国立歴史民俗博物館の「妖怪変化の時空」展と
東京国立博物館の「博物館できもだめし」展に行ってきました~。
どちらも鳥山石燕の絵本が出品されているということで、
行く前から行った後までテンションあがりっぱなしで楽しんで来ましたとも!
歴博の鳥山石燕展示は『画図百鬼夜行』で、
ぬらりひょん&元興寺、海座頭&野寺坊(新座の妖怪ですね*^ ^*)のページが開かれていました。
きゃ~やっぱり素敵絵vvv
石燕の描く妖怪絵は恐怖よりも笑いを感じさせるものが多いのですが
『画図百鬼夜行』のぬらりひょんときたら全然怖くないよ…むしろかわいいよ…!
駕籠からおりて建物に入っていこうとして、ちらりとこちらを向いている姿が
もぅ~~ほんとにかわいい。
あと、元興寺の月のフキボカシは今まで資料でしか見たことがなかったのですが
本物は想像以上にきれいでした。あーこんな色だったのか。
それから、歌川国芳の「源頼光公館土蜘作妖怪図」…風刺画ですね。
少し前にEテレの日曜美術館で見たときも大きいなぁ~と思いましたけど
やっぱり3枚並ぶと、大きさも相まって迫力が増しているような。
これに影響を受けて描かれたのが、国芳の弟子だった河鍋暁斎が描いた
「侠客日本魂於迷府大猛勇顕」ですな。
ただ、国芳が明らかに狙った感じのサービス精神たっぷりな絵を描くのに対して
暁斎の絵の人物たちは、全員真面目な顔をしながらよく見るとズッコケたことをやっていて
「まじめにバカをやる」という感じがして何とも面白いなぁと思います。
どうでもいいけどあの絵の右端で頭をかいている男が、
暁斎本人の顔とだいぶ似ている気がする。
そ、そしてそして、月岡芳年の「清姫日高川に蛇体となる図」が想像以上に良くてですね…!!
清姫の着物の模様と色(特に赤と紫)がすごかった…いや情念の描かれ方もすごかったけど。
波打ち際で、髪をほどいた着崩れ姿の女性が裸足でたたずんでいるという図でして
見たときは怖かったけど、見ているうちにどんどん絵の世界に引きずり込まれて
美しいとさえ思ってしまった。
あと狩野洞雲の百鬼夜行図も、存在は知っていたのですが
初めてナマで見ることができたので良かったですvvv
この人の妖怪もとてもユーモアがあるのですよね~。ふらり火がかわいかった。
他には、幕末に起きた天災や流行病などが妖怪絵化された図や、
(女性の声で船を招いて難破させるという、
サイレンやカリュブディスの神話を連想させるような妖怪絵もありましたが
人の声や楽器で船を呼び寄せる生き物というのは、洋の東西を問わずよくあるモチーフだと思います。
石燕も著書の中で「海座頭」とか「川赤子」などを描いてるし)
歌舞伎の中の幽霊や妖怪を絵にしたものもありました。
三代目歌川豊国の「四谷怪談隠亡掘」には、ちょっとした仕掛けがしてありまして
戸板に張りついているお岩さんをヒョイとめくると、小仏小兵が現れるというものになっています。
こういうの当時の子どもたちは喜んだろうなぁ。
続いて東博の「博物館できもだめし」展へ。
ここでの鳥山石燕展示は『百鬼夜行拾遺』で、道成寺鐘と燈台鬼のページが開かれていて
しかもピンスポが当たっていました(笑)。
何じゃこの扱い。。。
い、いやそれ以上にびっくりだったのが、この本、白黒じゃなくてフルカラーでした!!
ええーっ知らなかったよ、国書刊行会の画集『画図百鬼夜行』ですら白黒掲載なのに!!
1781年刊ってことは初版ですよね、初版は、フルカラーだったのか…(゚▽゚;)。
ほんともう、今日は先生の絵の新しい発見が2度もあって
脳みそが大気圏を抜けてぶっとんでいくような思いにかられまくりました。
おかあさんわたし見に来て良かった…本当に良かったよ……!
道成寺鐘は炎があかあかと燃えていて、燈台鬼は背景が黄色のグラデーションでした。
石燕の色指定と、摺師の人たちの腕と、両者のセンスの良さに脱帽でした。
はあぁ…フルカラーはいいね…(*´▽`*)~3
(ところでどうでもいい余談ですが、
百鬼夜行を紹介するキャプションの英語の表記が「Hundred Daemons in the Night」に
なっていたのは正直目から鱗でした。
いや、言われてみればそうなんだけど。。。f(^_^;)
以前に家族旅行で上田城に行ったとき、真田氏と関ヶ原の合戦について紹介した看板で
関ヶ原の合戦の英語表記が「Battle of Sekigahara」になっていたのを見て
あまりのギャップに家族中で大笑いしてしまったことを思い出したりもしました)
ほかに面白かったのは、「化け物かるた」。いろはかるたの妖怪ヴァージョンです。
石燕の『画図百鬼夜行』の影響が濃厚すぎて笑えました(^ ^;)。
垢舐めとかぬっぺふほふとか犬神とか羅生門の鬼とか、石燕の妖怪絵そのものです。
(猫又や鎌鼬なんて、妖怪の姿どころか構図までまるっと写されているし)
国芳の「天狗の夜道」「天狗の往来」…天狗が鼻に行灯ぶらさげてるし、鼻で駕籠かついでるし、
未だかつて天狗の鼻をここまで使いこなした浮世絵があっただろうかと思った。。。
天狗の体もてかってて、何だか健康そうでした。国芳らしいなぁ。
仁阿弥道八の三彩狸が、袈裟をつけた姿で、まっすぐ前を向いて座っていてかっこよかった。
横から見ると飄々としているのに、面と向き合うと威圧感がある感じ。
その隣にあった鬼の能面、般若かと思ったら「蛇」の面なのですね。。。
「道成寺」の清姫は顔が鬼(般若)で体が蛇ということから、そういう名がついているようです。
ということは、これ、あの能専用の面なのだろうか…。
あと、天狗や鬼や河童やドクロの根付も展示されていて
ちょこんとした存在感と隅々まで彫り込まれた細やかさに溜め息が出ました。。
それから、葛飾北斎の百物語の「皿やしき」や「お岩さん」はすごくいい色でした。
保存環境がいいのだなぁ。
「こはだ小平二」の闇のグラデが煙のようなもやのような、不思議な闇だったのですが
あれ一体全体どうやって摺るのだ。
本館の浮世絵展示は渓斎英泉と歌川広重の「木曽街道六拾九次之内」シリーズの
展示になっていまして、
この2人の絵って似ているなー…でもやっぱりどこか違うような?と思っていたら
広重は画面をすっきり作っていて、線にもメリハリがあって色もあっさりしていて
逆に英泉は線が細くて、色塗りでも影をつけたり白いハイライトを入れたりしているのだなと
展示を見終わってから気づきました。
なので英泉の絵には立体感があり、広重の絵には安定感があるのだなーと思った。

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鳥山石燕と子鬼マンガその2。1は
こちら。
相変わらずまったりペースで続いています。よろしかったらどうぞ~。
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*浮世絵師のイラスト記事一覧はこちらです*