えるしってるか、狐は月・星・日と鳴く。

万作の会の行田公演「佐渡狐」「棒縛」を行田市産業文化会館で観てきました☆
狂言師野村万作さんと萬斎さんが埼玉は行田まで来てくださるというので
友達とわあわあはしゃぎながら出かけましたよ。
会場に着いたら人いっぱいいてやっぱりわあわあ言いましたよ。
ホールには松の木を描いた能舞台セットがあってやっぱりわあわあ言いましt(もういい)
萬斎さんは映画『のぼうの城』で行田の忍城城代・成田長親を演じたのが縁で
3年前から行田で狂言の公演をなさっています。
ものすごい人気でチケットもなかなか取れないのですが、今回は取れた!良かった!!
映画の長親様をナマで見られる~~何より萬斎さんの本業が見られる~~と
(萬斎さんの本業ナマで観るの初めてだったのです)、
ずっとずっと楽しみすぎて週末はほとんど仕事になりませんでした←
チケット取ってから今日までものすごく長い日々に感じた…そして幸せな時間はあっという間だった。
( ˘ω˘ )
公演が始まる前、萬斎さんが舞台の切リ戸口からひょこっと現れて挨拶してくださいました。
先週までパリにいらしたという萬斎さん、
行田は1年ぶりとのことですがすっかりなじんでいらっしゃる様子。
「みなさんお元気でしたか、あ、お元気だからいらしてるんですね。ぼくも元気なので演技できます」とか
着物の袖からぬっと手をだして袖の下をあらわしたりとか
「狂言初めてご覧になる方~、ご覧になったことある方~」と呼びかけられて
パラパラと手が挙がるのをご覧になって「イーブンですね。野鳥の会みたい」とのお言葉に
客席から笑いが起きたりしました。
常に笑いを取ることを忘れないのが、狂言師だなあ~と思いますね。
かと思うと、「舞はふつうこんな感じ」と片手で扇を広げて優雅にひとつ舞われて
優雅に片手で扇を閉じて腰にさし何事もなかったかのようにしゃべり出したりして
ああ~狂言師だなあ!って思いました(笑)。
パンフレットを手にして演目の解説をしてくださったのですが
「これ(パンフ)よくできてますねえ、あらすじも細かく書いてあるし語句解説あるし、
ぼくの解説は要りません~」とおっしゃいながらもひとつひとつ丁寧に説明してくださいました。
「佐渡狐で年貢を納めることを『御嘉例(めでたいこと)』と表現するのは戦争がない証拠」とか
「奏者が何もないところに向かって挨拶するけど、視線の先にはお上がいる設定」とか
「舞台を一周してここが館だ、着いた!とか言ったら目的地到着です」とか
「役者が座ったらいないのと同じなのが狂言のお約束です、いるけどいません」など
裏話や狂言のイロハも交えてあってわかりやすかった。
しゃべりながら舞台を行ったり来たりしていろんなジェスチャーも混ぜてくださって
ほんとによく動く方ですね。
佐渡狐で佐渡の百姓が「佐渡に狐なんかいないだろ」とバカにされてつい「いる!」と言ってしまうのは
「狐がいないのに勝ちたいんです」という心理だとか
棒縛で「2人がお利口に留守番するとお話になりません。狂言は道徳劇はしないんです」など
狂言の本質もサラリとおっしゃった。
萬斎さんが客席にマイクを向ける場面もあって、
「いるけど(萬斎さん)」「いない(観客)」「見えてるけど(萬斎さん)」「見えない(観客)」とか
面白かったです!もはや萬斎節。
豊富な知識と経験、無邪気でたまにブラックユーモア、狂言への深い思いなど
隅々まで萬斎さんらしさに溢れたすてきな解説時間で
いっそお芝居上演中に「あ、今のはこういうわけですね」とか「はい○○さん出てきましたね」とか
実況解説つけてくれたらいいのにって思いました。
最後にちゃっかり「のぼうの城DVDが出てますのでぜひ~」と宣伝も忘れてなかった(笑)さすがだ。
「佐渡狐」は初めて見ましたが面白かったです!
佐渡に狐はいないでしょと言う越後のお百姓さんに「いる」と嘘をついてしまった佐渡のお百姓さんが
年貢を納めに行った先の奏者を買収して(笑)なんとか狐は佐渡にいるとごまかしたものの
最後に決定的な質問をされてぐぬぬ、というお話。
ちなみに佐渡に狐は今も昔もいないそうです。「トキがいる!胸を張ろう!」とは萬斎さんの談(笑)。
奏者が万作さんなのですが、かーわーいーすーぎー☆
最初ぬっと舞台に出てきたときはすごく怖い人なのかなって思っちゃったんですけど、
すぐに化けの皮が剥がれて(笑)滑稽さがそこかしこににじみ出ていました。
「ダメよーいらないよー」って大声で叫んでごまかしながらちゃっかり袖の下もらったり
(そのときの目がギョロっとして余計に滑稽だった)、
狐の姿かたちは「犬より小さい」「口は耳まで裂けてる」「尾はふっさりと太く長い」「毛はきつね色」と
丁寧に佐渡のお百姓に教えてあげたのに
肝心のお百姓が越後のお百姓にとんちんかんな返答をしてしまうのを
ハラハラしながら見守るのかわいい。
越後のお百姓の肩ごしに佐渡のお百姓へ手をバタバタさせたり口めっちゃ動かしたりボディーランゲージで
「狐ってこんなよ!」ってヒント送っててもう笑うしかない。
でもお上に挨拶したり、「狐はいる!」と頑として批判を受けつけず去っていく姿などは
それまでのアホっぽさ消滅して有無を言わさない強さがあってかっこいいです!
去年の太郎冠者も感情が七変化する面白いお役でしたけど貫禄のあるお芝居もステキ…☆
月崎晴夫氏・高野和憲氏のお百姓2人もかわいくて、
万作さんのご指導とおふたりの努力のたまものですね。
ラストで越後のお百姓が「おまえ狐はなんと言って鳴くか知ってるか」と問うて
佐渡のお百姓は奏者から狐の鳴き声までは聞いていなかったため、
ごまかしきれずに月・星・日(ツキ・ホシ・ヒ)~~~って叫んでバレてしまいます。
ちなみに月星日とは月と星と太陽のことで転じて三光をあらわし、
「ツキ、ヒー、ホシ、ホイホイホイホイホイ」と鳴く三光鳥の鳴き真似であり、
ウグイスの古い鳴き声表記でもあるとか。
昔の人の感性って美しいなあ…。
「棒縛」は狂言でおなじみの太郎冠者と次郎冠者のペアが
主人の留守中に主人のお酒を飲んでいることを咎められて
太郎冠者は棒に、次郎冠者は後ろ手に縛られてしまいながらも
一生懸命(?)に蔵にしのびこんでお酒を飲もうと奮闘するお話。
狂言の代表作ともいえる有名な作品ですので(確か歌舞伎にもなっています)、
映像で見たことはあるものの、ナマで観るのは初めてでした。
海外でもよく演じられ非常に人気があるそうです。
好きなものをガマンできずに食べたり飲んだりしてしまうのはどこの人にも共通するのでしょうね~。
太郎冠者の着物の背に鶴、次郎冠者の背に亀が描いてあって長寿のイメージでしょうか、
でもこの2人みたいな性格してたら長生きするだろうな(笑)。
萬斎さんの太郎冠者かわいすぎる!
酒樽からお酒を汲もうと右手をぐっと下げたら左足をひょっと上げてバランス取ったり
縛られた手に持った盃をがんばって口にもっていこうとしてクワーッて歯をむいたり
次郎冠者に後ろ手に盃を持ってもらってごくごく飲んで「ヒャ~~さてもさてもよい酒ぢゃ」とか
もう何もかもキュート!おキュート!!
深田博治氏の次郎冠者も負けてないかわいさ、
太郎冠者からお酒もらって一気飲みしてプハーって息ついて
「さてもさてもよい酒ぢゃ」ってすっごく幸せそうな顔するんですよ~もうお茶目さんなんだからっ♪
御主人様に叱られようが縛られようが、蔵の扉を開け(鍵を外して閂を引っ張る動作が超もえた)、
酒樽を探し当て、片方が盃を持って片方に呑ませてあげたりと
あれこれ工夫しながらお酒求めて三千里な2人を見ていると
「あーもうしょうがないなあ」って笑うしかなくて面白くてたまらない。
酔ってごきげんになってしまった2人が「カラオケ歌うみたいな感じ(萬斎さん談)」で歌い舞う姿は
縛られたまま舞う技術や表現をたくさん見ることができます。
ひょっとこみたいな顔して首を振ったりアゴを突き出したりする深田さんと
手を棒で縛られて自由がきかない中クルクルと回りながらコミカルに舞う萬斎さんの!かわいさ!!
解説で「棒縛は動きの曲です。この舞を見ていただければ
ああ、だから萬斎はのぼうの城であれだけやれたのかと思っていただけます」とおっしゃったんだけど
確かにのぼう様が縛られて踊ったらこうなるなって感じの
(シチュエーションとしてはイタズラか何かして丹波様に縛られるパターンに違いない)、
手の動きもステップも軽やかな舞でした。
しかも楽しそうにあっちこっちクルクル回ってひょうきんな表現なのに
オペラグラスで見えた萬斎さんの目はものすごい真剣だったりしてギャップ萌え。
あのまなざしはアカン…。
もし椅子に座ってなかったらしびれちゃって床に倒れて流した涙で「犯人はのむらまんs」って
途中で力尽きた非常にややこしいダイイングメッセージ書いて残したかもしれない。
きっと捜査が難航しますね。ややこしや~(にほんごであそぼ風に)。
萬斎さんはただでさえ上目づかいがぴんとして美しいので今後の舞ぜんぶあんな感じでやってほしい。
あとねあとね、次郎冠者の舞のとき萬斎さんが
「酒はもと薬なり、世はまた人の情けなり、憂き世を忘るるもひとえに酒の徳とかや」って謡ってた!
これ『のぼうの城』の酒宴でのぼう様が口ずさんでた謡じゃないか!
棒縛だったのか~♪
ラストで御主人が帰ってきて、2人の後ろに立ったのに酔った2人は全然気づいてなくて
のんきにくだ巻いたりしてるんですけど、
盃に入ったお酒にカンカンに怒った御主人の顔が映っていることにやっと気づいて
真っ青になるとこかわいかった(笑)。
御主人にお仕置きされそうになって2人は慌てて逃げ出しますが、
きっと次の日もその次の日も懲りずに同じことをして、こんな光景が繰り返されるのだろうなあ。
佐渡狐もですが、棒縛も平和な世だから起こる出来事だと思いました。
何度も言いますが萬斎さん深田さんとにかく良かった!
体当たりで笑いをとりにくる人たちはかっこいいですね~至芸。
いやー面白かった!ひさびさに劇場で大笑いしました。
友達も周りのお客さんたちも、万作さんや萬斎さんが何かするたびに声出して笑ってて
ホールの中は暗いけどとても明るい雰囲気でした。
お年寄りから若い人まで幅広い年齢層の人たちが見に来ていて、
あーこんなたくさんの人たちと一緒にさっきまで笑ってたんだなってほのぼのしました。
「劇場は役者とお客さんが笑いや涙を共有して一緒に笑ったり泣いたりする場所です。
そうして生きていることを分かち合います」という内容のことを萬斎さんが解説でおっしゃいました。
ほんとにそうだなあ。
「来年もと言われたのでぜひまた(行田に)来ようと思います」ともおっしゃってくださった。
うおおお来てください~またチケット取って観に行きます!
そして次回は裕基くんと一緒に来てくださると…うれしいな…!(アンケートには書いといた)

大入袋です!初めてもらいました(笑)。
お客さんがたくさん入ったとき配られるご祝儀のようなものだそうです。
中には万作さん・萬斎さんのお名前入りの小鉤(足袋の足首部分についてる金具)が入っていました。
行田は足袋の街ですものね(*´w`*)。
手持ちの足袋の小鉤をつけかえようかなとも思いましたが
わたしは基本的に足袋を履かないので(着物着るときはサンダルかブーツ)、
でもある日突然「履きたい」ってなるかもしれないから大事にとっておきます。
あっでも、足に万作さんと萬斎さんをくっつけるなんて恐れ多い!どうしよう。
あと、会館の前にはこんな方やこんな方がいらっしゃってのぼうの城のビラ配ってました。
かっこよかった…写メ撮りたかったなあ。
そろそろ忍城おもてなし甲冑隊の長親さまにも会いに行きたいです。
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