博物館でお花見を。

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東博本館の「博物館でお花見を」に行ってきました。
過去に何度か訪れていますが、毎年恒例の春の行事です。
絵画に工芸に彫刻、展示室のあちこちに花の作品がたくさんあって楽しかった~☆

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こちらも恒例、春の庭園解放。
桜の木もたくさんあるようですが、池のほとりにある江戸彼岸だけ満開になっていました。
ピンクのシャワーが降り注いでるみたい。

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枝垂れ桜ってほんときれいだよね。

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本物の桜を楽しんだ後は展示室の桜をめぐります。
写真は平安時代の不動明王立像。
桜の木に彫られているそうです~固くて丈夫で摩耗しにくいのだそう。
(確か円空が桜の木に彫った仏像があると、前に日曜美術館で見たっけな)

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ジャンル : 学問・文化・芸術

歴史と寓話。

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国立新美術館の「ミュシャ展」に行ってきました。
ミュシャは人気なので毎年だいたいどこかで展示やってるし4年前の六本木のも行きましたけど
今回はスラヴ叙事詩が来日すると聞いたので!
美術ファンやミュシャファンなど知る人には知られているスラヴ叙事詩、
その大きさと美術的価値ゆえにチェコ国外で展示されることはないと思われていたのが
2年前に突如「円柱に巻きつけて運びます」というパワーフレーズとともに速報が流れたときは
全身が震えたよ。
だってプラハ行かなきゃ見られない(=飛行機に乗れないゆさは一生見る機会がない)と思ってたから!
今までも一部が来日したことはあるみたいだけど全部は初めてだそうで
この企画のために果たしてどれだけの人が全力を尽くしたのか。
本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。

もともとあの絵は輸送を考慮して分厚い帆布に描いてあるのだそうで
巨大キャンバスに描かれていると勝手に思い込んでいた自分を正しに行くためにタイムマシンが欲しい。
ミュシャはずっと現実的な考え方の人だったのだ…!
そもそもミュシャはあの作品群を、ズビロフ城というボヘミア地方の城をアトリエにして描いていて(大きいから)、
プラハに寄贈するため城から移動させる手段も見据えてたってことよね。
それでもプラハから日本まで動かす以上リスクはやっぱりあると思うので
様々なハードルの中貸出を許可してくれたプラハ市と権利者の人々に大感謝。ありがとうございます。
展覧会公式Twitterで巻いて運ばれてきたスラヴ叙事詩が展示されるまでの様子がワクワクどきどき、
また展覧会公式サイトのトップページでは叙事詩の大きさを体感できるアニメーションもあるし
今回の企画がいかに規格外かを色んな人に知ってもらえるのではないかと思う。
天地がひっくり返るスケールの出来事なんだよ!
こんな機会二度とあるかわからないから行ける人は這ってでも行った方がいい。

展示室へ入ったとたんにいきなり巨大な絵の群れがどーん!と視界にとびこんできて
やっばい本当に来てる…!と戦慄。
わたし今まで見た中で一番大きな絵は高野山の血曼荼羅(4m)ですがそれを凌ぐ大きさだよ、ひええ。
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言い忘れましたけど今回、一部ですが写真撮影ができます!カメラ必須!!
関係者の尽力に感謝します。最近こういうの増えてきてうれしい(*´︶`*)。
写真は後半の撮影可能ゾーンですが作品と鑑賞者の対比が何となくおわかりいただけるでしょうか、
とにかく巨大でド迫力。
新美の展示室ってこんなに天井高くて広かったんですね…
いつもは小さな作品の展覧会を見てるから気づかなかったよ。

スラヴ叙事詩は全部で20点、6mものキャンバスもあり完成まで17年を要した大作で
神々の時代から第一次世界大戦までのスラヴ民族の歴史が史実と寓話を交えて描かれています。
描き始めた当時ミュシャは50歳、78歳でなくなっていますからほぼ後半生を費やしたんだね。
(その間チェコスロバキアの切手や紙幣や警察官の制服などのデザインもやってて
どんだけ働いてたんだミュシャよ)
4年前の展覧会でも叙事詩の下絵や習作、登場人物のコスプレするミュシャの写真などが紹介されましたが
あれらを経て完成した形がこれらなのだと思うと感動もひとしおで、
展示室を何度も行ったり来たりしながら各作品をまんべんなく鑑賞。
わたしにはチェコの歴史の知識はないけど、
キャンバスでかいし群衆たくさん描かれてるし衣服や建物の装飾も細かいし
近くからでも遠くからでも見どころだらけで全然飽きない。
上部分は照明で光ってる部分もあるのでオペラグラスがあるといいかもしれません。

中でも特に完成度が高い初期の3点「原故郷のスラヴ民族」「ルヤーナ島でのスヴァントヴィート祭」
「スラヴ式典礼の導入」がほんとにかっこいい!
異民族の侵攻から逃げる男女(アダムとイヴといわれる)から神々の戦争の時代を経て
ラテン語の使用からスラヴ語を認めさせるまでの流れはよく考えられてる…。
多神教の祭司や当時の国王が両手を広げてバーンと空に浮かんでるのかっこいいし
(叙事詩の特徴として神や権力者は画面上部に、市民は下部に描かれる傾向があります)、
民族の団結を象徴する少年の姿は凛々しい。
続く「ブルガリア皇帝シメオン1世」はスラヴ文学の創始者といわれるシメオン1世の絵で
ギリシャ聖人の壁画に囲まれた宮廷でシメオンが書記官に口述筆記をさせ、
周囲では学者や司祭たちが夢中で本を読んでいました。
鑑賞前に参考にした現地の学生さんブログにも
シメオンの時代は「ブルガリア帝国のもっとも栄光に満ちた時代」と書かれていたけど、
書物の表紙やページはもちろん、壁や床や絨毯や若者の腰布の模様まで細かく描きこまれていて
画面のすべてから繁栄がばしばし伝わってきます。
シメオンはビザンチン帝国の書物をスラヴ語に翻訳させ宮廷で学者や司祭に読ませて
ルーマニアやロシアへ広めた人だそうで、
キャプションに「書物はスラヴ人の過去と未来をつなぐ役割を果たしたのです」と解説されていて
首がもげるほど頷いた。
聖書をドイツ語に翻訳して今に伝えてるみたいなロマン…読書は過去の人との再会なのだ。

神話から戦争へ。
「クロムニェジージュのヤン・ミリーチ」「ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師」「クジーシュキでの集会」は
言葉の魔力といわれる3点シリーズで
それぞれミリーチ、フス、コランダという聖職者の説教とその影響を絵画化しています。
特にフスは、フス派と呼ばれるほどの影響力を持った人(後に裁判にかけられ火刑になった)で
演台から身を乗り出して熱っぽく演説する様子は声が聞こえてきそうなリアリティ。
そんなフスを、横から冷たい目でヤン・ジシュカ(実在の軍人)が見ているし
ジシュカの背後の壁画にはドラゴンと戦う聖ゲオルギウスがいるのも象徴的だと思う。
コランダはフスの後継者で信仰を守るためには武器も必要と説き戦争のきっかけを作った人で
絵はまさにその宣言の場面で今にも戦争が始まろうとする不穏な雰囲気もあり、
赤と白の旗(生と死を象徴)も立てられています。
「ヴォドニャヌイ近郊のペトル・ヘルチツキー」はそうして起こったフス戦争さなかの様子で
人々が悲しみに沈む中、司祭ヘルチツキーが市民の拳を制して聖書の言葉を授ける場面。
「グルンヴァルトの戦いの後」と「ヴィートコフ山の戦いの後」は
戦後に呆然と立ち尽くす軍のトップやフス派による勝利の儀式などを描いています。
「ニコラ・シュビッチ・ズリンスキーによるシゲットの対トルコ防衛」は
1566年のオスマントルコの侵攻をクロアチア総督ズリンスキーがハンガリーで迎撃した事件の絵画化で
派手な戦闘シーンが赤黒い色彩で展開されている。
中央を黒々と分断する黒煙はズリンスキーの妻エヴァが放った松明による爆発で
ズリンスキーが撃たれる姿も描きこまれているのですが、
実際はズリンスキーが亡くなったのはこの後でエヴァは再婚もしているとのことで
かなりミュシャの創作が投影された絵なんだな…。

政治や宗教。
「ボヘミア王プシェミスル・オタカル2世」は王の姪クンフータとハンガリー王子ベーラの政略結婚の場面で
花嫁の姿はないけど階段にかかる装飾と白衣装がすごくきれいだった。
「東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン」は
ローマ皇帝を名乗り戴冠式を終えた皇帝のパレードの様子で、
花を持つ少女を先頭に華やかな行列が描かれています。
(実際の東ローマ帝国はギリシャのパレオロゴス家が皇帝だったらしいですけども)
「フス派の王、ポジェブラディとクンシュタートのイジー」はチェコとカトリック諸国の協定を教皇が無効としたので
イジー王が怒って椅子を蹴っ飛ばして立ち上がった、まさにその瞬間の場面で
もしこれを実写映画化したら俳優の演技の見せ所はここみたいな、とてもドラマチックな絵。
手前の少年が持っている本のタイトルに「ローマの終焉」とあるのが意味深。
「ヤン・アーモス・コメンスキーのナールデンでの最後の日々」はボヘミアがカトリック諸国に敗北し、
移住を余儀なくされたプロテスタントの信徒の一人だったコメンスキーの死の場面で
彼は椅子に座って物思いにふけりながら亡くなったとされているそうです。
寂しげなコメンスキーの姿も見事だけど、中央に置かれたランプの表現がすばらしかった!
ミュシャは灯りをすごく灯りらしい色彩で描ける人だと思う。
あとこの絵だけミュシャのサインが入ってます。さがしてね^^

そしていよいよ撮影可能ゾーンです。
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博物館に初もうでその4。

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今年のミュージアム始めも去年と同じく東博からスタート。
毎年恒例、「博物館に初もうで」に行ってきたよ~!
本館正面階段の生け花も毎年気合いが入ってる感じがします。松竹梅。美しかった☆

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トーハクくんにも会えたよ~色んなポーズとってくれてかわいかったです☆
かっこよく仁王立ちとか。

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片足上げたりとか。

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座ったりとか。これ中の人足どうやって畳んでるんだろう…(^^)。
ちなみにトーハクくんのモデルは東博所蔵の「埴輪(踊る人々)」(埼玉県熊谷市出土)だ!
(過去に見てきたよ→こちら

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今年は酉年ということで、鳥をテーマにした特集陳列「新年を寿ぐ鳥たち」がありましたので
一部をご紹介していきます。
写真は蘿窓の竹鶏図。
ニワトリは五徳(文武勇仁信)をそなえているという言葉が中国の『韓詩外伝』にあるそうで、
「頭の冠=文、足に距(けづめ)を持つ=武、闘鶏=勇、餌を見て相呼ぶ=仁、時を告げる=信」とのこと。
(ちなみにこの考えを『十二支考』の「鶏に関する伝説」に引用した南方熊楠は
「猫の五徳」なるものも記してるよ^^)
それにしてもこのニワトリちゃんすごい目つきしてますね(笑)。

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この道より我を生かす道なし、この道を歩く。

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三井記念美術館の「日本の伝統芸能展」に行ってきました。
国立劇場開場50周年を記念して、雅楽や能狂言、歌舞伎、文楽、演芸、民俗芸能など
現代の日本に伝わっている芸能について絵画や芸道具からたどる展覧会です。
神事から始まった踊りや音楽がやがて宮中、一般市民へ伝わっていく過程をみていくと
過去を学んだ人が新しいものをつくり、それらをおもしろがって盛り上げた人がいて
途絶えてしまうのはもったいないと伝えてきた人がいて…と、
芸能史は人の連鎖だなあと改めて思いました。
国にしろ地域にしろ、何かを伝えていくには体力が要ると最近思うようになったのですが
芸能はそれが顕著な事例の気がする。

まずは雅楽。
古代日本において演じられた舞楽のお面や和楽器が並んでいました。
尾張徳川家3代目の綱成が熱田神宮に奉納したと伝わる陵王(蘭陵王)の面は
口をくわっと開けて目をまんまるに見開き、額に龍を乗せたいさましい顔、
隣には同じく尾張徳川家奉納と伝わる納曽利の面がありました。
蘭陵王と納曽利は番舞で演じられることが多いから、セットで奉納されたのでしょうか。
重要文化財の抜頭面は真っ赤な顔にちぢれ毛の黒髪、しの字につり上がった眉などただならぬ表情で
これ踊ってたらどんなかなあと想像。
「実性丸」と銘のある琵琶は紀州徳川家に伝来したもので東大寺の実性僧正の愛用品、
小さく誰でも演奏しやすそうな印象でした。
銘「蘭(アララギ)」の篳篥は螺鈿の装飾がほどこされ、
収納されている扇型の箱にも貝殻などの模様の螺鈿細工がほどこされていて美しい。
銘「鹿丸」の笙も頭に鹿と紅葉が金色にきらめいていました。
北三井家11代目の娘久子さんの初節句のために作られた雛道具の楽器は
すべて手のひらサイズのミニチュアで
鞨鼓・太鼓・鉦鼓・笙・龍笛・琵琶・筝・和琴・三味線・胡弓などが揃っていて
琵琶や太鼓に家紋が入り、太鼓の真ん中に大きな牡丹が描かれていました。
こういうのほんと楽しい…!和楽器ってどうしてこんなに美しいんでしょう。
舞楽を描いた屏風作品もあって
輪王寺所蔵の舞楽図屏風は陵王や納曽利ほか約20点の舞楽を踊る人々が散らし描きされていた。

能狂言。
翁の面は髭が細く長くて、目が三日月のようにニッコリしてて見てるこちらも幸せになれそう…
世界を祝福する人はこんな顔をしてるんだろうかと。
孫次郎作の女面は、金剛流の太夫が早逝した妻の顔をモデルに作ったらしくて
「オモカゲ」という別名もついているとか。
楽器蒔絵小鼓胴は笙や琵琶など能に使われる楽器が蒔絵で描かれていて豪華な作り、
楽器に楽器を描くっておもしろいと思いました。
観能図屏風は豊臣秀吉が宮中で催した「翁」の上演会の様子で
御簾ごしに天皇が見ていたり、遠巻きから南蛮人が見物していたりと当時の雰囲気まで再現されてる。
古狂言後素帖は狂言の演目の1シーンのスケッチをまとめたもので
翁や高砂など見覚えあるものから知らない演目まで様々。
女山賊というのが気になった…薙刀を振り回す女性に追われて男性が逃げていく絵で
このシーンに至るまできっとアホな理由がありそうだなあと思いました、狂言だけに(笑)。

文楽人形の展示も。
ちょっと広いスペースに桐竹勘十郎さん監修による三人遣いのマネキンが再現されていたよ~。
人形は義経千本桜「道行初音旅」の忠信(実は源九郎狐)で
3人の黒子がそれぞれ頭と手足を担当しているようです。
ガラスなしの展示なので近づいて色々観察できて結構、ダイレクトに手つっこんでるんだなとか
手首が動かしやすいように割れてるのとか、物を持つ演技のために引っ掛ける突起がついてたり
わかることがたくさんありました。
人形の首も20個くらい並べてあって、首ごとに文七や与勘平や検非違使や娘など名前がついてるそうで
傾城の首が一番豪華だったな…簪どっさりついてる高級遊女。
ガブを間近で見てみたかったけど展示されてなかった。
裸人形もひとつ展示されていて頭と手足が紐でつながれているだけのシンプルな構造にびっくりした、
胴体まで作ってあるわけではないのですね。
初菊と弁慶の一式も展示されていて、弁慶の首は文七が使われてるのとか初めて知りました。
(文七は熊谷直実や明智光秀などの首でもあるそうだ)
文楽はあまり見たことないので来年はもうちょっと見に行けるといいな…。

歌舞伎。
出光美術館の阿国歌舞伎図屏風は阿国の一座が「茶屋あそび」を上演する様子を描いていて
舞台の上で覆面に腕組みをしている男装の阿国は目だけギラギラしててかっこいい。
中央に北野天満宮の社殿が描いてあるのはこの時期の歌舞伎図にはよくあるポイントらしいです。
岩瀬文庫寄託の四条河原遊楽図屏風は左隻が若衆歌舞伎で右隻が女歌舞伎、
垣根越しに見物する人や敷き物しいてお弁当を囲む人たちまで様々いて
なんだかピクニックみたいだなと思いました。
五代目歌舞伎座の杮落しの際の歌舞伎展でも思ったけど
この時代の人ってほんと自由にお芝居見物してるよね^^
伝菱川師宣工房の上野花見歌舞伎図屏風はでかでかと芝居小屋が建っていて
看板に中村座って書いてあったり舞台の演目に「太平をどり」とあったりして
舞台では役者たちが総踊りのようなことをやっていて賑やかでした。

女歌舞伎や若衆歌舞伎が幕府によって禁止されてからの野郎歌舞伎時代。
錦絵の歌舞伎はこれまで何度も見てる絵が多かったけど
歌川豊国「中村座内外の図」は黒御簾が上手にあった頃の貴重な資料になってることを
キャプションで指摘されているのを読んで勉強になったり、
歌川広重「東都繁栄之図 中村座」の演目の看板に「ワキ狂言 酒てんどうじ」というのを見つけて
うおおお見たい!ってなったりした。
おもしろかったのが、歌川国輝「五代目大谷友右衛門の横川覚範」が
花道のスッポンの床下で奮闘するスタッフの姿を描いていたり、
歌川国貞「楽屋錦絵」シリーズが楽屋にて稽古や読み合わせや化粧をする役者たちの姿を描いていること。
仕初め式に向かう團十郎、仁木弾正の扮装で出番を待つ五代目幸四郎、
化粧をする瀬川菊之丞、息子に振付を教える三代目三津五郎、
殺陣を教わる宮島重郎(鶴屋南北の子)など当時の稽古や風俗についての一級資料だよこれ!
国貞の観察力もほんと細かくて、やっぱり取材したのかなあ。
役者たちだけでなく、かつらを作っている友九郎(羽二重を発明した人)や
2月の天神祭のために地口行灯に菅原伝授手習鑑の絵を描く職人や
日待ち(寝ないで願い事をとなえて日の出を拝む行事)の最中に義太夫の稽古をする役者たちなど
様々な場面を描いてくれています。
こういうのはさすがに国立劇場ならではの所蔵品という感じがする。
あと歌舞伎衣装もありました。
七代目團十郎使用と伝わる白地三升格子模様着付はインパクトのあるでかさの格子模様。
五代目中村歌右衛門の黒繻子地雪持竹南天雀文様打掛はたわわな南天に雀がとまっている豪華な衣装で
先代萩の政岡役の際に着用したもの。
六代目尾上菊五郎の黒綸子地雪持松文様羽織は菅原伝授手習鑑の松王丸役らしく
雪の積もった大きな松の木が点々とつけられています。
七代目松本幸四郎の木綿地龍丸入格子文様羽織はものすごい金色で
何匹もの金色の龍が背中にどっさり刺繍されてて、重さどんだけなんだろうと思った。
七・八代目市川中車の寄せ裂着付はツギハギだらけで何これと思ったら
俊寛に使われた衣装だそうで…美しく派手な衣装だけが歌舞伎ではないですね。

地域の芸能。
片山春帆の民俗芸能スケッチ帖は田植踊りや笠踊りなど
各地域を回ってその土地の芸能や衣装をスケッチしたもので、
展示してあったページには「執心鐘入」「浜千鳥」などのタイトルも書いてありました。
1936年5月の日本青年館での琉球芸能会のスケッチが載っていて
当時の情勢を考えるとたいへん貴重な記録とか。
国立劇場おきなわ所蔵の、女踊り用の紅型衣装や花笠もたいへん美しかった。
江戸上りの図(転写本)は将軍の代替わりなどで琉球が慶賀使を江戸へ送ったときの行列を描いてて
使者の持つ旗に翼の生えた虎というフェアリーな生き物が描かれてて心がとても和みました^^
ライオンに羽だったらグリフィンですが虎は何か名前があるのでしょうか…よく知らない。
愛知県東栄町の大入地区の花祭衣装や榊鬼の面、鏡やまさかりなどの持ち物にふむふむと思っていたら
隣に長田神社の追儺の鬼面がズラッと並んでて心臓飛び出るかと思った、
なんてこった長田神社だーーー!!!
いつか、いつか見に行きたいと思っている長田神社の節分行事に使われる鬼面に
まさかまさかこんなところで会えるなんてまさか。
い、いや、実際に見に行けたとしてもお面をじっくり眺める時間はないかもしれんから
よい機会だと思ってとことん鑑賞してきましたとも…。
7匹みんな忿怒の相ですが餅割り鬼と尻くじり鬼(すごい名前だ)には角がなかったり
赤鬼青鬼に至っては牙さえもない。
神の使いである長田神社の鬼たちには不要なものなのかもしれません。


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美術館を出て、道路の斜め向かいにある奈良まほろば館の前のせんとくんが
帽子とマフラーでクリスマス仕様に(笑)。
鹿の角があるからサンタというよりトナカイみたいでした。かわいい。
あと大仏プリンが入荷してたから買ったよ~レアチーズ味おいしかったです。

あとこの日は品川まで足を延ばして下神明天祖神社にも行きました。
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下神明駅から歩いて5分、住宅街の中に建っている小さな神社です。

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目的はこちら。来年1月3日まで頒布されている熊本地震復興祈願の御朱印です。
初穂料を募金箱に入れると書き置きをいただけます。
募金は熊本の神社庁に寄付されるとのことです。

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新宿高島屋のワカタクにも寄った。
和菓子もクリスマスシーズンですよ~!
サンタクロースはこの前、目の前で猫を作ってくださった引綱さんのお菓子です。
左は日の出楼さんのお菓子ですが上からだとわかりにくいので↓

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冬支度するミノムシでした!かわゆす。

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衣紋の道その3。

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埼玉県立歴史と民俗の博物館の特別体験事業「十二単と男子装束体験」に行ってきました!
男子装束に応募しまして、去年は直衣を着せていただいたので
今年は狩衣がいいなあと思っていたのですが
(着装体験は時間指定のためタイミングによっては前の人が着てたりすると選べません)、
当日はわたしが最初だったらしく「お好きなの着られますよ」と言っていただけたので狩衣をリクエスト。
去年の記事でたてた目標を年末に無事に達成です、よかったよかった。

…が、ここで新たな事実が。。
男子装束はてっきり直衣と狩衣だけと思っていたし去年もそう聞いていたのに
更衣室で衣紋者の人に「どれになさいますか」と聞かれたので「…えっ、どれとは」と返すと
「直衣と狩衣と赤袍です」との返答が!増えてるーー!!!Σ(゚Д゚)
(ちなみに直衣は平安貴族の自宅用衣装、狩衣はアウトドア衣装、赤袍はお仕事衣装です)
か、か、狩衣で制覇と思っていたわたしは……いやあびっくりしました。
というわけで来年の目標ができました。赤袍を着る。


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更衣室で単と下袴をつけていただいてから着付け会場に出て
さらに赤い単と指貫をつけていただきます。
(写真は博物館のスタッフさんが撮影してくださいました。ありがとうございます☆)

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こんな感じになった。

去年と同じようにお世話係の婆やに着替えを手伝ってもらう坊ちゃんの気分でいたのですが
装束を着せていただく時はつい、衣紋者の人が着せやすいようにと手を動かしてしまう癖が抜けなくて
やっぱり今年もやってしまったのですが
「お殿様はだらんとして、力を抜いてください。動かすのはかえってはしたないのです。
そう、在原業平になりましょう!」と高らかに言われてしまって
ハードル高ぇー!!ってなりました\(^o^)/
わたしは甘かった、坊ちゃんどころじゃなく貴公子レベルにならなくてはいけなかったのだ…
貴公子ってなったことないからわかりませんけど、
「のうし」「かりぎぬ」とか言えばその通りの衣装が差しだされて着つけてもらえるのでしょうね、
というか人生で業平になれと言われる日が来るとは思わなかった…生きてると色んな事あります。

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さらに上から狩衣を着ます。
着つけはこれで終わり。あっという間です。ものの10分で完成してしまいました。

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博物学と月の文化。

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サントリー美術館で開催中の「小田野直武と秋田蘭画」に行ってきました。
直武は平賀源内を調べているときに知って好きになった絵師で画集はよく見ていますけども
そういえばあまりナマで見てないなーと思っていたらこの機会ですよ!
企画してくださった方々ありがとうございます(^v^)。
そして直武が仕えていた秋田の殿様がこれまた博物学大好き藩主で
自分も調査するし物集めるし絵も描くしで、ほんと当時の秋田どうなってんの?という印象を持ってたけど
今回の展覧会で当時は他にも博物学を愛した大名たちがいたことを知って
色んな意味で勉強になりました。
言われてみれば木村蒹葭堂の周辺があんなに盛り上がってたのに大名が知らないわけないよね…
てかああいうのを最初に入手するのはだいたいお偉いさんだよね、
平賀源内が博物学に首つっこむきっかけを作ったのも高松のお殿様だし。

メインビジュアルにもなっている不忍池図、実際に見たら結構大きくてびっくりしました。
背景は遠近法で、タッチは大和絵で、植物などは唐風という
まさに和洋中の融合を見た気分。
手前の鉢とかこれ、地面に置いたとき土をこする音が想像できるくらいリアルだよ!
3匹の蟻がいると聞いてよくよく見ると、ほんとだ芍薬の蕾に小さく小さく描いてありましたし
空には小さく遠く鳥が飛んでいるし、間近に見ないとわからないことがたくさんある絵だなと思いました。
(余談ですが最近のリアル不忍池はミニリュウが出ることで有名らしいね…
ポケモントレーナーの皆さま不忍池を、また文化都市上野をどうぞよろしくお願いします←突然のダイマ)

直武が12歳の頃に描いたという神農図や17歳の時の大徳明王像図もあって
その頃はまだ大和絵風のタッチなんだけど
(英一蝶の模写で、水面に映った子鬼を鍾馗が睨みつける鍾馗図がおもしろかった)、
秋田を訪れた平賀源内に出会って解体新書に関わるようになってからタッチが一変、
西洋の極細にめざめて太く大胆に描くことをまったくしなくなっていきます。
解体新書の扉絵も何度も見てますが相変わらず細かいな~。
眼鏡絵の品川沖夜釣や寛永寺吉祥閣などもこんな細い線一体どうやって引いてるんだよ…。
笹に白兎図は、大和絵にはあまり例がない影をウサギにつけてるし
鷹図は鳥を細部まで描きこむだけではなく落ちた羽やフンまで描いてるし
ヨンストン動物図譜からの緻密なライオン模写は東洋の獅子図として仕上げつつも思いっきりライオン。
鱒図は松平頼恭(平賀源内の上司)が描いたのと構図がほぼ一致しているので
これは源内に原本を見せてもらった可能性があるのかしら…写真みたいな絵でした。
あと塗り残しの絵ということで桔梗図の写生が展示してあって親近感を覚えました、
わたしも途中まで塗って放置してる絵が何枚かあるので…(;^ω^)。

直武が仕えた佐竹義敦(曙山)という人もたいへんな蘭学好きで色々書いたり描いたりしておりまして
重要文化財の松に唐鳥図は太い松の木に赤い鸚鵡がとまっていて、これはまあよくある構図ですが
背景に西洋風の景色が描かれていて、完璧ではないけど遠近法も使われている。
写生帖は瓶に入った小型ドラゴンみたいな絵のページが開かれていたけど
これは一体何を見て描いたのでしょうな…?傍らに謂れも記されていたけどよくわからなかった。
直武の蓮図と並んで紅蓮図があったのですけど、構図がそっくりで
たぶんどちらかがどちらかの構図を模倣したんだと思うけど
こういうところからも2人の仲の良さが伝わってきます。
あとたまに「源義敦画」って署名がしてあって源氏なんだ~へー!って思った。
博物大名ネットワークなるパワーワード…。
蘭癖大名といわれた熊本藩主・細川重賢の毛介綺煥は鯨の歯や瓶入りのワニのスケッチ、
昆虫胥化図は昆虫が羽化して成虫になるまでの過程を克明に記録したもので
図鑑とか参考にしたかもしれないけどよく観察した結果できた絵に見えたな…。
重賢は曙山とも交流があったらしく、
忙しい政務の合間をぬって研究していたお殿様たちを想像すると楽しい。
九州にはオランダとの貿易拠点だった長崎があり海外文化が比較的手に入れやすかったため、
他にも福岡や薩摩の大名たちが博物学に傾倒していますが
有名なのは高松藩主の松平頼恭や平戸藩主の松浦静山でしょうか。
そしてだいたいそこらへんの人々を漁っていると木村蒹葭堂の名前が出てくる…大坂名物コレクターめ。

当時のお江戸の蘭学や蘭画についても。
杉田玄白らが出版した解体新書の隣には原書のターヘル・アナトミア。(*´︶`*)
宇田川榛斎『医範提綱』の附図である医範提綱内象銅版図は亜欧堂田善が刻した日本初の銅版解剖図で
タッチといい陰影といい、むちゃくちゃ細かくて立体的。
(ちなみに医範提綱は解体新書で厚腸・薄腸と訳された用語を大腸・小腸と言い換えた書物でもあるそうです)
平賀源内が栗山孝庵に宛てた手紙があって、
「お約束の武助(直武の通称)画2幅、昨日取り寄せましたよ」とか
「讃州の堺屋源吾(源内の甥で源内焼を学んだ人)は武助と同様に自分が取り立てました」とか
事務的報告の中にも源内の人格が垣間見えるようでおもしろいです。
源内の蔵書を再現したコーナーはアンボイナ島奇品集成、大絵画本、ヨンストン動物画譜などがあり
こんな本がひしめきあっている本棚ぜひ眺めてみたい…。
源内が企画した展覧会の図録、物類品隲(挿絵:宋紫石)はベレインブラーウのページが開かれてたよー!
紫石が描いていた南蘋派の絵画もたくさん展示されていて、
モチーフは牡丹や梅、壺、鳥、猫など中国でめでたいとされるものが多かったかな。
紫石からも学んだらしい直武は当時こういう絵をたくさん見たんだろうな…。
宋紫石の富嶽図、ごつごつリアルの岩の向こうに真っ白い富士山があってめっちゃきれいだった!
石川大浪・孟高兄弟が模写したファン・ロイエン筆花鳥図は大きな掛軸、
紙をめいっぱい使ってあふれんばかりの花を思い切り描いていて迫力あった。
松林山人の牡丹猫図、正午牡丹(真昼に咲く花)というやつで
中国では富貴の全盛期を象徴するおめでたい画題なのだとか。
佐々木原善の名花十友図は10人の友を10人の花にたとえた文学的な絵で
蓮やあじさい、梅や牡丹など様々な花がリアルに細かく描かれていました。
あと源内関係者として鈴木春信の文を読む女や春信に学んだ歌川豊春の浮絵などもありましたが
びっくりしたのが展示室の最後にあった手柄岡持の外山御苑(尾張徳川家の戸山荘の大名庭園)図。
朋誠堂喜三二という名前の方が有名かもしれませんがまさかこの展覧会で会うとは思わなかった、
さらりとしたスケッチすてきだったー!
喜三二は秋田藩の江戸留守居役(外交官のようなもの)で直武の上司にあたるのよね。

こうして見てくると直武と出会った司馬江漢が蘭画沼に落ちていく(笑)のもよくわかるというか。
江漢の不忍之池は遠近法がダイレクトに使われていながら
「日本製」とわざわざ書き入れるところに江漢の意地を感じる。
異国工場図はラウケン『人間の職業』から錫細工師の絵を模写したもので
江漢もきっと蘭書からたくさん学習したんだろうなと思う。
江ノ島稚児淵眺望は過去に見たことがあるので久し振りだった~。
秋田蘭画は直武と曙山がいなくなってから忘れられていくけど
近代になって角館出身の平福百穂が『日本洋画曙光』で取り上げてから少しずつ研究が進んでいって
現在に至るそうです。
(平福百穂といえば岩波書店の壺形マークをデザインしたあの人ですな)

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ミッドタウンはクリスマスモード。あっちこっちにクリスマスツリーがありました。
夜はイルミネーションが綺麗だそうな。

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また、先日終了しましたが
渋谷区立松濤美術館の「月―夜を彩る清けき光」の後期も同じ日に見てきました。
前期も先月行きましたので、まとめて感想いきます。

絵巻や屏風や浮世絵、蒔絵、陶器、刀の鍔や三所物、甲冑などにみる月の意匠の良品が揃っていて
竹取物語と源氏物語のモチーフがやっぱり多かったように思います。
江戸時代の竹取物語図屏風、かぐや姫は有職風ですが天人は唐風で描かれていましたね。
狩野常信の紫式部・黄蜀葵・菊図は3幅セットで
トロロアオイと菊の掛軸に挟まれた紫式部は松の生い茂る石山寺で物語を執筆する姿、
十五夜の月は琵琶湖の波間に映っていて空にはありません。想像するのでしょう。
源氏物語「浮舟」の絵。匂宮と浮舟が舟に乗っているのを銀色の有明の月が照らす場面。
勝川春章の雪月花。月は石山寺の紫式部、花は桜と小野小町、雪は簾を上げる清少納言で
これもよくあるモチーフ。
海北友雪の徒然草絵巻、前期は32段の扉を開けてお客を見送った後にしばし月を見あげる女性が、
後期は239段の、婁宿にあたる8/15と9/13に浜辺で月見を楽しむ人々が
どちらもほのぼのと描かれていました。

仏教を守る神として描かれた月天像。
前期は下弦の月を手にした月天。月天子とも呼ばれ、密教の十二天像のひとりだそうです。
後期は両手で蓮に乗る月(中に兎がいる)を大切そうに持つ月天。
両方とも瓔珞をたっぷりつけた仏像のようなデザインでした。

武蔵野図屏風、金地に山々と秋草が美しくてさて月はどこ?と探すと
秋草の中に銀色の月が沈んでおりました。
田中訥言の日月図屏風、左隻には川の上に浮かぶ銀の半月、右隻には波の上に浮かぶ太陽。
伝俵屋宗達の伊勢物語図色紙「西の対」は男が縁側で寝そべり観月中。色っぽい。
狩野栄信の定家卿春秋図は3幅セットで
春の朧月に照らされる桜の狩衣を着た定家を、桜と紅葉の掛軸が挟んでいて美しい。
鈴木春信の在原業平は浮摺も相まっておしゃれ、
喜多川歌麿の石山秋の月は、歌麿にはめずらしく風景画。
歌川広重の名所江戸百景がいくつか、彼の描く月はなんでもきれい、
というか広重の風景画はやさしくてきれいだと改めて。
歌川国芳の小倉擬百人一首からは安倍仲麻呂、凛々しく立つ名古屋山三郎の頭上に月。
岡本秋暉の波間月痕図、友人と隅田川の草堂で宴をした折に夜空を見て即興で描いた月で
ゆらめく月を水墨でさらさらっと描いていた。
橋本雅邦の布袋観月図は松の間から月がチラ見。
鈴木其一の草花図は紅葉と秋草の短冊セット、紅葉の合間に月が見えています。
司馬江漢の月下柴門美人図は夜にたたずむ女性ですが空に月はなく、
代わりに月光に照らされる女性の着物から月を連想するもの。
富岡鉄斎の読書立志図は唐風の建物に丸窓が開いて窓辺で月光に照らされる書物が美しい、
水墨画だけど窓に吊るされている行灯だけに赤色が入ってるのも印象的でした。
一宮長常の月兎漕舟図、波に浮かぶ三日月の小舟を漕ぐうさぎは一寸法師のようでかわいらしかった。
情感たっぷりの月岡芳年の月百姿、やっぱり大好きだ~!

陶器や武具における月もたくさん。
田毎の月図鐔は西垣永久が70歳のときの制作ですが
信州は冠着山の山腹の田畝のひとつひとつに三日月の月影が映り込んでいるもので
それを小さな鍔の中に作っちゃうのすごい。
頼政鵺退治図三所物は源頼政の鵺退治がモチーフ、
目貫は鵺と頼政、小柄は鵺と対峙する頼政、笄は天皇から獅子王を賜った頼政が歌を詠む姿で
月は頼政の頭上に輝いていました。
制作した後藤程乗って幕府に仕えた職人ですよな…さすがにかっこいい。
半月がついた黒漆塗頭形兜は賤ケ岳の戦いに出陣した武人が着用したものと伝わり、
右側に銃弾か何かでへこんだ跡が残っていた。
黒漆塗二枚仏と日月文軍配はいずれも江戸時代の作で、ど真ん中に三日月。
染付吹墨月兎文皿、うさぎと月のモチーフがかわいい。
尾形乾山の定家詠十二ヶ月和歌花鳥図角皿は何度も見てるけど飽きない!

月フェチとしてはルナティックという言葉の魅力にも惹かれるものがありますし
狼男や魔女やドラキュラなども大好物ですが、
月を愛する文化には落ち着いた静けさがあって好きです…月読の沈黙のような。
趣向がとてもすばらしく静謐なタイトルにお月見を愉しむような展覧会でした。よかった。

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松濤美術館は中央が吹き抜けになっていて地下に噴水があり、1階に橋がかかってるのですが
前期の訪問時にたまたまパントマイムのパフォーマンスに遭遇。
橋に来た人が見えない壁に阻まれて進めないみたいな演出で、
ドアや窓がついてるみたいでガチャって開けて向こう側には行けるけど
その先にも壁があったり、さっき来たところにまた壁ができてて通れないとか
たっぷり1時間ほど色々見せてくれて楽しかったです。

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壁があって通れないなー…みたいなアクション。
ドアノブがあるんだけど鍵かかってるとか、つかんで回すのとか
手が一定の位置から動かないからそこにドアがあるように見えました。

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エントランスと丸窓の外でもパフォーマンスをやっていた。
鑑賞者が通り過ぎても一切乱れることなく、「壁があるなあ…」みたいなアクションをしながら
ちょっとずつちょっとずつ前進して地下への階段に消えていきました。
パントマイム見るの久しぶりだったけどおもしろかったー!

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ジャンル : 学問・文化・芸術

待ちこがれし喜びの光。

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サントリー美術館にて「鈴木其一」展を見てきました。
おおまかに前期後期に分かれていたので2回行きまして、
本人の初期から晩年まで、そして同時代の絵師たちの作品もたくさん見られてよかったです。
日曜美術館効果もあってか、会期が迫るごとにどんどん混雑して
正直こんなに混むと思っていなかったわたしは其一を甘く見ていたよ…。
酒井抱一の弟子というだけではなく、ひとりの絵師として評価されている証拠でもあって
何だかうれしくなりました。
其一は割と作品数が確認されている絵師のひとりなので可能ならまた回顧展やってほしいですな、
できれば師匠と一緒に(笑)。

まずは其一の周辺から。
師の酒井抱一の作品がいくつか展示されてて、
「桜に小禽図」や「雪中檜に小禽図」など良質な小品がありました。
当たり前だよって言われそうですが、改めて抱一の絵を見て思うのは本当に抱一しか描けない粋というか
彼が美しいとする世界観がしっかり完成されてて構図も色彩も絶妙なバランスを保っている。
其一に隙があるってわけじゃないけど抱一みたいな完成度の絵を描ける人ってどれくらいいるのかな、
いやあマジかっこいいわ…。
其一が描いた「抱一上人像」の本物を前からずっと見たかったのですが
今回、展示されていてうれしかったです^^
丸顔で大きな目のおじいちゃん抱一かわいい(^ω^)。
冬に亡くなった師匠をしのぶような、表装の上下のススキがとても品がある。
また、其一の兄弟子に鈴木蠣潭という人がいて
其一は彼が若くして亡くなった後に鈴木家に入り家督を継ぐのですが、
その蠣潭の掛軸もいくつか。
亡くなる前年に描かれた「大黒天図」は、甲子の日に大黒天をまつる行事にちなみ描かれたと伝わり
ジャムおじさんみたいなやさしい顔の大黒さまが水墨でサラリと描かれているし
白薔薇図扇面は大きな白薔薇がハラリと散る図で余情を感じます。
こんな人たちの絵を其一は間近に見て修行時代を過ごしたのだな…。
当時の文人たちとの交流の名残もいくつかありまして、
「蓮に蛙図」は大きな蓮の葉にちょこんと乗った蛙の絵に太田南畝が賛を入れています。
「文政三年諸家寄合描図」は師の抱一や谷文晁、渡辺崋山、小鸞ほか総勢72人の絵師たちが
大きめの掛軸にみっちり寄せ書きした賑やかな掛軸。
中央に抱一が宝珠を描き、近くに其一が蟹を、文晁は蝶を、小鸞は漢詩を寄せていました。
この年は抱一の還暦にあたるためお祝いの席でワイワイ描かれたりしたのかも、なんて想像するの楽しい。

さて其一。一番多かったのは掛軸で、画題も様々でしたね。
本阿弥光甫を意識したかと思われる「藤花図」は紫の花の一部に紅色の花があったり
まっすぐに咲く「向日葵図」や可憐な花を咲かせた「林檎図」もかわいかった。
「雨中菜花楓図」の葉の下にモンシロチョウが雨宿りしてるのを見つけて思わず微笑んだり
「雪中檜図」で木に積もった雪がドサーと落ちる音が聞こえるような気がしたり
どの絵にもちょっとした工夫がされているように思いました。
其一は白椿が好きだったようで、鶯や茶椀や花鋏と一緒に描いてる絵が素敵でしたな~。
かと思えば「三社図」(伊勢神宮・春日大社・石清水八幡宮)で建築をしっかり描いてたり
「浅草節分図」で観世音菩薩の大提灯をでかでかと描いたりと、風俗画も色々あるようです。
歴史画もあって、「源三位頼政図」は平家物語にもある深山の歌からの着想で
弓矢をかまえてかしずく頼政がとてもかっこいいし、
「足柄山秘曲伝授図」は源義光が豊原時秋に笙を教えるエピソードの絵画化だし、
昔から描かれてきた画題を自分もやってみるみたいなリスペクト作品もよかった。
ファインバーグ・コレクション展で見た「大江山酒呑童子図」に再会できたのもうれしかった~、
相変わらず超細かくて童子が美青年に描かれてるのが本当にツボ!!

屏風が大きなのから小さなのまでたくさんありました。
メトロポリタン美術館蔵で今回の目玉ともなっている「朝顔図屏風」はかなり大きめサイズで
両面いっぺんにどーん!と展示されているまん前に立つと
奥行きが無限に続いているかのような錯覚を覚えてクラクラしてしまった。
これチームラボとかに動画作ってほしいな…きっと無限に増え続けては枯れていくに違いない。
夏秋草渓流図屏風」は右から左へ季節が移ろっていくもので
金に緑に青に茶色、と原色が強烈な絵だけあって
しゃがんで下から見上げると屏風から水が流れ出てくるような錯覚を覚えてしまってやっぱりクラクラ…
これもぜひチームラボに動画を(ry
「群鶴図屏風」もファインバーグ・コレクション展で見たので久々の再会、
手術用のメスにたとえられる其一の鋭さが垣間見えるし、
「三十六歌仙・檜図屏風」は光琳百図を踏襲した構図で学習とリスペクトを感じたし、
「松に波濤図屏風」は近年、其一のものと発見されたらしい水墨画で
波のくるくるうねうね感は光琳の描く波とそっくり。
「四季花鳥図屏風」は無数の植物が季節を問わず咲き乱れたファンタジーの庭園のような絵で
こんな庭あったらいいのに…!で素で思いました。

襖絵もきれいで、特に「萩月図襖」がむっちゃきれいだった!
銀色の月に照らされた萩がわずかに霞んでいるのとか…こんな月光が見える表現わたしもやってみたいよ…!
「松島図小襖」は宗達や光琳の松島図を彷彿とさせる小さな屏風で
島が点々と遠近法で描かれて大波小波が踊っていて雄大でした。
「風神雷神図襖」の前にはなぜか人が少なかったけど、
実物は4面×2の計8面もあるので少し離れたところから見ないと全体の雰囲気が掴めないとわかって
わたしも少し離れて見たり、近づいて細部を見たりしました。
お手本にしたのは抱一や光琳のそれだと思いますが、
この襖の風神は雷神を見てるけど雷神は下を向いていました。何か意図があったのかな。

描表装ってあまり展覧会で特集される機会はないと思うんだけど
(日本美術の展覧会で1点か2点はだいたいあって気がつくことはあるんだけど)、
其一は結構制作しているのでまとめて展示されていました。
ただ単に表装を飾りつけるのではなく、
絵と関連づけて表装も含めて丸ごと1つの作品に仕上げているのが粋だなと思います。
個人的に一番気に入ったのが「月に秋草図」、
ノコンギクやススキを表装に描き、月を絵に描いてまるで窓辺を思わせるような1枚で
徳島藩蜂須賀家に伝わったものらしい。
派手さがなくて渋いのが、何となく武家の雰囲気に合ってる気がして其一と蜂須賀さんの趣味が伺えます。
「夏宵月に水鶏図」の、紫陽花に降る雨を上下に配したセンスや
其一50歳の時の作品「三十六歌仙図」の波模様と扇子のデザイン性とか
「業平東下り図」の四季の草花とか。
あと息子の守一と一緒に制作した「秋草に鶉水月図」の表装は
親子が使っていた66種類の落款を画面全体に散りばめるように押しまくってて
えー、なんだあ、かわいいなあこの親子!って萌えてしまった。すてき。

其一の人物像や仕事ぶりがわかる資料として、直筆の手紙がいくつか展示されていました。
すべてパトロンの松澤孫八に送った手紙で、
尾形光琳の「王義之図」の鑑定を依頼されて「是」と返答したのとか
「今年の春はさむくて手がかじかむ」とか「撫子の花を送ります」など季節を感じるものとか、
「この前の三十六歌仙図は光琳ではないと思う」「光琳の松島図が売れ残ってるけどいかが?」
「画表具、あと3日でできます」みたいな鑑定や事務報告とか、
「袋戸の群青はすれると白くなっちゃうけど、筆とかで撫でれば元に戻ります」など
絵師の知恵袋みたいなものまでありました。
かわいいなと思ったのが「蕪の漬物をありがとう。今年は漬物が少ないから頼もうと思っていました」の記述がある手紙。
漬け物大好き其一さん^^
(そういえば其一が松澤さんに岩群青を大量に注文した手紙が残ってるけど
あれは夏秋草渓流図に使われたんだろうか…?)

其一は屏風や掛軸に限らず、様々な媒体に絵を描いていて
絵巻を制作したり、絵馬を奉納したり、扇子や香包や凧に絵を描いたりしていたようです。
紅葉と桜がぎっしり描きこみを背景にした般若の凧や、達磨の怖いドアップの凧は
本物の展示だけではなく吹き抜けの展示室に天井から吊るしてあっておもしろかったです。
鶯草図香堤包は金地の包み袋に三つ葉のクローバーが描かれていてかわいいし、
四季歌意図巻は在原業平・柿本人麻呂・西行・藤原定家の4人を
それぞれ春夏秋冬に配して季節の景色とともに人物たちを小さく描いてるし、
十二ヶ月図扇や十二ヶ月花鳥図扇面のセットは草花だけではなく曲水の宴や方相氏など季節の行事もあった。
ちょっとおもしろかったのが能の絵のコーナー。
ガラスケースの手前に縁側のような板が設けられ、能舞台みたいな展示になっていました。
こういう雰囲気の中に翁図や猩々舞図とかあると楽しいね!
道成寺図と釣鐘図はセットのような二品、
特に釣鐘図はシテと鐘ならともかく鐘だけ描いてる絵ってめずらしいような。
菊慈童図がめっちゃかわいかったんだけど、其一の能画の人物はお人形さんみたいですね~。
「羅陵王舞楽面図」はつくねんと置かれた蘭陵王の面を描いた掛軸で
西洋画でいうところの静物画のようなものでしょうか、
よくよく見ると面の両目に白いまつげが描かれていたのが個人的な萌えポイント^^

そういえば河鍋暁斎が能や狂言をテーマにした絵をいくつか残しているのですが
(暁斎は狂言を習っていて自分で舞う人でもありました)、
最近知ったのですが其一の次女・阿清が1857年に暁斎と結婚してるんですね。
其一と暁斎の交流については特に何か残っているわけではないけど
暁斎も風神雷神図を描いてるし、影響受けた部分もあったかもしれないな…(2人は36歳差)。
ちなみに阿清さんも絵を描く人だったそうだ。


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限定ショップで衝動買いした其一マスキングテープ。
「秋草に月図」の一文字に描かれていたうさぎがモチーフです。
うさぎの形が微妙に異なっててかーわーいーいー!

あと、今月は東博本館へも行きました。
酒井抱一の夏秋草図屏風が久しぶりに展示されているのです。
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やっぱりいいな~。
夏に降る湿っぽい雨と風、草木が雨に打たれる音と、風にそよぐ音が聞こえてくるような。
一橋治済の依頼により光琳の風神雷神図屏風(同じく東博所蔵)の裏に描かれたもので
現在は保存のため別々に仕立てられています。
サン美の其一展は本日までですが実はこの屏風も本日までの展示でしたね、
たまたま重なっただけだろうけど師弟一緒に撤収っていうのが、ちょっとエモい。

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宗達の龍樹菩薩像もありました。
インドの龍樹(ナーガールジュナ)を描いた掛軸で、着想は中国の版本だそうです。
宗達はメリハリのあるタッチにのっぺりぺったりした着色で立体感はあまりないけど
見てると気持ちが落ち着く絵を描く人だなあと思う。

この宗達を光琳が見つけて、光琳を抱一が見つけて、
其一が抱一の見つけたものを大切にしながら制作していたことを思うと
改めて不思議なつながりの絵師たちだなあと思います。
好きで描いてたっていうのもあるでしょうけど、好きだけでは描けないのが絵師でありまして
(画材に紙にアトリエ、先達やパトロンがなくては続けるのが難しい職業です)、
そういう意味ではとても幸運な人々だったし、
掘り起こされた方も果たして自分の絵の行く末をどこまで想像していたのか…
魅力は尽きない。

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ジャンル : 学問・文化・芸術

夢と現実と無意識。

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国立新美術館のダリ展を見てきました。
日本における過去最大規模の回顧展なので混むだろうなと思っていたら
案の定、休日は入場制限がかかると聞いて平日に行きましたがそれでも会場内はザワザワしてたし
聞こえてくるおしゃべりのほとんどが「これ何だろ」「なんだろうね」「○○かな?」とか
禅問答みたいだったのがおもしろくてたまらなくて
心の中で「同感」「わかんないね」「それはどうかな」「絶妙」とか勝手に返事したりしてた。
自然におしゃべりしたくなってしかも他人の声が気にならない展覧会ってあるよね。
あと、展覧会場は作品保護のため冷房ガンガンかかっててめっちゃ寒いので
これから涼しい季節になりますので羽織るものがあるといいと思います。(会場でも借りられる)

入口の「本展には一部刺激の強い作品が含まれています」という注意書きを横目に入場、
まずは初期作品から鑑賞します。
ピカソやマグリットの初期作品を見るような思いといいますか、
「ダリどこ?」「本当にダリ?」と戸惑っている声があちこちから聞こえてた。
多くの芸術家の例に漏れず、ダリも最初は先人の技術を盗むことから始めたわけですね。
当時流行していた印象派やポスト印象派から強い影響を受けたそうで、
故郷や避暑地をそれらのタッチで描いた風景画が並んでいました。
「魔女たちのサルダーナ」とか、マティスのダンスを思い出すような構図だしね。
ダリが生涯にわたり最も敬愛していたのはラファエロで
「ラファエロ風の首をした自画像」からは画家への敬慕が伝わってくるし
背景は印象派の明るい色遣いでセザンヌを思わせるような雰囲気だった。

マドリードの王立アカデミーに入学してルイス・ブニュエルやガルシア・ロルカとの交流が始まると
キュビスムやピュリスムの影響を受けてだんだん「いわゆるダリ」みたいな絵が増えてきます。
ピカソと出会ったのもこの頃だそうで。(2人は23歳差)
「キュビスム風の自画像」はガラスの切子が一面に並んだ中に本人の顔半分だけが出ているのが
うっわ急にダリだな!って思ったし
「静物(スイカ)」は真ん中にスイカがあるのはわかるけど他は幾何学な物だし
「ピュリスム風の静物」もギター以外はカクカクした何かが描いてあるのしかわからなかった。
あれはなんなのだろう…(・ω・)。
「巻き髪の少女」とか「ルイス・ブニュエルの肖像」はすでに背景に途方もない奥行き感があって
のちの時計の絵などの片鱗がすでに見える気がする。
「2人の人物」は○の中央にひびが入ることでキスを表現しているのかもしれないけど
「カダケスの4人の漁師の妻たち、あるいは太陽」はもう、お手上げでした。
ダリはわたしのどんだけ先を歩いてるのか…あるいは当時は彼も探究中だったのかもしれないけど。

シュルレアリスム時代に突入すると一気に描きこみが緻密になってダリ度が増します。
「子ども、女への壮大な記念碑」は人間の手足やナポレオンの顔やモナリザが集められていて
ひとつのモニュメントを作っている絵で
これで溶けた時計が描きこまれていたら完璧だったわ…ダリ来たー!って思いました。
「エミリオ・テリーの肖像」は人物よりもモニュメントの方が大きいし
「紅冠鳥の巣と同じ温度であるべきナイト・テーブルに寄りかかる髑髏と抒情的突起」は
布がどういうわけかピアノに変化するし
「オーケストラの皮を持った3人の若いシュルレアリストの女たち」は
グランドピアノやチェロの皮(?)を脱いで姿を現す女性たちですが、
顔にはマグリットの世界大戦みたいに花が咲いている。
「皿のない二つの目玉焼きを背に乗せ、ポルトガルパンのかけらを犯そうとしている平凡なフランスパン」は
真夜中の食堂でパンが動いてるかもしれないという、ナイトミュージアムならぬナイトダイニング。
「引き出しのあるミロのヴィーナス」はブロンズのヴィーナス像の胸や腹や膝に引き出しがついてて
ダリにとって引き出しは内面なので、つまりヴィーナス様の内面が覗けてしまうという…!
「形態学的なこだま」がちょっとおもしろくて、
テーブルの上に塔、岩、壁、人間、静物が同じ大きさで3×3の形に9つ並んでいて
最初は全部"同じ大きさのものがテーブルの上の空間に浮いてる"のかと思ったけど
よく見ると"塔・岩・壁・人間は遠くに描かれているだけ"で
テーブルにもともと乗っているのは静物だけだったとわかってくる。
こういう絵は画家の意図に気づいたときのアハ体験感がハンパなくて大好きです^^

ダリは最近の人であるためか絵の具の色がすごくきれいに残ってる…
というかダリは配色やタッチがとてもきれいで美しい…なぜあんなにムラなく塗れるのか…
これは第一印象からずっと変わってない。
「姿の見えない眠る人、馬、獅子」の黄色は光り輝いていたよ、すばらしい。
画材も保存技術も年々進歩しているし、このままの質を保って未来へ残してもらいたいです。
あと、ダリはフェルメールを尊敬していたらしいので黄色や青にはその影響もあるかもしれない、
「謎めいた要素のある風景」はフェルメールを中心に画家の制作風景を描いていて
フェルメール、足細ッ!が第一印象(笑)。
果てしない地平線の空間でキャンバスに向かう人物の向こうにはイトスギや布や建物が置かれ、
隣にはセーラー服を着たダリ少年と彼の乳母がたたずんでいました。
キャンバスは背中に隠れて見えないんだけど、何を描いているのかな。

妻のガラはダリにとってミューズだったようで、彼女をよく絵に描いていたそうです。
「ガラの3つの輝かしい謎」にはダリとガラ、2つのサインを入れています。
「ガラの晩餐」は136点のレシピと料理の絵やコラージュで構成された本で
栄養学的なことは一切無視してひたすら「ダリにとっておいしい味」を追及していて
料理コラージュのあちこちにガラの顔が貼りつけてあったりする。
(ちなみに「ガラのワイン」という本も出したそうだ)
ガラと一緒に写った写真も展示されていて、
ニューヨーク万博に出展したパビリオンのチケット売り場からひょっこり顔を出すダリとガラが
とても楽しそうでした^^
(しかも売り場は巨大な魚を模した小屋で、2人が顔を出していたのは魚の両目からだった)
他にも友人や作品と写っている写真がいくつか展示されていたけど
どれも目をむいた顔なのはわざとなのかな。
あ。写真といえばフィリップ・ハルスマンが撮影した「ダリ・アトミクス」もあったよ!→こちら
知る人ぞ知る、ダリと黒猫と椅子と水が飛びまくってる例のあれです。
複製とはいえまさか見られるとは思ってなくてびっくりしたしすごく楽しくなっちゃった、
ダリおじさん(撮影時44歳)の渾身のジャンプ!興味ある方はぜひ見に行ってさしあげて。

戦争が激しくなってアメリカへ亡命した頃から巨大な作品を描いたり遊び心が増えてくる。
3枚続きの「幻想的風景」は朝・昼・夕の地平線のある景色で
壁いっぱいに巨大なのでもはや目の前にその風景がどこまでも広がっているような錯覚をおぼえる。
モンタギュー・ドーソンの「風と太陽」は稲妻号という帆船の絵ですが
ダリはこの絵をモチーフに「船」という絵を描いていて
帆はそのままだけど船体を人体に変えて、つまり船を擬人化しています。
へさきの船首がそのまま頭になってるから最初は混乱したけど、わかるとおもしろい。
「アン・ウッドワードの肖像」も仕掛けがたくさんあって
背景の岩がモデルの輪郭の形をしてたり、モデルの腰紐が水平線と同じ高さだったりする。
(ちなみに背景はクレウス岬だそう)
また、ダリは企業ロゴや宝飾品のデザインにも関わったらしくピンやブローチが展示されていて
どれも金色で宝石も使われてキラキラしていました。
「記憶の固執」は溶けた時計だし、「オフィーリア」は顔の部分がトパーズだった。
(そういえばチュッパチャプスのロゴデザインしたのってダリじゃなかったっけ)

舞台美術の仕事のコーナーには
「ドン・ファン・テノーリオ」「狂えるトリスタン」(衣装担当はココ・シャネル)などのための習作やスケッチも。
当時の舞台写真も合わせて展示されていて、
ダリのスケッチそのままのセットが再現された様子が写されていました。
ルネサンス風の建物が爆発するのとか、再現するの大変だったろうなあ舞台スタッフ^^;
あと、本の挿絵も描いていて
『魔術的技巧の50の秘密』所収の挿絵に添えられた
「真の画家は、果てしなく繰り広げられる光景を前にしてもただ一匹の蟻を描写することに
自らを限定することができるはずである」(ダリの言葉じゃないです挿絵タイトルです)には
アッハイ…としか言えなくて、
ダリは普段ふざけてるようでも時々こういう、ぐうの音も出ない文言を投げつけてくるからずるい。
ドン・キホーテや不思議の国のアリスの爆発っぷりがすごかった。。
比喩じゃなく風車も馬もイモムシもカメモドキもコーカサスレースもひたすら弾けてます。容赦ない。
ドン・キホーテは影絵だし、風車の場面は墨でダイナミック習字みたいなタッチだし
マッドティーパーティは時計が串刺しだし、ブタと胡椒の場面はめっちゃ散らかってる(笑)。
アリスは縄跳びをする少女のモチーフで表現されているのでどの挿絵でも縄跳びしてるし
ハートの女王様が赤バラそのものになってるのは大変美しいと思いました。
チェシャ猫を探したけどいるのかいないのかもわからなかった…
というかダリが猫を描くときは果たして猫とわかるように描くのかどうか。
エドワード・ゴーリーは作品中で人は殺しても猫は殺せない人だったけど、ダリはどうなんだろ。

ダリが関わった映像作品も一部上映されています。
映画「アンダルシアの犬」「白い恐怖」「ディスティーノ」は過去に大学の講義で見たので
さらっと眺めるだけにとどめましたが
手の穴からの蟻や目玉を切るシーンや絵画の世界を走り回る主人公の現実感がすごくて
(ダリは蟻とライオンがものすごく嫌いらしい)、一瞬自分がどこにいるかわからなくなる。
あと前もそうだったけどディスティーノは無言で見てしまうね…。
ウォルト・ディズニーとの企画で、戦争のため凍結されていたのを発見され最近完成した作品ですが
次々に強烈なイメージが現れて消えるのは精神を(いい意味で)えぐられていく思いがする。
「黄金時代」は初めて見たけどアンダルシアと同じブニュエルの監督作品で
後半だけ見たらちょっとグロい表現があったり東方の三博士とキリストみたいな人たちが出てて
ストーリーはあってないようなもので夢みたいなのは相変わらず。
ただ人物の行動やエピソードは細部まで徹底的に作りこまれて完成度が高いので
現代の表現者も参考になるんじゃないかと思いました。
あとBGMの鼓笛、4小節くらいのメロディをラストシークエンスまでひっきりなしに繰り返してたけど
あれ演奏してた人たち混乱しなかったろうか。

最後に原子力時代の芸術と晩年の作品。
ダリは広島と長崎に投下された原爆に強い衝撃を受け、
「あの爆発の知らせが私に与えた大きな恐怖」を表現に組み込んでいた時期があったそうです。
「ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌」はそんな影響のもとに1945年に描かれて
アメリカを象徴する野球選手の隣に爆発が描かれたり爆撃機の顔をした人型がいたり
一部明るい風景や青空もあることからゲルニカのようでもあり。
ダリが戦争画を描くとこうなるのだな…。
「ビキニの3つのスフィンクス」は髪が爆発した人型がいるし(ビキニの水爆でしょうか)、
「炸裂する柔らかい時計」は派手にこわれた時計がペタンとしているのかと思ったら
時計の下には町があってゾッとした。

また、ダリは著書『神秘主義宣言』(1951年)で科学技術と宗教と古典に回帰すると書いていて
「ラファエロの聖母の最高速度」はその最たる絵だと思いました。
DNA配列のような点々に包まれているのはラファエロの聖母のちぎられた顔で
ダリ曰く"エネルギーを得て旋回し解体される様子"を描いたとのこと。
また、「ラファエロ的厳格」は赤い色をした巨大な板をキャンバスにして
木目を活かして絵にしています。
真ん中にたたずむ女性像はラファエロのボルゴの火災に描かれている女性がモチーフだそう。
「素早く動いている静物」はスホーテンの静物画をモチーフにしたそうですが
動いてる時点で静物じゃないだろって突っ込みは野暮ですね、
コップも水もナイフもすごいスピードで飛んでて効果線が見えるようでした。
一見、無造作に飛んでいるように見える静物は黄金分割の数学的な座標軸の計算のもとに飛んでいて
ダリにとってはちゃんと理由があるようです。
「エスコリアル宮の中庭にいるベラスケスのマルガリータ王女」はベラスケスの同作がモチーフで
構図はそのまま写してるけど王女は灰色に塗りたくられていて、
エスコリアル宮は王室の霊廟だとキャプションに書いてあって、つまりそういうことかなと。
「海の皮膚を引き上げるヘラクレスがクピドを目覚めさせようとするヴィーナスにもう少し待ってほしいと頼む」は
海底で眠るクピドを起こそうとした母親のヴィーナスをヘラクレスが止めている図ですが
海の皮膚、つまり水面を、牛乳の膜でも取るようにつかんでいるヘラクレスがおもしろいです。
「トラック(我々は後ほど、5時頃到着します)」は
キャンバスの右上に本物の紐、左下に紙くずを貼りつけたコラージュがあり、立体的な作品。
トラックはシュルレアリスム宣言にある「墓地まで引越しトラックに運んでもらう」云々をイメージしたのかな。
「チェロに残酷な攻撃を加えるベッドと二つのナイトテーブル」はタイトル通りの現象を描いた絵で
チェロもベッドもテーブルも激しすぎてドンガラガッシャーン!とか音まで聞こえてくるようなタッチで
まあ落ち着きなさい、ちょっとあっち行って話そうじゃありませんか…と声を掛けたくなるレベル。
今回の展覧会で最も巨大な作品「テトゥアンの大会戦」はモロッコ・スペイン戦争の一戦の様子で
マリアノ・フォルトゥーニの同タイトルがモチーフ。
むせかえりそうな土埃の中を進んでくる騎馬隊の最前列にいるのはダリとガラ、
2人の間には「5」「7」「8」(制作期間中のダリの年齢57~58歳)が記されていたり
画面に数字が散らばっていたり、馬が空を飛んだり、山越阿弥陀図みたいな女神がいたりして
ダリが歴史画を描くとこうなるんだなと。
「ポルト・リガトの聖母」は初めて本物を見ましたが猛烈に美しかった!あれも大きい絵ですね。


鑑賞を終える頃にはいわゆる常識とか思いこみみたいなのをばしばし覆されまくっていたので
会場を出たら世界が幾何学模様に見えました…。
マグリットと同世代なので何となく比較しながら見たけど、
マグリット展のときは世界中の物がバラバラになりそうな不安感があったけど
ダリは逆に世界中の物がひゅっとひとかたまりに縮んでいくような錯覚があったというか、
マグリットは紳士的なシュールレアリストですがダリは「俺を見ろ!」みたいな圧がすごかった。
歌麿と北斎、広重と国芳みたいな感じと言えばいいのかな。
新美術館を出てくるりと振り向き建物のうねったデザインを見たときも
なんかダリっぽいな、とか思うくらいには毒されていたと思う。(黒川紀章氏の設計です)

「シュガーである」
(兼高かおるの「その髭は何で固めているのか?」の問いに対して。サルヴァドール・ダリ)


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展覧会特設ショップの隣に展示されている「メイ・ウェストの部屋」。
こちらのみ撮影OKでした☆
1974年にスペインに開館したダリ劇場美術館の一室を再現したもので
ある角度から見ると俳優メイ・ウェストの顔が見えるようになっているとのこと。
これでも何となくわかるのですが、、

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天井に設置された鏡にカメラを向けるとこんな写真が撮れます!
奥の2枚の絵は近くで見ると風景画ですが、遠くから見ると目に見えるのですな…
わたしはメイ・ウェストを知らないのでぐぐって写真を探したら
確かに睫毛がバサバサした人だなあと思った。

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特設ショップにあった巨大ガチャガチャ。
ガチャの前にいるスタッフさんに300円を渡すと1ダリ紙幣がもらえて1回まわせて
卵型の白いカプセルが転がってきます。開けるとピンバッジが入ってます。
全部で6種類あって、時計が欲しかったけど
わたしのは「見えない人たちのいるシュルレアリスム的構成」から、人の形にへこんだ椅子でした。

あと初日に展覧会の成功を祈って「ダリ能」なる能が奉納されたそうですが(後日放送されるらしい)、
その銀色の能面がショップの入口に飾ってあったり
はいだしょうこさんの描いた「ダリさん」が額に入れて飾ってあったりした。
ルー大柴さんがダリのコスプレして撮ったポスターもかっこよかったし
「ポストカード○○円」などの値札が奇妙に歪んだ形になってて、いちいちおもしろいです。

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1ダリ紙幣と、卵ガチャから出てきたピンズ。
とてもいい記念品になりました☆ 企画してくれた人ありがとう。

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

作家であるよろこび。

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鎌倉文学館にて特別展「たかどのほうこの世界」を見てきました。
「子どもたちへ 未来へ」というシリーズ企画展になっていて
過去にかこさとし、神沢利子、いとうひろし、西巻茅子、斉藤洋と開催されて、高楼さんで6回目です。
高楼さんはたかどのほうこと高楼方子の表記があって今回はひらがななんだなあと思っていたら
展示の内容がたかどのほうこ名義の本が多かったし、
言われてみればチラシや看板に使われている絵もまあちゃん、つんつく先生、へんてこもりで
全部ひらがな名義のだったね。

展示室入口にあったのがデビュー作「ココの詩」の初版と生原稿の束と表紙の原画と
執筆に使われた万年筆だったからもーー!
表題と、第6章「モロ」の部分が少しだけ読めました。
こ、この束から高楼さんの作家生活が始まったんだっ……!と思うと感慨深くて
穴が開くほどじーーっと見つめてきてしまった。
高楼さんのお姉さまである千葉史子さんの描かれたココの表紙画は
初版は色鉛筆なのですが今年刊行された新装版は油彩で描かれたのでしょうか。
「時計坂の家」は色鉛筆というかクレヨンというか原色が強めに出ていて
「いたずらおばあさん」はサインペンみたいなタッチで
「とおいまちのこ」は絵の具とクレヨンがシンプルにやさしく使われている。
やっぱり原画を見るとタッチが感じられて絵に奥行きが見えるなあ。

「まあちゃんのながいかみ」「へんてこもりにいこうよ」「つんつくせんせい」などのシリーズは
高楼さんご本人の軽快なタッチの表紙や挿絵がずらり。
「ゆかいな3人きょうだい」の挿絵は、原画にガーゼみたいな布が使われていて
カーテンやハタキやテーブルクロスなどが表現されていました。
わたしたぶんこの本読んだことないので印刷がどうなってるかわからないけど
先に原画を見られたのはよかったです。
また、まあちゃんとお母さんが自転車で空を飛ぶシーンの絵はかなりの修正跡がみられて
高楼さんの制作過程なども伝わってきました。
出久根育さんによる「ルチアさん」「わたしたちの帽子」の表紙がひたすらきれいで
白黒の挿絵の繊細さも生原画を見られてよかったです。
これ、印刷でどこまで出てるんだろうか…!
佐野洋子さんが「ぼんぞうののぞきだま」で絵を担当されてるの知らなかった!
画材がどう見てもクレヨンで、書きなぐったようにも見えるのにおもしろくて強烈な印象に残りました。

読者さんから贈られたプレゼントがすごい、
まあちゃんの手遊び人形にへんてこもりのキャラクターたちのリースに
つんつく先生とくまのゆめのドールハウスの精密さといったら!
これ全部手作りらしいのですがどんだけ手間暇と時間かかってるのか…愛はすごい。
あと、展示室1から2へは階段で降りていくのですが
フレーベル館から出た「こどもかるた」のいくつかが手すりの辺りに貼りつけてあって
頭文字をみたら「たかどのほうこ」になってたし、
階段を上がろうとしたら足元につんつく先生と子どもたちの切り抜きが段に沿って貼ってあって
遊び心を感じました。
個人的に残念だったのは「みどりいろのたね」がなかったことかな…
あれひらがな名義だし、太田大八さんの絵が生き生きとしてるし
「つまるやつか、つまらんやつか、一度ぼくをなめてみるがいい!」は児童文学史上屈指の名ゼリフだと思う。

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お庭に出てみました。まあちゃんがいたー!
この日は雨が降ったり止んだり変な天気でしたけど、お庭にいる間は止んでて良かった。

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お庭の一角に大きな樹があって、
その下にはまるぼを始めへんてこもりシリーズの仲間たちがいます!

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木の上で本読んでる子もいたよ。

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鎌倉文学館といえばバラ園!
雨で濡れていたけどきれいな花がいくつも咲いていました。


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ランチは鎌倉駅近くのチーズ工房「Latteria BeBe」にて。
写真はデザートのアイスケーキです。ナッツや干しイチゴなどが入ってすごくおいしかった。
しらすと海苔のパスタをいただいたら思ったよりしらすと海苔の量が多くて口の中がえらいことになった、
おいしかったけど^^


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鎌倉から移動して、横浜美術館にも行きました。
開催中のメアリー・カサット展が目的です。没後90年を記念した回顧展。

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チケットやポスターにもなっている「子どもを沐浴させる母親」。
展示室にあった本物はやさしい色で光がいっぱいに溢れていてやっぱりこの人印象派だなあと思ったし
(この絵は第5回印象派展の出品作でもある)、
肌に青を使うのはルノワールもやっていたよね。

カサットの画家としての出発は、故郷のアメリカで基礎を学んだのちにパリへ渡って
国立美術学校には入れなかったのでルーヴルを始めヨーロッパ各地の美術館を旅して回りながら
様々な古典絵画をスケッチして独学で学んでいったそうです。
スペインで描いた「バルコニーにて」は目鼻立ちのくっきりした女性が描かれ、
「刺繍するメアリー・エリソン」は風俗画のようなモチーフ。
(エリソンはカサットの友人でもあったそうです)
サロンに入選した後にエドガー・ドガのパステル画を見て衝撃を受けてからは
ドガに誘われて印象派展にも出品していくようになります。
「私はショーウィンドウに鼻をおしつけ、ドガの芸術のすべてを吸収しようとした。
その絵が私の人生を変えてしまった。芸術を、自分が見たいと思うように見るようになった」と
のちにカサットは語っているそうです。
乳母とベビーカーに乗った赤ちゃんが描かれた「庭の子どもたち」や
「浜辺で遊ぶ子どもたち」などは透明感のある質感でモネやルノワールを連想しました。
「踊りの稽古場にて」などバレリーナたちの舞台裏を描いたドガの作品も近くに展示されていて
エッチング作品「ルーブル美術館考古展示室にて、メアリー・カサット」は版画雑誌「昼と夜」のための制作で
美術館を訪れたカサット姉妹の知的な姿がすごくかっこいい。
ドガには、カサットがぴんと背筋を伸ばした人に見えたんだろうな。

カサットは家族をモデルにたくさん絵を描いていて
姉のリディアや兄のアレクサンダー、母親のキャサリンや父のロバート、
きょうだいの配偶者や子どもたちなどがモデルになっています。
母キャサリンの肖像は、銀髪で黒服に白いショールをかけた女性が凛と腰かけていて
子どもたちの芸術活動を応援したかっこいいお母さんの姿が力強かった。
タペストリーを編む作業中の姉リディアの絵はピンクに花柄の普段着が素敵だし、
口髭の兄アレクサンダーは印象派の絵をよく集めて
死後にペンシルヴェニア州美術館に寄贈したので館のコレクション形成にも一役買ったらしい。
家族以外の女性たちの絵もありました。
代表作の「桟敷席にて」はマチネ(昼興行)を観劇する黒服の女性の横顔をどーんと描いていて
(劇場はコメディ・フランセーズではないかといわれている)、
熱心に劇に見入る女性は心底楽しんでいる様子。
閉じた扇に赤が入ってて植物の柄かなとか、ピアスに白が入れてあって輝いてるのとか
ちょっとした部分が素敵です。
アン・シャーロット・ガイヤールの肖像は髪を結いあげ真珠の首飾りにピンクの肩出しドレスを着て扇を広げて
ちょっと横目の笑顔なのが印象的。
「ふたりの姉妹」は今回数少ないパステル画の作品で
横顔と扇を広げた正面顔の2人の女性がすっきりとしてきれい。
また、今回は出品されてないけど(というかすでに現物は失われて写真しか残ってないのだけど)
1892年のシカゴ万博にて、女性がすべてを運営する女性館というパビリオンがあったそうで
そこの大壁画(3.7m×17.7m)をカサットが描いたようです。
現代の女性というテーマで「知識と科学の実を取る若い女性たち」「名声を追い求める女性たち」「芸術・音楽・舞踊」の3点。
特に知識~の壁画は果樹園でりんごを収穫する女性たちが描かれたことから反発もあったらしいですが
テーマだけでもなんだかブルーストッキングや平塚らいてうの元始女性は~のような信念を感じるから
保存しておいてほしかったなあ!

カサットは版画もたくさん制作したそうです。
エッチングやアクアチントの作品は家族を描いたものが多く、
午後のお茶や読書や編み物、楽器を奏でたりバルコニーに出たりするのから外出風景まで様々。
「オペラ座の桟敷席にて」は着飾った女性が光り輝いているみたいに見えるし
「桟敷席の黒衣の女性」はさっきの桟敷席の油彩画の人をエッチングにした感じ。
また、日本の浮世絵を見て色彩版画にもチャレンジしたらしく
生涯に10点の版画を制作しています。
絵を描いて板を作るのまではカサット本人がやって、摺るのは専門家に頼んだとか。
「湯あみ」は歌麿のテーマを欧米風に引用した洋服の女性と赤ちゃんの絵で
これは過去にボス美のジャポニスム展でも見たな~。
「沐浴する女性」は上半身裸の後ろ姿で
背中のラインの色気とか衣擦れとか水がちゃぷんと音を立てるのまで聞こえてきそう。
カサットの浮世絵目録をもとに復元したコーナーには喜多川歌麿や葛飾北斎の錦絵がありました。
特に歌麿と鳥居清長が気に入ったみたいでよく集めていたとか。

晩年にたくさん描かれた母子像はお子様のむっちりもっちり感とずっしり感が伝わってきます、よい。
よくある聖母子像だと赤ちゃんはマリアにおとなしく抱かれてたりじっとしてる絵が多いと思いますけど
カサットの描くお子様はちっともじっとしてないね(笑)。
お母さんの顔をむにゅってつかんだり、あらぬ方へ手足を伸ばしたり
抱っこされてるというより膝に乗ってるだけみたいな感じで
気をつけてないと次の瞬間には落っこちてしまいそう。
理想や形式的な絵画ではなく、カサットが見てきたきょうだいの子どもたちそのままの姿なのだろうな。
「母の愛撫」「愛撫」は会話が聞こえてきそうだし
「母親とふたりの子ども」はペンシルヴェニア州議会議事堂の女性待合室の装飾として依頼されたものの
州とカサットの軋轢により友人に売却されたという訳あり絵。
母と2人の子の絵ですが、母と1人の子はこちらに背を向けていて1人の子は正面を向いていまして
カサットは自分の最高傑作のひとつと豪語したようです。
「果実をとろうとする子ども」はさっきの女性館のテーマの一部をクローズアップして描いたもので
赤ちゃんが裸だから聖母子像を踏襲しながら現代性をもたせたということなのかな。
おもしろかったのが、画商ヴォラールが陶芸家アンドレ・メテと当時の作家たちのコラボ企画で
メテの陶磁器に画家たちがそれぞれ絵を描いていくというのがあったとかで、
カサットも参加して大きな花瓶に手をつなぐ4人の子どもたちを描いた作品が展示されてましたが
制作中にはだいぶ苦労したことをヴォラールへの手紙に書いたとのこと。

「アーティストである喜びと比べられるものが一体あるというのか?」メアリー・カサット
(1924年1月 ウィリアム・イヴィンスへの手紙より)

カサットと同時代に活躍した女性の画家たちの作品もありました。
アメリカの女子デザイン学校の校長をしていたエミリー・サーティンの「題名不詳」は
アトリエにいる数人の人々と中央に置かれたイーゼルに鳥がとまっている絵で、
まるで画家がアトリエで絵を描いてたら窓から鳥が飛んでキャンバスにとまったかのような一瞬。
ベルト・モリゾはカサットとも仲が良かったみたいで手紙のやりとりもしていたらしく、
浮世絵展を見たカサットは「あなた絶対見に行ったほうがいい!」と書き送ったりしたそうです。
うつむいて縫い物をする女性は緑色の服が鮮やかだし
赤ちゃんのパステル画の、ざっと描いてるけど完成度の高さがわかるのとか、やっぱりすごい。
34歳で亡くなったエヴァ・ゴンザレスはマネに師事したそうで、
なるほど出展作の「妹ジャンヌ・ゴンザレスの肖像」は胸に花をつけた黒髪の人物がはっきりしているけど
背景はマネの「笛を吹く少年」みたいに灰一色でした。
マリー・ブラックモンは第4・5・8回印象派展に出品した実力派画家でしたが
夫に活動を反対され消耗してからは描くのをやめてしまったようです(1890年頃のこと)。
「お茶の時間」はその10年前の作品で、屋外でお茶と葡萄を楽しみながら読書をする女性がすてきで
スーラみたいな白い点描もみられるやさしい絵でした。
エリザベス・ブグローは1868年にサロンに初入選した画家で
夫のウィリアムが神話をテーマに描く画家だったためか、本人も神話や宗教画をよく描いたそうです。
展示されていた「羊飼いのダヴィデ」、ライオンを倒して仔羊を守った少年ダヴィデが完全に勝利者のポーズで
ルーベンスやカラヴァッジョのようなリアルなタッチでした。
メアリー・フェアチャイルド・マクモニーズはカサットとともにシカゴ万博女性館の壁画を担当した画家で
カサットの現代の女性に対して彼女のテーマは「原始の女性」だったらしい。
「そよ風」はサロンにも出品されたかなり大きな絵で、
古代ギリシャ風の衣装を着た女性がスカートを大胆にひるがえしながら舞っているかのよう。
真っ青な背景が多くのバラやスズランの装飾に彩られているのもすてきでした。


美術館のコレクション展もよかったです。
カサット展に合わせてか、一部が女性の画家や写真家によるテーマ展示になっていました。
いくつかの作品は動画で見られます。→こちら
カサットが壁画を描いたシカゴ万博に出品されたという渡辺幽香「幼児図」は洋画なせいか
色がはっきりしていて目を引き付けられました。
ヘレン・ハイドの色彩版画を一度にあんなに見たのは初めてでしたが
親子とか生活風景とか、身近なモチーフを選んでやさしい色彩で表現した人だったんだな…ほのぼの。
上村松園「楚蓮香之図」は優美だし、片岡球子「富士」はゴージャスなカラフルさ。
北久美子「夢想植物園」はpixivにあってもおかしくないような絵だったし
松井冬子「世界中の子と友達になれる」が妖しくて美しかったなあ。

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ジャンル : 学問・文化・芸術

妖怪たちの饗宴その2。

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江戸東京博物館にて「大妖怪展-土偶から妖怪ウォッチまで」を前期・後期と観てきました。
夏の風物詩の妖怪展覧会です☆
監修の安村敏信氏がずっと構想し続けてきたというだけあって
平安時代~江戸時代まで、全国各地、絵巻や掛軸や版画などの多様な妖怪画が集まっています。
同じタイトルの展覧会が3年前にありましたがあれより規模は大きいかな、
日文研の百鬼ノ図や逸翁の大江山絵詞に3年ぶりに再会できてうれしかったです。

トップバッターは葛飾北斎の掛軸。
前期は天狗図と白蔵主図(狂言「釣狐」の登場人物)、
後期は白蔵図に化けた狐と茂林寺の狸(ぶんぶく茶釜ですね)がありました。
もともとは貼交屏風で12点の絵があったらしく、そのうちの4点だそうです。
八つ手のうちわを翻して飛ぶ天狗はかっこいいし狐と狸はどことなく漂うユーモアがおもしろい。
晩年の北斎のパトロンだった高井鴻山の妖怪図は
鳥の頭に手足がついたような生き物が木の根みたいな生き物に乗って移動しているような絵で
妖怪というより鴻山が考えた想像上の生き物という感じかな。
(鴻山は晩年に妖怪絵ばかり描いていたらしい)
妖怪山水図は一見、ただの山水画のようだけど
よく見ると一ツ目やオバケの形をした岩や木などが描いてあって
妖怪不祥事案件でいうところの「岩だと思って乗っかったら実は妖怪だった」みたいなことが起きそう。
伊藤若冲の付喪神図も妖怪の展覧会でよく遭遇しますが相変わらずかわいい。

続いてはお江戸の妖怪大集合。
3年前の展覧会では全ページが開かれていた百鬼ノ図とか、白隠の法具変妖之図とか
江戸時代の妖怪絵巻はだいたいコピペというか
真珠庵本など過去の絵巻に描いてあるデザインやポーズをそのまま転写してるものが多いですね。
それにお江戸の風俗がくっつくと生活感あふれるものが出てくるというか。
化物婚礼絵巻は妖怪の結婚式を描いた絵巻で結納や式を行って日の出とともに解散するらしい、
魚や妖怪たちが包丁で料理してたり、三々九度で立派な高砂が作ってあったりして
当時の風俗も反映されてますね。
稲生物怪録絵巻、稲生平太郎という江戸後期に実在した少年が体験した出来事を描いたもので
妖怪たちが彼を驚かすために代わる代わる毎日やって来て、それが30日続いたという内容。
(泉鏡花がこの話をベースに草迷宮という小説を書いてるそうです)
炎や巨大な鬼、無数の首、部屋が水浸しになるなど様々な怪異が起きても平太郎くんはまったく怖がらず
26日くらいになるといい加減飽きてきたらしく顔にヤレヤレ感が出ててちょっと妖怪たちが気の毒だった。
女の逆さ生首は笹色紅をしていたね。

針聞書は鍼灸師のための口伝書だそうで
胃腸など人の臓器に棲むという虫をゆる~いイラスト付きで紹介しています。
モデルになった妖怪はいそうだけど、ほぼ創作でしょうね。
姫国山海録も日本各地のふしぎな生き物25種を紹介したもので
建長寺に出たモスラみたいな蝶とか、お寺や人家の庭に出るものが多いように感じました。
村田龍亭の百鬼絵巻はかっぱ、がごぜ、ぬらりひょんなど見たことのある妖怪が多いし
日本と海外の妖怪を描いた怪奇談絵詞にいる坊主頭の人の首が乗った猫に「虎にゃあにゃあ」と書いてあって
絵は気持ち悪いけど名前はおもしろいなと思いました。
大石兵六物語絵巻、薩摩の兵六が化狐の放った8匹の妖怪を倒していく話で
「このつきとっこう」と書いてあるミミズクみたいな妖怪がかわいかったです。
耳鳥斎の別世界巻は地獄で責められる人々の絵巻ですが
「タバコ好きの地獄」「芸子法師の地獄」「ところてん屋の地獄」など遊び感たっぷり。
ちなみにタバコ好きの地獄は自分がタバコになって吸われるし、
ところてん屋の地獄は自分がところてんになって天突きから押し出されるらしい。
佐脇嵩之の百怪図巻はあか口や牛鬼などの妖怪を30匹ほど紹介した図鑑のようになってて
キャプションに「石燕より早くやった」と書かれてたけどちょっと誤解を招きそうな表現だなと思った。
そういえば展覧会場の壁にあか口がでかでかと引き伸ばされて
目にブルーライトがチカチカ光ってギョロギョロ動いてて、
お子さんたちが「見てみて!」とか楽しそうにはしゃいでいらした。
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こいつね。(写真は展覧会入口にあったパネルです)

錦絵の妖怪コーナーは歌川国貞、歌川国芳、河鍋暁斎、月岡芳年などおなじみのメンバーが勢揃い。
相馬の古内裏や土蜘蛛、源頼光ネタ、岡崎の化け猫、百物語など
何度も見かけたことのある妖怪錦絵がたくさんありました。
暁斎の地獄太夫は楽しそうに夢を見ているし
北斎の百物語のお岩さんやこはだ小平次は相変わらず美しいし
広重の王子稲荷の狐火も幽玄の世界観だと思う、きれいに保存された作品を出してくれたんだな。
芳年の百器夜行も何度見てもかわいい。
あそうだ、暁斎の暁斎百鬼画談と芳年の和漢百物語が隣同士に並んでいたのがちょっとうるっときました、
国芳門下の三羽烏のうちの2人!

版本、つまり出版物のなかの妖怪コーナーは
鳥山石燕の画図百鬼夜行・今昔百鬼拾遺・百器徒然袋がトップバッター。
天狗やおとろし、鳴釜やあかなめ、道場地や目目連のページが開かれていて、やっぱりこのひと細かいな~。
北斎漫画十二編の妖怪画の中でろくろ首が首に洗濯物干しててちょっと笑った。
十返舎一九の妖怪一年草は勝川春英が絵を添えていて
人間の年中行事を妖怪に置き換えた化物年中行状記の本人によるリメイク版。
「あけまして」が「化けまして」だったり、花祭りはおさか様(見越し入道)の誕生日になってたりと
色々もじってるのが楽しい。
山東京伝の会談三組盃は皿屋敷・ろくろ首・累女伝の3つの怪談を載せた本で
勝川春扇による挿絵は7代目市川團十郎が似顔絵として登場していたりして楽しい。
同じく京伝の気替而戯作問答は京伝が亡くなってから出版された、本人作の黄表紙の再録本で
開かれていた怪談徒然草のページには妖怪たちが集っていた。

幽霊画の掛軸!
一番ぞっとしたのは、色んな人が言ってるけど作者不明の幽霊図。
透け感ハンパないし、よおく見て人の顔だとわかったときの恐怖感もパないし
唇に血がついてるのかと思ったら落款だし!(文字は解読できていないそうです)
あと表装にススキが描いてあってそれもドキドキした。
富樫景堂と甲羅松麟の合作の月夜の幽霊は
表装の天に柳が、地にススキが描いてあってやっぱりドキドキ。
作者不明の野ざらし幽霊は着物に地獄が書いてあるので地獄太夫ではないかとされていて
ニヤリとした目と口、透ける足元にガイコツ。ドキドキ。
応挙の幽霊は髪をバサバサに振り乱して狼みたいにぱっくり割れた口で
ぞっとするレベルに嗤った目はずっとついてくる。
門井掬水の牡丹灯籠はお袖さんが燈籠を持っている図ですけど
よく懐中電灯で顔を下から照らすギャグあるじゃないですか、あれみたいに見えて笑っちゃった。。
秀峰の雪女図は中国風の華やかな髪飾りをつけた女の幽霊で
明るい雰囲気のきれいな絵だった。

中世の絵巻コーナーはやっぱり重要文化財の真珠庵本「百鬼夜行絵巻」を推します!
メリハリのあるタッチで描かれたつくも神たちはとてもかっこいいし彩色もきれいだし
何より1匹1匹の全身図を空間いっぱいに使って描いてる、紙を長々とぜいたくに使ってる。
絵巻としての完成度がものすごく高いと改めて思いました。
そしてさっきまで見てきた江戸時代の絵巻や版画はずいぶん影響受けてるなあと思った、
もっともこの絵巻を見たことある人はごくわずかで
あとはコピーのコピーのコピーみたいにして伝わって描きつづけられてきたんだと思うけど。
同じく重要文化財の土蜘蛛草子絵巻は源頼光による土蜘蛛退治の図で
ちょうと土蜘蛛の首をおとすシーンが開かれていました。
こちらは色がだいぶ褪せてしまってるけど、江戸時代に模写された絵巻の方はきれいに残っていて
完成したばかりの時はこんな風だったのかなどと想像できました。
逸翁の大江山絵詞も久しぶりの再会、
頼光たちが鬼たちに毒酒を飲ませて宴会をする場面が開かれていて
鬼たちは鉢巻をしたり雅楽装束のかぶり物をつけて音楽を演奏していて
(この後、頼光の眼光で退散しちゃうんだけど)、
この絵を描いた絵師は雅楽を見たことがある身分の人なのか、たまたま取材させてもらえたのか…。
原安三郎コレクションの酒典童子双紙絵巻の童子は帽子みたいなの被ってるし
池上本門寺所蔵の大江山図屏風の酒呑童子(人間Ver.)はクルクルパーマだしで
色んな童子像が見られて楽しかったです。
大織冠図屏風は藤原鎌足が大海原で繰り広げる大冒険を描いたものですが
このての作品にしては珍しく、展示ケースの前寄りに展示してくれてあったお蔭で
場面を区切るための金の雲に扇が浮き出しになっているのとか
武者たちの鎧まではっきり見られて有難かったです。
竜宮城とか出てくるのでテーマの中心が海の戦いで色んな船が描いてあった、
孔雀の羽をつけた船とかおもしろいなあ。

妖怪の源流コーナーは前期にいた辟邪絵の神虫がすさまじかった…。
蛾とか虻みたいな虫のイメージで、ひたすら巨大で、毎日3000以上の鬼を食べるという生き物ですが
神虫の口が血で真っ赤だし、喰われてる鬼たちも苦悶の表情を浮かべています。
後白河天皇の周囲で制作された絵巻に描かれていたのではないかという説があるらしいのと、
辟邪絵は悪鬼を退治する善神を描くことで邪を除ける力を持つ絵であるということですが
時代背景を考えるとこういう表現になるのもわかる気がする。
後期にあった沙門地獄草紙の断簡は生き物を殺した僧侶が行く地獄を描いていて
まな板の上で料理される僧侶たちが哀れだった。
浄光寺の六道絵(聖衆来迎寺の15幅を模写したもの)は模本ということもあり綺麗に残っていて
この手の絵の例に漏れず炎の表現が一番力が入ってるように思った。
新知恩院所蔵の六道絵の阿修羅道が、よくある苦しみの表現ではなく
鎧を着て談笑しながら歩いている三面六臂の神様たちの絵で
阿修羅たちのマーチって感じの素敵な絵だった。ほのぼの。
源信の作品と伝わる地獄極楽図屏風は海で隔てられた上部に極楽、下部に地獄を描いてるけど
地獄の窯が割れて救われる人々や閻魔様の裁きで救われる人もいるので
単に地獄怖いよってだけの絵ではないなと思いました。
海には龍や麒麟が泳いでいて瑞祥でしょうか、ファンタジー感もありましたね。

土偶コーナーは…突然の土偶に戸惑ってる人が続出してた。。
わたしは土偶を「当時の人々が当時の表現方法で動物を表現したらこうなった」的なものだと思ってますが
この展覧会では人とは違うかたち、異形という視点からの紹介のようです。
正直タイムスリップしすぎてついていけなかったんですけど、
みみずく土偶の展示ケースの隣にライトが当たっていて
土偶の影がみょ~~んと飛び出していくアニメーションが投影されていて、それは面白かったです。
現代の妖怪の姿ということで妖怪ウォッチの展示も。
ジバニャンやコマさん、ウィスパー、USAピョンの等身大フィギュアや
(コマじろうフィギュアがスマホ持ってて笑っちゃった)、
キャラクターのデザインが決まるまでのボツ案など。
ジバニャンもウィスパーも最初はちょっと怖い要素や気持ち悪い要素が入ってたみたいだけど
結果的にはかわいいデザインに落ち着いたんだな。
USAピョンのデザイン変遷がすごくて、大量のボツ案の末に誕生したUSAピョソと
あそこまでデザインを出力しまくったスタッフさんたちに「おめでとう」と言いたい。

夏休みだし妖怪ウォッチだし、会期末に向けてどんどん混んでいくでしょうけど
今も朝からむちゃくちゃ混んでるので赤ちゃんが泣いてても気にならないくらいザワザワしてるし
ベビーカーの人も車いすの人もいるので興味ある人は都合つくなら今のうちに行くのをおすすめします。
朝早くとか閉館ギリギリじゃないと最前列で見るのは難しいと思いますが…。
あと音声ガイドが井上和彦さんなので高貴な妖怪のお声が聴けるはず。
(聴いた人に伺ったら名乗らないけど下駄と羽ばたきが聞こえたらしいから天狗設定なのかな、
ニャンコ先生はやらないけど虎にゃあにゃあは言ってくれるそうです)


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ミュージアムショップが最高でした!
店内を撮影していいと主催からアナウンスが入ることってあまりないと思うので
せっかくなのでいくつか商品をご紹介します。

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激辛せんべい。鳥山石燕『画図百鬼夜行』の妖怪カード入りです。
見た目からして辛そう^^;
石燕グッズは画図百鬼夜行の手ぬぐい、Tシャツ、トートバッグなど。
Tシャツとバッグは河鍋暁斎のガイコツたちが描かれたのもありましたよ。

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地獄の湯。お風呂に入れると真っ赤になるという入浴剤です。
「この湯につかって悪い行いを反省すれば再び人間界に戻ることができる」そうです。
なんとなく別府の地獄巡りを思い出しました…いつか行ってみたいなあ。

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アメシンさんによる飴細工。
真珠庵本「百鬼夜行絵巻」に出てくる妖怪たちが飴になっています!細部まで高度なクオリティ。
こちらは非売品ですが、棚の下にあるうちわ飴(妖怪柄)が買えます。
(ちなみに浅草のお店に行くと、運が良ければボスに会えるらしいですよ)


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常設展の一角では企画展「伊藤晴雨幽霊画展」を開催中でした。
かつて柳家小さんが全生庵に寄贈した伊藤晴雨の幽霊・妖怪画19点の掛軸が展示されています。
伊藤晴雨といえば鈴木春信のお話を描いたとき『江戸と東京風俗野史』に大変お世話になりましたので
わたしにとっては風俗画の絵師というイメージだったのですが、
実際は責め絵や幽霊画で有名だったというのをやっと知りました。

全生庵の本物は撮影できませんが、
3点のレプリカと江戸博所蔵の版本などが撮影できました。
(レプリカゾーンの壁には1匹だけまっくろくろすけが描いてあります。探してみてね)
幽霊画は怖かったりユーモアがあったり様々。
牡丹灯籠と皿屋敷のお菊は美しかったし、豆腐小僧はかわいい。
四谷怪談の、井戸から櫛を持ったお岩さんの手がにゅーっと出てる絵ヅラすごい。
猫の怪談は座棺の上にちょこんと腰かけた猫に微笑めばいいのか、
それとも棺から顔を出した死者にびっくりすればいいのか。。
毒婦小松の、狼がくわえた小松の首は向こうをむいてるけど今にもクルッと振り返りそうで…。
左腕を取り返した茨木童子や、大きな蝦蟇とともに立つ滝夜叉姫など説話に取材したものなども。
真景累ヶ淵は赤い花を切る鎌がアップで描いてあるけど
刃に長い人毛がからまっているうえに滴る血が真っ赤でぞっとした。


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大妖怪展の開催期間中は江戸博近くにある第一ホテル両国のカフェ「Cerise」にて
妖怪ケーキがいただけますよ!
全部で5種類あって日替わり、週末は5種類そろうみたいです。
ケーキの紹介イラストに漂うDIY感、色鉛筆で丁寧に描かれていました。

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この日はヨーでるをいただきました^^
♪ヨーでるヨーでるヨーでるヨーでる、ようかいでるけん、でられんけん!
ココナツのムースの下部には人魂チョコとジバニャンの腹巻きをイメージしたビスキュイ、
ムースはフルーツジュレたっぷりで、底にはチョコバー(ジバニャンの好物)が入ってた!
妖怪ウォッチをしっかり見て再現してくださったんだろうな。

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こちらは後期にいただいたぬりかべ!
黒豆に黒ゴマクリームにブラマンジェなど黒ゴマづくしだったので
一番下から栗の甘露煮を掘り出したときは何だかいいもの見つけた気分になった^^

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ジャンル : 学問・文化・芸術

応天門の鎮火。

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前回記事の続き。東博の後に出光美術館の「開館50周年記念 美の祝典III」に行ってきました。
国宝「伴大納言絵巻」の展示がそれぞれI期:上巻、II期:中巻、III期:下巻で
4月にI期を見てII期は行けなかったけど、今回何とか絵巻のラストは見られましたぞ!
火事シーンのある上巻の迫力には欠けるけど、下巻も人がたくさん出てきて相変わらずの賑わいで
色んなことを想像しながら鑑賞しました。
これを描いた絵師は本当に人間をよく観察している…骨格レベルで。

下巻は「伴善男が応天門に放火して逃げたのを見た」と証言した舎人夫婦が
朝廷に連行される場面から始まります。
尋問する2人の判官はおっかない顔で仕事してて
彼らの前で証言中の舎人は背中を丸めていて萎縮しているのが伝わってきます。
善男の逮捕状が出されて検非違使たちがぞろぞろと伴邸に向かうシーン、
隊長の後ろに30人ほどの武装した人々が続いて、馬に乗っている人もいて
正直、こんなに人数要るのかなあと思ってしまうくらい物々しい雰囲気。
先頭は緊張感が漂っていて声をかけあったりしてるみたいだけど
後ろの方の人はよそ見したりしてて雑談が聞こえてきそうなユルさで
まじめに仕事しろよって突っ込みそうになった^^;

伴邸の門前で検非違使たちを出迎えた家司は気が弱そうなおじいちゃんで
裸足なのはなぜだろう…びっくりして何か履くのも忘れちゃったんだろうか。
善男の逮捕に大泣きする邸宅の女性たちの図は悲しさ爆発、
うつむいて顔を隠して泣くのが絵巻ものに描かれる女性像のパターンですが
上を向いて大泣きする人や床に突っ伏している人、寝所にこもって泣いている人(善男の妻)、
呆然となっちゃって膝を抱えたまま溢れ出る涙を拭おうともしない人など、とにかく生々しくて
泣き声(それも大声)が聞こえてきそうだった。
朝ごはんが部屋の中央に用意されてるけど誰も箸つけてなさそう、というかそれどころじゃなさそう。
すさまじい悲しみの描写でした。
絵巻には善男を逮捕する描写はないのですが
女性たちの泣き顔を見てすでに検非違使たちは仕事を済ませたのだなあとわかるような仕掛けは
現代のドラマにも時々使われますね。
絵巻のラストで検非違使たちに警護されながら進んでいく八葉車は
例によってぎぃ、ぎぃと音が聞こえてきそうなリアリティ。
善男本人は車から体半分が見えているだけで顔は描かれていません。
そしてここでも検非違使さんたちはマイペースですね…先頭は任務完了して胸張ってますが
後ろの人たちは雑談してそう(笑)仕事が終わった安堵感もあるのかな。

前回の鑑賞時と同様、有難いことにそんなに混んでなくてゆっくり見られました。
事件発生から犯人逮捕までの人間模様とドラマはたいへん見ごたえがあって
出光美術館の機会提供に感謝します。
また10年後に見られるかどうかわからないし…。
そういえば善男が連行されたのは8月3日で、伊豆へ流罪にされたのが9月22日以降ですから
秋の終わりだったわけで当時は寒くなり始める季節ですな。
そう考えるとラストシーンは木枯らしが吹いているようにも見える。

あと、ふと思い出したので余談になりますけれども。
小野篁がいっとき、善男と職場が同じで上司と部下だったことがあるんですけど
善愷訴訟事件(法隆寺の僧善愷が壇越を告訴して弁官5人が処罰された事件)のとき
善男が明法博士たちとけんけんがくがくに議論してて
(篁も助言をしたけど後年になって「あれは間違いでした」と言ってる)、
あの事件も伴大納言絵巻を制作するうえでヒントになってるような気がする。
また、小野篁の書道の弟子だった紀夏井という人が応天門の変のとばっちりを受けて
土佐へ流罪になりまして(異母弟が善男の共謀者として捕まったらしい)現地で客死していますが
彼は身長が6尺3寸(約190㎝)の巨漢だったことも付け加えておきます。
6尺2寸(約188㎝)の師匠と6尺3寸の弟子…平安時代とは。。


他にもすばらしい作品がたくさんあったよ~。
喜多川歌麿「更衣美人図」は夏の盛りに着物をゆったりと羽織る女性の図で
唇にはすっかり有名になった笹色紅がついています。
葛飾北斎「春秋二美人図」は2対の掛軸で
菜の花と桜、女郎花と紅葉をバックにそれぞれ晴れ着姿の女性が立ってます。
いつも思うけど北斎せんせいの描くお着物は袖がきっちり真四角というか
歌麿や春信の着物みたいにふわっとしてなくて、分厚いしっかりした生地っぽい感じがする…。
歌川豊広「真崎稲荷参詣図」は石浜神社に参詣するために隅田川で涼む女性たち、
鳥文斎栄之「舟遊図」は満月の柳橋界隈の屋形船で遊女たちが楽しむ様子をそれぞれ描いていました。

江戸名所図屏風は上野から増上寺までの江戸の鳥瞰図で
江戸市中のほか寺社や市場、橋、元吉原、木挽町歌舞伎や浄瑠璃などの様子も。
不忍池に舞い降りている白い鳥は1629年4月に飛来した鳥鵜(ペリカン)ではないかと言われているそうな。
遊女歌舞伎図はほとんど色のない白描ですが人々がぎっしり集まった芝居小屋は熱気がすごそう、
茶屋のかか(主役)が柱の陰にいて、猿若が目立っている珍しい構図。
英一蝶「四季日待図巻」、日待は正月・5月・9月に人々がお籠りをして日の出を礼拝する行事で
年月が経つと遊びが中心の行事に変わっていったようです。
絵巻は一応、神棚にお供えはあるしお祈りをしている人も描かれてるけど
ほとんどは飲めや歌えの宴会の様子で、障子に踊る人々の影が映ってておかしくて笑ってしまったけど
提灯に源氏香(ひとつひとつ違う形)が描いてあるのは教養のしるしのような気がしてさすがに一蝶。

尾形光琳筆と伝わる「禊図屏風」、伊勢物語65段で天皇に仕える女性に恋して
「もう恋はしないぞ」と川でお祓いをする男(在原業平)の図なのですが
遠近法などない、という構図のため川というより滝に見えるよ。。
同じく伝光琳の「鹿蒔絵硯箱」が美しくてあら~素敵ねって近づいたら
すぐ隣に「蝦蟇仙人硯箱」(すごい顔の蝦蟇仙人がそのまま彫ってある)があって戸惑いを覚えました、
光琳せんせいはふいにこういうの作ったりするからコメントに困る。
「深省茶椀絵手本」おととしの仁清・乾山展にも展示されていたな~。
松竹梅や鹿や馬…乾山が茶椀に絵を描くときのために光琳が残したのですよ、
また見られてうれしいです。
「蹴鞠布袋図」も去年に京博で見てかわいいなあと思ったものでした。
俵屋宗達の伊勢物語(嵯峨本)「武蔵野図」「若草図」の色紙は
キャプションによると異本などを参考にしたのでは?との解説。
宗達・光悦による「蓮下絵百人一首和歌断簡」は関東大震災であらかた焼けてしまったもので
これも去年に京博で藤原俊成の歌を見たけど、出光には参議等・平兼盛・壬生忠見が残ってるのですね…
よくぞ残ってくれました、すばらしい。

野々村仁清「色絵扇面散文茶椀」、お茶椀に色とりどりの扇がヒラヒラしていてきれいだったし
「色絵梅花文四方香炉」もひさびさの再会だー!
蓋の上に立体ウサギがいて、香炉のボディの左右に阿吽の象がにゅっと顔をつきだしているという
作業工程がまったく想像できない作品です。
(いや、そもそもわたし工芸の作業とか全然詳しくないんだけど)
この造形が約400年もの間失われることなくこの世に存在しているのが信じられない!
小川破笠の作品は初めて見ましたけど、
春日野蒔絵硯箱」「柏に木菟蒔絵料紙箱」(両方とも重要文化財☆)の立体感がすごい、
蒔絵や陶板や螺鈿でできてる鹿やミミズクが浮かび上がって見えてきます。

酒井抱一コーナーほんと美しい…!
「紅白梅図屏風」は2か所のケースをいっぱいに使ったぜいたくな展示、
銀地の一対の屏風に赤と白の梅の木が向かい合うように描かれています。
抱一の銀色はきれいだなー。
「八ツ橋図屏風」も光琳の同作品を意識してか、大きな屏風に橋と燕子花が大胆に配置してあるし
「十二ヶ月花鳥図貼付屏風」のデザイン性と空間の使い方には惚れそうですよ…。
「風神雷神図屏風」も去年の琳派展以来の再会で久し振り久し振り、
相変わらずひょうきんでちょっとバランス崩れた表情の神様たちはいつも楽しそうです。
そして恥ずかしながら今回初めて気づいたのが
風神の腰帯と雷神の太鼓を通してる棒(?)がピンク色だということでした。
画集とかでは色が飛んでしまってるのでな~しかし何度か見てるはずなのになあ、
わたしもまだまだ修行が足りませんな。
(ちょっと気になったのが、屏風の前にいたマダムたちが言ってた「綺麗すぎる」のことば…
絵の具が綺麗に残ってることの何がいけないのか、わたしにはわからないけど
ふと「この屏風が100年後や200年後はどうなってるだろう」と思ってしまいました。
綺麗に残ってくれますように)

鈴木其一の「四季花木図屏風」、桜や紅葉はもちろん、牡丹やタンポポに藤に桔梗まで
春夏秋冬の様々な草花が咲き乱れてる~こんなお庭あったら欲しい!
燕子花の根元に流れる水文の美しさに息を飲みました。抱一の線より細い。
「秋草図」は30代の頃の作品で、秋の七草(桔梗→朝顔に変えてる)を描いたもの。
今は掛軸になってるけど引き手の跡があるらしいので元々は戸袋絵だったのではないかとのこと。
あと、其一は光琳の「富士図扇面」(骨は外されて掛軸にされてる)に
「祝琳」と落款を入れてしまったらしくて、ちゃっかりしてるなあと思った。


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銀座熊本館にも寄ったよ~あじさいくまモンかわゆす。
着ぐるみのくまモンもときどき出現して握手とかできるらしくて
(スケブのメッセージは確か復帰後に本人が直筆したものだったと思う)、
運が良ければ会えるのかなあとトトロみたいなことを考えました。
そして熊本のデコポンゼリーは本当においしい。

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仏のほほえみ。

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東博で「ほほえみの御仏―二つの半跏思惟像」を見てきました。
(伊東マンショも2回目見てきたよ)

5月に韓国の国立博物館にて開催され、東博でも展示期間が約3週間なので
1階の特別展示室はなかなかの混み具合でした。
それでも譲り合ってできるだけ近づいて拝見できたのはよかったです。
2体の仏像が鎮座されているだけの展示室はとても広く感じたし、
混んでたけど閉館して誰もいなくなった時間を想像すると神秘的な気持ちになる。
ガラスケースに入ってて360度グルグル回れるためお背中まで見られるの本当にありがたいです。
(仏像のお背中すき、尊い)

中宮寺門跡の仏様(飛鳥時代・7世紀)は左からは無表情、右からは微笑んでいるように見えて
優雅に腰かけた柔らかそうな体つきと腰から下げられた衣のヒラヒラ感がたまりませんぬ。
全身真っ黒のお姿ですが、これは彩色が落ちて漆があらわになっているためだそうで
肌の部分にはわずかに肌色が、腰布には赤や緑がやはりかすかに残っているとのことで
もともとは色鮮やかなお姿だったんだろうな…。
あと、胸や腹、手首に何かを当てていた跡があることからアクセサリーをつけていた可能性もあるとのこと。
半跏思惟という名前のとおり足を組み右手を顔のところへ上げていらして
その手を見たとたん「やっべ…」と思いました(笑)。
さりげなく添えられてるんですが頬に当たるか当たらないかのぎりぎりのラインがツボすぎる。
わたし実はかなりの「手フェチ」でして(理想は薬師寺の日光月光菩薩と朝倉文夫「つるされた猫」の手)、
手って彫刻においては表情に次いで物を言うパーツだと思ってるんですけど
さりげなさにおいては中宮寺半跏思惟像の手に勝るものはないんじゃないかと思えてきた。
理想の手を見つけてしまった…!
あと、この方もともと蓮華の上に座っていらっしゃるけど
地面からヒョコっと抜きんでた蓮に左足を乗せているのも何だか優雅だ。

韓国国立中央博物館の仏様(三国時代・6世紀)は丸顔に伏し目がちのお姿、
銅造ということもあって中宮寺と比べるとやや硬質に感じられるものの
こちらはどの角度から見てもはっきり微笑みを浮かべていらっしゃるように見えます。
ロダンの考える人とは全然違うポーズですが
(そもそも人間と仏では思考パターンも違ってそうだしな)、
何かすてきなことを考えてらっしゃるのかなァなどと。
そしてこちらもいい手をしていらっしゃいます…(笑)。
人差し指と中指を頬にあてて薬指と小指は添えるだけ、
この手の形にも何か意味があるのでしょうか。
冠をつけ、しっかり衣装を着こんでいて高貴な雰囲気だし
こんな人が目の前に現れたら呆然として拝むしかないと思う。
(半跏思惟像は56億7千万年後に現れる弥勒菩薩ではないかという説があるらしい)
あとこちらの方が小さいサイズでした、未就学児~小学生くらいの身長かな?
中宮寺の方は立ち上がったら大人の平均身長より高そう。

アルカイック・スマイルというか、微笑んでいる仏像というと各地の如意輪観音像とか
広隆寺の宝冠弥勒像を思い出すな…ずいぶん行ってないのでそのうち訪ねたい。

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法隆寺宝物館でも半跏思惟像、もとい菩薩半跏像がいくつか展示されていました~。
ガラスケースの中にずらりと並んだ小さな「考える仏像」さんたち。
東洋館でも韓国の半跏思惟像がいくつか見られますよ。

で、いつものように本館も堪能。
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野原古墳(埼玉県熊谷市)から出土した埴輪ちゃんたち。
半跏思惟像を見た後なのでお手々が何となく思惟ポーズに見えてしまいました(笑)。
考える人ではなく踊っている人たちではないかとのことです。かわいい。

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往生要集絵巻・第3巻。
室町時代の制作で現存する往生要集絵巻としては最古のものだそうです。
六道のうち餓鬼道、修羅道、人道が描かれた部分が開いてあって
往生要集の執筆は平安時代ですが絵の中の人々は室町時代の風俗でした。

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蒲生氏郷が作った茶杓。
千利休の弟子でもある氏郷は茶杓を削るのがとても上手だったそうです。
あえて正面からではなく斜め向きの写真を載せていますが
わたしがバカ正直に上から撮影していたら隣で鑑賞していらっしゃった女性が
「こっちから撮ると茶杓の角度がわかりますよ」と教えてくださってやってみたら本当にその通りで
敬意をこめてこの画像にしました。あの時の方ありがとうございました!

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熊毛植二枚胴具足(江戸時代)。兜や胴の部分に熊の毛皮をつかってあるそうです。
左右にピョンとついた飾りがウサ耳に見えたのと、兜の三日月からセーラームーンを連想してしまった…
これで頭におだんごつけたら完璧(笑)。

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尾形光琳「李広射石図」。
李広は前漢の武将で弓の腕が強く、射ると石に突き刺さったという伝説があるそうです。腕力どんだけ。
目つきが竹虎図ことトラりんに似ている^^

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狩野探幽・尚信・安信、兄弟3人の山水図扇子。
3つとも水墨の風景画で、骨がついたまま残っている例は少ないそうです。
どうでもいいけど過去の展覧会のせいでこいつらの名前を見ると例のメロディが脳内再生されるぜ…!
狩野3兄弟 ズン チャッ♪

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曽我蕭白「葡萄栗鼠図」「牽牛花(朝顔)図 」。
朝顔は七夕の頃に咲くことから牽牛花とも呼ばれるらしいです。
どっちも蔓がくるくるしていて風が吹いたら揺れそうな雰囲気、
リスの尻尾とか一気に描いてそうだしフサフサもふもふ感に満ちていて触ってみたくなる。

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谷文晁直筆の書状。
5月12日付、植木屋さんに宛てた手紙で「毎日暑いですね」の挨拶に始まり(旧暦5月は真夏)、
茉莉(ジャスミン)と名護蘭の注文と、植木屋さんの妻の体調を案じている内容。
ざっくりした筆跡ですが乱れてないのはさすがに松平定信付き公務員。

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<根付と置物-象牙彫刻の伝統>コーナーに来て立ち止まりましたよ、
うにゃ~~ちっちゃーい、みんなかわいい!!
わずか2~3センチの中に繰り広げられる精巧かつ緻密な世界、たまらんですのう。
臼に突っ込んでるウサちゃん最高にかわいいし
骸骨つき木魚は何の冗談かと思うくらい笑ったし
幽霊根付は一体全体どうやって使うのだ、気をつけないとパキッといってしまいそう…
それとも使用目的はなく鑑賞用なのかもしれない。

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こちらは大きめの作品、安藤緑山「桜桃」。
桜の枝とさくらんぼ、象牙だなんて思えないし食べたくなるくらいリアルです。

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左:東声方「若き蘭陵王」、右:島村俊明「牙彫藤原鎌足像」。
この2体も結構大きかった…ぜいたくな象牙の使い方してる。
肌から布から質感がすばらしくて、柔らかそうに見えるというのもあるんだけど
何よりも鑑賞者の想像力を最大限に引き出す力をもった作品だと思う。
体温を感じる、ではなく、自動的に脳が働いて感じてしまう、みたいな。うまく言えない…むむむ。


平成館にて新しく収蔵された作品の展示も見られました。
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伊藤若冲自画自刻「玄圃瑤華」。若冲展にも出品されていましたね。
玄圃は仙人の棲む場所のことで、瑤華は美しい花のこと。
花や葉っぱが大きく枝が細いのは若冲がよくやるデフォルメですが
その割にはバランス崩れてないのすごい。

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円山応挙「四季遊楽図巻画稿」。
徳川美術館所蔵「華洛四季遊戯図巻」の下書きです。
京都の市場の賑わい、お正月風景で門松や雪だるまを作る人たちなどが描かれていました。


あと、撮影禁止でしたが最澄筆「羯磨金剛目録」がよかった、
最澄の直筆ってなかなか見る機会がありませんのでね。
無意識に空海と比べてしまうんだけどやっぱり迫力には欠けるかな…まじめに書いてる感じ。
英一蝶「雑画帖」もよかったです。
龍や眠り猫や紫式部、葡萄、江ノ島、居眠りする寒山の顔に落書きしようとする拾得、
清水寺の舞台で蹴鞠をする貴人、ふざけて不動明王像に切りかかる童子それを止めようとする童子、
胡蝶の夢を見る荘子などがスケッチにさらさらっと色つけたみたいな、水彩画のように描いてありました。
一蝶の描く絵は人物も風景も風来坊のような奔放さを感じる。

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古代ギリシャ展には行かなかったのですが、
レストランゆりの木にて販売されている限定スイーツ「はちみつとリコッタチーズのムース」が
おいしそうだったのでいただいてきました☆
展覧会に出品されている漁夫のフレスコ画をイメージしているそうです。
蜂蜜とチーズは古代ギリシャの人々も食べてたらしい。ふわっと柔らかムースだった^^

この後、有楽町に移動して出光美術館の「美の祝典」展も見てきたのですが
長くなりますので次回記事にて感想を書こうと思います。

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自らの文化が生き続ける限り、その国は生きながらえる。

半年ぶりに東博三昧してきました。
ちょっと個人的にこの日は豊作だった!わたしの好きな作家がたくさんいましたので
いくつかご紹介いたします。
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俵屋宗達「牡丹図」。
大きな牡丹と葉が地面いっぱいに。
画面にかっちり収めずに端が切れているのは風神雷神図がそうであるような意図だったりして。

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本阿弥光甫「藤・牡丹・楓図」。
長く垂れた藤がきれい、牡丹の構図も、楓の木のたらし込みのグラデーションも美しかった。
光甫は本阿弥光嵯(光悦の養子)の子で『本阿弥行状記』を編纂した人です。

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酒井抱一「四季花鳥図巻」(部分)。
春と夏の部分が開かれていて、写真は水辺に咲く燕子花。
絵の具がすごくきれいで、桜の枝を飛び交う鳥たちや藤の花に飛ぶ虫も描かれていました。

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松村景文「青梅図」。
たわわに成った実と、天に向かってすっと伸びた枝がかっこいい。
水墨のグラデーションに一目惚れしてしばらく眺めてしまった。

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清原雪信「牡丹小禽・蓮雀図」。
牡丹に飛び交う鳥と、蓮の花にとまっているスズメ。
落ち着いた作品で、お茶会の床の間に飾ってあったら素敵だな。

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山崎龍「二美人駒引き図」。
2人の女性が馬を引いて歩いています。旅の途中かな?
14歳のときの作品だそうで完成度高くてびっくりしました!
「風になびく富士の煙の空に消えて ゆくへもしらぬわが思ひかな」という西行法師の歌が書いてある。

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鈴木春信「小野道風」「見立小野道風」。
柳の枝に飛びつくカエルを見つめている、花札にもある小野道風の題材を絵にしたもので
見立~のほうは道風を当世風の町娘に置き換えています。
これもし現代バージョンやるとしたら柳の木の下にいるのはアイドルや俳優さんとかになるのだろうか。

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葛飾北斎「芍藥 カナアリ」。
鳥は飛びたったばかりなのか、それとも今から花に舞い降りようとしているのか。
カナリアは江戸時代にオランダ人によって長崎から国内へ持ち込まれたようですが
北斎も見たことあるのかな。

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「仁清」印「色絵波に三日月文茶碗」。
箱書きによると、野々村仁清が金森宗和の指導を受けて作ったとされる茶椀です。
色彩といいデザインといいたいへん美しくてホレボレ(*´▽`*)。
中央の三日月が強烈すぎて伊達政宗の兜を思い出した(笑)仁清が見たことあるかわかりませんが。

他にも、写真は撮れませんが国宝室にて良源の遺告(遺言状)とか
久隅守景の山水図屏風、湛慶らの千手観音菩薩立像(蓮華王院蔵)などを見てきました。
2年前にイタリアで発見され現在特別公開中の伊東マンショの肖像は彼が16歳の時の絵だそうで
髭が生えていて凛々しかったです。
あと年代が近いのと経歴が似ているのとで、
仙台市博物館にある支倉常長の肖像画をなんとなく思い出しました。行きて帰りし男たち。


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表慶館の「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」にも行きましたよ。
行こう行こうと思っていたけど結局会期末になってしまって
入場待ちはなかったけど展示室は結構、混雑していました。
軍事介入や度重なる内戦(ロケット弾で博物館の屋根を吹き飛ばされたりしたらしい)や
略奪や、時には命の危機に見舞われながらも
アフガニスタン国立博物館の学芸員さんたちや協力者さんたちがせっせと運び出して
国の中央銀行の地下に保管されていた文化財が今回、海を渡ってきてくれています。
展覧会を見るときはいつも、作品をつくった人や受けついで残してくれた人々のスピリットを感じますけど
今回は事情が事情なだけにしみじみ感じてしまったな…。

シルクロードのど真ん中にあって「文明の十字路」とも言われたアフガニスタンは
洋の東西を問わず人々や物、文化が集まる土地だったようで
展示品のモチーフはエジプトやギリシャの神々、ブッダ、羊、象、馬、ドラゴンにイルカまで多種多様。
アレキサンダー大王によってつくられた都市アイ・ハヌム(月の女性の意)の文化財は
ヘラクレス立像やヘルメス柱像などギリシャ風のモチーフが多いですが、
キュベーレ女神円盤はトルコの神キュベーレ、ギリシャの神ニケとヘリオス、西アジア風の神官、
ペルシャ風の馬車がひとつの円盤に集合しているオリエントっぽさ全開の作品。
瓦の端飾はその名のとおり屋根瓦の装飾品で
ヤシの葉や天使の翼などがデザインされた飾りはどんな建物に設置されていたのかな…。
石でつくられた日時計は照明がちょっとずつ動いて使い方が想像できるような展示になってました。
仮面付樋口は人の顔なんですが、よくあるライオンや真実の口みたいなかっこいい系というよりは
大酒でも飲みそうな雰囲気のおっちゃん顔でした…これが「くぱぁ」ってやつか(違)。

ティリヤ・テペ(黄金の丘の意)の遊牧民の王族の墓から発掘された黄金の副葬品の数々。
耳飾りや首飾り、指輪、飾板、足輪、冠、刀剣、コインに至るまで
すべてが黄金と宝石で彩られていて展示室がピカピカまぶしかった。
古代エジプト展に行ったときもエジプトのお墓の副葬品に驚いたものですが
アフガニスタンも女性4人と男性1人のお墓からこれだけのものが出てくるという驚き。
ハート型耳飾りかわいい~~この頃からハート型アクセサリーってあったんですね。
黄金の靴底の大きさが現代女性とあまり変わらなかったりするのもおもしろい。
冠は飾りがジャラジャラついてるけど分解して運べるというのは遊牧民の持ち物って感じ。
牡羊像はチラシで見たときは大きいのかなと思っていましたが、
実物は5センチの小さな小さなムフロンでした。頭にもりっとついた2本の角が強そう。
ドラゴン人物文ペンダントは2匹のドラゴンを従えた姿の遊牧民があしらわれていて
名前はペンダントですが実際は冠を飾っていたのではないかとのこと、
ドラゴンの瞳や鱗にトルコ石やラピスラズリが使われていて権力の象徴のよう。
メダイヨン付腰帯は豹に乗ったデュオニソス(と思われる)9つの立体メダイヨンがあしらわれたベルトで
金でできているためすごく重たそうですが、見た目ほど重くないんだそうで。
帯の部分は糸のように細くした金を編み込んであるそうです…どんな技術ですか…!
中国風の靴留金具は男性が乗っている戦車の一部のデザインがどう見ても竹で
この金具を作った職人はどこで竹を見たんだろうとか想像してしまった(アフガニスタンに竹はない)。
女神アテナのスタンプ印章がついた指輪は実際にスタンプとして使われることはあったんだろうか、
隣に紫水晶の指輪がありまして大きなアメジストが埋め込まれた金地に琥珀、トルコ石、ラピスラズリ。
美しすぎて見とれた…特にアメジストのあのゼリーみたいな輝きは何なのだ。ほしい←

ベグラムの都からは象牙やガラス製品が多く来日しています。
エジプトの技法で作られた脚付彩絵杯はナツメヤシの収穫の図が描かれているガラス杯ですが
色がくっきり残っていて(遺跡の入口がレンガで密封され奇跡的に風化を免れたらしい)、
最近作られたとか言われたら信じちゃうかもしれないレベル。
魚形フラスコも2000年前のガラスだなんて思えないくらいきちんと形が残ってて
目がテンテンとついてておちょぼ口もかわいい^^
把手付鉢は両手持ちのカンタロスという杯で、ガラスかと思ったら水晶の丸彫りだそうで
こんなでっかい水晶を彫っちゃったこともびっくりだし装飾の一部に金が使われてるのもびっくり、
ディオニュソスが使うといわれる杯はやっぱり一味違うぜ…!
象牙でつくられた象形家具脚部は何かの家具に使われていたようですがモデルはインド象とか。
レオグリフ形腕木(まるっと象牙)は椅子のひじかけを支える部分に彫刻をほどこしたもので
背にヤクシーとヤクシャを乗せたレオグリフをインドの怪魚マカラが一口に食べようと大口を開けていて
こんなところまで装飾していた古代人やばい。
アクアリウムとも呼ばれる魚装飾付円形盤は中央のメドゥーサを魚たちがぐるりと囲んでいる青銅板で
(メドゥーサはポセイドンの愛人でもある)、
九博の学芸員さんたちが再現してくれたレプリカが隣にあって実際に動かしてみることができます。
円盤の下に小さい無数の分銅が設置され、左右に振ると魚たちの尾ヒレや背ヒレがひらひら動きます!
ちなみに本物を展示ケースに入れる際にも分銅はヒラヒラ動いたとのこと。
同じく青銅製の騎馬人物像は馬に乗った体勢の2人の人物のみで馬は見つかっていないらしく
プラスチックの馬に乗せて展示されていました。
あまりに生き生きしたゴール人の彫刻で、久しぶりに馬に乗った気分はどう?と聞いてみたくなった。

博物館から国外に持ち出された「流出文化財」の展示もありました。
(今回の展覧会の後、アフガニスタンに返還されることになっているそうです)
ゼウス神像左足断片は、左足の指先から甲の真ん中くらいまでが残っていて
サンダルに雷霆模様がほどこされていることからゼウスの像であることがわかっているとか。
推定では4~5メートルはあった像ではないか、とのことらしい。
カーシャパ兄弟の仏礼拝は上下2段の浮彫作品で
下に釈迦、上に弥勒菩薩を中心に祈る人々が表現されています。
かつてアフガニスタン博物館の正面に展示されていたそうですが、いつの間にか流出し
どうやってかわかりませんが日本で保存されていたらしい。
焔肩仏坐像は両肩に炎を燃やしている釈迦の彫刻、こんなアツイ釈迦初めて見たよ!不動明王みたい。
平山郁夫氏が生前行っていた文化財保護活動についても紹介されていました。
氏は流出文化財を「難民」と呼んでいたそうな。

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「自らの文化が生き続ける限り、その国は生きながらえる」
再開されたアフガニスタン国立博物館に掲げられている言葉が表慶館の入口にもありました。
かっこいい。

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ジャンル : 学問・文化・芸術

千載具眼の徒を竢つ。

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東京都美術館で開催中の若冲展に行ってきました☆
伊藤若冲生誕300年記念の回顧展です。
1月の講演会で小林忠氏が大変心配しておられたのが的中したらしく
内覧会も初日も大混雑と聞いて、これは会期末あたりはパンクしかねないと思い早々に鑑賞することに。
しかも今週からさらに混み出したそうなので(たぶん日曜のNHKスペシャルのせい)、
本当に先週に行っといてよかった…。

そんな開幕2日目のわたしのタイムスケジュールはこんなでした↓

・朝8時、美術館到着(すでに50人並んでおりその後どんどん増えて開場時には1000人以上の列)→
・9:20開場と同時に1階へ上がり動植綵絵と釈迦三尊像を鑑賞→
・2階を鑑賞→
・10時過ぎに地下のロビー階へ戻ると大混雑で絵の前に5~6層の人だかり、最前列に出られず→
・ロビー階を鑑賞して再び1階と2階へ戻ると大混雑→
・グッズ売場のレジに長蛇の列と1時間待ちのアナウンス→
・11時過ぎに退室。入口をチラ見したら入場待ち30分の札

よく生きて帰ってきたな…。
もっと居ようと思えばいられましたけど、人口密度に圧倒されてしまったのと
動植綵絵を数分とはいえ独り占めできた感動があったのでもういいかなと思ったのでした。
過去のキトラ古墳展鳥獣戯画展に比べればだいぶマシな気はしますが。

動植綵絵が1階にあるという情報はTwitterで得ていたので
開場と同時にわき目もふらずエスカレーターを目指したのは正解でした。
楕円形の展示室にぐるりと展示された「動植綵絵」30幅に「釈迦三尊像」3幅!→こちら
あまりにうれしくて一旦、展示室のど真ん中に立って
彼らに囲まれる幸せをかみしめてから鑑賞開始。
(もともとこの33幅は江戸時代に若冲が相国寺に奉納したのですが
近代の廃仏毀釈により衰退した相国寺のために動植綵絵を皇室が買い取り、
現在は動植綵絵を宮内庁が、釈迦三尊像を相国寺が所蔵しています。
彼らの再会は相国寺承天閣美術館で果たされてから今回で9年ぶりだそうですし、
おそらく当時、若冲や友人の大典が見たであろう雰囲気を味わいたくて
まずはどうしても展示室の中央に立ってみたかったのでした)

動植綵絵は皇室の名宝展以来で(当時もそれなりの混雑だった)5年ぶりの再会ですが、
「やっっっっっばいめっちゃ綺麗…!すごいやばい最高…!!」と他の言葉をなくす美しさで
一瞬でも人少ない時に見られてよかった、朝早く来た甲斐がありました。
記憶というのはだいだい美化されるものですし前に見たときも美しいと思ったはずなのに
記憶以上だったのは想定外だった…。
どの掛軸も大きくて華やかで緻密でちょっと毒入っててバランスよくて色鮮やかでかっこいい!
老松白鳳図は鳳凰の羽の先についたハート模様がかわいいし(赤の中で1枚だけ緑なのもよい)、
南天雄鶏図の無数の南天は描くのを想像するだけで気が狂いそうだし
群鶏図は若冲渾身のイケメン鶏たちが全員集合してるし
雪中鴛鴦図と雪中錦鶏図のベタ雪は触ってみたくなるし
紅葉小禽図の紅葉は裏彩色のおかげで立体的に見えるし
梅花群鶴図は光琳がさらにとんがったみたいだし(若冲は光琳が亡くなった年に生まれている)、
芦雁図の氷は応挙の氷図みたいな静けさがあるし(若冲は応挙より16歳年上)、
はー!みんなかわいい!!

信行寺の花卉図とか金比羅宮の百花図とか今回の向日葵雄鶏図とか見てると
じゃくちゅーたんは結構、ヒマワリを描いてて好きだったのかなあと思います。
他に好きそうなのは牡丹と梅と松と棕櫚、蓮や枯れ葉もよく描いてると思う。
群魚図のルリハタのプルシアンブルーは平賀源内の紹介(彼はベレインブラウと言ってた)より10年以上、
北斎や広重の錦絵より50年以上は前の作例らしくて
19世紀初頭の大量輸入まで国内にほとんどなかった色を一体どこから手に入れたのか、
入手ルートはわかっていないようですが大阪のお友達あたりかな…。
釈迦三尊像はナマで初めて見まして
目のさめるような色づかいのセンスがすごくいい、当時はもっときれいだったんだろうな。
というかわたしが今まで見てきた仏画と全然ちがって派手だし赤が多いし、
でもすっきりまとまって見えるのは相当色彩バランスが計算されつくしてあるからかなと。
あと感動したのは掛軸との距離が近いこと!
アクリルガラスと仄かなLED照明のおかげでクリアな鑑賞ができました。関係者に感謝。

金閣寺書院の襖を飾っていた葡萄小禽図襖絵は4面の空間を思い切り活かしたレイアウトで
ぽっかりした空間に水墨の葡萄が自由に生きている感じがします。
これとセットの絵(葡萄小禽図と月夜芭蕉図)も相国寺が所蔵していますが
さすがに書院の壁を持ってくるわけにはいかなかったか~。
京都で見られますので気になる方はどうぞ。(わたしは3回くらい観た希ガス)
発見から83年ぶりに若冲筆と確認された孔雀鳳凰図の鳳凰は
旭日鳳凰図や老松白鳳図と同じく羽にハート模様がついてる☆
おそらく動植綵絵と同時期かその前に描かれたと考えられているらしく、
確かに構図と書き込みと緻密さがそのまんまでした。
孔雀も老松孔雀図と構図がそっくりなので前段階として描かれた可能性もあるのかな。
ニワトリの掛軸もいっぱいあったし、巨顔の達磨図は迫力あるし
乗興舟は何度も見てるけど相変わらずの黒に引き込まれる。
菜蟲譜のタイトルのフォントがおもしろくて、蟲とか手塚治虫さんが描いたみたいなレタリングで
内容もまさに青物問屋の息子って感じで野菜と虫たちのオンパレード。
カブトムシみたいな茄子がいるなと思ったら、後半で本当にカブトムシが出てきた(笑)。
花鳥版画のオウムちゃんはかわいいおもちゃに囲まれて下を向いててほんとにかわいい。

三十六歌仙図屛風は歌人たちが田楽を作っている様子の水墨画で
若冲と蕪村展では六歌仙図だったけどこちらは屏風で空間が広くなって人数も増えたので
歌人たちのおふざけ度が増している感じ(笑)。
江戸時代に流行した「歌仙豆腐」(三十六歌仙に見立てた36種類の豆腐料理を作る)遊びが
元になっているとか、
歌人たちが演奏する楽器を豆腐に置き換え、本来の田楽図に見立てたという説があるそうです。
石燈籠図屛風は無心にならなければ集中できそうもないくらいの細かすぎる点描で
しかも屏風サイズっていうところとこれを描いた時絵師は80代だったと知って
この人本当、もっと生きてたらどこまで行ったのかと改めて。。
象と鯨図屏風(これも80代の作品)も若冲と蕪村展以来、ひさしぶりの再会でした!
相変わらずクルクル巻いた白象の鼻と鯨の波がかわいいのう、愛しいやつらめ。
蓮池図は4面の襖に蓮池の様子を描いた水墨画で
京都で大火に遭った若冲が大坂の西福寺に避難していたときに奉納したもの。
ほとんど蓮が咲いてないのですが、ぽつぽつと芽やつぼみが描かれているのを見ると
映画ナウシカのラストでチコの実が芽吹いていたカットを思い出しますな。

海外からもいくつか里帰り。
METの月梅図は月光に照らされる梅の木が華やかで、
デンバー美術館の菊花図は筋目描きがダイレクトに観察できました。
エツコ&ジョー・プライスコレクションも来日中ですよ~☆
プライス氏が23歳のときふらりと入ったお店でジャケ買いしたという葡萄図を始め、
細密画から水墨画まで一通りございます。
目がいっちゃってる虎図の、細かい体毛のふさふさ感とか柔らかそうな肉球とか最高ですね。
紫陽花双鶏図のニワトリちゃんはすごいポーズで紫陽花の中を生き生きと歩いてる。
雪芦鴛鴦図は2羽のおしどりが水の中に頭突っ込んでるんだけど
水中から顔が透けて見えるのでこの池の水は澄んでいるに違いない。
鳥獣花木図屏風は楽しい!
仙台市博物館の「若冲が来てくれました」展以来の再会で
今回はガラス越しでしたけど、それでもうれしかった!
実在と想像上のいきものたちがカラフルに存在するさまは、動物園かノアの方舟か。
この屏風の前は本当に賑やかで皆さん楽しんでいらっしゃって
動物の名前を当てたり色遣いを見たり枡目を数えだす人など様々。
ガラスに張りつきながら「じゅ~かちょうじゅうず~びょ~ぶじ~けん」て歌ってる子がいて
それからずっとわたしの頭の中もびじゅチューンになった。

一日中どの絵の前も人だらけで最前列で見るのはなかなか困難ですが、
会場スタッフさんの呼びかけでじわじわ進みますので隙間に入れてもらえれば前列に出られるかも…
あと、とにかく書き込みが細かいので
単眼鏡とかオペラグラスを持っていくと細かい箇所まで観察できると思います。

ふと、初めて若冲の絵を見たのはいつだっけと思い返してみましたが全然覚えてない。。
わたしが物心つく頃にはすでにブームがやってきていて
当たり前のように画集や研究書が書店にあふれていたような気がする。
教科書だったか画集だったか、ポスターだったかネットだったか思い出せないのですが
それでも初めて見たときは衝撃だったな…。
頭の中を「???????」が駆け巡って
「どう描いたの」「どう塗ったの」「絵の具は」「つか絵なの?」「何これ」ほか無数のことばを
同時に口にしようとして口が混乱したのを覚えてます。
ちなみに見たのはニワトリで、群鶏図か南天雄鶏図あたりだった気がする…。
わたしだいたい絵を見るときは顔や手元、花や光源に目がいくのですが
あのニワトリは目も鶏冠も首も羽も、何より強烈な原色までもがバーン!と自己主張してて
一瞬、どこ見たらいいのかわからなくなってやっぱり混乱したっけな…。
若冲の絵は見た瞬間に多くを語りたくなりますが、後は無言で見つめてしまうような感じがする。


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ロビーにはチームラボの「Nirvana」が展示されていました~。
樹下鳥獣図屏風の動物たちが歩いたり飛んだり羽ばたいたりするインスタレーションです。
日本科学未来館のチームラボ展以来の再会ですが、
あのときは壁いっぱいの巨大スクリーンに投影されていた屏風が今回はかわいらしい大きさでした。

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鳳凰と仲間たち。

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白象と仲間たち。

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麒麟がいたの初めて気づいたよ!小さい屏風になったおかげ。
大きいスクリーンの展示もたいへん楽しいけど、
小さいスクリーンだと自分の目線の高さにてっぺんがきてくれるから全体図がわかって面白い。


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午後は講堂にて講演会を拝聴。
山下裕二氏の軽快な進行で辻惟雄氏、エツコ&ジョー・プライス夫妻のよもやま話を伺いました。
プライス氏や辻氏の若かりし頃のお写真やご自宅の展示室などをスライドで見せていただいて
自然光を取り入れたコレクション部屋はとてもモダンだったし、
若冲の葡萄図を若冲とは知らずに買ったことや
近づいたり遠ざかったりして絵のディテールを見ながら
絵から絵師が語りかけてくるのを待ってて、というメッセージが心にじんときました。
今年で若冲の享年と同い年という辻氏が『奇想の系譜』を上梓したとき、
実は動植綵絵をご覧になっていなかった(!)ことや
プライス氏が探していた紫陽花双鶏図がアメリカに渡ってしまう前に古美術商から借り出して
「見納めだ」とか言って後輩にお見せしたらしいエピソードがおもしろかった。

その後輩(笑)の小林忠氏も客席にいらっしゃって、山下氏に呼ばれて飛入り参加されて
東博時代に鳥獣花木図を展示しようと上司に申し出たら却下されてしまったお話をなさってて
これ何度も聞いてる話だけど聞くたびに笑いが起きる(笑)。
最後にみなさまのお好きな動植綵絵を挙げることになって
プライス氏は迷わず菊花流水図を挙げていらして
(最初は白黒画集で見たけどフルカラーの本物を見たとき泣いてしまったそうです)、
辻氏は「毎回好きな絵が変わるんです…」とおっしゃりながら群鶏図、
小林氏も「ぼくも辻先生と同じでいつも変わります」とおっしゃりながら蓮池遊魚図、
山下氏は「あえて」芦雁図とのことでした。

あと「今日だけ、講演会はがきを提示すれば展示室に再入場できます」と特典をもらったので
せっかくなので行ってきました。
待ち時間はなかったけど相変わらず混雑していたし、自分のペースで見るのは困難でしたが
1階では改めて展示室の中央に立って若冲の視点を堪能。楽しかった~!

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続いて1階のレストランIVORYへ。
若冲展の期間限定デザートがいただけるというのでやって来ました。

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宇治抹茶のモアローショコラ、国産丹波種黒豆・きなこのアイスクリーム、
宇治の和紅茶はほんのり酸味がありました。
ショコラはナイフで切ったらとろりとチョコレートが出てきた~あったかいフォンダンショコラみたい☆

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ほうじ茶マカロンに鶏(*´︶`*)

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ジャンル : 学問・文化・芸術

燃える応天門。

前回記事の続き。
日本橋と銀座をウロウロした後、出光美術館へ行ってきました☆
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仁清・乾山展以来なので1年半ぶりくらいかな?
有楽町駅前は賑やかだけど、この周辺は人通りも車の通りも少なくて静かで好きです。

開催中の展覧会は「開館50周年記念 美の祝典」。
出光美術館開館50年を記念して、7月まで3期にわたり名品が展示されます。
今は第1期「やまと絵の四季」を開催中で
日本の人物や四季などを描いた屏風や掛軸や彫刻が見られるのですが、
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わたしの目的はこれです!10年振りの公開、伴大納言絵巻!!
これを見るためだけに今回行ってきました!!!\(^o^)/
866年に実際に起こった応天門の変(放火された応天門が全焼し伴善男が犯人とされ流罪になった事件)を
平安時代末期に絵巻物として制作したものです。
(一説には後白河法皇の命により常磐源二光長という絵師が描いたとされます)
伴大納言絵詞とも呼ばれる国宝絵巻の全3巻を
1期に上巻、2期に中巻、3期に下巻とそれぞれ展示してくれるのですよ~。
特に上巻は群衆と応天門の描写が圧巻であることで有名で、
画集や研究書で何度も見ているあの場面がナマで見られると思うとテンションが爆上がりしすぎて
前日に胸やけと腹痛を起こすレベルで楽しみでした。。
いざ当日、絵巻の前に立ったらそれどころじゃなくなってお腹痛いのも吹っ飛んじゃったけどね…。

応天門の一大事ということで検非違使たちが出動していく場面から絵巻は始まります。
鎧をつけて武具を背負った騎馬武者や、武器や松明を手に徒歩で現場に向かう者など様々で
表情はもちろん、しぐさも走り方もみんな違ってて個性が見えるのおもしろい。
人々が朱雀門を駆け抜けていくとそこは風下で、真っ黒な煙がもうもうと迫ってきていて
吹き荒れる強風の中を火の粉と火のついた木屑が降りそそいでいて
人々の烏帽子の動きを見ると風は同心円上に渦を巻いているのがわかるし、
後ろの方の人はもっと近くで見たいのか押し合いへし合いしていて
前の人は黒煙で目がしみるのか顔を押さえたり扇子で防ごうとするポーズとったりしてて
この絵師たぶん、火事現場を見たことある人じゃないかなと思った。
逆に風上側の会昌門ではのんびり見物する野次馬がひしめいていて
でも最前列の人はやっぱり炎を避けようとしていました。
上巻のクライマックスともいえる炎上する応天門は絵師の筆が大暴れ、
平治物語絵巻の三条殿夜討の火災やジブリの定家と長明展の炎上する朱雀門をを思わせるような
文字どおり舐めつくすような炎と煙がすさまじく、
強風にあおられて風下へ流れていく動きまで見えてくる感じ。
やっぱり絵師は火事現場を知ってる人じゃないかな(2度目)。
それにしても絵の具の赤色がとてもしっかり残っていて、出光さんの保存努力が伺い知れます。

その様子を遠くから見つめるひとりの男がいて、事件の犯人とされる伴善男を描いたと思われますが
後ろ姿で表情も読めなくて意味深。
君はだれ、何を考えているのって背中へ問いかけたくなる。
あと、これ絵巻なので描かれた当時は右から左へスルスル開くと絵が出てくる仕組みなわけで
見物する群衆の後にふいにこの男が出て来たら「誰おま!?」って声出しちゃいそうな気がする。

場面は変わって、伴善男から「犯人は左大臣源信だ」と聞いた清和天皇に対して
藤原良房が真相をきちんと確かめるよう進言するシーン。
え、え、そうなの??ってなったところで上巻は終わります。
史実としても有名な事件なので、この先どうなるのかはもちろん知っているのですが
それでもドキドキしてしまう終わり方だなあと思いました。
「書きつづけたいのを我慢して最高に盛り上がったところでその章をきりあげる」のが
本を書くコツだというムーミンパパのセリフがありますが、
まさにそんな感じで終わってて次回予告を見たくなるレベル。
しかも天皇と良房の会話を部屋の外で謎の男が聞いているのですが
(頭中将だった藤原基経とか、源信とか、藤原良相とかいろいろ説があるようです)、
これ推理小説とかだったら間違いなく犯人かその子分だよね(笑)。
あと、謎の男のそばにさりげなく衝立が置いてありまして
真ん中が破損しちゃってわかりにくいんだけど、たぶん東大寺が描かれてたんじゃないかな…
屋根の鴟尾と、吹きさらしの中に立つ金剛力士像が描いてあったので。

出光美術館にしては珍しくあまり混んでませんし、絵巻の解説冊子も500円で買えますし
行ける人は見に行った方がいいです。圧巻です。
この機会を逃したら次また10年待つことになります。
人の顔や背景など、ところどころ破損してる部分も周囲の絵の豊かさを見ていれば
じゅうぶん脳内補完が可能です。たぶん絵師の技量のおかげ。
(3巻全部合わせると400人近い人物がいるそうだ)
ところで応天門は現在、京都の平安神宮に再現されていますが
平安時代に建っていた門はもっと大きかったらしいですね。
(そして当時の応天門に掲げられた額の文字を書いたのは空海だけど
点をひとつ入れ忘れたので筆を投げ上げてつけたというかっこよすぎるエピソードがありますな)

今思い出したけど応天門の変はちょうど今頃起こった事件なんよね…旧暦閏3月10日(新暦4月28日)。
毎年この時期は善男を思い出してソワソワします。
ちなみに今年は変から1150年目です。


他の作品もすばらしいものがたくさんありました。
室町時代の日月四季花鳥図屏風は作者がわからないけど
右隻に太陽と雉、左隻に月と鹿が描かれていて
太陽と月(三日月)は金色の金属板がはめ込まれてるのがかっこよかった!
四季花木図屏風は紅葉や竹や松など四季折々の植物が描いてあるんだけど
狩野探幽による「土佐光信筆」という紙中座がでかでかと描きこまれていてビビりました。。
書いちゃったんかい!(笑)
そうだったそうだった、探幽は鑑定家でもあるんだった…しかし自信満々の字でした。いやはや。
吉野龍田図屏風は吉野の桜と紅葉を画面いっぱいに描いたもので
樹齢を重ねたりっぱな古木がそれぞれ桜と紅葉をどっさり咲かせている様子は
近くで眺めていると花と紅葉に包まれて匂いまで香ってくるような気がしてくる。

橘直幹申文絵巻は文章博士の橘直幹が「民部大輔になりたいです」と村上天皇に申文を出す一部始終を
絵巻にしたものですが(結局なれない)、
その申文を書いたのが小野道風と聞いて!
ちなみに村上さんは内裏が火事になったときその申文を運び出したかどうか尋ねているらしく
キャプションには余程の名文だっのではと推測されていたけど、
半分は道風の価値だと思ってしまった小野氏クラスタはわたしです(笑)。
冷泉為恭の雪月花図は、花宴に朧月夜を訪ねる源氏で花と月を、
香炉峰の雪のくだりから簾を上げる清少納言で雪を表現した2幅の掛軸。
佐竹本三十六歌仙「柿本人麿」「僧正遍照」はどちらもゆったりとした人物像がほほえましい。
西行物語絵巻は烏丸光広が本多富正からの依頼で禁裏から借り出して
俵屋宗達に模写を制作させたものだそうで、西行の一生を描いた絵巻の第1巻目。
手前に男性貴族たちがずらりと並び、背景の襖には四季折々の美しい景色が
やわらかな色づかいで描かれていました。
宗達は絵の具をべったり塗る人だけど、色がとてもやさしい。

修復を終えて初公開となる真言八祖行状図は壁いっぱいの掛軸8幅のセット。
もともとは奈良の内山永久寺(現在は廃寺)の襖絵として使われていたらしく、
修復されたとはいえ長い年月を経ているので色もだいぶくすんでいるようでした。
それでも目を凝らすと細かい描写が見て取れます。
やっぱり目がいくのは恵果と空海ですけどね…
皇帝を説得するために自在天を呼び出す恵果と、疫病を鎮めるために般若心経を唱える空海かっこよすぎ。
同じく永久寺に伝わった慶派の増長天像と持国天像はムッキムキのいい体してる!
おふたりとも鎧の袖部分にくわっと口を開けた顔がついてて
増長天は鎧のお腹部分にも怖い顔がくっついてた。
棒を振り上げて左右対称なのでお寺で仲良く並んでいたのかも、ふおおこのまま叩かれたい…!!

象がぼや~っと口開けてる普賢菩薩騎象図かわいいし、
早く救わなくちゃ!とばかりに斜め走りポーズで翔けてくる阿弥陀来迎図はもっとかわいい。
阿弥陀聖衆来迎図はいわゆる「帰り来迎」というやつで既にお迎えの人は救われていて、
阿弥陀の隣にいる観音菩薩の手の上に往生者が乗って
菩薩と比べると人形みたいに小さいのがおもしろかったです。
十王地獄図はとにかく巨大な掛軸で、地獄の10人の王と彼らの足元に広がる地獄の様子が
さっきの伴大納言絵巻のようにリアルに描かれていました。
八大地獄ひとつひとつに往生要集からの引用を書いた紙が貼ってあったのと
三途の川にかかる橋の上で人々を救おうと導く地蔵菩薩の姿が印象的。

俵屋宗達の月に秋草図屏風は、1年前に抱一の同じ題材を見まして
あれも月が黒かったけどこちらも黒いですな…抱一はこれを参考にしたのかな。
単純化した秋の七草を空間を大胆に空けて配置し、すっきりまとめていました。
対照的に隣の四季草花図屏風は伊年印(宗達工房)の作品ですが
秋の七草がぎゅうぎゅうに詰まって描かれていて植物図鑑みたいだと思った。
尾形乾山の梅・撫子・萩・雪図はそれぞれ小さな掛軸に描かれた4幅セット。
床の間にある袋戸棚の小襖絵として制作されたのを掛軸に仕立て直したようです。
本名である「深省」のサインがあり、80歳のときの作品とのことで
えっじゃあ、江戸で描かれた作品ではないか!
あと乾山のこういう、小さな正方形の作品を見ると
兄の光琳と合作した角皿を思い出しちまってわたしァ泣けてくるんだ…!
この兄弟は本当に萌えのかたまりです。けしからん。一生愛す。


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出光美術館を堪能した後は、電車で池袋に行って
東急ハンズにて開催中の「ねこ路地2016」に行きました。
猫グッズを制作している作家さんたちや企業が作品や商品を展示していて買うこともできるイベントです。
うにゃー何もかも全部かわいい!(=^ω^=)

nekoroji2.jpg
ハンズ1階入口にどーん。「ねこ好きとねこにおくるクッション」だそうです。
今すぐ埋もれて眠りたい。

nekoroji3.jpg
フェリシモ猫部さんのブースまじ最高。
猫の肉球クリームなどのスキンケア用品からにゃしゅまろやニャー麺など食べ物まである!
この間行ってきた妹が猫耳ヘアバンドを買ってきてお風呂上がりに猫になってたのですが
あれもフェリシモさんのグッズだったっけ。

nekoroji4.jpg
一番の目当てはこちら。わちふぃーるどのダヤンのコラボケーキ!
コラボレーション専門のスイーツ屋さんが作っただけあってクオリティは最高潮です。うおお。

nekoroji5.jpg
むちゃくちゃ混んでて30分並んでゲットしましたよダヤンケーキ!ダヤン…ケーキっ…!!
クリームとチョコで再現されたお顔もおてても最高にかわいい、かわいすぎる!!
例によって「かわいい~~もったいない~~~」とぼやきながら食べました。むちゃくちゃ甘かった。

nekoroji6.jpg
さがおうじさんの「さすらいねこ」クリアファイルと
ゴーあやのさんの「猫の図書館ブックカバー」もゲット。
どうでもいいけど、さすらいねこの「寝なければ終わる」は寝ないで作業するという意味らしいけど
わたしには「寝なければ(体調こわして人生が)終わる」と読めるので逆に眠気が出る絵だったりします。
かわいい。

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こちらは別の日に妹が買ってきたお土産。
ダヤンマカロンと肉球クッキー!肉球クッキーはハート型なんです!最高なんです!!
この世は猫に満ちている。

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この人を見よ。

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国立西洋美術館のカラヴァッジョ展に行ってきました。
カラヴァッジョ本人による作品11点とカラヴァッジェスキ(フォロワーの画家たち)の作品、
本人と周囲が残した証言や裁判記録を記した古文書などが展示されています。
画家の名前がタイトルに入ってるのに11点だけ?などと当初は思いましたが
カラヴァッジョの作品は世界中の美術館が所蔵するも様々な事情から貸し出せないものが多く
公式サイトによると「本展の出品数は日本で過去最多、世界でも有数の規模」とのこと!
ヨーロッパでも5点集めて展示すれば人々は列をなしておしよせるそうですし、
ずいぶん前に庭園美術館で開催されたカラヴァッジョ展も本人の作品は8点のみだったらしくて
そう聞くと今回の2ケタがどれだけ驚異的な数字かということがじわじわ来るし
この人ほんと人気なんだな…と今回の機会に感謝しました。

平日の午後でも混雑はほどほどでしたが、いつもなら小声で聞こえるはずの会話や批評が皆無に近く
代わりにハーっとかウワーっていう息遣いやゴクリと息をのむ音ばかり聞こえて
ちょっといつもの西美の雰囲気と違っていてそこも印象に残りました。
特にカラヴァッジョの真筆の前では人だかりができているにも関わらずシーンとしていた。
わたしも一言も発せなかったけど。

展示は風俗画や静物、肖像などテーマごとに分かれていて
テーマの最初にカラヴァッジョの作品、続いてカラヴァッジェスキたちの作品が並んで
画家による影響の変遷をたどる構成になっていました。
モネやピカソがそうであるように、カラヴァッジョも遠くからでもどれが彼の作品か一発でわかりますね…。
光と影のコントラストと、衣装や小道具の質感がものすごく几帳面に描いてある。
私淑はやはり私淑であってオリジナルではないし、
カラヴァッジェスキたちもそれぞれ画家のプライドや表現したいものや注文主の好みがあると思うので
影響を受けても違ってくるのは当たり前なのですな。

まずは風俗画。
カラヴァッジョの「女占い師」を筆頭に当時の人々の生活や娯楽を描いた絵画が並びます。
女占い師は、ロマの占い師が占うふりをしながら若者の手から指輪を抜きとろうとする内容で
世間知らずのお金持ちの若者に向けた警告のような意味もあったとか。
イソップやシャルル・ペロー童話など文学に教訓話が多かった時代は絵画もそういう面を持つのですね。
また、X線を用いた調査でこの絵の下はマリアの全身像を描いた絵だとわかったらしくて
おそらくまだ画家として若手だったカラヴァッジョがお金がなくキャンバスを再利用したのだろうと
キャプションにありました。
絵画に残された痕跡から画家の経済状況をさぐる…これも学芸員の大切な仕事!
(前回記事の「学芸員を展示する」からの影響がまだ残っています)
カラヴァッジェスキであるシモン・ヴーエの「女占い師」もカラヴァッジョの絵と構図がそっくりで
色彩のコントラストなども影響がみられますが、
若者がカウボーイ風の成人男性になっていたり
占い師が男の気を引いてる間におばあさんがズボンから貴重品を抜きとろうとしてて少し生々しい感じがした。
ヴィニョンの「リュート弾き」やパオリーニの「合奏」などは当時の娯楽の風景で
たぶんカラヴァッジョのリュート弾き(今回は未出品)の影響も色濃くありそう。

カラヴァッジョの「トカゲに噛まれる少年」やパオリーニに帰属「カニに指を挟まれる少年」など
何かに噛まれたり植物のトゲに指をさすなどして痛みや戸惑い、恐怖の表情を描くことは
当時の画家たちの間で流行していたようです。
ミケランジェロが残した「泣いた顔は笑った顔より描くのが難しい」の言葉に端を発するとも言われるとか。
ミケランジェロもですがそれまでの絵画、ファン・エイクやボッティチェリやダ・ヴィンチなどの絵画の神々や人物は
無表情が多めでしたから、
その後の時代には表情を描くことに気づいた画家たちが出てきて
カラヴァッジョはその渦中にいたということでしょうか。
また、カラヴァッジョの「ナルキッソス」は自分に恋をしたナルキッソスが
水面に顔を映して口づけようとする瞬間を描いていて、
切なげな表情の研究などもされていたのかな…。
それにしても丘と水面のナルキッソスは両方とも超絶リアルで立体感さえ感じられた。

静物画。
カラヴァッジョの「果物籠を持つ少年」は人物がぼんやりと、静物がくっきりと描かれているのですが
これには前座となるエピソードがあるらしいです。
昔、ゼウクシスというギリシャの画家がブドウを持った少年の絵を描いたところ
小鳥が本物と間違えてついばみに飛んできたらゼウクシスは喜ぶどころか、
「人物も見事に描いていれば小鳥は怯えてついばむことはなかったのに」と落胆したとのこと。
カラヴァッジョが人物をくっきりさせなかったのはそういう訳ではないか、とキャプションにありました。
もうひとつ、「バッカス」も美しかったです。
画集で何度も見てるけ左下のガラス器に画家の顔がうっすら映ってるの初めて気づいたよ!
バッカスという神様ではなくモデルと画家を意識してしまうな…^^;
ちなみにモデルになったのは当時カラヴァッジョが出入りしていた枢機卿の家にいた子で
枢機卿はメディチ家あたりに贈り物として差しだしたらしい。
このバッカスはヴェネチアングラスを差しだしながら帯を解いていて、
キャプションでは「果物やワインばかりではなく自分自身をも見る者に差しだしているようだ」
みたいなことが書いてあって、ちょっとこれ書いた学芸員さんと固い握手をしたくなった。

肖像画。
パリオーネの「彼の肖像画はどんな画家の歴史画よりも高値で取引された」との言葉どおり、
カラヴァッジョ「マッフェオ・バルベリーニの肖像」は今回出品の中でも存在感がありました。
モデルを写実的に活かす手法をよく知って実践できる力があったのだと思う。
また、作者は不明ですがカラヴァッジョの死後に描かれたという本人の肖像画がありまして
たぶん「カラヴァッジョの肖像といえばこれ」とよく紹介されるオッタヴィオ・レオーニの素描から
ヒントを得ているような構図とタッチ。
カラヴァッジョの風貌を再現していますが、
この絵を描く際のモデルになった人はマルタ騎士団の騎士であることが
名前を記したカルトゥーシュから覗く白十字からわかるそうです。
誰かの肖像画を描くときは別に本人が画家の前でモデルにならなくてもいいんだよね~。
パリオーネの自画像はイエス・キリスト騎士団に入団した際に描いたもので
ふつう画家といえばパレットや筆を持った姿で自画像を描くけど
パリオーネはそういうアイテムを全排除して騎士っぽく制服姿にしたらしくて笑ってしまった。

光の表現。
マンフレーティ「キリストの捕縛」はカラヴァッジョの同タイトルの構図を反転させて描いてるし
ジェンティレスキの「スピネットを弾く聖カエキリア」はそんなに光のコントラストはくっきりしてないけど
明るくて柔らかな色彩がきれいであたたかい雰囲気の絵だし、
ホルンホルストの「キリストの降誕」は赤ん坊が発光することで周囲が照らされていて
人々の顔がほんのり赤くなっているし、
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの「煙草を吸う男」の立体感はカラヴァッジョほどじゃないですが
炎の温度と揺らめく光のコントラストが伝わってくる。
そんな中でカラヴァッジョの「エマオの晩餐」はやっぱり立体感が強烈ですな…
キャンバスの中に空間があって部屋がどこまでも続いているような錯覚を覚えました。

斬首も表情と同じようによく描かれたテーマで、
筆頭が例によってカラヴァッジョの「メドゥーサ」なわけですが。
この作品はキャンバスではなく丸みを帯びた陶器にくわっと口を開けた血まみれの顔がいて
まるでペルセウスがついさっきまで盾として使っていたかのような印象。
赤外線で調査したところ3度の描き直しがみられるそうです。
カラヴァッジョで首の絵といえばボルケーゼ美術館所蔵の「ゴリアテの首を持つダヴィデ」ですが
カラヴァッジェスキたちもこのテーマはよく描いたらしく、
シモン・ヴーエやグエルチーノなどはカラヴァッジョの絵を明らかに意識した表情のダヴィデを描いてる。
かと思えば、ボルジャンニみたいに2人の体格差をはっきり出したうえで
凶暴な表情でゴリアテの首を斬るダヴィデを描いた画家もいますね。

聖母と聖人の表現。
カラヴァッジョは洗礼者ヨハネを何枚も描いていますが
今回のコルシーニ宮国立古典美術館からやって来た「洗礼者ヨハネ」は
個人的にわたしが彼のヨハネの中でもっとも美しいと思っていたので
本物を見られてよかったです☆
調査によるとヨハネの側には小羊がいたそうですが消されたっぽくて、
だからかわかりませんが隣の帰属「仔羊の世話をする洗礼者ヨハネ」にはかわいい羊ちゃんがいました。
世界初公開ということで海外メディアも取材に来たらしい「法悦のマグダラのマリア」は
とにかく美しくて異彩というか異光というか、何かを放っている。ように見える。
カラヴァッジョが人を殺して逃亡中に描いたとされ2014年に真筆と確認されたばかりで、
「キアイアにある仰向けのマリアをボルケーゼ枢機卿のために保管されるべし」という内容のメモも
(いつ書かれたものかは不明ですが)ついていたとのことで
しかるべき時までキアイア地区カラヴァッジョ侯爵夫人の家に保管されていたものらしい。
また、ヴァラッロの「長崎におけるフランシスコ会福者たちの殉教」という
1597年の豊臣秀吉による迫害と殉教を描いた絵もありました。
1627年に殉教者たちが福者として列福されると関連書籍や絵画がどどどっと作られたらしい。
タイトルに長崎とありますが人物たちはほとんど西洋風に描かれていて
唯一、左下にいる赤いターバンの人が海賊というか水軍っぽくてアジアっぽい気がした。

最後にあった「エッケ・ホモ」2枚。
捕らえられたキリストが公衆の前に引き出されたとき、
総督ピラトが「エッケ・ホモ(Ecce Homo:この人を見よ)」と叫んだエピソードの絵画化です。
カラヴァッジョとチゴリによる絵が展示されていまして、
カラヴァッジョのキリストはあくまで静かに目を閉じているのに対して
チゴリのキリストは割と絶望しきっている様子が伝わってきました。
ちなみにこれらはローマのマッシミ枢機卿がカラヴァッジョ・チゴリ・パッシジャーノの3人に
同じ主題の絵を描かせて競わせ、優勝したのがチゴリという話がかつてあったらしいのですが
現在は作り話ではないかとの見方が強いようです。

同時代史料もいくつか。
カラヴァッジョの苛烈な人柄と犯罪者としての面は割と有名ですけども、
改めて資料で見ると事実だったんだなと実感がわきます。
(どれも400年近く前の資料でインクがにじんでいるのと、イタリア語がまったく読めないのとで
添えられていた日本語訳が頼りでしたけども)
2011年に初公開されたペッレグリーニの証言(1597年7月)はカラヴァッジョの風貌について
「見た目28歳くらい(実際はこのとき26歳)。がっしりした中年の男。色白でも浅黒でもない。あごに髭。
身なりはきちんとしているときもあれば、そうでないときもある」と述べています。
ローマの食堂でバターと油で焼いたアーティチョーク(花菜類)を各4皿ずつ注文したカラヴァッジョが
店員のオステリア・デル・モーロにどっちがどっちか聞いたところ、
「匂いを嗅げばわかるだろ」と言われカチンときて皿を投げつけた1604年4月の事件や
1598年5月と1605年5月に刀剣の不法所持で逮捕された事件の記録なども。
(日本の銃刀法違反みたいなものかな?)
当時は刀剣を持つにあたり認可証が必要だったのがカラヴァッジョは持っていなかったらしく
デルモンテ枢機卿に仕える者だから、などと言って釈放されたりしていたそうです。
(てか午後9:30はともかく午前2時に刀剣持って夜の街をウロウロしてる画家とかどうなんですか)
ただ、1604年5月のアトリエの賃貸契約の際は
巨大な祭壇画の注文がきていたため部屋の天井を一部ぶち抜きたいと大家さんに申し出て
契約満了日までに元に戻すことを条件に借りていたりして(元に戻したかは不明)、
当時は窓からの採光に頼っていたらしいなど芸術家としての一面がわかる資料も。
ちょっとおもしろかったのが1603年9月のパリオーネ裁判の記録。
ヴィレントーモについて問われたカラヴァッジョが
「上手に事をなす者。画家でいえば上手に絵を描いて自然を模倣する者」と証言したり
「チェーザリ、パリオーネ、ジェンティレスキらは自分に話しかけて来ないから友人ではない、
他の者は付き合いもあります」とか言ってて
おお…ジェンティレスキの立場…!ってなった。


こことかこことか、他にも折に触れて書いていますが
わたしは例のダヴィデとゴリアテの絵を見た瞬間に
それまで物語に漠然と抱いていたイメージと「ヒーローとは何か」という概念を180度ひっくり返されまして。
初めて見たのは学生時代によく通った書店で見かけた画集でしたけど
(その書店はもうありませんが画集はわたしの手元にあります。その場でレジに持って行った)、
巨人vs少年の戦いで少年の勝利に終わった物語はわたしの中で少年を完全に勝利者と認識づけていて
そんな少年が勝利者の顔をしていないこと、打ち取られた首がトロフィーには見えないことに
ものすごいショックを受けたんです。
今思えばマジョリティの面しか見ていなかっただけなのですが
カラヴァッジョは物語を疑ってみる視点を示してくれたのだと、今では感謝しています。
…だからあの絵にはどうしても来日してほしかったのにな~!
たぶん大人の事情があるのでしょう…いつか自力で見に行くしかないのかもしれない。
ついでにどうでもいい余談ですがわたしがマグダラのマリアを初めて知ったのは
映画『ジーザスクライスト・スーパースター』だったりします。
それまではマリアって世界に1人しかいないと勝手に思いこんでて
「鈴木さんだって佐藤さんだっていっぱいいるんだしマリアさんだっていっぱいいるか、そりゃそうか!」と
やっぱりひっくり返されたのでした。
人間生きてるといつの間にか考えが安定しちゃったりしますけど
確かなことって何もないわけで、いつどこで世界はコペルニクス的転回を起こすとも限らないから
できるだけ色んなもの見ておこうとその時思ったのもいい思い出。
…だめだ、ジーザスの話したからあの歌が頭の中を回り出しちゃった!←自己責任
Jesus Christ Superstar~~Do you think you're what they say you are~~?
(ムトゥ踊るマハラジャとかもそうですがタイトル思い出すたびに音楽が脳内に鳴り始めて
カタストロフ状態になる映画ってあるよね)

「カラヴァッジョは時として古今すべての画家に対していかに高名な画家だろうと悪口を浴びせかけた。
なぜなら、彼には自分の作品のみが他すべての画家たちを凌駕すると思われたからである」
(ジョヴァンニ・パリオーネ)


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カラヴァッジョ展の後は、文京区のカフェギャラリー幻さんで行われている
数人の作家さんたちによるグループ展「言葉の国の猫さがし」も見てきました。
地図で調べたときはそんなに遠く感じなかったのですが、
実際歩いてみると30分弱かかってしまってお店に着いたら足がヘロヘロでした。。
上野公園から千駄木まで歩くのは少々無謀だったか…!でも地理が実感できたのはよかった。
店内に散らばっている「ことば猫」を探して文章を完成させると小さなプレゼントがいただけたり
狐おみくじ引いたり楽しかったです。

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店内を一冊の大きな本の中に見立てて、言葉に関する展示や作品販売が行われています。
螺旋病院さんの「書物の成分」と連使さんの作品「一文字世界構築」、
シャンデリアと壁にかかる紙と流れるように吊るされた言葉たち。紙と言葉の雨。
こんな雨ならいつまででも打たれていたい。

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言葉の小さなおうち。ランプのような物に火をともしたら文字の影ができるのかなあ、なんて。

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神棚にはどこかで見たことのあるストラップの人がいた(笑)。ウチニモフタリイルヨ


さて帰ろうと地下鉄に乗って乗換案内をぼんやり検索していたとき、
そういえば今週、新宿高島屋の銘菓百選のところに
「若き匠たちの挑戦(通称:ワカタク)」コーナーが常設されたんじゃなかったっけ…とふと思い出して
急遽行き先を変更して新宿駅へ。
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高島屋地下1階に来たらわー!ほんとにできてる☆
和菓子の老舗や名店の若旦那たちのお菓子コーナーですよ~。

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夕方だったので商品がほとんど残ってなかったのですけど
亀屋芳広さんの春の宴と佐藤屋さんの望月の頃を何とかゲットできてホッ( ´∀ ` ) 。ට
佐藤屋さんのは西行の歌がヒントになっているそうで、
半分に切ったら月に見立てた黄色いあんが出てきました。今は旧暦2月だからぴったりのお菓子だ☆
次回は朝一に行って色々物色したいなァ。

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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

浮世絵は明日へ続いていく。

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千葉市美術館の「初期浮世絵展−版の力・筆の力」に行ってきました。
いつ行こうか迷っているうちにどんどん日にちが過ぎてしまって
気づいたら明日で終わってしまうとのことだったので。
会期末だからかそれなりに混雑していたけどゆっくり鑑賞できてよかったです。

浮世絵の展覧会というと春信とか歌麿とか写楽とか北斎とか国芳とか広重などの展示が多めですが
実は彼らの活躍は1760年以降の主に江戸後期でして。
今回は菱川師宣、杉村治兵衛、鳥居清信、懐月堂安度、奥村政信、西村重長、石川豊信ほか
最後に鈴木春信がくるという、
1600年代~1770年頃、江戸前半期に活躍した浮世絵師たちの作品を紹介する展覧会です。
師宣に始まり春信で終わる展覧会って初めてじゃないかと思ったし、
彼らの作品は三井記念美などがやっていた浮世絵の通史みたいなのでは第一章とかに数点見られるけど
彼らだけで大量に展示して開催する例は現在ではなかなかありませんし
これだけの数をまとめて見られるチャンスがこの先来るかわからないし色んな意味で貴重な機会だな…。
浮世絵の歴史や錦絵の誕生に興味のある方は必見ですよ~ぜひに。(あと1日だけど)

展示室の入口で迎えてくれる「江戸名所遊楽図屏風」や「桜狩遊楽図屏風」(岸田劉生旧蔵!)などは
無款(絵師の署名が入ってない)で誰が描いたのかわかっていないそうです。
源氏物語絵巻や鳥獣戯画、写本、陶器などがそうであるように
江戸時代より前の美術作品というのは基本的に作家の名前を入れません。
(室町時代後期あたりから雪舟や狩野派、俵屋宗達、野々村仁清などがやっと入れ始める)
とはいえ、作家がわからなくても作品の質は特に変わりませんので
「文使い図屏風」の下ろし髪遊女と禿すごくかわいいし
「扇舞図」は割とよくある左向きポーズだったし
"世の中をわたりくらべて今ぞ知るあわのなるとは浪風もなし"と入ってる「美人立姿図」も素敵。
「犬を連れた禿」の犬かわいいし禿の赤い着物あざやかだな~と見ていたら
隣に山東京伝が出版した『骨董集』なる墨摺考証本が一緒に展示されていて
禿と犬の絵が「加藤尾庵の旧蔵で喜多武晴が模写した」という文とともに紹介されていまして
当時この絵がどんな風に受け止められていたかもわかるようになってる。
ちなみにこれら肉筆画はカラフルですが、比べて版画の色数はとても少ないです。
「枕絵図巻」の、部屋に横たわる男女は着物に黄緑色、衿に朱色がわずかにさしてあるのみで
あとは白黒でしたね~。
春信から100年も前の浮世絵はこんな色数が主流だったという知識は
浮世絵クラスタとして一応あったものの、やはり現物を見ると改めて驚きます。
ただ逆に「絵師の頭の中ではどんな色だったのかなあ」と想像したり
未来を知っている者としては「ここからどんどん色が増えていくんだ!」とも思えてワクワクしました。
あと線のメリハリが太くて力強く、墨の色が濃いのも初期浮世絵の特徴かなと。

一般に浮世絵の概念が確立されたのは江戸初期といわれていまして、
それまで無款だった風俗図や屏風制作の際に
かなり早期の段階で名前を記したのが菱川師宣です。
師宣は安房国(千葉県)出身ということもあって出品数にかなり気合いが入ってたよ!
たぶんわたしが今まで1日のうちに見た師宣作品数を軽々と超えて
これを超える機会は来ないんじゃないかというくらい。
「遊里風俗図巻」に入っている師宣の署名が現存する最も古いものだそうで若い頃の作品なのかな。
「酒呑童子:洞窟」で首を落とされた鬼の指は4本だったから茨木童子かもしれないし
酒呑童子:褒賞」で検分されている赤鬼(たぶん酒呑童子)は両目がカッと見開いていて
強さと手強さが垣間見える。
肉筆の「地蔵菩薩像」の神々しくもやさしい表情のお地蔵様と
晩年の作とされる「天人採蓮図」で空を舞いながらゆったりと蓮の花をとっていく飛天の美しさ。
仏画を浮世絵風に描くのもおもしろいな~。
あと、無款ですが師宣作とされる墨摺絵本がたくさんあって
どれも割と浮世絵によくあるポーズだなと思って観ていたのですが
よく考えたらこの人が最初でこれからこのポーズが真似されていくと気づいてヤバイと思ったし
師宣は何か参考にした作品はあるのかしらんとも思った。
『垣下徒然草』は滝沢馬琴の旧蔵とキャプションにあって倒れそうになった。。
あと、師宣の父である菱川吉左衛門「柿本人麿像」の掛軸もありました。
絵かと思ったら刺繍で制作されたとのこと!吉左衛門は縫伯職人だったそうです。

師宣に少し遅れて活躍した杉村治兵衛の「遊女と客」の夜着に
でかでかと鳳凰が描かれていて絵師のデザインと遊女のランクを同時に想像して頭がワヤワヤした。
浄瑠璃十二段草子吹上」は病に倒れた牛若丸の蘇生場面ですが
牛若を龍が守っていたり空には天狗がいたりとファンタジー感たっぷりのおもしろい絵。
(牛若丸は鞍馬天狗から武道を仕込まれた伝説もあるよね)
「遊歩美人図」ですっくと立った女性の凛とした佇まいの美しさに感動していたら
キャプションに「現存する治兵衛唯一の美人図」とあってびっくり。
着物には大きな「杉」「村」の文字と、伊勢物語の芥川の場面がさりげなく描かれていました。
他にも「高安通い」で歌舞伎役者の持つ扇子に落款が入っていたなあ。
師宣にも絵の中に置いた屏風や扇子に落款を入れた作品がいくつかあるけど
治兵衛もそうだったようで…それとも当時の流行だったのかな。

初代鳥居清信は役者絵がとてもうまかったようで
後に続く鳥居派と呼ばれる絵師たちも役者絵で名をはせていきます。
風流四方屏風「市川団十良(團十郎)」の筋肉がとにかくすばらしいし
「生嶋新五郎」はおお…あの絵島生島事件の前はこんなだったのか新五郎…と感慨深くなったり。
清信の弟とも子ともいわれる初代鳥居清倍の「金太郎と熊」や「草摺曳」などを見ていくと
舞台で荒事を演じるムキムキの役者たちが力強く描かれていて気持ちいい~。
こうした描き方は瓢箪足蚯蚓描き(ひょうたんあし みみずがき)といって鳥居派独特の表現です。
瓢箪のように大きな筋肉とミミズのように自由な描線でメリハリをきかせて迫力を出すというもの。
「初代市川団蔵と初代大谷広次の草摺曳」は版木も残っていて展示されていて
摺った後は寛永寺本坊の引き戸に再利用されたらしく表具がついておりました。
ちなみにこの絵と版木が並んで展示されたのは前の東京五輪開催時らしいですから
約50年ぶりの再会ですね!おめでとうおめでとう!!
二代目市川団十郎の虎退治」は縦に長い版画で
團十郎と彼にからみつく虎の躍動感あふれるバトルは血沸き肉躍る。
色がついてるのは團十郎の輪郭と隈取、そして虎の黄色い体のみで
たぶん摺ったんじゃなく筆で1枚1枚色をつけたんだろうな…。
(それにしても展示品に團十郎が多めだったのは成田山を意識してのことでしょうか^^)
「月を眺める遊女」の月のシンプルな表現に感心しながら
着物に目をやると子~亥までの十二支の文字が荒々しくデザインされていて
黄色と赤しかついてないんだけど他の色がついたらどんなに素敵だろうと思いました。
あと無款だけど鳥居派とされる肉筆画「無間の鐘図」で
手水鉢から水しぶきが噴水のように上がっているのと
天からバラバラと降ってくる小判に女の髪がざわっ!って揺れててすごい絵だなと思った。
(無間の鐘は手水鉢を鐘に見立て柄杓で突くと空から小判が降ってくるという浄瑠璃の趣向)

懐月堂派はほぼ肉筆画の展示、彼らはピンの美人図を得意とした集団でした。
安度の「立美人図」を筆頭に見事な着物をまとった女性が立っている掛軸がズラリと並んでるのは壮観。
さっきまで白黒中心の版画ばかり見ていたせいか
展示室に入ったとたん一気に華やかな空間が広がってて叫びそうになったよ(笑)。
ああ下ろし髪が、微妙な後ろ向きが、その振り返りポーズがっ!!
懐月堂派の美人図はいくつも見ているはずなのにこれだけの数の絵に囲まれるとドキドキしてしまう~。
ちゃっかり英一蝶の「立美人図」も混ざってて、少ない色数ですが襟と裾の赤色が目を引きます。
奥村政信の浮絵もひさびさに見たけど、見るたびに面白さが増していく気がする。
特に「朝鮮人行列」の賑やかさと奥行きのハンパなさ、
「両国橋夕涼見大浮絵」も似たようなモチーフはよく見ますが政信はとにかく書きこみがすごい。
風雅火鉢無間鐘浮絵根元」はさっき鳥居派の絵にもありましたが
これはまた別ヴァージョンのようで、
遊女が店の1階で手水鉢をたたくと2階の客が小判を降らした、というお芝居の一幕を描いたもの。
「武者絵尽」がおもしろくて、戦う佐藤忠信や巴御前、曽我兄弟のバトルや文覚の前に出現した不動、
ムカデ退治を俵藤太に依頼する龍神、羅生門を訪ねる渡辺綱と鬼の後ろ姿など躍動感あふれる場面が。
男の頭をむんずとつかんだ紅葉狩の鬼は白黒でも迫力満点、
もうこれ全部フルカラーで彩色して売ってほしいよー!
「風雅七福神浮絵根元」は人々による七福神コスプレ大会みたいになってて髪型も服装も当世風。
当世風といえば、「源氏さかき」とか「源氏末摘花」など、光源氏を当世風に描いた絵も。
浮世源氏須磨」の、文机に紙と硯を置いて外を眺める構図は石山寺の紫式部図にも通じますね。
ちなみに「浮世須磨」は光源氏を、「浮世つれづれ草」は兼好をそれぞれ女性に置き換えていて
江戸時代始まってるなーと思った。

で。
この辺りまでくると師宣登場から約100年が経過していますから
それまで色つけが部分的だった版画が徐々に全体的な彩色が施されるようになります。
鳥居清広の「娘よこぶへ 中村富十良」は道成寺の清姫を演じる富十郎の絵ですが
着物だけではなく花や鐘や背景にも色がついて立体感が出てきたなあと思う。
また石川豊信に代表されるように絵柄がかわいくなってきます。
「相傘三幅対」は男女の相合傘を3種類描いていますがみんなキュートでかわいい、
「佐野川市松と瀬川菊之丞の相合傘」役者同士の相合傘ー!
豊信「見立琴碁書画」や重長「子ども遊び」には学ぶ子どもたちや遊ぶ子どもたちが描かれていて
みんな楽しそうだし幸せそう。
豊信の師・西村重長の「関羽と美人」は1743年の絵暦で関羽が女性に字を教えてるっぽいのですが
関羽さん青龍偃月刀は出しっぱなしじゃなく仕舞ったほうがいいよ~などと突っ込んでしまった(笑)。
(たぶんこれが重長のユーモア)
重長は肉筆画をほとんど遺していないそうで
今回、唯一の肉筆といわれる「海上郡浄國寺事実」が見られたのは良かったです。
現在の銚子市にある浄国寺に起きた出来事を文と絵で描いたもので
荒廃してしまったお寺をわずか1年で復活させたことなどが書いてありました。
浮絵海士龍宮玉取之図」は藤原鎌足が龍に盗まれた興福寺の玉をとりもどす図で
竜宮城の使いは頭に魚とかタコとかくくりつけていておもしろかったし
鎌足さんは上半身裸で頭はチョンマゲでした、当世風の鎌足なのですな。
また、川又常行の「草刈山路」や「阿古屋の三曲図」なども当世風で柔らかな表情の人物たちで
(阿古屋は歌舞伎にもなってて現在できるのは玉三郎さんだけという難曲だったと思う)
だんだん春信が見えてきた気がする…。

そして、ついに、キター!鈴木春信コーナーです☆
はん七 坂東彦三郎」うおおお本物初めて見た!!
まだ駆け出しだった頃の春信は2色程度の役者絵を描いて修行してたんだよね…!
他にも「風流やつし七小町 雨ごい」や「〃関でら」などもまだ紅摺絵だった頃の作品ですし
鳥居清広の「白たへ 中村富十郎」の構図と春信の「見立鉢の木」の構図が同じというところから
春信にもこんな時代があったぞ、というのを見せておいてからの
錦 絵 登 場。
絵暦交換会が流行した頃にパトロンたちから「もっとカラフルなの作って」という注文を受け制作された
錦絵と呼ばれるフルカラー版画がついにきたー!!+゚+。:.゚(*゚Д゚*).:。+゚ +゚
もうね、ほんと、今日は版画は白黒と赤と黄と緑しか見てないから
春信のフルカラーに涙出そうになりましたよ。。
春信のパトロン、大久保巨川の落款が入った「坐舖八景 台子夜雨」は絵暦なので私的作品ですが
隣の同タイトルは絵暦と巨川の名前を削って一般販売されたものですね。
子どもが女性の髪を結っていて、女性は気持ちよさそうに目を閉じている図がやさしい^^
鞠と男女」は若衆が塀に投げ入れた鞠を女性が拾って手渡している図で
春信のボーイミーツガールはまじ少女漫画。
それから、春信の師である西川祐信の作品も「絵本倭比事」がありました!
ちょうど開かれているページの男女の構図を春信はそっくりそのまま「関でら」に写し取っていて、
でも祐信が男を描いた場所に春信は子どもを描いていて
これは関寺小町の中の「稚児につられて小町が踊り出す」のを意識しているのではないか、とのこと。


「さあ、ショーの始まりだぜ…!」By怪盗キッド
ここからまたどんどん流行の絵柄が変わって技術が進歩して価格も安くなって改革で統制されたりして
歌麿や北斎や国芳や広重が登場してくるのだと思うと胸が熱くなりましたよ。
浮世絵の歴史はまだ始まったばかりだ…!!
千葉市美術館は浮世絵の展覧会に定評がありますがまさかこの内容をやってくれるとは思わなかった、
チャレンジしてくださった関係者の皆様に厚く感謝します、ありがとうございます!


それから、所蔵品展「新寄贈寄託作品展−花づくし」も同時開催されていて
『近世畸人伝』があったのですが池大雅・玉瀾のページがちょうど開かれていたのは
不意打ち過ぎて声出そうになりました。
ふええ江戸時代一の萌え夫妻きちゃったよ…
2人とも目が「-」で表現されてて大雅の後ろにある寿老人の絵も目が「-」で
もうこの夫妻の周囲って当時からこんなイメージなのかなと思いました。
デジタルアーカイブで読んだことはあっても一度冊子の本物見てみたかったのでうれしい。
あと写楽の役者絵の版下絵にもびっくり、しかも2枚も!
全身図が描かれてるから活躍後期の頃の下書きでしょうか、みんな等身めっちゃ高かった。
伊藤小坡の「立美人図」の優雅さと雅さにも感動、
着物のあんな透明感一体どうやって出すんですか…教えを請いたい…。

千葉市美ほんと侮れないなあ!
おかげで1時間くらいかな~と軽く考えていたのに会場を出たら2時間半経過していて
予定を大幅にオーバーしておりました。楽しかったからこれでいいのだ。

magurodon.jpg
ランチは美術館のレストランで企画展限定メニューのまぐろ丼をいただきました。
骨の近くから削ったお肉だそうでむちゃくちゃ柔らかくておいしかった…!
かぼちゃのスープはとても温まりました。


あと、千葉へは日暮里駅経由で行くのですがそんなに何度も行ってるわけではないので
ずっとスルーしてしまっていたミッションを本日やっと達成。
nyappori.jpg
日暮里駅のゆるキャラ「にゃっぽり」のポスター!うへへかわいい(〃▽〃)。
駅員さんが考案したらしい、とてもゆるいデザイン。
日暮里駅のある谷中銀座周辺は猫がたくさん住んでいるので
にゃっぽりはその代表のようなものなのでしょう。

改札を出ると看板とか配布してる谷中地図とかにいっぱいいるらしいんですが、
わたしは改札内で乗換えせねばなりませんのでまだあまり出会えてません…。
駅構内のエキュートの雑貨屋さんにはにゃっぽりのハンカチや手ぬぐいも売ってるよ!

mariaju1.jpg
そんなエキュートのパティスリーマリアージュで
猫の日に買いそびれたネコドーナツをゲット☆
アン、ドゥ、トルワと3種類の三毛猫、白猫、黒猫のチョコレートドーナツですぞ~。
とんがり猫耳はかじったらアーモンドがでてきました。

mariaju2.jpg
ハッ!!!

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

衣服でアブラカダブラ。

立春が過ぎて暦の上ではもう春です。
旧暦ではお正月にあたるということで新しい年の始まりでもあります。ハッピーニューイヤー☆
日もだいぶ伸びてきたし、早くあったかくなりませんかね。寒いよー!

reokashi1.jpg
すっかり楽しくなって春らしいお菓子を色々ゲットしてきました。
くらづくり本舗からは春告鳥(うぐいす)と雪解け、
おまけにバレンタイン期間限定のさいたまイマージュ。
雪解けのお菓子は石のくぼみに水がたまってるデザインなのがたまんない。

reokashi2.jpg
かんだ和彩の梅一輪とふきのとう、バレンタインの生チョコわらび餅。
どら焼きはおまけしてくれました^^
ふきのとうには朝つゆのゼリーがふりかけてあるし梅には金箔が散らしてある☆

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花扇さんからは寒水仙と春告鳥。
ラガーマン最中はおまけしてくださいました!ありがとうございます(´▽`)

そういえば立春大福をゲットし損ねたので来年は買わねば~。
和菓子屋さんにはそろそろ椿餅や桜餅、うぐいす餅などが並び始めますね。楽しみです。

春たちける日よめる
「袖ひちてむすびし水のこほれるを 春立つ今日の風やとくらむ」紀貫之
(古今和歌集巻一・二番)


bunmayoke1.jpg
先日、東博と科博に行った日の帰りに文化学園服飾博物館にも初めて行ってきました。
入口に立つ地球儀のオブジェかっこいい。

bunmatoke2.jpg
2月中旬まで「魔除け-身にまとう祈るこころ」展を開催中。
アジアやアフリカ地域における服飾から魔除けの役割を紹介する展覧会です。
コンセプトを見てソワッ…!となって行きましたら
想像以上の展示数と解説があり会場を2回もグルグル回って閉館間際まで滞在しました。
衣服の模様や刺繍、アクセサリーや化粧が
病気や死などから身を守る意味を持つ文化があるという知識は前々からあったものの、
たくさんの現物をまとめて見ると改めて人々の祈りや願いに圧倒される。

日本の魔除けの風習コーナーでは懸守(護符を入れて首から下げる)や守袋(護符を入れた小袋)が
絵巻物や浮世絵の用例とともに紹介されていました。
浮世絵などによく見られる、子どもが腰から下げている小さな袋は守巾着といって
守護札と迷子札(江戸時代は迷子が多かったので身元を記した)が入っているとかで
展示されていた20世紀初頭の守巾着(亀甲模様)は着物の帯に下げていたそうな。
着物における魔除けは文様や模様などが中心で
長寿や子だくさんの人が着ていた着物の切れ端を譲ってもらい縫い合わせて袖無羽織をつくったり
子ども用の着物に麻の葉つなぎや亀甲つなぎの模様がついてたり
(麻は成長が早く丈夫なため縁起の良い模様とされていました)、
籠目模様のねんねこ半纏や、虎・龍・稲妻のトリプル魔除け模様な男子着物があったり
矢絣も破魔矢に通じるため魔除けの意味があるとして
はいからさんでもおなじみの女学生たちの着物に使われたそうな。

女学校のお裁縫の授業で使われた「飾り縫い帳」は背紋の一覧表のページが開かれていました。
(背紋は子どもの背中を守るように親が着物の背に縫い付ける紋のこと)、
初めて知ったのですが、縫い目そのものも魔除けになるそうですね…
大人用の着物には背に1本縫い目が通っていますが、子ども用にはないので
背中から魔が入らないようにあえて縫い目をつけ糸を垂らしたのだそうです。→こちら(参考画像)
背守といって、着物の背中にちくちく縫って余った糸をだらんと垂らすのですが
(女の子用は右に垂らし、男の子用は左に垂らします)、
長ければ長いほど長寿の祈りになるらしい。
また、1879年刊行の『裁縫読本』には「背守は五色の色にて縫う」などと指示があるそうです。
会場には五色の背守がついた着物もあって、きれいな縫い目でした。

アイヌの衣装についているアップリケの模様にもひとつひとつ名前があって
「モレウ」「シク」などは目の意味を持つそうです。
服の模様で目を表現することで魔をにらみつけ退散させる狙いがあるのですね。
展示されていたアットゥシ(樹皮の衣)は「シクウレンモレウ文」という、
3つの文様をミックスした最強文様がデザインされていた。。
あれはなんて言えばいいのか…妙に中毒性がありましたな^^;
あと模様の位置にも意味があって、たとえば袖や衿、着物の裾などは
魔物が入りやすいと考えられていたため、
切伏せの角は必ずトゲの形にするとか特に厳重に模様がつけられたそうです。
青森のこぎん刺しにも、服の肩にや背中に魔除けや蛇よけのための「轡つなぎ文(逆さこぶ)」などを
刺すものがあるそうな。

アジアにおける虎と五毒の展示も。
虎は中国では西の守護神ともいわれ、強さの象徴でもありますが
五毒(サソリ・百足・蜘蛛・蟇蛙・蛇)を食べるとされる生き物でもあるため、
蛇やカエルが活発になる5月頃には虎模様の服や虎グッズを身につける風習があるそうです。
足先が虎の顔になってるブーツや、ぺったんこの靴、
子どもは虎の帽子を被るなどして虎に化けて魔をやり過ごすとされました。
ご当地の人たちの必死さはわかるんだけど、猫耳ならぬ虎耳ファッションを想像して萌えてしまって
その場からしばらく動けなかった←
あと、毒を以て毒を制すことからあえて五毒が刺繍された上着を着ることもあったらしくて
五毒が刺繍されてるベストのどぎつい色彩にびっくりした。
他にも赤をたくさん使われた中国の婚礼衣装があったり(赤は魔除けの色とされます)、
台湾のタイヤル族は背に祖先の目とされる菱形の模様をつけたりするなど
目で追い払う風習も各地に見られます。
モロッコの黒ケープは背中に丸く大きな赤色が使われてて大きな目が描いてあるし
コンゴの網目模様には「フクロウの目」なるものがあるらしい。
背中に目がついていたらいいなーという思想は万国共通、どこにでも見かける気がします。
わたしも夜道を歩いたり部屋にひとりでいる時などにふと感じる気持ちだし…
できるだけでっかくて遠目も夜目もきくといいな…なんて。

それにしても人々が服の模様に託した思いときたら、まるで魔との鬼ごっこです。
人々はいかに逃げるか、魔はいかに追うかの思想が常に問われている気がする。
迷路がデザインされているタイのデーン族の肩掛けは
魔物が本人のからだに辿り着けないようにとの工夫らしいし、
サーン・ホン(頭が象で体が鳥の神)など神様の絵が描いてあるのもある。
インドネシアの、首狩りの風習があった民族の肩掛けは
ガイコツを木にかける首架の模様がついててぞっとしたし、
パキスタンのギラギラしたブラウスは光で魔を撃退する目的があるみたいだし、
ナイジェリアの男性コートにはタンバ(王の太鼓)模様と2本のナイフ模様があって
首長の座をあらわすと同時に魔を跳ね返すと考えられているようです。
インドの家の入口につけるカーテンのような仕切りにも魔除けの意味があって
ガネーシャや動物たちなどを描いてできるだけ賑やかに見せておくとか。
ウズベキスタンのパランジャ(被衣)はマネキンが目深に被っててもうどこが顔だかわからないレベル、
チラッと見える裏地には派手な模様があって、これで悪霊を驚かすそうです。
(驚かすと逃げていく、というとまるで野生動物みたいだな…^^;)
日本でも着物の裏地におめでたい文様をつけたりしますけど
アジアも裏地に魔除けをほどこす文化があるんだな~。
「目のさめるような色」という表現がありますが、ビビッドな色遣いで構築されたファッションは
街中で見ても目を引くと同時に強さを感じるものでもあります。
そしていつも思うのが制作者…これらをデザインして作り上げた人たちの視点ですね、
細かく丁寧な仕事ぶり。

アクセサリーによる魔除け。
ヒマラヤ山脈のラッダク族が身につける頭飾りや首飾りに珊瑚やトルコ石が使われているのは
石そのものに力があるとされた現地の考え方によるもの。
他にも、牙の魔除けということでイノシシの牙や歯を首飾りやブレスレットにつけたり
巻貝が魔を封じ込めると考えられているフィリピンでは飾り帯に巻貝をじゃらじゃら下げたり
インドのラバリ族は鏡の破片をつけて魔除けにしたり(きらめきが魔を跳ね返す)、
トルコ石やガラスなど青を連想させる石は清浄を連想させアクセサリーに使われたとか
様々なパターンがあります。
銀貨や金属をどっさりつけてじゃらじゃら音を鳴らすことで魔除けにする風習は
日本の鳴弦にも通じるような気がしますが、
イエメンの鈴だらけベルトは見るからに重たそうだったし
ペルーのカンバ族の子守帯は抱っこひものような形で木の実がたくさんついてて
やはりじゃらじゃら鳴る音が魔除けになるそうです。
金属がどっさりついた頭飾りはめちゃくちゃ重たそうですが
これを寝るときも外さない民族がいるとキャプションにあって
意味は違うけどなんだか平安時代の貴族男性みたいだなと思った。
また、世界中の民間伝承にみられる邪視について、トルクメキスタンでは
・羊の角模様のショールをかぶり
・赤い色を身に着け
・額とこめかみに銀の飾りをつける
ことで、対処するそうです。光と音で急所から魔を避けるのですね。

お化粧の魔除け。
パキスタンにおける、目の周りに黒い粉(アンチモニー)をつける風習や
粉を入れておく容器などの化粧道具にも魔除けの模様をほどこしてあるのが
どこまでも手を抜いてなくてそれだけ真剣だったんだと思う。
また、魔除けは人間だけではなくペットや家畜にもほどこされます。
カラフルな色を使い鏡片や貝殻をたくさん使ってある牛用の背掛けは
寺院の牛の置き物にかけて守るのだそうです。
家畜は大事な働き手でもありますから覆面をしたり、額に飾りをつけたりして魔から守るそう。
あ。動物と言えば鳥や動物の文様がつけられたグアテマラの上衣があって
子どもが生まれると守護動物というのが決まる考え方があるそうで
それらを服につけて太陽にかざすとパワーが増幅するらしい。すごい。

道具そのものにも意味がありまして、
・帽子は頭を守るため強い文様や金属をつける。
・肩掛けで服をグルグル覆うのは魔が入り込む隙間を与えないため。
・袖口や裾から魔が侵入しないよう金属ビーズをつける。
・耳飾りや鼻ピアスやエプロンや性器隠しは魔が体の穴から入り込むのを防ぐため。
など、など。
ブルガリアの婚礼衣装の袖や裾に縁取りで刺繍がしてあるのは
縫い目そのものが結界になるという考えからきているというし。
また、ファティマの手や三日月模様、聖書やコーランの言葉を金属に刻んだ護符を持ち歩いたり
ローズマリーやニンニクなど強い香りを放つものを袋に入れて首から下げるなど
お守代わりの道具も展示されてましたな。
あとは女性の長髪について。
日本では美の象徴とされましたが、グアテマラでは霊力があり悪霊から身を守るとされていますね。


魔除けや人々の思いについて具体的に様々に提示されていて夢中でメモしまくって
会場を出たら腕がめっちゃ疲れてました(笑)。
ありとあらゆる方法で魔を避けようとする人々のエネルギーはすさまじいな…。
いつどこから襲ってくるかわからない魔に対してひたすら知恵を絞った服が作られているのを感じるし
文明や産業の発達で服の材質も制作者の腕もどんどん上がっていったんだろうと思ったし
時代や地域ごとに素材や模様が違ったり共通点があってほんとにおもしろい!
オリエンタルでエキゾチックな模様や繊細なデザインの意味、
なぜ作られたのか、どういう背景があり今このモノはここにあるのか考えるのは本当にワクワクします。
よくあるテーマ展示では「○○さんの遺品」「○○さんが作った」「こういう使い方をされた」
「使われている技術は○○」など芸術面や生活面から紹介されるモノが
別の視点で語られる展示は楽しいので行ってよかった!
興味のある方、会期もうすぐですよ~どうぞお早めに。

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ジャンル : 学問・文化・芸術

夜空ノムコウ。

にゃんにゃんの日です!節分が近くてソワソワしています、こんばんはっ☆
はあぁあ今年も鬼に浮気し放題の日がやってくる…!!
昔の風習から現代の流行に至るまで世の中に鬼があふれかえり
大っぴらに話ができる節分は鬼クラスタにとって祭日です。
『おにたのぼうし』とか『鬼のサラリーマン』、『鬼の橋』『鬼さん、どちら』などを南南東を向いて読んで
(恵方巻ならぬ恵方読みです)、
植物図鑑で鬼灯やオニユリ写真見て、カピバラ画像眺めて(カピバラの和名は鬼天竺鼠)、
鬼束ちひろの曲聴いて、Twitterで皆さんがつぶやく鬼の話題を楽しんで
auの雷さま鬼ちゃんのCMをリピートしまくるぞ!テレビでもいっぱい流してください。

そして次の日は立春(=゚ω゚)ノ☆
何だかんだで暖冬はどこかへ消えましたね…早くあったかくならないかな、はーるよこいっ。

tsuina.jpg
鶴屋吉信の節分限定和菓子、追儺「鬼」と「お多福」。
先月から楽しみに待ってましたよ~~買えてほんとにうれしかった(*´∀`*)。
赤鬼かわいい赤鬼!!!(落ち着け)
お多福さんがカオナシですが、かえって色んな顔が想像できていいと思う( ω )ニヤリ

kobunko.jpg
先月末ギリギリにとらやさんでゲットできた「木花文庫」。
梅の焼き印がついた文箱をかたどったお菓子で、外はもちもち中は甘いあんこ、春の予感がいたします。
とてもおいしいのでもう1個買ってくればよかった、来年また販売されるといいな。


先日、東博で小林忠先生の講演会があって聞いてきたのですが、まあいつものことですが
あのかたは江戸美術に対する愛情が本当にやさしくて深いなあと思います。
海外のミュージアムに所蔵される日本美術作品は「美の外交官である」という話題を切り口に
各国の美術館がとても適切に展示・保存してくれているかを語られて
また修復・保存に関する課題についても提示なさいました。
「私の選んだ在外日本美術ベストテン」が探幽、宗達、光琳、抱一、歌麿、若冲、文晁など
見事に江戸絵画しかなかった(笑)。
これからもずっとお元気で江戸美術を語り続けてほしいです。
そして4月から始まる若冲展の混雑を大変心配しておられました…^^;
あまり宣伝しなくても人は来るような気がしますが、総監修を務めるらしいのでそうもいかないのかな。

raikoeyama.jpg
本館も見てきたよ。
もう何度目の再会かわからなくなってますが、「頼光大江山入図大花瓶」の写真をアップします。
東博ブログでも解説されてますけど、とにかくでかくて重たそうだし細部の超絶技巧は惚れそう。
刀剣展示室の童子切安綱と合わせて見ると楽しいよ!

moshi.jpg
藤原定家「申文」(重要文化財)。昇進したいよ~という気持ちをしたためた手紙です。
身内や同僚の経歴も挙げてかなり切実です。がんばれ定家たん。

koduru.jpg
伊藤若冲「松梅孤鶴図」。卵に首と足が生えたみたいなシュールなデザイン。
もう面白すぎて何も言えないんですけど、若冲さんだなあという感じ。

harukoma.jpg
鈴木春信「春駒を舞う二美人」。
片方が馬の頭(カシラ)をつけて舞い、片方が三味線で伴奏する、新年を寿ぐおめでたい踊りです。

hagoromo.jpg
高円宮根付コレクションの部屋の扉が開いていたのでひさびさに鑑賞。
写真は岸一舟「羽衣」(象牙)とアレクサンダー・デルカチェンコ「狐僧」(マンモス牙)。
能楽師のホレボレする造形、狐僧がまとう布のフワフワ感もいいなあ。

shibukawa1.jpg
科博に移動して企画展「渋川春海と江戸時代の天文学者たち」も見てきました~!
江戸人展と同じく、江戸時代の人物や文化を特集する企画展の11回目。
去年が渋川春海没後300年にあたりますので記念の展覧会でもあります。

会場は一部を除き写真撮影可(フラッシュと動画は×)でしたので以下に写真レポを上げます↓
クリックで開きますのでどうぞ☆

続きを読む

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はじまりを寿ぐ。

山種美術館の「ゆかいな若冲・めでたい大観-HAPPYな日本美術」に行ってきました。
今年は伊藤若冲生誕300年なので記念に若冲の名前をタイトルに冠し、
また新年ということでおめでたい絵を集めた展覧会です。
松竹梅、鶴亀、七福神、富士、龍に鯉、干支に笑いまで縁起の良い画題が揃っていて
福をたくさんいただいた気分でした(゚∀゚)☆

どうしても目がいってしまうのが伊藤若冲と河鍋暁斎です!
展示数は少なかったですが存在感がハンパなさすぎた。
若冲の「河豚と蛙の相撲図」、鳥獣戯画みたいな画風のフグとカエルが相撲をとっていて
毒のあるもの同士の取り組みという点でもおもしろいのですが
上に「何日止諍(いつになったら諍いは終わるのか)」という賛が入っていて
若冲の周囲で何かあったときに描かれたものではないか…との説も。
亀図」は3匹の亀がほのぼのと過ごしているし
(亀の甲羅が筋目描きで表現されていてびっくりした)、
伏見人形図」は7体の布袋伏見人形が絵を飛び出してよちよち歩いてきそうなかわいさだし
「海老図」は触角がくるんと巻いてかわいいし
「仔犬に箒図」は子犬のおしりのフワフワモフモフ感がたまらないし
「大根図」はそのまんま大根の絵ですが画面からはみ出しているのがニクいなと。
群鶏図」は六曲一双の屏風にそれぞれ墨一色の鶏がいて
みんなクエスチョンマークみたいな尾羽を振って踊っているかのよう。
「布袋図」は2幅あって、ひとつは布袋のドアップで顔も耳も腹もでっぷり巨大で
胸毛がわしゃわしゃ丸まってておっさんくささ炸裂してた(^^;)。
もうひとつは袋を頭に乗せて踊ってる布袋の全身図で
伏見人形みたいな、とぼけたかわいらしい表情をしてました。
「恵比寿図」「大黒天図」は太いタッチで一気呵成に描かれた印象を受けて
すぐ隣に尾竹竹坡の「大黒天像」があったのですがこちらは細筆で丁寧なタッチで
対照的すぎておもしろかった。

暁斎の「浦島太郎に鶴と亀」は3幅対の作品、
松竹梅を背景に描かれた亀は蓑亀(長生きした亀は甲羅に藻や苔を背負うことから長寿のシンボル)だし
鶴の上半身をよく見ると羽毛まで細かく描きこんであるし
浦島は衣も波も動きがあってかっこいいし、足元の瓢箪もおめでたいしるしだそうです。
同じく暁斎「五月幟図」は赤い鍾馗の幟、こいのぼり、龍柄の太鼓、
そして太鼓の上には雄鶏が羽を広げているとっても豪華な図。
おもしろいのが、二次元のはずの鍾馗から手が伸びて周りをうろつく実態の鬼の首をつかんでいたり
こいのぼりは所謂こいのぼりの柄ではないので一瞬、本物の鯉が空を泳いでいるのかと思ったけど
よく見たら鯉の口にひもがついていて「あ、吹き流しだ…」と二重にびっくりして
暁斎のしかけにまんまと引っかかりました。楽しい!
すぐ隣にあった柴田是真の「円窓鍾馗」も真っ赤に塗りつぶした背景の丸窓から鍾馗が顔を出して
鬼をにらみつけててかっこよかった。

横山大観の「寿図」は象形文字のような寿の字に金色の松竹梅が描いてあるし
小林古径の「松竹梅」は末広がりの扇子にデザイン性の高い文様がすてき。
横山大観・川合玉堂・川端龍子の「松竹梅」は3幅対の掛軸で
大観(当時87歳)が松を、玉堂(当時82歳)が竹を、龍子(当時70歳)が梅を描いた贅沢な合作。
山種美術館初代館長である山崎種二が企画した第1回松竹梅展に出品され、
しかも毎年担当画題を変えてこの後も何度か描かれたらしいです。
おじいちゃんたちパワーありすぎるだろ!(笑)北斎や若冲に並ぶエネルギーやばい。

狩野常信の「七福神図」は七福神を描いた絵巻で
子どもたちと遊ぶ布袋、琵琶を奏でる弁財天、小槌を振ってお菓子を出している大黒天、
蓑亀を連れている寿老人、船に乗って鯛を釣る恵比寿などが生き生きとしていた。
船の籠には鯛がどっさり釣られていました。大漁!めでたい。
狩野一信の「布袋唐子図」は頭に巨大な袋を乗せた布袋が子どもたちと水辺で亀をつかまえている図で
水面に布袋の顔が映ってるのがおもしろいし、
落款に"法橋一信"と書いてあるのが歴代狩野派当主や宗達や光琳を思い出してキュンときました。
下村観山の「寿老人」は威厳たっぷりの肖像画みたいな雰囲気で
歴史上の偉人とかこんな風に描かれてることよくあるよねって感じ。

田崎草雲の「瑞夢(一富士二鷹三茄子)」とか横山大観の「蓬莱図」などもきれいだし
大観の「心神」は富士山を描いていますが
「古い本に富士を心神とよぶ例がある」(1954年5月朝日新聞)との本人の言葉からつけたタイトルだそう。
小林古径の「不尽」は真っ青な色の富士山が印象的。
川端龍子の「鯉」は2幅対の掛軸で、5匹の鯉のうち1匹だけが緋鯉の色なのは
おめでたい色である赤を意識しているのでしょうか。
柴田是真「墨林筆哥」は色紙に蒔絵で描かれているそうで
琵琶を弾くカエルちゃんかわいいし聞き入るカエルちゃんもかわいい。
都路華香「寒山拾得」は2人ともとびきりの笑顔がすてき!
石田武「子猿」は色紙に描かれていて
木の上で枝をかじる子猿ちゃんの横向き姿がとってもキュート!
松尾敏男の「手長猿」は、「橋本関雪の同画題の絵の模写を40代にしてようやく挑戦し
結果は(本人的には)惨敗だった」という武勇伝つきの絵です。
わたしのような素人にはまったくそうは見えなかったのですが、絵の世界は深いですな…。

伊東深水の「春」はないしょ話をする着物姿の女性たちのアップで
着物が、大柄の市松模様に花模様を散らしていて最高にモダンでした!着てみたい~。
川崎小虎の「春の訪れ」は佐保姫伝説に着想を得た屏風絵で
透けるような白装束の天女がふたり、ひとりは竪琴を、ひとりは花束を持って空を飛んでいて
2人が通り過ぎた場所には春の花が咲き乱れているというたいへん美しい作品☆
これから2人が飛んでいく先(左隻)の花も、これから咲くんだろうなと思うとわくわくしました!
(ちなみに川崎さんは「小さい頃に忍術で天翔けることを夢に見た」少年だったそうな)


yukajaku.jpg
展覧会特性お菓子から、
ことほぎ(河鍋暁斎「浦島太郎に鶴と亀」がモチーフ)と、招福(伊藤若冲「布袋図」がモチーフ)です。
山種さんはいつも展示作品に合わせて素敵なお菓子を作ってくれます^^
中味はそれぞれ柚子あんと栗あんだよ~おいしかった!


2016hana1.jpg
花扇さんの富士山とみかんもゲットしてきたよ。

2016hana2.jpg
先月はみかんの皮を適当にむいてしまったので、今回は和菓子ナイフでちゃんと切りました。
いつ見てもホレボレする造形美…。

2016hana3.jpg
味もすっきりしつこくなくておいしいんです。
来月は別のお菓子に変わるそうで、また来年作ってくれたらいいな。


あ。昨日今日とセンター試験でしたが雪は回避されたね!受験生よかったね!と思ってたら
今夜から大雪だそうで…。
天気予報をよく見ながら行動することにします。こたつで丸くなりたい。

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Author:ゆさ
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歴史やアートも溺愛中
*twitterにも出没なう。→こちら

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