいてい多少のサバを読んである」「ほどよいところに締切日を置く」(高田宏)とか
ちゃんと考えて依頼してることがわかる文章も載ってて、もどかしいですね…。
(岡崎京子は6日もサバを読まれたことがあるそうな)
ちなみに高田宏は「書くことも、編集することも、相手に惚れなかったら、はじまらないのではないか」という
名言も書き残している。(川本三郎の章から)

外山滋比古の章に原稿性発熱(〆切になっても一字も書けず発熱して気分が悪くなり、
またの機会にと断られると熱が下がる遅筆の作家の事例)なる言葉があって、
それを左右社さんが栞に作ってしまったのが→こちら
これちょっと現物欲しい。

作家はサボってるわけではないし、編集者も意地悪してるわけではなくて
お互いに仕事に対する情熱やポテンシャルがぶつかってしまうだけであって
それがうまくはたらけばいいけど、ドツボにはまってしまった時にきっと
こういう文章たちが生まれてくるんだろうなと思いながら読んでいたら
幸田文の「私というものが認められることは全然なかったから、"私に"といって、
書くようにすすめられた時は本当にうれしかったのでした」とか
三浦綾子の「一気に十八枚口述して、何とか〆切に間に合わす」(晩年は彼女の夫が書き取ってた)とか
米原万里の、何でもいいというよりはテーマと枚数と〆切を与えられて書くと
「嘘みたいに仕事がはかどる」「不自由な方が自由になれる」みたいな文章も載ってるから
書くことの奥深さを知る本でもありました。
「終わりが間近に迫っているという危機感が、知に、勇気ある飛躍を促し、
ときに驚異的な洞察をもたらす」(大澤真幸)もよくわかるし…。

「自分の中では、なに、たまたまさ、
潮が引けば、じきに元の、暇に恵まれた日々に戻るさね、という考えがある」大沢在昌


ドラマ「夏目漱石の妻」を毎週、拳を握りしめながら見てるんですが
あれの漱石は精神病で書けないみたいになってて〆切に関する話は特に出てないような。
ちなみに漱石は吾輩は猫であるを書いている最中に
「猫は明日から奮発してかくんですが、かうなると苦しくなりますよ。だれか代作が頼みたい位だ。
然し十七八日までにはあげます。君と活版屋に口をあけさしては済まない」
と書いた葉書を、高浜虚子宛に送っているそうです。
弱音を吐きながらも弟子に気を使わせないようにする漱石せんせいは逞しい。
| 一般書 | COM(0) | TB(0) |
2016-06-29 (Wed)
富安陽子さんの『天と地の方程式』がおもしろいです。
3冊とも発売とほぼ同時に読んで、たまたまですけど全3巻読み返したのが先週の夏至だったので
ちょっと感想めいたもの書いてみることにします。
(物語のクライマックスが夏至の日の出来事なのだ)
ちなみに1巻を読んだのは歌舞伎座で幕見席のチケット買うために並んだ時だったと記憶してる…
本のページをめくりながら目の端に映っていた風景の記憶が待機列の椅子なので。
夏至に読み返したい本がまた増えましたお~。
真夏の夜の夢とか、ムーミン谷の夏祭りとか、ハウルの動く城とか、精霊の守り人とか。

ニュータウンにできた小中一貫校に通い始める男の子とクラスメイトが
ある日学校の廊下でヒョイと異空間「カクレド」に迷いこむところから物語が動き始めます。
やがて現れた「頭の中に日本語で話しかけてくる猿」によって
それは天ツ神と黄泉ツ神の戦いにカンナギとして選ばれたためと判明します。
カクレドは黄泉ツ神がもっさり入っている繭であり、あの手この手で容赦なく襲いかかってくるので
彼らをかわしながら繭のほころびを探して穴をうがち脱出する…と書くとRPGみたいだし、
カンナギ同士でタッチするとカクレドに放り込まれるのはわかっても
カンナギは目印がついてるわけじゃないからタッチするまでわからないジレンマもあれど
次第に一人、また一人と仲間が増えていくのも何だかRPGみたいですが
黄泉ツ神の攻撃が意識を乗っ取るとかカンナギの恐怖を食べるとかの精神系のため
ドキドキというよりちょっと、怖い感じ。
冨安さんの物語は神や妖怪を親しみやすく感じさせてくれますけど
同時に彼らは理不尽であり祟るものであるというのも思い出させてくれますな。

カンナギは巫(神子のこと)だし、選ばれるのは6~14歳の子どもに限られていたりするし
黄泉ツ神たちがみんな片目だったり、鏡の光が脅威だったり
米粒で結界張るとか稲荷祭文との関係性とか、閏年生まれの子は誕生日にしか年を取らないとか
ルールがいちいち神話的民俗学的なのも相変わらずの富安文法。
クライマックスで円周率を唱え、フルートを奏し、千引岩に見立てた巨大柱で黄泉ツ神を封印するのは
黄泉比良坂と天岩戸を現代ヴァージョンでやるとこうなる、みたいなひとつの形式みたいな…。
引用先の心当たりが無数にありすぎて想像すればきりがありませんが
それらと、これまで富安さんが書いてこられた物語の要素がてんこ盛りになっているなと
読み終えて思いました。

アレイは富安さんの物語によくいる典型的な巻きこまれ型主人公ですけど
富安さんの男の子主人公、久し振りに読んだ気がする。
(他に男の子主人公ってムジナ探偵局とかオバケ科シリーズとか、あと2~3冊くらいですよな)
記憶媒体並みの記憶能力は彼にとって強さであり重荷でトラウマでもあったのが
Qがコントロールできるようになれば大丈夫ってアドバイスしたとき救われるとまではいかなくても
考え方として腑に落ちたみたいだったのが少し安心しました。
名前が森有礼(アリノリ)と同じって最初に出てきたけど
古事記から見つけた稗田阿礼を意識してアレイと自称してるのがおもしろいし、
名前の設定をここぞというところやクライマックスで思ってもみないほどに活かすのが
富安さんのすごいところだと思う。
音楽と円周率をつなげるとか誰が思いつきますか…!
学者やクラスタさんが数字や数式を音楽にたとえるのはよく聞きますけど
それを(物語の中とはいえ)実際にやってくれて
しかもπを数百桁ぶん唱えるアレイむちゃくちゃかっこいいんですけど!
「○○できるのはおまえしかいない」っていうセリフは汎用性高いなと思うし
無数の物語で合計数千、いや数万回以上言い尽くされてる言葉でしょうけど
聞くたびにうおおお!!ってたぎる。
それにしても天音をどこかで聞いたことあるって言ってていざ思い出したら
ドレミを数字に置き換える癖から円周率だと導き出すくだりはわたしにはとてもできない発想でした。
数学クラスタさんだったら気づくのかな…。

でもQの話を聞いてると数学おもしろそうって思えるから不思議。
すべての法則や公式は発明ではなく発見だとか、
オウム貝の渦巻きを拡大するとハリケーンになり、さらに拡大すると星雲になるとか。
数学は神の設計図であり世界システムかあ…。
彼が口にする用語にいちいち「そんな問題あるんだ」「そんな定理あるんだ」などと
つぶやいてる程度には数学オンチなので、注釈あったらよかったなと初読時は思ったのですが
再度読み返したときに展開があまりにもスピーディーなことに気づいて
これ注釈ついてるとかえって物語に集中できないからこのままでいいかなとも思いました。
気になる人は辞書引いたり教科書見れば載ってるかもしれないよね。
3巻のラストで「超新星爆発の音はファ、赤ちゃんの泣き声はラ。宇宙では死と生がハモっている」とか言い出したときは
「へー」と「どうしたんだQ、ポエマーじゃないか」と同時に思いました、
マンガで読んだって言ってたけどそれ現実に存在しますか…読みたい。
…というかこの本で一番謎だらけなのはQのお姉さんですよ…。
Qが電話かけたり事後報告する時しか出てこないけどコロンボの「うちのかみさん」レベルに姿なき存在感。
お姉さんのカンナギ経験については目覚めずに終わった人という推理をイナミがしてたけど
もし経験済みでQに秘密にしてるだけだったとしたら前日譚が書けそうだなと思った。
ぜひ検討してほしい~。

ヒカリは頭脳派というより感覚派の天才肌なのかな、
ピアノ弾いてるシーンは音楽の申し子のような描写だし、自分のイメージのままに奏でてそう。
自身のトラウマからピコを助けに行こうとするあたりが人の良さが出ていて好き。
「ピコくんが混乱するから」と自分を名字じゃなくヒカリ呼びにしていいと言う場面は心がポカポカしました。
アレイもアレイ呼びでいいって言いやすくなったしね。
春来は戸籍名はハルコだけど訓読みにするとハルクになって、普段から力持ちな子ですが
みんながハルクって呼んでる時の方がとんでもない力を発揮してる感じ。
アレイもだけど、ハルコも名前の力を感じずにはいられませんでした。
本人の意志は真逆ですが^^;
ピコくんは大きいお兄さんお姉さんに囲まれているのであまりしゃべりませんが
お兄さんお姉さんたちから全幅の信頼を一身にあびて仕事してるのすごいかわいい。
安川くんは最初ただのチンピラかと思ってましたごめんなさい、
猿を介してお話してたのはみんなに信じやすくさせるためだったけど
日輪と猿が切っても切れない関係という言い伝えが背景にあると思います。
猿田彦とか日吉丸(豊臣秀吉の幼名)とかの。
関西ことばでしゃべるのも、日本神話や古事記は関西から生まれたものだしなあ。
というかイナミ…名探偵コナン君でさえ「見た目は子ども、頭脳は大人」ってちょっとややこしい設定だけど
イナミは「見た目は大人、中味は子ども、でも子どものときは大人の時の記憶とカンナギの知識があって
大人のときは子どもの記憶はなくて子どもの人格の方が無駄に頭がいい」という、更にややこしい設定で
本人による説明セリフ3回くらい読み返しました。。
4年に1度の誕生日に年を取るって、ありそうでなかった設定ですよな…。
よく物語に出てくる、主人公より長く生きて知識のある人たちって渋かっこいい場合が多いけど
(ジグロとかハヤとか、または雪政みたいな残念なイケメンとか)、
富安さんがそういう人を書くとイナミとか菜の子先生とかムジナ探偵とかホオズキ先生とか
夜叉丸おじさんみたいになるのはなぜなんだぜ。
いや、おもしろいんですけど(笑)。

あとここにもちょっと書いたような、富安さんの古典と科学と神話の混ぜこぜっぷりも健在でした。
結界をテリトリーと言ったり、黄泉ツ神たちをザコキャラとボスキャラにたとえたり
カクレドのほころびを「靴下に穴があくみたいなもの?」ってまとめちゃったり
天ツ神はこの世のどこにでも宿ってるという点で細菌と同じようなものって言っちゃってるのは
この本くらいじゃないかぬ(笑)。
ファンタジーや冒険ぽいところからいきなり現実へ引き戻されるこの感覚…嫌いじゃないぜ…!
(わたしが今まで一番秀逸と思った言い回しは、
荻原規子さんのRDG3巻で泉水子が姫神をうまくおろせなくて言った「山側だと入らないとか」に対する
深行のセリフ「携帯の電波が入らないみたいな言い方だな」です)

あと少し戸惑ったところがあって、
ハーメルンの笛吹きについてイナミが結構細かく生徒たちに説明してたんだけど
もしかして笛吹きの話ってすでに説明が必要なくらい「みんなが知ってるお話」ではなくなってる…?
何をどこまで説明するかは著者と編集者の判断だと思いますがあえて入れたってことは。うむむ。

五十嵐大介さんの表紙画、ポップな感じとおどろおどろしさが共存してておもしろいです。
漫勉でもザクザク描いてらしたタッチがいい感じに出ている。
イナミがやたらイケメンなんですけど、この口から子どもの声が出ると思うとシュールだな…。
1巻に数字、2巻に音符、3巻に惑星記号が飛び交ってる装丁デザインもすてき。


さて、さて。
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夏越の祓が近いので花扇さんにて水無月をゲットしました。
白い外郎は氷をかたどったもので、小豆の赤い色は魔除けになるそうです。
雨が降らなければどこかの茅の輪をくぐりに行きたい。

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先週の玉川高島屋「若き匠たちの挑戦(通称:ワカタク」のお菓子たち。
巌邑堂「紫都」と高林堂「煌」は福島県産ブルーベリーを使った和菓子で甘酸っぱかったし、
雅風堂「氷室饅頭」は加賀藩の氷室にまつわる金沢銘菓です。
江戸時代、毎年7月1日に加賀藩は江戸城に雪氷を献上する役割があって
無事に届けられるようにと神社にお饅頭をお供えして祈願したのですって。
期間限定で買えるかわかりませんでしたが無事ゲット。いただくの初めて(*´∀`*)。

2016年がもう半分終わるわけで時の流れに神秘を感じますが、
この厄除けが終われば本格的に夏が始まりますね。
今年も夏への扉が開くぜ、ピート。
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2016-06-20 (Mon)
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世田谷文学館にて開催中の上橋菜穂子と〈精霊の守り人〉展に行ってきました。
守り人シリーズを中心に上橋さんの作品世界や研究内容、お人柄に迫る展覧会です。
この文学館が行う作家展はキュレーションが本当にすばらしくて
ファンの「そう!それが知りたかったの!!」という部分を見事についてくれるので
今回も色々びっくりさせてもらいたくて事前情報はあまりチェックせずに行きました。
(上橋さんのエッセイや講演会などでお人柄については何となく存じ上げているという理由もありますが)

入口の真っ青なポスターは旅人シリーズの佐竹美保さん描きおろし、
向かい側に原画も展示されていて間近で見られます。
ポスター前にはドラマ守り人で使われたバルサの短槍(レプリカ)もありました。
ドラマご覧になった方はおわかりかと思いますが、綾瀬はるかさんの身長よりちょっと低めの長さ。
照明で尖端がギラリと輝いてかっこよかったです。

展示は上橋さんあての2通のお手紙(1979年6月と1982年1月)から始まっていて、
差出人はルーシー・M・ボストン!
高校のとき学校の研修旅行でイギリスに行った上橋さんは事前にボストンさんに手紙を出したら
「ぜひいらっしゃい」とお返事があったそうでケンブリッジのマナーハウスに会いに行っているのですよね。
ボストンさん(当時80代)直筆のお手紙!すげー本物!
マナーハウスの外観やボストンさんとツーショットのお写真も展示されていました。
グリーンノウの子どもたちが遊んでいた木馬に乗った高校生の上橋さん、楽しそう(^ω^)。

上橋さん曰く「偕成社から奇跡的に見つかった」精霊の守り人初稿(1993~1994年)。
バルサは35歳だし(出版後は30歳)新ヨゴ国も別の名前だったなど裏話もキャプションにありました。
隣に再現されたシリーズ原稿の束と、虚空の頃まで愛用されていたノートパソコンも。
会場に流れていたインタビュー映像でもおっしゃってたけど
上橋さんは編集者さんと特に打ち合わせしないで、まず物語をまるっと書き上げてから
「1冊書けたけど読みますか?」と連絡を入れるんだそうです。
まず午前中に前日書いたものを読み返して、続きを書いて
午後にまたイメージが浮かぶこともあれば浮かばない日もあるとか。
あと、原稿は400字詰原稿用紙ではなく実際に読者のもとに届くレイアウトで書くんだそうで
ほほうつまり、わたしの本棚にある守り人と上橋さんが読む原稿は同じスタイル…
ちょっと、たのしい。

上橋さんは守り人を始め数々の賞を受賞されていますが、
賞のトロフィーや賞状を展示したコーナーはどこかの博物館のようだった。
産経児童出版文化賞と路傍の石文学賞のトロフィー超かわいい…!本屋大賞のスケルトンきれい。
国際アンデルセン賞を受賞されたときのメダルや賞状、
デンマーク女王マルガレーテ2世からのサイン本のお礼のお手紙もありました。
上橋さんは眼鏡ウォンバットつきのサインをなさったらしい、かっこいい。
(著書にときどき出てきますが上橋さんの自画像は眼鏡をかけたウォンバットです。かわいい)

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撮影コーナー☆
ドラマ守り人で俳優さんたちが着用された衣装が並んでいます。
バルサ、チャグム(旅姿)、チャグム(皇太子姿)、新ヨゴ王家紋章つき瓔珞、狩人、新ヨゴ王家の旗。
チャグムの旅衣装はNHK衣装部が所蔵していた経年変化した布を組み合わせているとのこと。
狩人の鎖帷子は3㎏もあって、俳優さんはこれをつけて殺陣の撮影をされたそうで
松田悟志さんはその重さに耐えておられたと思うと個人的に萌えポイント高し←

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バルサの衣装のベストは皮を編みこんだものだそうで、
宮城の南三陸の人々によって制作されたとキャプションにありました。
後ろに回ると背中がちょっと見られましたがザックリ切れていて
1~2話の激しい戦闘時に確かバルサが背中を斬られるシーンがあって、その殺陣の痕かな…。
次回シリーズの放送は来年ですがバルサはまたこの衣装で活躍するのでしょうか、
背中の切れ目はタンダが縫ってくれるに違いない…。
あっでも、シーズン1のラストでログサムに短槍投げちゃったのでそんな暇はないかしら。
獅童ちゃんの王様姿完璧すぎて今も思い出し笑いする。

ドラマの小道具もありまして、
ツツジがモデルというシグ・サルアの白い花とか(ツツジは蜜がおいしいからかな)、
青々とした精霊の卵とか(ドラマでは卵の中に小さな地球と雲がCGでついてたよね)、
新ヨゴの夏至祭で使われるトルガル王のお面とか(魔物と王の顔が表裏一体になってるやつ)、
チャグムの部屋にあったおもちゃ、ヨゴ文字の石板、帝の冠(ビショップの冠と卵の形がモデル)、
星読ノ塔や最上階、タンダの家の木の模型なども精巧に作られていました。
星読ノ塔は133m(ビル30階建て)という設定らしい。

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衣装コーナーの隣、黒いカーテンの向こうはどうなっているかというと。

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床一面にドラマのキービジュアル!

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実はこれ、ナユグを体験できるインスタレーションです。
人が入るとセンサーが感知して映像が動きだします。
こんな風に波がおこって、白から緑、青、赤、黄色、紫など次々に色が変化して
壁が合わせ鏡になっているので世界や道がどこまでも続いているように感じる。

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わたしはナユグに行くとこんな姿に見えるんだろうか…ゴボゴボいってるけど…(笑)。

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こちらは展覧会の入場チケットですが、
インスタレーションの部屋に行くと新ヨゴ王家の紋章が浮かび上がるようになってます。
いやはや楽しい。

インスタレーションの一部は文学館のTwitterで見られますのでどうぞ→こちら

守り人・旅人シリーズの挿絵もいくつか展示されていました。
二木真希子さんの守り人シリーズやっぱり最高です…。
精霊からは最終ページの挿絵、バルサがカンバルへ戻る途中で雨に降られるカットで
個人的にこの本で一番好きな絵なので原画が見られてうれしかった!
他にも表紙の卵を抱くチャグムとか、守り人世界の地図とか。
佐竹美保さんの旅人シリーズも挿絵や設定画まであって
軽く寄りかかるヒュウゴのラフに惚れそうになったよ…かっこよすぎるよヒュウゴ。
(ドラマのシーズン2で鈴木亮平さん演じる彼が楽しみで仕方ない)
あと萩尾望都さんと対談なさったときにモー様から贈られた直筆のバルサとチャグムの色紙とか
上橋さん自らイメージスケッチされたキャラクターたちのスケッチブックもありました。
二木さんにも見せたというティティ・ラン、オコジョに乗った人かわいい( *°∀°)و✧
(ちなみにイメージの固定を避けるため他の絵は見せていないそうです)
タンダとチャグムがドラマの俳優さんにそっくりだったのがまるで予想したかのようでびっくりしました、
そんなわけで上橋さんは東出さんがタンダにぴったりと思ったのですって。

そして…。
守り人出版前の1994年5月、上橋さんが偕成社に出した「挿絵を二木さんにお願いしたい」というお手紙が
全文が展示されていてマジ感動。
こ、ここからすべてが始まったんだー!二木さん…!!
上橋さんはデビュー作『精霊の木』を出版された際に二木さんの『世界の真ん中の木』を読んだそうで
同時期だったのかなと思ってぐぐったら同じ1989年出版なんですね。
「二木さんはお忙しいが(この時ぽんぽこか耳すまの制作真っ最中)お願いしたい、
もしお引き受けいただいても挿絵が遅れるかも、それでも可能なら…」など熱い思いに満ちていました。
どういう経緯で二木さんに決まったのか知らなかったのですが上橋さんのリクエストだったんですね、
二木さんの挿絵は海外で翻訳出版された守り人でも使われているそうです。

文化人類学の研究についても、フィールドワークに使う地図やサングラスやカメラ、調査ノート、
写真や現地でもらったブーメランなどが展示されていました。
『隣のアボリジニ』の表紙を飾ったドット・ペインティング「Honey art Dreaming」の実物は
思っていたよりも結構大きかったです。アボリジニのご友人のお手製だそう。
各誌に発表された論文や著書、分厚い博士論文「ヤマジ」などを見ていると
うわ本当に研究者なんだ…などと当たり前のことを今更のように考えたりしました。
わたしはどちらかというと作家としての印象が強いですけど
大学で上橋さんの講義を受けている学生さんたちにとっては教授でもあり作家でもあるのですよな…。
(Ciniiで上橋さんのお名前を検索すると論文がいくつかヒットするしね)

海外文献コーナー。
守り人をはじめ上橋さんの著書は英語や中国語、フランス語、イタリア語ほか各言語に翻訳出版されてて
(アメリカ版の表紙は個人的に五条大橋の義経を思い出すような迫力です→こちら
英語版は翻訳にあたり平野キャシーさんが担当されたそうで、
最初はメールでやりとりをしていたのがだんだん確認事項が増えて長くなってきたため
「やりますか!」と高松のホテルで缶詰なさったとインタビュー映像でおっしゃっていた。
(ホテルのロビーでバルサの槍ポーズをとったりしたらしい)
会場にやりとりの一部がパネルで紹介されていましたけど
平野さんが細部まで読み込んで翻訳しようとなさっている奮闘ぶりがうかがえました。
ルイシャの青はBlueかGreenか?→Blueで、とかきっぱりお答えなさる場合もあれば
こういう印象なんです、と言葉を尽くして説明された事項もあったようで…。
また別のインタビュー映像では、自国では出版されてないけどアメリカの友達に送ってもらって読んだという
ウクライナのティーンエイジャーから熱烈な感想と続きが読みたいという願いがお手紙に綴られてきて
物語が広がっていくのはうれしいともおっしゃっていました。

持ち物コーナー。
再現されたご自宅の本棚にはサトクリフやル=グゥインなど岩波系が多かったり
イランやポーランドから持ち帰られたという小箱やティッシュケースはカラフルなデザインだし
「上橋菜穂子の目」のタイトルで旅先で撮影された写真群は
建物や料理、馬車や刀剣など多岐にわたっています。
アルハンブラ宮殿を見たときの圧倒された感はチャグムがタルシュ帝国を訪れた時の驚きだとか
鹿の王を書いていたときはヴィエリチカ岩塩坑の風景が浮かんでいたとか
中世の騎士が履いていたサンダルが知りたくて銅像の足を撮影したとか
コメントも楽しかったです。
海外と日本では水質が違うため旅先に必ず持って行くというリトルポコポコ(携帯湯沸かし器)欲しい…。
高校時代の文化祭で悲劇の脚本を書いて主演したそうですが
同級生だった片桐はいりさんが見事に喜劇にしてしまったという裏話も(笑)。
国語科文集の開かれていたページで、上橋さんは「人間の歴史」の感想文を書いていたけど
片桐さんは「堕落論」を書いてて何というか、その後のおふたりの進路を考えるとさもありなんという気がした。
(展覧会図録では片桐さんが上橋さんについて文章を寄稿しています)
また、『明日は、いずこの空の下』の表紙を飾ったグラナダの空の絵は
お父様で画家の上橋薫さんが描いたものだそうで、本物の展示もありました。

メディアミックスコーナーにはアニメの設定資料、ドラマのイメージボードや制作資料がたくさん。
アニメ資料は余白に書かれたスタッフさんのメモがおもしろくて
「ラルンガ:冬眠する」に一瞬、笑いそうになった(笑)。
グロくなく獣にしたいという書きこみと、色をキレイにしたいという熱意に胸キュン、
うーん個人的な感想としてはちょっとグロかったけど色はカラフルでしたね…。
他にもトーヤとサヤは定食屋が捨てた箸を再利用してるとか
細かすぎて視聴者に伝わらない(たぶん伝わらなくても問題ない)ネタが随所にあった。
アニメのドイツ語版DVDとかあってびっくり、翻訳されてるんですね。
ドラマのイメージボードも、そのまま実写にしたらこういう絵になるなあと思ったくらい細かくて
これを設計図にあの迫力が再現されたのかと思うとwktk。
藤原カムイさんと結布さんによる精霊、闇の漫画原稿もやっぱりわくわくしました。
狐笛のかなたが舞台化されたのはどこかで聞いた覚えがありますが
会場が新歌舞伎座で主演が早乙女太一くんとは知りませんでした(滝汗)。
うおお早乙女くんの野火めっちゃ見たかった…!

出口付近にスケッチブックがひとつ置いてあって
今回のために描かれた上橋さん直筆の「眼鏡ウォンバット自画像」があった(笑)。
書斎にいる姿を、ということでパソコンの前に座ったウォンバット上橋さんだそうです。
かわいい。

出口に小さな立て札があったので見たら
5月に亡くなった二木真希子さんへの、上橋さんからの追悼文でした。
早すぎるとのお言葉にうなずきながらわたしも先月のショックを思い出したんですけど、
さっきまで二木さん推しのお手紙や原画を鑑賞していて、うれしいのと同じくらい実は悲しかったけど
でも原画を拝見できるなんて次はいつかわからないので時間をかけて見せてもらいました。
またこういう機会があったらいいな。
(二木さんの原画で好きなのはナウシカと王蟲の子、ラピュタのシータと鳩、トトロのドンドコ踊り、
草花に寝転がるキキ、波の上を疾走するポニョです。
あと毎年作られるトトロのイヤープレートも二木さんが描いていたそうです。
二木さんがどういう人かは『世界の真ん中の木』解説で宮崎駿氏が書いてますのでそちらをどうぞ)

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展示を堪能した後はゴジラ2000ミレニアムで実際に使われた着ぐるみが(なぜか)展示されている
文学館の喫茶どんぐりに入店。
すげ~スーツアクターさんが中に入ってたのかあれ…(実はゆさはスーツアクタークラスタ)。

donguri2.jpg
ランチにトーストを注文。
守り人に出てくるバム(無発酵パン)や獣の奏者のファコ(同)の気分でいただきました。
上橋さんの「住める世界を書きたい」という思いは作品にも表れていて
おいしそうな食べ物がたくさん出てくるよね。

donguri3.jpg
展覧会限定のフルーツタルト。

そういえば明日は守り人でも重要な日の位置づけになっている夏至ですね。
どこかで誰かから無事に卵が生まれますように。
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2016-06-12 (Sun)
吉川弘文館の現代語訳『小右記』を読み始めました。
このブログでもたびたび書いている藤原実資(957~1046)がつけていた日記です。
タイトルの由来は「小野宮の右大臣が書いた日記」ということで「小右記」。
(小野宮は烏丸にある、滋賀の小野に隠棲した惟喬親王の邸があった土地で
実資の祖父実頼がそこに住むようになり一族が小野宮家と呼ばれるようになって
実資も小野宮の右大臣と呼ばれたわけです)
小右記は当時の世の中を知る貴重な資料であるとともに、実資の意見や感慨もぽつぽつ書いてあって
平安時代ファンと実資ファンとしては2度おいしいのですが、
注釈つきの本がいくつか出版されてはいるけどわたしの知る限り現代語訳は初めてで
刊行に踏み切ってくれた吉川弘文館さんには感謝の言葉もありません!
だってこれで実資の日記がスラスラ読めるんだもの!!
少しでも本人に近づきたいなら原文を読むのが一番ではありますが、
ドナルド・キーン氏が折に触れておっしゃる「古典に親しむには現代語訳を読めばいいのです」のおことばが
本当に胸にしみる。

現代語訳は全16巻の予定だそうで、現在1~2巻が刊行済み。
1巻の書き出しは977年3月、実資は20歳の青年でした。
20歳ってことは高梨沙羅さんや橋本愛さんや玉井詩織さん、ポケモン赤緑と同い年で
えっこの時つまりかみっきーや羽生くんやエマ・ワトソンより年下なんだ!ひえぇ~。
当たり前ですが歴史上の人物にも青少年だった頃があると思うと胸熱です。
そして右大臣まであと44年。

基本的にはその日に仕事先で見聞きした出来事と、実資の行動についての記述がほとんどで
朝廷の儀式、貴族の冠婚葬祭、年中行事や徐目などの公式イベントについての記録は
前日までの準備から当日のプログラムまで細かく書いてあって、
こういう風に進められていたんだなあと。
時々「いかがなものか」「奇妙な出来事である」「知らんがな」「前例ないけどどうかな」
などなど、その日のつぶやきみたいな言葉も見られてクスッと笑うことも^^
よく見られる記述として2~3日に1回は穢・物忌み・修法イベントが発生していることと
(内裏に牛が乗りつけたとか犬の死骸があったとかで陰陽師がしょっちゅう呼ばれて
占ったり祓ったりして安全を確かめたりしている)、
月一くらいの頻度で清水寺に詣でていること。
982年3月18日には沐浴の後、馬に騎って行ったと書いてありまして
清水さんにお参りする25歳の青年実資を妄想するとなかなか楽しいです。
行った日だけでなく行かなかった日も「参らなかった」と書いてるから相当気にしていた様子。
あと、室町にお姉さんが住んでいたらしく時々相談事を持ち込んでいて
仲の良さそうな雰囲気もあります。
(少し後のことですが、お姉さんが亡くなったとき実資は服喪のため仕事を休もうとして不受理になっている)


以下、個人的におもしろかった箇所を適当にメモしてみます。

982年1月17日。
射遺に参議(藤原佐理)を召すように奏上があって蔵人(藤原宣孝)に伝えて帰宅した記録。
(このとき実資は右少将や蔵人頭を兼務している)
三跡の佐理に、紫式部の夫の宣孝!
実資25歳、佐理38歳、宣孝は生年不明ですが実資と同年代じゃなかったか…紫式部はまだ子どものはず。
ちなみに次の日、佐理はちゃんと射遺所に参入しました。
この4ヶ月後に申文帖(藤原頼忠への長文詫び状)を書いていると思うと訳もなく楽しくなってくる。

984年10月19日、武蔵秩父駒牽。
ちょっと武蔵国民としては注目せざるを得なかった^^
駒牽というのは東国4国にある勅旨牧から献上される馬を天皇が見る儀式で
この日は秩父からの馬が来ていたようです。
上野や甲斐にも勅旨牧があったみたいでこの前後も何日か連続して行われています。

986年6月には花山天皇の退位騒動があったはずですが
それらしい記述がほとんどなくて(というか986年は記事がものすごく少ない)、
実資が書いていないのか散逸してしまったのか…。
前年7月に天皇の女御だった藤原忯子が亡くなった記事は細かく書いてあるし
筆まめな本人のことを考えると後者かもしれない。
(現存する小右記は他にも983年の記事が丸ごとなかったり、年によって記事が多かったり少なかったりする)
12月にすうっ…と一条天皇の読書始めについて書かれていて
ああ天皇代わってもう半年経ってすでに日常になってるな、と思った。
990年1月に11歳の一条天皇が笛を吹く姿を眺める33歳の実資やばし。

988年閏5月9日、藤原保輔の強盗露見。6月14日に追補宣旨。
で、出たー!保輔!(゚Д゚)
北花園寺にて保輔が剃髪出家した通報を受けて検非違使が駆けつけたとき、
彼はすでに逃亡した後で出家のため切り捨てた髪と衣と指貫だけが残っていたっていう話に
ドラマかよ!って突っ込んだ学生時代の思い出(笑)。
実資は書いてませんが、このとき保輔の父藤原致忠が簾のない車に乗せられて監視される事態になって
致忠も保輔を見つけ次第差し出すっていう請文を提出してるんですが、
それでも本人が出てこないので朝廷は捕らえた者に歓賞を与えるという宣旨を出してるんですね。
直後に保輔の出家がわかって、4日後に彼は足羽忠信の邸を訪ねたところを捕まって
次の日獄死しちゃうんですけど。
藤原保輔を知ったのは杉本苑子さんの小説『散華』ですが
わたしがアウトロー好きということもあるんですけど、すごくわたし好みなセンチメンタルヤクザ男子になってて
そこから史実調べたりするうちにいつの間にかハマった人物だったりします。
あと彼の一族は曲者が多すぎる(元方とか陳忠とか保昌とか)。

989年1月23日、藤原兼家が雑談のさなかに出家の本意について実資たちに語ったそうですが
語りながら泣いていたそうで、実資は「宿願を催したてまつったのか」と書いています。
このとき兼家は還暦を迎えていて、実資は32歳。
青年が壮年期に入りそろそろ年齢や人生について考え始めたのではないかな…。
(ちなみに年末に太政大臣になりますけどね兼家)
また、2月11日に尊勝法・泰山府君祭があり御祭について安倍晴明が行っています。
晴明も儀式の日時を勘伸したり吉日を調べたりと、たびたび小右記に名前が出てきまして
御祭のときは68歳。
あと、985年4月25日に藤原為時、987年6月6日に藤原為頼、989年6月21日に藤原伊祐の名前があって
うおお~~紫式部のパパと伯父さんと従兄くんではないか!と興奮ひとしきり。

990年7月に実資は長女を亡くしていて
(毎日祈祷したり穢に気をつけたり栄養のある食事を用意したり
仏師を10人あつめて長女の等身大不動尊(フルカラー彩色)を作らせたり色々していた)、
「悲嘆・泣血」「悲慟に耐えない」「心神不覚」など悲しい記述が続くのですが
17日の初七日に「諷誦を珍皇寺で修した」の記述に一瞬、いろんなものが頭から全部吹っ飛びました。
六道珍皇寺じゃないすか!!( Ꙩ௰ꙩ )
長女の遺体は東山に置かれたとのことで(当時東山や鳥部野辺りは風葬墓地だった)、
東山のお寺で法事が行われるのはまあ当然ですが、まさか珍皇寺とは。
もしかしなくても小野篁のこと聞いてたり知ってたのかなああぁぁ実資、ありがとうございます(混乱)。
また8月3日には紫宸殿に異鳥が飛んできたとあって
カワセミのような姿形をしたそれは「水乞鳥(アカショウビン)」ではないかと物議をかもし、
次の日にどこへともなく飛び去って行ったそうで…
その鳥がそうだったかはともかく、アカショウビンがこの頃から日本にいたことにびっくりしたし
その時行われた占いが「病気や火事があるかも」という結果だったらしいのもびっくりした。
あと989年10月に着裳の儀を行った藤原定子が
1年後の990年10月に皇后になったときは「きたきた~~」ってテンション上がりました☆
実資は立后の儀式を記録しまくって(誰がいつ来て何をして退出したっていうのを数十人ぶん書いてる)、
定子や一条天皇については全然書いてないんだけど。

食べ物に関する描写もありまして、
985年6月18日に子どもの五十日の儀でお餅を準備したり
990年10月21日は亥の日なので尚侍の藤原綏子が亥子餅を用意していたり
993年7月28日に公卿たちに甘瓜が下賜されたり。
(饗応の記録もたくさんあるけど実資たんお酒のことしか書いてない)
あと食べ物関係というか、990年11月16日に実資は左大臣の話を聞きに行くはずが
二日酔いがひどくて行けなかったとか、
993年4月18日に風脚病(痛風)のため呵梨勒丸(正倉院にもある香薬)を飲んだとか
病気の治療が加持祈祷だけではなかったことも裏付けられますな。
ちなみに呵梨勒丸は医心坊(984年の医学書)にも書いてあって風病に効くとされていたものです。
(風病はすきま風のように人の体に入って頭痛や発熱を引き起こす邪気、つまり風邪のことで
呵梨勒丸はそれを撃退すると考えられていたそうな)

993年6月25日、菅丞相に贈位・贈官。
903年に亡くなった菅原道真に正一位左大臣と太政大臣が贈られたわけで、没後90年ですな。
実資のメモは「託宣によって行われるものである、ということだ」で、
翌7月5日の記事に外記多米国定が書いた贈位・贈官の儀式についての日記の一部を転写しています。
太宰府天満宮への勅使は菅原幹正、道真のひ孫にあたる人ですな。

藤原道長と藤原伊周の記述がぐっと増えた995年(実資38歳)の記事で2巻が終わっています。
とうとうあの騒動に向かっていくのだな…。
そして賢人右府まであと26年。

999年9月に一条天皇が猫のために行った産養の儀を「奇怪」って言っちゃったりとか(嗚呼)、
1018年5月に殿上が暑すぎて氷水を飲んだとか(真夏ですからね)、
同年10月の宴会で道長の望月歌をうっかり書いちゃったとか(お蔭で現代まで伝わりました)、
1019年のお正月に養子の資平が藤原彰子を訪問したら為時女が取り次いだとか
(お蔭で紫式部がこの頃まで生きていたと現代人は知ることができています)、
はやくその辺りも読んでみたいものだ。

…とか楽しんでたら国立公文書館さんが小右記の画像をツイートしてた、何というタイムリーな。
982年1月1日の画像ですから円融天皇の物忌みがあった日で
公卿は本来慶賀を奏上するのにしなかった、旧事を知らんのかと正月早々文句言ってる記事です。
このとき実資たん26歳。
今日は日記の日でしたか…入唐求法巡礼行記、土佐、紫式部、更級、
アンネやオルコットの日記あたりをまた読みたい。
そして…いつかどなたか出してください明月記の全現代語訳を~~!(他力本願)
| 古典・歴史 | COM(4) | TB(0) |
2016-05-10 (Tue)
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六本木ヒルズ展望台スカイギャラリーで開催中の美少女戦士セーラームーン展に行ってきました☆
初日から大行列と聞いていましたがGWも終わったし、そろそろ大丈夫かなと思ったので。
わたしはアニメから入ってなかよしの原作を読み始めて最後まで追いかけた派で
アニメ後期やミュージカルはよく知らなくて全部はわからなかったけど、それでも楽しかったです☆
写真は入口のロゴ。細い三日月がアニメのサブタイトルバックみたいできれい!

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エントランスはシルバーミレニアムのお城をイメージした展示になっていて
コミックス完全版の表紙を飾ったタペストリーが下がっています。
これ満月の夜とかに見に来たら最高のシチュエーションですな。

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セーラームーンのバックに東京タワー。
たいへん!誰かと視線がかち合ったら異世界へ飛ばされちゃうよ!(それ別のアニメ)
(東京タワーでレイアース展やったら何の冗談かと言われそうですが楽しいだろうなと思う)
相変わらず見晴らしがよくて、マンガの舞台は麻布十番なのでここからもよく見えました。

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セーラー戦士たちのパネル☆
この前に大きなカメラが設置されて、スタッフさんが無料で写真を撮ってくれて
小さなカードにプリントして持ち帰ることができます。
皆さん「愛と正義の…」のポーズや「月に代わっておしおきよ」のポーズとか取ってて楽しそうでした^^

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セーラー戦士パネルの足元のガラスケースにはなかよしや原作コミックスに混じって
アニメから派生した絵本やコミックス、フィギュアやぬいぐるみ、文房具からおもちゃなどが
ぎっしり並んでいました。
「これ持ってた!」「なつかしいー」「今も持ってる」的な会話がたくさん聞こえてきた^^
(展覧会の内容上、鑑賞者はわたしと同年代がほとんどで
お友達同士やカップルやベビーカーを押すお母さんたちなどでしたが
シックな方フリルな方ゴスロリな方コスプレみたいな方などファッションは多彩だった)
ゲーム「場外乱闘!主役争奪戦」のプレイ画面がスト2そっくりで
やっぱあのゲームの影響は計り知れないなあと思わざるを得なかった。

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アルテミースっ☆
アニメージュは何度もセーラー戦士が表紙を飾っていたなあとなつかしく思い出すと同時に
巻末のキャラクター投票ではるかさんが数年にわたり君臨していたなあとやっぱりなつかしく。

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今回の展覧会のために武内直子氏が描きおろしたプリンセス・セレニティのタペストリー。
当時と変わらずしっとりキラキラした色づかいで
銀が主体ではないのに銀色に見えるのはさすがだなと思う。
セレニティはアナログ、アクセと背景はデジタルで仕上げられているのが近くで見るとわかるけど
遠くからだと色が混ざって全然違和感がなかった。
大きく引き伸ばしてくれるとデジタルでもタッチがわかりますから、効果などの勉強にもなる。

sailormoon5.jpg
みんなの憧れ、ムーンスティック☆おととし発売されたものです。
子どもの頃に見たままに再現されているのが高ポイント☆
当時はこれが欲しくてもなかなか買ってもらえなくて、友達に借りて一緒に遊んでいた覚えがあります。
わたしが持っていた銀水晶(これは買ってもらえた)をセットすると光と音が変わったのだ。

sailormoon6.jpg
こちらも最近発売の聖杯・レインボームーンカリス。
ガラスケースの展示なので浮いてるみたいに見えて、むちゃくちゃきれいだった。

セーラームーン公式年表パネルはクイーン・セレニティからセーラーコスモスまで
原作のストーリーが大まかにまとまっていたし、
コミックスのカットをまとめたスペシャルムービーも気づいたら3回くらい見ていた。。
第1話をカラー化した原稿パネルは全ページが展示されていて
当時ワクワクしながら読んでいた気持ちを思い出せました。
モノクロマンガに色がつくと生き生きして見えるねえ。
うさぎが初めてセーラームーンとして名乗りを上げるシーンが大きく引き伸ばされていて
わたしの大好きなシーンなのでうれしかった。
ひとつ発見があって、当時はムーンフリスビーだったセリフがムーンティアラブーメランになっていて
あっそうか、それでクリスタルアニメはフリスビーじゃなくブーメランだったのかと理解できました。
フリスビーはアニメではムーンティアラアクションに変更されているので
初版の原作Onlyの貴重な技なんだな~。
第1話が掲載されたなかよし1992年2月号もあって
表紙のセーラームーンもかわいいのですけど、他の連載陣を見ると→こちら
きんぎょ注意報もミラクルガールズもわんころべえも同時期にやってたんだなあと思って
ぐわっと懐かしい気分になって
さらに隣の展示ケースにはなかよしのふろくに懸賞グッズ、応募者全員サービスなどもあって
思わずうおおおおおって叫ぶところだった。
サービスと言いながらしっかり切手(後に郵便為替になった)でグッズ分の料金を取っていた
あの応募者全員サービスというやつ!!
ちびうさの時空の鍵と鏡(マジックミラーになってて日光を反射させて壁に当てると月マークが映る)とか
持ってたよまったくもう~~いつの間にかどこかへやってしまったけど。
ふろくはノートにトランプにレターセットなど、懐かしすぎて手に汗かいた。

アニメコーナーは92年にアニメ化されたときの制作資料や
当時発売された変身グッズ、フィギュア、着せ替え人形、お菓子、ステーショナリーやインテリア家具などが
壁と展示ケースにぎっしり。
壁一面に貼られた設定資料や当時の雑誌切り抜き記事からスタッフの奮闘がうかがえます。
背景画やキャラクターデザイン画は家具の配置、髪の毛のハイライトとか目やアクセの色とか
制作にあたっての指示が「ほ~こういう考え方なのか」とかわかって好きなのですが、
たまにスタッフさんの遊び心あふれる何気ない書きこみがあって楽しい。
ジュピターちゃんのアンテナは「たまに出して敵を倒します」みたいなことが書いてあったり
ブラックレディの布は天女の羽衣みたいにヒラヒラさせたり手に持たせるなど臨機応変に!とあったり
スーパーズ編でヴィーナスちゃんに「なんとピアスの形が変わりました!」と書いてあったり
デスバスターズ編の全キャラ身長対比画の土萠教授だけ真っ黒でふふふってなってて
神谷明氏の声が聞こえてくるようだったし、
セーラーギャラクシアの身長が実はスターメイカーと同じくらいだったりするとか
裏設定が色々見られてワクワクした。
各国版セーラームーンのコミックスはフランス語とイタリア語がかろうじて読めたけど
タイ語やスペイン語とかになるともう読めないね…^^;
関連グッズも何から何まで懐かしくて、
ムーンキャッスルとムーン・マーズ・ジュピター・ちびうさ・ルナPのミニフィギュアとかうちにあったよ!
何年も前に親戚のお子ちゃんに差し上げてしまったけど。。
すぐ剥がせるマニキュアとか通信機型ウォッチとか電子手帳とか(当時は電子手帳がやたら流行っていた)
あれもこれも欲しかったなあ、友達と貸し借りしたなあとか色々思い出してしまった。
あとこのゾーンで一番笑いそうになったのはセーラー戦士がプリントされた自転車と
ムーバー「いけいけセーラームーン」です(笑)。
昔なつかしいデパートの屋上遊園地みたいなとこにあった乗り物で
100円入れると音楽が流れて数分動いてくれるアレです→こちらの1分45秒くらいにあります
さすがにもう乗りたいとは思いませんが、
子どもの頃のわたしが見たら乗りたくて乗りたくて気が狂いそうになっていたに違いない。

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ネオクイーン・セレニティとキング・エンディミオンの衣装再現コーナー!撮影できます☆
ウェディングドレスとか作ってるブランドさんが再現したそうです。

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襟や胸飾りの細かさにホレボレ、このまま結婚式の衣装として使えそう。
セレニティのティアラも憧れだったなあ。

アニメ第1話の絵コンテや台本もよかった。
絵コンテは必要最小限のト書きとセリフだけ書いてあるんですが
変身シーンは結構細かく描いてあって完成映像が目に見えるようだったし、
これだけ設計がしっかりしてればあのクオリティになるなあと。
最後のポーズのト書き「決める」で吹きだしてしまった(笑)ポーズじゃないんだ、キメ顔なんだあそこ!
セル画も様々なカットがパネルにたくさんあって
どのシリーズの話か、内容はどんなだったか言えてしまう自分がこわいし
次々に当てていく鑑賞者さんもいてやっぱりこわい(笑)。
この作監さんは毎回きれいで楽しみだったなあとか、あの作画さんは癖が強いんだよなあとか
子どもながらに色々楽しんで見ていたような覚えが。
4つのパネルにびっしり貼られたカードダスのカードが懐かしすぎて泣きそうでした、
亜美ちゃんとかセレニティのキラカード持ってる子は問答無用で尊敬されてたなあ…。
ミュージカルで実際に使われたガーネット・ロッドとサイレンス・グレイブは
たぶんプルートとサターンが実在したら原寸大と思われるようなリアリティで
このロッドで時間止めてみたい、グレイブ振り下ろしてみたい…!という背徳感に襲われかねない。
ミュージカル映像もモニターで少し流れてました~♪
タキシード仮面を大和悠河さんが演じるということで話題になったよね。
劇中で大和さんが実際に着用したエンディミオンの衣装も展示されてて、結構がっちりした作りだった。
最近、復刻や再発売され始めたグッズも展示されてて
フィギュアやコスメやアクセサリーが中心なのは
大人になったセーラームーンファンを意識してのことなのでしょうか。
マスカレイドの扉絵のうさぎ&まもちゃんと、月に座るセレニティの再現率が高くて欲しくなっちゃった。

あとモニターで歴代オープニング&エンディング映像がノンクレジットで延々流れていて
全部で20分くらいあるんですけど結局棒立ちのまま全部見てしまった。。
ムーンライト伝説がやっぱり一番好きですが、セーラースターソングも何だかんだで歌えるので
結構気に入ってたんだろうなあ自分。(武内氏の詞もかっこいいし)
乙女のポリシーむっちゃテンションあがるし、プリンセスムーンや風も空もきっと好きだったし
タキシードミラージュはセーラー戦士たちの斉唱が心震えます!
(挿入歌の夢見るだけじゃダメとか愛の戦士も好きだったなーあと亜美ちゃんの同じ涙を分け合ってとか)
そして92~97年にかけて映像技術が飛躍的に進化していく様を目の当たりにしたぜ…!
特にスーパーズやスターズのキャラの動かし方とか武器の輝きとか、花の舞い散る様とか
ああこの辺りの技術がウテナにつながっていくんだなとか思うと胸熱でした。
幾原氏がRの監督だったと知ったのはウテナを見た後だけど
現在BSで再放送中のRを見ていると、過渡期というか経過というか、自然な流れを感じる。

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お待ちかね!武内直子氏の原画コーナーにきたよ。
キービジュアルにもなっているセーラームーンの足元には直筆サインがありました~かわいい☆
カラーインクで幻想的な雰囲気の初期絵からデジタルに移行された最新まで
なつかしのなかよし扉絵やコミックスの表紙がズラリと。
第2部クライマックスのときの扉絵、ネオクイーン・セレニティがかっこよかった!
うさぎちゃんはプリンセスのときはかわいいけどクイーンになると品格が加わるよね、ほんとかっこいい。
FRaUの表紙にもなった清川あさみさんとのコラボは毛糸と宝石と花がすごく自然に配置されていて
キラキラしていてきれいだった。
ギャラクシア様がめっちゃ美しくて原画を見られたことに感謝。
わたし何気に敵キャラの中でギャラクシア様が一番好きなんですけど(強いし誇り高いし)、
原作クライマックスでセーラームーンが自分の星だと気づくくだりがもう泣けて泣けて。
(スターライツと火球の絵がなかったけど次回の展示替えでは出てくるかな…)
描きおろし原画は2点。→こちら
セレニティはさっき巨大なタペストリーを見たけど原画もやっぱり幻想的だし、
戦士集合絵の、戦士たちが身につけているアクセや桜の花が本物の画像からコラージュされてて
それをアナログとなじませるのではなくあえてそのまま使っていて、でもやっぱり違和感なくて
こういう表現もありだ、と提示された感じがして恐れ入りました。
昔はシールやマステを使ってそういうのも描いたけど、今はデジタルでそれができるんだな…
いい時代になりましたね。

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出口には現在放送中のクリスタル3期のキャラクターパネル☆
等身大のようだったので背比べをしたらわたしはジュピターちゃんと身長がほぼ同じで
ウラヌスとプルートは頭一つ大きく、あとの戦士は少し低かったです。ちびムーン小っちゃ!(笑)
わたしにとってのバイブルはやっぱり90年代アニメの声優さんですけど、
クリスタルも見慣れてきたのでキャラデザを見れば今の声優さんの声が聞こえるようになりました。
緒方さんと勝生さんのウラネプは永遠ですが、皆川さんと大原さんのウラネプも超かっこいいんじゃ…!
特にてよだわ言葉でしゃべるはるかさんをアニメで見たかったので
再現してくれたクリスタルスタッフには大感謝しています。

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ギャラリーに併設しているカフェが期間限定でちびうさカフェになっています☆
セーラー戦士をイメージしたお料理が食べられるのでやって来ましたが
入場待ちの行列ができていて30分ほど待ちました。

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カフェにin!
テーブルにはセーラー戦士とタキシード仮面がランダムにプリントされていて
わたしはちびムーンとブラックレディのお席でした^^

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3種のタリスマンカリー☆
イカ墨(甘口)、イエロー(中辛)、ほうれん草(辛口)のカレーの上に
プルートのガーネットオーブ、ウラヌスのスペースソード、ネプチューンのディープアクアミラーが乗ってます。
カレーの色がそれぞれの髪色のイメージになっててすばらしい☆
そしてネプチューンめっちゃ辛かった;;あまりしたことないんだけどお冷のおかわりしました。
(あと食べてる時に思い出したのですが無限学園は無限州(天王洲がモデル)にあるわけで
東京タワーの向こうだから六本木からもだいぶ近いなと思った)

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天空のミラクル・ロマンスパフェ☆
展覧会のキービジュアルをイメージしたパフェで
アイスとパイ生地とイチゴとクリームの下に4層のゼリーがぎっしり詰まってます。
なんだか仙台藩主の兜みたいな月が印象的。ゼリーのグラデーションがすばらしいんじゃ!
白クリームと青ゼリーのところにリボンがついてるのがセーラー服の襟みたいで絶妙な配置☆
月とリボンはチョコレートでした。

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てっぺんのフランボワーズのソルベ!この日はアイスクリームの日でもありました。
普段はあまりアイス食べないんですが、こういう時はなぜか食べられる( *´艸`)ベツバラ
他にも変身ブローチをイメージしたハンバーガーとか、ルナPボールのケーキとかの食品サンプルが
入口に展示してあったので写真いっぱい撮ってしまった。
タキシード仮面のパスタ、バラが散らしてあるパスタって初めて見ました^^;どんな味だろう。
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2016-03-31 (Thu)
#春の読書好き五十音フェア なるハッシュタグをTwitterで見かけて面白そうだなと思ってやってみました。
すでに呟き済ですが、うっかり「む」を入れ忘れてツイートしてしまったのと
140字では入り切らなかった本もついでに入れて完全版を作りたかったので記事にしようと思います。
(最初は1文字につき1作品に絞って頑張っていたけど好きな本多すぎて途中で頑張れなくなりました、
我慢は精神衛生上よろしくありませんので欲望のままに書くよ)
ではいってみよー。

あ:『赤毛のアン』ルーシー・モンゴメリ、『アギーの祈り』濱野京子、『アサギをよぶ声』森川成美、『天と地の方程式』富安陽子
い:『家守綺譚』梨木香歩
う:『うろんな客』エドワード・ゴーリー
え:『営繕かるかや怪異譚』小野不由美
お:『オリビア』イアン・ファルコナー、『鬼の橋』伊藤遊、『陰陽師』夢枕獏
か:『鏡のなかの鏡』ミヒャエル・エンデ、『かぎばあさんの魔法のかぎ』手島悠介、『華氏451度』レイ・ブラッドベリ、『風の陣』高橋克彦、『カブキブ!』榎田ユウリ、『髪結い伊三次捕物余話』宇江佐真理、『カーテン』アガサ・クリスティ
き:『きもの』幸田文、『霧のむこうのふしぎな町』柏葉幸子、『ギャシュリークラムのちびっ子たち』エドワード・ゴーリー、『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
く:『くちびるに歌を』中田永一、『クラバート』オトフリート・プロイスラー、『グリーン・ノウの子どもたち』ルーシー・ボストン、『車のいろは空のいろ』あまんきみこ、『黒ねこサンゴロウ』竹下文子
け:『獣の奏者』上橋菜穂子
こ:『こわれた腕輪(ゲド戦記)』アーシュラ・K・ル=グゥイン、『コンビニたそがれ堂』村山早紀
さ:『さんぞうほうしのかえりみち』せなけいこ
し:『シノダ!』富安陽子、『少女海賊ユーリ』みおちづる、『地獄変』芥川龍之介、『シャガールと木の葉』谷川俊太郎、『十一月の扉』高楼方子、『十二国記』小野不由美
す:『スイミー』レオ・レオニ、『砂の本』ホルヘ・ルイス・ボルヘス
せ:『精霊の守り人』上橋菜穂子、『絶海にあらず』北方謙三
そ:『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティ、『空色勾玉』荻原規子
た:『タンタンタンゴはパパふたり』ジャスティン・リチャードソンとピーター・パーネル、『檀林皇后私譜』杉本苑子
ち:『ちいさいモモちゃん』松谷みよ子
つ:『つるばら村のパン屋さん』茂市久美子
て:『天山の巫女ソニン』菅野雪虫
と:『時の旅人』アリソン・アトリー、『図書館ねこデューイ』ヴィッキー・マイロン、『図書室で暮らしたい』辻村深月、『鳥彦』今野寿美、『ドルフィン・エクスプレス』竹下文子
な:『直樹とゆう子の物語』松谷みよ子、『夏への扉』ロバート・ハインライン
に:『庭師の娘』ジークリート・ラウベ
ぬ:『ぬいぐるみおとまりかい』風木一人
ね:『猫語の教科書』ポール・ギャリコ
の:『農場に暮らして』アリソン・アトリー
は:『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ、『花闇』皆川博子、『晴れた日は図書館へ行こう』緑川聖司、『パディントン発4時50分』アガサ・クリスティ
ひ:『緋色の研究』コナン・ドイル、『ピーターラビットのおはなし』ビアトリクス・ポター
ふ:『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル
へ:『碧空の果てに』濱野京子
ほ:『ボッコちゃん』星新一
ま:『魔女の宅急便』角野栄子、『魔法使いハウルと火の悪魔』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
み:『緑の精にまた会う日』リンダ・ニューベリー
む:『ムーミン谷の彗星』トーベ・ヤンソン
め:『名探偵カメラちゃん』ディビッド・アドラー
も:『モモ』ミヒャエル・エンデ
や:『闇の左手』アーシュラ・K・ル=グゥイン
ゆ:『床下の小人たち』メアリー・ノートン
よ:『倚りかからず』茨木のり子
ら:『ライラックの花の下』ルイザ・メイ・オルコット
り:『りんごかもしれない』ヨシタケシンスケ
る:『ルリユール』村山早紀
れ:『レッドデータガール』荻原規子
ろ:『路地裏のあやかしたち』行田尚希
わ:『わからん薬学事始』まはら三桃、『和菓子のアン』坂木司

小説と絵本と詩集が混ざってますが、基本的には読みもの中心です。
「あ」「く」「し」「と」「は」が好きなタイトル多すぎてめちゃくちゃ悩みまくりました!
パッと思い出してすぐ埋まるのとなかなか思いつかないのと差が激しい、けど楽しい。

ついでに漫画もやってみよう。

あ:『赤髪の白雪姫』あきづき空太、『赤ずきんチャチャ』彩花みん、『あさりちゃん』室山まゆみ、『ARIA』天野こずえ、『アルテ』大久保圭
い:『犬夜叉』高橋留美子
う:『嘘解きレトリック』都戸利津、『詠う!平安京』真柴真、『ウラカタ!』葉鳥ビスコ
え:『E'S』結賀さとる、『X』CLAMP、『えへん龍之介』松田奈緒子
お:『王国の子』びっけ、『おいらんガール』響ワタル、『鬼さん、どちら』有永イネ
か:『カードキャプターさくら』CLAMP、『怪盗セイント・テール』立川恵、『かげきしょうじょ!』斉木久美子、『風の谷のナウシカ』宮崎駿、『鞄図書館』芳崎せいむ、『かぶき伊左』紗久楽さわ、『ガラスの仮面』美内すずえ
き:『鬼外カルテ』碧也ぴんく、『きのう何食べた?』よしながふみ、『銀のトゲ』喜多尚江、『銀の匙』荒川弘
く:『くるねこ』くるねこ大和
け:『結界師』田辺イエロウ
こ:『胡鶴捕物帳』片桐美亜
さ:『さよならソルシエ』穂積
し:『重版出来!』松田奈緒子
す:『スパイラル~推理の絆~』城平京・水野英多
せ:『戦国ストレイズ』七海慎吾、『千年万年りんごの子』田中相
そ:『総員玉砕せよ!』水木しげる
た:『たまゆら童子』佐野絵里子、『たむらまろさん』ユキムラ
ち:『千歳ヲチコチ』D・キッサン、『チンプイ』藤子・F・不二雄
つ:『TWIN SIGNAL』大清水さち
て:『天上の虹』里中満智子
と:『東京BABYLON』CLAMP、『東京物語』ふくやまけいこ、『翔んで埼玉』魔夜峰央
な:『夏目友人帳』緑川ゆき
に:『20世紀少年』浦沢直樹
ぬ:『』
ね:『猫嬢ムーム』今日マチ子、『猫絵十兵衛御伽草紙』永尾まる
の:『のだめカンタービレ』二ノ宮知子
は:『ハイキュー!』古舘春一、『鋼の錬金術師』荒川弘、『BIRDMEN』田辺イエロウ、『PandoraHearts』望月淳、『パタリロ』魔夜峰央
ひ:『日出処の天子』山岸涼子、『美少女戦士セーラームーン』武内直子、『ひなぎく純真女学園』ふくやまけいこ、『ヒノコ』津田雅美、『ヒカルの碁』ほったゆみ・小畑健、『ピーナッツ』チャールズ・シュルツ
ふ:『フルーツバスケット』高屋奈月、『ぶっしのぶっしん』鎌谷悠希、『BLACKJACK』手塚治虫、『文豪ストレイドッグス』朝霧カフカ・春河35、『プライベートアイズ』野村あきこ
へ:『ベルサイユのばら』池田理代子
ほ:『封神演義』藤崎竜、『ホイッスル!』樋口大輔、『ぼくの地球を守って』日渡早紀、『ポーの一族』萩尾望都
ま:『魔法騎士レイアース』CLAMP、『まぼろし谷のねんねこ姫』ふくやまけいこ
み:『耳をすませば』柊あおい、『ミントな僕ら』吉住渉
む:『向ヒ兎堂日記』鷹野久、『夢幻伝説タカマガハラ』立川恵、『蟲師』漆原友紀
め:『名探偵コナン』青山剛昌
も:『もやしもん』石川雅之
や:『ヤマノススメ』しろ
ゆ:『幽遊白書』富樫義博
よ:『夜明けの図書館』埜納タオ
ら:『らんま1/2』高橋留美子
り:『聖伝(リグ・ヴェーダ)』CLAMP、『竜のかわいい七つの子』九井諒子
る:『るろうに剣心』和月伸宏
れ:『』
ろ:『倫敦館夜想曲』野村あきこ
わ:『ワールドトリガー』葦原大介

何だか小説絵本ver.より節操なくなってしまった…選べなかった。
「ぬ」と「れ」が思いつかない、何かあったかな??
思いついたり、他にも「あ、これ」と思い出したら足していくかもです。


【問題】なぜ同じ作家の本がいくつも入っているのか?
【答え】同じ作家の本ばかり読んでいたから

基本的にわたしは昔から作家読みをしていて、
ひとつの作品を読んで気に入ったら「この人ほかにどんな本書いてるんだろう」と興味がわいて
過去作を一通り読みとおす場合が多いです。
最近になってようやく作品読みができるようになってきまして
色んなジャンルに手を出すようになったかなと思います。
あと、一度気に入った本は3回は繰り返し読みますので
「趣味は読書」とはいえそんなにたくさんの数を読んだわけではないですね。
初読でワクワクし、2回目で伏線や読み落とした部分を発見し、3回目は内容を忘れた頃に読むのが楽しい。
ので、人から「おもしろい本教えて」とか言われると大変困惑します。。
一応、相手に興味の範囲を聞いて、わたしの範囲と似ていれば薦めやすいですが
人間十人十色ですから少し違ったり真逆だったりすることの方が多いですし、
何よりわたし自身がそんなに数を知らないので偏ってしまわないか心配。
それでも、取っかかりになればといくつか列挙してみて
相手が読んで有意義な時間だったと思ってもらえればうれしいし、
もしそうならなくてもそれはタイミングが悪かったりご縁がなかっただけなので
特に落ち込むことはないです。(昔は落ち込みましたが)
次の機会にはもうちょっとうまくやれたらいいな、とは思いますけども。
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2016-03-23 (Wed)
単行本の完結巻が去年発売したばかりだったので
文庫になるのは2~3年先かなあと呑気に考えていたのですが、
先日、書店の漫画文庫コーナーをふらりと眺めたらなんと発売されていましたので
びっくりしてそのままレジに『天上の虹』文庫最終巻を持って行きました。
会計を終えて奥付を見たら去年の11月刊行だった…知らなかったよ…。
あの時ほんとに、ほんとにふと文庫コーナーに足が向いてよかった、でなきゃ気づかないままだった。

tenjoniji.jpg
並べると壮観。

『天上の虹』は持統天皇が生まれてから死ぬまでの57年の生涯を
史実とフィクションを織り交ぜて描かれた歴史漫画です。
わたしは普段、そんなに歴史小説や漫画を読む方ではないのですが
この漫画は読ませる力が強くて読み始めると止まらなくて、
「そういえばあのセリフが」とか「あの場面どうだったっけ」とか、何かのきっかけでページを開くと
最初からだろうが途中からだろうがキリのいい部分まで読んでしまう。
額田王と柿本人麻呂がすごくいい立ち位置で、忍壁とか大津皇子とかも好きですが
やっぱり惹きつけられてしまうのは主人公の持統天皇かなあ。
万葉集の歌がいくつか、さらりと、しかし印象深く残るように使われていて、そこも見どころかと。

七人の侍やガンバの冒険みたいな「社会的に弱い立場の者たちが力を合わせて理不尽とたたかう」話は
たいへん燃えるゆさでありますが
「社会的に上に立つ者の立場ゆえの力と苦悩」のようなものを描いた作品も大好きだったりします。
天上の虹も、天智・天武・持統の3人が感情よりも政治を優先せざるを得ない部分を描きつつ
時折垣間見える優しさや情愛や苦悩がうまく緩急を作り出しているので
読んでいて飽きません。
どの人物も人間として複雑かつ深く描かれているのがいいなあと思う。
誠実に国づくりをしたいと思っていてもいざという時はシビアにならなきゃいけなかったり
でも感情で納得できなかったり、必死に言い聞かせながら執行したり
晩年にはその揺らぎもだんだん失っていく持統天皇から目が離せません。
氷高皇女や、後半の但馬皇女もそんな感じだなあ。
逆に草壁皇子や文武天皇は感情をコントロールできない誠実な人たちとして描かれていて
個人的には彼らの気持ちの方がわかる気もする。
そんな風に振り回されてしまう人や、抗おうとする人、支える人、静観する人など本当にたくさんの人間がいて
全員性格も考え方も描き分けられていて被ってないのすごい。
史や三千代など欲望のままに生きる人のことも憎めないのは里中さんのまなざしの暖かさというか
「人間誰しもそういう感情はある、でも行動に起こしたら想像以上の化学反応が起きる」ことを両立させて
誠実に描いていらっしゃるからのようにも感じます。
三谷幸喜さんとか、宮藤官九郎さんとかもそうだけど。

ストーリーや演出もさることながら、里中さんの絵やページ構成の力も強いと思う。
「教科書で」「写真集で」「研究書で」「美術館や博物館で」「別の作品の挿絵で」見たもの知ったものが
衣装や髪型はもちろん、小道具や建物まで細かく再現されていて見ごたえがあります。
女性たちの衣装は、前に平城京遷都1300年祭の衣装体験で着たなあとか
藤原宮子のベッドは正倉院展で見た聖武天皇のベッドみたいだなあとか。
あと、いわゆる「歴史書の行間」におけるドラマの作り方が濃いです。
たとえば10月にある場所にいた主人公が、11月に別の場所にいるまでの間にこんなエピソードがあって
それが後々、史実のこの出来事に関わってきてどんな影響を及ぼすのか…みたいな。
一瞬、ぎょっとするようなエピソードもこの漫画においては必要だったんだと思わせるような
説得力が随所にあります。
もちろん、それらは里中さんの解釈なので様々な意見があると思いますが
わたしはこういう漫画だからなーと思って読んでいたので特に気になりませんでした。

エピローグに、後世に盗人によって天武・持統陵から持ち出された持統の骨壺から
骨だけが山の中に捨てられて壺が戻されたというエピソードが紹介されていました。
天武・持統陵は10年以上前、飛鳥を旅行した際に訪れたら
木がもっさり生えてて森のようだったのを覚えています。
その日はちょうど晴天にめぐまれたのと、とても静かな場所だったのでまたお参りに行きたいな…。

というわけで記事タイトルは完結記念に百人一首2番です。
(万葉集は「夏来たるらし」ですがわたしが慣れ親しんでいるのは百人一首の「来にけらし」なのでこちらを引用)
里中さん32年間の執筆本当にお疲れ様でした。
掲載雑誌が休刊になって引越し先も休刊、他のお仕事とも併走しながら描きおろしで続けられて
参考文献は1500冊を超えたため巻末に記載できなかったそうです。いやはや。
(確か夢枕獏さんの『沙門空海~』もそんな感じで何年もかけて完結したんじゃなかったかな…
来月に歌舞伎座で染五郎さんが演じるので観に行きたい)


わたしが持統天皇を初めて知ったのは百人一首だったように思います。
子どもの頃に姫めくりや坊主めくりで遊んでいたし、
2番目の歌だったこともあって(1番目は天智天皇ですね)覚えやすかったんですね。
学校の古典の授業で「できるだけ数を暗記してこい」的な宿題が出たときにまったく覚えられなくて
(今でこそ歌の鑑賞も人物の研究も好きですが、当時のわたしは
「この人どんな人生送ったんだろう」的なパーソナリティの方に興味があって歌は二の次だったんです)、
「とにかく女性の歌だけでも覚えよう!」と女性の歌人たちの絵札を引っぱり出して書き写して
やっぱり最初に覚えたのも持統天皇でした。
万葉歌人の特徴ですが、言葉が平易でわかりやすかったのと景色がありありと想像できる歌で
今もそらで詠じられるし書けます。
ちなみに次に覚えたのは小野小町で、その次に覚えたのは式子内親王か小式部内侍だったような…
前者はカラフルな絵札とセットで歌も覚えた感じで、後者は内容に強さを感じて。
好きな歌は紫式部のと伊勢大輔の。情景が美しいから。


そういえば先日、竹宮恵子さんの自伝『少年の名はジルベール』を読んでいたら
手塚治虫からCLAMPまで、色んな漫画家さんのお名前が随所に出てきておもしろかったです。
「戦国時代のようであった」らしい出版社の記念パーティや謝恩会会場では
「講談社は里中満智子さん、大和和紀さんの2人が時代を席巻して一歩リードという雰囲気を濃厚に漂わせていた」
なる一文がp.128にあってもう、光景がありありと目に見える気がしました。
別に出版社のパーティに行ったことあるわけじゃないんだけど。
(しかしこの本すごく読みごたえあります…文章に熱があって血が流れてる気がする。
風と木の詩を連載にこぎつけるまでの編集部との攻防が手に汗握るし、
山岸涼子さんたちとのヨーロッパ旅行の取材はこっち(読み手)の五感も刺激してくる文だし
ファラオの墓は時代考証をしっかりしつつ面白さを優先して嘘をついた部分もあるとか…
「仏の嘘を方便と言い、武士の嘘を武略と言う」と言ったとされるのは明智光秀ですが
漫画家の嘘は演出と呼ばれる日が来るかもしれないね。
そしてそんなに詳しく描かれているわけではないはずの萩尾望都さんの存在感が
全ページにわたり濃厚に漂っているのもすごい。
モー様は先日、「浦沢直樹の漫勉」で筆致を拝見できてしあわせでした。ポーの一族読み返したい)
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2016-02-10 (Wed)
森川成美さんの『アサギをよぶ声』全3冊を読みました。
スカイエマさんの力強いタッチの表紙にひかれて何となく読んでみたら
続きがどんどん気になってワーッと一気読み。
古代日本のような世界観の、ひとりの少女の生きざまを描く物語です。
(人生でも生き方でもない、生きざまって感じだなと読み終えて思いましたので…
シンプルなタイトルの児童書ですが内容はすっげえ硬派でハードボイルドだった)

「男だったらよかった」とか親に言われる、紫式部日記のような書き出しに始まり
弓矢で獲物をとり布を織り金銭ではなく物々交換で生計が成り立つ時代の小さな村が舞台。
子どもたちは12歳になると成人扱いされて男の子は男屋に入って戦士になるため武術訓練に励んで
女の子は女屋に入って機織りの仕事をする…みたいなルールが
アサギの「戦士になりたい」という行動とともにさりげなく説明されて
だからハヤがアサギを追い払わなかったときは「よっしゃあ話が動き始める!」と胸が熱くなりました。
男屋の男の子たちがエスカレーター式に戦士になれるのを羨ましがりながら
夜な夜なハヤのもとに通って矢尻作りと「モノノミカタ」を習得していくわけですが、
毎日訓練ができる男の子たちと違ってアサギはハヤに毎日会えるわけじゃないから
どうしても遅れを取ってしまう。
それでも男の子たちとの何気ない会話や山で出会った猿との交流、時々聞こえる声を通して
「物事をありのままに見て、なにものにもとらわれずに意味を考え」られるようになっていく姿は
翼を手に入れたかのようで、知識は武器だなあと改めて。
戦士になるための競い合いに出場して勝ち抜いても
長老たちの反対にあって結局その時は戦士にはなれなかったけど、
その現実をまずは見つめてまた別のアプローチをかける姿勢に彼女の本気が見えて泣けた。
わたしは弓を射たことはないけど、「バスッ」のト書きはお腹に響いたな…。

タイトルにもある「声」をアサギやハヤが聞くのは無意識の具現化というか、
単に人より働く勘が声となって聞こえているようにわたしには思えたのだけど
その感覚に体が追いつけるのは本人の能力だと思う。
的を見たとき、どこにどれだけの力で矢を放てばいいかすぐわかってしかも完遂できる感じ。
(ハイキューでスパイカーが「(打つポイントが)見える」と言って綺麗にスパイク決めたりしますけど
あれに近い気がします)
ああいう現象がスピリチュアルなのかオカルトなのか、いわゆる「天に愛された」的なものか
わたしにはわかりませんけども
「今だ」「そこだ」「ちがう」など単語が多いのが古事記の一言主みたいだなって思うし
無骨な雰囲気も相まって古代っぽくてじわじわくる。
アサギはまだ子どもなので声をたよりに矢を放ってるけど、
いつか弓の名手になったら聞こえなくなるのかもしれないな…。
で、また別の新しいことを考えたり学ばなきゃならなくなったら、また別の声が聞こえるんだと思う。

ハヤのかっこよさは本人の生き方と物の見方からにじみ出ている。
山頂で火をたく夜の見張りをしながら、アサギの話をちゃんと聞いてくれて
戦士の仕事とアサギの能力と、やるべきことを具体的に示して見守ってくれるし
アサギの力量を「女の子だから」ではなく「今のこいつの力はこのくらい」的な計り方なのもいい。
1巻のラストで、仲間にするみたいな仕草でアサギの肩を抱くシーンが好き~。
読みながらなんとなく精霊の守り人のジグロを思い出していたのですが
(亡くなった親友の娘を教育するおじさんという点で共通しているなと)、
ジグロはほぼ放任してたけどハヤはつかず離れず的な関わり方ですね。
最後は諦めないでほしかったけどかっこよかった…!
あの村人たちの中にあって、彼が自分の考えを保ちながら立ち位置を確保できているのは
本人の訓練と昔からのルールがあるせいかな。
風立ちぬの「会社は全力で君を守る、君が役に立つ間は」のセリフではないですが
戦士として強いことが支えになってる部分はあると思う。

イブキとアサギの関係、イブキがアサギの気持ちを半分もわかっていなかったように
アサギもイブキの気持ちをほとんど理解できてなさそうだけど
向いてる方向が一緒なのでこれからも話し合いながらいい関係を築いていくんじゃないかと。
サコ姉さんはたぶん、アサギの生き方にはついていけない人ですが
ストレートにアサギを大切に思ってて必ず味方でいてくれるのが船を待つ港のようで好き。
ヤチとタケはいい関係だったと思うんだけどなあ…!
巫女のおばあちゃんは物語の中盤、アサギの話を聞いて頼りにしてくれるようになったら
大好きになりました。
おばあちゃんは昔アサギだったんじゃないかな…と思えるくらい話ぶりが現実的で
過去に色々諦めたり譲らなかったりしたような印象が個人的にはありますがどうなんだろう。
アサギたちが出陣するとき、舞は省略するけどお祈りだけねってしてくれるのがいいなー。
あと、何気に好きなのは機織りのおばあちゃんとナータ。
おばあちゃんは兵糧支度の手際の良さがめちゃくちゃかっこよくて
きっとダイとハヤを怒鳴りつけながら見守って来た人だろうなと思う(╹◡╹)。
ナータは「戦はいい商いになるの」のセリフでガチだ!って思ったし
経験に裏打ちされたリスクマネジメントからちょっとやそっとじゃ動じなくてまさに「商人」って感じ。
アサギと同じようにロールモデルを持たない彼女だから
何にもとらわれずに見て考えて判断する癖が無意識についてそうで
主体的に生きてますね、たくましい。
アサギに商売の仕組みや舟の漕ぎ方を教えるシーンがほほえましい。

読んでるうちにこれはやばいんじゃないかと思ってたことが杞憂に終わったのもよかった。
なりたくてたまらなかった戦士が、どういう仕事かわからない時ほど憧れて
おばあちゃんに「おまえを戦士にする」って言われた時には嫌というほど知ってしまった後なので
全然うれしくないってアサギの気持ちがとにかくリアルでした。
実際なっても、今度は「新米だから」と話を聞いてもらえなくて
やりたいことのためには戦士である必要はないかもしれない、とあっさり見切りをつけたり
みんなを不安にさせないために大言壮語なこと言わなきゃならなかったり
逆にみんなをまとめておくために言えないことがあったり
倒れている人(味方か敵かもわからない)の背中から矢を取って使ったり
何もかもが初めてな中でアサギが考え、声を聞きながら戦うのもものすごいリアリティ。
すべてが終わってもアサギが勝利者を自覚しないのもよかったし、
終わりではなく始まりを迎えたところで終幕なのは
レッドデータガールや風の万里黎明の空とかもそうじゃなかったっけかな。
アサギは今後、攻殻機動隊の素子さんみたいな人になっていくのか
それとも獣の奏者のエリンみたいになっていくのかどうか…ちょっと読みたい気もする。

スカイエマさんの表紙と挿絵めっちゃかっこいい~。
児童書やYAコーナーでよく見かける方ですが一般図書の装画も手掛けてらっしゃるようです。

「歌えや歌え 祈れや祈れ さあ 言葉よ命になれ
あらゆる軌跡 あらゆる出会いが 私を守ってる」
(鬼束ちひろ「The Way To Your Heartbeat」より)

そういえば猿が出てくるから申年にぴったりですね、この本。
あの猿たちは要所要所でアサギに道案内するのがいい、あとしゃべらないのがポイント高し。

他にも『さる・るるる』『おさるのジョージ』『タンタンのぼうし』『おさる日記』『ひとまねこざる』
『西遊記』『古事記』『地獄変』『天と地の方程式』あたりもよさそう。
あとドンキーコングやりたいし猿之助さんのお芝居もいっぱい見たいー!
(『猿之助、比叡山に千日回峰行者を訪ねる』はたいへん有意義な内容でした)


sansetsu.jpg
先月東博で見た、狩野山雪「猿猴図」。
猿猴捉月の故事がモチーフになってて下に水面のゆらゆらがさりげなく描かれていますが
なんかこのお猿さんは落ちなさそう…(笑)。
墨のにじみがすばらしくて、体毛のフワフワまで感じられたな~ナマ絵は、よい。
| 絵本・児童書 | COM(0) | TB(0) |
2015-11-13 (Fri)
雪見だいふくモンブラン味がとてもお上品な味わいで感動したゆさです、こんばんは。
クッキー&クリームはピンとこなかったけど、モンブランはモンブランだった。おいしい☆
1個分けてあげて食べた弟の感想が「ロッテかっけぇ」だったことをここに記します。
キャラメル味は試してませんが生チョコレート味もおいしかったので
箱もいいけど2個パッケージも出ないかな。


図書館総合展に出張してきたのですが、出展や参加者の情熱もさることながら
フォーラム会議室に並べられた机や椅子やPCやマイクを見ると
今日までにセッティングした人たちがいたんだなぁお疲れ様です…と思う癖が近頃つきました。
これが大人になるということです。
あと、みなとみらい駅の観覧車きれいだしクリスマスツリーが大きくて写メ撮ってしまった。

企業や団体さんの出展ブースや大学のポスターセッションもおもしろかったです。
うちの職場もお世話になっているキハラさんのブースがもう毎年のことですが大繁盛していて
今年もレジには大行列ができてました。
フォーラムがパリコレならキハラブースはコミケかデザフェス。ならば買う。買わねばならぬなにごとも。
libraryfair1.jpg
手に取ってレジに並んでるときは楽しくて鼻歌混じりだったけど
帰宅して鞄の中からグッズ引っぱり出したら、なんというかその、頭が冷えました。あわわわ…。
図書館司書キャラクター「コモちゃん」のシールはスタッフさんが譲ってくれました~。
LINEスタンプにもなってるみたいで
殺伐としたTLにブックトラックをカートにした図書館司書が(ry なんてことが起きそう。
貸出カードはメッセージカードになってて封筒がついてるんですが
散りばめられた禁帯出と館内マークの中にひとつだけ貴重書マークがあって胸熱、
来年にはぜひ貴重書マグネットを作っていただきたいものだ。

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去年は売切れで血涙をながした禁帯出マグネットを!ゲット!
キハラブースは「完売御礼」「売切れ」「本日の配布は終了しました」に耐えるメンタルが求められます。
「これありますか」「申し訳ありません…」の会話の近くでラストワンをレジに通すような地獄絵図が
最終日に限らず見られたりするのです。
きょうは閉館しました缶バッジはくじ引いたら出てきたのですが一体どう使えばいいのか、
ぬいぐるみにつけて休館日に入口に置いたら和みますか…?
ちなみにわたしは買わなかったけど禁帯出シールなるものもありますので
よそへの貸出を禁止したい人が周囲にいる方はどうぞ。

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夜明けの図書館も置いてあった。
マンガは現在も連載中で4巻を楽しみに待っているところです。すすめレファレンスマンガ!

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日本財団が今年から始めた「これも学習マンガだ!」の選書がブックトラックに乗っていて
チラシもあったのでもらってきました。
わたしも手元に置いてるマンガがリストにたくさん載ってるし、気になってたのもあるし
タイトルも作者さんも知らなかったのもある。

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分類キャラクター「ブックパンケーキ」のマスキングテープ!近頃流行りのマスキングテープ!
図書館の棚の間を歩いていると「哲学」「歴史」「小説」などの見出しが挟まってると思いますが
あれをキャラクターにしてさらにマステにするという二段構えのキハラさんすごい。
「本棚にぬいぐるみを置くような感覚で」というコンセプトで作られたのに
その後本当にぬいぐるみ作っちゃうのすごい。
クリアファイル売ってたから買ったしチラシももらってきました。ゆるキャラ好きの後輩に布教しなくちゃ。

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帝京大学メディアライブラリーセンターさんの「共読ライブラリー」は4年前から続く展示で
いつも2階建てブースになってて、こちらも分類キャラが活躍している。
しかもそれぞれの分野に1種類とかじゃなく、歴史は王様や探検家がいたり
自然科学には科学者や物理学者がいたりと色んな職業で表現されてておもしろかったです。

他にも色々回りましたが、人が多すぎたのとブースでお話に夢中になったのと楽しかったのとで
あまり写真撮らずに帰って来てしまった。
埼玉福祉会のブースで声優さんがオーディオブックを公開録音してて技術の高さに唸ったり
カーリルさんがソース配ってたりB&Bが北欧家具売ってたりししょまろはんはビラビラしてたり
あちこちでプレゼンやトークやワークショップがあり毎年回り切れずに時間切れになってる気がする。
あと電動棚とか、電子系のブースにペッパーをちらほら見かけました~。
確か山中湖の図書館ではペッパーが職員として働いていたっけな。


そういえば話は変わりますが、世の中には本棚マスキングテープというのがありましてな。
masute.jpg
新宿トゥールズで見つけた時は即レジに連れてったよね!
だからマステ沼は深いって言ったのに…。
ちなみに型抜きで、写真だとわかりづらいかもですが本のサイズに合わせて凸凹しています。
手作業かどうかはわからない。
あとこれ眺めてると「これ分類どうなってんだろう?棚は何層?全集と単行本混ざってない?
棚毎に余裕はありそうだしスピンは全部入れ込んであるな、司書GJ」とか、職業病を発症します。
| その他本のこと | COM(2) | TB(0) |
2015-08-29 (Sat)
前回記事に少し書きましたが、『カブキブ!』おもしろいです。
書店で表紙だけ見かけてなんとなく読まずにいたのですが、
ブロともの春さんがおすすめしていらっしゃったので読んだらどっぷりハマりました。。
高校生!歌舞伎!部活!アツイ!まぶしい!青春グラフィティ!!
歌舞伎大好きな主人公が高校入学と同時に歌舞伎の部活動をやるため走り回るお話で
後先考えず好きなことを思いっきり楽しくやるスタンスが気持ちいいです。
なにより彼らの通う高校の名前が「河内山高校」
(河竹黙阿弥作「天花粉上野初花」に出てくる数寄屋坊主の名前)ってのが、まず素敵よね。

以下とりとめのない所感。
ネタバレせずに語るのが難しくて結構、遠慮なく書いてますので未読の方ご注意ください。


既刊3冊手に入れて1巻の1章分だけ読むつもりでうっかり開いたのが真夜中だったのですが
結局怒涛のようにページめくって、読み終えて時計を見たら3時でした。丑三つ時も過ぎちゃった。
次の日は寝不足(しかし充実した寝不足)でしたが、
歌舞伎座へ向かう電車の中で2巻と3巻を走り抜けるように読んだ!
おもしろさが加速していくんですよ…うっかり東銀座駅乗り過ごすところだった。
タイトルについてる「!」が、大河ドラマ「新選組!」みたいな力強さとポップさがあって
ストーリーも風が吹き抜けていくような朗らかさを感じる。
主人公の名前が黒悟(くろご)っていうのと、芳先輩が立役も女形もできそうっていうのと
蛯原くんが細面で軸が強い体格ってとこであ、この著者さんガチだってわかったし。
あと3巻にいきなり佐々木蔵之介の名前が出てきたんでシートに座ったまま飛び上がりそうになった(笑)、
よく歌舞伎役者みたいな名前って言われるよね。

歌舞伎オタクの黒子兼狂言方、万能すぎる事務方、演劇部のスター、日本舞踊の名取、
神と呼ばれる衣裳担当、暗記が苦手な芝居の天才、研究熱心な梨園の秀才、
まったく初心者のヘタレ顧問にチャキチャキの江戸っ子大向こうおじさんほか
個性的な人たちがワイワイやっててお祭りみたいなストーリーが、王道だけどとっても気持ちいい。
どの人も実際に会いたくなるし、お芝居見てみたいって思う。
演技は大根だけど歌舞伎への愛と情熱のために
どうかするとアクセル全開になりがちな黒悟くんかわいい、カブ友になりたい。
そんな彼をクールになだめるトンボくんも素敵です。
記念すべき初舞台が不発に終わって、ヘコむ黒悟くんにトンボくんがやり甲斐を与えるシーンは
まったくもって胸に刺さるけどひたすら現実って感じしました。
あれは黒悟くんじゃなくてもトンボくんに惚れるわ。

花満先輩の藤娘がどんなにすばらしいかは容易に想像ついたけど、
本人はきっとまだまだ上達したいだろうし、「また毛が伸びちゃって」と折にふれて嘆くに違いない。
丸ちゃんの衣装を誰よりも着こなしているのは彼だと思います…
というか丸ちゃんとオタ友になりたい。というか師匠とお呼びしたい(突然)ついていきます師匠。
阿久津くんと蛯原くんがコインの裏表状態なのは、ドラマチックな生まれも相まって
じれったいし抱きしめたいし背中をばしっと叩きたくなります。愛すべきツンデレどもめ!
読んでいくほどに阿久津くん小学生みたいって思ったけどいざというときの救世主感ハンパないし
蛯原くんもう素直じゃなくていいよそのままの君でいればいいよって思えてきた。
逆に誰よりも二枚目なのは芳先輩だよね~本番に強くて、一人称が「私」なのが好き。
かっこよさの中にパリッと引き締まった強さがある感じ。
ずっと立役かと思ってたら女形にも興味がありそうで、
その声を黒悟くんがちゃんと拾ってて「今度先輩に合う女形考えよう」ってなってて
ああ彼、ほんと演出向きだなって思いました。
村瀬歩さんあたりのハキハキした声でしゃべりそうな気がする。
トンボくんがぼそぼそしゃべるたびに津田健次郎氏の音声で脳内再生されるのなんとかしたい、
ってか、トンボくんと芳先輩の関係いいっすね…キュン
黒悟くん&トンボくんや花満先輩&梨里先輩のような、いつも一緒にいる仲の良さとはまた違って
自立した大人同士の友情みたいな空気を感じる。
いや高校生同士だけど。いいなあ。

黒悟くんが芳先輩と花満先輩を初めての歌舞伎に連れていくのが新橋演舞場で、
個人的な理由からうれしかったです~わたしの初歌舞伎も演舞場だったから(´▽`)。
歌舞伎座は殿堂ですから派手でどっしりしてて、明治座や浅草公会堂は気軽に行けて
演舞場はその中間くらいの劇場ですからちょうどいいんじゃないかな~。
つか寺子屋がデビューですかえらいもん観せますね黒悟くんも、遠見先生に行けって言った正蔵さんも…
たまたまやってたからかもしれないけど。
主君のために子どもを身代わりにする話は「熊谷陣屋」「伽羅先代萩」もそうだなァと思ってたら
3巻で黒悟くんが、歌舞伎好きだったおじいちゃんを亡くした後に見たのが先代萩だと判明して
「歌舞伎座が建替え中だったから演舞場で」のセリフにふと、どうなのかなって調べたら
2011年3月の演舞場で本当に先代萩が出されてました!→こちら
黒悟くんが見たのはきっとこれだね、スゲーなちゃんと調べて書いてあるよこの本!
その後もイヤホンガイド借りるといいとよか、お弁当持ってきたのねとか
ドブ席とはいえ7列目とは奮発しましたなあとか、読みながらどうでもいいことばかり目にとまって
全然先に進めない歌舞伎脳なわたしでした。まったくもう。
観終えた後に芳先輩がソイラテ飲みながら「何で小太郎ちゃん死ぬの!?」とか言ってるのもよかった、
だって真剣に観てくれたってことだから。
でも楽しい部分もみつけてくれて、先輩たちが「やってみようか」って言ってくれたときは
おおやっと物語が始まるぜ!ってワクワクしました。

2巻の外郎売で劇部と勝負するとこ、教頭先生も言ってますが
阿久津くんの外郎売まじ、めっちゃ見たいんですけど…!
「とざい、東西ーーー」で始まるとこ反則だよ、電車で読んでたのに一緒になって節つけそうになった。
暗記が苦手な阿久津くんのためにあれこれ手を尽くす黒悟くんが
正蔵さんの「そんな必死な外郎売はいねえだろ」を聞くまで芝居をさせることに気づかないのは
やっぱり高校生だなって思ったけど
阿久津くんに「おまえに外郎売になってもらう」って宣言して実行するのはしびれた。。
高校生って急に化けるからたまんないですね←
そうそう、正蔵さん、とにかく粋なおじさんで
「今はハンドルネームもアカウントもあるんだから、衣裳担当に屋号があったっていい」とか
「芝居見物にめかしこむのは当然」とか
「あいつらにとっちゃ檜舞台だろ、酒届けたいところだ」ってコーラ届けたりとか。
若者にとってこんな風に応援してくれる大人は貴重ですね。
外郎売は亡くなった團十郎さんのしか見たことないですがすごいですよ→こちら
演劇部の人も叩き上げるようにセリフ読んだんだろうな~アナウンス風だとどんなか聞いてみたい。
すべてはキリコさんの手のひらの上でみんな踊らされてたっていうオチも
キリコさんかっこよすぎて惚れるレベル。

3巻のクライマックスはクロくんやったねーーってなりましたよ今までで最高の盛り上がり。うおおお!
もう蛯原くんのダメ出しが、きみちょっとそれ、完全に役者目線のアドバイスだよ(笑)。
全否定じゃなく演じ手の体格や性格を見抜いて、出し物のためによくしようとしてるのがいいです。
言うだけじゃなく言わない選択もするしね、阿久津くんのためにね^^
数馬くんにアドバイスするときの「続いて次に控えしは!」がヤベーーーーー!!!
節が聞こえてくるようでした…よく通るいい声をしてるんだろうな…。
彼の赤星十三郎が目に浮かぶようです、きっと一番目立たなくて、一番見てしまうと思う。
阿久津くんの力丸も芳先輩の弁天小僧も見たい~~。
稲瀬川勢揃いの場は3月の南座で若手さんたちのを見たけど、
あんな雰囲気で高校生たちが衣装とカツラばっちり決めて舞台に仁王立ちしてるとこ想像すると
正蔵さんが大向こう飛ばしてサイコさんが感動して大泣きする図しか浮かばないですね。

ラスト1文が最っ高な次巻への幕開けになってて、4巻発売がとても楽しみ。
青い目の能楽師だっている時代ですよ!大丈夫。阿久津くんだって最初は金髪で和尚吉三演ったしね。


…さて、話は変わりますが。

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歌舞伎座納涼歌舞伎・千穐楽おめでとうございます☆
仕方なかったんだ金曜日が代休だったんだ、つかなんで金曜日が千穐楽なんだ!
というわけで棒しばり観に行ってきました。幕見で。
あとわたし、今月は家で棒しばりの話ばっかりしてたんですけど
母が「そんなに面白いなら行くわ」ってある日突然チケット取ってました。
いや、前に取り方をレクチャーしたらメモとってたけどさ…いつの間に。

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今回はこの位置から。幕見席最前列に座れました。

よく考えたら千穐楽の観劇って初めてでして、幕が開いたらびっくり。
こんなに気合いが入ってるのかと、舞台からほとばしる熱気が今までと全然違って見えた。
主人に呼ばれて返事をする太郎冠者の第一声がのびるのびる、先週こんな伸びてなかった!ってくらい
みっくんが思い切り伸ばしててやばい、
おちくぼ物語にも出た後なのにこの声量、喉と肺活量どうなってんのって思う。
じゃんけんに負けての踊りも足は鳴るしステップがダイナミック。
次郎冠者が高速でダダッとバックしていって下手ギリギリでぴたっと止まって切り返してくるし
クルクル回りながら戻って来るのも余裕のある笑顔ですごい。
扇を今までで一番高く放り投げてキャッチしてた~勘九郎兄さんブラボー!
役者さんはプロだから信じてるけど無事キャッチできるか毎回ハラハラしました、よかった。
今後おふたりで長いこと踊っていくのかな、どう変化していくのか楽しみです。

歌舞伎座の外で母と落ち合いましたら(彼女は1階席でおちくぼと棒しばり両方とも観た)、
「七之助きれいねぇ隼人イケメンねぇええ勘九郎と巳之助の踊りすっごい踊りよくあんな動けるねえ!
彌十郎の踊りよかった、てか棒しばり笑ったわー超楽しめたもん!」って絶賛でした。
今月ちょこちょこ見ていたわたしもこの日が一番すごかったと思いましたから
母は一番いい内容のを見たと思う。よかったよかった。

棒しばりの後は歌舞伎座5階にある寿月堂さんにて一休み。
観る前にお店に行って予約させていただいたら、
カウンター奥のお席を用意して待っててくださいました!
お蔭でゆっくり過ごせましたよ~店員さん本当にありがとうございました。
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幕見チケットでしたからお昼は奮発しました。6月からの新メニュー、和のアフタヌーンティー☆
シーフードサンドに手まり寿司、野菜のケーキにヴィシソワーズ、
抹茶パンケーキにほうじ茶パンナコッタ、抹茶とフランボワーズのフィナンシェ。
ほうじ茶はおかわり自由ということで遠慮なくいただいてしまった(´▽`)ホッとおいしい。

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とどめは抹茶ソフトクリームと抹茶カプチーノです。Macchaコンボ。
お抹茶はその場で点てていただけます。
まだ数回しか飲んだことないけどやっぱり濃い。結構なお点前でした(╹◡╹)。
抹茶ソフトが甘いからお抹茶によく合う。

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お会計のとき「よかったらどうぞ」ってお土産までもらっちゃいましたー!
さすが染五郎さん御用達、もともと大好きなお店ですがどんどん好きになっていく…。
次回はお茶漬けがいただきたいな。

この後は池袋のハンズメッセをブラブラして、夕ごはんを食べに寄った和食屋さんで
お茶をいただきながら、
母「飲むぞ飲むぞ」
わたし「飲め飲め」
母「(一口飲んで)いやーさても一段とよいお茶じゃ」
食事を終えてお店を出るときには、
母「そろそろ行くぞ」
わたし「心得た」
棒しばりごっこ楽しい(笑)。
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2015-07-24 (Fri)
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わたしがジュンク堂池袋本店と同じくらい大好きな、ロゴの青白コントラストがまぶしいリブロ池袋が
今月20日をもって閉店するということで!最終日に行ってきましたよ!
いつも混んでいる書店ですが、この日はいつにも増して混雑していて
会計待ちの行列も入口から蛇みたいに伸びまくった大行列ですごかった。
この数時間後に閉店とかまったく信じられなかったけど、
レジで店員さんの名札についてた「40年間ありがとうございました」の文字でドカンと実感わきました。
わーん。

わたし書店は大型小型を問わず好きですし
膨大な品数誇るお店からオレ様平積みまで幅広くおいしくいただいてますけど、
リブロ池袋に対しては愛のバロメーターも熱量もすぽーんとアップしててレベルがちょっと違う。
埼玉の奥地に生まれ育ったわたしが最初に体験した(あえて体験と言います)大型書店が
池袋東武の旭屋書店で、その次がリブロ池袋だったのでした。
あああ職場が都内だったとき毎日のように通っていたリブロ池袋が、
大山のぶ代さんや上橋菜穂子さんにサインをいただいたリブロ池袋が、
からすのパンやさんの朗読聴いたリブロ池袋がー!
新宿のジュンク堂や渋谷のブックファーストが閉店したときも悲しかったけど
リブロは小学生の頃から当たり前にあった書店なので悲しみが大きすぎる。
こう、慣れ親しんだ家や学校が跡形もなく取り壊されるみたいな、そんな気分。

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西武池袋線側の入口からリブロへ向かって歩いていくと、最初に目にする明るい柱。
先月から多くの作家さんが訪れてメッセージを寄せておられるのがtwitterに上がっていました。
3月に閉店が発表されてからわたしも意識して行くようにしてたんですけど、
ここ通るたびに柱のメッセージが増えていて泣きそうだった。

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谷川俊太郎さんのサイン。
他にも長友佑都さん、高橋源一郎さん、上野千鶴子さんなど寄せ書きがいっぱい。
つぶやいてる作家さんやニュースのまとめができていましたのでどうぞ→こちら

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子どもの頃からの思い出いっぱいの児童書売り場「わむぱむ」。
壁にはぐりぐら、ババール、ノンタン、はらぺこあおむし、エルマーと龍、星の王子さま、
11ぴきのねこなど絵本のキャラクターたちのシルエットが別れを惜しんでおりました。
備え付けの用紙に影絵になってるキャラクターの名前を書くとプレゼントがもらえるクイズとかやってて
わむぱむスタッフさんは最後まですごい。
最後のわむぱむ通信(7/20号)をもらってきたら
「子どもの世界を360°見渡せるような売り場をつくる」ことがわむぱむの目指したものと書いてあり
ああ、本当にそうだったなあと思いを馳せるなど。

児童書の新刊はここへ来ればほぼ揃っていたので好きな作家さんの新刊チェックとか
仕事の選書の参考にするのにも定期的に寄らせてもらってたし
(カタログも使いますけどやっぱり実物をめくる方が内容がわかって納得して選べたりするのです)
ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんや富安陽子さん、高楼方子さんの他たくさんの本を買ったな…。
絵本ときどき立ち読みしててごめんなさい。大好きです、絵本…。

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閉店前の1ヶ月だけ2Fに復活していた詩の書店「ぽえむ・ぱろうる」にも
谷川俊太郎さんのメッセージが。
詩の本のスペースこれだけとれる書店って専門店でもない限りあまりよく知らない…。
営業不振で閉店するわけではないから店員さんたちも残念だろうなあ。

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1Fのカルトグラフィアで開催されていた「本棚から見る、リブロ池袋本店の40年」展。
セゾン時代からの40年間を本と年表で振り返っていました。
このスペースのフェアは毎回テーマがおもしろかったけど、これも最後。
わたしはセゾン時代はよくわからないけれど、
2階までだった書籍館が90年代後半に4階まで増えたときは心の底から感動したぞ!
それまで人文書・児童書・コミック売り場を階数で記憶していたから慣れるまで迷子になったぞ!
(でもすぐ慣れて半年後には目をつぶっても店内歩けるようになった)

たくさんの本とわたしを出会わせてくれてありがとうございましたリブロ池袋。
時間がなくて閉店時間まで店舗にいられなくてごめんなさいリブロ池袋。
スタッフの皆様最後まで本当に本当にお疲れさまでした。
午後9時の閉店の様子もTwitterで見ることができました…ありがたい世の中です。
こんなに盛大にフィナーレが行われるなんてすごい。
あのフロアは来月には三省堂になりますが、リブロ池袋店の店長さんは閉店のあいさつで
「いつかまた池袋に戻ってきます」と…力強くおっしゃったそうで…。
書店にもいろいろドラマがあるものです。

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ごそごそとゲット。
1巻から買ってるのと、ジャケ買いと、買おうと思ってて忘れてたけど
棚の間をぼんやり眺めていたら再会したので買ったのと。
リブロは新刊の入荷数も豊富ですけども、十年二十年前の本とか普通に置いてくれてて
何というか「ここへ来れば20~30年くらいの出版物の歴史がわかる」書店だったなあ。
最終日まですてきな出会いをありがとうございました。

そして29日には三省堂書店がやってくる…。
せめて本屋さんが続いてくれるというのは本当に有難いしうれしい。オープンしたら行きます。


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「風神雷神図屏風Rinne」光琳・乾山編その12。11はこちら
光琳が乾山の工房を訪ねています。

乾山「景徳鎮の氷裂文がきれいだったからやってみたんだ~すごくうまくいったの」
光琳「そりゃいい、大事なのは心だ。自分で美しいと思ったように絵付けするのが一番だよ」
乾山「うん。兄ちゃん次いつ来れる?」
光琳「明日」
乾山「早っ」
光琳「できるだけ来る。内蔵助が戻って来るのが9月だから、それまではな」
乾山「……行くことにしたの」
光琳「ああ」
乾山「東下りだね」
光琳「道中、八橋を見てくるよ。…家のものをあっちへ運ぶから、しばらくは行ったり来たりになるが」
乾山「忙しいね。多代さんたちは」
光琳「江戸の家が落ち着いたら呼んでくれって」
乾山「はは、それがいいね」
光琳「何かあったら文で知らせろよ」
乾山「うん。兄ちゃんも書いてね」

乾山が景徳鎮に取材したという色絵石垣文皿は1700年前後に制作されたとされ、
現在はMIHO MUSEUMが所蔵しています。

鳴瀧窯ほか御庭窯など忙しい乾山に、光琳はたびたび手紙を書きアドバイスをしています。
乾山が二条家から注文を受けろくろを回していた時には
「自らの心より出てし正しき貴志の工を祈り申者也(自分が美しいと思ったものを絵付しなさい)」と書き送っています。
| その他本のこと | COM(0) | TB(0) |
2015-06-26 (Fri)
先日ネサフをしていてたまたま、竹下文子さんの『酒天童子』を見つけたのですが
読んでみたら内容があまりにもツボで沼が深すぎて危うく足を滑らせ頭からドボンしかけたくらい
すばらしかったのでその事を書きます。
どこがどうツボって、魅力を語ろうとすると「筆舌に尽くしがたい」という言葉でしか表現できないし
しかも読んだの真夜中だったからおかしなハイテンションが脳天突き抜けて
沼に落ちそうなすんでのところで踏みとどまってどうにかこうにかお風呂入って寝たけど
目覚ましが鳴るまで夢も見ないで爆睡した。
気持ちがバンジージャンプしまくったのと、よほど頭使って疲れたっぽいです^^
実はまだ心が完全に落ち着いていませんので
たぶん今から語るのもまとまりのない話になると思います、ご了承ください(^v^)←

あらすじはリンク先に書いてありますしご存知の方も多いと思いますので割愛しますが
ざっと申し上げると今昔物語集や御伽草子集に載っている一条戻り橋の話、土蜘蛛、鬼同丸、
酒呑童子の説話などを源頼光を主人公にまとめてつなげた連作です。
ゆさは鬼びいきのためあまり頼光側の小説って読まないのですけども
この本は著者が黒猫サンゴロウシリーズの竹下文子さんと聞いたとたんに興味が沸騰して
図書館で借りてきてパラパラめくってみましたら描写がもういろいろツボだらけでしてな。。
たとえば渡辺綱が戻り橋で一悶着あって朝帰りしたときの様子は、

近づいて、顔を見た。口を横一文字にむすび、かたい表情をしている。
髪は乱れ、衣服もあちこち破れている。ふだん身ぎれいな男にしてはめずらしいことだ。
かたわらに、ぼろ布でくるんだ大きな包みがある。「ごらんいただけますか」
綱は、何重にもなった包みをほどいた。ごろりと出てきたのは、なんと一本の腕だった
」(p.16-17)

なんじゃこりゃーー!!(ダァン!!!←床叩)
無口でふだん身ぎれいな部下が乱れた服装でおっかない顔して帰ってきて
何重にも巻いた布から鬼の腕ごろんて出すとかむりむりむりむり怖いかっこいいずるいー!
他にも、

「一条大宮まで使いにいってもらいたい」「承知しました」
なぜかとは決してたずねないのが綱である。4人のうちで自分が呼ばれたということは
内密のだいじな用なのだと、こちらが言わなくてもわかっている
」(p.13)
「おみごとでした」綱がそばに来て、すばやく手綱をつかみ、暴れる馬をなだめた。「おまえもだ、綱」」(p.93)
わたしが17のときから、渡辺綱は、そばにいた。
わたしの影のようにうしろにつき、あるいは盾のように前に立って、
いつも言葉少なく、わたしをまもり、支え、はげまし、ときには叱ってくれたのだ。
わたしの命に従わなかったことはない。呼びかけて答えなかったことはない
」(p.226)
「わたくしがお仕えするのは、頼光さまおひとりです」にこりともせず、さらりと言いきった。
その顔、いつもの綱である
」(p.229)

待って待って待ってもえしぬ待っっっって!!!!!!
なんだこのおまえの気持ち全部わかってるぜな主人と一を聞いて十を知る部下は。
綱が言葉を短く切っても表情だけで言いたいこと読み取る頼光がハイスペックすぎるし
綱も綱で口数少なくて頼光が話しかけなければいつまでも黙ったままとか
しかも12歳で17歳の頼光のもとへ来ておそらく10年以上仕えてる(←ここ重要)という、
まさに最強の萌え要素てんこ盛りの設定がやばすぎて沼落ち5秒前。
頼光やその部下の知識は名前と役職となんとなくの人物史だけで10年くらい更新されてなかったし
あえて誰と聞かれれば綱一筋だったのにまさか頼光&綱にセットで惚れるなんて
わたしが一番びっくりだよ!
今まで好きって思ったこと一度もなかったからこわい。新境地こわい。
他にも空飛ぶ茨木童子から逃れて北野天満宮に落下して屋根は壊れたのに自分は無傷な綱とか
頼光が鬼同丸の目に深い闇を見て「わたしはこの男を救えない」って思う一瞬の交差の妙とか
そういうシチュエーションが大好物なのであれよあれよと物語に引きずり込まれてしまって
冒頭のような有り様になったわけです。

頼光四天王の他の3人が明るくてアホでみんなかわいい。
「姫さまは軽いなあ」っておどけた調子で桜姫を抱えて助け出す坂田公時とか
諏訪明神のお告げひとつで頼光のもとへ押しかけてきちゃった碓井貞光とか
賀茂祭を見に行きたいけど堂々とは行きづらい(当時はまだ武士の身分がとても低かった)から
牛車を牛飼いごと借りてきちゃう卜部季武とか。
(結局、3人とも車酔いでヘロヘロになって綱にめちゃくちゃ怒られるんだけど)
風邪をひいて寝込んだ頼光に薬草をせんじた公時が言った
「苦いけど飲んでください、頼光さまがいなきゃおれたちはどうにもならないんですから」に
どうにもならないのはこっちの台詞だってごちる頼光のモノローグがツボでした。
ここに「この人たちよくわからないなあ…」って思ってそうな藤原保昌と
「この人たちほんとしょうがないですねえ」って思ってそうな安倍晴明が加わっててさらにツボ。
(竹下さんがブログでおっしゃっていますが、
保昌については月岡芳年の月下弄笛図をご覧になったそうで
わたしも大好きな絵なのでとてもうれしかった)

しかし本当にとんでもなかったのはさらにその先、
頼光主従の設定以上にドリームすぎたのが酒呑童子のキャラクターだった…。
廊下に足音と、衣ずれの音がした。あらわれたのは、ひとりの男だ。
色白で、まず美男子といっていい。黒々とした髪を結わずに切りそろえて肩にたらし、
とろりとなめらかな白絹の狩衣に、目のさめるような緋色の袴をつけ、
その長い袴のすそをしゅっしゅっと鳴らしながら足早に歩いてくる。
「山伏か。道に迷ったとな。それはいい」
」(p.169)

かっk…!!!!!!(←かっこいいと言おうとしたけど萌えのあまり声帯が動かなくなった音)

若く、ものごしは尊大だが、けっして粗野ではない。育ちもよく教養もありそうなしゃべり方だ。
体格はがっしりとして胸も厚く、武人のようだが、顔や手は白い。
肩までとどく童髪がひどくちぐはぐで、どこか人形じみた印象をあたえている
」(p.170-171)

なんじゃこりゃーー!!(ごろごろごろごろ←床転)
わかるわかるわかるわかる竹下さん、うわーっ*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
まさに!まさにわたしがイメージしていた酒呑童子はこれだ!!
絵本や御伽草子から抜け出てきたままの、世の中へのどうしようもない諦観にさいなまれながらも
好き勝手に生きる気持ちの方がずっとずっと勝っている酒呑童子ー!
長いことこんな鬼小説を探してて見つからなくて、誰も描いてないのかと思ってたけど
諦めずに探してよかった、こんなところにいたんだねえ(*´Д`)。
道理を無視して、気分のままに振る舞う、数百年も生きながらちっとも成長のない童子を
竹下さんが実に生き生きと描いてくれてて泣くシーンじゃないのに涙出ました。
だから後半のバトルシーンで
童子が、ぱちりと目をひらいた。血走った眼玉がぐるりとまわって、
わたし(頼光)に焦点をあわせ、ひどくおどろいたように見つめた。
「だましたな、客人」口が、そう動く。「だましたな」
」(p.209)
涙腺決壊につき自分の涙で溺れかけたアリスのごとく涙の海へ出航いたします!!面舵いっぱい!!!
御伽草子の「鬼神に横道なきものを」のような絶叫ではない、
でも低く低く冷え切った声が聞こえてくるような描写がぐわっとくる。
絵本や御伽草子を読むたびに思うのですが、この本でも思ったので書きますが
鬼で盗賊って時点で常に死と隣り合わせなのは童子も承知の上だったと思うけど、
お酒が入っていたとはいえ寝込みを襲われる可能性を考えなかったのは童子の落ち度だけど
山伏(の姿の頼光)たちを客と疑いもしなかった心根の良さを感じずにはいられないんですよ。
伊吹山に捨てられて山の動物たちに育ててもらったのと
刹那的な性格だけど盗賊の本領発揮したらとてつもないのと
いわゆるはみ出し者のまま社会の影で死んでいくことを考え始めると沼の深さにゾッとする。
…あれ、これ大学時代に小野篁がはみ出し者っぽいことの残酷さについて考えすぎて
気がついたら沼に落ちていた感覚と似て…る…??
あかん思考を停止しろわたし!
これ以上鬼小説沼にはまってみろ、間違いなく仕事も私生活にも支障が出るぞ!!

あと茨木童子もいろいろすばらしくてですね(結局語ります)、
一条戻り橋で綱を誘惑しながら「行く先は愛宕の山ぞ」と凄んで綱に襲いかかるシーンの迫力!
虫の垂れ衣姿の女性の袖からぬっと毛むくじゃらな鬼の腕が出てくるとこ想像してくださいよ、
ちぐはぐな妖しい魅力に拍車がかかって頭がこんがらかりそうになりました。
闘って腕を斬られてしまっても諦めずに取り返しにいって
「綱の顔をみてにたりと笑」って屋根をつきやぶって空を翔けていく。
でも最後の最後で綱に「三度はだまされん」と見破られて戦って負けてしまうけど
顔が綱をだましたときの女性に次々変わってから灰になり消えていくっていうのが、切ないよね。

何だかテンションがおかしいですが、鬼に関しては沼どころかマリアナ海溝に沈んでますので
いつものことです、ご安心ください。
しかしときめきすぎてとても疲れる本ですた…。
竹下さんて、短いけど的確でいきいきと洗練された文章を書きますね。かっこいい。

あ、あと変なテンションついでに語ってしまいますが
サントリー美術館の「酒天童子絵巻」と逸翁美術館の「大江山絵詞」については
これまでにも何度か書いていますが、あえて何度でも力説する!
あの2つはものすごくよくできた絵巻だぞ!
比喩とか誇張でなく本当に、見れば見るほどとにかくすごいって思う。
首だけになった酒呑童子が頼光の兜にくらいついていくクライマックスは狩野元信の筆が踊ってるし
少年姿の童子の美しさたるや土佐派の筆が冴え渡ってるよ!
しかしやはり武士と鬼の戦いを描いた絵巻なので梨汁、じゃなかった血ブシャーな場面もあって
美術館で見るといつも「ギャー怖えええええ!」と心底思うのですが、
大江山絵詞を見た後で酒天童子絵巻を見ると
とても残酷に感じた土佐派の筆致も元信に比べるとまだマイルドで控えめだったんだなと思う。
ほんと殺し合いとかするもんじゃないな…。


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「風神雷神図屏風Rinne」光琳・乾山編その8。7はこちら
季節は冬を迎え庭も真っ白のある日、乾山が訪ねてきました。

乾山「にーちゃーん、どこまで進んでますか…って、何その格好」
光琳「さむい」
乾山「北山におしどり見に行かない?」
光琳「いやだ。さむい」
乾山「もー出不精……何描いてるの」
光琳「今月の支払い分」
乾山「……」
多代「細井さんと吉田さんとこ」
乾山「ああ、はい」

こたつに入っているのは妻の多代と、光琳の娘のそねです。

龍安寺は冬になると鴛鴦が飛来したため、鴛鴦寺と呼ばれることもあったそうです。

光琳は生涯で妻と妾が合わせて6人、子どもが7人いて1人は早世、数人を養子に出しました。
細井つねから子の認知をめぐり訴えられた際には屋敷や諸道具、金子を差出しています。
5番目の子寿市郎が養子に入った小西彦五郎(銀座役人)の家に尾形家の遺品が伝わり、
今日において光琳や乾山の生涯を知るための貴重な資料となっています。
| 絵本・児童書 | COM(0) | TB(0) |
2015-06-18 (Thu)
幸田文さんの『きもの』を読みました。
何の気なしに図書館の棚を眺めていて背表紙が目に留まりまして
中身をざっと見て借りて帰って本能のままに一気読みしてしまった。はぁお腹いっぱい。
(* ̄ω ̄*)=3

こちら著者の自伝的小説だそうで
(お父さんのモデルは幸田露伴でお母さんは早くに亡くなられたお母様だと思う)、
舞台が戦前ということもあって読んでるとエーッてなったり
「いやいやいやいやないわ」ってドン引きする部分もたくさんあったけど、
着物描写や生活の知恵のくだりがおもしろくて目からウロコの連続で
へーへーそうなんだ!って何度口走りそうになったかわかりませんでした。
今までなんとなく覚えていた物事に裏付けをしてもらったというか。
このブログをお読みの方はすでにお察しかと存じますが、
わたし生活史とか風俗史とか文化史といったものに果てしないときめきを覚えることが多くて
この本はまさにそんな知識が満載でMy好奇心をパンパンに満たしてくれたわけです。
その物がそうあるのは何のためか、
この時に使うのがこれじゃなくそれなのはなぜかといった事例を
できるだけ多く知りたいといつも思っています。
事例って人それぞれで同じものいっこもないもんね。

着物は着心地!見た目じゃないわ!がモットーのるつ子に心から共感しまくりました。
綿がぎっしり詰まった胴着は肩のところで袖がつまって腕がまっすぐ上に上げられないから嫌い、
よそ行きの着物は重たいし裾長で足にからみついてくるから嫌い、
手拭ゆかたの洗いざらしは軽く、しなやかで自分の思うままになるから好き、
紋羽二重の羽織は着ているか着ていないかわからないほど軽くて好き、
「柄や模様より気持ちのいいのが第一」というるつ子の心情は
なんかもう、わかりすぎるくらいよくわかる…。
わたしも、サイズや着心地の合わない服を着てるとその日1日ブルーですが
ぴったりの服だと自然と元気になるから不思議。
見た目ももちろん大切なので趣味に合ったのを選んで着ているわけですけども、
着ていて気持ちのいい服は人の機嫌も世界の見え方も変えると思っているので
服を買うときは見た目でピンときたら素材を確認して触ってみることにしています。
(あとクリーニングじゃなく洗濯機で洗えるかどうかが大事)
メリンス(毛織物)で肌がかぶれたり、お寺の和尚さんの着物にこっそり手を通してみたり
薬屋さんの掛軸にいる神農像の着物が何でできているか気になったり
結婚して家を出たお姉さんが里帰りに着ている派手な服に目をひそめたり
お葬式のバックヤードで動き回るときも薄汚れた物ではなくこざっぱりした銘仙に割烹着を着たり
震災で崩れた街から帰って来たお父さんの洋服姿に節度を見たり
結婚することになって染めの着物に身を包んだ時になって気づいてしまったことがあったり
様々な場面での様々な服を見たるつ子のファーストインプレッションと思考が
時にさっぱり、時に丁寧につづられるのを追いかけるのが楽しかったです。

るつ子とおばあさんが病気のお母さんのために縮緬の布団を作るときの描写がとってもわくわく。
お古の子ども用の縮緬着物を使って作るのですが、
柄が大柄すぎやしないかと思案するるつ子に、おばあさんが
・布団てものは、大柄な方が上品に見える
・作るのは敷布団だから、どうせ敷布で柄は見えなくなる
・大事なのは寝心地、縮緬の柔らかさがあればすべてよし
というわけで、かつてない派手な布団が出来上がっていくのはとても楽しく感じます。
「布団を新しくするのは嬉しいものだよ」と言うおばあさんのセリフにも首肯。
というか、おばあさんが折にふれて語る着物や家事の知恵のひとつひとつが
経験に基づいて理にかなっているからするりと納得がいきます。
着物についても木綿、毛織、銘仙、絹、いつどの素材を着るか、また何故その着物なのかが
的確に語られるのがとても勉強になって
今後着物着るときはるつ子のおばあさんの知恵を全面的に師匠にしようと思ったくらい!
そしてそれは関東大震災の描写でもっとも顕著にあらわれていたな…。
揺れが収まって真っ先にるつ子へ出した指示が「足袋をお履き」っていうのが
びっくりするくらい説得力あるし、
2人で避難するときお米とドロップを2つの包みに分けるのも
はぐれたときのことを考えているっていうのがもう、リアリティあるなあと思いました。
たくましいおばあさんかっこよす。
(あ。ひとつだけ共感できなかったのはるつ子が痴漢に遭ったときのコメントね。
当時の社会を考えるとそう言うしかなかったんだろうけど、そういうことじゃないって突っ込んでしまった)

るつ子の家がずっとお世話になっていた呉服屋さんがある日大盤振る舞いをして
数日後に店をたたんでいなくなってしまって、
お姉さんが「固いお得意さんだけを呼んでこっそり安売りしたのね」ってぽつりと言ったときに
お店の人にもうちの買い物がいくらか足しになったろうか…と
自分ではどうにもならない理不尽について考えるるつ子がとてもよかったな。
あと、震災で避難しているときにおばあさんをどこかで休ませようと思ったるつ子が
山の手の大きなお屋敷の人へ声をかけたときに
突然、自分は少しだけどお金を持っていた、お金で堂々と交渉する手段があったのだと
元気が出るシーンもあって、それもよかったです。
(ちなみにお屋敷の人はお金を受け取らずに休ませてくれた)
あと、るつ子のお兄さんが震災で炊き出しのおにぎりをこしらえるとき
いちいち手に塩をつけるのが面倒だからと、釜の中へ塩をまいてかき混ぜて
お茶碗で型抜きして作ったというのが頭いいなあと思った。

ラストがちょっと唐突なのですが、巻末の解説によるとこれは連載が止まったためだそうで
できればもっと続きを読んでみたかったです。
まあ、なんとなく想像はできますけど…。


幸田さんは着物エッセイも書いていたと知って『幸田文 きもの帖』を読んでみたら
冒頭から「夏は絶対に洋服へ軍配を挙げます」「洋装に越したことはありません」と書いてあって
うおおおおおこの人本物だ!って思わず両手の拳握った。
こういうことを率先して言ってくださると着物クラスタとしてホッとします、選ぶ自由がある気がして。
続きに「若い和服がいいのはやはり雪と花と紅葉でしょうか」ってあるのも
首が折れるほどうなずきましたよ。
何より「雪と花と紅葉」って言い回しがさ…最高ですね…!
冬と春と秋じゃないんだよ!雪と花と紅葉だよ!!
(ゆさはしゃべり言葉フェチでもあります)
とはいえ、夏に着物をお召しにならない著者では、もちろんありません。
ゆかたを「正装でないことは常識である」としながらも
・糊気を置いて着れば肌を離れて風を入れてくれる
・糊気を落として着れば高原の冷やつく夜気を庇い、肌に添って冷えを防いでくれる
ということから「情けのある着物である」と情緒たっぷりに語っていらっしゃって
こんな風に着物をそばに感じて着こなせたらなあ…とは思うのですが
いざ自分がやってみるとなかなか難しいもので四苦八苦すると同時に
改めて幸田さんのような方への憧れを抱いたりする今日この頃です。

また、幸田さんの娘の青木玉さんも、お母さんの着物の本を書いてらっしゃって
『幸田文の箪笥の引き出し』とかを読んでみると
親子でお着物ライフを楽しんでおられたのが伝わってきます。
(幸田さんは生涯、着物で過ごした方でした)
様々な着物を着た幸田さんの写真も載っていて、飼い猫を抱いた写真がとても素敵だったのだけど
名前が「阪急」といったらしくて、なんか笑ってしまった。


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「風神雷神図屏風Rinne」光琳・乾山編その6。5はこちら
家を売って引越しを終えた光琳、乾山の焼き物に絵付をする仕事から始めることにしました。
下絵のアイディアをひねっていると中村内蔵助が訪ねてきます。

内蔵助「こんにちは」
光琳「おや、こんにちは」
内蔵助「二条様の使いで参りました。お庭に窯を開きたいとのことでおふたりとお話されたいそうです」
光琳「へ?窯??」
内蔵助「絵やお能も引き続きご所望だそうですが、さしあたっては窯をと」
光琳「そりゃまた」
乾山「良かったね兄ちゃん、仕事になるしお招きいただけるじゃない、法橋の話もしやすくなるよ」
光琳「………いいな、それ」
乾山「でしょ」

ものは考えよう、な光琳と乾山なのでした。借金で苦労している身には大切なことです(キリッ

乾山が著した『陶磁製方』には「最初之絵ハ皆々光琳自筆」とあり、
焼き物を始めた頃は光琳が絵をつけていたようです。
その後、乾山が作陶と画賛を入れて仕上げていました。

中村内蔵助は京都の銀座役人で、公私にわたり光琳を援助してくれている人です。
また、二条家は藤原摂関家の公卿で
当主の綱平は東福門院の孫の栄子内親王と結婚したことから尾形家とも交流がありました。
光琳は綱平の絵の師となり能や舞も披露し、2人の交流は長く続きました。
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2015-04-24 (Fri)
教文館で開催中の佐竹美保さんの展覧会に行ってきました。

佐竹さんはSFやファンタジーの表紙絵や挿絵でご活躍中の画家さんで、
書店で彼女の絵を見ない日はないというくらい、幅広いジャンルの表紙を描いていらっしゃいます。
虚空の守り人、シェーラひめのぼうけん、盗まれた記憶の博物館、勾玉シリーズノベルス版、
ハウルの動く城シリーズ、魔女の宅急便、黒い兄弟、サラシナ、竜が呼んだ娘などなど
大好きなものからまだ読んでなくてタイトル思い出せない本まで様々!
今回はそんな中からダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの本につけた絵と
大伴家持を描いた絵本の原画が見られるとのことでワクワクしながら銀座へ。
(ところで教文館はかつて村岡花子さんが勤めておられた出版社でもありますな)

satakem3.jpg
まずは教文館6階、小さなギャラリーで行われている展示に行きました。
「春の苑紅にほふ桃の花 下照る道に出で立つ娘子」(万葉集19巻4139番)をもとに
奈良時代後期に大伴家持が越中守として過ごした5年間を描いた
絵本『春の苑紅にほふ はじめての越中万葉』の原画展です。
絵本を企画した富山県は佐竹さんの出身地だそうだ。
こちらに少し内容紹介がございますのでどうぞ、絵も見られます)

展示室はちょうど誰もいなくてゆっくり鑑賞できました~。
家持をはじめとする人物がすばらしいし、静謐で美しい風景画にため息しか出なくて
室内をぐーるぐーる回ってしまった。
絵本原画のため文字が入ってない状態で見られたのもよかった^^
鵜飼たちの絵と、家持の妻が桃の花に囲まれている絵が特に美しくて
絵から光があふれ出てくるとでもいえばいいのでしょうか、
松明に照らされた人物と夜の紫色、咲き誇る桃のピンクと薄紅色が
やさしいグラデーションで表現されていました。
あと馬に乗って延槻川をわたる家持が神がかり的なかっこよさで夢に出てきてほしいレベル。

ギャラリーの入口に絵本が平積みされていたので脊髄反射でレジに持ってっちゃったよ、
表紙の家持が優雅で美しい~☆
店員さんに「9階の展示はご覧になりました?」と聞かれたので、これから行きますと答えたら
割引券がいただけました!やっほう。

そんなわけで、9階の「ファンタジーを描く」展へ。(こちらは有料)
satakem1.jpg
「佐竹美保のダイアナ・ウィン・ジョーンズの世界」と題して
佐竹さんがジョーンズさんの本に描いてきた原画の数々が
ご本人のコメントが添えられて100点以上も展示されています。
徳間書店の本だけでも20冊以上のジョーンズ作品に挿絵をつけてらして、
東京創元社や早川書房なども合わせると40冊くらいあるんじゃないかな…。
ジョーンズさんは「世界中の挿絵画家の中で、彼女の絵が一番好き」とおっしゃっていたとか。
わたしもそう思います~ジョーンズワールドは佐竹さんの絵がぴったりだと思う!

こちらは6階の展示とは打って変わってファンタジックな絵のオンパレードです(笑)。
特に広いフロアってわけでもないのですが、人少なかったし作品の間近まで寄れるしで
ゆうに1時間半はいたな~。
画材や紙の種類、主線や色塗り、ホワイトや絵の具のタッチまで
印刷ではわからない部分も見られて感動しました。
グリフィンの年の原画がなんか持ってる文庫の表紙と違う印象がして、なんでだろうと思ったら
原画の群青の空の上にあるピンクの空が文庫では切られて群青だけになっているとわかって
こういうのも原画展示のいいところだなあと思いました。
何より佐竹さんのセンスがすばらしいなって改めて。
ジョーンズさんの物語っておもちゃ箱みたいで色んな要素や小物や伏線やギミックが
ぎゅーっと濃縮されてぐっちゃぐちゃになってるのが魅力なんですけど、
佐竹さんも負けずに詰め込んで描いてますよね。
読み終えた後パタリと本を閉じて、さあ今回の表紙や裏表紙には作中の何があるかな?と
探すのがジョーンズ×佐竹本の醍醐味だよね!
本を楽しんで、「これあれだ」「これもあったー」って絵でも楽しめる。
あと、今回は展示されてないけど挿絵のほかに作品世界の地図なども本に添えてくださるので
ジョーンズさんのファンタジー世界を解説してもらってる気持ちになれます。
しかも「ああ、そうそう、こんなのを想像してたの!」って
わたし(読み手)の想像にどんぴしゃな絵や図を描いてくださるから、余計好きになっちゃうよね。

面白かったのがキャプション代わりに添えられている佐竹さんのコメントたち。
佐竹さんの文章ってあまり読んだことないのですが、
こんなに面白いこと書かれる方だったとは(^ω^)。
ダークホルムの表紙で「豚さんが見ているのは、あなたです」とか
牢の中の貴婦人は「天井から覗いているあなたを女性が見上げた図」とか
七人の魔法使いの表紙には「ジョーンズさんを登場させました」とか
キャットと魔法の卵は「ギー、バッタンと音が聞こえてくる感じ」とか
鬼がいるの表紙で「作中に出てきたバレリーナ人形が大変なことになっています。遊びです」とか
魔法×3の表紙が瓶詰ぎゅうぎゅうなのは読み終えたときの佐竹さんの頭の中だったとか
「わかるわかる」から「なんじゃそりゃ!」まで
制作裏話や佐竹さんが仕込んだ秘密がいっぱいでした。
シリーズものは関連性を持たせることもあって、たとえがクレストマンシーシリーズの4冊は
「魔法使いはだれだで上から下へ、クリストファーで下から上へ、
魔女と暮らせばでぐるりと回し、トニーノで前に飛び出して
魔法がいっぱいでお風呂の水を抜くように真ん中に吸い込みました」そうな(笑)。
魔法使いはだれだの裏表紙に描いた赤ちゃん靴下の絵を
ジョーンズさんが大笑いしてくださったというエピソードが宝物なんですって^^

展示室中央のケースには佐竹さんの机の上の様子が再現されていまして
画材やスケッチブックはもちろん、筆バケツやハサミや拡大鏡代わりのメガネ、
描くための資料群や編集者さんとのやり取りを記したポストイットまであった(笑)。
小さくなって使えない消しゴムや、使い切った絵の具のチューブに針金で手足をつけて
"ケシゴムシ"と名づけてテーブルから逃げ出そうとするみたいにして展示されていたのが
まっくろくろすけみたいでかわいくて、
わーこれ今度やってみよう!って思った(゚∀゚)☆
絵の具はカラーインクや水彩などがありましたが、コピックがあったのが
わたしもコピッカーなので個人的に感動。
『アーヤと魔女』はコピックで塗ったそうです!言われてみれば確かにあの色はコピックだったね。

イギリスやアメリカで出されたジョーンズ作品の原書も展示されていて、
佐竹さんの絵で見慣れている身としてはなんか不思議な感じ…。
佐竹さんとは全然別のシーンを表紙にしている本がほとんどですが
七人の魔法使いのゴロツキの表紙登場率が異様に高くて
ゴロツキは画家にとって面白い題材なのかもしれないなあと思った。
泣きそうになったのが、佐竹さんが「ミステリーズ!」47号に寄稿したジョーンズさんへの追悼文。
わたし発売当初読めなくて、初めてここで読んだのですが
部屋が散らかりっぱなしのクレストマンシーのもとへ
「なんてめちゃくちゃな世界なの!」と言いながらダイアナおばさんが踏み込んでいくくだりは
そうだったらいいなと思っていたことを代弁していただいた気がしてガチ泣きしそうに。
魔法泥棒の表紙コメントに「たぶんジョーンズさんは今頃こんな風に
ファンタジーの世界を旅していらっしゃるのでは」とあって、これもうんうんってうなずきました。
佐竹さんとジョーンズさんは直接会ったことはないそうですが
本を通して十数年おつき合いしてこられたんだなあと年月をしみじみ感じました。

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「撮影可能スポット」とイラストつきで展示されていたパネル。
『アーヤと魔女』の挿絵の下絵で、
ベラ・ヤーガの家で奮闘するアーヤが生き生きしています!すごい描きこみ!
近くには佐竹さんお手製のヤーガ人形もありまして、毒々しい色ですがすごくかわいくて
展示室入口にいた田中薫子氏作のボス人形と一緒に連れて帰りたかった。

そしてですね…!
会場の奥には小さなテーブルがあって画材が置かれているのですが
なんのためかというと、佐竹さんご本人が在廊されるためだったりします。
そうですご本人に会える日があるんです!お話できるチャンス☆→こちら
わたしが行った日にもいらっしゃって、有難いことに6階で購入した絵本にサインをいただけて
たくさんお話してくださいました!
さっきの佐竹さんの机の上再現展示にあった豚ちゃん写真は
ダークホルムを描くときモデルにしたそうですが、本当にたまたま巡り合えたもので
「豚が正面向いてる写真がなかなかなくてね~」と、資料さがしのご苦労もしのばれました。
絵は全体を決めて背景から描いていくそうですが、
画材は特に種類で分けたりはせず机に雑然と置いておいて描くときに探すとのことで
うわっそれわたしと同じ…ってちょっとうれしくなった。
「小学校の図工用の絵の具、あれ全然固まらなくて使いやすいよ」などなど
画材についても教えていただいたり。
あと、美術館のお話ができたのがすごくうれしかった!
佐竹さんもよく各地へ行かれるそうですが、特に科博がお好きとのことで
アファール猿人の再現模型(通称「ルーシーちゃん」)によく会いに行かれるとか
ヒカリ展できれいな石をたくさん見たわとか、
医は仁術展にあった解剖の絵がリアルで当時の絵師よく描いたなって思ったとか
新美術館に行きたいとおっしゃったのでマグリット展をプッシュさせていただいたりとか
ものすごく有意義な時間でした…本当にありがとうございました!
教えてもらった六本木の豚料理のお店いつか必ず行きます。

予定の合う方ぜひぜひ行ってみてください~とっても気さくな方でしたよ☆→こちら

クレストマンシーシリーズの部屋にはクロッキー帳が置いてあって
メッセージが書けるようになっていたので思いのたけを書かせていただきました。
佐竹さん、そしてメッセージ書こうとしてうっかり前のページめくっちゃった鑑賞者の方、
日本語おかしい文章があると思いますが生暖かい目でスルーしてやってください。
隣には佐竹さんのお仕事場を撮影したアルバムが置いてありまして、
たくさんの画材や資料に囲まれた机がなんだかハウルの部屋のようで面白かった。
特に資料の山は民族衣装や動物図鑑、科学やドラゴンの本まで
洋の東西を問わずあらゆるジャンルが揃っているのが書名から垣間見られて
こんな本あるんだ!って読んでみたくなったり。
こうした調査と取材を積み重ねて葉っぱのひとつひとつから壮大な景色まで細かく描いてるから
ファンタジー絵も歴史絵も立体感と説得力があるんですね…。
佐竹さんの絵を見ているとキャラや世界が二次元から立ちのぼってくるような気がします。
3Dみたくぽーんと飛び出してるんじゃなく、どちらかというとランプの魔神みたいな
あくまで立ちのぼって空中に留まってるイメージ。
(そういえばジョーンズさんの物語も、魔法がキラキラーって光るだけじゃなく
植物や家具や食べ物など身近なものが魔法で動くことがよくあって
そういう部分も強いリアリティを持つファンタジーとして構築している要素のひとつだと思う)
「窓から見える夕焼け」とコメントがついた写真にほおってため息が出ましたが
「オオスズメバチに驚く人体模型」の写真には大笑いしました。
本当におもしろい方だ~!

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教文館を出たら目の前の松屋銀座がこんなだったのでパチリ。
ミッフィー展が開催中だそうです。かわいい。
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2015-03-15 (Sun)
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先週、ジュンク堂池袋本店の「荻原規子 ファンタジーを語る」トークセッションに行ってきました♪
荻原さんの新作『あまねく神竜住まう国』刊行記念イベントです。
池袋店の喫茶は小ぢんまりした空間で作家さんとフラットに話せるので大好きだ~。

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ワンドリンク制につきホットティーを注文。
参加者のみなさんがひととおりドリンクでほっと一息ついた頃に時間がきて
荻原さんが真珠のネックレスをつけた白地に青模様のワンピースでご登場~☆
雑誌などでよくお見かけするお姿そのまま、とってもかわいらしい方でした。

トークというと作家さんがお客さんに向かってお話するのが一般的ですけども
今回は事前に参加者から質問を募集して、荻原さんがそれに答えてくださるという形式でした。
理由もお話くださって、ご自分だけしゃべるのは楽しくないのだとか^^
荻原さんのブログによるとご本人からの提案だったらしい)
質問の募集は2月からあって、わたしも僭越ながらいくつか考えてお店に投函して
どんな風に答えていただけるんだろう~とウキウキしながら当日を迎えましたらば
なんと「用意してきたけど数が予想以上で間に合わなかったものもありましたので
知りたいことがある方は時間をとるので今日、この場で聞いてください」とのこと。ひゃー!
トークの申込みそのものも、募集からあっという間に席が埋まってキャンセルも一切なかったそうで
改めて荻原さんの人気の高さに驚きましたが
「遠慮せずどんどん声だしてね~」との有難いお言葉に一気に和んでトークスタート^^

質問は大まかに3種類に分けられていて、まずは「荻原さんご本人について」。
インドア派でお絵かきや人形遊びが好きだった子ども時代を過ごされた荻原さん、
作家になろうと思ったきっかけはナルニア国物語を読んだことだったというのは
他の著書や雑誌のインタビューなどで聞いたことがあるな~。
アスランを始め「物言う獣」の存在が印象的だったとか。
生まれ変わるなら何になりたいか?という質問にはきっぱり「鳥になりたい」。
自分の下に空間がある生活がしたいとのこと、わかるわかるって思った。
紫式部派か清少納言派か?という質問へのお答えが
「清少納言のファン!内省的な紫式部は自分だと思う」とおっしゃって
わわ、なにそれわたしも同じこと考えてましたって言いたかった…言えなかったけど(^^;)。
「枕草子の良さは中宮定子の性格の良さにあると思う。てか、定子に会いたい!」って
ファンのように語る荻原さんに会場から「アア~」と歓声があがっていて笑ってしまいました^^
(ちなみに荻原さんにとって源氏物語は「大人にならないとわからないもの、
なってから読んでもよくわからないもの」だそうで、これも同じ同じって思いました。
ユーミンの歌のように(!)原文が良くて、恋愛の背景に草花など季節が見えるのは
源氏の頃から日本人の心性にくいこんでいると考えていらっしゃるとか)

次に「創作方法について」。
お話を思いつくのは電車の中やコーヒーを淹れているときやお風呂の中など
普段の生活で一瞬、ボーっとしたときが多いようで
原稿が始まると手が勝手に書いていくし、細かい場面も書くことでわかっていくのだそうです。
ラストシーンはお話を思いついたときにぼんやり見えているが、
どうやってそこへ辿り着いたらいいかその段階ではわからないとのこと。
主人公がよく恋愛をしますよね、という問いには
成長期の10代を主人公に据えることが多いせいかも、と。
カップルというか2人で1つ、補い合わなければならない2人として考えているのだそうです。
空色勾玉を思いついたのも直接古事記を書こうと思ったわけではなく、
書いていたら「あ、これ古事記だ」と気づいたとか。
既に覚えているものでないと作品に起きてこないんですって。
「そもそも空色は古事記を捨てようと思って書いたのに(使うと引きずられてしまうから)、
狭也と稚羽矢を思いついたら日月が出てきちゃったの!古い話の力は侮れません」と
苦笑交じりにおっしゃるのがすごくかわいかった^^
空色勾玉を小学生の時に読んだという参加者さんに「よく読めたね!」と誉めなさって
勾玉男子はすごくかっこいいけど憧れの本の中のヒーローはいますか?という質問には
アーサー・ランサムのトム・ダンチョン(『オオバンクラブの無法者』)が好き、
好きな子がいると読めるよね、と笑っていらっしゃいました。
本の表紙を決めるのは編集さんにお任せしているそうですが
なかがわちひろさんと佐竹美保さんについては荻原さんのリクエストだそうです。

ファンタジーとSFについてどう思いますか?という深い質問に対しても
両者の境界は接近していると思う、SFは科学的な説明があるけど
ファンタジーは魔法が使えても理屈はいらないよね、でもわたしは理屈を作る方なんですと答えてらして
ああ、だから西魔女やRDGはああなんだな…と思った。
少女マンガのSFが好きで、萩尾望都さんなどSFにもファンタジーが出てくる漫画はよくあるし、
ジャンルはあくまで便宜上でひとつひとつの作品は簡単にはくくれなくて
作家の好きなものが出てきてSFとかファンタジーとか呼ばれるのかなと思う…というのも
わたしがずっと考えてきたことを言葉にしていただいた思いで感動しました。
勾玉三部作や風神、新刊の神竜のスタイルについては
歴史小説を書いているつもりはなく隙間を見つけて書きたいものを書いている、と。
(歴史って調べてるとハマっちゃうよねとおっしゃって会場から同意の笑いが起きていました^^)
書ききれなかったエピソードは次回作に活かしますか?という質問に
書くときは全力だから考えないけど、時間が経つとあれも、これも…と思うことはあって
スピンオフを書いてみたくなることもあるそうです。
寝かせているものはいくつかあるけど、次を書くために大切にしておきたいとか。

登場人物の名前で最初に決まるのは主人公だそうです☆
名づけは大事で、二度と変えない!と思うくらい気に入ると作品の何割かはできてる、との言葉に
なんだか陰陽師の呪を思い出しました。。
名前に真がつく子が多いと思う、という質問には「意識してなかった」と答えつつも
特にRDGの三つ子は「最初に真夏が出てきて、次に真響、真澄にしました。3人だから目立ったね」と
苦笑されていました。
キャラクターのビジュアルは何となく雰囲気が浮かぶだけだそうですが
誰かが描いた絵を見てもちがう、とはあまり思わないとかで
「絶対こんな顔って決めても意味ないからみんな自分好みに想像してね」とのことでした。
すてきだ。
主人公が勝気な女の子になる理由は、
1988年出版の空色勾玉の頃はまだ元気な女の子主人公の物語が少なかったからだと。
「ファンタジーは自分が隠れれば隠れるほど、つまり自分と違う子を書くとよい世界になります」との
言葉が、ちょっと考えたことなかったのでびっくりしました。

続いては、お待ちかねの(笑)「作品について。別名、マニアックな質問コーナー」。
これが一番数が多かったそうです(笑)。

まず空色勾玉について。
玉の御統が8色である理由は、みすまるの語源はスバルの六連星なのだけど
どこかに7つめの星があって昔は目の検査に使われたことがあるというのを知って
7つもいいけどせっかくだから8個にしよう、
昔から8という数字は深い意味を持つし、首飾りとしても8個ほしかったから、とのこと。
(闇・輝の2つの勾玉は届けられることはなく今も闇の大神の手元にあるとのこと)
白鳥異伝は菅流についての質問が多くて彼の人気が伺えました(笑)。
髪の色は真っ赤というわけではなく東洋人としての赤さ、
衣装はノベルスの表紙に佐竹さんが描いてくれたものが一番近い、
物語のその後は象子と一緒に伊津母の指導者になっている、
漁師の父親を嵐で、その後母を亡くして10代前半くらいにひとりになって淋しかったと思うけど
一族に育てられたから生活には困らなかったと思う、
玉造の腕は遠子が一目で見抜いているくらいだからそんなに高くはない、
生まれ月は決めてないけどおうし座っぽいよね(笑)、など、など。
荻原さんもマシンガン質問者さんに対して「彼のことが知りたいのね」と微笑んでいらっしゃって
マジで女神さまに見えました。すてきなだ~(´∀`)☆
薄紅天女への質問も負けずにディープで、
竹芝の家は大きな農家のイメージで母屋(跡継ぎの住まい)を中心にいくつか建物があって
井戸のある中庭は有事の際に人々や武器を集められるくらいの広さで
藤太と阿高は結婚したら同じ敷地内に住んで食事はみんな母屋で
子どもができたら敷地外に家を建てて独立するかもね、と。
阿高はふだんは苑上を鈴と呼んでいて、2人きりのときは本名を呼んだとのこと。
苑上は内親王だったから農家の人間としてはトンチンカンで、
千種がつきっきりで教えてすごく仲良くなっちゃって二連の脅威になった!とか。なんですと!(笑)

西魔女はもともと荻原さんが学生サークルでお友達と作ったお話が元になっていて
主人公の名前はアラヴィスだったのをフィリエルに変えたけど
ルーンはルーンだったそうです(ルンペルシュツルツキンの設定は後からつけた)。
女王と一の騎士の関係についての「蜂社会だと思う」とのお言葉にどよめきが(笑)。
騎士たちは重要だけど使い捨てという危険な地位で、女王は事実婚で夫がたくさんいたとか
アデイルが「同じ家から騎士を出すとうまくいかない」と言ったのは
小さい頃から一緒にいるとずっと幼馴染でしかいられない…というあてつけだとか。
フィリエルとアデイルは同年だけどどちらが年上?という質問には
アデイルの方がしっかりしてるけど生まれはフィリエルが早いと思う、とのこと。
レアンドラが奴隷のふりをして東の国に乗り込む話やティガとルーンの出会いも書いてみたいが
今は取り掛かる時期ではない、とも。
ティガとアデイルの再会を「あると思う」とおっしゃる荻原さんに
質問者さんが「ユーシスに焦ってほしくて!」と言うと「悠長だもんねあの人」と返してらして
何だか世間話みたいでおもしろかった(笑)。
風神秘抄の糸世が飛ばされた場所についてはやはり多くの質問があったようで
樹上かRDGの世界とつながっているかと考えた方もいらっしゃるそうです。
荻原さんの返答は「素材が同じなので、ありえます」でした。
糸世にとっての忉利天が現代なのかどうかはわからないけれど、
たぶん飛ばされた先にはある程度長くいて、そこの人が糸世がいた時代について調べてくれて
未来を知ってしまった可能性もあって
(草十郎も笛を吹いたときに見ているから2人は頼朝のところに行ったんだと思う、とも)、
だからいい場所だけど一刻も早く元の世界に帰りたかった…というのは裏設定だから
みなさんは考えなくていいです、ともおっしゃられました(笑)。
あと、喪山の位置は白鳥で考えると美濃で、風神で考えると飛騨だがどちらか?の問いは
「鳥彦王が適当に言っただけ」という答えでみんな爆笑しました^^
カラスだから人間の地理がわかってなくて、おばばから聞いた知識しかないそうです。
かわいい(^q^)

RDG(レッドデータガール)で雪政と泉水子の高尾山デートについて
「待ち合わせの時間を決めなかったのに雪政はいつから待っていたのか?」とか
「雪政と紫子の出会いはいつか?」など、雪政の人気ぶりが(笑)。
高尾山デートのときは、山伏ネットワークを駆使して近くの知り合いの家に泊まって
翌朝も早朝から「泉水子が来るから…」とずっと待っていたという衝撃の回答が!
「プレイボーイですから」とさらっと言う荻原さんにプロの神髄を見ました。。
雪政が紫子さんに会ったのは学生時代で、修行時代から大成さんとも仲良しだったけど
その大成さんが紫子さんと仲良くなるのを見ながら成長していったという
なかなかドラマティックな裏設定ががが。
姫神の「天から受け取るための手、下々に与えるための手」のセリフは
変なことを言う人だなって思っていただければいいとのことで
深行が姫神の左手を取った理由はたまたまそのタイミングだったわけだけど
姫神としては「ほう、そっちを取るか」と思ったかもしれない、と。
みゆっきーはあれで完全に姫神に気に入られたよね…(^^)。
印象的だったのが、真夏がものすごく好き!って感じの人が
「真夏は長く生きられますか?」と声を震わせながら質問なさっていて
「だいじょうぶ。科学は進歩しているし、希望はあるよ」と力強く答える荻原さんが
やっぱり女神様に見えました☆
会場の雰囲気も「ああ、よかった…」みたいなほのぼの空気に包まれたし^^
前にも書いたけど、彼らは3人そろって無敵なので作者さんのお墨付きがあるとホッとしますね。
これかぎのハールーンとひろみの再会は、現代を舞台に書く予定ではあったけど
いろいろこじれて樹上になりましたとおっしゃられた。
(樹上にハールーンが出ないのはひろみちゃんが好きになる子がハールーンだからで
夏郎くんはちょっとイメージ違うけど、まあいいか、というのがラスト。
ちなみに夏郎くんはダイレクトにひろみちゃんが好きだそうです♪)
樹上は、これも前に聞いた気がするけど高校生活を書き残しておきたかったとのことで
荻原さんの中では別個の作品なんだとか。
ひろみちゃんは、荻原さんにもっとも近い主人公だそうです。
鳴海くんは有理さんの家で育った時期があって親戚関係もろもろこじれたらしいですが
眼鏡は別に伊達ではないとか。


とまあ、こんな感じで事前に寄せられた質問に答えた後もどんどん手が挙がって
どんどんディープな質問が出てきて荻原さんの回答もディープで
ものすごい濃密な時間でした(^◇^)。
それぞれの作品についてランダムに聞かれても、パッと切り替えて返答なさる荻原さんすごかったです。
お答えに対してさらに質問が飛んでさらに返答があって会場が湧くこともあって、
これは荻原さんや参加者さんの中でもっと話が膨らんで花開いて
しばらくしてネット検索したら新刊情報や良質な二次創作がたくさん見られるのかもしれないと思うと
勝手に楽しみになったりしました☆
物語って広がるよなあ…。

わたしの事前質問にも答えてくださいまして、休日の過ごし方は?というのには
「休日っていうか、暇なときにしていることは読書したりネットでアニメを見ること」とおっしゃって
ああそうか、専業の方は出勤しないもんな…と考えが足りなかったことを反省しました。
熊野についても聞かせていただいたのですが「伊勢とは違った古代の雰囲気の場所だよね、
熊野では断然、大斎原がお気に入り!霊感はないけどあそこに行ったら何かあるって感じた!」と
興奮気味におっしゃったのが印象的でした。
大斎原はおととしの熊野旅行でちょっとしか寄れなかったけど
確かに何かありそうな場所だったのでやっぱりそうなんだな…と思いました。

で、今まで書いてきたとおり本当に何でも聞ける雰囲気だったので
当日、気持ちを奮い立たせて会場で手を上げて
ずっと疑問に思っていた作中のセリフについて質問してみました。
空色勾玉の前半で、「死んじゃったらもう会えない」と言う狭也に鳥彦が「おれは死なないよ。
一度闇の大神の御前に戻るだけ。また会いに行くよ」みたいなセリフをしれっと言うシーンについて
ここで彼は闇の一族の知識を口にしているのか
それとも実際に何度か生まれ変わってそれを記憶していて、経験に基づいて言っているのか
いまいち判断がつかなかったのでずっと知りたくて…。
荻原さんの答えは「闇一族の常識ですね。岩姫や王たちからそう教え込まれていて
本気で思っているので、過去の記憶はないけどそうだと信じています」というような内容でした。
緊張のあまりマイクを持つ手も震えてたのでうろ覚えなのですが…^^;
「迷いがないように見えたので」と言葉をつぐと、荻原さんも「迷いはないですね」ときっぱり。
ああやっぱり迷わなかったんだな…だから前半クライマックスで捕まって足を折られても
あんなに冷静でやんちゃでいられたんだなあとしみじみ思いました。
鳥彦は結局、カラスになって帰ってきて
わたし初めてあのシーン読んだときすごくうれしかったけど同時にすごくショックで
だから白鳥異伝と風神秘抄を読み終わったとき感想が「カ ラ ス !!」しかなくて(泣笑)。
荻原さん本当に本当にありがとうございました!


新作もトークセッション前に読んだのですが、ひさびさの和ファンタジーで面白かったです。
流罪になった源頼朝が伊豆の土地神と対決する物語で、
風神秘抄の主人公だった草十郎と糸世も活躍するので風神の続編でもありますな。
糸世が頼朝を「しおりちゃん」と呼ぶシーンと
草十郎が糸世を本物かどうか確かめようとするシーンがよかったなあ。(結局カラス)
読みながら、そういえば風神でそんなことあったよねって思い出したことも多くて
今度は2冊続けて読み返したいです。
(で、その後きっと鳥彦王のルーツを読み返したくなって勾玉三部作に手が伸びるんだろうな)

あと、このトークセッションが行われた3月11日は源頼朝の伊豆流罪が決まった日でもありまして。
(鎌倉時代の僧侶慈円が記した『愚管抄』第5巻に
「義朝が子の頼朝をば伊豆国へ同く流しやりてけり。
同き(1160年)三月十一日にぞ、この流刑どもは行はれける」とあるのです)
わーいぜひお伝えしよう!と思ってメモしてトーク中の途中までは覚えていたのに!
しかも質問できる時間をいただけたにも関わらず!!
鳥彦のことで頭がいっぱいだったのと緊張のあまりすっかり忘れて伝えることができませんでした…。
ばかああぁぁ(゚Д゚)
ので、チラシと一緒に渡されたメッセージカードに書いて店員さんにお渡ししました。
よりによって伊豆の頼朝本の刊行イベントが頼朝伊豆流罪決定の日に行われるとは。たまたまだろうけど。 >> ReadMore
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