図書室と5つの物語。

『ぐるぐるの図書室』を読みました。
まはら三桃さん、菅野雪虫さん、濱野京子さん、廣嶋玲子さん、工藤純子さんの5人の作家さんたちが
デビュー10周年記念に書きおろした放課後の学校図書室が舞台のリレー短編集です。
皆さま2006年にデビューされたので「2006年組」と呼ばれているそう。
工藤純子さんは読んだことないけど、他の作家さんはずいぶん前から読んでた気がしていて
去年で10年だったと聞いて「おおっそんなに経つ…いやでもまだ10年…」とか
何だか長いような短いような不思議な気持ちに。
どの作家さんも深いお話作りをされるのでこれからもゆっくり追いかけていこうと思います。
とりあえず工藤純子さんの本を今度読んでみよう。

5つのお話に共通しているのは、
・主人公たちが全員同じ学校に通う小学5年生
・放課後の図書室の扉に茜色のきれいな貼り紙を見つけて入室する
・白い服の司書から図書室の仕事を頼まれたり本を薦められたりする
の3点。
あとはそれぞれの作家さんの持ち味が存分に発揮されています。
日常の学校や図書室が舞台だったり、まったく違う世界でのお話もあって
キャンディボックスやクッキー缶の色々な味を楽しむような気分で読みました。
茜色の紙が見えるのは誰でもというわけではなく、
本を読む子とも限らず全然興味のない子でも見える子は見えるっていう
決して本好きな子ばかりではないのが現実感ありますね。
見えるのは「いま、その本を必要としている子」たちで、他にも見える子がきっといて
この本はたまたまこの5人の場合を書いたんだろうなと思う。
(ランガナタンが言った「すべての人にその本を」みたいな感じの)
子どもたちは過去と未来を行き来したり、妖怪のためにご飯を作ったり、秘境で絶体絶命になりかけたり
わかり合える相手を探してみたり、書きかけの読書感想文のために大冒険をしたりして
本を通した体験を終えるとみんな少しだけ元気になっているのがいいなと。
しかも冒険の始まりがすべて1冊の本であるというところに
ビブリオ・ファンタジーとかドラクエのぼうけんの書とか二ノ国のマジックマスターみたいなロマンを感じる☆
人生の節目に本があるって素敵だ。

ひとくちに小学5年生といっても主人公たちの性格や人間性は様々で
ひたすら元気な子や何となくふわふわしてる子、責任感の強い子や厭世的な子まで様々。
ただどことなく地に足が着くか着いてないかみたいな危うさとか、
目の前の出来事をストンと受け入れて大冒険するにはギリギリ可能な子たちな感じは
共通しているように思いました。
だからこそ誰かの助けが必要で、それが彼らの場合は本だったってことかもしれなくて
それをあの司書さんは見抜いて彼らに声をかけたのかもしれない。
何という理想のレファレンス!
図書館で働いてると完璧なレファレンスなんて都市伝説じゃないかと思いがちですが
こういう物語や夜明けの図書館とか読んでるとやっぱりがんばろう…!って思う。

狂言回しの司書さんの口調がどのお話も同じように描いてあるのはあえて統一されたんだろうな。
(この本の発売後に行われたトークセッションで(遠くて行けなかった)、
図書室も扉は木なのか、ガラス張りなのか、何階にあるのかなど話し合われたと聞いた)
彼女のいでたちが背が高くて黒のロングヘアに白いワンピースという描写で、
白いワンピースの人といえば竹下文子さんの『青い羊の丘』にもそんな人が出てたな…と
ふと思い出しました。
主人公たちにだけ見えてるっぽかったけど他の子たちはどうなのかな、
茜色の紙が見えれば司書さんのことも見えて、紙が見えなかったらやっぱり見えないとかなのかな…
そもそも人間なのかどうかもわかりませんけども
(人でないとしたら精霊なのか神様なのか妖怪なのかどう呼べばいいのかもわからないけど)、
人間誰でも人生の中で一度はこういう人に出会う、みたいな雰囲気の人に感じました。
図書館や本の神様がどんな形をしているかというのはたまに妄想しますが、
日本にそういう神っていましたっけ…思金神とかは知恵の神だしな…。
(書物が御神体みたいな神社ってないですよね)
西洋だと書物や図書館の守護聖人はアレクサンドリアのカタリナとかローマのラウレンティウスですかね。


巻末に5人の作家さんたちによる座談会が掲載されていて、
本との出会いや、どんな本を読んできたか、これからの読書の展望みたいなトークが交わされていました。
空想することがお好きだったという工藤さんが「子どもの頃に授業中に色んなことを想像しても
他のクラスメイトはやってないから「自分は変なのかも」と思っていたけど、
読書好きのお友達ができて一緒に物語を書いたらとても気持ちよかった」とおっしゃっていたり
菅野さんが「読んだ本を友達にプレゼンするときちょっと盛って面白く話した」とおっしゃるのとか
わ、わかる…!と同意しまくり。
まはらさんの「わからないところはとりあえずそのままにして読み進めてもいい、読書に訓練は必要」とか
濱野さんの「講演などで本は読まなきゃいけないものではなく読まなくても生きていけると話すけど
同時に読書をしないのはもったいないと伝えています」とか
名言もたくさん飛び出していた。
菅野さんの「わたし絵本もマンガも大好き!どのジャンルにもどんどん手を出して!」にも全力で頷いた。
この年齢にならなきゃ読んじゃいけないとか、この年齢でこれ読むのはみっともないとかたまに聞くけど
そんなのはないんだよー!
本は本だしその人はその人、あなたはあなただよって伝えたい。。

あと、まはらさんが「弓道がテーマの小説『たまごを持つように』を書いたとき弓道の取材をしたけど
弓を引く感触を探る気持ちで書くためにあえてその場では引かなかった」みたいなお話をされていて
それはわたしも何となくわかる気がしました。
歴史もののお話を書くために色々調べはするけど、必ず意識するのが書く対象の年齢なんです。
わたしたちは未来人ですから歴史上の人たちがどう生きて死んだかある程度わかっているけど、
ご当人は自分がどうなっていくのかまったく知らないわけです。
なのでうっかり「その人物がその時までに経験してないこと」を書かないように結構、神経使います。
結果を知ってるとどうしても伏線張りたくなったりしますけどね…
ニヤリとするくらいはやってもいいけど、できるだけやらずに描きたいなあといつも思います。
リアリティとフィクションのバランスって難しい。
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テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

現代の天岩戸。

富安陽子さんの『天と地の方程式』がおもしろいです。
3冊とも発売とほぼ同時に読んで、たまたまですけど全3巻読み返したのが先週の夏至だったので
ちょっと感想めいたもの書いてみることにします。
(物語のクライマックスが夏至の日の出来事なのだ)
ちなみに1巻を読んだのは歌舞伎座で幕見席のチケット買うために並んだ時だったと記憶してる…
本のページをめくりながら目の端に映っていた風景の記憶が待機列の椅子なので。
夏至に読み返したい本がまた増えましたお~。
真夏の夜の夢とか、ムーミン谷の夏祭りとか、ハウルの動く城とか、精霊の守り人とか。

ニュータウンにできた小中一貫校に通い始める男の子とクラスメイトが
ある日学校の廊下でヒョイと異空間「カクレド」に迷いこむところから物語が動き始めます。
やがて現れた「頭の中に日本語で話しかけてくる猿」によって
それは天ツ神と黄泉ツ神の戦いにカンナギとして選ばれたためと判明します。
カクレドは黄泉ツ神がもっさり入っている繭であり、あの手この手で容赦なく襲いかかってくるので
彼らをかわしながら繭のほころびを探して穴をうがち脱出する…と書くとRPGみたいだし、
カンナギ同士でタッチするとカクレドに放り込まれるのはわかっても
カンナギは目印がついてるわけじゃないからタッチするまでわからないジレンマもあれど
次第に一人、また一人と仲間が増えていくのも何だかRPGみたいですが
黄泉ツ神の攻撃が意識を乗っ取るとかカンナギの恐怖を食べるとかの精神系のため
ドキドキというよりちょっと、怖い感じ。
冨安さんの物語は神や妖怪を親しみやすく感じさせてくれますけど
同時に彼らは理不尽であり祟るものであるというのも思い出させてくれますな。

カンナギは巫(神子のこと)だし、選ばれるのは6~14歳の子どもに限られていたりするし
黄泉ツ神たちがみんな片目だったり、鏡の光が脅威だったり
米粒で結界張るとか稲荷祭文との関係性とか、閏年生まれの子は誕生日にしか年を取らないとか
ルールがいちいち神話的民俗学的なのも相変わらずの富安文法。
クライマックスで円周率を唱え、フルートを奏し、千引岩に見立てた巨大柱で黄泉ツ神を封印するのは
黄泉比良坂と天岩戸を現代ヴァージョンでやるとこうなる、みたいなひとつの形式みたいな…。
引用先の心当たりが無数にありすぎて想像すればきりがありませんが
それらと、これまで富安さんが書いてこられた物語の要素がてんこ盛りになっているなと
読み終えて思いました。

アレイは富安さんの物語によくいる典型的な巻きこまれ型主人公ですけど
富安さんの男の子主人公、久し振りに読んだ気がする。
(他に男の子主人公ってムジナ探偵局とかオバケ科シリーズとか、あと2~3冊くらいですよな)
記憶媒体並みの記憶能力は彼にとって強さであり重荷でトラウマでもあったのが
Qがコントロールできるようになれば大丈夫ってアドバイスしたとき救われるとまではいかなくても
考え方として腑に落ちたみたいだったのが少し安心しました。
名前が森有礼(アリノリ)と同じって最初に出てきたけど
古事記から見つけた稗田阿礼を意識してアレイと自称してるのがおもしろいし、
名前の設定をここぞというところやクライマックスで思ってもみないほどに活かすのが
富安さんのすごいところだと思う。
音楽と円周率をつなげるとか誰が思いつきますか…!
学者やクラスタさんが数字や数式を音楽にたとえるのはよく聞きますけど
それを(物語の中とはいえ)実際にやってくれて
しかもπを数百桁ぶん唱えるアレイむちゃくちゃかっこいいんですけど!
「○○できるのはおまえしかいない」っていうセリフは汎用性高いなと思うし
無数の物語で合計数千、いや数万回以上言い尽くされてる言葉でしょうけど
聞くたびにうおおお!!ってたぎる。
それにしても天音をどこかで聞いたことあるって言ってていざ思い出したら
ドレミを数字に置き換える癖から円周率だと導き出すくだりはわたしにはとてもできない発想でした。
数学クラスタさんだったら気づくのかな…。

でもQの話を聞いてると数学おもしろそうって思えるから不思議。
すべての法則や公式は発明ではなく発見だとか、
オウム貝の渦巻きを拡大するとハリケーンになり、さらに拡大すると星雲になるとか。
数学は神の設計図であり世界システムかあ…。
彼が口にする用語にいちいち「そんな問題あるんだ」「そんな定理あるんだ」などと
つぶやいてる程度には数学オンチなので、注釈あったらよかったなと初読時は思ったのですが
再度読み返したときに展開があまりにもスピーディーなことに気づいて
これ注釈ついてるとかえって物語に集中できないからこのままでいいかなとも思いました。
気になる人は辞書引いたり教科書見れば載ってるかもしれないよね。
3巻のラストで「超新星爆発の音はファ、赤ちゃんの泣き声はラ。宇宙では死と生がハモっている」とか言い出したときは
「へー」と「どうしたんだQ、ポエマーじゃないか」と同時に思いました、
マンガで読んだって言ってたけどそれ現実に存在しますか…読みたい。
…というかこの本で一番謎だらけなのはQのお姉さんですよ…。
Qが電話かけたり事後報告する時しか出てこないけどコロンボの「うちのかみさん」レベルに姿なき存在感。
お姉さんのカンナギ経験については目覚めずに終わった人という推理をイナミがしてたけど
もし経験済みでQに秘密にしてるだけだったとしたら前日譚が書けそうだなと思った。
ぜひ検討してほしい~。

ヒカリは頭脳派というより感覚派の天才肌なのかな、
ピアノ弾いてるシーンは音楽の申し子のような描写だし、自分のイメージのままに奏でてそう。
自身のトラウマからピコを助けに行こうとするあたりが人の良さが出ていて好き。
「ピコくんが混乱するから」と自分を名字じゃなくヒカリ呼びにしていいと言う場面は心がポカポカしました。
アレイもアレイ呼びでいいって言いやすくなったしね。
春来は戸籍名はハルコだけど訓読みにするとハルクになって、普段から力持ちな子ですが
みんながハルクって呼んでる時の方がとんでもない力を発揮してる感じ。
アレイもだけど、ハルコも名前の力を感じずにはいられませんでした。
本人の意志は真逆ですが^^;
ピコくんは大きいお兄さんお姉さんに囲まれているのであまりしゃべりませんが
お兄さんお姉さんたちから全幅の信頼を一身にあびて仕事してるのすごいかわいい。
安川くんは最初ただのチンピラかと思ってましたごめんなさい、
猿を介してお話してたのはみんなに信じやすくさせるためだったけど
日輪と猿が切っても切れない関係という言い伝えが背景にあると思います。
猿田彦とか日吉丸(豊臣秀吉の幼名)とかの。
関西ことばでしゃべるのも、日本神話や古事記は関西から生まれたものだしなあ。
というかイナミ…名探偵コナン君でさえ「見た目は子ども、頭脳は大人」ってちょっとややこしい設定だけど
イナミは「見た目は大人、中味は子ども、でも子どものときは大人の時の記憶とカンナギの知識があって
大人のときは子どもの記憶はなくて子どもの人格の方が無駄に頭がいい」という、更にややこしい設定で
本人による説明セリフ3回くらい読み返しました。。
4年に1度の誕生日に年を取るって、ありそうでなかった設定ですよな…。
よく物語に出てくる、主人公より長く生きて知識のある人たちって渋かっこいい場合が多いけど
(ジグロとかハヤとか、または雪政みたいな残念なイケメンとか)、
富安さんがそういう人を書くとイナミとか菜の子先生とかムジナ探偵とかホオズキ先生とか
夜叉丸おじさんみたいになるのはなぜなんだぜ。
いや、おもしろいんですけど(笑)。

あとここにもちょっと書いたような、富安さんの古典と科学と神話の混ぜこぜっぷりも健在でした。
結界をテリトリーと言ったり、黄泉ツ神たちをザコキャラとボスキャラにたとえたり
カクレドのほころびを「靴下に穴があくみたいなもの?」ってまとめちゃったり
天ツ神はこの世のどこにでも宿ってるという点で細菌と同じようなものって言っちゃってるのは
この本くらいじゃないかぬ(笑)。
ファンタジーや冒険ぽいところからいきなり現実へ引き戻されるこの感覚…嫌いじゃないぜ…!
(わたしが今まで一番秀逸と思った言い回しは、
荻原規子さんのRDG3巻で泉水子が姫神をうまくおろせなくて言った「山側だと入らないとか」に対する
深行のセリフ「携帯の電波が入らないみたいな言い方だな」です)

あと少し戸惑ったところがあって、
ハーメルンの笛吹きについてイナミが結構細かく生徒たちに説明してたんだけど
もしかして笛吹きの話ってすでに説明が必要なくらい「みんなが知ってるお話」ではなくなってる…?
何をどこまで説明するかは著者と編集者の判断だと思いますがあえて入れたってことは。うむむ。

五十嵐大介さんの表紙画、ポップな感じとおどろおどろしさが共存してておもしろいです。
漫勉でもザクザク描いてらしたタッチがいい感じに出ている。
イナミがやたらイケメンなんですけど、この口から子どもの声が出ると思うとシュールだな…。
1巻に数字、2巻に音符、3巻に惑星記号が飛び交ってる装丁デザインもすてき。


さて、さて。
2016mina.jpg
夏越の祓が近いので花扇さんにて水無月をゲットしました。
白い外郎は氷をかたどったもので、小豆の赤い色は魔除けになるそうです。
雨が降らなければどこかの茅の輪をくぐりに行きたい。

himuro.jpg
先週の玉川高島屋「若き匠たちの挑戦(通称:ワカタク」のお菓子たち。
巌邑堂「紫都」と高林堂「煌」は福島県産ブルーベリーを使った和菓子で甘酸っぱかったし、
雅風堂「氷室饅頭」は加賀藩の氷室にまつわる金沢銘菓です。
江戸時代、毎年7月1日に加賀藩は江戸城に雪氷を献上する役割があって
無事に届けられるようにと神社にお饅頭をお供えして祈願したのですって。
期間限定で買えるかわかりませんでしたが無事ゲット。いただくの初めて(*´∀`*)。

2016年がもう半分終わるわけで時の流れに神秘を感じますが、
この厄除けが終われば本格的に夏が始まりますね。
今年も夏への扉が開くぜ、ピート。

テーマ : 読書感想
ジャンル : 本・雑誌

目覚めよと呼ぶ声が聞こえ。

森川成美さんの『アサギをよぶ声』全3冊を読みました。
スカイエマさんの力強いタッチの表紙にひかれて何となく読んでみたら
続きがどんどん気になってワーッと一気読み。
古代日本のような世界観の、ひとりの少女の生きざまを描く物語です。
(人生でも生き方でもない、生きざまって感じだなと読み終えて思いましたので…
シンプルなタイトルの児童書ですが内容はすっげえ硬派でハードボイルドだった)

「男だったらよかった」とか親に言われる、紫式部日記のような書き出しに始まり
弓矢で獲物をとり布を織り金銭ではなく物々交換で生計が成り立つ時代の小さな村が舞台。
子どもたちは12歳になると成人扱いされて男の子は男屋に入って戦士になるため武術訓練に励んで
女の子は女屋に入って機織りの仕事をする…みたいなルールが
アサギの「戦士になりたい」という行動とともにさりげなく説明されて
だからハヤがアサギを追い払わなかったときは「よっしゃあ話が動き始める!」と胸が熱くなりました。
男屋の男の子たちがエスカレーター式に戦士になれるのを羨ましがりながら
夜な夜なハヤのもとに通って矢尻作りと「モノノミカタ」を習得していくわけですが、
毎日訓練ができる男の子たちと違ってアサギはハヤに毎日会えるわけじゃないから
どうしても遅れを取ってしまう。
それでも男の子たちとの何気ない会話や山で出会った猿との交流、時々聞こえる声を通して
「物事をありのままに見て、なにものにもとらわれずに意味を考え」られるようになっていく姿は
翼を手に入れたかのようで、知識は武器だなあと改めて。
戦士になるための競い合いに出場して勝ち抜いても
長老たちの反対にあって結局その時は戦士にはなれなかったけど、
その現実をまずは見つめてまた別のアプローチをかける姿勢に彼女の本気が見えて泣けた。
わたしは弓を射たことはないけど、「バスッ」のト書きはお腹に響いたな…。

タイトルにもある「声」をアサギやハヤが聞くのは無意識の具現化というか、
単に人より働く勘が声となって聞こえているようにわたしには思えたのだけど
その感覚に体が追いつけるのは本人の能力だと思う。
的を見たとき、どこにどれだけの力で矢を放てばいいかすぐわかってしかも完遂できる感じ。
(ハイキューでスパイカーが「(打つポイントが)見える」と言って綺麗にスパイク決めたりしますけど
あれに近い気がします)
ああいう現象がスピリチュアルなのかオカルトなのか、いわゆる「天に愛された」的なものか
わたしにはわかりませんけども
「今だ」「そこだ」「ちがう」など単語が多いのが古事記の一言主みたいだなって思うし
無骨な雰囲気も相まって古代っぽくてじわじわくる。
アサギはまだ子どもなので声をたよりに矢を放ってるけど、
いつか弓の名手になったら聞こえなくなるのかもしれないな…。
で、また別の新しいことを考えたり学ばなきゃならなくなったら、また別の声が聞こえるんだと思う。

ハヤのかっこよさは本人の生き方と物の見方からにじみ出ている。
山頂で火をたく夜の見張りをしながら、アサギの話をちゃんと聞いてくれて
戦士の仕事とアサギの能力と、やるべきことを具体的に示して見守ってくれるし
アサギの力量を「女の子だから」ではなく「今のこいつの力はこのくらい」的な計り方なのもいい。
1巻のラストで、仲間にするみたいな仕草でアサギの肩を抱くシーンが好き~。
読みながらなんとなく精霊の守り人のジグロを思い出していたのですが
(亡くなった親友の娘を教育するおじさんという点で共通しているなと)、
ジグロはほぼ放任してたけどハヤはつかず離れず的な関わり方ですね。
最後は諦めないでほしかったけどかっこよかった…!
あの村人たちの中にあって、彼が自分の考えを保ちながら立ち位置を確保できているのは
本人の訓練と昔からのルールがあるせいかな。
風立ちぬの「会社は全力で君を守る、君が役に立つ間は」のセリフではないですが
戦士として強いことが支えになってる部分はあると思う。

イブキとアサギの関係、イブキがアサギの気持ちを半分もわかっていなかったように
アサギもイブキの気持ちをほとんど理解できてなさそうだけど
向いてる方向が一緒なのでこれからも話し合いながらいい関係を築いていくんじゃないかと。
サコ姉さんはたぶん、アサギの生き方にはついていけない人ですが
ストレートにアサギを大切に思ってて必ず味方でいてくれるのが船を待つ港のようで好き。
ヤチとタケはいい関係だったと思うんだけどなあ…!
巫女のおばあちゃんは物語の中盤、アサギの話を聞いて頼りにしてくれるようになったら
大好きになりました。
おばあちゃんは昔アサギだったんじゃないかな…と思えるくらい話ぶりが現実的で
過去に色々諦めたり譲らなかったりしたような印象が個人的にはありますがどうなんだろう。
アサギたちが出陣するとき、舞は省略するけどお祈りだけねってしてくれるのがいいなー。
あと、何気に好きなのは機織りのおばあちゃんとナータ。
おばあちゃんは兵糧支度の手際の良さがめちゃくちゃかっこよくて
きっとダイとハヤを怒鳴りつけながら見守って来た人だろうなと思う(╹◡╹)。
ナータは「戦はいい商いになるの」のセリフでガチだ!って思ったし
経験に裏打ちされたリスクマネジメントからちょっとやそっとじゃ動じなくてまさに「商人」って感じ。
アサギと同じようにロールモデルを持たない彼女だから
何にもとらわれずに見て考えて判断する癖が無意識についてそうで
主体的に生きてますね、たくましい。
アサギに商売の仕組みや舟の漕ぎ方を教えるシーンがほほえましい。

読んでるうちにこれはやばいんじゃないかと思ってたことが杞憂に終わったのもよかった。
なりたくてたまらなかった戦士が、どういう仕事かわからない時ほど憧れて
おばあちゃんに「おまえを戦士にする」って言われた時には嫌というほど知ってしまった後なので
全然うれしくないってアサギの気持ちがとにかくリアルでした。
実際なっても、今度は「新米だから」と話を聞いてもらえなくて
やりたいことのためには戦士である必要はないかもしれない、とあっさり見切りをつけたり
みんなを不安にさせないために大言壮語なこと言わなきゃならなかったり
逆にみんなをまとめておくために言えないことがあったり
倒れている人(味方か敵かもわからない)の背中から矢を取って使ったり
何もかもが初めてな中でアサギが考え、声を聞きながら戦うのもものすごいリアリティ。
すべてが終わってもアサギが勝利者を自覚しないのもよかったし、
終わりではなく始まりを迎えたところで終幕なのは
レッドデータガールや風の万里黎明の空とかもそうじゃなかったっけかな。
アサギは今後、攻殻機動隊の素子さんみたいな人になっていくのか
それとも獣の奏者のエリンみたいになっていくのかどうか…ちょっと読みたい気もする。

スカイエマさんの表紙と挿絵めっちゃかっこいい~。
児童書やYAコーナーでよく見かける方ですが一般図書の装画も手掛けてらっしゃるようです。

「歌えや歌え 祈れや祈れ さあ 言葉よ命になれ
あらゆる軌跡 あらゆる出会いが 私を守ってる」
(鬼束ちひろ「The Way To Your Heartbeat」より)

そういえば猿が出てくるから申年にぴったりですね、この本。
あの猿たちは要所要所でアサギに道案内するのがいい、あとしゃべらないのがポイント高し。

他にも『さる・るるる』『おさるのジョージ』『タンタンのぼうし』『おさる日記』『ひとまねこざる』
『西遊記』『古事記』『地獄変』『天と地の方程式』あたりもよさそう。
あとドンキーコングやりたいし猿之助さんのお芝居もいっぱい見たいー!
(『猿之助、比叡山に千日回峰行者を訪ねる』はたいへん有意義な内容でした)


sansetsu.jpg
先月東博で見た、狩野山雪「猿猴図」。
猿猴捉月の故事がモチーフになってて下に水面のゆらゆらがさりげなく描かれていますが
なんかこのお猿さんは落ちなさそう…(笑)。
墨のにじみがすばらしくて、体毛のフワフワまで感じられたな~ナマ絵は、よい。

テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

鬼神に横道なきものを。

先日ネサフをしていてたまたま、竹下文子さんの『酒天童子』を見つけたのですが
読んでみたら内容があまりにもツボで沼が深すぎて危うく足を滑らせ頭からドボンしかけたくらい
すばらしかったのでその事を書きます。
どこがどうツボって、魅力を語ろうとすると「筆舌に尽くしがたい」という言葉でしか表現できないし
しかも読んだの真夜中だったからおかしなハイテンションが脳天突き抜けて
沼に落ちそうなすんでのところで踏みとどまってどうにかこうにかお風呂入って寝たけど
目覚ましが鳴るまで夢も見ないで爆睡した。
気持ちがバンジージャンプしまくったのと、よほど頭使って疲れたっぽいです^^
実はまだ心が完全に落ち着いていませんので
たぶん今から語るのもまとまりのない話になると思います、ご了承ください(^v^)←

あらすじはリンク先に書いてありますしご存知の方も多いと思いますので割愛しますが
ざっと申し上げると今昔物語集や御伽草子集に載っている一条戻り橋の話、土蜘蛛、鬼同丸、
酒呑童子の説話などを源頼光を主人公にまとめてつなげた連作です。
ゆさは鬼びいきのためあまり頼光側の小説って読まないのですけども
この本は著者が黒猫サンゴロウシリーズの竹下文子さんと聞いたとたんに興味が沸騰して
図書館で借りてきてパラパラめくってみましたら描写がもういろいろツボだらけでしてな。。
たとえば渡辺綱が戻り橋で一悶着あって朝帰りしたときの様子は、

近づいて、顔を見た。口を横一文字にむすび、かたい表情をしている。
髪は乱れ、衣服もあちこち破れている。ふだん身ぎれいな男にしてはめずらしいことだ。
かたわらに、ぼろ布でくるんだ大きな包みがある。「ごらんいただけますか」
綱は、何重にもなった包みをほどいた。ごろりと出てきたのは、なんと一本の腕だった
」(p.16-17)

なんじゃこりゃーー!!(ダァン!!!←床叩)
無口でふだん身ぎれいな部下が乱れた服装でおっかない顔して帰ってきて
何重にも巻いた布から鬼の腕ごろんて出すとかむりむりむりむり怖いかっこいいずるいー!
他にも、

「一条大宮まで使いにいってもらいたい」「承知しました」
なぜかとは決してたずねないのが綱である。4人のうちで自分が呼ばれたということは
内密のだいじな用なのだと、こちらが言わなくてもわかっている
」(p.13)
「おみごとでした」綱がそばに来て、すばやく手綱をつかみ、暴れる馬をなだめた。「おまえもだ、綱」」(p.93)
わたしが17のときから、渡辺綱は、そばにいた。
わたしの影のようにうしろにつき、あるいは盾のように前に立って、
いつも言葉少なく、わたしをまもり、支え、はげまし、ときには叱ってくれたのだ。
わたしの命に従わなかったことはない。呼びかけて答えなかったことはない
」(p.226)
「わたくしがお仕えするのは、頼光さまおひとりです」にこりともせず、さらりと言いきった。
その顔、いつもの綱である
」(p.229)

待って待って待ってもえしぬ待っっっって!!!!!!
なんだこのおまえの気持ち全部わかってるぜな主人と一を聞いて十を知る部下は。
綱が言葉を短く切っても表情だけで言いたいこと読み取る頼光がハイスペックすぎるし
綱も綱で口数少なくて頼光が話しかけなければいつまでも黙ったままとか
しかも12歳で17歳の頼光のもとへ来ておそらく10年以上仕えてる(←ここ重要)という、
まさに最強の萌え要素てんこ盛りの設定がやばすぎて沼落ち5秒前。
頼光やその部下の知識は名前と役職となんとなくの人物史だけで10年くらい更新されてなかったし
あえて誰と聞かれれば綱一筋だったのにまさか頼光&綱にセットで惚れるなんて
わたしが一番びっくりだよ!
今まで好きって思ったこと一度もなかったからこわい。新境地こわい。
他にも空飛ぶ茨木童子から逃れて北野天満宮に落下して屋根は壊れたのに自分は無傷な綱とか
頼光が鬼同丸の目に深い闇を見て「わたしはこの男を救えない」って思う一瞬の交差の妙とか
そういうシチュエーションが大好物なのであれよあれよと物語に引きずり込まれてしまって
冒頭のような有り様になったわけです。

頼光四天王の他の3人が明るくてアホでみんなかわいい。
「姫さまは軽いなあ」っておどけた調子で桜姫を抱えて助け出す坂田公時とか
諏訪明神のお告げひとつで頼光のもとへ押しかけてきちゃった碓井貞光とか
賀茂祭を見に行きたいけど堂々とは行きづらい(当時はまだ武士の身分がとても低かった)から
牛車を牛飼いごと借りてきちゃう卜部季武とか。
(結局、3人とも車酔いでヘロヘロになって綱にめちゃくちゃ怒られるんだけど)
風邪をひいて寝込んだ頼光に薬草をせんじた公時が言った
「苦いけど飲んでください、頼光さまがいなきゃおれたちはどうにもならないんですから」に
どうにもならないのはこっちの台詞だってごちる頼光のモノローグがツボでした。
ここに「この人たちよくわからないなあ…」って思ってそうな藤原保昌と
「この人たちほんとしょうがないですねえ」って思ってそうな安倍晴明が加わっててさらにツボ。
(竹下さんがブログでおっしゃっていますが、
保昌については月岡芳年の月下弄笛図をご覧になったそうで
わたしも大好きな絵なのでとてもうれしかった)

しかし本当にとんでもなかったのはさらにその先、
頼光主従の設定以上にドリームすぎたのが酒呑童子のキャラクターだった…。
廊下に足音と、衣ずれの音がした。あらわれたのは、ひとりの男だ。
色白で、まず美男子といっていい。黒々とした髪を結わずに切りそろえて肩にたらし、
とろりとなめらかな白絹の狩衣に、目のさめるような緋色の袴をつけ、
その長い袴のすそをしゅっしゅっと鳴らしながら足早に歩いてくる。
「山伏か。道に迷ったとな。それはいい」
」(p.169)

かっk…!!!!!!(←かっこいいと言おうとしたけど萌えのあまり声帯が動かなくなった音)

若く、ものごしは尊大だが、けっして粗野ではない。育ちもよく教養もありそうなしゃべり方だ。
体格はがっしりとして胸も厚く、武人のようだが、顔や手は白い。
肩までとどく童髪がひどくちぐはぐで、どこか人形じみた印象をあたえている
」(p.170-171)

なんじゃこりゃーー!!(ごろごろごろごろ←床転)
わかるわかるわかるわかる竹下さん、うわーっ*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
まさに!まさにわたしがイメージしていた酒呑童子はこれだ!!
絵本や御伽草子から抜け出てきたままの、世の中へのどうしようもない諦観にさいなまれながらも
好き勝手に生きる気持ちの方がずっとずっと勝っている酒呑童子ー!
長いことこんな鬼小説を探してて見つからなくて、誰も描いてないのかと思ってたけど
諦めずに探してよかった、こんなところにいたんだねえ(*´Д`)。
道理を無視して、気分のままに振る舞う、数百年も生きながらちっとも成長のない童子を
竹下さんが実に生き生きと描いてくれてて泣くシーンじゃないのに涙出ました。
だから後半のバトルシーンで
童子が、ぱちりと目をひらいた。血走った眼玉がぐるりとまわって、
わたし(頼光)に焦点をあわせ、ひどくおどろいたように見つめた。
「だましたな、客人」口が、そう動く。「だましたな」
」(p.209)
涙腺決壊につき自分の涙で溺れかけたアリスのごとく涙の海へ出航いたします!!面舵いっぱい!!!
御伽草子の「鬼神に横道なきものを」のような絶叫ではない、
でも低く低く冷え切った声が聞こえてくるような描写がぐわっとくる。
絵本や御伽草子を読むたびに思うのですが、この本でも思ったので書きますが
鬼で盗賊って時点で常に死と隣り合わせなのは童子も承知の上だったと思うけど、
お酒が入っていたとはいえ寝込みを襲われる可能性を考えなかったのは童子の落ち度だけど
山伏(の姿の頼光)たちを客と疑いもしなかった心根の良さを感じずにはいられないんですよ。
伊吹山に捨てられて山の動物たちに育ててもらったのと
刹那的な性格だけど盗賊の本領発揮したらとてつもないのと
いわゆるはみ出し者のまま社会の影で死んでいくことを考え始めると沼の深さにゾッとする。
…あれ、これ大学時代に小野篁がはみ出し者っぽいことの残酷さについて考えすぎて
気がついたら沼に落ちていた感覚と似て…る…??
あかん思考を停止しろわたし!
これ以上鬼小説沼にはまってみろ、間違いなく仕事も私生活にも支障が出るぞ!!

あと茨木童子もいろいろすばらしくてですね(結局語ります)、
一条戻り橋で綱を誘惑しながら「行く先は愛宕の山ぞ」と凄んで綱に襲いかかるシーンの迫力!
虫の垂れ衣姿の女性の袖からぬっと毛むくじゃらな鬼の腕が出てくるとこ想像してくださいよ、
ちぐはぐな妖しい魅力に拍車がかかって頭がこんがらかりそうになりました。
闘って腕を斬られてしまっても諦めずに取り返しにいって
「綱の顔をみてにたりと笑」って屋根をつきやぶって空を翔けていく。
でも最後の最後で綱に「三度はだまされん」と見破られて戦って負けてしまうけど
顔が綱をだましたときの女性に次々変わってから灰になり消えていくっていうのが、切ないよね。

何だかテンションがおかしいですが、鬼に関しては沼どころかマリアナ海溝に沈んでますので
いつものことです、ご安心ください。
しかしときめきすぎてとても疲れる本ですた…。
竹下さんて、短いけど的確でいきいきと洗練された文章を書きますね。かっこいい。

あ、あと変なテンションついでに語ってしまいますが
サントリー美術館の「酒天童子絵巻」と逸翁美術館の「大江山絵詞」については
これまでにも何度か書いていますが、あえて何度でも力説する!
あの2つはものすごくよくできた絵巻だぞ!
比喩とか誇張でなく本当に、見れば見るほどとにかくすごいって思う。
首だけになった酒呑童子が頼光の兜にくらいついていくクライマックスは狩野元信の筆が踊ってるし
少年姿の童子の美しさたるや土佐派の筆が冴え渡ってるよ!
しかしやはり武士と鬼の戦いを描いた絵巻なので梨汁、じゃなかった血ブシャーな場面もあって
美術館で見るといつも「ギャー怖えええええ!」と心底思うのですが、
大江山絵詞を見た後で酒天童子絵巻を見ると
とても残酷に感じた土佐派の筆致も元信に比べるとまだマイルドで控えめだったんだなと思う。
ほんと殺し合いとかするもんじゃないな…。


korin8.jpg※クリックで大きくなります
「風神雷神図屏風Rinne」光琳・乾山編その8。7はこちら
季節は冬を迎え庭も真っ白のある日、乾山が訪ねてきました。

乾山「にーちゃーん、どこまで進んでますか…って、何その格好」
光琳「さむい」
乾山「北山におしどり見に行かない?」
光琳「いやだ。さむい」
乾山「もー出不精……何描いてるの」
光琳「今月の支払い分」
乾山「……」
多代「細井さんと吉田さんとこ」
乾山「ああ、はい」

こたつに入っているのは妻の多代と、光琳の娘のそねです。

龍安寺は冬になると鴛鴦が飛来したため、鴛鴦寺と呼ばれることもあったそうです。

光琳は生涯で妻と妾が合わせて6人、子どもが7人いて1人は早世、数人を養子に出しました。
細井つねから子の認知をめぐり訴えられた際には屋敷や諸道具、金子を差出しています。
5番目の子寿市郎が養子に入った小西彦五郎(銀座役人)の家に尾形家の遺品が伝わり、
今日において光琳や乾山の生涯を知るための貴重な資料となっています。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光案内。

教文館で開催中の佐竹美保さんの展覧会に行ってきました。

佐竹さんはSFやファンタジーの表紙絵や挿絵でご活躍中の画家さんで、
書店で彼女の絵を見ない日はないというくらい、幅広いジャンルの表紙を描いていらっしゃいます。
虚空の守り人、シェーラひめのぼうけん、盗まれた記憶の博物館、勾玉シリーズノベルス版、
ハウルの動く城シリーズ、魔女の宅急便、黒い兄弟、サラシナ、竜が呼んだ娘などなど
大好きなものからまだ読んでなくてタイトル思い出せない本まで様々!
今回はそんな中からダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの本につけた絵と
大伴家持を描いた絵本の原画が見られるとのことでワクワクしながら銀座へ。
(ところで教文館はかつて村岡花子さんが勤めておられた出版社でもありますな)

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まずは教文館6階、小さなギャラリーで行われている展示に行きました。
「春の苑紅にほふ桃の花 下照る道に出で立つ娘子」(万葉集19巻4139番)をもとに
奈良時代後期に大伴家持が越中守として過ごした5年間を描いた
絵本『春の苑紅にほふ はじめての越中万葉』の原画展です。
絵本を企画した富山県は佐竹さんの出身地だそうだ。
こちらに少し内容紹介がございますのでどうぞ、絵も見られます)

展示室はちょうど誰もいなくてゆっくり鑑賞できました~。
家持をはじめとする人物がすばらしいし、静謐で美しい風景画にため息しか出なくて
室内をぐーるぐーる回ってしまった。
絵本原画のため文字が入ってない状態で見られたのもよかった^^
鵜飼たちの絵と、家持の妻が桃の花に囲まれている絵が特に美しくて
絵から光があふれ出てくるとでもいえばいいのでしょうか、
松明に照らされた人物と夜の紫色、咲き誇る桃のピンクと薄紅色が
やさしいグラデーションで表現されていました。
あと馬に乗って延槻川をわたる家持が神がかり的なかっこよさで夢に出てきてほしいレベル。

ギャラリーの入口に絵本が平積みされていたので脊髄反射でレジに持ってっちゃったよ、
表紙の家持が優雅で美しい~☆
店員さんに「9階の展示はご覧になりました?」と聞かれたので、これから行きますと答えたら
割引券がいただけました!やっほう。

そんなわけで、9階の「ファンタジーを描く」展へ。(こちらは有料)
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「佐竹美保のダイアナ・ウィン・ジョーンズの世界」と題して
佐竹さんがジョーンズさんの本に描いてきた原画の数々が
ご本人のコメントが添えられて100点以上も展示されています。
徳間書店の本だけでも20冊以上のジョーンズ作品に挿絵をつけてらして、
東京創元社や早川書房なども合わせると40冊くらいあるんじゃないかな…。
ジョーンズさんは「世界中の挿絵画家の中で、彼女の絵が一番好き」とおっしゃっていたとか。
わたしもそう思います~ジョーンズワールドは佐竹さんの絵がぴったりだと思う!

こちらは6階の展示とは打って変わってファンタジックな絵のオンパレードです(笑)。
特に広いフロアってわけでもないのですが、人少なかったし作品の間近まで寄れるしで
ゆうに1時間半はいたな~。
画材や紙の種類、主線や色塗り、ホワイトや絵の具のタッチまで
印刷ではわからない部分も見られて感動しました。
グリフィンの年の原画がなんか持ってる文庫の表紙と違う印象がして、なんでだろうと思ったら
原画の群青の空の上にあるピンクの空が文庫では切られて群青だけになっているとわかって
こういうのも原画展示のいいところだなあと思いました。
何より佐竹さんのセンスがすばらしいなって改めて。
ジョーンズさんの物語っておもちゃ箱みたいで色んな要素や小物や伏線やギミックが
ぎゅーっと濃縮されてぐっちゃぐちゃになってるのが魅力なんですけど、
佐竹さんも負けずに詰め込んで描いてますよね。
読み終えた後パタリと本を閉じて、さあ今回の表紙や裏表紙には作中の何があるかな?と
探すのがジョーンズ×佐竹本の醍醐味だよね!
本を楽しんで、「これあれだ」「これもあったー」って絵でも楽しめる。
あと、今回は展示されてないけど挿絵のほかに作品世界の地図なども本に添えてくださるので
ジョーンズさんのファンタジー世界を解説してもらってる気持ちになれます。
しかも「ああ、そうそう、こんなのを想像してたの!」って
わたし(読み手)の想像にどんぴしゃな絵や図を描いてくださるから、余計好きになっちゃうよね。

面白かったのがキャプション代わりに添えられている佐竹さんのコメントたち。
佐竹さんの文章ってあまり読んだことないのですが、
こんなに面白いこと書かれる方だったとは(^ω^)。
ダークホルムの表紙で「豚さんが見ているのは、あなたです」とか
牢の中の貴婦人は「天井から覗いているあなたを女性が見上げた図」とか
七人の魔法使いの表紙には「ジョーンズさんを登場させました」とか
キャットと魔法の卵は「ギー、バッタンと音が聞こえてくる感じ」とか
鬼がいるの表紙で「作中に出てきたバレリーナ人形が大変なことになっています。遊びです」とか
魔法×3の表紙が瓶詰ぎゅうぎゅうなのは読み終えたときの佐竹さんの頭の中だったとか
「わかるわかる」から「なんじゃそりゃ!」まで
制作裏話や佐竹さんが仕込んだ秘密がいっぱいでした。
シリーズものは関連性を持たせることもあって、たとえがクレストマンシーシリーズの4冊は
「魔法使いはだれだで上から下へ、クリストファーで下から上へ、
魔女と暮らせばでぐるりと回し、トニーノで前に飛び出して
魔法がいっぱいでお風呂の水を抜くように真ん中に吸い込みました」そうな(笑)。
魔法使いはだれだの裏表紙に描いた赤ちゃん靴下の絵を
ジョーンズさんが大笑いしてくださったというエピソードが宝物なんですって^^

展示室中央のケースには佐竹さんの机の上の様子が再現されていまして
画材やスケッチブックはもちろん、筆バケツやハサミや拡大鏡代わりのメガネ、
描くための資料群や編集者さんとのやり取りを記したポストイットまであった(笑)。
小さくなって使えない消しゴムや、使い切った絵の具のチューブに針金で手足をつけて
"ケシゴムシ"と名づけてテーブルから逃げ出そうとするみたいにして展示されていたのが
まっくろくろすけみたいでかわいくて、
わーこれ今度やってみよう!って思った(゚∀゚)☆
絵の具はカラーインクや水彩などがありましたが、コピックがあったのが
わたしもコピッカーなので個人的に感動。
『アーヤと魔女』はコピックで塗ったそうです!言われてみれば確かにあの色はコピックだったね。

イギリスやアメリカで出されたジョーンズ作品の原書も展示されていて、
佐竹さんの絵で見慣れている身としてはなんか不思議な感じ…。
佐竹さんとは全然別のシーンを表紙にしている本がほとんどですが
七人の魔法使いのゴロツキの表紙登場率が異様に高くて
ゴロツキは画家にとって面白い題材なのかもしれないなあと思った。
泣きそうになったのが、佐竹さんが「ミステリーズ!」47号に寄稿したジョーンズさんへの追悼文。
わたし発売当初読めなくて、初めてここで読んだのですが
部屋が散らかりっぱなしのクレストマンシーのもとへ
「なんてめちゃくちゃな世界なの!」と言いながらダイアナおばさんが踏み込んでいくくだりは
そうだったらいいなと思っていたことを代弁していただいた気がしてガチ泣きしそうに。
魔法泥棒の表紙コメントに「たぶんジョーンズさんは今頃こんな風に
ファンタジーの世界を旅していらっしゃるのでは」とあって、これもうんうんってうなずきました。
佐竹さんとジョーンズさんは直接会ったことはないそうですが
本を通して十数年おつき合いしてこられたんだなあと年月をしみじみ感じました。

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「撮影可能スポット」とイラストつきで展示されていたパネル。
『アーヤと魔女』の挿絵の下絵で、
ベラ・ヤーガの家で奮闘するアーヤが生き生きしています!すごい描きこみ!
近くには佐竹さんお手製のヤーガ人形もありまして、毒々しい色ですがすごくかわいくて
展示室入口にいた田中薫子氏作のボス人形と一緒に連れて帰りたかった。

そしてですね…!
会場の奥には小さなテーブルがあって画材が置かれているのですが
なんのためかというと、佐竹さんご本人が在廊されるためだったりします。
そうですご本人に会える日があるんです!お話できるチャンス☆→こちら
わたしが行った日にもいらっしゃって、有難いことに6階で購入した絵本にサインをいただけて
たくさんお話してくださいました!
さっきの佐竹さんの机の上再現展示にあった豚ちゃん写真は
ダークホルムを描くときモデルにしたそうですが、本当にたまたま巡り合えたもので
「豚が正面向いてる写真がなかなかなくてね~」と、資料さがしのご苦労もしのばれました。
絵は全体を決めて背景から描いていくそうですが、
画材は特に種類で分けたりはせず机に雑然と置いておいて描くときに探すとのことで
うわっそれわたしと同じ…ってちょっとうれしくなった。
「小学校の図工用の絵の具、あれ全然固まらなくて使いやすいよ」などなど
画材についても教えていただいたり。
あと、美術館のお話ができたのがすごくうれしかった!
佐竹さんもよく各地へ行かれるそうですが、特に科博がお好きとのことで
アファール猿人の再現模型(通称「ルーシーちゃん」)によく会いに行かれるとか
ヒカリ展できれいな石をたくさん見たわとか、
医は仁術展にあった解剖の絵がリアルで当時の絵師よく描いたなって思ったとか
新美術館に行きたいとおっしゃったのでマグリット展をプッシュさせていただいたりとか
ものすごく有意義な時間でした…本当にありがとうございました!
教えてもらった六本木の豚料理のお店いつか必ず行きます。

予定の合う方ぜひぜひ行ってみてください~とっても気さくな方でしたよ☆→こちら

クレストマンシーシリーズの部屋にはクロッキー帳が置いてあって
メッセージが書けるようになっていたので思いのたけを書かせていただきました。
佐竹さん、そしてメッセージ書こうとしてうっかり前のページめくっちゃった鑑賞者の方、
日本語おかしい文章があると思いますが生暖かい目でスルーしてやってください。
隣には佐竹さんのお仕事場を撮影したアルバムが置いてありまして、
たくさんの画材や資料に囲まれた机がなんだかハウルの部屋のようで面白かった。
特に資料の山は民族衣装や動物図鑑、科学やドラゴンの本まで
洋の東西を問わずあらゆるジャンルが揃っているのが書名から垣間見られて
こんな本あるんだ!って読んでみたくなったり。
こうした調査と取材を積み重ねて葉っぱのひとつひとつから壮大な景色まで細かく描いてるから
ファンタジー絵も歴史絵も立体感と説得力があるんですね…。
佐竹さんの絵を見ているとキャラや世界が二次元から立ちのぼってくるような気がします。
3Dみたくぽーんと飛び出してるんじゃなく、どちらかというとランプの魔神みたいな
あくまで立ちのぼって空中に留まってるイメージ。
(そういえばジョーンズさんの物語も、魔法がキラキラーって光るだけじゃなく
植物や家具や食べ物など身近なものが魔法で動くことがよくあって
そういう部分も強いリアリティを持つファンタジーとして構築している要素のひとつだと思う)
「窓から見える夕焼け」とコメントがついた写真にほおってため息が出ましたが
「オオスズメバチに驚く人体模型」の写真には大笑いしました。
本当におもしろい方だ~!

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教文館を出たら目の前の松屋銀座がこんなだったのでパチリ。
ミッフィー展が開催中だそうです。かわいい。

テーマ : 展示会、イベントの情報
ジャンル : 学問・文化・芸術

どこまでもゆける力。

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先週、ジュンク堂池袋本店の「荻原規子 ファンタジーを語る」トークセッションに行ってきました♪
荻原さんの新作『あまねく神竜住まう国』刊行記念イベントです。
池袋店の喫茶は小ぢんまりした空間で作家さんとフラットに話せるので大好きだ~。

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ワンドリンク制につきホットティーを注文。
参加者のみなさんがひととおりドリンクでほっと一息ついた頃に時間がきて
荻原さんが真珠のネックレスをつけた白地に青模様のワンピースでご登場~☆
雑誌などでよくお見かけするお姿そのまま、とってもかわいらしい方でした。

トークというと作家さんがお客さんに向かってお話するのが一般的ですけども
今回は事前に参加者から質問を募集して、荻原さんがそれに答えてくださるという形式でした。
理由もお話くださって、ご自分だけしゃべるのは楽しくないのだとか^^
荻原さんのブログによるとご本人からの提案だったらしい)
質問の募集は2月からあって、わたしも僭越ながらいくつか考えてお店に投函して
どんな風に答えていただけるんだろう~とウキウキしながら当日を迎えましたらば
なんと「用意してきたけど数が予想以上で間に合わなかったものもありましたので
知りたいことがある方は時間をとるので今日、この場で聞いてください」とのこと。ひゃー!
トークの申込みそのものも、募集からあっという間に席が埋まってキャンセルも一切なかったそうで
改めて荻原さんの人気の高さに驚きましたが
「遠慮せずどんどん声だしてね~」との有難いお言葉に一気に和んでトークスタート^^

質問は大まかに3種類に分けられていて、まずは「荻原さんご本人について」。
インドア派でお絵かきや人形遊びが好きだった子ども時代を過ごされた荻原さん、
作家になろうと思ったきっかけはナルニア国物語を読んだことだったというのは
他の著書や雑誌のインタビューなどで聞いたことがあるな~。
アスランを始め「物言う獣」の存在が印象的だったとか。
生まれ変わるなら何になりたいか?という質問にはきっぱり「鳥になりたい」。
自分の下に空間がある生活がしたいとのこと、わかるわかるって思った。
紫式部派か清少納言派か?という質問へのお答えが
「清少納言のファン!内省的な紫式部は自分だと思う」とおっしゃって
わわ、なにそれわたしも同じこと考えてましたって言いたかった…言えなかったけど(^^;)。
「枕草子の良さは中宮定子の性格の良さにあると思う。てか、定子に会いたい!」って
ファンのように語る荻原さんに会場から「アア~」と歓声があがっていて笑ってしまいました^^
(ちなみに荻原さんにとって源氏物語は「大人にならないとわからないもの、
なってから読んでもよくわからないもの」だそうで、これも同じ同じって思いました。
ユーミンの歌のように(!)原文が良くて、恋愛の背景に草花など季節が見えるのは
源氏の頃から日本人の心性にくいこんでいると考えていらっしゃるとか)

次に「創作方法について」。
お話を思いつくのは電車の中やコーヒーを淹れているときやお風呂の中など
普段の生活で一瞬、ボーっとしたときが多いようで
原稿が始まると手が勝手に書いていくし、細かい場面も書くことでわかっていくのだそうです。
ラストシーンはお話を思いついたときにぼんやり見えているが、
どうやってそこへ辿り着いたらいいかその段階ではわからないとのこと。
主人公がよく恋愛をしますよね、という問いには
成長期の10代を主人公に据えることが多いせいかも、と。
カップルというか2人で1つ、補い合わなければならない2人として考えているのだそうです。
空色勾玉を思いついたのも直接古事記を書こうと思ったわけではなく、
書いていたら「あ、これ古事記だ」と気づいたとか。
既に覚えているものでないと作品に起きてこないんですって。
「そもそも空色は古事記を捨てようと思って書いたのに(使うと引きずられてしまうから)、
狭也と稚羽矢を思いついたら日月が出てきちゃったの!古い話の力は侮れません」と
苦笑交じりにおっしゃるのがすごくかわいかった^^
空色勾玉を小学生の時に読んだという参加者さんに「よく読めたね!」と誉めなさって
勾玉男子はすごくかっこいいけど憧れの本の中のヒーローはいますか?という質問には
アーサー・ランサムのトム・ダンチョン(『オオバンクラブの無法者』)が好き、
好きな子がいると読めるよね、と笑っていらっしゃいました。
本の表紙を決めるのは編集さんにお任せしているそうですが
なかがわちひろさんと佐竹美保さんについては荻原さんのリクエストだそうです。

ファンタジーとSFについてどう思いますか?という深い質問に対しても
両者の境界は接近していると思う、SFは科学的な説明があるけど
ファンタジーは魔法が使えても理屈はいらないよね、でもわたしは理屈を作る方なんですと答えてらして
ああ、だから西魔女やRDGはああなんだな…と思った。
少女マンガのSFが好きで、萩尾望都さんなどSFにもファンタジーが出てくる漫画はよくあるし、
ジャンルはあくまで便宜上でひとつひとつの作品は簡単にはくくれなくて
作家の好きなものが出てきてSFとかファンタジーとか呼ばれるのかなと思う…というのも
わたしがずっと考えてきたことを言葉にしていただいた思いで感動しました。
勾玉三部作や風神、新刊の神竜のスタイルについては
歴史小説を書いているつもりはなく隙間を見つけて書きたいものを書いている、と。
(歴史って調べてるとハマっちゃうよねとおっしゃって会場から同意の笑いが起きていました^^)
書ききれなかったエピソードは次回作に活かしますか?という質問に
書くときは全力だから考えないけど、時間が経つとあれも、これも…と思うことはあって
スピンオフを書いてみたくなることもあるそうです。
寝かせているものはいくつかあるけど、次を書くために大切にしておきたいとか。

登場人物の名前で最初に決まるのは主人公だそうです☆
名づけは大事で、二度と変えない!と思うくらい気に入ると作品の何割かはできてる、との言葉に
なんだか陰陽師の呪を思い出しました。。
名前に真がつく子が多いと思う、という質問には「意識してなかった」と答えつつも
特にRDGの三つ子は「最初に真夏が出てきて、次に真響、真澄にしました。3人だから目立ったね」と
苦笑されていました。
キャラクターのビジュアルは何となく雰囲気が浮かぶだけだそうですが
誰かが描いた絵を見てもちがう、とはあまり思わないとかで
「絶対こんな顔って決めても意味ないからみんな自分好みに想像してね」とのことでした。
すてきだ。
主人公が勝気な女の子になる理由は、
1988年出版の空色勾玉の頃はまだ元気な女の子主人公の物語が少なかったからだと。
「ファンタジーは自分が隠れれば隠れるほど、つまり自分と違う子を書くとよい世界になります」との
言葉が、ちょっと考えたことなかったのでびっくりしました。

続いては、お待ちかねの(笑)「作品について。別名、マニアックな質問コーナー」。
これが一番数が多かったそうです(笑)。

まず空色勾玉について。
玉の御統が8色である理由は、みすまるの語源はスバルの六連星なのだけど
どこかに7つめの星があって昔は目の検査に使われたことがあるというのを知って
7つもいいけどせっかくだから8個にしよう、
昔から8という数字は深い意味を持つし、首飾りとしても8個ほしかったから、とのこと。
(闇・輝の2つの勾玉は届けられることはなく今も闇の大神の手元にあるとのこと)
白鳥異伝は菅流についての質問が多くて彼の人気が伺えました(笑)。
髪の色は真っ赤というわけではなく東洋人としての赤さ、
衣装はノベルスの表紙に佐竹さんが描いてくれたものが一番近い、
物語のその後は象子と一緒に伊津母の指導者になっている、
漁師の父親を嵐で、その後母を亡くして10代前半くらいにひとりになって淋しかったと思うけど
一族に育てられたから生活には困らなかったと思う、
玉造の腕は遠子が一目で見抜いているくらいだからそんなに高くはない、
生まれ月は決めてないけどおうし座っぽいよね(笑)、など、など。
荻原さんもマシンガン質問者さんに対して「彼のことが知りたいのね」と微笑んでいらっしゃって
マジで女神さまに見えました。すてきなだ~(´∀`)☆
薄紅天女への質問も負けずにディープで、
竹芝の家は大きな農家のイメージで母屋(跡継ぎの住まい)を中心にいくつか建物があって
井戸のある中庭は有事の際に人々や武器を集められるくらいの広さで
藤太と阿高は結婚したら同じ敷地内に住んで食事はみんな母屋で
子どもができたら敷地外に家を建てて独立するかもね、と。
阿高はふだんは苑上を鈴と呼んでいて、2人きりのときは本名を呼んだとのこと。
苑上は内親王だったから農家の人間としてはトンチンカンで、
千種がつきっきりで教えてすごく仲良くなっちゃって二連の脅威になった!とか。なんですと!(笑)

西魔女はもともと荻原さんが学生サークルでお友達と作ったお話が元になっていて
主人公の名前はアラヴィスだったのをフィリエルに変えたけど
ルーンはルーンだったそうです(ルンペルシュツルツキンの設定は後からつけた)。
女王と一の騎士の関係についての「蜂社会だと思う」とのお言葉にどよめきが(笑)。
騎士たちは重要だけど使い捨てという危険な地位で、女王は事実婚で夫がたくさんいたとか
アデイルが「同じ家から騎士を出すとうまくいかない」と言ったのは
小さい頃から一緒にいるとずっと幼馴染でしかいられない…というあてつけだとか。
フィリエルとアデイルは同年だけどどちらが年上?という質問には
アデイルの方がしっかりしてるけど生まれはフィリエルが早いと思う、とのこと。
レアンドラが奴隷のふりをして東の国に乗り込む話やティガとルーンの出会いも書いてみたいが
今は取り掛かる時期ではない、とも。
ティガとアデイルの再会を「あると思う」とおっしゃる荻原さんに
質問者さんが「ユーシスに焦ってほしくて!」と言うと「悠長だもんねあの人」と返してらして
何だか世間話みたいでおもしろかった(笑)。
風神秘抄の糸世が飛ばされた場所についてはやはり多くの質問があったようで
樹上かRDGの世界とつながっているかと考えた方もいらっしゃるそうです。
荻原さんの返答は「素材が同じなので、ありえます」でした。
糸世にとっての忉利天が現代なのかどうかはわからないけれど、
たぶん飛ばされた先にはある程度長くいて、そこの人が糸世がいた時代について調べてくれて
未来を知ってしまった可能性もあって
(草十郎も笛を吹いたときに見ているから2人は頼朝のところに行ったんだと思う、とも)、
だからいい場所だけど一刻も早く元の世界に帰りたかった…というのは裏設定だから
みなさんは考えなくていいです、ともおっしゃられました(笑)。
あと、喪山の位置は白鳥で考えると美濃で、風神で考えると飛騨だがどちらか?の問いは
「鳥彦王が適当に言っただけ」という答えでみんな爆笑しました^^
カラスだから人間の地理がわかってなくて、おばばから聞いた知識しかないそうです。
かわいい(^q^)

RDG(レッドデータガール)で雪政と泉水子の高尾山デートについて
「待ち合わせの時間を決めなかったのに雪政はいつから待っていたのか?」とか
「雪政と紫子の出会いはいつか?」など、雪政の人気ぶりが(笑)。
高尾山デートのときは、山伏ネットワークを駆使して近くの知り合いの家に泊まって
翌朝も早朝から「泉水子が来るから…」とずっと待っていたという衝撃の回答が!
「プレイボーイですから」とさらっと言う荻原さんにプロの神髄を見ました。。
雪政が紫子さんに会ったのは学生時代で、修行時代から大成さんとも仲良しだったけど
その大成さんが紫子さんと仲良くなるのを見ながら成長していったという
なかなかドラマティックな裏設定ががが。
姫神の「天から受け取るための手、下々に与えるための手」のセリフは
変なことを言う人だなって思っていただければいいとのことで
深行が姫神の左手を取った理由はたまたまそのタイミングだったわけだけど
姫神としては「ほう、そっちを取るか」と思ったかもしれない、と。
みゆっきーはあれで完全に姫神に気に入られたよね…(^^)。
印象的だったのが、真夏がものすごく好き!って感じの人が
「真夏は長く生きられますか?」と声を震わせながら質問なさっていて
「だいじょうぶ。科学は進歩しているし、希望はあるよ」と力強く答える荻原さんが
やっぱり女神様に見えました☆
会場の雰囲気も「ああ、よかった…」みたいなほのぼの空気に包まれたし^^
前にも書いたけど、彼らは3人そろって無敵なので作者さんのお墨付きがあるとホッとしますね。
これかぎのハールーンとひろみの再会は、現代を舞台に書く予定ではあったけど
いろいろこじれて樹上になりましたとおっしゃられた。
(樹上にハールーンが出ないのはひろみちゃんが好きになる子がハールーンだからで
夏郎くんはちょっとイメージ違うけど、まあいいか、というのがラスト。
ちなみに夏郎くんはダイレクトにひろみちゃんが好きだそうです♪)
樹上は、これも前に聞いた気がするけど高校生活を書き残しておきたかったとのことで
荻原さんの中では別個の作品なんだとか。
ひろみちゃんは、荻原さんにもっとも近い主人公だそうです。
鳴海くんは有理さんの家で育った時期があって親戚関係もろもろこじれたらしいですが
眼鏡は別に伊達ではないとか。


とまあ、こんな感じで事前に寄せられた質問に答えた後もどんどん手が挙がって
どんどんディープな質問が出てきて荻原さんの回答もディープで
ものすごい濃密な時間でした(^◇^)。
それぞれの作品についてランダムに聞かれても、パッと切り替えて返答なさる荻原さんすごかったです。
お答えに対してさらに質問が飛んでさらに返答があって会場が湧くこともあって、
これは荻原さんや参加者さんの中でもっと話が膨らんで花開いて
しばらくしてネット検索したら新刊情報や良質な二次創作がたくさん見られるのかもしれないと思うと
勝手に楽しみになったりしました☆
物語って広がるよなあ…。

わたしの事前質問にも答えてくださいまして、休日の過ごし方は?というのには
「休日っていうか、暇なときにしていることは読書したりネットでアニメを見ること」とおっしゃって
ああそうか、専業の方は出勤しないもんな…と考えが足りなかったことを反省しました。
熊野についても聞かせていただいたのですが「伊勢とは違った古代の雰囲気の場所だよね、
熊野では断然、大斎原がお気に入り!霊感はないけどあそこに行ったら何かあるって感じた!」と
興奮気味におっしゃったのが印象的でした。
大斎原はおととしの熊野旅行でちょっとしか寄れなかったけど
確かに何かありそうな場所だったのでやっぱりそうなんだな…と思いました。

で、今まで書いてきたとおり本当に何でも聞ける雰囲気だったので
当日、気持ちを奮い立たせて会場で手を上げて
ずっと疑問に思っていた作中のセリフについて質問してみました。
空色勾玉の前半で、「死んじゃったらもう会えない」と言う狭也に鳥彦が「おれは死なないよ。
一度闇の大神の御前に戻るだけ。また会いに行くよ」みたいなセリフをしれっと言うシーンについて
ここで彼は闇の一族の知識を口にしているのか
それとも実際に何度か生まれ変わってそれを記憶していて、経験に基づいて言っているのか
いまいち判断がつかなかったのでずっと知りたくて…。
荻原さんの答えは「闇一族の常識ですね。岩姫や王たちからそう教え込まれていて
本気で思っているので、過去の記憶はないけどそうだと信じています」というような内容でした。
緊張のあまりマイクを持つ手も震えてたのでうろ覚えなのですが…^^;
「迷いがないように見えたので」と言葉をつぐと、荻原さんも「迷いはないですね」ときっぱり。
ああやっぱり迷わなかったんだな…だから前半クライマックスで捕まって足を折られても
あんなに冷静でやんちゃでいられたんだなあとしみじみ思いました。
鳥彦は結局、カラスになって帰ってきて
わたし初めてあのシーン読んだときすごくうれしかったけど同時にすごくショックで
だから白鳥異伝と風神秘抄を読み終わったとき感想が「カ ラ ス !!」しかなくて(泣笑)。
荻原さん本当に本当にありがとうございました!


新作もトークセッション前に読んだのですが、ひさびさの和ファンタジーで面白かったです。
流罪になった源頼朝が伊豆の土地神と対決する物語で、
風神秘抄の主人公だった草十郎と糸世も活躍するので風神の続編でもありますな。
糸世が頼朝を「しおりちゃん」と呼ぶシーンと
草十郎が糸世を本物かどうか確かめようとするシーンがよかったなあ。(結局カラス)
読みながら、そういえば風神でそんなことあったよねって思い出したことも多くて
今度は2冊続けて読み返したいです。
(で、その後きっと鳥彦王のルーツを読み返したくなって勾玉三部作に手が伸びるんだろうな)

あと、このトークセッションが行われた3月11日は源頼朝の伊豆流罪が決まった日でもありまして。
(鎌倉時代の僧侶慈円が記した『愚管抄』第5巻に
「義朝が子の頼朝をば伊豆国へ同く流しやりてけり。
同き(1160年)三月十一日にぞ、この流刑どもは行はれける」とあるのです)
わーいぜひお伝えしよう!と思ってメモしてトーク中の途中までは覚えていたのに!
しかも質問できる時間をいただけたにも関わらず!!
鳥彦のことで頭がいっぱいだったのと緊張のあまりすっかり忘れて伝えることができませんでした…。
ばかああぁぁ(゚Д゚)
ので、チラシと一緒に渡されたメッセージカードに書いて店員さんにお渡ししました。
よりによって伊豆の頼朝本の刊行イベントが頼朝伊豆流罪決定の日に行われるとは。たまたまだろうけど。

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テーマ : 本に関すること
ジャンル : 本・雑誌

小さな動物はしっぽに弓を持っている。

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思いがけず招待券をいただけたので(O先生ありがとうございました!)、
横浜そごう美術館の「トーベ・ヤンソン展 - ムーミンと生きる」に行ってきました♪
トーベ・ヤンソン生誕100周年を記念してフィンランドで行われた回顧展が
日本にやって来て今後は北海道や新潟なども巡回するそうですよ~。
フィンランドのご親族や美術館に所蔵されている原画や遺品の展示が中心で
ムーミンはもちろん、アリスやホビットの挿絵や生涯描き続けた油彩画、スケッチや習作、
手作りのジオラマのほかにヤンソンの映像や音声などもあって
まさに「人間トーベ・ヤンソン」がまるごとわかる内容でした。
入口パネルにでかでかと再現された「Tove Jansson」のサインが超かっこいい。

ムーミンは大好きで本も読んでいますが、実はヤンソン本人については何も知らなかったので
(ムーミンシリーズやアリスの本の巻末解説で簡単な経歴について記憶していただけでした)、
今日は一から学んでこよう~とウキウキしながら展示室にin。
幼少期のお絵かきや学生時代の油彩画(ストックホルム、ヘルシンキ、パリ等で学んだらしい)の
主線の太さにびっくりしました。
ムーミンを見慣れていたせいか細かいタッチで描くイメージがあったので…。
ヤンソンはすでに10代で絵の仕事を始めていて、学業のかたわら個展も開き、
絵の師だったサム・ヴァンニの影響か20代の頃は強い色彩を好んでいたようで
「青いヒヤシンス」は窓辺に置かれた花の色がくっきりしています。
筆のタッチも結構しっかり残っていて柔らかめのゴッホって感じなんだけど
「神秘的な風景」とか見ているとシュルレアリスムっぽくもあり
リンゴの静物画はあっさりしたセザンヌの絵ようでもあり
そういう部分はやはり20世紀の画家だなあと思いました。
ご家族の肖像画は、お母様や弟ペル・ウーロフ・ヤンソンのは正面だったり視線がこちら向きですが
本人の自画像は斜めを向いているのがほとんど。
ねえトーベ、こっち向いて。恥ずかしがらないで。

ヤンソンが表紙や記事に挿絵を描いた雑誌「GARM」もありました。
彼女は若い頃に第二次大戦を含む4度の戦争を経験しており、
絵にもそれが反映されているそうです。
ヴァイキングとヒトラーとダイナマイトの樽に座った男性の3人が
同時にマッチに火をつけようとするカリカチュアとかすごくて、
これを戦時中に出版できたというのもすごい…フィンランドって昔から意識高い国ですね…。
ラップランド戦争のイラストに小さくTove(トーベ)と書かれたサインには
ムーミン(スノークかな?)に似たキャラクターもくっついています。
身体はまんまるですが鼻が細くて目も小さい、でもかわいい。
ヤンソンが「一種の逃避」と表現してムーミンを描いた最初の本『小さなトロールと大きな洪水』の出版が
1945年だったと知って顎が外れるほどびっくりしました。来年で70年じゃないかー。
続く『ムーミン谷の彗星』もハラハラドキドキする大冒険小説でとても大好きな本なのですが
ヤンソンの人生を知ってみるとすごく終末観の漂う内容にも思えてきて
もう一度読み返したらきっと違った印象を受けるだろうな…。

そんなムーミン、挿絵やマンガの原稿がたっぷりあります(*´∀`*)。
あわあわムーミンが、スナフキンが、スニフが、スノークのお嬢さんが、ミィが、ミムラねえさんが、
ヘムレンさん、ニョロニョロ、ひこうおに、モラン、パパママも!
インクペンのベタと掛け網と空白だけで表現された白黒ムーミンの世界…うわあ懐かしい…!
結構、ざっくりした線ですけど手描きの味わいがすさまじいです。
挿絵は小さな小さな原稿で、マンガ原稿はふつうに雑誌サイズでしたが
ペン画の完成原稿と鉛筆画の習作が並んでいるのもありまして
いや、習作っていうかネームだよこれ!(感動)
この時代からネームと原稿は別々だったんだな…。
トレーシングペーパーを使った原稿もあって、所々変色もしててこれ保存大変じゃないのかな、
ダンスしてるパパとママの大きな絵がとっても素敵でした~!
「滞在 - ヴィヴェカとトーベ」のヤンソンの授賞式についてきたムーミン谷のキャラクターたちが
わくわくしてるのもすごくかわいい。
ニョロニョロの原型を描いたっぽい絵もありましたが、手足が生えていて緑色で
どう見ても今のニョロニョロの方がかわいさも不気味さも上回っている。
(ところでニョロニョロやモランみたいな生き物って、
ヤンソンと同じ北欧の作家リンドグレーンの『山賊の娘ローニャ』に出てくる灰色小人や鳥女とか
アスビョルンセンの『三匹のやぎのがらがらどん』のトロルとかに存在としては似てるのかな…。
あとラップランドの地名を初めて知ったのはラーゲルレーヴの『ニルスのふしぎな旅』だ)

ムーミンの原型は、ヤンソンが姉弟げんかをしたときトイレの壁に描いたという落書きと
叔父さんから「悪さをするとムーミントロールが首に息を吹きかけてくるよ」と聞いたことから
着想したといわれています。
叔父さんは"ムーミン"の名前をどこで聞いたんだろう…それともとっさに思いついたのかな…。
そして何冊か出版されていくうえで物語の内容も
大冒険からキャラクターの関係性中心へと変化していっているのがわかるようです。
特に『ムーミン谷の十一月』はヤンソンの身内に不幸があったことが色濃く反映されているとか。
…本当に読み返したくなってきた!

ヤンソンはムーミンのマンガ連載を10年ほど続けた後、
弟に連載を任せて1960年代から再び絵画を描き始めたそうです。
1975年の自画像でようやく真正面を向いたかと思ったら力強さが爆発してる。
若い頃よりもっと線が太くなって、たたきつけるように置かれる色はムンクのようなタッチで
でも配色が絶妙なのが本当にすごいな…!
この頃から一緒に暮らし始めたトゥーリッキ・ピエティラの作業風景を描いた「アーティスト」も
タッチは骨太ですが色遣いがパステル風でやさしい~。
水彩画のムーミンの絵も柔らかなブルーグレーでした。

展示室の真ん中には。
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ヤンソンが夏を過ごしたバルト海のクルーヴ島(ハル)の小屋が実物大で再現されていました☆
おおこれが…かつてまことしやかに噂された伝説の…!(そんな噂はない)
割と雑然とした散らかりようで、そのうちヤンソンがふらりと現れて机に向かいそうな雰囲気!
奥の棚にはムーミン一家の小さなフィギュアがありました。

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こういう台所って好き。

近くにはクルーヴ島の模型や、弟のペルさんが撮影した島での生活を楽しむヤンソンの写真が
パネルに大きく引き伸ばされて展示されていました。
日本で購入したという8ミリカメラで撮影されたヤンソンとピエティラの映像も上映されていて
ヤンソンが海で水泳するのとか、小屋の外で陽気にダンスをする様子などが見られます。
ナレーションは本人が直々に入れていました。
ひいぃ~~トーベの肉声!落ち着いたハスキーヴォイスでした…初めて聴いたよ。

ヤンソンはムーミンの他にも絵本の挿絵を描いていまして、
ホビットの冒険や不思議の国のアリスの原画がカラーも含めて展示してありました。
トールキンとキャロルが書いた濃密なあの世界観も
ヤンソンが描くとかわいらしくふわふわした不思議な印象になるからおもしろい。
ビルボは背が縮んだスナフキンに見えるし、マッドハッターも年取ったスナフキンに見えてしまって
自分がいかにスナフキンが好きか改めて思い知ることになったほかは
ムーミンで見たタッチがそこここに散見されて和んでおりました(´ω`)。
(ってか、無理もないけどアリスの絵は思いっきりジョン・テニエルに引っ張られてますな…
クロケー場にチェシャ猫が出てくる構図とかそっくりだし…
というか、ヤンソンのアリス絵にどことなくエドワード・ゴーリーを連想するのは
2人とも猫好きで、しかも猫を描くタッチがそっくりだからかもしれない)
不思議なメガネを拾ったスサンナがムーミン谷に行く『ムーミン谷へのふしぎな旅』のカラー原画は
とても大きく色彩豊かで、
これ絵本だったらページをめくるとパーッと光が溢れてくるみたいに見えそうで
そういう意味でもインパクトのある絵だなと思いました。
あと、ヤンソンは自国の保育園や病院に壁画を描いてもいて
その習作と、実際に描かれた絵の写真と、施設を赤点で示した地図が並んでいました。
特に病院の、ムーミン谷のキャラクターたちが大行進をする絵が明るくていいなあ。

ムーミンの小説に出てくるシーンを再現したジオラマ模型も4つほどありまして、
ヤンソンとピエティラの共同制作だそうです。
ムーミンのシリーズがひと段落したあたりから少しずつ作り始めて晩年は没頭していたとか。
暖炉であたたまるムーミン一家とスノークのお嬢さんのほんわかした雰囲気、
おさびし山に向かうヘムレンさんは張り切っててかわいい☆
ヤンソンが使っていた大型のパレット(絵の具が大量にこびりついてる)の裏にはTuulikkiの署名があり
ピエティラが制作したものであることがわかります。
このパレットからあの迫力のある油絵が生み出されていたんですね。

展示室出口の近くでは1991年に放送されたムーミンのアニメの上映も!
わああ懐かしい~~観てた観てた!
高山みなみさんのムーミンと大塚明夫氏のパパ、子安武人氏のスナフキン大好きだったなあ。
(冬眠前にスナフキンからハーモニカを預かるムーミンと、
ムーミンが冬眠から目覚めるとき間に合わなくて八つ当たりするスナフキンが好き)

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出口にあるヤンソンとムーミン谷の仲間たちのパネル。
一緒に写真が撮れますよ。

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3階の特設ショップにもムーミングッズがたくさんありました~。
限定品が多くて財布のひもを引き締めてかからないとたちまち散財しそうです(;´∀`)。
写真は撮影可のジオラマ。のどかですね…。

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眠れないのかな?(笑)

そういえば来年にムーミンの新作アニメ映画(フィンランド製)が公開されるそうですね。→こちら
楽しみすぎるよ(*‘∀‘*)。

テーマ : イベント・サイン会
ジャンル : 小説・文学

さあ、もう、なんにもいうことはない。

前回記事の続き。箱根の岡田美術館の後に星の王子さまミュージアムに行ってきました。
何年か前に妹がサークル仲間たちと行って、最近は母が友達たちと行ってきて
おみやげ話に聞くだけでもすごく素敵そうな場所と感じていたので
楽しみにしながら向かいました。

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小涌谷駅から箱根登山電車に乗って、終点・強羅駅をめざします。

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ゴトゴト揺られて強羅駅に到着!
扉が開いたとたん、小涌谷よりも強い硫黄のにおいがしました。やっぱりここも温泉地。

天井には友好のカウベルなるものがぶら下がっていました。
30年ほど前に箱根登山鉄道とスイスのレーティッシュ鉄道が姉妹鉄道提携を締結した記念に
スイスからいただいたものなんですって。
一時期はこれを鳴らして発車していたそうですよ。
(また強羅とスイスのベルンは標高がほぼ同じで、しかも温泉地帯という共通点もあるそうだ)

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明星ヶ岳の大文字。強羅駅から見えます。
お盆の送り火として戦前から毎年8月16日に点灯されているそうです。

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駅からバスに乗ってミュージアムを目指します!

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バスに揺られて箱根の山をくねくね進むこと約20分、とうとう着きました、やっほー☆
入口はこんなオシャレな門、フランス国旗が風にはためいていました。
サン=テクジュペリが子どもの頃に過ごしたサン=モーリス・ド・レマンス城の門を
イメージしているとか。
(彼は伯爵家の第三子として生まれましたが、4歳の時に父親が亡くなりまして
伯爵夫人である大叔母を頼って移り住んだのが同城だったそうです)

このミュージアムは1999年(サン=テグジュペリ生誕100年記念の年)にオープンしたそうです。
ということは、今年で開館15周年ですね。記念イヤーだ!

では早速中に入ってみます✧*。٩(ˊωˋ*)و✧*。

以下、写真が多いのでたたんであります↓クリックで開閉しますのでどうぞ٩( ᐛ )و

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テーマ : 児童文学・童話・絵本
ジャンル : 小説・文学

カナダと日本とフィンランド。

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日本橋三越で開催された「モンゴメリと花子の赤毛のアン展~カナダと日本をつないだ運命の1冊」に
行ってきました☆
ルーシー・モード・モンゴメリ生誕140周年と、日本&カナダ修好85周年記念の展覧会です。
2008年にも『赤毛のアン』出版100年記念で展覧会があってあれはアンの内容が中心でしたが
今回はアンの著者モンゴメリと翻訳者村岡花子さんの人生をたどる内容になっていました。

モンゴメリ『赤毛のアン』の「マリラ・カスバート驚く」の直筆原稿!
駅からアンを連れてきたマシュウにマリラが
「その子はだれ?男の子はどこ?」と言ってアンが大ショックを受ける場面ですね。
原稿は2008年の展示でも見ましたがやっぱり本物を見るのはドキドキします。
モンゴメリさんは割と字が細かくて流れるような筆跡だ…。
他にも新聞や雑誌の切り抜きを集めたスクラップブックや結婚式で着たウエディングドレス、
お手製のキルトやレースなどの展示がありまして、
特にレースの仕事の細かさにひたすらため息が出ました。
軽く絨毯レベルの大きさのとか編んでていったいどれだけ時間かけたのかと、
それともあの時代の女性たちはこれくらい朝飯前でできてしまったのでしょうか…。
陶器のマゴグやフルーツバスケットも2008年以来で久し振り、久し振り。
バラの花柄のおしゃれなティーセットはお客様用だそうですが
マリラが牧師夫妻に出したセットのモデルはこれだろうか、とか想像して楽しくなりました。

おふたりの蔵書の一部を展示したコーナーで大興奮!
モンゴメリはアガサ・クリスティ『ナイルに死す』とかワーズワース詩集やシェイクスピア、
村岡さんはブラウニング詩集やマーク・トウェイン、ワーズワース、シェイクスピア、不思議の国のアリスなど
同じ時代を生きたおふたりですしなかなか共通点があるではないですか。
モンゴメリがクリスティを読んでいたとか、村岡さんがアリスを読んでいたとか
もう~~うれしくてたまらない!
なぜってわたしもクリスティとアリスが大好きだから!!
昔の人が自分と同じ本を読んでいたってワクワクしませんか。本を通じたパルピテーション。

おふたりの書斎再現コーナーもテンションだだ上がり↑↑
モンゴメリの机にはペンと眼鏡、原稿用紙、スクラップブックの一部、
本棚も再現されていて大きな本や小さな本が。
作家の部屋の本棚ってなんでこんなにワクワクするんだろう。
村岡さんの机には眼鏡、原稿、ペン、墨、封筒、「原稿在中」と彫られた印鑑、
隣の椅子には夫から贈られたウェブスター大辞典。
机にあった、たぶんファンレターへのお返事につかったかもしれないハガキに
「わたしの訳した本を読んでくださってありがとう。どうぞたくさん読んでください。
そしてお友達にもたくさん紹介してください。若い時間を大切にそして美しくおすごしください。
ではごきげんよう。おしあわせに」って書いてあって
なんてきれいな言葉だろうと思った。
あと、村岡さんがラジオ番組「コドモの新聞」を担当していたときの映像も上映されていて
(いつだったか『花子とアン』の特番で流れていたやつ)、
「全国のお小さい方々、ごきげんよう。これから皆様方の新聞でございます」という
村岡さんの挨拶で始まるこちらも大変きれいな言葉。
お小さい方々って、リスナーさんたちも心が躍ったろうな…ソワァ。
村岡さんが「然し、私は大胆に申します。『行け!私の小さな書よ、行け!』と。」と
前書きに記し初出版した短編集『爐邊(ろへん)』も小さなかわいらしい本でした。
雪景色の表紙下部分に「SHORT STORIES By Hana Annaka」とあって、「花子」ではないのですが
前書きには「一千九百十七年十月 愛宕山麓の校舎にて 安中花子」と記されているとか。

村岡さんがミス・ショーから贈られた『赤毛のアン』原書もありまして、
2008年の赤毛のアン100周年展でも見たのでひさびさの再会でした。
(本は閉じられた状態でしたが、扉にはミス・ショーの署名があるそうです)
この本があったから、わたしがアンを読めたんだと思うと感慨もひとしお。
1952年に三笠書房から翻訳出版された『赤毛のアン』初版や再版、
続きのシリーズ(アン・ブックスと呼ばれるそうです)の翻訳本も箱つきで残されていて
「保存用」「初版」などと朱書きしてあったりして村岡さんの意気込みが感じられます。
他にも娘のみどりさんのために買った雛人形、ピクニックに出かけたときのお弁当箱、
着物に使っていた帯留めなどが展示されていました。
英語が堪能な村岡さんでしたが、服装は終生、和服をお召しになっていたとか。
アメリカに住むみどりさんを訪ねて渡米したときも着物姿で、
着物を着た小さな女性が流暢な英語を話す様子を海外の人も驚いたようです。

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グリーン・ゲイブルズの模型がありましたよ!こちらのみ撮影OK。
2階の奥の窓がアンの部屋ですね~。

朝ドラもどんどん面白くなってますね!毎朝楽しみです。
はなちゃんと蓮さまがやっと仲良くなってキャッキャしたり
「安東花子」「白蓮」とペンネームを決めるシーンがラブラブしててかわいかった~☆
当時はあと2週間くらいはこんな2人を見られるのかなと勝手に思ってたら蓮子さんが行ってしまって、
花子さんすごい喪失感だったと思うけどわたしもものすごい寂しかったです。
大文学会のロメオ&ヂュリエットも(醍醐さんのロミオかっこよすぎて倒れるレベル)、
甲府で釣りしたりみんなとはしゃいだことも(蓮さまの「て!」がかわいかった)、
蓮子さんすごく楽しかったろうな…。
ふじさんが蓮子さんを抱きしめるシーンは朝ごはん食べながら泣いてしまいました。
もう菩薩ですよねふじさん…どんな人のどんな事情も受け入れて抱きしめることのできる人。偉大。
蓮子さんが与謝野晶子の詩を兄やんにあげたときの兄やんの目がキラキラしててな、
録画だったら一時停止して5分くらい見つめたい気分でした。
賀来賢人くんはセリフを大切に丁寧に言う役者さんですね。

女学校の人たちも最高でした。
花子さんを新聞記者から守ってくれた茂木先生や
(その後ろでへっぴり腰でホウキ構えてるスコット先生にわたしは大注目してしまったよ)、
蓮子さんが一時的に戻っていることをこっそり知らせてくれた醍醐さん、
「集中できないなら出ていきなさい、Go to bed!」って行かせてくれた富山先生、
寄宿舎を無断で抜け出した花子さんを謹慎するだけで許してくれたブラックバーン校長先生、
卒業式で実は…って甲府ことばでしゃべりだした白鳥さま!!
感動的なシーンなのに笑ってしまってごめんなさい(^ ^;)。
あと、かよちゃんが花子さんの元に逃げてきたときの2人の服装というか雰囲気というか、
片方は英才教育を受けているのに片方は工場で働いているという対比が
2人のせいではないのですが何とも複雑でした。
醍醐さんがたまごサンド持ってきてくれるシーンで泣きそうになった。
だってたまごですよ!当時は貴重品だったのでごちそうですよね。
かよちゃん、東京で働けることになってよかった…幸せになってほしいです。

甲府に戻ったら戻ったで屋根の上を歩いたり、貧しい家の女の子を教会の図書室へ連れて行ったり
お見合いしたり、ももちゃんの応援をしたりと忙しい花子さん。
初めての童話「みみずの女王」を書いた動機が教え子のためっていうの、素敵ですね。
(ちなみに「みみずの女王」などを収めた『村岡花子童話集』(1938年刊)が
国会図書館の近代デジタルライブラリーで読めますよ。→こちら
花子さんを何かと気にかけてくれる天使な朝市がすばらしすぎてキュンとします。
もう朝市とくっつかないかな、いやでもそれじゃ赤毛のアンが生まれないし、などと考える平日の朝。
蓮子さんは蓮子さんで九州でえらい目に遭ってるし、いや夫の伝助さんもだからお互い様かな。
蓮子さんは自由に外出できないし、伝助さんも興味のない本や音楽を持ってこられてしんどいし
こりゃお互いにストレスたまっちゃうっていうか
あそこまで価値観が合わないと2人ともかわいそうになってくるよね…。
伝助役の吉田鋼太郎氏はかなり役に入ってらっしゃるようで
ドラマが始まった頃の特番で「そのへんの物を投げつけたくなりますね」と苦笑交じりにおっしゃっていたな。
じきに最悪な別れ方をする2人をどう描いていくのか。ドキドキです。
早くはなちゃんのもとへ戻って来て蓮さまー!!
そして村岡印刷さんの珍獣お宅っぷりちょっと何とかならないかな(;´∀`)。


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展覧会を見た後は、せっかく日本橋に来たので新しくできたコレド室町もぶらぶら。
提灯の道がありました。夜は綺麗に灯るのでしょうか。


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電車に乗って移動。後楽園駅で降りて、東京ドームシティ ラクーア内にある
ムーミンベーカリー&カフェに来ました。
着いたら1時半を過ぎていたのですが、ものすごい人気のお店なので入口に行列ができていて
お店の中に入れたのは2時半でした…おそるべしムーミン。

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お店に入るとこんなディスプレイが。黒いハットはムーミンパパがいつも被ってるのですね。
これにメニューを入れて店員さんが持ってきてくれます。

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席に案内されたら椅子の隣にスノークのおじょうさんが!フローレン!わああぃ。
他にもムーミンやリトルミィ、ママやパパ、スナフキン、スニフ、ニョロニョロ、ご先祖様など
色んなぬいぐるみがいて店員さんがどうぞ~と連れて来てくれるんですよ!
ムーミンファミリーとごはん食べられるとか幸せすぎる。

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サーモンスープとサラダのプレートを注文。フィンランドの家庭料理ですって♪
パンの食べ放題もついていたのでいっぱい取ってきてしまった。

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「そろそろ交代しま~す」と店員さんがやって来て、なんのことかと思ったら
ムーミンパパを連れて来てくれたのでした☆フローレンと交代。
フローレンは別のお客様たちのところに行ってそこでの写真撮影大会に参加していました(笑)。

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ニョロニョロのケーキ☆
ムーミン&スニフのクッキーとニョロニョロのクッキー、カトラリーの先にもニョロニョロ!

は~おいしかった…。
お店に入ったときはすでにランチが終わってティータイムの時間だったので
次回はランチの時間に来たいです。

あと、後楽園駅へ戻ったとき初めて東京ドームを間近で見ました…外からだけですけど。
よかったこれで「東京ドーム○○個分」ってニュースとかで言われても何となく想像できるぞ…。
(今まで見たことなかったから全然ピンとこなかったのです)

テーマ : 児童文学・童話・絵本
ジャンル : 小説・文学

ぼくらのなまえはぐりとぐら。

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中川李枝子さんの「ぐりとぐら生誕50周年記念及びてんじつきさわるえほん刊行記念トークセッション」を
池袋のジュンク堂書店で聴いてきました。
絵本『ぐりとぐら』が雑誌「母の友」に掲載されてから50年を迎えた記念と
(雑誌掲載時は「たまご」というタイトルだったそうな)、
記念企画のひとつとして出版された『てんじつきさわるえほん ぐりとぐら』の刊行記念のイベントです。
ぐりとぐらはもちろん、「そらいろのたね」「いやいやえん」「けんた・うさぎ」「三つ子のこぶた」
トトロの主題歌「さんぽ」の作詞、小学校の教科書に載っていた「くじらぐも」など
中川さんの作品の大ファンであるゆさには垂涎のイベントでして!
実際に中川さんにお会いできることにも楽しみに出かけました。

トークセッションはジュンク堂のカフェで行われるのですが、このカフェそんなに広くないので
講師の方のかなり近くでお話聴けてすごく好き。
おかげで人気の作家さんのトークなどはすぐ定員になってしまうので電話予約のときもドキドキでしたけど
何とか席を取ることができました。
イベント当日は満員御礼で満席でしたよ…やっぱりね。

中川さんはえんじのジャケット姿でご登場。
ぐりとぐらが50周年を迎えても、ご本人は特に変わりはなく普段どおりの生活だそうですけど
「お祝いしてくれるのは嬉しいです」とのこと。
「イベントや講演で色んなとこへ行くでしょ、読者さんに会うとみんないい人なの。
自分の絵本を読んでくれた人がみんな立派な人になった。それが自慢であり誇り」とおっしゃって
「子どもの頃に読みましたと読者さんから聞くと、その人が子どもだった頃の姿が見えるのよ」って
ニコニコ笑っていらっしゃいました。
さすが元・保育士さんだなって思う(´ω`)。

もともと日本一の保育士になりたかった中川さんの理想の保育園は
『ドリトル先生の楽しい家』みたいな賑やかな保育園だったそう。
子どもたちが元気に走り回る保育園を作りたかったので最初は園長になりたかったとのことですが
あるとき学校で「主任保母求む」の求人を見つけて迷わず応募、めでたく採用されたそうです。
「わたしの幸運の始まり☆」と嬉しそうにおっしゃいました。
(ちなみにここは、いやいやえんの舞台ちゅーりっぷほいくえんのモデルになった保育園だそうだ)
・子どもが毎日くる保育を
・親の期待を裏切らない
この2点をモットーに17年間勤務し、合間に子どもたちと一緒にお話を作って書いていたそうな。
「子どもの興味を引くのって大変なのよ、わたしだってメンツがあるからがんばったけど!」と
とても貫録たっぷりにおっしゃった(笑)。

作家で岩波少年文庫の編集者でもあったいぬいとみこさんにファンレターを出したところ
声をかけてもらって同人誌などに参加、
石井桃子さんの編集で『いやいやえん』を出版することになったそうです。
わーおービッグネーム!
その後、雑誌「母の友」などに作品を発表していた頃に
保育園で子どもたちにちびくろサンボの絵本を読み聞かせたところ大人気になり、
園長先生がホットケーキを焼いて振る舞ったこともあって
子どもたちにおいしいカステラを食べさせたいなあ~と思って書いたのが
後にぐりとぐらの元になる「たまご」だったそうです。
「子どもたちへのプレゼントした本が今まで読み継がれることになってびっくりしてます」とのこと。
(ちなみにホットケーキを焼いた園長先生は、『いやいやえん』のはるのはるこ先生のモデルだそうだ)

児童福祉を学んでいた頃に障害者施設にも実習に行かれたそうで、
実際に子どもたちに会うと教科書などの先入観は吹っ飛び、たくさんの発見があったそうです。
児童福祉法ができたばかりの頃で先生たちもみんな熱いスピリットの持ち主で
子どもたちも元気いっぱい、早く学校に行きたいよ~とかよく聞いたそう。
「『おれたちは児童憲章で守られてるんだ!』『そうだそうだ!』とか、子どもたちが言うのよ」と
懐かしそうに語っていらっしゃいました。
で、ここから『てんじつきさわるえほん ぐりとぐら』の話題に。
「目の見えない親御さんが目の見えるお子さんに本を読み聞かせられるように」が
コンセプトになってできた絵本だそうです。

さわる絵本が完成したとき、中川さんはある女の子からもらったファンレターを思い出したそうです。
それには「わたしは毎日学校から帰ると、目の見えない弟に本を読んであげます」と書いてあったとか。
「もうずいぶん前だから、きっと成績優秀な人になっていると思います」と
しみじみ語る中川さんにキュンときました。
他にもローラ・ワイルダーの姉メアリーが失明しながらも学校の先生になったことや
ヘレン・ケラーとアン・サリバンの関係についてお話くださり、
話は山形にお住まいという目の見えないお友達のことへ。
その方は美術館にゴッホの絵を感じに行ったり点字図書館なども利用されるそうですが、
中川さんとは長いお付き合いでぐりとぐらのカレンダーなども贈っていらっしゃるそうな。
で、その方に『てんじつきさわるえほん ぐりとぐら』を送ったところ、
絵を手で見たこと、絵本の香りをかいだこと、
とても幸せな時間だったことなどをお手紙に書いてくださったとか。
いいなあ。

質問コーナーで『くじらとり』の話が出て(「この間宮崎(駿)さんとも話したけど」っておっしゃった!)、
たまたま子どもたちが機嫌の悪い日があって、
「じゃあお話作ろうか」って言ったらあっという間にできたそうです(笑)。
子どものお話づくりは現実と想像を行ったり来たりする、
想像力を豊かにする本を作りたい、
今の子どもをめぐる状況にはいつも怒っている…などと堰を切るようにダダッと語られて
隣に座ってた参加者の方にさりげなく「あなたも書けるのよ」っておっしゃって胸熱!


続いて、福音館書店の川崎康男氏から
『てんじつきさわるえほん ぐりとぐら』の制作裏話もお話いただきました。
"てんじつきさわるえほん"という本そのものは何十年も前から出版されており、
技術もそれなりに確立されつつあるそうですが
去年、さわる絵本『さわるめいろ』『ノンタンじどうしゃ』『こぐまちゃんとどうぶつえん』が
3冊同時出版されることになったのがきっかけで
ぐりとぐらの50周年記念にさわる絵本を作ろうと企画したそうです。

しかしそこには想像以上の困難が。。
たとえば、ぐりとぐらをお読みになった方はおわかりかと思いますが
あの絵本はわりと絵が細かかったり、文章が長かったりするわけです。
触ることで絵を感じる(触図というそうです)にはどうしても活かすもの省略するものの取捨選択が必要で、
主人公のぐりとぐら、キーポイントのたまご、もうひとつの主役ともいえるカステラの4つは
何が何でも触図にする!と決めて絵本作りが始まったとか。

他にも、表紙でぐりとぐらが籠を持っていますが、目で見れば一目瞭然ではあるのですが
絵のまま触図として再現してしまうと、ぐり+籠+ぐらが繋がってしまうため
触るとかえってわかりにくいのだそうで
ぐり、ぐら、籠と独立させて配置する必要があったとか。
ぐりとぐらを触図化する際にも、ぐりが青・ぐらが赤なのは目で見ればわかるけど
色は触ってもわからないので
ぐりのズボンにはストライプ、ぐらにはドット模様をつけて区別できるようになっているそう。
また、絵の上部にたまに木が描いてあるのですけど
そのまま同じ個所に触図をつけると、見えない人は「空に何かあるの?」と思ってしまうそうで、
それらは省略したとか。
また、文章はなるべく全部入れたいとか、のどに絵がかからないようにとか、印刷に苦労したとか
聞けば聞くほど試行錯誤や工夫が伝わってきて本当に脱帽の思いです。
編集ってすごい!
そして絵に手を入れたり省略するときに「絵を翻訳するのね」っておっしゃった山脇百合子さんにも拍手。


トークセッションの後は中川さんのサイン会が行われました!
数年前に出版されたのにずっと買いそびれていた『ぐりとぐらとすみれちゃん』に
サインをいただいてしまって超うれしい。
大変きれいな字で筆ペンで「なかがわ りえこ」と書いてくださいました。
絵本の署名と同じくひらがなでですよ、ひらがな!もえる。


あ。トークセッションの前にジュンク堂の近くにある「古城の国のアリス」で夕ごはん食べてきました。
alice20146.jpg
こんな人がいた(笑)。
ハートの女王様のお店なので兵隊さんもハート。

以下、お料理の写真がありますのでたたんであります↓クリックで開閉しますのでどうぞ☆

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ジャンル : 本・雑誌

魔法の呪文のことを考えて…。

ジークリート・ラウベ『庭師の娘』を読みました。
約250年前のオーストリアを舞台にした、庭師になりたい少女マリーの1年間の物語です。
1768年ということはマリア・テレジアの治世ですな。
ヨーゼフ2世とか、シュタルツァーとか、メスメル博士とか、ルソーとか、
世界史でおなじみのお名前がちらほら。
(ちなみに主人公マリーと同じ名前のマリー・アントワネットはこの2年後にフランスへ行って
ルイ王太子と結婚します)

岩波書店さんの新刊情報で見かけたときまず淡い色の表紙に一目ぼれしまして
(表紙絵の中村悦子さんは茂市久美子さんの「つるばら村シリーズ」でおなじみですね)、
あらすじもすごくわたし好みで、
読む前から何となくドキドキしていたのですけども。
岩波さんとこの児童書だしハードカバーだし大きい本かしらと想像していたのですが、
実際に手に取ったら両手にすっぽりなじむ大きさで
表紙をめくったら紫のパステルカラーの遊び紙で
目次にも春夏秋冬の植物の挿絵がありましてな…。
なんだ、なんだこの装丁フェチのツボを刺激しまくる(当社比)本は。どきどき。

マリーは植物が好きな女の子なのですが、庭師の父親の意向で修道院に通っています。
でも本当は庭の仕事をやりたいので授業中も窓の外の植物が気になるのですね。
シスターに怒られて同級生に笑われるのはよくあるパターン。
帰宅してお手伝いさんのブルジに雑になぐさめられるのもよくあるパターン。
(このブルジがかっこよくて…!彼女の「できる女オーラ」はすごい)
修道院の人たちやパン屋の親方、そして何より父親がかなりの壁になってはいるものの
パン屋の息子と、父親の雇主であるメスメル夫妻と、おチビさんのモーツァルト少年が味方で
マリーも素直になれたりする。
メスメル夫妻がマリーの能力を高くかって信じてくれているのがやさしくてあたたかいです(*´∀`*)。
モーツァルトとの出会いは最悪でしたけども(笑)、
お話の後半には「あの子は天才よ」ってヤーコプに言ってておおっ成長したなあって(笑)。
シュタルツァー夫人にモーツァルトをこきおろされて思わず庇っちゃうところとかね(´ー`)。
(でもその後、夫人とは思わぬ共通点があって何となく打ち解けたりする)
本気で庭師になりたくて植物への興味も人一倍強くて
でも壁を超えるやり方がわからないマリーのもどかしさが時々息苦しいけど、
だからこそ終盤の解放感がたまりません。
たぶんマリーには今後も色んなことがあるだろうけど、きっと未来もすてきだ、と思えました。

人物描写も丁寧でよかったですが、
マリーが庭師を目指す子なので植物の描写がたくさんあるのがいいなあと思います。
授業中や帰り道でマリーが妄想する庭とか、植木屋さんとか、
雑草を抜いたマリーが「草も首のところに寒気がしたろうか?」って地面に戻すのとか
早霜が降りそうな寒い秋の日に、植物が枯れないよう懸命に守るマリー&ヤーコプとか
ほんと細かくてすごい。
(ヤーコプの「僕らは魔法をかけてるんだよ」っていう明るさがいいですね)
メスメル夫妻が庭にいる描写がすごく美しいですよ。
この夫妻、素敵すぎるのでそれだけで絵のように感じられる。
植物の絵が描ける人は無条件で尊敬しますが、植物が美しく描写できる人も尊敬します。

あと、同じ庭でも、修道院の薬草園とメスメル博士の庭の雰囲気が全然違う。
当時のウィーンではフランス式庭園(ベルサイユ宮殿のような庭園)が流行っていて
植物が整然ときっちり並べられる形式なのですが、
マリーがめざしたのは植物をありのままに活かす風景式庭園で
ちょうど同時代にイギリスで流行りだしたものだそうです。
ラストでマリーがメスメル夫妻の庭に植えた植物なんだと思います?庭にかぐや姫がきちゃうよ。

モーツァルト少年はこのお話でも、史実に違わず自由に飛び回っていますが
作曲に詰まったり頑固になったり、時々なにか思い出すように黙ったりと表情がコロコロ変わります。
彼もマリーと似たようなもので、子どもだからとせっかく作ったオペラを上演する機会を奪われていて
(ウィーンではかなり有名な話だそうです)、
「どうにもならなくなっちゃった」ってシュンとしちゃうのかわいい。
本人の出番はそんなになくて、人々が語る描写が多いのですが
シュタルツァー夫人が「メロディを口ずさみながら、ペンにインクをぱちゃぱちゃつけて
あれよあれよと新しいアリアを書いてしまった」って首を横に振るのですが
わたしのイメージするモーツァルト像とぴったりで笑ってしまいました。
たぶん後半のクライマックスの作曲もそうしてたんだろうなあと思う。

メスメル博士…。
世間的にはこういう人を「いっちゃってる」と言うのかもしれないけど、
確かに付き合うには骨が折れそうだけど
それでも彼のような人が「誰かが最初にやらなくてはならない。勇気を出すだけだ。やってみよう」って
世間の壁をヒョイとぶち破ってやってきたことが
歴史の積み重ねなんだなあとつくづく。
いわゆる常識というものから外れた行動をした人は歴史上にいっぱいいる。たぶん小説やドラマ以上に。
若者への不条理に怒りを感じてかつらむしり取っちゃう博士かわいい。
マリーにブルーストッキングについてさらっと語って女性の庭師のグループを作ることを提案して
マリーが「本気ですか?」と聞き返すと「本気だとも。かなりね」と返す博士イケメン。
でも職業はお医者さんです(笑)。

作者のジークリートさんは歴史ものを得意とされる作家さんだそうです。
読みたい…岩波さんもっと紹介してほしい…。
オーストリアの方が書いたエリザベートやモーツァルトの本とか、本場すぎるじゃないか…。
(どっちも日本語未訳)



edonenga.jpg
年賀状始まってます…今年もこの季節がやってまいりました。
さあお前ら、大晦日というゴールテープへ向かってほふく前進で走ろうぜ…。
今年は江戸時代の女性文学者がテーマです。

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ジャンル : 本・雑誌

動く図書館。

前回記事で国際子ども図書館の建物を紹介しましたけれども、
最近、建物のない図書館について書かれた本を読みましたのでご紹介します。

まずはコロンビアの図書館から。
コロンビアには国立図書館や公共図書館、コロンビア大学図書館などがありますが
図書館がない地域もありまして、
『ろばのとしょかん-コロンビアでほんとうにあったおはなし』(ジャネット・ウィンター著)は
そんな一地域のことを描いた絵本。
コロンビアに住む本好き・ルイスさんが、自宅に本を買いすぎていっぱいになってしまったので
ある日、2頭のロバに本を積んで「Biblioburro(ロバのとしょかん)」と書いた看板をぶらさげて
山を越え川を越えて、図書館のない村へ本を届けに行くお話です。
ロバの名前がアルファとベットってかわいい(*´∀`)。
「いいものをもってきたよ!」と本を読み聞かせるルイスさんと、真摯に聴く子どもたちかわいい。
(あと、本を読むのが子どもたちだけじゃないっていうのがね、いいです。
誰が読んだかは秘密。ぜひ読んで確かめてみてください~)

このお話は実際にあったこと、というか、実際に今も続けられていたりします。→こちら
お話のモデルになったルイス・ソリアノ・ボルケスさんは、コロンビアの小学校で教師をしながら
今も各地の村に本を届けているそうです。
またこの絵本、お話もすばらしいのですが絵もすばらしいです!
コロンビアの自然が、カラフルではっきりくっきりした色で美しく描かれています。
ジャネット・ウィンターさんの色彩感覚、好きかも。『バスラの図書館員』もカラフルで良かったしなあ。


そんなロバ図書館をいつも楽しみに待っている女の子の視点で描いた絵本が
『こないかな、ロバのとしょかん』(モニカ・ブラウン著)です。
ある日突然、ふらりと現れたロバ図書館に戸惑いながらも喜んで本を借りて読んで
自由におおらかに想像をふくらませるアナがいとしい。

「このとしょかんに、たてものはないんだよ」っていうおじさん(ルイスさん)のセリフいいなあ。
図書館は何でもありだっていうメッセージに聞こえました。
「わたしも、かりていいの?」と問うアナに「もちろんさ」と笑顔で答えるおじさんとか、
「おじさんとロバのおはなしはないの?」「きみが、かいたら?」のやりとりとか
なんでもない言葉のひとつひとつにじんときます。
アナにとっておじさんは夢をくれる人なんですね。


また、『図書館ラクダがやってくる』(マーグリート・ルアーズ著)には
世界中の図書館員や図書館ボランティアさんたちによる
図書館が遠くて利用しにくい人々のため各地に本を届ける活動が紹介されています。
移動図書館というやつですね。図書館用語でブックモービル(BM)といいます。

紹介されているのはこんな移動図書館↓
・オーストラリア、アゼルバイジャン、パプアニューギニア:大型トラック
・北極圏:郵便
・イングランドの海岸でバカンスを楽しむ人々のところ:手押し車
・フィンランドの島々:船
・インドネシア:船、自転車
・ケニアの遊牧民:ラクダ
・モンゴルの遊牧民:馬車、ラクダ、ミニバス
・パキスタン:2階建バス
・ペルー:各地に本入りの袋が届く
・タイ:ゾウ
・ジンバブエ:荷車と、ロバの引く映像図書館

ちょっと補足しますと、イヌイットなどカナダの北極圏に住む人たちは
メールや電話で本をリクエストし、郵便で届けてもらうそうです。
返却も郵便ですが、同封された切手貼付済み返信用封筒を使うので無料です☆
公的サービスはこうでなくっちゃなあ…。
インドネシアの船の移動図書館、つまり水上図書館は川を行ったり来たりして本を運んでくれるとか。
パキスタンの女の子は初めて移動図書館を利用したとき、
またその本に巡り合えるかわからないから本の内容を書き写していたら
図書館の人が「バスは毎週来るから心配しないで」と言ってくれて嬉しかったそうです。
ペルーの図書館活動団体は、20冊の本が入った袋を家々に置いていき、
1か月経ったらまたやって来て新しい袋と取り換えるそうです。
パッケージ貸出みたいなもんかな。
ジンバブエの映像図書館は、太陽光発電で動くテレビやビデオを乗せた荷車をロバが引いています。
そのうちインターネットやファックスサービスも始めたいと書いてありましたが、
この本が出たのが2010年なので
今はもしかしたら何かしら実現しているかもしれません…してたらいいな…(*´Д`)。

世界のあっちこっちで、たくさんたくさんがんばっている人がいること、
本を待っている人たちがいること、
本が読めてメールやファックス、インターネットが使えることはとてもありがたいこと、
など、いろいろ考えました。
で、ちょっとそういうことに一枚かんでるところで仕事してる自分は
必要とされる働きをちゃんとしなきゃなって思いました。
図書館が来てくれるなんて申し訳ない、って言う人いるらしいんだけどそれはちょっと悲しい。
生き方を押しつけるつもりはないけど、
本や情報が欲しいなら「ぷりーず!」って主張していいんだよ!!って言いたい。


日本にも移動図書館はありますね~。
江戸時代には貸本屋さんが木箱をしょって回っていたし、
近代になって公共図書館サービスが根付きはじめる頃から少しずつ広まっています。
わたしの地元の公立図書館も月に1回、巡回車を出してくれていて、子どもの頃よく利用しました。
学校にもたまに来てくれたっけな…。

ちなみに、日本でも図書館(建物)を設置していない市町村はあります。
設置しない理由はいろいろ課題があるためだと思いますが、ここで
ゼロからサービスを作ってみた事例をひとつ。
島根県の隠岐諸島のひとつ海士町が「島まるごと図書館」なるプロジェクトを行っていまして
公立図書館をつくって移動図書館サービスを始めて、島の各地に返却ボックスを設置して
島内の所定の場所ならどこでも本を借りられる仕組みをわずか2~3年でやり遂げて
今もきちんと継続されているそうで。
人ってすごいなァ!
隠岐は小野篁さん縁の土地でもあるので、いつか図書館と合わせて訪れたいです。

以前に「ゆさ的最強のとしょかん」というのを妄想しましたけれども、
呼べば来る図書館、そのうちできたりしないかなあ。


本日のお絵かき↓
集合!※クリックで大きくなります
先月観てきた、歌舞伎座の陰陽師イラスト描きました~☆
ぜひ再演していただきたい演目のひとつですね。
客席にカメラが入っていた日があったそうだから、そのうち放送されるかもしれん。来たれ続報。
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ジャンル : 本・雑誌

毒にもなれば薬にもなる。

まはら三桃さんの『わからん薬学事始』を読みました~。
マンガ『赤髪の白雪姫』を読んで以来、知識はないけど薬草そのものには興味のあるわたしにとって
パーフェクトにホイホイなタイトルだったわけですが、
本編も薬草と謎がいっぱいで楽しく、すいすい読めましたね。
まはらさんの本は『鉄のしぶきがはねる』『鷹のように帆をあげて』など数冊読んでいますが、
今までのと違って少しファンタジーが入ってます。
こういう本も書かれるんだなあ。
カバー画が大野八生さんでびっくりしました。イラストレーター兼造園家のあの方ですよね。
「じょうろさん」が好きです。

地図にも載っていない小さな島、久寿理島(通称:魔女島)にて
万病に効くといわれる「気休め丸」という秘薬を代々つくり続けてきた木場家に
八代目として400年ぶりに生まれた男の子という、設定てんこ盛りな主人公・草多くん15歳。
薬の製法は女性のみに受け継がれるため、草多は自力で秘薬の作り方を学ぼうと、
また顔も知らない父親の痕跡を探そうと、島を出て東京の和漢学園で薬学の勉強を始めます。
授業は座学のようですが、実習や牧野研究会の風景はハリポの栽培授業を思い出しますね。
マンドラゴラは出てこないけど。

草多には薬草の声が聴こえる力があって、薬草と他の草との区別がつきます。
学校の薬草園の草取りをしながら薬草たちと会話していて面白い。
「わたしはジギタリス、抜くな」「ジギタリス?」
「フランスのお城が懐かしい」「ヨーロッパ生まれか」
とか、楽しそうというわけじゃないけど、何気なくしゃべっていていいなあと思う。
(何となくピクミンとかなめこ栽培キットを連想しました)
しゃべる草はそのままにして、無言の草だけを抜けばいいって便利な力だなあ~。
他にも、牛のお腹から聞こえる「ここに、ここに」の声で胆石を見つけたり
真赤と真白の誤解を解こうとして、ペンダントの琥珀のミツバチに話しかけたり
(時空を超えた会話だったのでその後過労でひっくり返っちゃうんだけど)、
何かと突っ走りがちな主人公だなあ。
薬草たちも結構自分から草多に話しかけています。
ビンの蓋を開けようとすると「オニノヤガラです」と名乗ったり、
「キササゲ」「センナ」「エビスグサ」と自己紹介したり、
草多が探しているのがわかると「わしはここだ」って呼びかけたり。
気休め丸の声が気になるな…。
草多が無意識に力を振り絞って、気休め丸の薬草どころか成分の音まで聞いちゃう場面がありますが
水の中で鉄琴をたたくような音ってどんなん…気になる…。

草多の相棒(?)の竜骨も好き。
普段は物知り顔で、マーリンやガンダルフに似た賢者のような雰囲気で
割と大物っぽく振る舞っていますが
真赤の水晶玉を自分がかつて持っていた黄金の玉と勘違いして「わしの、わしの」って主張したり
泰蔵さんの玉が自分の玉かもしれないと聞いて「見たい見たい見たーい」ってダダこねたり
なんてかわゆいジジイ龍(*´ `*)。
かと思えば、草多がきこえなくなっている間もしょっちゅう話しかけていたり、
草多の大事なシーンで「言いたいことはそれだけじゃないだろう」って背中押したり。
やっぱりいい相棒。

学園の下宿「わからん荘」に草多と一緒に住んでいる人たちが個性的すぎる件。
動物が好きで動物実験ができない嵐さん、動物が嫌いで動物実験ができない伸太郎さん。
嵐さんのペットのモン吉に振り回される伸太郎さん。
真赤とブランカ(真白)は真赤がクール、ブランカが明るいって感じですが
真赤も結構熱いスピリットの持ち主だと思う。
草多が薬草の声を聴くとわかって、その倍の勉強をして薬を見分ける知識を身につけるあたり
ものすごい努力家だし。
(草多が3巻でそれを身をもって知るのがいいなあと思う)
しかし初対面で草多の根付(竜骨)に気づくあたり目はいいのかもしれません。
あと蘭さんの性格が好き~。
こんなおじいちゃんいたらたまらんけど楽しいだろうなあ。

結構長く続くのかなと勝手に思っていたので、3巻のラストで「完」の文字を見て
しばしあっけにとられました。
その前の草多とイラクサの会話がとても良かった。
口の中で薬草がものすごく大事なキーワードをしゃべるって何か官能的じゃありませんか。
草多の物語は始まったばかりなのですね。

作者のまはらさんは鹿児島市に住んでいたことがあるそうで、
久寿理島のモデルは屋久島と奄美大島だとか。
どちらも未踏の地なのでいつか行きたいです。
あと、この本は全3巻ですが3巻とも目次の後に本編に登場する薬草・生薬の一覧がありました。
カッコン、ヨモギ、レンギョウ、ドクダミ、ハトムギ、カミツレあたりはわかるけど
もし薬草園で探してくれって言われたら難しいだろうな…。
草多の耳が欲しい。



手古舞。※クリックで大きくなります
後ろ姿シリーズ7。6はこちら
埼玉県川越市のお祭と、川越稲荷神社巡りをごちゃまぜにしました。
川越祭りは江戸時代の「天下祭」を再現した300年以上続く祭礼、
稲荷神社巡りは川越市内に60社以上ある稲荷神社を狐の仮装で巡るイベントです。

衣装は手古舞の女性たちが着ているものです。片肌脱ぎにたっつけ袴、花笠が基本形。
着物の片袖を外して左右違う柄を見せるっていうのが粋で好き~。
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ジャンル : 本・雑誌

ぼくが目になろう。

先週のことになりますが、Bunkamuraザミュージアムで開催されていた
「レオ・レオニ絵本のしごと Book! Art! Book!」展に行ってきました。
小学校の教科書で知った『スイミー』でレオニの描く世界が大好きになって以来、
彼の絵本はたくさん読んできたので
今回その仕事がまとまって見られるなんて!と喜んで行きました。

展示内容ですが、絵本原画はもちろん、油彩、スケッチ、リトグラフ、エッチングほか
レオニが使っていた道具なども展示されていましたよ。
展示室の真ん中にはレオニの絵本が読めるコーナーがあって皆さん熱心に読んでいまして、
わたしも久々にいっぱい読んできてしまった。
『スイミー』における、スイミーが仲間たちと共に大きな魚に立ち向かうときに言う
「ぼくが目になろう」のセリフがかっこよすぎて膝から崩れ落ちるかと思った。
スイミー、あなたこんなにイケメンだったのね!
レオニの絵本の翻訳はほとんど谷川俊太郎氏によるものですが、名訳が多いなあ…。
レオニの原文がいいのだろうけど、谷川さんの言葉選びもいい。
ト書きもセリフも至極なんでもない訳なんだけど
どんぴしゃりな、他に考えられない言葉を持ってきているなと改めて読んで思いました。
お子さんたちがキャッキャしながら読んだり、親御さんにねえこれ見てって話しかけていたのが
とても微笑ましかったです。

絵本原画。
フレデリック、マシューのゆめ、コーネリアス、アレクサンダとぜんまいねずみなど
見覚えのある原画がたくさん。
今まで忘れていても、絵を見るとストーリーを思い出すから不思議ですね。
フレデリックが仲間たちに世界の色を語る場面と、マシューが美術館の絵に衝撃を受ける場面が
何度見ても好きだー。
レオニの原画はコラージュが基本で、紙が重ねて貼られているので
印刷ではわからなかった立体感がありましたね。
おんがくねずみジェラルディンには上から別の紙を貼りつけて修正した痕跡も。
じーっと見ると下の絵がうっすら透けていたのでわかったのですが、
修正前は葉っぱが青々と茂っていたのを、ジェラルディンのフルートの音色に変えたみたいです。
赤やオレンジの色鉛筆で表現された音色いいなあ。
作家の思考の跡が見られるのが原画のいいところですね(´▽`)。

レオニが絵本を作り始めたのは50歳前後だそうですが(やなせたかしさんと同じだ)、
本職がグラフィックデザイナーなので画面構成などのデザインもすごいんですけど
あおくんときいろちゃんが合わさると緑になるとか、透ける紙で葉っぱに遠近感を出すとか
色で遊ぶのが本当にうまいと思います。
みどりのしっぽのねずみの、ねずみたちが仮面を燃やしてしまう場面の炎の色がすごい…。
炎をこんな色に描く人、世界中探してもレオニくらいだと思う。
それまでモノトーンに近かった絵がパーッと明るくなるのですよね。
落ち着いた色の中に突如として現れるカラフルがレオニの真骨頂だと勝手に思っているのですが
今回の展示でそれを再確認できたような気がします。本当にきれい。
じぶんだけのいろとかペツェッティーノもすごい、
全然統一感のない色の組み合わせがこんなにしっくりくるって一体どんな配色センスだよ…。
アレクサンダも、絵本で見ても十分きれいなんだけど、原画で見ると色がくっきりして一層きれい。

レオニはいつもコラージュ用の紙をかごに入れて持っていたそうで、
今回はその持ち物の展示もありました。
小さなかごの中に、ねずみの胴体や耳やしっぽの形をした紙がいくつか入っていましたよ。
アイディアを思いついたときすぐ形にできるようにしていたのでしょうか。
レオニ愛用のおもちゃや画材もいくつか展示がありました。
これらからあの世界が生み出されていたんだなあ…。
そしてレオニ、カラフルな原画もきれいですが鉛筆画もすごい。
『平行植物』の原画の精密さに呆然としました。彼のいつもの絵本からは想像もつかなかったから。
不思議な植物たちを丁寧に緻密に描いています。
やっぱり絵の単純化がうまい人は基礎的なことが一通りできるんだよね。
『はまべにはいしがいっぱい』のエッチングや鉛筆画に混ざって
石ころを描きつめた「空海に捧ぐ」っていう鉛筆画があって戦慄した。ど、どういうことだ…。

スイミーの原画展示はなかったのですが、
会場の一番奥に壁一面をスクリーンにした展示室があって
スイミーの海が投映されて魚たちがたくさん泳いでいるインタラクティブコンテンツがありました。
スクリーン前に人が来ると、展示室に設置されたカメラがそれを感知して
魚たちが逃げていくしかけです☆
お子さんたちが面白がって追いかけていて微笑ましかった。
わたしも展示室をグルグル回ってスイミーたちを追いかけました。楽しかった~!


ミュージアムショップで買ってきた折り紙。レオニの絵本の絵がプリントされています。
四折りにすると絵本っぽくなるのがいいな~。



本日のお絵かき↓
世界の音を聴こう。※クリックで大きくなります
オリジナル。
年に1度の後ろ姿描きたい症候群に罹患しています。何も考えず描き描き。

しばらく後ろ姿描きます。
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魔法の家のお留守番。

サッカーW杯最終予選、いい試合でしたね~(´∀`)。
お互いに攻めまくってキーパーと守備が動きまくってカードも最小限で、選手も主審も監督も紳士でした。
なかなかシュートが決まらなかったけど楽しかったです。
相手のハンドのとき本田の前にボール蹴ったのがわたしの贔屓の清武さんだったんだけど
あの瞬間(のようにわたしには見えた)にうちの父と弟が「PK!」って叫んで
「え?え?巻き戻して」ってなったのが母とわたし。(父弟はサッカー経験者で母ゆさはただのファン)
あんなハンドどうやって誘うんだよ…。
あとね、遠藤やっとさんが、いつもなら飄々と人をくったようなあの人が
試合終了後のインタビューで「みなさんありがとぅー!」ってはじけていて超笑った。
遠藤ちゃんステキすぎる。
いやーともかくめでたい!おめでとうおめでとう!来年の今頃はブラジルだ!!


今週はBSでアガサ・クリスティの特集番組があったりTwitterで池田屋事件が起きていたりと、
何かと面白いことがあってwktkです。
映画『風立ちぬ』も主役以外のキャストがやっと発表されたし。待ってた(*´∀`*)。
瀧本美織ちゃんはドラマ「妻はくの一」の織江役がすばらしくステキだったので
どんな菜穂子さんになるのか楽しみです。
(あと、どうでもいいけど相手役の市川染ちゃんのダメダメっぷりが大変良かった)
なんだかキャラと役者さんの雰囲気がみんな似てて、見れば見るほど顔がだぶってくるから面白い。
西島さんは「夜のとばりの物語」でジブリと縁がありますけれども
まだ見てないなあの映画、見てみようかな。
志田ちゃんはアリエッティ以来ですね~。
そして萬斎さんのイタリア人とか楽しみすぎる!キャラクターのお髭がのぼう様のようだ。


で、だからってわけじゃないですけども
ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの『チャーメインと魔法の家』が先月刊行されたので読みました。
『魔法使いハウルと火の悪魔』『アブダラと空飛ぶ絨毯』に続く、
ハウルの動く城シリーズ第3巻です。
5年前にイギリスで出版されたと聞いて、翻訳をずっと待っていたので嬉しい~。

あらすじですが、ジョーンズ作品特有のキャラも魔法もわらわら出てきて
誰が敵か味方かわからないごちゃまぜストーリーで説明できないのでリンクを貼っておきます。→こちら
読み進めていくうちに別の意味で心配になる本でしたよ…。
「ちょっと、あと20ページしかないけどどうやってまとめるのこの話、終わるの??」って
終盤で思いました。見事にまとまったけど。
(残りのページ数である程度ラストを予想できるのが紙の本の醍醐味でもあると思うけど
ジョーンズさんの本はそれがまったく通用しないから面白い)

主人公はハウルではなくチャーメインという14歳の女の子ですが
この子、どちらかというとハウルよりソフィーに近いような気がするな…。
しょっちゅう怒ってるのと、自分の魔法の力を自覚しないあたりが、特に。
活字中毒どころではない本の蟲で、いつも読みたい本を探していて
用が済むとすぐ「じゃ、わたし本を読むわ」って口癖のように言う。というか口癖。
わたしとは気が合いそう(^∀^)。
しかしジョーンズさんのお話の主人公は休む暇がないのが鉄則なわけで、
今回も例に漏れず次々ハプニングが起こるので、結局このお話の中でチャーメインがまじめに読めたのは
『パリンプセストの書』『十二に分かれた魔法の杖』と王室宛のお手紙くらいだったなあ。
きっと王室の事件が解決した後は、
おじさんの書斎で浴びるほど本を読みまくったんじゃないかと思う。
お嬢様で家事をまったくしたことがなくて、食器洗い後に手がふやけてびっくりしてたような子が
家事の経験を積むうちに面白くなってきたところでピーターに仕事とられて
激おこプンプン丸してるのがかわいいです。
「学習してるわたしの邪魔をしないで!」の理不尽感パない。ピーターに悪気はなかったのに。。
あとこの子、魔法の使い方がソフィーさんと同じく「話しかける方式」なのですねえ。
床にたまった水をなんとかしたくて
「ほら、蒸発して!排水溝に行って消えなさい!さもないと許さないわよ」って怒鳴ってて笑った。
(ソフィーさんが2巻で空気相手に似たようなことしてたっけ)
チャーメインのファミリーネームが「ベイカー」というところにもニヤリとしてしまいます。
イギリスでベイカーといえば条件反射でベイカー街を思い出すから!(笑)

途中で男の子が転がり込んでくるってカバー折り返しのあらすじで読んでいたから
てっきりマイケルかと思ったら、ピーターという子なのですね。初登場。
この子がまた、チャーメインと同じくらい、何しに来たのっていうくらい何もできない(;´∀`)。
家事レベルはハウルを下回る残念さで、
右と左がわからなくなると指に巻いた糸を見て確認するっていう。お坊ちゃんって。
イギリスでピーターといえばケンジントン公園の赤ちゃんと湖水地方のウサギですが
どっちも家事できそうにないイメージですね…(^ ^;)。
過去のウィリアムおじさんにアジサイのことを伝えたのは賢明だったのかどうか。
チャーメインが苦労するハメになったけど、ラストを見る限りは結果オーライかもしれません。

ハウルとソフィーは中盤で登場しましたけど、
…ハウルさん、ちょっと何やってるんですか。(爆)
過去にほんとに6歳だったときもあんな舌ったらずだったのかな…。
火かき棒でひっかいたみたいな文字も相変わらずなのね。
(1巻でソフィーが「ハウルが使ってるのはペンなの、それとも火かき棒?」と叫んでいたっけ)
ソフィーさんは、いつものことですが怒ってばかりで、最高にかっこよかったです!
スカートをたくし上げて走る姿がイケメンすぎる。
2巻で金髪だった髪の色があかがね色に戻ってましたね!戻したんですね。
あかがね色こそソフィーの髪って気がしているので感激でした☆
今回もだいぶハウルに振り回されていますが、
負けずに言い返しているのもさすがですね。
「ぼくのこと、かあいいと思わないの?(悲しそうな声)」
「(どすんと足を踏み鳴らして)思うわよ。吐き気がするほどかわいいわね!」のやりとりに爆笑。
ソフィーさんはハウルの顔をきれいだとは思ってるだろうけど、面食いじゃないからなー。
あと、2人が協力して魔法を使おうとするときの、「しかけてきた?」「しかけてきたわ」の
ただならぬやりとりも好きです。

カルシファーは2巻でほとんど出てこなかったけど、その反動からか、今回は大活躍でした。
めっちゃ「悪魔」だった!かっこよかった。
「ソフィーに命をもらったかいがないってもんだ」「へまをするわけにはいかない」も良かったけど
個人的に一番キュンときたのは「見せてみな」のセリフ。
どういうことなの、カルちゃんが貫録のある頼もしい兄貴に見えるじゃないの!
例えるなら『ダークホルムの闇の君』のキットのよう。

タイトルにもなっているウィリアムおじさんの魔法の家、便利だなあ。
食事やお茶が勝手に出てきて、物を落としても割れなくて…おじさん準備万端すぎます。
ヒルダさんは2巻に比べて性格づけがされていて、常に凛としたイメージでした。
しっかり者王女様。
2巻の終わりで彼女が雇ったジャマールも、イカ好きな飼い犬も登場しましたよ。
(たまにアブダラが遊びに来ていたら笑える)
根拠はないのですがイギリスのお年寄りってヒルダさんのような人が多いイメージがあります。
厳格で礼儀正しくてブラックジョークが神。

はあぁわたしやっぱりダイアナ・ウィン・ジョーンズさんが好きだ。ほんとに好きだ。
新作がもう読めなくてもずっと好き!

テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

お店はじめました。

かこさとしさんの絵本『からすのパンやさん』が刊行40周年を記念して続編が出たので→こちら
今月あたまからニヤニヤが止まらないゆさです、こんばんは(*^ ^*)。
2年くらい前にかこさんがインタビューで「続編を構想中です」とおっしゃっていて
わーーいずみがもりのカラスたちが帰ってくるのーーマジですかーーきゃーー!!ってなって
あれから2年、首を長くして待っていました。
いや、待ったような、あっという間だったような…発売日を待っているといつもこんな感じですね。

『からすのパンやさん』は子どもの頃にボロボロになるまで夢中で読んで、
社会人になった今も、本棚を見ていてふと目につくと開いたりする本です。
ページをめくるたびに色んなパンが出てきてお腹がすきますが、懲りずに読みます。
特にお話の真ん中あたり、見開きでありとあらゆる形のパンがわーっと並んだページが大好き♪
もはやパン図鑑。やばし。

続編はパンやさんの子どもたち4羽が大きくなって、独立してそれぞれお店を開くお話です。
今月に2冊(チョコくんとリンゴちゃん)、来月に2冊(レモンちゃんとオモチくん)という
計4冊の刊行なのですよ!
1冊出てくれるだけでも嬉しいのに、一気に4冊も出てくれるとかどんなファンサービスですかかこさん。

そんな続編の刊行に関連してか、銀座の教文館さんで「からすのパンやさんのパン」が買えると聞いて
先日、ついカッとなって行ってきました♪
カニパン。
入荷が少ないのですぐ売り切れてしまうと聞いていましたが
お昼に行ったら無事買えましたよ!チョコクリーム入りのカニパン☆
おいしかった…木村屋さんマジありがとうございます…(*´∀`*)。

おめでとう!
パンについていたシール。いやーめでたい。
(そういえば福音館書店の「ぐりとぐら」シリーズも今年で50周年ですね。めでたい)

いずみがもり!
教文館を後にして池袋のリブロに来たら、児童書売り場の前にこんなディスプレイが!
ちょ、いずみがもりが出来ちゃってるよ…(笑)。
さすがリブロ、エネルギーが違います。

本屋さんや図書館やカフェなどの、気合いの入ったディスプレイを見るのが好きです。
もはやアートってレベルになっているとなお良し。

聞き入ります。
当日はからすのやおやさん・おかしやさんの読み聞かせ会も行われていました。

で、刊行されたばかりの「からすのやおやさん」「からすのおかしやさん」の2冊、
早速読んでみましたとも。
いや~いいですねいいですね!色とりどりの野菜とおかし!
かこさんは渋くてはっきりした色遣いなので、食べ物が抜群においしそうに見えます。
おいしそうな食べ物を見るとお腹がすくけど、元気も出てきますね。
来月刊行の絵本も読みますよ。
そして再来月には全5冊とトートバッグが入ったギフトセットが出るらしいから買うん!だ!!

かこさんの絵本は「だるまちゃん」のシリーズも好きですね。
数年前、十数年ぶりに新刊が出てものすごく嬉しくて、やっぱり読みました。てんじんちゃんかわいい。
そのうちまた何か出ないかな。


ところで…。
今年から、うちの母親が勤務先の学校の図書担当になったらしいので
からすのパンやさんとつづきのお話のチラシを見せたら
「あらいいわねぇ、図書室に入れようかな」と言い出しました。
よっしゃあ!
生徒のみなさんぜひぜひ読んでくださいね~☆
(しかも母は図書担当になったのが初めてで、選書もよくわからないらしいので
今度カタログ見せてもらうことにしました。
わたしにも何かできるかな。
というか、数年ぶりに分厚い児童書カタログが読めるかもしれない状況にわくわくしています。
子どもの本選ぶのって楽しいよねえ)



完成っ☆※クリックで大きくなります
「貫之1111首」古今集編その16。15はこちら
905年4月。編集作業がすべて終了しました。
あとは友則の最終チェックだけです。

友則「…うん、いいんじゃない」
忠岑・躬恒「「よっしゃあ」」
友則「すごいよみんな、ここまでやってくれたんだ。…えっと、この序文」
躬恒「いいでしょ~3人で決めて、ゆっきーが書いたんです。ちょっと面白いことやろうよって」
貫之「歌は仮名で書くもんだろ」
友則「面白いよ。仮名序ってわけだね」
貫之「献上は今月半ばだ。花見には間に合わなかったが、きっと大騒ぎになるぜ」
友則「ありがとう、ありがとうね。急がせちゃったね。もっと、じっくり編集したかったよね」
貫之「お陰でみんなヘトヘトだ。当日は無理だが、次の日にはどんな塩梅だったか報告するな」
友則「待ってる」

長歌・短歌合わせて1005首、全20巻。貫之が序文を書き、貫之と忠岑が詠んだ長歌を巻末に付与した『古今和歌集』ができあがりました!
このあと、上質紙に清書・製本していよいよ本格的に完成です。撰者たち、もうちょっとがんばります。

テーマ : 絵本
ジャンル : 本・雑誌

始まりと終わり。

伊藤遊さんの『狛犬の佐助 迷子の巻』を読みました。
小さな神社の境内にいる阿吽の狛犬と、迷子の犬を探す青年と、どんぐりが好きな男の子の
現代が舞台のハートフルストーリーです。
獅子の「あ」には石工の親方の、狛犬の「うん」には弟子の佐助の魂が宿っているのですが
彼らが生きていたのが150年前というのが個人的にツボ♪
ちょうど幕末ではないかー。
別に歴史上の人物が出てくるわけでもないんですけど、なんかそういう設定って好きですね。
ストーリーも現代の情愛とお江戸の人情がまぜまぜです。ほっこり。

親方と佐助は絵に描いたような職人気質の師弟ですね。
佐助がいろいろ話しかけて、親方が「しょうがねぇな」って言いながら相手してる感じ(^ ^)。
「あ」を彫ったのは親方で、「うん」を彫ったのが佐助なので
彫った人の魂がそのまま残ってしまったわけで、
しかも神社の宮司さんは親方の「あ」の出来はすばらしいと褒めて
佐助の「うん」には首をかしげてしまうという。
親方の名に傷をつけたとヘコむ佐助を
「おれよりいいものを作ろうとやっきになってたくせに」と励ます親方がイケメンすぎてつらい。
一方、よく神社にどんぐりを拾いにやってくる少年を見て
「ようちえん、て、寺子屋みたいなものですかねえ。何の勉強をしているのでしょうねえ」
「そりゃやっぱり論語だろうよ」
「それって難しいんでしょう」
「難しいに決まってらあな」
のやりとりが呑気で微笑ましい~。
この人たちきっと、学問とか出世とか幕末の動乱とかどこ吹く風で
仕事に没頭していたんだろうなあと思います。
手には道具、目の前には石があるから彫って当たり前ですみたいな、愛すべき仕事バカ。粋。

大人には聞こえない佐助の声を、6歳の男の子が聴いたあたりから物語が急展開していきます。
この男の子の機微の描写がみごとでですね…。
自分に頼み事をしてくる佐助に内心びくつきながらも話を聞こうとするというか、
声が聞こえちゃうから耳を向けるしかないというか、
頼まれ事は断れない性格なんだろうなっていうのも伝わってきて
伊藤さんの筆が冴えているなあと。
心の動きを描くのが本当にうまい作家さんだな…。
岡本順さんのイラストも素敵です。
男の子と親方以外に自分の動く姿が見えていないのをいいことに、いたずらし放題の佐助と
佐助の笑った顔を見て、いーってしてる男の子がかわいい♪

(ところで、あまり子どもに話しかけるのを好まない親方に
「どうせ7つになったら、みんな忘れてしまいますよ」と佐助が言っているのは
"7歳までは神のうち"というやつですね)

青年が行方不明の飼い犬を探すシーンを読んでいるときは
「となりのトトロ」でいなくなったメイをサツキが探し回るシーンの音楽が脳内再生されていた。
そういえばあの音楽のタイトルも「まいご」でしたね…。
逆に、親方が佐助を探し回るシーンではネコバスの音楽が爆音で再生されました(笑)。
だって親方ったらものすごい全力疾走なんだもの!
ほとんど馴れ合いのない師弟の、ふと見せる思いやりとかやさしさに涙しそうになるのも
この本の魅力のひとつだなあと思います。
「おいら、まだ見たことのないもののことを考えるのが、大好きなんです」
「だからおまえだったんだよ」
の会話がじーんときました。師弟愛っ…!

ところで副題がついてるってことはシリーズと考えていいですか伊藤さん…!
佐助を助けてくれた大野神社の狛犬たちの話とか
(あの人たちたまらんですよ、何たるイケメン)、
親方と佐助が出会った狐の夫婦の話とか、もっと読みたいです。

伊藤遊さんの本は日常とファンタジーがうまく連続していて好きですねえ。
日常と非日常の間を反復横跳びするのが全然珍しくないというか、
どっちも同じ空間に存在しているからまあ当然こうなるよね、っていうか、くらくらする。
伊藤さんの本を読んでいると、ふとしたときにそういう瞬間が見えてしまうような感じがします。
これ癖になりますよ…。
『つくも神』や『きつね、きつね、きつねがとおる』は正にそういう本だったし、
『鬼の橋』も行って帰ってくる話だし。
『えんの松原』は異性装ものとして大変すぐれた本だと思いますけれども、
あれも異界を抱えた住居の中で生活する人々の話だしな…。


あ。狛犬が出てくる本といえば柏葉幸子さんの『狛犬「あ」の話』も面白いので
興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
狛犬の話も泣けるのですが、主人公のおばあちゃんがすごくかっこいいのです。
孫に敬語で接するおばあちゃんてステキ!と思ったのは『西の魔女が死んだ』以来だなあ。
西魔女のおばあちゃんも背筋が凛と伸びてそうな雰囲気をかもし出していて大好きだったりします。
(サチ・パーカーの映画はまだ見てませんけども…いつ見ようかな…)



tsurayuki69.jpg※クリックで大きくなります
「貫之1111首」古今集編その14。13はこちら
午後の撰所。ふらふらになってやって来た貫之の顔を見て、びっくりの忠岑と躬恒。

忠岑「うわ、すげえ顔、寝てねぇの?」
貫之「うーん…」
躬恒「大丈夫?」
貫之「歌が足りない。勅からもうすぐ1年なのに、900ちょっとしかない」
躬恒「でも」
貫之「こんな計画、万葉集以来だぞ。後々まで生きる歌集を作るつもりでやってる。手は抜かない」
躬恒「体壊したらどうするの」
貫之「壊さない」
躬恒「だめだよ、最後まで無事にやらないと。帝や大臣も無理するなって仰せだったし、友則さんだって」
貫之「時間がないんだよ。あいつ、大内記辞める気なんだぞ」
躬恒「……」
貫之「おれたちは出来上がりが見られて、あいつは見られないなんて、そんなのあるか」
躬恒「……」
貫之「ごめん」
躬恒「……」
貫之「八つ当たりだ」
躬恒「こっちこそ」
貫之「……」
躬恒「ごめんね」

万葉集以来の歌集プロジェクト、撰者のプレッシャー、迫る期限、そして、友則の体調。
貫之にとっても、躬恒や忠岑にとっても、すべてが初めてのことばかりです。
みんな不安でいっぱいなのでした。

テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

タシルの祝祭。

ブロとものkanayanoさんが「チケットあるのでどうぞー」と譲ってくださったので、
松屋銀座で開催中の「ねこのダヤンと不思議の国 ダヤン誕生30年池田あきこ原画展」を見てきました☆
kanayanoさんいつもありがとうございます~(*^▽^*)。

わちふぃーるどは高校生の頃から大好きで、絵本も何冊かうちにあるのですが
実は作者の池田あきこさんの原画展に来たのは今回が初めて。
サイン会は何度か見かけたものの、あのとおり大人気なので整理券とれた例しはないし、
池田さんの作品がまとまって展示されている河口湖木ノ花美術館は遠いし…という具合に
あまり機会にめぐまれなかったのですけども
今回は都内でやってくれるということで念願叶って行けました。ヒャッホー。

中に入れます。
入口。たくさんの花と大きなダヤン。
ここはカメラ撮影OKゾーンなので、ダヤンとツーショットで写真が撮れます。

いえーい。
こんな感じ!

展示室に入ると、1983年にわちのシンボルとして池田さんが描いた一番最初のダヤンと
30年後(つまり今)のダヤンの大きなキャンバスが2枚、颯爽と並んでいて
素敵なツーショットでした。
昔はスリムで写実的だったダヤンが、今は頭身が縮んでまんまるくなっているのが
感慨深いです。

そしてここからがもうすごい。ダヤンと愉快な仲間達が本気出してた。
わちふぃーるどやタシルの街の地図とか、タシールエニット博物館の迷路とか
大きいものの展示があったのもすごく嬉しかったよー。
特に立体展示!
わちふぃーるど天球儀と、ダヤンの家の立体展示に感動した。
『スウィングタシル』という、八面体の凸凹展示にもっと感動した。
出口にあった、ボルネオがモチーフの絵+革でできた立体展示にもっともっと感動した。
あと、大きいものじゃないけど、ダヤンのフォーチュンカードにもっともっともっと感動した。
マザーグースが題材になっていて、
ロンドン橋やハンプティやパンチ&ジュディやキラキラ星のイラストが30枚も…なにこのかわいさ!
「ねこ、ねこ、こねこ」のダヤンのかわいさにKOされて、
ひねくれ男のダヤンたちが文字通りひねくれたデザインで笑った。
「ボビー・シャフトー」のジタンのポーズが『猫の島のなまけものの木』の表紙そのまんまで
やっぱり笑った。
ジタン!この!オトコマエ!!(バンバン!!←床叩)

『ピーターラビット』『たのしい川べ』『ナルニア国』『ムーミン』など
動物ものが好きなゆさとしては、こんなにたくさんのキャラクター(しかもかわいい)が
見られるだけでワクワクします。
しかも、わちは世界中の昔話がうまくちりばめられていて宝石箱みたいな世界観でいいなあ。
池田さんの想像力と創造力ってすごいと思う。本当に。

みんなのイケメン王子ジタン、おめめパッチリおしゃれなマーシィ、底抜けにいい奴なイワン、
みんなの天使バニラ、ダヤンの誕生日をとっちゃう魔女たち、おばあちゃん魔女のセ、
よみがえった郵便配達員ボーンも大好きですが
わたしはダントツで月のおばさん(マダム・ムーン)ですね!
「月にはウサギがいる」をリアルで体現してくださっている、あのお方です。
名前のとおり月に住み着いて自由気ままに空を散歩し、
時々降りてきていたずらしたり、誰かを助けたり、気まぐれに月に乗せてくれたりする、
何を考えているかわからないマーシィの伯母さんです。
高校時代にわちと出会った瞬間、その生き方に一目ぼれでした。
ダヤンとマーシィには無条件でやさしく、弟のオットーさんのこともなんだかんだで心配している。
絵本などでマダムが登場するとお話にユーモアが出てくるよなあ。胸熱。

映像展示もあって、天井から大きなスクリーンが2枚吊られて
池田さんが画用紙に描いたダヤンが画用紙を抜け出して冒険しに行くストーリーが展開されてました。
画面をくるくる動きまわるダヤンもかわいかったですが、
作家さんのメイキングを見るのも大好きなので面白かったですね。
池田さんの絵を見ていると結構、筆圧をかけて描く方だなあと思っていたのですけど
映像でもわりと紙をぐっと押すように色鉛筆を走らせていました。
あの独特の濃さが好きです。

また、池田さんは数年前に動物と自然を守るボルネオトラストの『緑の回廊』作りに協力し、
ボルネオ国内の土地を購入し「ダヤンの森」と名付けて保護する活動もなさっているそうです。
展示室には手描きのボルネオレポや、池田さんのインタビュー、
最新作『ねどこどこ』の絵本の原画展示がありました。
クッションひとつでボルネオを旅するダヤンはほんと、ふわふわしていてかわいかった☆

ミュージアムショップも本気出してた。。グッズの量がパない。そして広さがパない(笑)。
30周年なので大量の記念グッズも並んでおりました。
わたしはダヤンの小物入れをゲット。
そういえば昔、カシガリ山のランプを買おうとしてお値段見たらゼロが4つで仰天したのだった。
今思い出すとそれだけの手間暇はかかってるなとは思うけど。


パンをどうぞ。
松屋の屋上庭園にいたエプロンダヤン。

パンですよ。
ねずみパン持ってるよ!かわいい!!


で、この後、府中市美術館で「かわいい江戸絵画」展も見てきたのですが
長くなりますので次回記事で書こうと思います。



よい秋日和。※クリックで大きくなります
「貫之1111首」古今集編その6。5はこちら
『続万葉集』奏上から半年。改めて「古今の歌をまとめるように」との詔が帝から下されました。
時平に相談して帰って来たものの、さてどうしようと思案顔の貫之たち。

萩「友則さんは?」
貫之「風邪」
萩「ふーん。どうなってるの、今」
躬恒「なんか、いろいろ注文されたよね」
忠岑「根本から並べ直しじゃね、これ」
躬恒「数も増やせって言われたね」
忠岑「経国集とか、サラッと言いやがったよな」
貫之「20巻か…。1000首は要るな」
躬恒「集めた歌家集だけじゃとても足りないよ。うちらも編纂しながら少し詠もう。人にも頼まなきゃ」
貫之「1年でできんのか、これ…」
萩「1年!」
貫之「急がないけどとは言われたな。どこが急がねぇんだっての」
躬恒「とにかく、こっからはうちら次第だね。たぶん続万葉集以上の構成力が要るし、献上したら御書所の蔵書になるからお偉いさんも読みに来るよ」
忠岑「マジかよー超怖えーよーもー」

おっかなびっくり、編集を始めることになりました。
ちなみに経国集は827年の勅撰漢詩集で、全20巻でした。(現在は散逸して6巻ほど残っています)

また、この時代は左大臣藤原時平の統治下にあり、
「荘園整理令」施行、『三代実録』撰進、『延喜格』『延喜式』の撰修などが行われていました。
『古今和歌集』の編纂も、そんな中で始められたものでした。

テーマ : 展示会、イベントの情報
ジャンル : 学問・文化・芸術

スタンドアローンコンプレックス。

荻原規子さんの『RDG(レッドデータガール)』シリーズ全6冊を読み終えました。
1巻の刊行が2008年だから6年かけて読んできた計算だなー。
長いような短いような。

荻原さんは基本的に本のタイトルを漢字でつける方なので、
今回のタイトルを最初に見たときは正直、まばたきしました。あら珍しいって感じ。
しかし紐解いてみると、物語の底辺には日本史のDNAがガッチリ流れて
そこに学校・生徒会・馬・犬・カラスという荻原文法も組み込まれていて
ああいつもの荻原さんだって思った(笑)。
髪を結ぶことが封印だとか、髪を切る行為とか、お化粧の意味とか、供物が持つ力とか、
強い気持ちで発せられた言葉は相手を縛るとか、笑いが破邪につながるとか
昔から言い伝えられてきていることをうまくからませてストーリーに息づかせている点が、
いつものことながらすごいなと思います。
「言い伝えが実際に起こるということがどういうことか」を実感させてくれるというか、
現代、今まさに目の前で起きたらたぶんこうなるだろうっていう手触り感とか
そういうのがひしひしと。
古刹の廊下を靴下や裸足で歩くときの、あのヒヤリとした感触のような感じがしますねぇ。
CLAMPの『xxxHoLic』とかもそうだけど。

泉水子が超がつく引っ込み思案な子というのも、歴代の荻原ヒロインから考えるとなかなか新鮮で
センセーショナルだなって思ったのですけども、
世界遺産候補になるという点でやっぱりセンセーショナルだった(笑)。
強い力を持って生まれたがゆえに周囲から追われるというのは荻原主人公の宿命ですけども
囲われて守られる対象になったのは泉水子が初めてじゃないでしょうか。
(あとメガネっ子ヒロインも初めてですね)
考えをまとめるのが苦手で、何か言うたびに後悔するっていうのも
歴代のヒロインにない特徴だし。
(たぶん狭也や遠子が泉水子と会話したら絶対に長続きしないと思う(^ ^;)。
あえて会話できるとしたら苑上くらいかな…)
しかし色々経験するうちにやり方がわかってきたらしく、話が進むごとにどんどん言動が強気になって
しまいには学校を自分フィールドで覆うまでに力をコントロールできるようになって、
「高校生活を送る間は、高柳くんに隠れ蓑にになってほしい」と言い出したときは
強かになったなぁこの子!ってちょっと感動した。
ただ、精神的にも社会的にもまだまだ子どもな部分がある子なので
アンジェリカが「チーム姫神」案を言い出したときには
(実際の名付け親は真夏だけど)、そ れ だ …! と思って安心しました。
深行、宗田きょうだい、生徒会、山伏組織、玉倉神社の人々、(あと戸隠とか、たぶん陰陽師もだよね?)
いやー最強の布陣やわ…。
その例えが紀伊山地であるところもまた荻原さんらしい。

ツンツンの深行が、泉水子に対してどうデレになっていくかというのが
読み始めた当初はものすごく気になっていましたが(笑)、
わりと最初から最後までツンツンな秀才男子だった感じですね。
頭脳明晰で社交的だけど、そんなに周囲に対して簡単には気を許さないっていうか
自分が確信を持っていないことや、いい加減なことは言わない子という印象もありました。
泉水子に何か説明するとき…たとえば忍者について尋ねられたときも
「どこまでさかのぼって忍者と呼ぶかによる」っていう言い方をするし。
親がああだからか、人間不信こじらせ系男子のようなセリフもあったけど
本人の諦観の方がまさって、結果的にはそんなに深刻ではなかったような。
泉水子の言動や行動が何から何まで自分とは違いすぎているために
「わけわかんねぇ」とかぶつぶつ文句言うことが多かった深行ですが、
彼女の傍で色んなこと(ほとんどが神霊系)を経験したり
姫神に振り回されたりしていくうちにあれよあれよと柔軟性が身に付き、
しまいには泉水子の頭を小突くまでに寛容になっちゃって
ついにここまで来たかみゆっきー…と思っていたらラストシーンでさらにびびりました。。
そうだったそうだった、最初からデレるなんて荻原ヒーローにはありえないけど
デレたら最強なのだった。。
とはいえ、きっと今後の泉水子と深行の関係も、今までがそうだったように
だいたいつかず離れず的な感じで続いていくんじゃないかと思います。

三つ子の宗田きょうだいの、一筋縄ではいかなさ加減もリアリティがあるなあと。
真響は明るくて、真夏はのんびりやで、真澄はマイペースで、3人とも頑固(笑)。
普段はものすごく仲良しで、気の置けない会話もポンポンできるけど
だからこそ感情的になりやすい部分もあって
そうなったときの修復は泉水子と深行の関係以上に難関だったりする。
真夏がよく言う「真響がひとりで、おれと真澄が半分ずつ」っていうのは
生物学的な考えからきているんだろうけど、もっと根本的なところもあるんだろうな…。
しかしそんな3人が、泉水子や深行がピンチになるとあっという間にまとまるのが
すごくわかりやすいというか、
自分の身近な誰かのためになら損得抜きで動ける子たちっていうところが好きです。
「あの2人の気持ちが一つになると、おれは無敵だよ」って言う真澄は
最高にかっこよかった。

姫神がああいう性格なのは何でだろうと思っていたら、
紫子さんの性格が染みついたからというのが何とも。。
何だろうその、『CCさくら』のケロちゃんが長いこと大阪で寝てたせいで
大阪弁がうつっちゃった、みたいな理由は。。
じゃあ姫神も泉水子の髪型をかわいいと思っているってこと…?(笑)
紫子さんは謎を明かすどころか、ネズミ算式に増やして去っていく人でしたな。
この物語で一番謎な人は誰かと問われたら、躊躇なく姫神じゃなく紫子さんと答えます。
姫神はカオスだけど、正体がわかってしまえばあれほどわかりやすい人もいないような。
あとは出現地点と日時さえ予測できれば…(笑)。

あと紫子さんの、「語尾がだ・である調で、強い霊能力を持っていて、
普段は家に全然いない」っていうお母さん像は
『結界師』の守美子さんに似ているな…とふと思いました。
主人公から離れて仕事しているけど、
その仕事が結果的に主人公や家族を守ることに繋がっているのも共通しているなあと。
いや、紫子さんと守美子さん、根本的な性格は全然違うんだけど。

ラストを読んで「この話、ここで終わってるけど、色々なことが始まったばかりだなあ」とか
ぼんやり考えましたら、
あとがきで荻原さんも同じようなことを仰っていて笑ってしまった。
「泉水子も深行もスタート地点の足場を固めたに過ぎない」。そうそう、そんな感じです。
というか、あとがきを読んでも思ったけど、荻原さんって『空色勾玉』の頃から全然ブレてないなー。
神話や民話や伝承を踏まえつつ自由に遊んでいらっしゃるよね。
鳥彦に始まるカラスたちはヤタガラスが原型と聞いて、やっぱりそうかと。

あと、このシリーズの表紙イラスト(酒井駒子さん画)はいつも泉水子がピンで飾っているのですが
5巻までの泉水子が横顔だったり何となくうつむきぎみなのに対して
6巻の泉水子は正面を向いているんですね。
こちら(読み手)と目を合わせることができるようになったのですねー(´ー`)。
そういう部分もすごく「スタート地点の足場を固めた」という感じがしました。
「もうちょっと生きよう」という顔なのかな。


「昔から伝えられた物語というのはみんな、じつは、はじまる前までの話なんですよ。
ほんとの人生というのはメデタシメデタシの後からはじまってくんですね。
(中略)あんたがたが自分で体験しなさい。物語はここで終わります。……
だけど要するに、子どもに対して、そういうふうに(メデタシメデタシで)やっていけるもんですよ、
というはげましなんですね、じつは」
(「漫画の手帖」10号、宮崎駿の発言より)



そしてお待たせすぎっ!って感じ満載ですが、本日からようやく開始です。
そっくりさん。※クリックで大きくなります
「貫之1111首」古今集編その1。前回までのお話はこちら
902年、春。
御書所預(図書館長)になった貫之のもとに、使いの童子がやって来ました。

童子「こんにちはー」
貫之「あれっ、おまえ…」
童子「お初にお目にかかります。友則さまの使いで参りました」
貫之「???…えっと、前に会わなかったっけ」
童子「橘と申します、以後お見知り置きを。主人から言づてがございまして」
貫之「なんだ」
童子「本日退庁されましたら、この文に書かれているものを持って邸までお越しくださいとのことです」
貫之「え、だってあいつ、風邪ひいて寝込んでるって」
童子「おっしゃる通りなのですが、今はお目覚めです。落ち着いたとのことで」
貫之「そうか…。わかった。行くと伝えてくれ」

さて友則は何の用事なのでしょう…。続きます。
ちなみにこの童子、過去に出てきたこの子と似ていますが別人です(笑)。

テーマ : 読書感想
ジャンル : 本・雑誌

女王様のおもてなし。

入口です♪
前回記事にて予告しましたが、ブロとものkanayanoさんと一緒に池袋の「古城の国のアリス」へ
行ってきました♪
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』からイメージした料理が出てくるお店です。

コンセプトレストランは何度か経験がありますけれども、
(アラビアンロックとか池田屋はなの舞とか監獄飲み屋とか)
ここは妹に先を越されて以来、行く機会を狙っていたお店でもありまして(笑)。
kanayanoさんおつき合いくださりありがとうございましたっ☆

以下、料理の写真が多いのでたたんであります↓クリックで開閉しますのでどうぞ☆

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