歌の道。

「貫之1111首」古今集編その26。25はこちら。
4月初旬。貫之邸に大きな樹が運び込まれてきました。忠岑と躬恒もやって来てお手伝い。
牡丹「わー!なんの樹」
貫之「桜」
一子「大っきいじゃない」
貫之「来年には、挿し木もするし苗木も植える。数年後はきれいになるぞぉ」
一子「桜の森になるのね。すてきね~」
牡丹ちゃんが着ているのは一子お手製の衣装です。赤とピンクの牡丹色。

無事に植わってくれた樹に手を添える貫之。
思うのは友則が過去に詠んだ歌です。
貫之「来年が楽しみだ。"ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ"…だな」
紀貫之の邸は桜がたくさんあったことから、桜町と呼ばれていたそうです。
この後、古今和歌集は数度にわたり歌が加えられ、
最終的に叩き出した掲載歌数は1111首、歌人は約130人にのぼります。
905年の奏上から約10~15年ほどかけて、現在に伝わるような形になったとされています。
…が、それはまた別のお話なので、貫之たちのお話もここでおしまいです。
お付き合いくださった皆様ありがとうございました。
はあぁもうどうなっちゃうかと毎日ハラハラドキドキでした…終われた。良かった。
ε=( ̄、 ̄;A)ホッ
(余談ですが最後の絵を描いている間ずっと、脳内に「世界の約束」がエンドレス再生されていた)
遣唐使のときもそうだったけど、わたしはお話を描くときはだいたい何も考えずに描き始めるので
シリーズの元になった絵を描いたときは
まさか1年以上も続くとはまったく思っていませんでした。。
途中で何度も「どうすりゃいいの」と頭をひねり続け、
詰まると古今和歌集を開いて先達になってもらいました。
あの歌集が手を引っ張ってくれたお蔭でここまで来られました。感謝。
わたし自身、のんきな日常生活から歌合・歌集の編纂と描き続けてきて
少しは1200年前の人の心情に降りていきやすくなったかな…?
当時、歌は必須教養で、政治で、個人で、芸術で、苦悩で、ヒーリングで、よろこびだったわけですが
ありのままの風景や気持ちをカメラで写すがごとく歌った万葉集の人々から一歩前進して、
古今和歌集の人々は景色や心情を歌にまとめあげ昇華し芸術的に味わえると知った
最初の人たちだったのではないかと思います。
風景に比べ、心情を詠みこんだ歌のなんと多いことか。
歌の好みも手法も流行も、時代とともに移り変わるわけで、
あちこちから歌を集めまとめていた貫之たちは時代の最先端にいたわけで。
貫之は「必死に集めはしたが、だいじな歌が漏れていないか気になっている」と
歌集の後半に収録した長歌で心配しています。
どんなにプレッシャーだったことか。
一方、編集中の議論が白熱してしまい、気づいたら夜が明けていたなんてエピソードもあるようです。
どんなに楽しかったことか。
思いを馳せると尽きません~。ロマンは広がりますなァ!
わたしが描くのはここまでですが、貫之たちのその後の人生や周囲の出来事などは
図書館やネットで見られますので興味のある方はご覧になってみてください。
(まだ源氏物語も枕草子もなかった平安時代前期。調べてみるとなかなかスリリングな時代ですよ)
読んでくださった皆様、拍手やコメントで励ましてくださった方々に改めて御礼を申し上げます。
本当にありがとうございました!
m(_ _)m
「たとひ時移り事去り、楽しび悲しびゆきかふとも、この歌の文字あるをや。
青柳の糸絶えず、松の葉の散り失せずして、まさきの葛長く伝はり、島の跡久しくとどまれらば
歌のさまを知りことの心を得たらむ人は、大空の月を見るがごとくに古を仰ぎて今を恋ひざらめかも」
(『古今和歌集』仮名序末尾の文(紀貫之著)より)
歌人たちのイラストは、今後もちょこちょこ描いていきますので
見かけたら声をかけてやってくださいまし。
公開しました!こちらです→>一気読みページ
なお、今回わたしが描いた紀貫之ほか撰者たちは、日本史上に実在した人々です。
史実に沿って描いてきましたが、人物像などはゆさの創作であり、
都合により変更した部分もあることをお断りしておきます。
また、今回の連載にあたり、下記の書籍に大変お世話になりました。
・浅井虎夫『新訂 女官通解』 1985.2 講談社学術文庫
・目崎徳衛『紀貫之』 1985.11 吉川弘文館
・村瀬敏夫『宮廷歌人 紀貫之』 1987.3 新典社
・新編国歌大観編集委員会編『新編国歌大観』第5巻(歌合編・歌学書・物語・日記等収録歌編) 1987.4 角川書店
・有吉保ほか編『和歌文学講座4 古今集』 1993.12 勉誠社
・小沢正夫ほか校注『新編日本古典文学全集11 古今和歌集』 1994.10 小学館
・小松英雄『やまとうた 古今和歌集の言語ゲーム』 1994.10 講談社
・和歌文学論集編集委員会編『和歌文学論集2 古今集とその前後』 1994.10 風間書房
・萩谷朴『平安朝歌合大成 増補新訂』全5巻 1995.5-1996.12 同朋舎出版
・竹西寛子『古今和歌集』 1997.3 岩波書店
・服藤早苗『平安朝 女性のライフサイクル』 1998.11 吉川弘文館
・山下道代『古今集人物人事考』 2000.3 風間書房
・増田繁夫ほか編『古今和歌集研究集成』全3巻 2004.1-3 風間書房
・藤岡忠美『紀貫之』 2005.8 講談社学術文庫
・有吉保『勅撰和歌集入門 和歌文学理解の基礎』 2009.10 勉誠出版
・田中登『コレクション日本歌人選5 紀貫之』 2011.2 笠間書院
・青木太朗『コレクション日本歌人選24 忠岑と躬恒』 2012.1 笠間書院
ほか雑誌論文、ウェブサイト、美術館・博物館発行物などを参考にさせていただきました。
著者・出版社・管理人の皆様には深く感謝いたします。
また、作中に引用した歌文は、一部を現代仮名遣いに改めております。
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