さては筆者の誤りか。

突然ですが昨日、渋谷の観世能楽堂で行われた観世流定期能に行ってきました☆
ちょっと前の読売新聞で観世清和さんが能の「俊寛」についてコラムを書いていたのですが、
その中の↓の言葉が何というかもう、ものすごくツボにハマりまして。
「終盤、赦免の船が来て、共に流された2人は許されますが、俊寛だけ赦免状に名前がない。
(中略)最終盤、泣く型をする役者もいますが、私は舞台でたたずむ型で演じます。
彼は平家打倒を目指した気骨の人。きっと泣かないと思うからです」
で、「たたずむ俊寛!見たいじゃないか!!」と、突発的にチケット買いに行ったわけです。
人生ってどこでどうなるかわからないな…。
観能は初めてでしたけれども、俊寛のストーリーは『平家物語』の中でもかなり長めで
登場人物の行動や感情もしっかり描かれていてインパクトのある話なので、
ちんぷんかんぷんということもなく、するりと能の世界に入り込めた気がします。
筋もわかりやすく、初心者が見るのにちょうどよい演目だと思う。
ただ、小道具や背景をふんだんに使う歌舞伎とは違って
能は舞台上に役者と囃の人たちしかいないので、
「ああ、ここは今浜辺なのだな」とか「屋敷の中なのだな」などなど
自分で色々想像しつつ見る部分もあるので、ストーリーを知らないよりは知って見た方が
よりわかりやすくていいかもしれません。
シテ(俊寛)の観世さんが演じる際にかける俊寛の面は、重要文化財でもあるそうです。
見どころはやっぱり赦免状が読まれるシーンと、船を見送るラストシーンかな…。
赦免状に自分の名前が載っていないのを知った俊寛はさすがに泣いていましたが、
船が去るときは泣かずにたたずんでいたのが印象的でした。
うおおぉ、俊寛…!!(悶)
余談ですが「俊寛」の大鼓方は静かで重厚な謡をなさる方でした。会場にとても響いてた。
現代よりも島と都の距離が遠く感じられた時代に、身ひとつで島の浜辺に立って
遠ざかっていく船影が水平線に消えるまで見つめる、そんな俊寛の姿を彷彿とさせるような。
逆に次の「葛城」の大鼓方は高く張りのある声でしたね~。
なので、クライマックスで葛城の神様(シテ)が現れて舞うシーンはかなり盛り上がっていました。
神様が着ていた能装束とか髪飾りも綺麗だったー☆
そういえば、舞台上の白い幕に覆われた中でシテが衣装替えをしたとき、
後見の人たちが顔も隠さず堂々とシテの周囲で着替えを手伝っているのを見て
最初はギョッとしたのですが、
着替えが終わると何事もなかったかのように舞台の後ろにしずしずと正座されたので
あれはたぶん文楽で言うところの黒子みたいに
「ないものとして見てね☆」的なものなんだろうなぁとぼんやり思いました。
そういえばこの「葛城」のワキ、自分は出羽の羽黒山から来た山伏ですとか自己紹介していたけど
だから女性の神様と出会うことになったのかな…。
出羽もそうですが、戸隠や熊野などの修験道で山伏が祀っている神様ってだいたい姫神だしなぁ。
「熊坂」…。えーと、これあれかな、アニメのサブタイトルっぽく表現すると
「盗賊熊坂、牛若丸にガンつけられてフルボッコに遭う」とか、そんな感じかしら(^_^;)。
旅の僧侶(ワキ)が旅の途中で出会った男からある人の回向を頼まれるのですが、
実は弔って欲しいのはその男自身で、しかも彼はもう死んでいて、
なぜそうなったかというと金売り吉次に強盗を働こうとして牛若丸に返り討ちにされたから、
とか、そういう話なわけですが。。。
そんなだったから、シテが一度揚幕の奥へ引っ込んで、衣替えて帰ってきて演舞する場面で
申し訳ないけどちょっと笑ってしまった。あーこの人がんばったんだなぁ…って思えて。
あと、この能を見ていて初めて、笛方が笛を吹くと誰かが立ち上がったり舞い始めたりして
何らかの行動を起こすのだということに気づきました。おそ!
なので、笛が鳴ると舞台に風が吹くような気がしましたね。
(ジブリ作品でもキャラクターたちの心が動くと映画に風が吹きますが、あんな感じがした)
それから、狂言「文山賊」。会場が最初から最後まで笑いに包まれっぱなしでした(笑)。
出だしからいきなり「やるまいぞ、やるまいぞ!」という大声とともに
役者が2人、さーーっと舞台へ出てきたのにはびっくりした。
しかし勇ましかったのは最初だけで、あとはひたすら笑える場面ばかりです。
たとえば、2人がケンカしつつ舞台の端から端へ行ったり来たりするときのセリフ↓
「まず待て、まず待て」「おくれたか」「おくれはせぬが…後ろが茨じゃ」「いかんここへ」
「まず待て、まず待て」「おくれたか」「後ろが崖じゃ」「そはいかん、ここへ」
あんたたちトウィードルダム&トウィードルディーですか!(笑)
なんて微笑ましい人たちなの~(*´ω`*)。
色々あって肩組んで仲良く帰るところがまた微笑ましいです。とっぴんぱらりのぷうって感じ。
ところでこの時代で字が書ける山賊って。実は結構学識のある人たちなんじゃないの、彼ら。
あ、それと、演目終了後の拍手をどうすればいいかわからなかったので
会場の雰囲気に任せようと思っていたのですけど、
みんな結構拍手してたのでわたしも遠慮なくパチパチしてきました。
毎回、余韻をたっぷり味わってから拍手が起こるのが、とても心地よかったです。
きっと見慣れているお客さんたちばかりだったんだろうな。
帰る道々、今回見た能のことをつらつらと考えていたのですが
「葛城」と「熊坂」が、シテがしゃべりまくって劇中で着替えて舞を舞って
ワキは舞台の脇で座っているというタイプの、いかにも能らしい能だったのに比べて
「俊寛」は登場人物もセリフも多くて舞がそんなになくてストーリー性も強くて
能としては結構特殊な形なんじゃないかと思った。

↑当日のいでたち。こちらで紹介した着物たちです。
羽織着れば寒さなんてへっちゃらさーと思って出かけたら外はむちゃくちゃ寒かった…。
師走、おそろしい子…!
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