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ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


蔵が深い。

  1. 2011/12/19(月) 23:38:45_
  2. 文化・美術
  3. _ tb:0
  4. _ comment:4
戦利品。
山種美術館の「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション展」に行ってきましたー。
美術館が所蔵する作品群から選りすぐった作品を一挙に展示する企画です。
イメージ的には選抜展という感じかな。
内容があまりにステキすぎて図録買う予定なかったのに買ってしまったよね…ああもう…!

宗達&光悦ゴールデンコンビの和歌短冊帖の、デザインセンスと書の美しさがたまらんです。
宗達は、どちらかというと「絵」よりも「デザイン」を重視するところがあるせいか、
この短冊に描かれた植物も絵というよりは着物の柄のように見えました。
画面からはみ出さんばかりな構図は風神雷神図みたいで面白いなぁと思う。
絵の具で書の文字が隠れている部分が少しあるのですが、
きっと見る人が見れば何の苦もなく読めるだろうから、たぶん問題ないんだろうな…。
逆に岩佐又兵衛の「官女観菊図」の花たちはすごく細かくてきれいです。
大きな菊も、女性たちの着物の模様も、思い切り顔を近づけて見入ってしまいました。
作品にここまで近づいて見られる環境を整えてくれるのはこの美術館のいいところだと思う。

そして!一番、いちばん見たかった春信の「梅の枝折り」、ぎゃーっマジかわいいぃぃ!!!
女の子と従者の線はめっちゃくちゃ細いくせに梅の枝はきちんと描いてあるとか、
女の子の着物の柄が竹に雪だったりとか、裾からちらりと足首が覗いていたりとか
地面の草履がひっくりかえっているとか、いちいち芸が細かいです。
いやそんなことよりも(!)、こういう何気ない日常風景を
動きや息づかいまで感じさせるように描く春信はやっぱりステキだなぁ~と思った。
すごく危なっかしい光景の絵なんだけど、危機感ではなく微笑ましさが出せる人なのだなと。
…ええとダメだ春信を前にすると頭の中がシンプルになって、何を言えばいいかわからなくなります。
わたしほんとに春信が好きなんだなーと改めて実感することになったというか。

また、隣に並んでいた歌麿や広重や写楽の絵も楽しんできました。
中間色で塗られた歌麿の美人や写楽の役者絵も良かったけど、
広重の青のところで目が覚める思いがした。
そして北斎の富士は、どの富士を見ても彼自身を描いているような気がします。
酒井抱一が植物を描くと、絵筆のあとが全然見えないからか
絵ではなく切り絵のような印象を受けます。ものすごく細い切り絵。
今回の「秋草鶉図」も、華奢なススキがきれいでした。そして相変わらず空間の使い方が絶妙。

大観の燕山図をじーっと見ていると、山が緑に建物が赤に見えてくるから不思議。
「心神」の富士もそうですな。凝視していると青い山に見えてきます。
前から何となく思っていたのですが、水墨画を見るのと能を見るのって似ていると思う。
自分の知識やイメージや記憶からあらゆるものを引っ張り出して脳内で補完をするから
白黒がカラーで見えたり、舞台にない山々や桜や星空やススキ野原が
見えたりしてくるんじゃないかな…。
大観の水墨画には大胆でダイナミックな部分とリアルで緻密な部分がありますから、
余計に色彩をイメージしやすいような気がします。

竹内栖鳳の「班猫」、かーわーいーいー!!
キャラクター化されたかわいさではなく、あくまで「猫好きな人が描いた猫」みたいな
作風がまたいいなぁと思います。
「栖鳳は沼津の八百屋さんでこの猫を見かけて、絵心をかきたてられたので譲ってもらって
京都の家でひたすら観察しまくってこの絵を描いた」というようなエピソードが
キャプションに書いてありました。
なにその、ニワトリを庭に放って観察しまくって描いていた伊藤若冲みたいなエピ(笑)。

松岡映丘の「春光春衣」、すごく、すごーく、明るい絵です☆
薄暗い館内の、そこだけ、光が燦々と溢れているような気がした。
春の日差しとあたたかな日和を題材にしているだけで、十分明るい絵になっているのですが
女性たちの着物のかさねと、画面にたくさん描かれた桜がより一層明るさを演出していました。
王朝がテーマになっている絵は華やかでよいですな~。

上村松園「牡丹雪」の雪が○ではなく大きな雪の結晶の形で描かれていて、
いかにも牡丹雪という感じがして面白かったです。
絵のテーマは冬ですが、女性の着物の赤と口紅だけがすごく鮮やかで目を引きます。
速水御舟の「名樹散椿」が思っていたより大きくてびっくりしました。
京都のお寺にあった大きな椿の木がモデルになっているそうです。
(現在はすでに枯れて2代目の木が生えているとか)
うねうねっとした幹が弾力を連想させるせいか、咲き誇る椿がかなり重たげに見えました。

小堀鞆音の那須宗隆(与一)もかっこ良かった!!
中学の古典の教科書で読んだ「扇の的」のイメージが脳内にぶわっと湧いてきました。
源平両軍が対峙する屋島の海で、緋扇を射落とすことになった与一が故郷の神仏に祈る文句。
「これを射損ずるものならば弓切り折り自害して、人にニ度面を向かふべからず。
今一度本国へ戻さんと思し召さば、此の矢はづさせ給ふな」
烏帽子にぎゅっと締めた白はちまき姿が凛々しいです。うおお与一~~~!!
(ちょっとこの絵の与一の後ろ姿はかなりの坂東武者っぷり(当社比)でしたので、
今後何か白いものを身につけた絵をわたしが描いていたら
こいつまだ白はちまき萌えしてやがるよとか生暖かい目でスルーしてやってください)

古径の「清姫」シリーズからは「寝所」と「日高川」と「入相桜」がありました。
どの絵もぼかしの効果のせいか夢か幻でも見ているような気分になってきます。
彼の描く清姫ってまるっこいかわいさがあるなぁと思います。平安の絵巻物みたいに。
本人は「脳内イメージだけで描いた」という言葉を残しているそうですが、
無意識にその手の絵巻物のイメージが出てしまったのかな…。
そして来月から始まる後期展示にはこの清姫シリーズの別の絵が出品されるそうな。
どうしようかなぁ行こうかなぁ。
後期は春信の「柿の実とり」や御舟の「炎舞」や龍子の「鳴門」や松篁の「白孔雀」があるので
かなり気になっています…。むむ。


かわいいかわいいっ☆
美術館のカフェで和菓子も買ってきました☆今回の展覧会のオリジナルだそうです。
右は宗達と光悦の短冊帖をイメージした「秋のおとづれ」で、
左は古径の清姫がモデルの「きよひめ」です。
菊家さんのお菓子はやわらかな色合いとみずみずしさがいっぱいで、見ているだけで癒される…。
食べるのがもったいないです。食べましたけど。
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Author:ゆさ
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