お正月に歌舞伎座にて壽初春大歌舞伎・夜の部を観てきました。
人生初の初日ですよ、初日!なんていい響きなんだ!(ライオンキングのティモン風に)
ほんとにチケット残ってなくて取れたのが奇跡のようでした…戻りチケット待ち続けてよかった。

うっはあ~初めてナマで見ました、「本日初日」の垂れ幕(^▽^)。
初芝居を見ると1年間無病息災で過ごせるという縁起のよい言い伝えもあるので
やった!これで年末まで無事だぞ!
(たぶんお江戸の興行主たちの戦略でしょうけど、そういう何でもあり感は大好きです^^)

そんなわけで初詣は歌舞伎座右手にちょこんと鎮座ましましてるお稲荷様でした~。
去年の浅草寺とは違ってゆっくりお参り。
今年も役者の皆様、裏方の皆様、観客の皆様が無病息災で過ごせますように!

築地本願寺にも行きました。歌舞伎座から歩いて5分くらいかな。
これから見る初日のお芝居に中村屋のお兄さん、つまり勘九郎さんが出演されているのですが
こちらはその中村屋さんの菩提寺なのです。
今年も中村屋ファミリーが無病息災で過ごせますように!
あと、境内にある酒井抱一のお墓にもお参りしました。ずっと来よう来ようと思っててやっと叶った。
今年は琳派誕生400年ですよ~☆

歌舞伎座に戻ってわたしのお気に入りのお店、5階の寿月堂さんでゴハーン☆
シーフードサンドに漬け物に温かいスープ、抹茶ロールケーキ(゚∀゚)ウマー

木挽町広場をうろうろしてお土産を物色し、入場時間になったので会場入りすると
中はお正月飾りでいっぱい!今年の干支である羊の飾りもありました。

おっきな鏡餅。
お客さんたちの装いもお着物やドレスなどいらして目の保養(*´ω`*)ミンナキレイ
歌舞伎座は着物のお客さんを年中見かけますが、お正月は特に多いような気がします。
芝居見物は別におしゃれしなくてもいいけど、おしゃれすると楽しいよね。
あ。イヤホンガイドを借りようとロビーを歩いていたらロバート・キャンベル先生をお見かけしました。
(席に戻って気づいたのですがわたしと同じ列に座ってらっしゃった)
あと、この日は大阪松竹座と歌舞伎座のお芝居がNHKで生中継される日だったので
2階ロビーにお花が飾られてアナウンス席ができていたりテレビカメラが並んでいたのは見かけましたが
アナウンサーの方が中継したのは上演中でしたので直接は見られず、
帰って録画を確認したらこの日の最後の演目「黒塚」のクライマックスが放送されたのですね~。
ご覧になった方いらっしゃいますでしょうか、
阿闍梨たちとのバトルで花道へ追いやられた鬼の足元にいたのがわたしです(わからんて)。

席は花道脇でした☆スッポンが目の前~わーい✧*。٩(ˊωˋ*)و✧*。
まずは「番町皿屋敷」。
よく知られている「いちま~い、にま~い」の江戸時代の怪談を元に岡本綺堂が脚本を書いたものですが
エッセンスは残っていたけどお話はだいぶ別物でした。怪談要素ゼロだし。
主人公は中村吉右衛門さん演じる青山播磨で、
市川染五郎演じる放駒四郎兵衛らと日夜けんかに明け暮れる25歳の青年旗本のお役でした。お、おう。
染ちゃんは馬が描かれた絵馬の着物をお召しであった。だから名前に「駒」がついてるのかな。
2人がケンカしてるところへ播磨の伯母さんが仲裁に現れたので
染ちゃんが伯母さんの顔をたてて「おめぇら勘の虫を降ろせ」って子分に言うとみんな「はぁい」って返事して
たぶん「ヘイ」なんだけどはぁいに聞こえて笑っちゃった(笑)。
播磨に縁談が持ち込まれる中、播磨と相思相愛の腰元・お菊さんはすっかり気が動転しちゃって
青山家の家宝であるお皿10枚一揃いのうちの1枚を
「このお皿が割れたらあの人どうするかしら…」と考えてパリンと割ってしまいます。
おいおい。。
で、あっけなく播磨さんにバレて、最初はわざとではなくうっかりだと話していたのですが
お菊さんがお皿を割るのを目撃していた女中さんがいたのでやっぱりわざとだとバレる。
「あなたの気持ちを試してごめんなさい」と泣くお菊さんに
播磨さんは「そりゃお前の疑いは晴れたろうけどおれが疑われた恨みは晴れねぇぞゴルァ」的なセリフを
大事なことなのか2回も繰り返してお菊さんをバッターと畳に押さえつけて斬ろうとしたら
同じくお家の奴さんが来て止めてくれるのですが、
完全にスイッチオンになっちゃってる播磨さんはお菊さんに皿を出させて
「よし、1枚」ってつぶやいて、刀の鍔をがつんと当ててパリンと割っちゃった!
次、と命令されて出すしかないお菊さん、しぶしぶ「に、2枚…」と出して、また播磨さんがパリン。
3枚目もパリンとやると、奴さんが「3枚」。
続いて播磨さんがまた割って「4枚」。
5枚目を出せと迫られてお菊さんはすっかり怖がっちゃって、また斬ろうとする播磨たんを奴さんが止めて
(この奴さん急に出てきてかばってくれたんですけど、お菊さんのこと好きなんですかね…
それとも同僚として心配してるんすかね…よくわからなかった)
しかし奴さんが止めるのも聞かずお菊さんはバサーと斬られてしまいます…うーわー…。
たぶん元のお話へのオマージュでしょう、2人がかりで庭の井戸の中にお菊さんをするりと落として
もうどうにも止まらない播磨さんは「もはや自分の生きる道はケンカしかない!」と顔を真っ赤にして
花道をぴゃーっと走っていってしまったのでした。
疑われたのくやしい→わかる 疑われた恨みは晴れない→まあわかる
お菊皿を出せ→? お菊いないからケンカする→???
やばい岡本綺堂わからないわ…わたしもまだまだ修行が足りませんな…(゚∀゚)。
都内にはお菊さんのお墓がいくつかある(!)らしいのでそのうち行けたらいいな。

本日のお弁当。柿の葉寿司と隈取チーズ蒸しパンをいただきました☆
続いて「女暫」。
團十郎歌舞伎十八番のひとつ「暫」の男性主人公を、女性主人公に変えて演じられるものです。
もともとは江戸時代の毎年11月に行われる顔見世興行の演目だったらしく、
セリフの随所に「吉例」「顔見世」などがあり当時の演目であることがしのばれます。
顔見世は1年間の雇用契約を結んだ新規の役者たちが初めて行う最初の興行のことで、
女性主人公の演目の主役は立女形(座のトップの女形)がつとめたそうです。
今回の主役は坂東玉三郎様ですよー美人様ですよっ☆
平家追討の武功を上げた源範頼が、部下たちと北野天満宮で宴会をしているところから幕開け。
局の唐糸(笑也さんきれいだったー!)を始め、部下たちが祝儀を言う中、
清水義高(錦之助さんの若武者姿は端正で美しい)に「横柄ですよ」とか何とか諌められ、
義高の恋人紅梅姫(梅丸くん初めて見ましたが愛らしい姫様)に求婚するもフラれて機嫌を損ねた範頼は
お相撲さんみたいな太鼓腹(腹出しというらしい)の成田五郎とその部下たちを呼び出して
こいつらを斬れーと命じます。
男女蔵さんの成田五郎は花道からのっしのっしとご登場。強そうでした!
そこへ「しーばーらーくー」と花道の奥から声が!
さらに「しーばーらーくー」「しばらく、しばらく、しーばーらーくー」と声がしてシャリーン!と揚幕が開くと
裾の長い着物をたくしあげ、男ver.と同じく盛りに盛った髪型に柿色の長素襖を抱えた
勇ましい巴御前がのしのしと歩いてきます!
出たー!!玉さまーーうわああああかっこいい(*^▽^*)☆
幕が開くと同時に飛ぶ「大和屋!」の大向こうと万雷の拍手。盛り上がりましたよー!
おめえら義高さんに何すんじゃワレェ(意訳)とスッポン近くに陣取ってものすごい目つきで舞台を睨むので
成田さんたち何もできなくなっちゃいます。。
(巴さんが「赤いぽっぽの兄さんたち」と呼ぶところで笑いが起きてました)
範頼の部下の震斎(耳元から長い髭が出ていて鯰と呼ばれているから震斎?)が
「あっち行けよ」と言っても、お顔をプイッとそむけちゃってガン無視。かわゆい☆
それどころか、本番中なのに茶後見の團子ちゃんにお茶持ってきてもらってくつろいでるし(笑)。
そこへ同じく範頼の部下若葉(七之助)が「あら~誰かと思えば大和屋の姉さん」と玉さまに近づくから
一気に楽屋っぽくなって客席大爆笑!
玉さまも「おや、中村屋の姉さん」と応じてました。
「ちょいと下がって」「どこへ」「揚幕の方へ」「あい、と言いたいところでござんすが、イヤでござんす」
「そんなこと言わずに」「んん?(ひと睨み)」「アレー」
と、若葉は逃げてしまって、震斎に「わたしではダメでござんす」と訴えます。
そんな、七之助が無理なら一体誰ができるんだよ…というわたしの気持ちをよそに(おまえのは関係ない)、
震斎がチャレンジするも、やっぱり巴さんのひと睨みで退散しちゃう(笑)。
上司に顔向けできなくて若葉に頭で鞠つきしてもらってごまかすのですが
七之助と又五郎のタイミングがなんとなく合ってないのは初日ゆえのご愛嬌かな^^
その後も成田五郎とか奴連中とか(巴さんが刀を振るだけで奴凧のように飛ばされてた)、
敵をひとりでバタバタ倒しながら舞台にやって来て
「巴がここにあるからには、ご安心召されませ」と義高さんに語りかけ、
範頼に「義高さんの刀・くりから丸をどこへやった、返せ」と迫る巴さんマジかっこいい。
すると若葉ちゃんが「わたしがくりから丸を隠していました。持ってきて~」と花道に向けておっしゃる。
七之助は味方だったのねーうきゃー☆
花道から手塚太郎(この人は実在の人物で手塚治虫氏のご先祖だそうだ)がくりから丸を持ってくると、
義高さんは満足して紅梅姫と部下たちを連れて花道を帰っちゃいます。。
七之助がスッポン付近で一旦立ち止まりしゃなりと着物を揺らしての引っ込みで猛烈美しかった(´Д`)。
巴さんは大刀を一振りして敵軍団全員の首をバッサーって飛ばして勝利のポーズ!
(ゴロゴロした首は後見さんたちがせっせと回収していってた)
花道に戻って来た玉さま、再びくるりと舞って勝利のポーズ☆
このとき初めて気づいたのですが刀が客席にはみ出さんばかりの長さでした!
重たいだろうな…などと思っていたら、万雷の拍手とともに定式幕が引かれ大盛り上がりだったのですが
終幕とともに玉さま、花道にへたりこんじゃった!
「ああ疲れた。衣装重いし刀も重いし、早く楽屋行って着物脱ぎたいわ」などと楽屋の雰囲気でおっしゃって
なんだこれかわいすぎるだろ(五体投地)!!!!!
そこへ舞台番(舞台を監視する人)の格好をした吉右衛門さんが舞台袖からご登場~☆
アナタちゃんと引っ込みしなきゃダメよ、早く六法やりなさいヨ、え、できないの?ってことで
花道での六法稽古がいきなり始まっちゃった!
こうした幕切れ後の寸劇は「ご馳走」と呼ばれるそうです。
「ぼくは成田屋や播磨屋(ご自分・笑)の兄さんので覚えましたからね、こうしてこうして、バーッタリ」とか
吉右衛門さんから一通り教えてもらった玉さま、
「オオ恥ずかし」と言いながら見事に六法を決めて引っ込まれましたが、刀を置き忘れて帰っちゃった(笑)。
仕方がないので吉右衛門さんが持って帰ってました。
かっこかわいい玉さまとか、美しすぎる七之助とか、人間国宝同士による寸劇とか
なんだこりゃ新年早々どんなサービスデーなの、まさにご馳走のような一幕でした☆
玉さまは背が高くていらっしゃるので巴御前のようなお役は映えますな!
そういえば、亡くなった十二代目團十郎さんの「暫」をテレビで見たことがあるのですが
「女暫」とはやっぱりいくつか異なる点がありますね。
震斎と照葉(女暫では若葉)が花道の男に声をかける順番が逆だし、刀の名前が「いかづち丸」だし
刀を持ってくるのは小金丸行綱です。
あと、わたしが見たときは照葉(女暫では若葉)を当代三津五郎さんがつとめておられたので
花道でのやりとりは「まあ、成田屋の夏雄兄さん」、團十郎さんが「おや、大和屋の寿兄さん」でした。
ここは演じる役者さんごとに異なるのでしょう。
ラストは男が花道で見得を切り六法で引っ込んで、ご馳走はなし。
男性版と女性版、どちらもおもしろい内容です。気になる方は見比べてみてくださいね。
休憩を挟んで、最後はいよいよ「黒塚」です!
新しい歌舞伎座が開場して2年弱!とうとう!四代目猿之助が襲名披露公演で演じた「黒塚」をひっさげて
この舞台にやってきましたよ!!
一体いつ来てくれるのかと首をなが~~くして待っていました。めでたい\(^o^)/
染ちゃんもブログでお祝いコメントを寄せてくださってました→
こちら何にしてもめでたい!おめでとうおめでとう!今後は定期的に出演するのかなあ。
黒塚は能「安達原」を歌舞伎化した舞踊劇で、
初代猿之助がロシアに留学したときロシアンバレエで見た爪先で回る演技などを取り入れて
さらに能にはない鬼の心情を語るくだりも加えて作られています。
かなり能よりわかりやすいんじゃないかな…イメージが固定しやすいということでもあるけど。
舞台と客席の照明を全部おとした真っ暗な幕開けで、
風を表現する太鼓のトントントントン…という音だけが響きます。ドキドキ。
やがて灯りがぽつぽつともって、花道から阿闍梨祐慶ら3人のお坊さんが宿を求めて歩いて来ます。
祐慶は中村勘九郎兄さん。美坊主(´∀`)☆
(猿之助・勘九郎は亀治郎・勘太郎時代に浅草でよく一緒に舞台に立っていましたけど、
お互いに襲名してからの共演は今回が初めてだそうです。
ちなみに猿之助襲名披露公演のときの祐慶は亡くなられた十二代目團十郎さんでした)
ススキ野原に一軒のあばら屋を見つけた祐慶たち、
一晩泊めてくださいな~と家主に声をかけますと
ここでスルスルと御簾が上がり老婆・岩手に扮した猿之助が糸車を回していたー!!
「澤瀉屋!」「四代目!」と、待ってました的な大向こうが飛び交い大きな拍手が起こって
岩手がセリフしゃべってたんですけどほとんどかき消されてました(笑)。
やっぱり待ってた人たちいっぱいいたんだなーいたよねーわたしも待ってたよっ(´▽`)。
で、岩手が祐慶たちを家に招き入れるのですがこの演目、歌舞伎にしては珍しくセットが簡素で
舞台上には岩手の小さな家と垣根、ススキしかないのですね。
「能を意識しているので、垣根をくぐったらもう部屋の中と思ってください」と
頼もしいイヤホンガイドさんが教えてくれました。なるほどー。
ささやかな身の上話をした岩手は、阿闍梨たちのために山へ薪を拾いに行こうとするのですが
奥の部屋を指さしてお決まりの文句「あれなる閨を決してご覧じあるな」とつぶやいて
さらに垣根のところで「ゆめゆめ…」と釘をさして出かけていきます。
阿闍梨さんたちは言いつけを守って閨を見ないのですが、連れの強力さんは気になって仕方なくて
軽妙な動きで阿闍梨さんたちの目を逃れて閨を覗いてしまって、
室内が死体だらけなのに驚いて「ギャー!」と叫び声を上げて腰を抜かしてしまいます。
これきっと、能の安達原でいうところの間狂言(狂言師がつとめる場面)なんだと思う(笑)。
わかるよ強力さん、妖怪不祥事案件でいうところの「押すなよ、絶対に押すなよ」というか
禁じられるとかえってやりたくなって、ついやってしまって後悔するアレですね(違)。
寿猿さんはこういう愛嬌のあるお役が本当にかわいらしい(´ω`)。
で、阿闍梨さんたちが「さては噂に聞く鬼のすみかであったか!」と戦闘態勢に入って、暗転。
第2場。
三日月をバックにススキ野原を行く岩手が、
先ほど祐慶に「罪を償って仏の教えを守れば成仏できるよ」と教えてもらったのを思い出しながら
ふと地面に落ちている自分の影に気づいて戯れ舞い始めるという美しい場面。
もう、もう、猿之助の踊りのセンスが思いっきりはじけてましたー!
月影とともに舞う鬼ってだけでもツボなのに
それが猿之助で、しかもナマで見られるとか!今日はご馳走デーですか。
さっきまでの沈んだ表情はどこへやら、すっかり童心に戻ってクスクス笑いながら舞う鬼を
猿之助が柔らかな踊りとしぐさで表現していました。
とても品があって軽やか、おばあちゃんなのでそんなに激しい動きはないんだけど
しっとり豊かな感情がすごく伝わってきましたよ。
人生で一番気分がいい日とでも言うような、
祐慶たちに出会えたことでわたしでも成仏できるかも…と心からうれしそうな。
踊っている拍子に、一瞬、白杖を頭の上にくいと上げて自分の影を見たら角のように見えて
しまった本性を出してしまったか…と勘違いするけど
頭に手をやってああ、影かとホッとする一連の表情の演技がすごい!
そんなだから、ヒャーヒャー叫びながら山を登って来た強力が
閨を覗いてしまったとわかったときの怒りの表情がとてつもなくおっかなかった。。
客席を向いて仁王立ちになり、くわっと目をむいて口をぱっくり開くと舌が真っ赤!
同時に青白い照明がパーッと猿之助にピンスポで当たっておどろおどろしさ倍増!!
寿猿さんだけじゃなく客席も叫んでましたよ、うおおお。
さらに祐慶たちも駆けつけて来ておのれ鬼めーとか言うから
完全に怒った岩手はススキ野原の向こうへトンボ返りで消えてしまい(これがパーフェクトな身のこなし!)、
腰が抜けて動けないながらもコサックダンスのようなパフォーマンスを見せてくれた強力さんにも拍手。
信じられますか、80代ですよ寿猿さん…澤瀉屋一門ってのは一体どうなってるんすか…。
第3場。
暗転した舞台袖にスポットが当たり、伴奏の大薩摩さんたちが見せつけてくれました~。
琴と三味線をかき鳴らして岩手の心情を歌い上げてくれます。
(このときイヤホンガイドさんが「大薩摩はすでに後継者が絶えて長唄連中がつとめています」と
まるでご近所でも紹介するようにさらりとおっしゃって、
「ふーんそうなんだ……ゔあ!?」って声出るところだった)
舞台中央にはススキ野原に囲まれて鐘がひとつ。(能『道成寺』へのオマージュだそうです)
祐慶たちが駆け込んでくると、鐘がぱっくり割れて
中からざんばら髪をふり乱し派手な隈取をほどこした鬼(猿之助)が現れた!
さあ阿闍梨vs鬼バトルの始まり~!
ここでも猿之助の身体能力は花が咲くように爆発していて、
阿闍梨たちにやり込められそうになって膝立ちでグルグル回ったり
鉄杖をブンブン振りながら襲い掛かったりと忙しい。
なにしろ髪の量が多いし着物も大きくて袴の裾さばきが難儀だろうなと思うんですけど、
少なくとも見た目は難なくこなしていく猿之助まじ…神かよ…。
鬼が袴をバサー!とするだけで風が起きるような迫力があります。やっべー!!
阿闍梨たちも負けずに数珠を鳴らして応戦、
勘九郎兄さんの祐慶がどっしり構えて他の2人がサポートする形で
鬼をじりじり追い詰めていきます。
花道のスッポンまで追い詰められた鬼がわたしの目の前でもだえ苦しんで
急にふっ…と力が抜けて棒立ちになり、そのまま海老ぞりで後ろに倒れるかと思いきや
ひゅっと前向きに、真っ正面からバッタリ倒れちゃって客席から悲鳴が上がりました!
仏倒しといって仏像がバタリと倒れるような演技とのことです。なんという演技名。かっこよすぎか。
あと、この倒れる場面は3年前の襲名披露公演だと一瞬だけ暗転してたんですけど
その演出やめたのね、
倒れ込む寸前すばやく両手をついてパッと立ちあがり、そのまま花道で阿闍梨たちとともに見得!
かかかっこいいーーーーー!大拍手!!!
阿闍梨たちの法力で舞台に引き戻されるときも、ただ引っ張られるだけじゃなくて
後ろ向きにジャンプしながら舞台まで立て膝でダンダンダンダンッ! と戻っていく
あの身体能力マジどうなってんの…。
かつて「うますぎるから下手に演じてください」と某演出家に注文つけられた伝説を持つ彼は
一体どこまでいくんだろう、と根本的なことを考えたりしました。たぶん答えは出ない。
そして力尽きて阿闍梨たちに鎮められてしまう鬼の悲しさ切なさは
能でも見たけど泣くねえ…。
あー負けちゃった…って泣いてるみたいで、こちらも涙が出てきました。
三味線の音がりょうりょうと響き、最後はしいん、と静まり返った舞台の真ん中で鬼が、
阿闍梨たちが舞台袖付近で見得を切って幕切れでした。
さっきまでの戦いが嘘のような、とても余情のあるラスト。拍手喝采。すばらしい。
猿之助が歌舞伎座に来るのをずっと待っていた観客の期待に応える以上の熱演だったと思うよ!
襲名披露公演はテレビで見ていて、テレビでも充分すばらしかったのですけど
今回ナマで、しかも花道脇で衣擦れや息遣いさえ全身で感じられるあの席で観劇できて
本当によかったです。
彼はよく「走り続ける勇気」という言葉を使いますが、
そうだね色んなもの背負いながら調子のいいとき悪いときもありながら舞台に立ち続けるんだろうな…。
立ち止まらずに進化してゆく様をしっかり見せていただきました。
なんていうのかな、新聞のインタビューでも語ってたけど座が新しくなろうが古くなろうが関係なく
彼はいつものようにお稽古して芸を高めてこれからも走り続けていくのだろうな。とても楽しみです。
長生きしなきゃ…(´ω`)。
「黒塚」は元になった能「
安達原」を3年前に見ましたけども
能が静かで底冷えする怖さでドキドキするのに対して
歌舞伎は派手な動きで「うおお回った!跳ねた!倒れた!戻った!うわー」ってひたすら興奮して
特に鬼と阿闍梨たちのバトルはずーっと心臓バクバクしてて終わったら汗かいてて寒かったです…。
新年早々の観劇でこんなに消耗するとは思いませんでしたが、
新年早々の観劇が今日のこの演目でほんとによかったなあ、とも。
あと、歌舞伎座初出演の方は猿之助だけではなかったみたいです。→
こちらお琴を弾く人たちが3人いらして、うちおふたりが女性でした。どちらかがおばあさまだったのかな。

本日のいでたち+初売りでゲットした風呂敷バッグ。
着物に合うのが欲しかったからうれしい~。
以上、2015年の歌舞伎初めレポでした!
今年もちょこちょこ演目さがして、いっぱいいいものを見ていきたいな。