
蟲師音楽夜話『蟲音・奏』に行ってきました。
企画者でありアニメ「蟲師」の音楽を担当された増田俊郎氏による生音ライブ&トークと
声優さん4人による「日蝕む翳」の朗読を本編映像とともに楽しむイベントです。
増田さんご本人も朗読会か音楽会かライブかイベントか演劇会なのかまったく定義できないという、
でもたいへんすばらしい時間でした。
半年前に開催されるかもって噂を聞いてから待って待って、先月ついに情報が解禁されたときは
びっくりしてうわーってパソコンの前で声出たよ!企画してくれてありがとうございました。

会場はDDD青山クロスシアター。
増田さん曰く「色んな人の協力と蟲のせいで」奇跡的に1週間だけ借りることができたそうな。
(2020年まで都内のイベント会場はどこもいっぱいらしい)

お祝いのお花も。
「信長の忍び」からもお祝いが来ていて、えっ何でだろうと思ってぐぐったら
増田さんがアニメの音楽を担当されているらしい。知らなかった。。

アニメ製作委員会からのお花は何だかおごそかな雰囲気のライトが当たっていた。
会場は200人ほどのキャパでそんなに広くはなく、ステージと客席の距離も近かったです。
わたしは目の前が通路で、後ろが音響調整さんの席という恵まれたお席で楽しむことができました。
ステージにはシンセサイザーの他にごちゃごちゃと打楽器などが置かれ、
簾と草に囲まれて蟲師感を演出。
開演前によくあるご注意的なアナウンスを声優さんたちがキャラクターになりきってやってくれたんですけど
淡幽やギンコの声で携帯電話とかスマートフォンとか言われるのおもしろくて笑ってしまった。
「おまえさんたち、電源は切ってくれよ」「でないと、蟲が寄ってきちまう」ワロタ。
こんな味わい深い「携帯電話の電源をお切りください」アナウンスもないと思う。
開演はチリーン…という鈴の音から。
ふわりと客席の通路に現れたのはぬいの姿をイメージしたという土井美加さん!
白い着物の裾をひきずりながら通路からステージに向かってゆっくりゆっくり歩いて
チリーン…と鈴を鳴らすときは一度止まります。
一度わたしの目の前で止まってくれて、鈴を鳴らしてくれたの偶然とはいえ超うれしかったし
その時気づいたんですけど、何と土井さん、裸足でいらした!
すごいよ姿形からマジでぬいさんだよ…。
そうしてゆっくりステージに上がった土井さんが鈴を床に置いて語るのは
例の「およそ遠しとされしもの…」のナレーション。きましたわーーー!!!
この声を聞かないと蟲師は始まらない☆
そのまま始まったのが「日蝕む翳」の朗読。
中野裕斗さん、うえだゆうじさん、小林愛さんが代わる代わるご登場され
背面のスクリーンに映し出される本編映像に合わせてセリフを音読してゆかれます。
ご自分の出番のときだけステージにいらっしゃる感じなので
キャラクターが画面からいなくなるときは椅子から立って舞台袖に移動されるんですが
化野先生とギンコのかけあいの際にはうえださんが体をひねって中野さんに大声出したり
ギンコと淡幽のシーンでは隣の中野さんを小林さんがチラッと見たりして
ものすごくライブ感があったし、
タイミングよくセリフ言ったりするときはアイコンタクトなどもなさっていて
それらが目の前で行われているということにむちゃくちゃテンションあがりました。
そして、その朗読に重ねられる音楽のすばらしさ。
特にメインテーマが奏でられる際の「きましたわーーー!!」感はやばかったし
アニメでは雰囲気のため抑え気味だったBGMがライブでは会場全体に思い切り響きわたる音量で
全身がびりびりするほどの響きを感じました。
何よりあの音の数で演奏者が増田さん含め3人しかいないのも驚き!
シンセを奏でながら隣の楽器をたたく増田さんも、いっぱい並んだ打楽器を丁寧に鳴らす高杉登さんも
キーボードとパーカスを行ったり来たりする梶田陽子さんもすばらしかった。
びっくりしたのがシンバルをバイオリンの弓でひいた音でした。蟲が飛ぶ音ってあれだったんだ!
このてのライブで一番テンションあがるのは劇中に使われた楽器がわかることなんですよ…
あの音をあの楽器で出していたのかと。
朗読の後はトークです☆
司会&進行の増田俊郎さんを始め、声優さん4人もステージにあがり思い思いにお話されて
とても楽しい時間でした。
増田さんとうえださんが一番しゃべっていて
(楽器の説明時にうえださんに鳴らしてもらって増田さんが説明してたんだけど
説明の方が長くなってしまって途中からうえださんが放置されていたのと、
質問コーナーで「じゃあ最後に答えて」と言う増田さんに「オチかよ!」と突っ込んでたの笑ってしまった)、
たまに小林さんが突っ込んで土井さんが微笑んでいて
途中から中野さんが完全にスイッチオフされていたのおもしろかった。
というか増田さんてすごくトーク上手いですね…!
「蟲師の音楽はよく眠れるんですよ、自分が作った感じがしなくて」とか言い出して何事…?と思いました。
赤ちゃんに聴かせたら泣きやみましたとか、ペットの犬の鳴き癖が治りましたとか
奇跡のようなお手紙をいただいたこともあるそうです。
増田さんは作曲するとき音の形が見えるらしいのですが、蟲師は特にそれが顕著で
それができるようになったのはここ数年の間だそうですが…
「忘れもしない、新宿の中央線で音が聞こえすぎてしゃがみこんでしばらく外出できなくなった時期があった。
落ち着いてからはどの音をどこにはめれば一番よいかがわかるようになっていました」とのことで、
オーケストラの指揮者がずれた音をピンポイントで見つけるみたいな感じですと説明されていました。
あとふつう、アニメや映画の音楽は作曲担当がひととおり制作して
制作側がシーンの尺に合わせて編集するものなんですけど、
蟲師の場合は何となく作って出したら編集の必要がまったくないくらい尺にぴったり合っていて
「長さ言いましたっけ?」と監督に言われて「聞いてません」と答えてびっくりされたこととかあるらしい。
「蟲師の音楽作りは作っている自分を離れたところから見ていたような気分」と回想される増田さんに
声優さんたちから「天才…?」「天才だ…!」との言が口々に。
Twitterで募集した質問に答えるコーナーでどんな虫に憑かれたいか?との質問に
土井さんが「増田さんみたいなクリエイティブな蟲に憑かれたい」とおっしゃっていて
会場に笑いが起きていました。
ちなみに小林さんは「雷が好きなので雷の袂に出てきた蟲がいい」とおっしゃり、
中野さんは「映画作りの蟲」、うえださんは「数字のできる蟲(確定申告が苦手だから)」とのこと。
そもそもこのてんこ盛り企画は長年の紆余曲折を経てようやく実現した、
増田さんの発案による個人企画とのことでした。
蟲師の朗読会のようなものはアニメ1期の放送後に行われていたそうですが増田さんは参加できず、
続章の頃にも企画されましたがやはり増田さんのスケジュールが合わなくて
でもどうしてもやりたくてやりたくて温め続けてやっと今回実現したと。
企画するにあたって長濱監督ほか関係者にプレゼンしたところ「やろうやろう」ということになったものの
企画を立ち上げるのが初めてだったらしい増田さんはどこにどういう許可をとったらいいかわからず、
制作側も何に対して許可を出したらよいかわからなくてバタバタしたみたいです。
「こんなに大変だとは思わなくて、知ってたらやらなかったかも」と苦笑されていました。
演奏も1人でやるつもりだったらしくて、プレゼンのときにそのつもりでやってみせたら
(アニメ一期では増田さん1人で全部レコーディングしたので疑問に思わなかったらしい)、
監督から「音楽は蟲師だけど演奏がバタバタして蟲師っぽくないよ?」という意見が出て
今回は2人の方にパーカスとキーボードで来ていただいたというお話もありました。
確かにあれだけの音を鳴らすのに1人は無茶だよ…それをやっていたというのも驚きですけど。
楽器の説明もしてくれました。
蟲師の音楽は銅鑼や太鼓など打楽器が多く、ピアノやバイオリンはほとんど使われていないのですが
これは蟲師がああいう世界観なためで、
音色から楽器を想像できない楽器を使おうという増田さんの試みだそうです。
(アニメ1期の最初の音楽打合せで監督と増田さんが交わした会話が
「このアニメ音楽いらないよね?」だったという裏話が猛烈に笑えた。制作デスクが大慌てだったとか)
中でもメインで使われているオゴロロという楽器が印象的。
「どこで出会いました?」という小林さんの問いに「ネットで出会いました」と答えた増田さんに会場から笑いが。
大小の金属円盤が9つぶら下がっているもので、叩くと金属音がしまして
ギンコが蟲について語るときのBGMなどで鳴らされている楽器ですね。
音楽作りの最中に見つけたらしいですが、ルーツがまったくわからないらしくて
増田さんは中国の宮廷かどこかで使われた楽器だったのではないかと推測しているみたいです。
「作ってるのは中国の奥地の人だけど今どうしてるかわからない」
「正しい演奏方法もわからない。投げるわけでもないし」などとおっしゃって笑いをとってました。
他にもエンドウ豆がいっぱいぶら下がったような楽器は「まめ」、
マッシュルームの笠がいっぱい重なったような金属楽器は「きのこ」、
竹でできたひらひらがぶら下がっているのは「たけくらげ」、などと
ご自分で好きに名前を付けている楽器もあるようで、
というか、これら全部楽器ではなくて海外で売ってるお土産らしい(笑)。
ヤギのつめでできている楽器はシンガポールのお土産屋さんにぶら下がっていたそうで
あれこれ揺らしてみて音を気に入って、「これが欲しい」と思ってお店の人に伝えたら
奥から新しいものを出してこられたようで「いやこれが欲しいんだ」「でも埃被ってますし」「いいから」
などなど、押し問答の末に無事手に入れたという経緯があるそうです。
増田さんはいつも「その音がどこにハマるかを考えている」とのことで
蟲師にハマるということで使われた楽器が、そもそも楽器ではなかったというのがお話を聞いてわかって
こういう音楽づくりもあるのだなあと思いました。
うえださんが「今の話面白いから講座とかで話したらどうですか」と言い出したの笑っちゃったし
「じゃあタイトルは、そうだなあ、『蟲師に学ぶ音による感性の磨き方』?」
「冷やかしを減らすために1万5000円くらい取りましょうか」とかガチで応じる増田さんもおもしろすぎる。
というかそんな講座が企画されたらめっちゃ行きたいんですけど…!1万でも2万でも払って行くよ。
あとステージには三本足の土器もあったのですが、これも厳密には楽器ではなく
某ギャラリーで見つけた某陶芸家の作品なのだそうです。
美術品のためそのギャラリーでは買えなかったらしく、方々を探していたら
「うちのスタジオで埃を被ってますよ」とお知り合いがくださったそうで!
ひっくり返して叩いたり、中を叩くと水琴窟のような音がしておもしろいので蟲師に使ってみたそうで
「日蝕む翳はこの土器から始まりました!」との裏話も急に出てきてびっくり。
続章が決まって音楽を作ろうとしたけど新しい曲が浮かんでこないどうしよう、と監督に相談したら
「出てこなくていいんです」と言われて拍子抜けしたらしい。
「1期が終わって一週間後に続章が始まるつもりで作ってください、僕らもそのつもりでやってます」というのが
監督の考えだったみたいで、
言われてみれば続章は雰囲気から何からまったく1期と変わってなくて世界観の地続きを感じたな…。
でも増田さんはモチベをあげたくて色々探していたら例の土器に出会ったそうです。
(余談ですが「出て来なくていい」と言ったときの増田さんの口調は監督に似ていたらしく、
うえださんが「モノマネなの?」と突っ込んでいらっしゃいました。
「監督すぐああいうこと言うよね」「さっき楽屋でその話してて」などなど、声優さんたちも盛り上がってました)
あと小林さんがブン回していた赤い紐のようなもの(うえださんに「わんぱく」と呼ばれていた)からは
蟲がわ~っと移動するときのフワンフワンした音が出ていておもしろかったし
中野さんが持たされていたバネのような楽器(?)には「中野裕斗」などと命名したとかおっしゃって
もう次から次へとおもしろい話しか出てこなくて興奮が止まりませんでした。楽しいー!
(帰宅して家にあるそれっぽいものを鳴らしたけど全然あの音にならなくて
紐も太いやつを回しては違うな…などと首をかしげておりました。
どういう原理であんな音出るんだ…家でも蟲の声聞きたい…)
最後にステージとお客さんで「鈴の雫」セッションが行われました。
演奏者の演奏に合わせて観客が鈴を鳴らすというものです。
わたしたち観客は開演前に入場特典としてアニメーターさん描きおろしポスカをいただいたのですが
その際に小さな鈴も一緒に手わたされまして、何に使うのだろうと思っていたら
ここへきてそういうサービスですか☆
モーツァルト鈴というそうで、楽器のお店でまとめ売りされているのを増田さんが買ってきて
ひとつひとつにバラして、増田さんと中野さんで一生懸命ストラップの形に作ってくれたそうです。
つまりギンコお手製の鈴!
そんな鈴を生演奏とともにセッションできる経験なんてなかなかないと思うのです。
鈴の音は音階だと「ミ」とのことで、錫製と銅製の2種類あるみたいでわたしがもらったのは銅でした。
隣に座っていた人が錫だったので互いに聴き比べとかできて楽しかったです。
(ちなみにライブ冒頭で土井さんが鳴らしていた鈴の音階は「ファ」とのこと)
パーカスの音色に合わせて200人の鈴が一斉に鳴るのですが
ひとつひとつが小さな鈴なので決して大きくは響かなくて、そこが蟲師らしいというか。
でもアニメのシーンを思い出してとても素敵な時間でした。
鈴の雫の裏話もありまして、劇中で使う鈴のオーディションをしたというのがすごかった。
増田さんが浅草橋にある鈴の専門店などで20個くらい用意して
スタッフの前でひたすら鳴らしまくるということをやったそうな。
「はい次干支の鈴いきま~す」とか、金属から土鈴まで色々試して
さっきのモーツァルト鈴を選んだらしい。本当にモノづくりって奥深いな…。
最後にアンコールとして「壺天の星」が演奏され、
ラストは増田さんによるひとりオゴロロ演奏「たゆた」でした。
たった9つの円盤だけで、決して広くはないとはいえあの会場の中を音で埋め尽くした音色は
一生忘れられないと思う。
オゴロロ本当にどんな楽器なんだろうな…そのうち由来がわかる日が来ますかな。
カーテンコールは3回。
拍手したときさっきの鈴を持ったままだったのでチリチリ音が鳴ってしまったけど、
近くからもチリチリ聞こえていたので同じことをしていた人たちがいたんだと思う。
拍手に混じって鈴の音が聞こえるライブなんて蟲師だけでは。いやあいい体験でした。
あと客席に演出のそ~とめさんとアニメーターの白井さんがいらっしゃっていてトークの途中でご紹介がありました。
(白井さんは入場特典のポストカードを描いてくださった方です)

増田さんがこの鈴を「いい虫が寄ってきて悪い虫は除けます」とおっしゃっていたので
帰宅して母にゃんこの前で鳴らしてみるの図。
本人はチリチリという音よりも鈴が揺れる動きの方に興味があったみたいで
この後ちょいちょいって肉球を出されたのですが。。
あと、この日はブロとものあやのさんと一緒に青山のトラヤカフェにも行ったのです~。

白あんと柚子のケーキ。奥はあやのさんが注文したあんペーストの珈琲。
この日のハイライトは彼女がシンカリオン視聴者と判明していっぱいお話できたことです!
なかなかシンカリオン語りできる人が周りにいないので超うれしかったし、
話しながら時々泣きそうになってました。。
シンカリオンの話になるととたんに情緒不安定になるアカウントはこちらです。
というわけで追記にシンカリオン49話感想です。↓
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