夜明けの夢に現れる羊。
竹下文子さんの『青い羊の丘』を読みました。
個人的に竹下さんの本は「ちょっとひねくれた爽やかさがあるけどそこが魅力」
みたいな面白さがあると思っているのですが、
今回は、これまで彼女の本を読んでいた身としてはちょっと連想しにくい文体と絵だったので
結構びっくりしました。。。文章のフォントも青くてコミック調だし…。
(と思っていたら竹下さんご本人がブログで「わたしが一番驚いた」とおっしゃっていて
つい笑ってしまった)
でもいざ読んでみると随所に、いつもの竹下文法がちりばめられているので
そこは安心して読めたのですけれども。
内容は、続いているようで続いていないように見えるけど、
時々、同じ人が出てきたり舞台がリンクしたりする、微妙に地続きのある短編集です。
主人公の「僕」が最初と最後と、あと中盤にたまに出てきます。
ん?でも、明確に同一人物として描かれているのは最初と最後だけっぽいから
わたしの思い違いなのかな…。むぅ、わからん。
そんな風に、ちょっと「くらり」とするところのある本です。癖になるかも。
「旅からの手紙」…この世界で手紙を届ける方法はステキすぎて泣けます。
ラストで出てきたパン屋さんのことは次編の「幸せのパン」で、
旅人が行った季節外れの風工場については「風工場」でわかるようになっています。
あの風工場の葡萄ジュースは飲んでみたいな~。おいしそう☆
「天使のひとやすみ」「白い羽」の天使ちゃんの、あまりの自覚のなさにはキュンときますが
それだけで終わらずに胸を締め付けるラストでまとめているのは
やっぱり竹下さんだなと思う。
「眠り野」の草原のささやきが、宮沢賢治の『やまなし』で蟹の子たちが言う
「クラムボンはかぷかぷ笑ったよ」みたいな響きに聴こえる気がしました。
(『月夜にいらっしゃい』や『黒猫サンゴロウ』を読んでいたときも勝手に思っていたのですけど
竹下さんの文章は賢治を思い出させる効果がある気がする…)
「カレイドスコープ」の、季節の時計という表現に戦慄を覚えた。
素敵なものは無限大なんだからって言ったのは『ARIA』のアリシアさんですが、
この小品に書かれていることもそういうことじゃないかと思う。
「木の葉の凧」の空のヨットを漕ぐ少年と、「冬の手品師」でブランコから消えた少女は
手に届かないものの象徴のような気がします。前者はいい意味で、後者は悲しい意味で。
「笛を吹く少年」の後半が、笛を買いに来た男の子のその後のようでもあり、
笛吹き自身の少年時代でもある風に読めるようになっていることにものすごいセンスを感じた。
竹下さんが書く過去は幻燈のようで、でも目に見えるようで、本当にぐらぐらします。
三半規管をフル活動させて読まないとのみこまれそう。
個人的に気に入ったのは「サンクチュアリ」。
桜の林の丘にある、石造りの塔のような図書館が舞台のおはなしです。
ぱたぱたと音がして振り返ったときには、本たちは棚に戻ってしまっているに違いない、という
イメージが湧いてくるような、何とも言えない心地よさを感じさせる小品でした。
あれだ。『トイ・ストーリー』のおもちゃたちが動くときの空気とか、
セーラがよく想像していた、人形のエミリーが誰もいない部屋で本を読んだり
お茶を飲んだりしているときの空気とか、そういう感じ。
ずいぶん長いこと、本と付き合ってきた人だからこそ書けるおはなしだなぁと思いました。
すべての鳥は帰る枝を知っている、というのは帰巣本能なのかもしれないけど、
あるいは自分がいるべき場所をそこと決めているということなのかもしれない。
あづみ冬留さんのイラストもとても綺麗です。
青い羊さんがふわふわのモコモコでかわいくて抱きしめたくなる(*´∀`*)。
(ところでこの羊、案内人のような存在かと思ったら、別だん、そうでもないようです)
本日のお絵かき↓
※クリックで大きくなります
「サンクチュアリ」の「僕」。
ソファで寝ている人の本に葉の栞をはさんで閉じて、そっと横に置いてあげることができる子です。
いいなあ。
図書館の女の人は、描いてしまうとロマンがないのでスカートだけ。
*ブログ内のイラスト記事一覧はこちらです*
個人的に竹下さんの本は「ちょっとひねくれた爽やかさがあるけどそこが魅力」
みたいな面白さがあると思っているのですが、
今回は、これまで彼女の本を読んでいた身としてはちょっと連想しにくい文体と絵だったので
結構びっくりしました。。。文章のフォントも青くてコミック調だし…。
(と思っていたら竹下さんご本人がブログで「わたしが一番驚いた」とおっしゃっていて
つい笑ってしまった)
でもいざ読んでみると随所に、いつもの竹下文法がちりばめられているので
そこは安心して読めたのですけれども。
内容は、続いているようで続いていないように見えるけど、
時々、同じ人が出てきたり舞台がリンクしたりする、微妙に地続きのある短編集です。
主人公の「僕」が最初と最後と、あと中盤にたまに出てきます。
ん?でも、明確に同一人物として描かれているのは最初と最後だけっぽいから
わたしの思い違いなのかな…。むぅ、わからん。
そんな風に、ちょっと「くらり」とするところのある本です。癖になるかも。
「旅からの手紙」…この世界で手紙を届ける方法はステキすぎて泣けます。
ラストで出てきたパン屋さんのことは次編の「幸せのパン」で、
旅人が行った季節外れの風工場については「風工場」でわかるようになっています。
あの風工場の葡萄ジュースは飲んでみたいな~。おいしそう☆
「天使のひとやすみ」「白い羽」の天使ちゃんの、あまりの自覚のなさにはキュンときますが
それだけで終わらずに胸を締め付けるラストでまとめているのは
やっぱり竹下さんだなと思う。
「眠り野」の草原のささやきが、宮沢賢治の『やまなし』で蟹の子たちが言う
「クラムボンはかぷかぷ笑ったよ」みたいな響きに聴こえる気がしました。
(『月夜にいらっしゃい』や『黒猫サンゴロウ』を読んでいたときも勝手に思っていたのですけど
竹下さんの文章は賢治を思い出させる効果がある気がする…)
「カレイドスコープ」の、季節の時計という表現に戦慄を覚えた。
素敵なものは無限大なんだからって言ったのは『ARIA』のアリシアさんですが、
この小品に書かれていることもそういうことじゃないかと思う。
「木の葉の凧」の空のヨットを漕ぐ少年と、「冬の手品師」でブランコから消えた少女は
手に届かないものの象徴のような気がします。前者はいい意味で、後者は悲しい意味で。
「笛を吹く少年」の後半が、笛を買いに来た男の子のその後のようでもあり、
笛吹き自身の少年時代でもある風に読めるようになっていることにものすごいセンスを感じた。
竹下さんが書く過去は幻燈のようで、でも目に見えるようで、本当にぐらぐらします。
三半規管をフル活動させて読まないとのみこまれそう。
個人的に気に入ったのは「サンクチュアリ」。
桜の林の丘にある、石造りの塔のような図書館が舞台のおはなしです。
ぱたぱたと音がして振り返ったときには、本たちは棚に戻ってしまっているに違いない、という
イメージが湧いてくるような、何とも言えない心地よさを感じさせる小品でした。
あれだ。『トイ・ストーリー』のおもちゃたちが動くときの空気とか、
セーラがよく想像していた、人形のエミリーが誰もいない部屋で本を読んだり
お茶を飲んだりしているときの空気とか、そういう感じ。
ずいぶん長いこと、本と付き合ってきた人だからこそ書けるおはなしだなぁと思いました。
すべての鳥は帰る枝を知っている、というのは帰巣本能なのかもしれないけど、
あるいは自分がいるべき場所をそこと決めているということなのかもしれない。
あづみ冬留さんのイラストもとても綺麗です。
青い羊さんがふわふわのモコモコでかわいくて抱きしめたくなる(*´∀`*)。
(ところでこの羊、案内人のような存在かと思ったら、別だん、そうでもないようです)
本日のお絵かき↓

「サンクチュアリ」の「僕」。
ソファで寝ている人の本に葉の栞をはさんで閉じて、そっと横に置いてあげることができる子です。
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