三浦さんの本を読むのはこれが初めてです。。。
(宮崎駿さんが『神去なあなあ日常』をオススメですよと紹介していたことがあって
以前から気になる作家さんでした。あれも読もうかなぁ)
ゆっくり読むつもりでしたが続きが気になって、結局一気読みしてしまった。
文楽大夫修行中の笹本健が、気難しい三味線弾きの鷺澤兎一郎とペアを組むところから始まって
おちゃめな師匠や兄弟子たちや健の一目惚れ相手に振り回されつつ(笑)お話が進んでいきます。
舞台が関西なのでボケツッコミも激しい(笑)。
最初は兎一さんが面白いなぁと思っていましたが(この本は彼がいないと引き締まらないと思う)、
健の兄弟子である幸大夫さんも何気にやさしくて好き。
時々だらしない健を「アホ!」って叱るけど、「よう研究せえよ」って床本貸してくれたりするし。
登場人物の内面よりもストーリー&キャラクター重視で話を進めていたり
人情風俗にあふれた描写が絶妙なあたり、
あー三浦さんて大衆小説家だなぁと思った。直木賞受賞もうなずけます。
作中でちょっと気になったのが、兎一さんが過去に組んでいた月さんという大夫のこと。
兎一さんが口数少ない人だから仕方ないんだけど、もう少しあの人のことを知りたかった。
(どうでもいいけど月大夫と兎一郎って、月とウサギってことですよね。切っても切れない関係…)
梨木さんのはエッセイというか紀行文みたいな散文で(結局どれよ)、
知床やカムチャツカへ渡り鳥に会いに行った記録をまとめた本です。
鳥が大陸を渡っていく力と、人が大地を渡り歩いていく力についても語られています。
梨木さんは動物や植物の描き方が巧みで、いつもいい表現がたくさん出てくるのですけれども
今回の描写は、以前に読んだ『f植物園の巣穴』とか『家守綺譚』とは違って
どちらかというと『村田エフェンディ滞土録』に近い印象がありました。
文中から寒々とした土地の風が吹いて、オオワシの翼のはためきまで聞こえてくる感じ。
空や湖の描写が多かったせいかな…。
あと、『春になったら苺を摘みに』の中で少し戦争に触れた章がありましたけど
今回はその続きっぽいことも書いてありました。
アメリカを祖国としアメリカ市民として生きてきた日系二世の人たちに対して
あの時代がどういう風に襲いかかってきたのか、ひしひしと感じられます。秀逸。
『りかさん』を読んでいたときも思ったけど、梨木さんは戦争を書くときに
絶対に日常生活と切り離して語ることがないから、今このとき戦争が背後に迫ってくる気がして
読んだあと後ろを振り返れなくなるんだなきっと。
今朝、8時15分に黙祷し忘れてしまったので今からやろうと思います。
西の国への追悼を、わたしも、ここから。
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