神の見ているもの。
前回記事で古今和歌集の七夕歌を紹介しましたが、
実はあの後、ものすごく久し振りに『土佐日記』を読み返しました。
土佐守の任期を終えた紀貫之が、土佐から都へ帰還するまでの約50日間を
仮名文字でつづった日記です。
大学時代にがむしゃらに読んでそれっきりだったのですが、ひさびさに読んだら
あれ、こんなに短かったっけと呆気にとられました。
手持ちの本で40ページしかなくて、方丈記より少し長いくらいでしょうか。
『貫之1111首』で描いたのは古今和歌集の編纂だったので
この日記は参考文献には用いなかったのですが
(貫之が土佐に赴任したのは編纂から20年以上も後の晩年期です)、
連載を終えてから読むとなかなか感慨深いものがありますな。
あんなにみずみずしい歌を詠んでいた若者がすっかり落ち着いて引継ぎや儀式をやってて、
でも歌を詠むとき理屈っぽく技巧を凝らすのは変わってなくて
なんだかずーっとご無沙汰していた親戚の男の子に再会したみたいでこそばゆい。
貫之が古今和歌集に仮名序を書いたのは30代でしたけど、
もしこの老年期に書いていたらきっともっと理屈っぽくすっきりして、それでいて情緒にあふれた
仮名序になっていたんじゃないかと思います。
六歌仙評とかあんな露骨じゃなくもっとオブラートに包んで皮肉ったりしてそう(笑)。
ところでこの日記、過去にわたしにちょっとしたきっかけをくれた日記だったりします。
1月23日の記述に「日照りて曇りぬ。「このわたり、海賊のおそりあり」といへば、神仏を祈る」とか
「二十五日、楫取らの「北風悪し」といへば、船出ださず。「海賊追ひ来」といふこと、絶えず聞こゆ」とか
書いてあるのですが、
実は貫之が土佐から海路で都へ帰った935年前後、瀬戸内海には海賊がしばしば出ていまして
4年後の939年には藤原純友が海賊たちを率いて各地を襲撃しはじめたために
小野好古を追捕凶賊使長官とする朝廷軍が鎮圧する大乱が起きたりしています。
しかし、当時のゆさはそれを同時代の出来事としてはまったく捉えていなくて
(歴史の教科書とかでは藤原純友は政治史、紀貫之は文化史で出てくるので
全然別方面から勉強していたせいもあるかもしれません)、
土佐日記の海賊の記述で「?」となって年表を確認してみたら
それまで何の接点もなかった紀貫之と藤原純友が突然ひとつの横線でつながって
「わー!貫之と純友は同じ時代に生きてたんか!そりゃそうか!」と
ものすごく納得してしまったのでした。
あぁあれはアハ体験だった…いかに歴史を縦ラインでしか見ていなかったかを自覚できた瞬間でした。
ほんとこれ読んでて良かった。
(ちなみに貫之たちはその後も海賊や大嵐のために何度か足止めをくらいながらも旅をつづけ、
和泉国に入ってやっと「海賊ものならず」とホッとしたという記述があります)
以降、何かひとつの出来事を知ったらなるべく同時代に何があったかを
調べるようにしよう~と思えたわけです。
結果、歴史の深さにどっぷりハマってもはや廃人を通り越して灰になってるのですけども
楽しいから後悔はしてない。
-=三└(┐卍^o^)卍ドゥルルルルルル
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確かおととしくらいに描いた藤原純友と小野好古。
北方謙三氏の『絶海にあらず』の純友は超かっこいいですよ!おすすめします!
*ブログ内のイラスト記事一覧はこちらです*
歴史を知れば知るほど、縦ラインだけじゃなく横ラインで調べるのが楽しくなってきて
あらこんなところにあの人が、あらこの人とあの人が同じ時代に、じゃ会ってるかもしれないじゃん!と
ロマンが広がるのを止められなくなります。
誰かと誰かが出会ってお互いに高め合ってとかヤバい、たまらない。
どうもわたしは誰かひとり英雄的な人がばーんと英雄的な大活躍をするよりも
特に何か突出してるわけでもない人たちが何人も出てきてキャッキャする方が好きみたいです。
たぶん貫之と純友のせいで「横つながり」のときめきの導火線が着火してしまったんだと思う(*´з`)。
Twitterでよく「大河ドラマの主人公で見たい人誰です」的なタグが流行するたびに
いっぱいいすぎて絞れなくて適当な人物挙げてるんですが、
もういっそ『葵徳川三代』みたいな世代ものや『翔ぶが如く』みたいな複数主人公や
『赤穂浪士』『元禄繚乱』『新選組!』みたいなパーティものなど
個人史じゃなくいくつもの人生まとめてやってくれたらいいのにって思います。
吉備真備&阿倍仲麻呂とか、最澄&空海とか、菅原清公・是善・道真とか、
戦国女性アンソロジーとか、平賀源内&杉田玄白とか、とか、etc..
それとも視点がバラけると作りにくいのかな…。
(いやでも、『炎立つ』とか『太平記』とか良かったけどな…神の視点っぽくて)
個人的な希望としてはいつかやってほしいのは文化史なのですけどね~(笑)。
万葉集・古今集・新古今集、藤原氏周辺の文化サロン、運慶・快慶、枕草子・方丈記・徒然草、
猿楽、狩野派、宗達・光琳・抱一、円山応挙と仲間たち、菱川師宣からの浮世絵史、
出雲阿国~近現代までの芝居史とか、とか。
合間に政治史も入れたらいかがでしょう、
というか文化は政治の影響をモロに受けますので入れざるをえないと思いますが。
過去の例を見ても古今和歌集は藤原時平、源氏物語は藤原道長のバックアップがありますし
世阿弥のそばには義満、利休のそばには秀吉がいました。
浮世絵の表現形式は改革の影響をその都度受けて千差万別に七変化していってるし。
文学も芝居も同じですね。
誰もひとりで作ってなくて、たくさんの人の関わりなどあらゆる影響の結果その表現があるみたいな
ドラマが見たいなあといつも思います。
来たれ群像劇(੭ु `・ω・´)੭ु
実はあの後、ものすごく久し振りに『土佐日記』を読み返しました。
土佐守の任期を終えた紀貫之が、土佐から都へ帰還するまでの約50日間を
仮名文字でつづった日記です。
大学時代にがむしゃらに読んでそれっきりだったのですが、ひさびさに読んだら
あれ、こんなに短かったっけと呆気にとられました。
手持ちの本で40ページしかなくて、方丈記より少し長いくらいでしょうか。
『貫之1111首』で描いたのは古今和歌集の編纂だったので
この日記は参考文献には用いなかったのですが
(貫之が土佐に赴任したのは編纂から20年以上も後の晩年期です)、
連載を終えてから読むとなかなか感慨深いものがありますな。
あんなにみずみずしい歌を詠んでいた若者がすっかり落ち着いて引継ぎや儀式をやってて、
でも歌を詠むとき理屈っぽく技巧を凝らすのは変わってなくて
なんだかずーっとご無沙汰していた親戚の男の子に再会したみたいでこそばゆい。
貫之が古今和歌集に仮名序を書いたのは30代でしたけど、
もしこの老年期に書いていたらきっともっと理屈っぽくすっきりして、それでいて情緒にあふれた
仮名序になっていたんじゃないかと思います。
六歌仙評とかあんな露骨じゃなくもっとオブラートに包んで皮肉ったりしてそう(笑)。
ところでこの日記、過去にわたしにちょっとしたきっかけをくれた日記だったりします。
1月23日の記述に「日照りて曇りぬ。「このわたり、海賊のおそりあり」といへば、神仏を祈る」とか
「二十五日、楫取らの「北風悪し」といへば、船出ださず。「海賊追ひ来」といふこと、絶えず聞こゆ」とか
書いてあるのですが、
実は貫之が土佐から海路で都へ帰った935年前後、瀬戸内海には海賊がしばしば出ていまして
4年後の939年には藤原純友が海賊たちを率いて各地を襲撃しはじめたために
小野好古を追捕凶賊使長官とする朝廷軍が鎮圧する大乱が起きたりしています。
しかし、当時のゆさはそれを同時代の出来事としてはまったく捉えていなくて
(歴史の教科書とかでは藤原純友は政治史、紀貫之は文化史で出てくるので
全然別方面から勉強していたせいもあるかもしれません)、
土佐日記の海賊の記述で「?」となって年表を確認してみたら
それまで何の接点もなかった紀貫之と藤原純友が突然ひとつの横線でつながって
「わー!貫之と純友は同じ時代に生きてたんか!そりゃそうか!」と
ものすごく納得してしまったのでした。
あぁあれはアハ体験だった…いかに歴史を縦ラインでしか見ていなかったかを自覚できた瞬間でした。
ほんとこれ読んでて良かった。
(ちなみに貫之たちはその後も海賊や大嵐のために何度か足止めをくらいながらも旅をつづけ、
和泉国に入ってやっと「海賊ものならず」とホッとしたという記述があります)
以降、何かひとつの出来事を知ったらなるべく同時代に何があったかを
調べるようにしよう~と思えたわけです。
結果、歴史の深さにどっぷりハマってもはや廃人を通り越して灰になってるのですけども
楽しいから後悔はしてない。
-=三└(┐卍^o^)卍ドゥルルルルルル

確かおととしくらいに描いた藤原純友と小野好古。
北方謙三氏の『絶海にあらず』の純友は超かっこいいですよ!おすすめします!
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あらこんなところにあの人が、あらこの人とあの人が同じ時代に、じゃ会ってるかもしれないじゃん!と
ロマンが広がるのを止められなくなります。
誰かと誰かが出会ってお互いに高め合ってとかヤバい、たまらない。
どうもわたしは誰かひとり英雄的な人がばーんと英雄的な大活躍をするよりも
特に何か突出してるわけでもない人たちが何人も出てきてキャッキャする方が好きみたいです。
たぶん貫之と純友のせいで「横つながり」のときめきの導火線が着火してしまったんだと思う(*´з`)。
Twitterでよく「大河ドラマの主人公で見たい人誰です」的なタグが流行するたびに
いっぱいいすぎて絞れなくて適当な人物挙げてるんですが、
もういっそ『葵徳川三代』みたいな世代ものや『翔ぶが如く』みたいな複数主人公や
『赤穂浪士』『元禄繚乱』『新選組!』みたいなパーティものなど
個人史じゃなくいくつもの人生まとめてやってくれたらいいのにって思います。
吉備真備&阿倍仲麻呂とか、最澄&空海とか、菅原清公・是善・道真とか、
戦国女性アンソロジーとか、平賀源内&杉田玄白とか、とか、etc..
それとも視点がバラけると作りにくいのかな…。
(いやでも、『炎立つ』とか『太平記』とか良かったけどな…神の視点っぽくて)
個人的な希望としてはいつかやってほしいのは文化史なのですけどね~(笑)。
万葉集・古今集・新古今集、藤原氏周辺の文化サロン、運慶・快慶、枕草子・方丈記・徒然草、
猿楽、狩野派、宗達・光琳・抱一、円山応挙と仲間たち、菱川師宣からの浮世絵史、
出雲阿国~近現代までの芝居史とか、とか。
合間に政治史も入れたらいかがでしょう、
というか文化は政治の影響をモロに受けますので入れざるをえないと思いますが。
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