錦の生まれる日。
太田記念美術館の「錦絵誕生250年 線と色の超絶技巧」展に行ってきました☆
錦絵と呼ばれる多色摺版画の技法が1765年に確立されてから今年で250年になるのを記念して
版画制作における技法、つまり職人のテクニックにスポットを当てた展覧会です。
髪や雨、蚊帳、着物の細かな柄、藍色、雲母など
版画における彫師と摺師のスゴ技がたくさん紹介されておりました(*‘∀‘)hshs
浮世絵の展覧会って「北斎の富嶽三十六景」とか「広重の東海道五十三次」など
絵師に注目が集まることが多いですが、
彫師摺師の技にクローズアップするのってあまりないので貴重な展示だと思うし
技術を知ることで絵の見方も変わるし何より楽しめるようになるからオススメですよ~。
浮世絵はまず墨摺絵といって、菱川師宣の頃に墨一色だけで描かれ始めて
鳥居派や奥村政信の頃に紅絵や紅摺絵など2~3色の色がつけられるようになり、
やがて今日のその時(笑)である1765年にフルカラー版画である錦絵が誕生し、
歌麿や写楽を経て技術が磨かれていき北斎や広重に至るわけですが
今回はそういった流れをじっくり追いながら技術・技巧をピックアップしていく構成になってました。
墨摺絵に赤が入ったときも画期的だったでしょうけど
やはり錦絵が販売され始めた頃の衝撃は相当なものだったろうなと思います。
その渦中にいた鈴木春信はその可憐な絵柄と多色摺技術をともに駆使して
生涯に膨大な量の作品を残しております。
絵柄も春信のような柔らかく繊細な画風が好まれるようになりましたしね。
あああ鶏を抱える少女も五月雨に降られる女性たちも遊女野風もかわいいっ☆
春信の頃は、たぶんまだ版画をフルカラーにするだけで精一杯だった浮世絵界も
20年ほど経って歌麿や写楽の時代になると様々な技巧が凝らされるようになります。
たとえば有名なのが歌麿の美人大首絵の髪の毛。
日本髪を結い上げた女性の、耳に透ける毛の1本1本は1mmの間に数本彫っているそうで
作業は師匠格の彫師レベルの高い技術が必要とされます。
女性の耳元とか見てるだけでも難易度高すぎて惚れそうになる。
他にも広重の大はしあたけの夕立に描かれる無数の雨粒や
歌麿の蚊帳の男女に描かれる蚊帳、
英泉や国貞の美人画に描かれる着物の模様の複雑さと細かさ、
国芳が得意とした彫り物(刺青)の神がかり的なまでの再現率、
背景にびっしり書き込まれた手紙のくずし字、
英山の両国涼みの図に描かれる橋や川の景色と花火見物をする数百人もの群衆、
北斎の諸国滝巡りに使われるベレインブラアウのグラデーション、
広重の「月に兎」の柔らかい青色と紙の白い部分に月を残す技術、
写楽の黒い背景に使われる雲母、
春信の雪中鷺で紙に凸凹をつけることで表現された雪など、など。
錦絵を鑑賞する際には彫師・摺師についてももちろん思いを馳せるようにしてますけど
こうして列挙されると改めて職人さんたちの技術の高さに震えるばかりです。
春信のやつし費長房には絵師である春信の名前の他に
「彫工:森下里朝、摺工:小川八調」とあって、うおお署名が三つある~~って感動しました(;o;)
絵に入れられるのはだいたい絵師の名前だけで、彫師摺師の名前ってなかなかないので…。
国貞や芳年の絵にも大海屋久五郎という名の摺師の名前が入っていました。
特に芳年とか筆のタッチが特徴的な絵師は彫りで再現するの難しかったろうなあ…
彫師にも「あの先生は癖があっていけねぇ」とか、
「自分の彫りはあの先生と合うからやらせろよ」とか相性みたいなものがあったかもしれないと思うと
何だか楽しくなってくる。
現代美術家さんたちによる錦絵もありました。
加山又造の「濤」は真っ赤な波模様をバックに2羽の鶴が飛翔していて
鶴の飛ぶ姿が大変美しく、波模様も優美な曲線でどんだけ時間かけて再現したんだって感じ。
中島千波「大島桜」。中島氏は桜の画家と呼ばれますがまさにその真骨頂が発揮されたというか
写実的な桜の一枝の淡いグラデーションの摺りがみごと。
勝井三雄「鎖された形態」や田中一光「ロープ 原」は何となくマグリットを連想しました。
山口晃氏の新東都名所シリーズは日本橋も芝の大塔も細部まで描きこまれているけど
彫りは氏のタッチが余すところなく再現されてて、
摺りも氏の絵を見慣れている人間が見てもちゃんと山口晃って感じする。
彫師と摺師の仕事って細かいだけではなく、絵師の人柄やタッチまで再現するのだと驚きました。
前期後期で展示品が総入れ替えになりますし、
後期には春信の「猫と蝶」が出てくるらしいから何が何でも行かねば!
あのきめ出し技術すばらしすぎて1秒たりとも見逃せない!!

美術館を出る前に地下1階にあるかまわぬさんへ寄り道しました。
手拭い運動法顔はめパネル(笑)。
ランチは渋谷ヒカリエに移動していただくことにしていたので
予想最高気温35度の炎天下の中、日傘と道沿いのお店から漂う冷気だけを友達にして
(ファミマには3回くらい助けられました)、
なんとか熱中症になることもなく10分ほどてくてく歩きまして。

ヒカリエ地下にあるよーじやカフェに無事到着。お手ふきが看板娘柄でかわいい~☆
ちりめんじゃこと野菜パスタをいただきました。さっぱりしておいしい。

デザートにいただいたお豆腐ティラミス。
黒糖シロップのスポンジと黒豆の上にとろりとした豆腐チーズクリームが乗っておりまして
まろやかでトロピカルな味でした。ご馳走様でした~!
よーじやのあぶらとり紙は昔からお世話になっています^^
京都の三条通にある三条店とカフェはずいぶん前に行ったきりですがまだやってるのかな。
あと銀閣寺店は畳でお食事できると聞いたので行ってみたい。
お腹もいっぱいになりましたので、銀座線で日本橋に移動しまして
三井記念美術館の「春信一番!写楽二番!錦絵誕250年フィラデルフィア美術館浮世絵名品展」も
行ってまいりました☆
会期は2期あって作品がほぼ入れ替わるのですが、前期は先月行ってきまして今回は後期だったので
感想まとめて書きます(・ω・)ノ
前期は絵師のセンスや画風の変化などに注目して楽しんで、
後期は太田さんで技法の勉強をしてから行ったせいかいつもより彫師・摺師の仕事に目がいきました。
あれだけ色々見せられちゃうと意識せざるを得ない。
とか言いつつ最初に目がいくのはやっぱり鈴木春信ですけどね(*´∀`*)。
前期にあった「水売り」は初期の春信を語るうえで必ず紹介される絵ですけども
本物を見たことがなかったので見られてよかったです。
笛を吹く若衆かわいいし、葦の葉に乗って川を渡る達磨もかわいい。
那須与一を地紙売として描いてたり、伊勢物語武蔵野を夜にまぎれて逃避行してるっぽい男女にしたり
やつしに関しては本当に春信は力とセンスを発揮しますね。
やつし三酸は絵師未詳となっていたけど
(儒教・同郷・仏教の男性たちが桃花酸を口にする三聖吸酸図を、女性に置き換えた絵)、
春信が描いたのだったらいいなあ。彼の十八番ですし。
なんというか、春信の絵は前後が想像できておもしろいなあと思うのです。
その絵に至るまでの出来事があって、その絵になって、その後また何か起こるんだろうなって
動きというか時間の流れがあるような気がする。
たぶんその人物のふとした時間を切り取ったような絵が多いからかもしれない。
後期にあった「若侍の身支度」という、若者の身支度を女性が手伝っているときに
ふと2人の目が合った一瞬をとらえている絵でたいへん微笑ましいのですが、
いや絵もいいのですがそれより何よりわたしがびっくりしたのは署名でしてね。
春信の署名は絵師なのでまあ当然としても、
その隣に「彫工:遠藤五緑、摺工:湯本幸枝」と書いてあるじゃないですか!
なななんてこったーーーシカゴ美術館所蔵の「夕立」を彫って摺ったゴールデンコンビではないか!
キャプションには絵暦であることの説明がされていて、1765年制作らしいので
つまり夕立とほぼ同時期に制作された可能性があり今年で250歳ってわけだ。
お正月にこの絵暦が夕立と一緒に配られた可能性があるわけだ。ヒャッホーイ(゚∀゚)☆
何ということでしょう、フィラデルフィア美術館さんよく残しておいてくださいました。ありがとう。
あと前期に初摺が、後期に後摺が展示されていた「井出の玉川」は
それぞれ人物の着物の柄が異なっていて、
明らかに後摺の方が版木が摩耗していたのか主版が荒く見えました。
浮世絵は人気のある絵は版を重ねて出版されたり
もともと絵暦だったのを暦の部分だけを消して摺ることもありますので、こういったことがよくあります。
春信の前、墨摺絵~紅絵のころの作品もありまして
個人的には奥村政信の「半装束美人揃 小野之小町」が気に入りました。
能の草子洗小町に取材した絵でつややかな小町と細かすぎる着物の模様に感動。
鳥居清満の「初代佐野川市松の宗の井」、着物の市松模様がきれいな紅色。
市松模様は佐野川市松が着た衣装の模様が由来になっていまして
そういう流行に一役かったのも浮世絵だったんだろうなと思う。
大森善清の「紅葉狩」は平維茂と鬼の戦いを描いた画帖からの抜粋で
墨摺絵ですが紅が少々使われていまして、維茂と鬼の目が血走ってた(^^;)。
色がなくても迫力や美しさを出すための工夫が随所に見られて職人魂を感じる。
歌麿や写楽の頃になると大量生産が可能になるのでシリーズものや3枚ものが増えてきて
絵柄はまだ優雅でみずみずしい感じがしますな…。
歌麿の描く髪の毛にやっぱり目がいきましたね~描いた歌麿もすごいし、
彫師の名前がないのでどなたが彫ったのか存じませんが惚れ惚れするような細さと完璧さ。
清長の8頭身美女たちは着物の柄がとても凝っていてひたすら描きこんでいますし
やっぱり再現した彫師と1ミリもずらさず色を摺った摺師の腕に拍手。
写楽の絵は彼の全盛期だった第1期の大首役者絵が展示されていて
いつものことですが歌麿や清長の後に写楽を見るとあまりに絵柄が違いすぎてびっくりします。
こりゃ一般庶民も役者さん本人も戸惑ったろうなあ…。
背景の雲母摺は見る角度と照明によって輝きが微妙に変わるのがやっぱりおもしろいです。
北斎の雪月花や諸国滝廻り、富嶽三十六景の頃になると
風景画はスッキリ、花鳥画や人物画はより細かくという風に流行が変わっている。気がする。
凱風快晴は何度も見ているので正直食傷ぎみでしたけど
絵師だけじゃなく彫師と摺師もどんなにがんばった作品であるかは素人なりにわかるので
これからも色んな人に愛されていってもらいたい。
広重の「亀戸天満宮境内雪」が冬景色を描いた作品なのですが
紙の白色を見事に生かしていてため息ものです。きれいー!
あまりに気に入ったので展示を最後まで見た後もう一度戻って見てきてしまった^^
広重や国芳、英泉など多くの絵師が手がけた千社札をクリッピングした
「千社札貼込帖」は初めて見る代物でした~。
参拝記念として神社でもらえる千社札がペタペタ貼りつけてあって、なんだか御朱印帳みたい。
あと、北尾雪坑斎という絵師を初めて知りましたが
展示されている絵本『彩色画選』は1767年刊行だから春信と同時代の人ですね~。
布袋やふくろう、雛人形のページが開かれてていやはやステキ、
しかしこんな自由な筆遣いを一体どうやって再現したんだよ彫師摺師は…。
展示を通じて錦絵の歴史を見てきて改めて思ったのですが、
わたしはどちらかというと、春信や歌麿や重政や広重のような
絵に叙情性や物語性があったり、古いものや文化にやさしいまなざしを向ける作品に
惹かれる傾向にあるようです。
北斎や清長や国貞や国芳みたいな「俺の絵ドヤァ」というのもエネルギーに溢れてて大好きですが
彼らの絵をずっと見続けるのはなかなか体力の要るもので、
そういうときに春信や広重がいると肩の力が抜けてホッとします。のんびりまったりって感じで。
景色が生き物を包みこんでいたり、昔の人物がたそがれていたり、子どもと神様が踊ったりするような
奥行きとやさしさのある絵をわたしももっと描いていきたいなあ。
錦絵誕生250年おめでとう!!
実はこの後、池袋に移動して東武百貨店の「THE 世界名作劇場展」も見てきたのですが
長くなりますので次回記事で書きたいと思います。
※クリックで大きくなります
「風神雷神図屏風Rinne」光琳・乾山編その14。13はこちら。
風雷がいなくなって数日後。
乾山が訪ねてくると、光琳が真っ白な紙とにらめっこしています。
乾山「え、ちょっと、これ」
光琳「宗達の屏風」
乾山「借りて来たの」
光琳「なかなかうんて言ってくれなくてさ」
乾山「おれに声かけてくれれば、頼んだのに」
光琳「おまえ昨日まで御室だったろ。待てなかったから」
乾山「描く気になったの」
光琳「ああ」
乾山「どうして」
光琳「わかんね」
乾山「……」
光琳「二十日でできるかな」
あいつらがいないから、とは決して言わない兄だと、乾山はわかっていたのでした。
次回で一区切りです。
錦絵と呼ばれる多色摺版画の技法が1765年に確立されてから今年で250年になるのを記念して
版画制作における技法、つまり職人のテクニックにスポットを当てた展覧会です。
髪や雨、蚊帳、着物の細かな柄、藍色、雲母など
版画における彫師と摺師のスゴ技がたくさん紹介されておりました(*‘∀‘)hshs
浮世絵の展覧会って「北斎の富嶽三十六景」とか「広重の東海道五十三次」など
絵師に注目が集まることが多いですが、
彫師摺師の技にクローズアップするのってあまりないので貴重な展示だと思うし
技術を知ることで絵の見方も変わるし何より楽しめるようになるからオススメですよ~。
浮世絵はまず墨摺絵といって、菱川師宣の頃に墨一色だけで描かれ始めて
鳥居派や奥村政信の頃に紅絵や紅摺絵など2~3色の色がつけられるようになり、
やがて今日のその時(笑)である1765年にフルカラー版画である錦絵が誕生し、
歌麿や写楽を経て技術が磨かれていき北斎や広重に至るわけですが
今回はそういった流れをじっくり追いながら技術・技巧をピックアップしていく構成になってました。
墨摺絵に赤が入ったときも画期的だったでしょうけど
やはり錦絵が販売され始めた頃の衝撃は相当なものだったろうなと思います。
その渦中にいた鈴木春信はその可憐な絵柄と多色摺技術をともに駆使して
生涯に膨大な量の作品を残しております。
絵柄も春信のような柔らかく繊細な画風が好まれるようになりましたしね。
あああ鶏を抱える少女も五月雨に降られる女性たちも遊女野風もかわいいっ☆
春信の頃は、たぶんまだ版画をフルカラーにするだけで精一杯だった浮世絵界も
20年ほど経って歌麿や写楽の時代になると様々な技巧が凝らされるようになります。
たとえば有名なのが歌麿の美人大首絵の髪の毛。
日本髪を結い上げた女性の、耳に透ける毛の1本1本は1mmの間に数本彫っているそうで
作業は師匠格の彫師レベルの高い技術が必要とされます。
女性の耳元とか見てるだけでも難易度高すぎて惚れそうになる。
他にも広重の大はしあたけの夕立に描かれる無数の雨粒や
歌麿の蚊帳の男女に描かれる蚊帳、
英泉や国貞の美人画に描かれる着物の模様の複雑さと細かさ、
国芳が得意とした彫り物(刺青)の神がかり的なまでの再現率、
背景にびっしり書き込まれた手紙のくずし字、
英山の両国涼みの図に描かれる橋や川の景色と花火見物をする数百人もの群衆、
北斎の諸国滝巡りに使われるベレインブラアウのグラデーション、
広重の「月に兎」の柔らかい青色と紙の白い部分に月を残す技術、
写楽の黒い背景に使われる雲母、
春信の雪中鷺で紙に凸凹をつけることで表現された雪など、など。
錦絵を鑑賞する際には彫師・摺師についてももちろん思いを馳せるようにしてますけど
こうして列挙されると改めて職人さんたちの技術の高さに震えるばかりです。
春信のやつし費長房には絵師である春信の名前の他に
「彫工:森下里朝、摺工:小川八調」とあって、うおお署名が三つある~~って感動しました(;o;)
絵に入れられるのはだいたい絵師の名前だけで、彫師摺師の名前ってなかなかないので…。
国貞や芳年の絵にも大海屋久五郎という名の摺師の名前が入っていました。
特に芳年とか筆のタッチが特徴的な絵師は彫りで再現するの難しかったろうなあ…
彫師にも「あの先生は癖があっていけねぇ」とか、
「自分の彫りはあの先生と合うからやらせろよ」とか相性みたいなものがあったかもしれないと思うと
何だか楽しくなってくる。
現代美術家さんたちによる錦絵もありました。
加山又造の「濤」は真っ赤な波模様をバックに2羽の鶴が飛翔していて
鶴の飛ぶ姿が大変美しく、波模様も優美な曲線でどんだけ時間かけて再現したんだって感じ。
中島千波「大島桜」。中島氏は桜の画家と呼ばれますがまさにその真骨頂が発揮されたというか
写実的な桜の一枝の淡いグラデーションの摺りがみごと。
勝井三雄「鎖された形態」や田中一光「ロープ 原」は何となくマグリットを連想しました。
山口晃氏の新東都名所シリーズは日本橋も芝の大塔も細部まで描きこまれているけど
彫りは氏のタッチが余すところなく再現されてて、
摺りも氏の絵を見慣れている人間が見てもちゃんと山口晃って感じする。
彫師と摺師の仕事って細かいだけではなく、絵師の人柄やタッチまで再現するのだと驚きました。
前期後期で展示品が総入れ替えになりますし、
後期には春信の「猫と蝶」が出てくるらしいから何が何でも行かねば!
あのきめ出し技術すばらしすぎて1秒たりとも見逃せない!!

美術館を出る前に地下1階にあるかまわぬさんへ寄り道しました。
手拭い運動法顔はめパネル(笑)。
ランチは渋谷ヒカリエに移動していただくことにしていたので
予想最高気温35度の炎天下の中、日傘と道沿いのお店から漂う冷気だけを友達にして
(ファミマには3回くらい助けられました)、
なんとか熱中症になることもなく10分ほどてくてく歩きまして。

ヒカリエ地下にあるよーじやカフェに無事到着。お手ふきが看板娘柄でかわいい~☆
ちりめんじゃこと野菜パスタをいただきました。さっぱりしておいしい。

デザートにいただいたお豆腐ティラミス。
黒糖シロップのスポンジと黒豆の上にとろりとした豆腐チーズクリームが乗っておりまして
まろやかでトロピカルな味でした。ご馳走様でした~!
よーじやのあぶらとり紙は昔からお世話になっています^^
京都の三条通にある三条店とカフェはずいぶん前に行ったきりですがまだやってるのかな。
あと銀閣寺店は畳でお食事できると聞いたので行ってみたい。
お腹もいっぱいになりましたので、銀座線で日本橋に移動しまして
三井記念美術館の「春信一番!写楽二番!錦絵誕250年フィラデルフィア美術館浮世絵名品展」も
行ってまいりました☆
会期は2期あって作品がほぼ入れ替わるのですが、前期は先月行ってきまして今回は後期だったので
感想まとめて書きます(・ω・)ノ
前期は絵師のセンスや画風の変化などに注目して楽しんで、
後期は太田さんで技法の勉強をしてから行ったせいかいつもより彫師・摺師の仕事に目がいきました。
あれだけ色々見せられちゃうと意識せざるを得ない。
とか言いつつ最初に目がいくのはやっぱり鈴木春信ですけどね(*´∀`*)。
前期にあった「水売り」は初期の春信を語るうえで必ず紹介される絵ですけども
本物を見たことがなかったので見られてよかったです。
笛を吹く若衆かわいいし、葦の葉に乗って川を渡る達磨もかわいい。
那須与一を地紙売として描いてたり、伊勢物語武蔵野を夜にまぎれて逃避行してるっぽい男女にしたり
やつしに関しては本当に春信は力とセンスを発揮しますね。
やつし三酸は絵師未詳となっていたけど
(儒教・同郷・仏教の男性たちが桃花酸を口にする三聖吸酸図を、女性に置き換えた絵)、
春信が描いたのだったらいいなあ。彼の十八番ですし。
なんというか、春信の絵は前後が想像できておもしろいなあと思うのです。
その絵に至るまでの出来事があって、その絵になって、その後また何か起こるんだろうなって
動きというか時間の流れがあるような気がする。
たぶんその人物のふとした時間を切り取ったような絵が多いからかもしれない。
後期にあった「若侍の身支度」という、若者の身支度を女性が手伝っているときに
ふと2人の目が合った一瞬をとらえている絵でたいへん微笑ましいのですが、
いや絵もいいのですがそれより何よりわたしがびっくりしたのは署名でしてね。
春信の署名は絵師なのでまあ当然としても、
その隣に「彫工:遠藤五緑、摺工:湯本幸枝」と書いてあるじゃないですか!
なななんてこったーーーシカゴ美術館所蔵の「夕立」を彫って摺ったゴールデンコンビではないか!
キャプションには絵暦であることの説明がされていて、1765年制作らしいので
つまり夕立とほぼ同時期に制作された可能性があり今年で250歳ってわけだ。
お正月にこの絵暦が夕立と一緒に配られた可能性があるわけだ。ヒャッホーイ(゚∀゚)☆
何ということでしょう、フィラデルフィア美術館さんよく残しておいてくださいました。ありがとう。
あと前期に初摺が、後期に後摺が展示されていた「井出の玉川」は
それぞれ人物の着物の柄が異なっていて、
明らかに後摺の方が版木が摩耗していたのか主版が荒く見えました。
浮世絵は人気のある絵は版を重ねて出版されたり
もともと絵暦だったのを暦の部分だけを消して摺ることもありますので、こういったことがよくあります。
春信の前、墨摺絵~紅絵のころの作品もありまして
個人的には奥村政信の「半装束美人揃 小野之小町」が気に入りました。
能の草子洗小町に取材した絵でつややかな小町と細かすぎる着物の模様に感動。
鳥居清満の「初代佐野川市松の宗の井」、着物の市松模様がきれいな紅色。
市松模様は佐野川市松が着た衣装の模様が由来になっていまして
そういう流行に一役かったのも浮世絵だったんだろうなと思う。
大森善清の「紅葉狩」は平維茂と鬼の戦いを描いた画帖からの抜粋で
墨摺絵ですが紅が少々使われていまして、維茂と鬼の目が血走ってた(^^;)。
色がなくても迫力や美しさを出すための工夫が随所に見られて職人魂を感じる。
歌麿や写楽の頃になると大量生産が可能になるのでシリーズものや3枚ものが増えてきて
絵柄はまだ優雅でみずみずしい感じがしますな…。
歌麿の描く髪の毛にやっぱり目がいきましたね~描いた歌麿もすごいし、
彫師の名前がないのでどなたが彫ったのか存じませんが惚れ惚れするような細さと完璧さ。
清長の8頭身美女たちは着物の柄がとても凝っていてひたすら描きこんでいますし
やっぱり再現した彫師と1ミリもずらさず色を摺った摺師の腕に拍手。
写楽の絵は彼の全盛期だった第1期の大首役者絵が展示されていて
いつものことですが歌麿や清長の後に写楽を見るとあまりに絵柄が違いすぎてびっくりします。
こりゃ一般庶民も役者さん本人も戸惑ったろうなあ…。
背景の雲母摺は見る角度と照明によって輝きが微妙に変わるのがやっぱりおもしろいです。
北斎の雪月花や諸国滝廻り、富嶽三十六景の頃になると
風景画はスッキリ、花鳥画や人物画はより細かくという風に流行が変わっている。気がする。
凱風快晴は何度も見ているので正直食傷ぎみでしたけど
絵師だけじゃなく彫師と摺師もどんなにがんばった作品であるかは素人なりにわかるので
これからも色んな人に愛されていってもらいたい。
広重の「亀戸天満宮境内雪」が冬景色を描いた作品なのですが
紙の白色を見事に生かしていてため息ものです。きれいー!
あまりに気に入ったので展示を最後まで見た後もう一度戻って見てきてしまった^^
広重や国芳、英泉など多くの絵師が手がけた千社札をクリッピングした
「千社札貼込帖」は初めて見る代物でした~。
参拝記念として神社でもらえる千社札がペタペタ貼りつけてあって、なんだか御朱印帳みたい。
あと、北尾雪坑斎という絵師を初めて知りましたが
展示されている絵本『彩色画選』は1767年刊行だから春信と同時代の人ですね~。
布袋やふくろう、雛人形のページが開かれてていやはやステキ、
しかしこんな自由な筆遣いを一体どうやって再現したんだよ彫師摺師は…。
展示を通じて錦絵の歴史を見てきて改めて思ったのですが、
わたしはどちらかというと、春信や歌麿や重政や広重のような
絵に叙情性や物語性があったり、古いものや文化にやさしいまなざしを向ける作品に
惹かれる傾向にあるようです。
北斎や清長や国貞や国芳みたいな「俺の絵ドヤァ」というのもエネルギーに溢れてて大好きですが
彼らの絵をずっと見続けるのはなかなか体力の要るもので、
そういうときに春信や広重がいると肩の力が抜けてホッとします。のんびりまったりって感じで。
景色が生き物を包みこんでいたり、昔の人物がたそがれていたり、子どもと神様が踊ったりするような
奥行きとやさしさのある絵をわたしももっと描いていきたいなあ。
錦絵誕生250年おめでとう!!
実はこの後、池袋に移動して東武百貨店の「THE 世界名作劇場展」も見てきたのですが
長くなりますので次回記事で書きたいと思います。

「風神雷神図屏風Rinne」光琳・乾山編その14。13はこちら。
風雷がいなくなって数日後。
乾山が訪ねてくると、光琳が真っ白な紙とにらめっこしています。
乾山「え、ちょっと、これ」
光琳「宗達の屏風」
乾山「借りて来たの」
光琳「なかなかうんて言ってくれなくてさ」
乾山「おれに声かけてくれれば、頼んだのに」
光琳「おまえ昨日まで御室だったろ。待てなかったから」
乾山「描く気になったの」
光琳「ああ」
乾山「どうして」
光琳「わかんね」
乾山「……」
光琳「二十日でできるかな」
あいつらがいないから、とは決して言わない兄だと、乾山はわかっていたのでした。
次回で一区切りです。
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。 ジャンル : 学問・文化・芸術
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