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2013_07
06
(Sat)23:53

うらめしや伊右衛門様。

納涼の夏!
歌舞伎座で「通し狂言 東海道四谷怪談」を見てきました。
生きてるうちに1回は見ておきたかったので。
右下はタリーズ歌舞伎座店でゲットした鳥獣戯画手ぬぐい。
動物たちがコーヒーカップ持ってるデザインですよ(´∀`)☆

かわいい☆
鑑賞前に歌舞伎座のカフェで休憩。
写真はKABUKUーヘン。『籠釣瓶』に登場する八ツ橋花魁の履物をイメージしたバームクーヘンです。
おいしかった☆

通路だらけ。
わたしの席から見た風景。
前も右側も通路になっていて、花道が左側にありました。
役者さんたちがパタパタ駆けていくのが近くで見られて良かったよ~。
大入で席はほとんど埋まっていました。

以下、盛大にネタバレしていますのでこれからご覧になる予定の方ご注意ください。

ストーリーはあまりにも有名なので説明は省いてリンクを貼っておきます→こちら、画像つきだよ!
事前学習はほとんどせず、
過去に江戸博で見た四谷怪談のしかけ模型が等身大で見られるんだわーいヤッホーと
それだけを情熱に見に行ったのですが、
今回見てみて、『仮名手本忠臣蔵』のサイドストーリーという設定だったことにびっくりしました。
伊右衛門や与茂七って赤穂浪士なんですね!
伊右衛門が惚れるお梅の祖父・伊藤喜兵衛は吉良上野介の家来なんですね!
全然知らなかったよ。
1825年の初演では、『仮名手本忠臣蔵』と『四谷怪談』を1場面ごとに交互に上演し、
四谷怪談の大詰の後に討入りがくる展開だったらしい。
また、伊右衛門とお岩さん夫婦には実在のモデルがいるそうで
(実在の2人は四谷怪談の2人とは真逆でラブラブ夫婦だったようですが)
お岩さんが勧請したとされる於岩稲荷田宮神社は現在も残っているとか。
ちょっと行ってみたい。

さて、四谷怪談本編ですが、前半は忠臣蔵設定をベースにした世話物になっています。
説明すると長くなるので詳細は↑のページを参考にしていただければと思いますが
簡単に言うと、伊右衛門が藩の金を横領したことを知っている義父を伊右衛門が殺害し、
お岩さんの妹お袖ちゃんと結婚したい直助が、お袖ちゃんの夫の与茂七(実は別人)を殺害し、
それぞれ夫婦になるけれど
産後の肥立ちが悪くて病気になったお岩さんに伊右衛門が飽きて
こともあろうに主君の仇である吉良上野介の家来・伊藤の孫娘・梅と結婚することにして、
その伊藤がお梅ちゃんの願いを叶えたくてお岩さんに毒薬を飲ませる、までが
前半のストーリー。

今回、お岩さんを演じるのは尾上菊之助さん、伊右衛門は市川染五郎さんです。
初演時のお岩さんは3代目尾上菊五郎だったそうで、菊様はその御子孫にあたるので
お家芸というわけですな。
菊様のお岩さんはなよやかな儚げ美人でした。色じけがぽろりと落ちていてね…見とれちゃうよね。
菊様きれい~すてき~(*´∀`*)。
(先日のいいともに染ちゃんが出演したとき、「伊右衛門様へ お岩より」ってお花贈ってて笑った)
伊右衛門がとにかくダメ男でした。染ちゃん、がんばって悪人になってた。
たぶんこの役は、観客に「おまえ滅べ!」って思わせられれば大成功なんだと思う。

伊右衛門以外にも色んな人の思惑がはたらきながら話がすすむので
正直「なんだか怪談というよりカルマの話だなあ」とか、眠くなりかけながら見ていたのですが
前半のクライマックスで伊右衛門がお岩さんに対して
着物を奪ったり赤ん坊を赤ん坊とも思わなかったりと、かなり手ひどいはねつけ方をします。
(前に伊右衛門を演じた中村吉右衛門には、客席から「悪党!」の大向こうがかかったそうな)
伊右衛門が出て行ったあと、お岩さんは自分の顔が薬によって変形させられたことを知って
阿鼻叫喚するわ絶望するわで、そこから一気に怪談じみてきました。
gkbrgkbr((((;´へ`))))

お岩さんが特効薬と信じて毒薬を飲もうとするシーンで「ダメー!飲んじゃダメー!」、
毒薬を飲ませた伊藤に恨みつらみを述べようと、身支度のため髪をとかそうとするシーンで
「ダメー!とかしちゃダメー!」とか思いながら見ていました。
もうフラグ立ちまくりですよ。
やることなすこと裏目に出るお岩さんがかわいそうで…鶴屋南北ってドSなのか…?
「(こんな目に遭わされて)恥ずかしや恥ずかしや恥ずかしや」と繰り返すお岩さんの言葉が
とうとう「口惜しや!」に変わったときはドキーン!でした。
お岩さん目覚めた…!
かの有名な「うらめしや~」のセリフがここで出ましたが、後半では言わなかったですね。1回だけ。
もっと無数に言いまくってるイメージがあったので意外でした。
そして、そんなお岩さんの顔をチラ見するたび悲鳴を上げる按摩宅悦。きみちょっと黙ってようか。
この狂言にはヘタレorダメ男しかいないんですかね。

場面転換やセリフの間に、お寺の鐘の音が舞台に響きます。ごーん。
アニメ『モノノ怪』の鵺の巻みたいだ。

お岩さんのいなくなったまさにその日、伊右衛門の屋敷にお梅ちゃんが嫁入りに来ます。
はあああ右近ちゃんきれいねえ☆
さっきまでお岩さんが恨みの言葉を吐いていた部屋で結婚式が行われ、
お岩さんの亡くなった部屋がなんと初夜の場所に。
南北ってエログロなのか…?
いや南北の作品、まだこれしか見たことないからわからないんだけど。
(ちなみに四谷怪談を書いた当時、南北は71歳だったそうだ)

そしていよいよ幽霊お岩さんが人魂を従えて登場!
唐突すぎてびっくりしました。背筋がぞわわっとした。
伊右衛門がお梅ちゃんの白無垢を外したら、中身がお岩さんだった!
伊右衛門、悲鳴を上げて斬りつけた!したら倒れたのはお梅ちゃんだった!
お梅ちゃんがお岩さんに見えただけだった!
そしてまた幽霊お岩さんが現れた!
伊右衛門、悲鳴を上げて斬りつけた!したら倒れたのはお梅ちゃんの祖父・伊藤だった!
伊藤がお岩さんに見えただけだった!
とか、まあ何ともお約束な展開なのですが役者さんたちが素早い動きであっという間の出来事で
かなり怖かったです。
特に角隠しをとった瞬間にユラリと立ちあがったお岩さんの迫力は圧巻。
底冷えのする声も響いていたし。
身の毛がよだつとはこういうことを言うのだと思いました…菊様すげぇ。

ところでお岩さん役の菊之助さんは、今回の四谷怪談で
身内の病気を治したくて伊右衛門家の薬を盗んでしまう小者・小平と、
お袖ちゃんの夫・与茂七も演じています。
合計3役の早変わりがこの演目の見どころのひとつで、ここでその早変わり1回目が出てきます。
前半で、薬を盗んだのを伊右衛門に咎められた小平が押入れにおしこめられるシーンがあるのですが
お岩さんが亡くなったあと、伊右衛門が押入れの戸を開けると
そこにはものの数分で小平に早変わりした菊様が!
伊右衛門がお岩さんを罵倒する様子を、押入れの中で全部聞いていたために
「旦那様お薬くだせぇ」と断末魔を上げながら染ちゃんに斬られました。
菊之助は2度しぬ。すげぇ。初役だなんて信じられない。

で、ここまで見ていてはたと気がついたのですけど
いつもなら饒舌なイヤホンガイドが、この場面ではまったく解説をしませんでした。ほとんど無言。
たぶん観客に気を遣ってくれたんだろうな。
(歌舞伎座のイヤホンガイドは録音ではなく、担当の方が実況形式でやってくれます)
客席からも拍手もほとんどなかったし、大向こうもいつもより少なかったな…。
確かに「高麗屋!」とか景気づけてる場合じゃなかったしなあ。

季節のお弁当。
30分休憩に入ったので幕の内弁当をオープン。
食欲なくてどうしようかと思いましたが、がんばって食べました。
強烈な殺害シーンを見た後でごはん食べるのは気力と体力が要る。


後半開始。ここからお岩さん、もとい菊之助無双が始まります。
菊様はここで早変わりを3回、立ち回りを2回、幽霊になって空を飛ぶなど
やることがいっぱいありました。
隠亡堀の戸板の上でお岩さんから小平、小平から与茂七への早変わりの速さが秒単位だった!
女から男へ、死人から生きている人へ、ものの数秒、まさに全身全霊をかけた演技。
特に水門から現れた与茂七のイケメンっぷりやべーーーーー水もしたたるいい男!!
菊様も裏方もすごすぎる。あれ一体どうやってるんだろう。
席が舞台に近かったら確実に惚れてた。
「首が飛んでも動いてみせるわ」と見得を切る染ちゃんもかっこいいんだけど、
わたしはここから完全にお岩さんを応援していました。
がんばれ、がんばれ僕らのお岩さん。
(この隠亡堀の場面は浮世絵にもなっていて、以前に見たことがあります。→こちら
あと、この幕と大詰に1匹のネズミが出て人間たちをおちょくるのですが
これはお岩さんが子年生まれなので、ネズミ=お岩さんの化身、ということらしい。

大詰。
客席の照明は非常口も含めスイッチオフ。舞台のほのかな灯りだけが頼りです。
お岩さんと伊右衛門の声が、前半と比べてかなりトーンダウンしていましたね。
いきなり若き日の伊右衛門とお岩さんのラブシーンから始まります。
まだ恋人同士だったころの幸せな2人。
しかしお岩さんの顔がガラリと変わり、怯えた伊右衛門の派手な立ち回りとともに
暗いオンボロ屋敷に場面転換。
どうやら伊右衛門の夢だったらしいです。夢オチってこの頃からあるんだな…。

舞台は本所の蛇山庵室で、玄関に提灯、仏壇に南無阿弥陀仏の掛軸、同じく南無阿弥陀仏の襖。
ああ、もう、嫌な予感しかしない(笑)。
お岩さんの命日に「どうか成仏してくれ」と念仏を唱え続ける伊右衛門。
しかし祈りが届くはずもなく、
玄関先の提灯がバッと燃えあがって中からお岩さんがウルトラマンのジュワッチポーズで登場!
「提灯抜け」という仕掛けだそうです。
あれたぶん本火だよな…菊様やけどしないでね…。
(この仕掛けが北斎のこの絵の元になってるらしい)
で、「岩、迷うたか!」とか、この期に及んでまだそんなこと言ってる伊右衛門。
しかし伊右衛門への恨みのため、すっかり行動的になっているお岩さん。
ワイヤーで吊られてゆ~らゆ~らと宙を舞い、伊右衛門の母をどこかへ連れて行ってしまいます。
足を隠して、ほんとに幽霊みたい!

それにしてもわたし舞台から席遠くて良かったな、近かったら怖くて直視できなかったなとか
考えていたら
わたしの背後から、

長兵衛「ぎゃあああああああ(;; ゚Д゚)」

ゆさ&客席「ぎゃあああああああ(@Д@;;)」

びびびっくりしたーーー!!何事!!
長兵衛役の役者さんが客席の扉をバーン!と開けて飛び込んできたのですよ。
わたしの目の前の通路でぎゃああああとか叫びまくってるわけですよ。
猛烈びっくりして他のお客さんと一緒に悲鳴上げました。お化け屋敷でも叫んだことないのに!
たぶん役者さんたちは「よし!」って思っただろうけど(笑)。
(しばらく心臓バクバクでオペラグラスを持つ手がブルブル震えてしまったよ)
その後、長兵衛は舞台に走って上がり、
南無阿弥陀仏の掛軸から飛び出てきたお岩さんによって、掛軸の中に引きずり込まれてしまいます。
仏壇返しという仕掛けらしい。

そこへ、横領の罪で伊右衛門を追いかけていた同心たちがわらわら出てきて激しい立ち回り。
(歌舞伎や時代劇で同心が十手を振り回すのって、
現代ドラマで警察官が拳銃ぶっぱなしまくるのと似ている気がするな…。
どちらもありえないんだけど、ドンパチが好まれるのは昔も今も変わらないんだなあと思う)
伊右衛門が同心を追い払ったあとは、お岩さんから与茂七に早変わりした菊様登場。
やはり伊右衛門と立ち回りを演じ、伊右衛門の額を与茂七がガツンと突いたところで勝負あり。
そこでスッと芝居が止まり、染ちゃんと菊様がその場に手をついて
「まず今日はこれぎり!」と客席に頭を下げたとたん、客席と舞台の照明が一斉にパーッとつきました。
拍手喝采!!

この後、与茂七は討入りに参加するんだろうな。


いやーすごかった怖かった業が深かった。
通し狂言は鑑賞者も体力勝負だなと思いました。途中で帰る人もいたけど最後まで見て良かった。
複雑な人間模様や伏線が張られているとか、
菊之助が1人3役を演じるのも後半の早変わりを観客に楽しんでもらうための趣向だったりとか
イヤホンガイドの解説で教えてもらって勉強になりました。
仕掛けが面白く、おどろおどろしく恐ろしく、もつれた人間関係の怖さ、お岩さんの恨みと悲しみ。
一言で言い表せない舞台を久々に観ました。

役者さんはもちろん、舞台セットも囃し方も隅々まで作りこまれてすばらしかったです。
後半のからくり良かったなー。役者さんと裏方さんのタイミングがぴったり合っていた。
歌舞伎ってこんなに色んなことできるんだ!と再発見できました。
あれは演劇でしか表現できないと思う。
お囃子はずっと下座音楽で、黒御簾の中で演奏されて演奏家さんたちのお顔は見えませんでした。
効果音も怖かったよ!
この手の怪談ものに欠かせないサウンド(笛と太鼓でヒュードロドロドロというやつ)も
バッチリありました。
ナマで聴いたのは初めてですが、あれ聴くとパブロフの犬よろしく背筋がぞくっとしますね。

ちょこちょこ笑いのシーンもありました。
前半のお茶屋シーンで、地獄宿の女将に扮した中村小山三さんがお袖ちゃんを
「いま流行りの中村梅枝にそっくりなんだよぅ」って言ってた。
そっくりも何も梅枝本人が演じてるんですが(笑)、
オーシャンズ12のジュリア・ロバーツのネタみたいで笑えた。小山三さん面白いなあ。
与茂七とお袖ちゃんの再会も笑ったー。
暗闇でお互いがお互いとわからない間のかみ合わない会話に、会場で笑いが起きていました。
そしてここでも小山三さんがいけしゃあしゃあとしていい味。

四谷怪談が通しで上演されたのは久しぶりだそうですけども、
昔から四谷怪談を上演する際、役者さんたちはかならずお岩稲荷にお参りをし、
幕内では祈祷が行われ、お札なども貼ってあるそうです。
役者のみなさま関係者のみなさま、どうぞけがのないように千秋楽を迎えてくださいね。

真っ白ピカピカ。
上演が終わって外へ出ると、すっかり陽が暮れていました。
ライトアップ歌舞伎座。

絽。
本日のいでたち。帯にさしてあるのは髪飾りです。
暑かったけど地下鉄や地下道を駆使して移動したので熱中症にならずにすみました。ホッ。
歌舞伎座にも和服の人がたくさんいて、浴衣着てる人もいましたよ。かわいかった。


そういえば本日、関東は梅雨明けしたそうですね。
怪談観て心の底から涼しくなったことだし、そろそろ本気で夏を迎えねばならぬ。
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