
東京文化会館で、黛敏郎作のオペラ『古事記』を観てきましたー♪
大好きな演目ですし、オペラそのものも観るのすごく久し振りで
(十年以上前に『フィガロの結婚』と『蝶々夫人』を観て以来だ)
わくわくしながら行ったのですが、いやもう、めっちゃくちゃ良かった…そして楽しかった☆
歌い手の人たちみんな綺麗でかっこ良かったです。
天照のソプラノは美しくて、イザナギと風の神のバリトンは迫力たっぷりで、
思金神のバスは安定してて聴きやすかった。
衣装も、舞台上で歌い手がくるっと回るとふわっ~と広がるタイプの、
日本の民族衣装に西洋のドレスのヒラヒラテイストが加わったみたいな衣装で
すごく華やかでした。
あと、ドイツ語のオペラなので字幕を追いつつ鑑賞したのですが
「天照」とか「出雲」とか「天叢雲剣」とかの固有名詞はさすがに
「Amaterasu」「Izumo」「Ame no Murakumo no Tsurugi」など日本語のローマ字表記でした。
良かった…天叢雲ソードとか、厨二っぽいのに訳されてなくて良かった…!(笑)
そして!オペラといえば音楽!さすが都響!荘厳で重厚で力があった!!
文化会館のホールの音響もすばらしくて、音が体中にびんびん伝わってきました。
生演奏すごい。クラシックホールすごい。
特に雅楽器などを使ってはいなくて、全編フルオーケストラでした。
(休憩中に舞台のオケを見学してきたけど、琴も琵琶も笙も横笛も和太鼓も見あたらなかった)
よく考えてみれば、古事記の時代設定は雅楽が完成するずっとずっと前だから
雅楽器を使うとかえって平安とか鎌倉っぽい雰囲気になってしまうのかもしれない。
プロローグとエピローグで、バックスクリーンに宇宙が映し出される中で鳴るバイオリンが
めちゃめちゃ緊張感あって良かったなー。
たぶん世界の混沌を表現しているんだと思う。
ストーリーはごくシンプルで、「国産み」「天の岩戸」「八岐大蛇」「天孫降臨」の
4幕構成になっています。
原本のダイジェスト感は否めないけど、会話も状況説明もほとんどないあの長編を舞台化するには
これくらいがベストかなあとも思いました。
(たぶん原本の一字一句をそのまま舞台化したら、終わるまで何日かかるかわかんないし)
「国産み」は、黄泉の国のシーンもあったので全体的に照明が暗かったのですが
イザナギの禊で天照が産まれたら一気にパーッと明るくなって、
おぉ太陽が出たなって感じがして良かった。
月読と一緒に父親にかしずく場面、日月が並んだせいか照明も最高潮に明るくなっていました。
月読は特に歌うこともなく、その後も出てくることはないんだけど
夜空を思わせる薄い青色の衣装を着て、ぞくりとするような美しさのある人だった…!
あーもっともっと見ていたかった。
そして須佐之男は相変わらずのやんちゃ坊主でした。
髪はザンバラで、服も適当に着ていて、いかにも彼らしい容姿なのがいっそ清々しかった。
あと、イザナギが黄泉の国でイザナミを見てしまうのは好奇心からではなくて
「黄泉の国の闇に耐えられず灯りをつけてしまったから」とか、
須佐之男がイザナミに会いたいのは、単に「お父さんに怒られたから」ではなく
「姉と兄は天にいるのに、自分だけ海にいるのは何故か問いたいから」だったりして、
登場人物の行動の動機に感情以外の理由がつけられているのが
何ともオペラらしい作りだなぁと思います。
思金神が「岩戸の前で宴会をしよう」と提案する場面でも、
「絶望の中にも笑いがあるっていうじゃない☆(←意訳)」って言ってたし。
(そして非常にどうでもいいことですけど、思金が舞台に出てきたとき
あまりにおじいちゃんな思金だったので超びっくりしたf(^_^;)。
少なくとも天照よりは年下なので、青年の姿をしていると勝手に思っていたのですが
今回の思金は髪もメイクも白っぽくて衣装も豪華で、教会の大司教か
スターウォーズのパルパティーンが来たかと思ってしまったよ。
やっぱり西洋では知恵者=老賢者なのかな…。
オーディンやケイロンやマイスター・ホラや灰色のガンダルフに代表されるみたいに)
天宇受賣の舞が華やかで良かったー♪
ヒラヒラした衣装を着て、手拍子と、シャンと響き渡る鈴の音に合わせて
笑顔で踊る姿はまさに芸能の神様って感じ。
衣装にスリットが入ってて、たまにちらちら見え隠れする手首や足が色っぽかったです。
周囲の神々も榊の葉を持ってはやし立てていて、楽しそうだったなぁ。
…で、その躍り手たちの中に、なぜか天手力雄(ゲーム『大神』のスサノオに超似てた)が
混じって一緒に踊ってたのが、最高にかわいくて笑ってしまった。。。
しなやかに軽やかに踊る神々の中で、彼だけ無骨にぎこちなく躍っていて
何ともいえないインパクトがありました。
しかも、彼らの躍りを岩戸の中から見た天照が、自分から扉開けて出てきちゃったー!(驚愕)
えええええ、ちょ、手力雄、仕事してないんですけど…!(笑)
その後は特に注連縄をしめることもなく(^ ^;)「太陽が戻って良かったねー」な雰囲気になって
須佐之男が髪を切られて幕が下りてしまいました。わあ、ここは原本通りね。
須佐之男が八岐大蛇を退治するシーンは
(ここでの須佐之男はちゃんと髪を結っていた)
大蛇の姿形が出てくるわけでも、須佐之男が刀を振り回して戦うわけでもなく
合唱と、舞台に吊られた布の動きと、赤と黒の毒々しい照明と、大太鼓のみの演出でしたが
個人的にはこのオペラの中で一番迫力のあるシーンだったと思う。
特に合唱…数十人が客席にかっと目を向けてうごめきながら、底冷えのする声で歌うんです。
超怖かった。
合唱の本気を見せつけられた気がしました。あぁあれはぞくぞくした…!!
大蛇から天叢雲剣を取りだした須佐之男が、櫛名田に剣をわたそうとして
櫛名田が断る場面があったのですが、そこで例の
「八雲立つ出雲八重垣妻籠に 八重垣作るその八重垣を」の歌が出てうわーってなった!
歌われたのはドイツ語で、歌そのものは字幕で表示されたのですけど
まさか和歌が出るとは思わなかったので嬉しいサプライズ。
ニニギが超美人さんだった…!
純白の衣装で、稲穂を頭に飾って、稲穂を手に持っていて、まさに名前の通りの人でした。
(そういえば今日は新嘗祭だったな…と、ニニギを見ながらふと思い出したりもした)
月読と同じで歌うことはしませんでしたが、三種の神器と一緒に降りていく後ろ姿が
美しくて凛々しかったです。
ここで全員の合唱が入って、語り部の「世界が治まった…」的なセリフで無事閉幕~。
あ、そうそう、語り部の語りは日本語でした!
たぶんオーストリアで上演されたときはここで字幕が出たんだろうな。
ラストのカーテンコールがすごく長くていつまで経っても幕が降りなくて、
拍手し続けていたら手が真っ赤になってしまったw(^_^;)w
歌い手の方々の他に指揮者や演出の人(だよね?きっと)も登檀してお辞儀なさってました。
そうだ今日は千秋楽だった。
音楽と舞台劇と神話に浸れた、ものすごく贅沢な2時間半でした♪
そのうちまたオペラに行きたいです!