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2015_01
29
(Thu)23:53

この世はヒト知れぬ生命に溢れている。

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ブックマーク浅草橋の蟲師展に行ってきました!
アニメに使われた原画や設定画、再現した小物、ギンコフィギュア、ポスカ、漆原先生の色紙など
色んなものが展示されているだけでもお腹いっぱいなのに
入場無料で一部を除き撮影可能とか超太っ腹の展示でございました。
上の写真は入口のパネルですが、これ見るだけでもサントラの続章のテーマが脳内を駆け巡るね。
シャララララン…シャン…。しみじみ。

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会場はこんな感じ。
そんなに広くなく2部屋程度なので、人が数人いるだけでも混んで見える。

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3Dプリンターで作られた「ヤドカリ貝」。かわいい☆
思わず手に取って耳に当ててみたくなります。声をなくしちゃうからしないけど。

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こんな風に砂の上に乗せられちゃうと臨場感たまりませんね。

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中に鳥いたアアァァ(゜ω゜;)
この鳥のさえずりすごくきれいだったな…。

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ものすごく感動した、美術監督の脇威志氏によるギンコの薬箱(゚∀゚)☆
裏側にちゃんと背負う用の紐もついてます!うおおすごいよー!
マンガに出てきた柔らかい角や義眼、薬研、岩笛などひとつひとつが手触りまで感じられそうな再現度で
蟲絵巻や地下水脈の地図にコンパスまであって
まるでさっきまでギンコがここにいて作業してたみたいではないかー。
こういうマンガやアニメに出てくる小物、特に主人公の秘密道具的な物の再現てほんと大好きなので
脇氏ありがとうございますありがとうございます。
箱ずっしり感あるし意外と大きかったし、これ全部入れて背負うの重たくないのかなギンコ…。
(普段からよく歩いてるし持久力はあると思うけど、体力はあんまりなさそうなイメージ)

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虚繭、虚繭!うおおお!
この、固いのか柔らかいのか見た目にはわからない絶妙な質感すばらしいです。
触れなかったけど触ってみたかった…。
よく見るといくつかの繭に穴が空いて手紙がはみ出しています。差出人はどなたかな。
もし淡幽さんだったら「そろそろ蟲の話聞かせに狩房文庫に来るように」とか書かれてそう。

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壁際には落ち葉が。
そういえばギンコはお話の半分以上は野山や砂利道を歩いてたね。

そして、100枚近くもあったアニメ原画コーナー(撮影禁止)。
続章の1話1話から数枚、人物のアップや蟲のラフ、クライマックスシーンなど
よいシーンがチョイスされていますな…。
髪の動きや目に映る光などには「繊細に」とか、花惑いの女性の首のかすかな色合いについてとか
おっかない顔したギンコには「迫力満点でお願いします」とか
動画さんに向けて色んな指示も書いてあったりして
(この1枚から原画さん動画さんのアニメーションとは、とお互いのポリシーをめぐる熾烈な駆け引きが…
とか妄想してしまうのは先日、ジブリの熱風で舘野仁美さんによる「エンピツ戦記」を読んだせいなのか、
アニメ「SHIROBAKO」をやっと見始めたせいなのか)、
ああ、この指示からあの繊細で美しい動きができあがっていったのかなと。
思えば雲や草花はゆったりと動いていたし、登場人物も重力を感じさせるような動きで
草を踏む音ひとつとってもリアリティのあるアニメよね…。
蟲の原画も、これコピー機かけたら薄くて映らないんじゃないかというくらい
ギリギリの線で優雅に描かれていて感動しました。
キャラクターデザイン画もメリハリのある線がゆったりしてました~淡幽おじょうさま美しい。
あと化野先生のチョイ悪なお顔はいつ見ても笑える。

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原画コーナーの奥にあったスタッフの皆様の寄せ書き!
声優さんを始め原画さん動画さん、色彩さん撮影さん等々、アニメ蟲師に関わった人々が
イラストなども添えてひとことずつ書いていらっしゃいました。
真ん中に大きく描かれているのがキャラデザの馬越嘉彦氏によるイケメンギンコさんですが
個人的にはここでも美術監督脇氏にほれぼれ…なんだあの家と木は。筆描きとか。五体投地。
右上の動画のギンコには「観てくださる皆様へ。こちら動画のギンコです。
こういう絵を何十枚何百枚と描いて動かしています」との
動画監督佐藤可奈子氏のありがたいお言葉がございました。頭が下がります。ひれ伏す。
あと、演出頭そ~とめ氏の「何度も魂を入れ直しました。蟲師は永遠に不滅です」のメッセージが熱い。
こんなにこんなにたくさんの人がいてアニメが作られていたんだな…。
あ。長濱監督のイラストとサインは会場の壁にでかでかとありました。かっこいいな。

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ギンコ役・中野裕斗さんのサインの隣に光脈筋を行くギンコの絵。
ぬい役の土井美加さんの優雅なサインにも見とれました。
(土井さんは後日ご来場されて壁にこんなサインを残してゆかれたらしい→こちら

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ポストカード完売!!
わたしが行ったの開催から3日目くらいだったんですけど、在庫が少なかったのか蟲師人気がすごいのか…。
会場スタッフさんによると飛ぶように、とかではなく
静かに少しずつ売れて気づいたらなくなっていたそうです。なにそれ蟲のしわざっぽい。

はあぁやっぱり蟲師はいいな(*´v`*)。
初夏に公開予定という映画「鈴の雫」も楽しみです。


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この日のランチは浅草駅のすぐ近くのカフェ「クローバー」でいただきました。
おなかすいたな~と出口を出たらすぐ目の前の「手作りシフォンケーキ☆」という看板にウィンクされたので
そのまま店内へin。
クロワッサンのサンドイッチと、2種類の味のシフォンケーキが2ピースいただけました!また寄りたい。
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2015_01
25
(Sun)23:54

400年目の先陣。

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日本橋三越にて開催中の「岡田美術館所蔵 琳派名品展」に行ってきました☆
今年は本阿弥光悦が徳川家康から京都・鷹峯に土地を拝領してから400年目の記念イヤーということで
彼と宗達に始まる琳派を顕彰する「琳派400年記念祭」が開催されるのですが
今回の展示はそのトップバッターにあたり、
箱根の岡田美術館が所蔵する作品が東京まで出張してきてくれています。
岡田さんはとてもすばらしい美術館ですが、なかなか行ける距離ではないので
機会をつくってくれてうれしい^^

入口にある尾形光琳の「蕨図団扇」はこのまま団扇にしたら売れるんじゃないかというかわいさです!
「雪松群禽図屏風」は半年前に岡田美術館で見ましたから久々の再会で、
相変わらず細かい筆致で、鴨たちのガアガアと鳴き声が聞こえてきそうな賑やかさ☆
「椿若松蒔絵螺鈿硯箱」は蓋がふっくら膨らんだ漆塗りの硯箱で
鉛・螺鈿・金高蒔絵・銀平文などあらゆる技法を駆使してキラキラにしてありました。
光琳が漆芸を行ったのは彼の曾祖母の弟が光悦であるところからの影響です。
あと、この箱と似たようなので八橋蒔絵螺鈿硯箱というのが東博にありますが、
あれはEテレのびじゅチューンで井上涼氏が面白おかしく歌にしておられますね~大好き♪

「扇面散図屏風」は俵屋宗達の号のひとつである伊年の印がついていることから
宗達の工房による作とわかります。
(あくまで宗達ブランドという意味で、宗達本人が制作に関わったかどうかは本人のみぞ知るです)
屏風いっぱいに散らばる扇が華やかです!モノクロなのに色彩が見えるというか。
宗達は画業のかたわら扇屋を営んでいましたから、扇のデザインはたくさんストックしていたろうな(^ω^)。
「花卉に蝶摺絵」は宗達が竹や藤を描いた下絵に
光悦が新古今和歌集の17巻から20歌を引用して書いたもので、保存状態がすごくきれい☆
宗達下絵・光悦書の巻物はほとんどが切断され断簡となったものが全国に散らばってしまっていて
完全に残っている巻物は4本しかなく、
そのうちのひとつである本品はほんとうに貴重ですな!
(余談ですがこの絵については先日、岡田美術館長でいらっしゃる小林忠氏が
「下絵に触発されて書も変化をつける。いわば宗達が楽器を奏で、光悦が歌うように筆を運ぶ様子を
トータルな形で鑑賞できる」とかコメントされていたのを読んだのですが
琵琶を弾く宗達と声に出して歌を詠む光悦の図が一瞬で脳内に浮かんできてしまった。
研究者の先生方ってたまに詩的なこと言いなさるよね…楽しいのでどんどんやってほしいけど)

尾形乾山の焼物もいっぱいありましたよ!
「色絵菊文透彫反鉢」も岡田美術館で見てから半年ぶりの再会です。
春草の色絵がついた角皿やお茶碗には、冒頭にあった光琳の蕨図にそっくりな絵がついてて
キャプションには書いてなかったのですが絵付をしたのは光琳かな、乾山かな。
こう、ひゅるひゅるって蕨が上に向かって伸びているのがたまらなくかわいいです☆
乾山かわいい…かわいいっ…!!(発作)
あと、めずらしいと思ったのが秋草図扇面!掛軸に表装されています!乾山の掛軸(*‘∀‘)。
たぶん光琳や抱一が描くともうちょっとこう、花や草をシュッと描くと思うんだけど
乾山はゆる~くもっさりした雰囲気で、このまま扇形の焼物のデザインにできそうだなと。
「夕顔・楓図」も、乾山の楓はリアルというより丸っこくてかわいくて
こんな和菓子あったら食べたいなあと思いました^^
美術史家の山下裕二氏が「宗達は鉈、光琳は包丁、抱一はカミソリ、其一は手術用のメス」と
どこかで例えていらっしゃいましたけど、ここに「乾山は和菓子」と付け加えたいです。
わあ、一気になごむ(笑)。

酒井抱一はいつも思うけど、空間の作り方が本当にうまいです。
「檜に啄木鳥・紅梅に鴛鴦図」とか「白梅図」「桜図」はすべて掛軸で、モチーフの配置が絶妙なバランスで
特に桜図は花もかわいくて蕾もかわいい♪
「月に秋草図屏風」はいつもの銀色の背景にピンと立ったススキ野原、空には月が描いてありますが
この月が真っ黒であるところから夜が連想できます。
掛軸の「風神図」は宗達をはじめ光琳も描いた風神雷神図から風神だけを写したものですが、
もしかすると雷神が隣にいたかもしれないそうです。出てくるといいな…。
(そういえば光琳百年忌に抱一が編集・出版した『尾形流略印譜』には
宗達の伊年印に始まる琳派絵師16人の落款が網羅され系譜でたどられているそうです。
抱一ってアーキビストでもあったのか…なんでもやりますなお江戸のプリンス)
鈴木其一の「名月に秋草図」は3幅で1セット、両脇に秋草、真ん中に満月。
特に満月に見とれてしまいました~金色の雲がうっすらかかって、背景が鮮やかな青なのに夜に見える。

「誰ヶ袖図屏風」は去年に岡田美術館で展示されていて、わたしが見たのは男性着物だけだったのですが
今回は男性・女性着物両方が出張してきてくれました!
女性着物は柄が金、赤、黒、緑など凝っていましたね。
男性着物図に書物が開いて置いてあるのですがタイトルが論語だったことに今回気づきました。
神坂雪佳「燕子花図屏風」は光琳の同作を、梥本一洋「荒磯」は宗達の松島図屏風を本歌取りしていますが
オリジナルとは異なる存在感を放っています。
速水御舟の「桃梨交枝」の、2本の枝が交差する色遣いがステキ。
そして加山又造「初月屏風」は光琳と抱一を足して2で割った絵をドアップで写したみたいな迫力です。
加山氏は京都・天龍寺の法堂に八方睨み龍を描かれた方で、あれもとても大きな天井画ですが
今回の出品作もとても大きくてエネルギーを感じた。

調べてみたら今年は各地で琳派に関する展覧会が開かれますよ!楽しみ!
とりあえず根津美術館の燕子花と紅白梅展、サントリー美術館の乾山展はチェックしまする。
(あとね…海の向こうのフリーア美術館では俵屋宗達展が開催されるらしいんだ→こちら
フリーア美術館の所蔵品は寄贈主の遺言で門外不出になっているのですが
なんとか海を渡ってきてくれないかなァ…松島図屏風が見たいよ)

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三越の外へ出たらウィンドウにこんなディスプレイが。
左上にバレンタインデーと書いてありますが、背景に出品作のオマージュが飾ってありますね^^
これは伊年印の源氏物語図屏風。

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こちらは光琳の菊図屏風。

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誰ヶ袖図屏風。


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展覧会でもっとも印象に残った扇面散図屏風のことを考えながら浅草に移動して福服さんに寄ったら
こんな着物を見つけてしまいましたー!なんという出会い。
というか緑色の着物ってなかなかないので、ほんとに今日行って良かったですよ!
いつ着ようかな(゚∀゚)。

この後、ブックマーク浅草橋に移動して蟲師展も見てきたのですが
長くなりますので次回記事に書きたいと思います。
2015_01
21
(Wed)23:47

路地裏の向こうは不思議の町でした。

行田尚希『路地裏のあやかしたち-綾櫛横丁加納表具店』を読みました。
煙草屋の隣の細い路地…綾櫛横丁を訪ねた男子高校生が
ひょんなことから横丁の表具のお店「加納表具店」に弟子入りして、
お店に(というか店主に)持ち込まれる小さな事件をひとつひとつ紐解いていく連作小説です。
よくある妖怪退治ものかと思って1年くらい読まずにいたのですが
思い切って読んだらとてもさわやかな気持ちの読後を迎えることができて
迷っていた過去の自分に「読め!いますぐ」って言うためだけにタイムマシン乗りたい。

お話そのものは非常にシンプル、特に大きな事件も起きずちょっと不思議な日常生活という感じで
全体的にサラッとした風が吹いてるみたいな雰囲気がよかったなあ。
セリフやト書きも多すぎず少なすぎず絶妙なバランス。
表具師の店主をはじめ横丁の住人たちが全員妖怪で
持ち込まれる案件がだいたい絵に関する怪異である点はまあよくあるパターンとしても、
齢数百年の店主がハンバーガーショップの新作を必ずチェックしていたり
天狗の男の子がランドセル背負って小学校に通っていたり
詐欺師の狸がカモから騙されていたり
セーターの似合う猫又が時々ふらっといなくなってまた帰って来たり
氷屋でバイトしてる雪女がコスメに夢中だったりするのはなかなかないような気がします( ˘ー˘ )。
みんな言葉が現代語で「~じゃ」とか語尾についてないのもかえってリアリティがあるというか
仕事したりハンバーガー食べたりカフェや美容院に行ったりしながらふつうに現代人やってるのが
全然違和感なく書かれていて
鬼外カルテとかRDGみたいな、隣に何気なく暮らす多様性を当たり前としているのに好感が持てました。
何より登場人物、絵や表具など古いものに対するリスペクトが感じられて(ここ超大事)、
妖怪や絵にまつわる怪異が退治されてしまうことがないのがとても良かったです。
人と異なる生き物を折伏したり排除したりする退治ものバトルものが最近どうも読めなくてですね…
こういう本と出会いたかったのですよ。食わず嫌いにしててもったいなかった。

洸之介くんがすごく誠実な男の子なのが、このお話にバランスが取れている理由かなと思います。
(もし癖のある主人公だったらかなり印象が変わると思う)
妖怪さんたちがどんなにぶっとんでいても、洸之介くんは最初は慌てるんだけど
妖怪さんたちの行動を見たり話を聞くうちに「まあこんなもんか」と水を飲むみたいにヒョイと受け入れたり、
環さんたちにお酒をすすめられても「未成年です!」って断って
自分より見た目が幼い妖怪たちが飲んでても「たぶんみんな20歳は超えてるだろう」とスルーしたりと
結構、頭回るし順応性高いなあと思う。
古いものに対しても素直に感動して、環さんの指導のもと技法を習得しながら
たまに妙な調査のために引っ張られていったりする典型的な巻き込まれ型主人公ですが
たぶん本人もまんざらではないと思ってるだろうな。お人好し少年☆
揚羽さんにオゴられたと知って仕事を断れなかったりとか、
2階から落ちかけた同級生を桜汰くんが助けたとき「あー桜汰が天狗でよかった…」って
心底ホッとしてるのとか、たまにヘタレ。
日常を失いかけてだんだん不安が膨張していくくだりは、ラストが予想できてはいてもドキドキしました。
妖怪さんたちに叱られて「ケータイ死んでました」って謝るしかないのがおかしくて笑ってしまった^^

店主の環さんのかっこよさは筋金入りですね~。
腕のいい表具師で、数百年生きてるから知識も経験もあるけどいい具合に肩の力が抜けてるから
洸之介くんにとってそんなに堅苦しい師匠ではない。
なにより普段着が着物で街へ出かけるときも着物なのが!スバラシイネ!
環さんが鮮やかなオレンジの着物姿で鰯チーズバーガーを頬張る描写が
かつて着物でマックに入って月見バーガーを食べた自分と重なって(おこがましい)、
なんだかうれしかったです。
(これで環さんが着物を洗濯機でガラガラ洗って干してアイロンかける描写があったら完璧だったわ)
猫又の揚羽さんや雪女の蓮華さんがキャッキャするのもすごくかわいくて、
でも2人とも環さんより年下とはいえ数百年生きてるから色んなことも経験してて
揚羽さんが戦争中に経験したこととか、蓮華さんがサラリと口にする葛藤とか
会話の節々にふと過去の影がよぎるのが切ない。
それを洸之介くんが黙って聞いてて、彼女たちの言葉の奥にある本音を思いやってるのがいいよね。
彼女たちも洸之介くんだから話せてるわけで、
そういう、お互いに相手の意図を汲み取れる信頼関係があるパターンは好きです。
うつけのふりとか、道化を演じてるとかね。ありがちですけど大好き。

表具に関する描写もワクワクしました!
裏打ち作業のときに紙をずらさないようにする緊張感とか、
僧侶の袈裟を表具につかったのが金地の表具の始まりみたいな豆知識とか。
糊作りで失敗してしまった洸之介くんに環さんが「裏打ちによっては腐らせた糊を使うから大丈夫」と
助け船を出しているのが、
仕事をポジティブにすすめるバイタリティを感じていいなあと思いました。
「糊ははがしやすくしておく。100年後の人が修理するときすぐに剥がせないと困るから」と聞いて
洸之介くんは目まいがしていたみたいだけど、
確かテレビで日光東照宮の修復をしていた職人さんが似たようなことおっしゃってたなあと
読んでて思い出しました。
100年後の人たちが修理する時わかりやすいように印をつけておく、みたいな言葉だったと思う。
また、「自分たちは100年前の人たちからこの仕事を引き継いだ。
100年後の人たちに恥ずかしくないような仕事をする」とも聞いたな…。
それは彼らにとってはすごいことでも何でもなくて、仕事でいつもそうしてるってだけだと思うけど。
尊敬。

そうそう忘れちゃいけない、猫又の話に凡河内躬恒の歌がふいに出て来てびっくり^^
「笹の葉におく初霜の夜を寒み しみはつくとも色にいでめや」古今和歌首巻十三・六六三番
揚羽さんは躬恒の歌と知っているのかな、環さんは作者まで教えてさしあげたのだろうか。
環さんはどこで知ったのかな、戦国時代あたりから生きてるし
彼女のお師匠建部宗由(実在の茶人)は金森宗和や小堀遠州と親交があった、当時のインテリですから
歌集とか持ってたかもしれないし。

本の帯に「文字の向こうに色彩が見えた」と選考委員の方がコメントを寄せていて確かに!とはげど。
特に環さんの着物の色彩と、怪異が解決したときに生じる色がすごく美しく思い浮かびました。

続編が出ているようなので読んでみたいと思います!
ひさびさに素敵な妖怪ものに出会えてしあわせでした☆
よい読書時間を過ごすと精神が潤いますね(´ー`)。
2015_01
17
(Sat)23:58

声に出して詠みたい日本語。

先日の歌会始の儀、お題が「本」だったそうですがぐぐってみたら
一覧が出てきました。→こちら(PDF)
思えば万葉集からの歴史上の歌集をめくっても書物そのものを詠んだ歌は見たことない気がして
去年にお題を聞いたときは「おお、新しい!」と思ったのを覚えています。
(「本歌取り」という言葉がありますけど、これは技法ですしね)

「本」の字が歌に詠みこまれていればOKとのことで、書物としての本以外の歌詠んだ方もいらっしゃるけど
わたしはやっぱり書物関係の歌に目がいってしまいますな(´▽`)。
ひとつひとつ拝読していくとうんうんわかる、そうだねそういうことあるね、
ああそういう見方も、本とのそういう付き合い方もあるのか、など頷くことばかりでした。
「恩師より贈られし本ひもとけば~」とか
「数多ある考古学の本に囲まれて~」はまさにこういう経験あるので感慨深くなったり
「あったよねこの本うちに~」の部分で今日という日を意識して泣きそうになったり
「二人して荷解き終へた新居には~」を微笑ましく思ったり
「雉さんのあたりで遠のく母の声~」に全国のお母さんお疲れ様ですって思ったり
「この本に全てがつまつてるわけぢやない~」の歌に凛とたたずむひとりの人間を夢想したり
「本の虫私がすすめて読んでゐる~」に仲良く並んで上巻下巻を読む2人の姿が浮かんだり。
本っていいなあ。
うれしかったのは、わたしの好きな歌人である今野寿美氏が参加していらっしゃったことですね~。
相変わらずとても美しい歌、「指先に起こしては」の部分がぐっときました。

あと、眺めていて、声に出して詠みたいなと思いました…。
古今和歌集のお話を描いていたときも思ったのですが、
歌は考えや情感を短冊に「書い」て「詠われ」たものなので、耳で聴くとまた別な気がします。
文字におこすときどの字を漢字にしてひらがなにするか、とかも、歌人は推敲したかな…。
おなじ理由で、詩集や句集、対談集なども読んでいてふと音読してみたくなるときがあります。
歌詞カードとかだったら歌ってみたくなる。

生まれてからずっと本と一緒に生活してきて活字に慣れているせいか、
音読は昔から得意で
国語の授業とかに句点読みや段落読みなどをすることになっても
特に間違えたりつっかえることなく読めたのはわたしの数少ない自信のひとつだったりします。
漢字も、難読漢字でない限りはだいたい読めたし
古文も(意味を理解してるかはともかく)「十二束三伏せ、弓は強し」とか音読するのは大好きでしたし…。
きれいな言葉を見つけると目で見て、手でなぞって、口に出すことが癖になっていたのとか
算数や体育がからきしダメで周りの子に後れを取っておりましたがこっちは負けないぞというのとか、
理由は色々あったかもしれない。
ただ、同じ声に出す言葉でも早口言葉はとても苦手です。。
生麦生米とか、東京特許許可局とか、きゃりーぱみゅぱみゅさんのお名前を一発で言えた例がない。

あと、いつものようにどうでもいい話なのですけど。
わたし子どもの頃に「小説や漫画を音読する」というとてもご近所迷惑な癖があって
ときどきですが今も印象的なト書きとか主人公のセリフとかついうっかり声に出しちゃって
家族に変な目で見られたりすることがあります。
最近声に出したのは「頑張ってるヤツらの邪魔するのはもっとダサいでしょ」と「え?マー坊」でした。
(両方とも千歳ヲチコチ)
いやほんと、ファッってなっちゃったので。
ヲチコチはほんと名言多いな…毎回気をつけてないと下手すると全部音読しちゃってる時ある…(;´∀`)。

声に出すといえば、Eテレでやってる『にほんごであそぼ』。
あの番組は子どもの頃に出会いたかった。今もときどき見ます。猫萬斎かわいい。


utakai.jpg
本年の和菓子初め~。
手前が歌舞伎座3F花見さんの鶴で、奥がくらづくり本舗さんの羊と本。
本は、歌会始のお題にちなんでいるそうです。
本の歌もですが和菓子も聞いたことないので、レアなお買い物ができたかもしれない☆


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2015_01
13
(Tue)23:41

天神さまのいたお江戸。

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渋谷区松濤美術館にて「天神万華鏡~常盤山文庫所蔵天神コレクションより」を観てきました。
実業家の菅原通済氏が創設した常盤山文庫から天神、つまり菅原道真さんの絵画や版画が展示され、
道真のリアルな姿というよりは学問神としてどのように画像化され信仰されてきたかが
わかるようになっていました。
どうでもいいけど天神コレクションと書かれると「天これ」と略したくなりますな…艦これみたいに。
(更にどうでもいいけど去年の猫展で初めてこの美術館を訪れたときも危うく迷子になりかけたのですが
今回もやっぱり道を間違えて道玄坂の方からくねくね辿るはめになりました…地図が読めない女←)

地下の展示室に入りますと、まずは束帯姿の道真さんたちがズラーッと出迎えてくれて壮観!
平安貴族の正装だった衣冠束帯姿の天神像で、これらは「束帯天神」と呼ばれるそうです。
すべて掛軸ですので肉筆画です!直筆です!うおおおお。
狩野派や町絵師、公家や大名家の人たちが描いた道真さんは
当たり前ですがみんな違う顔をしていました。
狩野松栄の天神は梅と松に囲まれてまじめ顔だし、酒井抱一の天神はデザインチックだし
徳川斉昭の天神は自筆自賛でなんか本人(斉昭)に似てるし。
竹沢養渓の天神像は太宰府に左遷された道真が天拝山に登って身の潔白を訴えている図で
崖の上で祈祷をする道真と、吹き付ける風が迫力いっぱいに描かれていました。

そして隣には、なんだかチャイニーズファッションな道真さんたちがまたズラーッと。
道真さんは神様になった後中国に渡って禅僧に参禅したという伝説があり、
そのときのお姿を描いた絵は「渡唐天神」と呼ばれるそうです。
梅を持ち布をかぶり、たっぷりした衣装に身を包んだ道真さんはもはや仙人であった。むむ。
さっきの束帯天神さんたちは立ったり座ったり怒ったり笑顔だったりと
割と描かれ方にバリエーションがみられたのですが、
渡唐天神さんたちはイメージが一律しているのか、皆さん正面を向いて梅の枝を持つ立ちポーズでした。
雪洞斎東敬の渡唐天神がひときわ大きな掛軸で目を引きましたけど。
(東敬さんは高田敬甫のお弟子さんだそうで、つまり曽我蕭白と兄弟弟子なのだなあと思ったら
何だか天神さんのお顔が蕭白の絵によくいる濃いおっさんに見えてしまって自分の末期度を感じた)
そんな中で仙厓の渡唐天神だけはやっぱり仙厓というか、
○に目がテンテンみたいな描き方で、この人ほんとブレませんね(笑)。
他にも、道真が流罪の途中で漁師が綱を巻いて作った円座に腰かける「綱敷天神」や、
牛に乗った姿の「騎牛天神」などもありました。
綱敷天神像は屈辱のあまり憤怒の表情で描かれることが多いそうですが
武田信廉(信玄の弟)の天神はちょっと困ったようなお顔だった。
江戸時代の騎牛天神像は牛の跳ねっぷりやばくてロデオでもしてるみたいでした(笑)。

版画もたくさんありました~。
父親の言いつけに従い月明かりで勉強する道真を描いた月岡芳年の「月百姿 菅原道真」の
道真少年のかわいいこと!
小林清親の「菅公配所之図」は3枚続きの連作で、
寒々とした月明かりの中にポツンとひとりたたずむ道真さんがな…気の毒だけど美しくてな…!
河鍋暁斎の天神は閻魔様みたいな顔に派手な束帯姿で、背景にバラの花ならぬ梅の木を背負って
赤い天幕に「天満宮」と描かれた巻物が掲げられていてカラフル~。暁斎節が炸裂していた。
歌舞伎の「菅原伝授手習鑑」に題材をとった錦絵もたくさんあって
豊国、国貞、国芳、貞秀、国周など役者絵に関してはピカイチの面々が
舞台の名場面を迫力のある筆致で描いていました。
豊原国周の「菅原道真天拝山祈之図」は、刀を振りかぶった道真の背景に
空をかけめぐる稲光が描いてあるという何とも北野天神絵巻のような作品ですが
副題に尾上菊五郎と書いてあって、おお、この方は九代目市川團十郎とともに團菊と並び称された
五代目尾上菊五郎ではないか!
ということはこれは舞台で見得を切った絵なのでしょうか、いよっ五代目!
(右上にはこの絵が描かれた年に亡くなった三条実美がワイプで描かれています。
実美が菊五郎演じる道真を夢に見ているという設定の絵だそうで
そうするとこれは死絵でもあるわけですな。国周やるなあ)
ラストは歌川広重でまとめられていました~。
「江都名所」から「湯島天満宮」と、「名所江戸百景」から「湯しま天神坂上眺望」。
特に江戸百の雪景色の湯島天神は本当に美しいと思う。

あと、鳥居清長や北尾重政の描いた「天神変相図」がおもしろかったです。
束帯・渡唐・網敷・騎牛など、天神さんが歴史上で描かれてきた像をまとめた小冊子。
お絵描きの勉強にも、天神信仰の歴史の勉強にも、画像のアーカイブにもなりそう。

今まで天神さんの画像に着目したことがなかった(というか画像の種類があるの知らなかった)ので
とても勉強になる展覧会でした。
そしてこれらは天神さんのほんの一部なわけで、まだまだ全国には無数の天神さんがいるんだよね。
束帯や渡唐などありふれたものから平賀源内のお神酒天神とかまで加えると数え切れないと思う。
…EXILEどころかAKBできるね( ̄▽ ̄)ニヤリ
東京、大阪、京都、福岡とか天満宮の多い地域から画像メンバー選抜してTMG(天満宮)48やろうぜ!
(ついでに言いますと、テレビで聞いた話ですが日本で一番多い神社は八幡宮だそうです。
で、2番目がお稲荷さんでその次が天満宮)

そうそう、入口でチケット買ったら展覧会記念の鉛筆を2本いただきました(写真参照)。
学業応援企画だそうなので受験生のみなさんもらいに行ってください!
ついでに天神さんたくさん来てるからお参りできるし。


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新宿に移動して、小田急地下の魔法の国のアリスでランチにしました。
こんなかわいいお席に通されてしまった僕はわたしは!
トランプさんと一緒にバラの花を赤く塗りたい。

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女王様の庭園サラダランチ。白うさぎが描かれたドレッシングにパンとスープがついてきます。
いつも思うけど、アリスレストランのトマトのバラ鮮やかすぎて食べるのもったいない。

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トランプ兵のチョコレートブラウニーバニラアイス添え。
庭園とトランプが揃ったからもう、バラの花を赤く塗るしかない!(まだ言ってる)

よし、これで池袋と渋谷と新宿のアリスレストランは踏破しましたよ。
あとは銀座と大阪だ!(一箇所遠いな)


で、この日はこのままのんびり新宿散歩して帰ろうと思っていたのですが、
デザートもぐもぐしながらTwitterを見ていたら
太田記念美術館さんからの天啓のようなツイートが流れてきまして→こちら
「は、え、石燕て、石燕、ちょ、待っ」とか色々詰まって
「!!!!!?????」ってなって急遽、電車で原宿駅へとんぼ返り。
石燕の肉筆画みられるのーーーうおおお!!hshs
しかしホームに出たら改札まで人だらけでものすごい行列!
休日とはいえあんなに混んでたの初めて見ましたよ、
たぶん成人式とか明治神宮の初詣とかだったんだろうな…神よこれは試練ですか。

表参道の混雑をなんとか抜けて美術館の道へ抜けたら、そこはいつものように閑静でした。
太田さんの周囲はいつも静かでホッとします。

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というわけでやって来ました、太田記念美術館「新春太田コレクション展」☆
弾む息をなんとか鎮めて(走ってきた)、チケットを買って入口をくぐると
すぐ左手がガラス張りの肉筆画コーナーになっているのですが、
なんとこの日は、ずっと見たい見たいと願い続けてきた「鶏図」「唐美人図」「布袋と唐子図」「関羽図」が!
太田さん所蔵の石燕肉筆画4点が整然と並びあそばされているー!!
まるで鳥山石燕オンリーイベントじゃありませんか、なんということ。
源氏物語を読みふける菅原孝標女のごとく、ルーベンスの祭壇画を見つめるネロとパトラッシュのごとく、
思う存分鑑賞してきましたとも…。
休日でしたがすいてたので、人を気にせず鑑賞できたのもうれしかった。

石燕というと妖怪絵師というイメージが最近はできているのかもしれませんが、
以前にも書きましたけど、当時は花鳥画、武者絵、美人画など割と何でも描く人だったので
ついでに妖怪も描いてみたらヒットしちゃった、という感じだったのではないかと思っています。
狩野派に学んだ人なので、たぶん一通りの絵は描けたんじゃないかな…。
「唐美人図」はお着替え中の女性が童子の持つ鏡を見ながら髪を結っている図で
とてもゆったりしたタッチなので見ていて気持ちがいいです。
関羽図」の関羽はとてもかっこいいですけど、勇ましさというよりは貫録十分の武将みたいな風で
そういうとこは何となくですが石燕の人柄を感じさせるような気がする。
「布袋と唐子図」の布袋さまはでっぷりした体躯を大きな袋にもたれかからせて
子どもたちと楽しげに宙を指さしていて、指先を追うと空に雁が飛んでいます。
落款に「七十二翁石燕筆」とあり、72歳のときの絵とわかっているという意味でも割と珍しい作品かなと。
鶏図」は軍鶏を1羽ずつ描いて2幅一対だと思われていたのが
近年、白い鶏が新しく所蔵に加わったそうでめでたく3点揃っての展示は初だとか。
3羽ともふわふわしてそうな尾羽にしっかりした足、カケコーと鳴き声が聞こえてきそうで
石燕の無骨な質感が伝わってくるよう。
白い鶏の表装がやはり新発見されたものだからでしょうか、青と黄色のぴかぴかの表装でしたね。
そちらも絵とともに年を重ねて味が出てくるでしょう。

(´-`).。oO(鶏といえば伊藤若冲を思い浮かべますが
よく考えたらこの2人、年は5歳しか違わないのですね。
(石燕が1712年生まれで若冲が1716年生まれ)
また、没年もそんなに変わらないので(石燕が1788年で若冲が1800年)、
ほぼ同じ年月を石燕は江戸で、若冲は京都で過ごしていたんだな…。
画風は、若冲が細部まで描きこむ人であるのに対して石燕は写実的にすっきり描く人です)

錦絵コーナーは江戸の春夏秋冬というテーマで、
江戸名所を背景に描かれた女性たちの錦絵が並んでいました。
歌川広重の名所江戸百景シリーズや江戸名所シリーズやっぱり大好きー!
「日本橋雪晴」とか「王子稲荷」とか、ほれぼれするような雪景色ですよ…はあぁきれい。
「霞かせき」は門松が出ていたり凧揚げが行われてお正月の風景。
「湯島天満宮雪晴之図」は湯島天神の美しい遠景、お昼に渋谷で天これを見てきたのでニッコリ。
「猿若町芝居顔見世繁栄の図」は顔見世興行のおめでたい一枚。
うおおぉお広重たん風景画の天才すぎるかわいい。
そして歌川国貞のブロマイド集(違)「江戸名所百人美女」ですよ…。
花魁、太夫、長唄の師匠など働く女性たちがモデルみたいなポージングもさることながら着物の柄も緻密。
それもそのはず、このシリーズは広重の「名所江戸百景」に対抗して作られた国貞晩年の作なのだとか。
なるほどそれでこんなに気合いが入っているのか。
国貞アニキはほんとにこう、人をばーんと真ん中に持ってくる絵の画面づくりがうまいですね…。
溪斎英泉の「今様美人拾二景気がかるさう」は女性の大首絵ですけども
口紅が上唇が赤で下唇が緑でした!
おお、これは当時の女性たちの間で大流行し、かの歌麿先生もよく使った笹紅というやつではないか。
去年に箱根の岡田美術館で見た「深川の雪」の女性たちが笹紅を唇に塗っていましたな。

あと、新年といえばカレンダーということで、お江戸のカレンダー「絵暦」もたくさんありました。
江戸時代の暦は太陰暦(旧暦)で、新月を始まりとしてひと月の日数を計算すると29.5日となり、
そのため29日の小の月と30日の大の月を作って小・大・小・大…と交互に並べていくのですが
閏月などの関係でその年の大小を毎年計算して決定するので月の並びも毎年変わるため、
カレンダーがとても大切だったのですが
やがて文字の他に絵を入れて楽しむようになったのが絵暦です。
今回はほとんど制作者不明の作品でしたが、
大小の月をどのように絵の中に表現するかで絵師たちの腕とセンスが光っていました☆
「鶴亀」は鶴が舞い亀が唄う図で、鶴の持つ扇子に大の月が描かれています。
「大根に鼠」は大根の白い部分に大の月が描かれ、ネズミがいることから子年であることもわかります。
「大黒」は大黒様が振る打ち出の小づちから宝珠が12個出ていてそれぞれに1~12まで数字が書かれ、
大きな宝珠は大の月、小さい宝珠は小の月を表します。
「駕籠かき」は籠に紙が貼られていて、めくると大の月が書いてあります。
「鳥追い」は2人の女が描かれ、大の字が書かれた笠の女の着物の帯には大の月、
小の字が書かれた笠の女の帯には小の月が。
「瑞亀(竜宮城)」は亀の甲羅に大の月、竜宮城に小の月が書いてあります。
何とかしてわかりやすく、絵としておもしろくしようとする心意気がバシバシ伝わってくるぜ!惚れっちまう。

太田記念さんすてきなツイートをありがとうございました!
新年早々に石燕の肉筆こんなに見られるとは思いませんでしたよ~うれしいサプライズ✧*。٩(ˊωˋ*)و✧*。
美術館初めにいいものたくさん見られてしあわせでした。ふくふく。

帰りに新宿のトゥールズに寄ってマステだけ買って帰りましたが、
街や電車の中で振袖や袴、スーツ姿の人たちをたくさん見かけました。
みなさん成人式おめでとうございます~☆
2015_01
09
(Fri)23:43

妖怪お正月気分いつまで。

仕事始めから怒涛の一週間を乗り切りました。つかれた~。
暖房が1週間以上もストップしたのでなかなか暖まらず冷え切った鉄筋コンクリートの建物内で
特盛りの新聞と郵便物を片付けるお年始。
たぶんペースに乗れるのは来週以降だと思います!新年会は内輪でやる予定。

そんなこんなでバタバタしつつもお正月気分が抜けきれないわたしに、
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福袋がやって来ました☆
たまたまベッドに開いて置いておいたらひょっこり飛び込んだ様子。


元日の新聞に紋付袴のイケメン地縛霊が見開きで載っていたので「ぴぎゃーっ」て声出て
喜び勇んでダイニングのマイチェアに貼りつけて名札代わりにしていたら、
にゃんこたちが興味津々で見つめたり隅っこへ噛みついたりしていました。
ファンヒーターの風でひらひらしてると(新聞なのでカサカサ音がするのです)じゃれつきたくなるらしい。
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「誰よこの赤いの」

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せっかくなので母に抱えてもらって背比べ。
ニャンジバさんは等身大(70cm)だそうですが、母にゃんこの方が小さいね。

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娘にゃんこはちょっと背が高かった。

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「いつまで居座るつもりかしら…」

松の内中は貼っておきたくて、本当はおとといの七草粥の日に外す予定だったんですけど
昔は成人の日だった15日までが松の内だったと聞いたので来週まで延ばすことにしました(笑)。
そんなわけでまだニャンジバさんはわたしの椅子の背におります。
ちょうど外からリビングのドアを開けて入ってくると目に入る位置にあるので
仕事から帰ってきた弟が「ジバニャンはいつまでおれを迎えてくれるの」と苦笑していて
わたしは大変満足です。
楽しければ!なんでも!いい!

(そういえば本当にどうでもいい話なのですけども。
母のクラスでも妖怪ウォッチが流行っているらしいですが、生徒に聞いてもよくわからないみたいで
先日「ジバニャンて何?」と聞かれたので「地縛霊の猫だよ」と答えたら
「ああ、そう」って返されて納得したみたいだったので、不安になって「自爆しないよ?」って言ったら
「しないの!?!?」ってものすごくびっくりされました。
どこのビリリダマとマルマインですか。
そしてさらにどうでもいいけど映画ウォッチのフユニャン(浮遊霊ね)かわいすぎて劇場に観に行きたい)

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おこたでぬくぬく。
わたしがこたつで寝ていたらお腹の上にもぞもぞやって来たわけです。
女王様そこは胃です。重いです。お正月でいろいろ食べすぎた。

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こたつの中からぴょこっと顔を出したらわたしの腕があった件。
これはよい枕。

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寝ちゃった。

というわけで2015年にゃんこの写真初めでしたー!
本年が世界中の猫たちにとって佳い年でありますように。
2015_01
05
(Mon)23:29

こいつぁ春からその4。

お正月に歌舞伎座にて壽初春大歌舞伎・夜の部を観てきました。
人生初の初日ですよ、初日!なんていい響きなんだ!(ライオンキングのティモン風に)
ほんとにチケット残ってなくて取れたのが奇跡のようでした…戻りチケット待ち続けてよかった。

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うっはあ~初めてナマで見ました、「本日初日」の垂れ幕(^▽^)。
初芝居を見ると1年間無病息災で過ごせるという縁起のよい言い伝えもあるので
やった!これで年末まで無事だぞ!
(たぶんお江戸の興行主たちの戦略でしょうけど、そういう何でもあり感は大好きです^^)

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そんなわけで初詣は歌舞伎座右手にちょこんと鎮座ましましてるお稲荷様でした~。
去年の浅草寺とは違ってゆっくりお参り。
今年も役者の皆様、裏方の皆様、観客の皆様が無病息災で過ごせますように!

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築地本願寺にも行きました。歌舞伎座から歩いて5分くらいかな。
これから見る初日のお芝居に中村屋のお兄さん、つまり勘九郎さんが出演されているのですが
こちらはその中村屋さんの菩提寺なのです。
今年も中村屋ファミリーが無病息災で過ごせますように!

あと、境内にある酒井抱一のお墓にもお参りしました。ずっと来よう来ようと思っててやっと叶った。
今年は琳派誕生400年ですよ~☆


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歌舞伎座に戻ってわたしのお気に入りのお店、5階の寿月堂さんでゴハーン☆
シーフードサンドに漬け物に温かいスープ、抹茶ロールケーキ(゚∀゚)ウマー

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木挽町広場をうろうろしてお土産を物色し、入場時間になったので会場入りすると
中はお正月飾りでいっぱい!今年の干支である羊の飾りもありました。

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おっきな鏡餅。

お客さんたちの装いもお着物やドレスなどいらして目の保養(*´ω`*)ミンナキレイ
歌舞伎座は着物のお客さんを年中見かけますが、お正月は特に多いような気がします。
芝居見物は別におしゃれしなくてもいいけど、おしゃれすると楽しいよね。

あ。イヤホンガイドを借りようとロビーを歩いていたらロバート・キャンベル先生をお見かけしました。
(席に戻って気づいたのですがわたしと同じ列に座ってらっしゃった)
あと、この日は大阪松竹座と歌舞伎座のお芝居がNHKで生中継される日だったので
2階ロビーにお花が飾られてアナウンス席ができていたりテレビカメラが並んでいたのは見かけましたが
アナウンサーの方が中継したのは上演中でしたので直接は見られず、
帰って録画を確認したらこの日の最後の演目「黒塚」のクライマックスが放送されたのですね~。
ご覧になった方いらっしゃいますでしょうか、
阿闍梨たちとのバトルで花道へ追いやられた鬼の足元にいたのがわたしです(わからんて)。

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席は花道脇でした☆スッポンが目の前~わーい✧*。٩(ˊωˋ*)و✧*。

まずは「番町皿屋敷」。
よく知られている「いちま~い、にま~い」の江戸時代の怪談を元に岡本綺堂が脚本を書いたものですが
エッセンスは残っていたけどお話はだいぶ別物でした。怪談要素ゼロだし。
主人公は中村吉右衛門さん演じる青山播磨で、
市川染五郎演じる放駒四郎兵衛らと日夜けんかに明け暮れる25歳の青年旗本のお役でした。お、おう。
染ちゃんは馬が描かれた絵馬の着物をお召しであった。だから名前に「駒」がついてるのかな。
2人がケンカしてるところへ播磨の伯母さんが仲裁に現れたので
染ちゃんが伯母さんの顔をたてて「おめぇら勘の虫を降ろせ」って子分に言うとみんな「はぁい」って返事して
たぶん「ヘイ」なんだけどはぁいに聞こえて笑っちゃった(笑)。

播磨に縁談が持ち込まれる中、播磨と相思相愛の腰元・お菊さんはすっかり気が動転しちゃって
青山家の家宝であるお皿10枚一揃いのうちの1枚を
「このお皿が割れたらあの人どうするかしら…」と考えてパリンと割ってしまいます。
おいおい。。
で、あっけなく播磨さんにバレて、最初はわざとではなくうっかりだと話していたのですが
お菊さんがお皿を割るのを目撃していた女中さんがいたのでやっぱりわざとだとバレる。
「あなたの気持ちを試してごめんなさい」と泣くお菊さんに
播磨さんは「そりゃお前の疑いは晴れたろうけどおれが疑われた恨みは晴れねぇぞゴルァ」的なセリフを
大事なことなのか2回も繰り返してお菊さんをバッターと畳に押さえつけて斬ろうとしたら
同じくお家の奴さんが来て止めてくれるのですが、
完全にスイッチオンになっちゃってる播磨さんはお菊さんに皿を出させて
「よし、1枚」ってつぶやいて、刀の鍔をがつんと当ててパリンと割っちゃった!
次、と命令されて出すしかないお菊さん、しぶしぶ「に、2枚…」と出して、また播磨さんがパリン。
3枚目もパリンとやると、奴さんが「3枚」。
続いて播磨さんがまた割って「4枚」。
5枚目を出せと迫られてお菊さんはすっかり怖がっちゃって、また斬ろうとする播磨たんを奴さんが止めて
(この奴さん急に出てきてかばってくれたんですけど、お菊さんのこと好きなんですかね…
それとも同僚として心配してるんすかね…よくわからなかった)
しかし奴さんが止めるのも聞かずお菊さんはバサーと斬られてしまいます…うーわー…。
たぶん元のお話へのオマージュでしょう、2人がかりで庭の井戸の中にお菊さんをするりと落として
もうどうにも止まらない播磨さんは「もはや自分の生きる道はケンカしかない!」と顔を真っ赤にして
花道をぴゃーっと走っていってしまったのでした。

疑われたのくやしい→わかる 疑われた恨みは晴れない→まあわかる
お菊皿を出せ→? お菊いないからケンカする→???
やばい岡本綺堂わからないわ…わたしもまだまだ修行が足りませんな…(゚∀゚)。

都内にはお菊さんのお墓がいくつかある(!)らしいのでそのうち行けたらいいな。

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本日のお弁当。柿の葉寿司と隈取チーズ蒸しパンをいただきました☆


続いて「女暫」。
團十郎歌舞伎十八番のひとつ「暫」の男性主人公を、女性主人公に変えて演じられるものです。
もともとは江戸時代の毎年11月に行われる顔見世興行の演目だったらしく、
セリフの随所に「吉例」「顔見世」などがあり当時の演目であることがしのばれます。
顔見世は1年間の雇用契約を結んだ新規の役者たちが初めて行う最初の興行のことで、
女性主人公の演目の主役は立女形(座のトップの女形)がつとめたそうです。
今回の主役は坂東玉三郎様ですよー美人様ですよっ☆

平家追討の武功を上げた源範頼が、部下たちと北野天満宮で宴会をしているところから幕開け。
局の唐糸(笑也さんきれいだったー!)を始め、部下たちが祝儀を言う中、
清水義高(錦之助さんの若武者姿は端正で美しい)に「横柄ですよ」とか何とか諌められ、
義高の恋人紅梅姫(梅丸くん初めて見ましたが愛らしい姫様)に求婚するもフラれて機嫌を損ねた範頼は
お相撲さんみたいな太鼓腹(腹出しというらしい)の成田五郎とその部下たちを呼び出して
こいつらを斬れーと命じます。
男女蔵さんの成田五郎は花道からのっしのっしとご登場。強そうでした!

そこへ「しーばーらーくー」と花道の奥から声が!
さらに「しーばーらーくー」「しばらく、しばらく、しーばーらーくー」と声がしてシャリーン!と揚幕が開くと
裾の長い着物をたくしあげ、男ver.と同じく盛りに盛った髪型に柿色の長素襖を抱えた
勇ましい巴御前がのしのしと歩いてきます!
出たー!!玉さまーーうわああああかっこいい(*^▽^*)☆
幕が開くと同時に飛ぶ「大和屋!」の大向こうと万雷の拍手。盛り上がりましたよー!
おめえら義高さんに何すんじゃワレェ(意訳)とスッポン近くに陣取ってものすごい目つきで舞台を睨むので
成田さんたち何もできなくなっちゃいます。。
(巴さんが「赤いぽっぽの兄さんたち」と呼ぶところで笑いが起きてました)
範頼の部下の震斎(耳元から長い髭が出ていて鯰と呼ばれているから震斎?)が
「あっち行けよ」と言っても、お顔をプイッとそむけちゃってガン無視。かわゆい☆
それどころか、本番中なのに茶後見の團子ちゃんにお茶持ってきてもらってくつろいでるし(笑)。
そこへ同じく範頼の部下若葉(七之助)が「あら~誰かと思えば大和屋の姉さん」と玉さまに近づくから
一気に楽屋っぽくなって客席大爆笑!
玉さまも「おや、中村屋の姉さん」と応じてました。
「ちょいと下がって」「どこへ」「揚幕の方へ」「あい、と言いたいところでござんすが、イヤでござんす」
「そんなこと言わずに」「んん?(ひと睨み)」「アレー」
と、若葉は逃げてしまって、震斎に「わたしではダメでござんす」と訴えます。
そんな、七之助が無理なら一体誰ができるんだよ…というわたしの気持ちをよそに(おまえのは関係ない)、
震斎がチャレンジするも、やっぱり巴さんのひと睨みで退散しちゃう(笑)。
上司に顔向けできなくて若葉に頭で鞠つきしてもらってごまかすのですが
七之助と又五郎のタイミングがなんとなく合ってないのは初日ゆえのご愛嬌かな^^

その後も成田五郎とか奴連中とか(巴さんが刀を振るだけで奴凧のように飛ばされてた)、
敵をひとりでバタバタ倒しながら舞台にやって来て
「巴がここにあるからには、ご安心召されませ」と義高さんに語りかけ、
範頼に「義高さんの刀・くりから丸をどこへやった、返せ」と迫る巴さんマジかっこいい。
すると若葉ちゃんが「わたしがくりから丸を隠していました。持ってきて~」と花道に向けておっしゃる。
七之助は味方だったのねーうきゃー☆
花道から手塚太郎(この人は実在の人物で手塚治虫氏のご先祖だそうだ)がくりから丸を持ってくると、
義高さんは満足して紅梅姫と部下たちを連れて花道を帰っちゃいます。。
七之助がスッポン付近で一旦立ち止まりしゃなりと着物を揺らしての引っ込みで猛烈美しかった(´Д`)。
巴さんは大刀を一振りして敵軍団全員の首をバッサーって飛ばして勝利のポーズ!
(ゴロゴロした首は後見さんたちがせっせと回収していってた)
花道に戻って来た玉さま、再びくるりと舞って勝利のポーズ☆
このとき初めて気づいたのですが刀が客席にはみ出さんばかりの長さでした!
重たいだろうな…などと思っていたら、万雷の拍手とともに定式幕が引かれ大盛り上がりだったのですが
終幕とともに玉さま、花道にへたりこんじゃった!
「ああ疲れた。衣装重いし刀も重いし、早く楽屋行って着物脱ぎたいわ」などと楽屋の雰囲気でおっしゃって
なんだこれかわいすぎるだろ(五体投地)!!!!!
そこへ舞台番(舞台を監視する人)の格好をした吉右衛門さんが舞台袖からご登場~☆
アナタちゃんと引っ込みしなきゃダメよ、早く六法やりなさいヨ、え、できないの?ってことで
花道での六法稽古がいきなり始まっちゃった!
こうした幕切れ後の寸劇は「ご馳走」と呼ばれるそうです。
「ぼくは成田屋や播磨屋(ご自分・笑)の兄さんので覚えましたからね、こうしてこうして、バーッタリ」とか
吉右衛門さんから一通り教えてもらった玉さま、
「オオ恥ずかし」と言いながら見事に六法を決めて引っ込まれましたが、刀を置き忘れて帰っちゃった(笑)。
仕方がないので吉右衛門さんが持って帰ってました。

かっこかわいい玉さまとか、美しすぎる七之助とか、人間国宝同士による寸劇とか
なんだこりゃ新年早々どんなサービスデーなの、まさにご馳走のような一幕でした☆
玉さまは背が高くていらっしゃるので巴御前のようなお役は映えますな!

そういえば、亡くなった十二代目團十郎さんの「暫」をテレビで見たことがあるのですが
「女暫」とはやっぱりいくつか異なる点がありますね。
震斎と照葉(女暫では若葉)が花道の男に声をかける順番が逆だし、刀の名前が「いかづち丸」だし
刀を持ってくるのは小金丸行綱です。
あと、わたしが見たときは照葉(女暫では若葉)を当代三津五郎さんがつとめておられたので
花道でのやりとりは「まあ、成田屋の夏雄兄さん」、團十郎さんが「おや、大和屋の寿兄さん」でした。
ここは演じる役者さんごとに異なるのでしょう。
ラストは男が花道で見得を切り六法で引っ込んで、ご馳走はなし。
男性版と女性版、どちらもおもしろい内容です。気になる方は見比べてみてくださいね。


休憩を挟んで、最後はいよいよ「黒塚」です!
新しい歌舞伎座が開場して2年弱!とうとう!四代目猿之助が襲名披露公演で演じた「黒塚」をひっさげて
この舞台にやってきましたよ!!
一体いつ来てくれるのかと首をなが~~くして待っていました。めでたい\(^o^)/
染ちゃんもブログでお祝いコメントを寄せてくださってました→こちら
何にしてもめでたい!おめでとうおめでとう!今後は定期的に出演するのかなあ。

黒塚は能「安達原」を歌舞伎化した舞踊劇で、
初代猿之助がロシアに留学したときロシアンバレエで見た爪先で回る演技などを取り入れて
さらに能にはない鬼の心情を語るくだりも加えて作られています。
かなり能よりわかりやすいんじゃないかな…イメージが固定しやすいということでもあるけど。

舞台と客席の照明を全部おとした真っ暗な幕開けで、
風を表現する太鼓のトントントントン…という音だけが響きます。ドキドキ。
やがて灯りがぽつぽつともって、花道から阿闍梨祐慶ら3人のお坊さんが宿を求めて歩いて来ます。
祐慶は中村勘九郎兄さん。美坊主(´∀`)☆
(猿之助・勘九郎は亀治郎・勘太郎時代に浅草でよく一緒に舞台に立っていましたけど、
お互いに襲名してからの共演は今回が初めてだそうです。
ちなみに猿之助襲名披露公演のときの祐慶は亡くなられた十二代目團十郎さんでした)
ススキ野原に一軒のあばら屋を見つけた祐慶たち、
一晩泊めてくださいな~と家主に声をかけますと
ここでスルスルと御簾が上がり老婆・岩手に扮した猿之助が糸車を回していたー!!
「澤瀉屋!」「四代目!」と、待ってました的な大向こうが飛び交い大きな拍手が起こって
岩手がセリフしゃべってたんですけどほとんどかき消されてました(笑)。
やっぱり待ってた人たちいっぱいいたんだなーいたよねーわたしも待ってたよっ(´▽`)。

で、岩手が祐慶たちを家に招き入れるのですがこの演目、歌舞伎にしては珍しくセットが簡素で
舞台上には岩手の小さな家と垣根、ススキしかないのですね。
「能を意識しているので、垣根をくぐったらもう部屋の中と思ってください」と
頼もしいイヤホンガイドさんが教えてくれました。なるほどー。
ささやかな身の上話をした岩手は、阿闍梨たちのために山へ薪を拾いに行こうとするのですが
奥の部屋を指さしてお決まりの文句「あれなる閨を決してご覧じあるな」とつぶやいて
さらに垣根のところで「ゆめゆめ…」と釘をさして出かけていきます。
阿闍梨さんたちは言いつけを守って閨を見ないのですが、連れの強力さんは気になって仕方なくて
軽妙な動きで阿闍梨さんたちの目を逃れて閨を覗いてしまって、
室内が死体だらけなのに驚いて「ギャー!」と叫び声を上げて腰を抜かしてしまいます。
これきっと、能の安達原でいうところの間狂言(狂言師がつとめる場面)なんだと思う(笑)。
わかるよ強力さん、妖怪不祥事案件でいうところの「押すなよ、絶対に押すなよ」というか
禁じられるとかえってやりたくなって、ついやってしまって後悔するアレですね(違)。
寿猿さんはこういう愛嬌のあるお役が本当にかわいらしい(´ω`)。
で、阿闍梨さんたちが「さては噂に聞く鬼のすみかであったか!」と戦闘態勢に入って、暗転。

第2場。
三日月をバックにススキ野原を行く岩手が、
先ほど祐慶に「罪を償って仏の教えを守れば成仏できるよ」と教えてもらったのを思い出しながら
ふと地面に落ちている自分の影に気づいて戯れ舞い始めるという美しい場面。
もう、もう、猿之助の踊りのセンスが思いっきりはじけてましたー!
月影とともに舞う鬼ってだけでもツボなのに
それが猿之助で、しかもナマで見られるとか!今日はご馳走デーですか。
さっきまでの沈んだ表情はどこへやら、すっかり童心に戻ってクスクス笑いながら舞う鬼を
猿之助が柔らかな踊りとしぐさで表現していました。
とても品があって軽やか、おばあちゃんなのでそんなに激しい動きはないんだけど
しっとり豊かな感情がすごく伝わってきましたよ。
人生で一番気分がいい日とでも言うような、
祐慶たちに出会えたことでわたしでも成仏できるかも…と心からうれしそうな。
踊っている拍子に、一瞬、白杖を頭の上にくいと上げて自分の影を見たら角のように見えて
しまった本性を出してしまったか…と勘違いするけど
頭に手をやってああ、影かとホッとする一連の表情の演技がすごい!

そんなだから、ヒャーヒャー叫びながら山を登って来た強力が
閨を覗いてしまったとわかったときの怒りの表情がとてつもなくおっかなかった。。
客席を向いて仁王立ちになり、くわっと目をむいて口をぱっくり開くと舌が真っ赤!
同時に青白い照明がパーッと猿之助にピンスポで当たっておどろおどろしさ倍増!!
寿猿さんだけじゃなく客席も叫んでましたよ、うおおお。
さらに祐慶たちも駆けつけて来ておのれ鬼めーとか言うから
完全に怒った岩手はススキ野原の向こうへトンボ返りで消えてしまい(これがパーフェクトな身のこなし!)、
腰が抜けて動けないながらもコサックダンスのようなパフォーマンスを見せてくれた強力さんにも拍手。
信じられますか、80代ですよ寿猿さん…澤瀉屋一門ってのは一体どうなってるんすか…。

第3場。
暗転した舞台袖にスポットが当たり、伴奏の大薩摩さんたちが見せつけてくれました~。
琴と三味線をかき鳴らして岩手の心情を歌い上げてくれます。
(このときイヤホンガイドさんが「大薩摩はすでに後継者が絶えて長唄連中がつとめています」と
まるでご近所でも紹介するようにさらりとおっしゃって、
「ふーんそうなんだ……ゔあ!?」って声出るところだった)
舞台中央にはススキ野原に囲まれて鐘がひとつ。(能『道成寺』へのオマージュだそうです)
祐慶たちが駆け込んでくると、鐘がぱっくり割れて
中からざんばら髪をふり乱し派手な隈取をほどこした鬼(猿之助)が現れた!
さあ阿闍梨vs鬼バトルの始まり~!
ここでも猿之助の身体能力は花が咲くように爆発していて、
阿闍梨たちにやり込められそうになって膝立ちでグルグル回ったり
鉄杖をブンブン振りながら襲い掛かったりと忙しい。
なにしろ髪の量が多いし着物も大きくて袴の裾さばきが難儀だろうなと思うんですけど、
少なくとも見た目は難なくこなしていく猿之助まじ…神かよ…。
鬼が袴をバサー!とするだけで風が起きるような迫力があります。やっべー!!
阿闍梨たちも負けずに数珠を鳴らして応戦、
勘九郎兄さんの祐慶がどっしり構えて他の2人がサポートする形で
鬼をじりじり追い詰めていきます。
花道のスッポンまで追い詰められた鬼がわたしの目の前でもだえ苦しんで
急にふっ…と力が抜けて棒立ちになり、そのまま海老ぞりで後ろに倒れるかと思いきや
ひゅっと前向きに、真っ正面からバッタリ倒れちゃって客席から悲鳴が上がりました!
仏倒しといって仏像がバタリと倒れるような演技とのことです。なんという演技名。かっこよすぎか。
あと、この倒れる場面は3年前の襲名披露公演だと一瞬だけ暗転してたんですけど
その演出やめたのね、
倒れ込む寸前すばやく両手をついてパッと立ちあがり、そのまま花道で阿闍梨たちとともに見得!
かかかっこいいーーーーー!大拍手!!!
阿闍梨たちの法力で舞台に引き戻されるときも、ただ引っ張られるだけじゃなくて
後ろ向きにジャンプしながら舞台まで立て膝でダンダンダンダンッ! と戻っていく
あの身体能力マジどうなってんの…。
かつて「うますぎるから下手に演じてください」と某演出家に注文つけられた伝説を持つ彼は
一体どこまでいくんだろう、と根本的なことを考えたりしました。たぶん答えは出ない。

そして力尽きて阿闍梨たちに鎮められてしまう鬼の悲しさ切なさは
能でも見たけど泣くねえ…。
あー負けちゃった…って泣いてるみたいで、こちらも涙が出てきました。
三味線の音がりょうりょうと響き、最後はしいん、と静まり返った舞台の真ん中で鬼が、
阿闍梨たちが舞台袖付近で見得を切って幕切れでした。
さっきまでの戦いが嘘のような、とても余情のあるラスト。拍手喝采。すばらしい。

猿之助が歌舞伎座に来るのをずっと待っていた観客の期待に応える以上の熱演だったと思うよ!
襲名披露公演はテレビで見ていて、テレビでも充分すばらしかったのですけど
今回ナマで、しかも花道脇で衣擦れや息遣いさえ全身で感じられるあの席で観劇できて
本当によかったです。
彼はよく「走り続ける勇気」という言葉を使いますが、
そうだね色んなもの背負いながら調子のいいとき悪いときもありながら舞台に立ち続けるんだろうな…。
立ち止まらずに進化してゆく様をしっかり見せていただきました。
なんていうのかな、新聞のインタビューでも語ってたけど座が新しくなろうが古くなろうが関係なく
彼はいつものようにお稽古して芸を高めてこれからも走り続けていくのだろうな。とても楽しみです。
長生きしなきゃ…(´ω`)。

「黒塚」は元になった能「安達原」を3年前に見ましたけども
能が静かで底冷えする怖さでドキドキするのに対して
歌舞伎は派手な動きで「うおお回った!跳ねた!倒れた!戻った!うわー」ってひたすら興奮して
特に鬼と阿闍梨たちのバトルはずーっと心臓バクバクしてて終わったら汗かいてて寒かったです…。
新年早々の観劇でこんなに消耗するとは思いませんでしたが、
新年早々の観劇が今日のこの演目でほんとによかったなあ、とも。

あと、歌舞伎座初出演の方は猿之助だけではなかったみたいです。→こちら
お琴を弾く人たちが3人いらして、うちおふたりが女性でした。どちらかがおばあさまだったのかな。


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本日のいでたち+初売りでゲットした風呂敷バッグ。
着物に合うのが欲しかったからうれしい~。

以上、2015年の歌舞伎初めレポでした!
今年もちょこちょこ演目さがして、いっぱいいいものを見ていきたいな。
2015_01
01
(Thu)23:59

2015年が明けました&80000ヒットありがとうございます☆

゚・:*:・。♪☆彡★Happy New Year★ミ☆♪。・:*:・゚
あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
2015年が皆様にとってすばらしい年になりますように。

では、毎年恒例のやついきます。ゆさ的2015年はこんな年です↓

2015年は
吉備真備生誕1320年。
文室綿麻呂生誕1250年。
高野山開創と、賀陽豊年没後1200年。
『古今和歌集』成立から1110年。
『往生要集』成立から1030年。
マティルデ・ディ・カノッサ没後900年。
蓮華王院(三十三間堂)創建から850年。
壇ノ浦の戦いから830年。
ダンテ・アリギエリ生誕750年。
ヤン・ファン・エイク生誕620年。
グーテンベルクの聖書完成から560年。
ミケランジェロ・ブオナローティ生誕540年。
成田長親生誕470年。
海北友松没後、大坂夏の陣、本阿弥光悦が鷹峯に移住してから400年。
ヨハン・セバスティアン・バッハ、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル生誕330年。
宋紫石生誕300年。
礒田湖龍斎、歌川豊春、葛蛇玉、皆川淇園生誕280年。
長谷川宣以(鬼平)生誕270年。
四代目鶴屋南北、マリー・アントワネット、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ生誕260年。
十返舎一九生誕と、吾妻錦絵の誕生から250年。
『蘭学事始』完成と、鳥居清長没後200年。
坂本龍馬、松平容保、土方歳三、伊東甲子太郎生誕180年。
中島歌子、新島八重生誕170年。
平田玉蘊没後160年。
エリザベス・ギャスケル没後、『ふしぎの国のアリス』刊行から150年。
大田垣蓮月没後、上村松園生誕140年。
中勘助生誕130年。
大阪松竹座・松竹創業120年。
永倉新八、斎藤一、小林清親、ジャン・アンリ・ファーブル没後と、本間一夫、ターシャ・テューダー生誕と、ナショナル ジオグラフィック協会地図部門発足と、ウェゲナー『大陸と海洋の起源』刊行と、荒川堤の桜のお礼にワシントンよりハナミズキが贈られてから100年。
エドワード・ゴーリー生誕と、東京放送局による日本初のラジオ放送開始と、世界初のプラネタリウム公開から90年。
『小さなトロールと大きな洪水』『三台の機関車』刊行と、アンネ・フランク没後と、太平洋戦争終結と、改正衆院議員選挙法公布から70年。
『広辞苑』初版刊行と、雑誌「なかよし」「りぼん」創刊60年。
映画『サウンド・オブ・ミュージック』公開と、国立市公民館で日本初の託児つき講座が行われてから50年。
『カーテン』刊行と、リトルツインスターズ誕生と、ベトナム戦争終結と、C1(第1回コミックマーケット)開催から40年。
スタジオジブリ設立と、男女雇用機会均等法施行から30年。
阪神淡路大震災と、「スレイヤーズ」「ロミオの青い空」「新世紀エヴァンゲリオン」放送と、『ゴジラvsデストロイア』公開から20年。
杉浦日向子、ローザ・パークス没後と、スペースシャトル「ディスカバリー」打上げから10年。
第3新東京市への使徒サキエル襲来と、“ともだち”復活と、マーティ・マクフライが1985年からタイムスリップしてくる年。
(そろそろストップ)
今年もいろんなことが目白押しの1年になりそうです。

今日は祖父母の家にお年賀の挨拶へ行き、初売りも行ってきました。
母とわたしが車を出したのですが、助手席に乗った叔母から
「姪っ子の車で出かけるとかさあ、ちょっと感慨深いわ~」と言われました。どうもありがとう。
明日は、歌舞伎座にて壽初春大歌舞伎です。人生初の初日観劇ひゃーい!お天気持ってくれ。

newyear2015.jpg※クリックで大きくなります
お年賀イラスト。
去年が歌人シリーズからの桜ちゃんだったので、今年は風神・雷神です。
また、年末にカウンターが八万回を超えましたので、ダブルでお祝いさせていいただきます☆
ぴゃーーーっはちまんだ、はちまん!!(゜▽゜)
ちょっとまだ信じられないのですが、いつも来てくださる方拍手やコメントや感想をくださる方、
本当に本当にありがとうございます!
みなさまからの励みを糧に2015年もマイペースに続けてまいります。

一週間ほどフリー配布いたします。
もらってくださる方いらっしゃいましたらどうぞお持ち帰りください☆
※イラストの配布期間は終了しています。

今年も色々な行事がありますよ。
琳派400周年関係の展示観に行って、ヒカリ展とマグリット展と若冲と蕪村展と新橋のワンピ歌舞伎観て
ジブリ美術館の展示が変わるから行って、図書館とか映画とか舞台も行って本読んでお絵かきする!
光琳&乾山と、抱一&其一の連載もがんばる!
あと高野山と比叡山と、新幹線に乗って金沢行きたいー!!