千載具眼の徒を竢つ。

東京都美術館で開催中の若冲展に行ってきました☆
伊藤若冲生誕300年記念の回顧展です。
1月の講演会で小林忠氏が大変心配しておられたのが的中したらしく
内覧会も初日も大混雑と聞いて、これは会期末あたりはパンクしかねないと思い早々に鑑賞することに。
しかも今週からさらに混み出したそうなので(たぶん日曜のNHKスペシャルのせい)、
本当に先週に行っといてよかった…。
そんな開幕2日目のわたしのタイムスケジュールはこんなでした↓
・朝8時、美術館到着(すでに50人並んでおりその後どんどん増えて開場時には1000人以上の列)→
・9:20開場と同時に1階へ上がり動植綵絵と釈迦三尊像を鑑賞→
・2階を鑑賞→
・10時過ぎに地下のロビー階へ戻ると大混雑で絵の前に5~6層の人だかり、最前列に出られず→
・ロビー階を鑑賞して再び1階と2階へ戻ると大混雑→
・グッズ売場のレジに長蛇の列と1時間待ちのアナウンス→
・11時過ぎに退室。入口をチラ見したら入場待ち30分の札
よく生きて帰ってきたな…。
もっと居ようと思えばいられましたけど、人口密度に圧倒されてしまったのと
動植綵絵を数分とはいえ独り占めできた感動があったのでもういいかなと思ったのでした。
過去のキトラ古墳展や鳥獣戯画展に比べればだいぶマシな気はしますが。
動植綵絵が1階にあるという情報はTwitterで得ていたので
開場と同時にわき目もふらずエスカレーターを目指したのは正解でした。
楕円形の展示室にぐるりと展示された「動植綵絵」30幅に「釈迦三尊像」3幅!→こちら
あまりにうれしくて一旦、展示室のど真ん中に立って
彼らに囲まれる幸せをかみしめてから鑑賞開始。
(もともとこの33幅は江戸時代に若冲が相国寺に奉納したのですが
近代の廃仏毀釈により衰退した相国寺のために動植綵絵を皇室が買い取り、
現在は動植綵絵を宮内庁が、釈迦三尊像を相国寺が所蔵しています。
彼らの再会は相国寺承天閣美術館で果たされてから今回で9年ぶりだそうですし、
おそらく当時、若冲や友人の大典が見たであろう雰囲気を味わいたくて
まずはどうしても展示室の中央に立ってみたかったのでした)
動植綵絵は皇室の名宝展以来で(当時もそれなりの混雑だった)5年ぶりの再会ですが、
「やっっっっっばいめっちゃ綺麗…!すごいやばい最高…!!」と他の言葉をなくす美しさで
一瞬でも人少ない時に見られてよかった、朝早く来た甲斐がありました。
記憶というのはだいだい美化されるものですし前に見たときも美しいと思ったはずなのに
記憶以上だったのは想定外だった…。
どの掛軸も大きくて華やかで緻密でちょっと毒入っててバランスよくて色鮮やかでかっこいい!
老松白鳳図は鳳凰の羽の先についたハート模様がかわいいし(赤の中で1枚だけ緑なのもよい)、
南天雄鶏図の無数の南天は描くのを想像するだけで気が狂いそうだし
群鶏図は若冲渾身のイケメン鶏たちが全員集合してるし
雪中鴛鴦図と雪中錦鶏図のベタ雪は触ってみたくなるし
紅葉小禽図の紅葉は裏彩色のおかげで立体的に見えるし
梅花群鶴図は光琳がさらにとんがったみたいだし(若冲は光琳が亡くなった年に生まれている)、
芦雁図の氷は応挙の氷図みたいな静けさがあるし(若冲は応挙より16歳年上)、
はー!みんなかわいい!!
信行寺の花卉図とか金比羅宮の百花図とか今回の向日葵雄鶏図とか見てると
じゃくちゅーたんは結構、ヒマワリを描いてて好きだったのかなあと思います。
他に好きそうなのは牡丹と梅と松と棕櫚、蓮や枯れ葉もよく描いてると思う。
群魚図のルリハタのプルシアンブルーは平賀源内の紹介(彼はベレインブラウと言ってた)より10年以上、
北斎や広重の錦絵より50年以上は前の作例らしくて
19世紀初頭の大量輸入まで国内にほとんどなかった色を一体どこから手に入れたのか、
入手ルートはわかっていないようですが大阪のお友達あたりかな…。
釈迦三尊像はナマで初めて見まして
目のさめるような色づかいのセンスがすごくいい、当時はもっときれいだったんだろうな。
というかわたしが今まで見てきた仏画と全然ちがって派手だし赤が多いし、
でもすっきりまとまって見えるのは相当色彩バランスが計算されつくしてあるからかなと。
あと感動したのは掛軸との距離が近いこと!
アクリルガラスと仄かなLED照明のおかげでクリアな鑑賞ができました。関係者に感謝。
金閣寺書院の襖を飾っていた葡萄小禽図襖絵は4面の空間を思い切り活かしたレイアウトで
ぽっかりした空間に水墨の葡萄が自由に生きている感じがします。
これとセットの絵(葡萄小禽図と月夜芭蕉図)も相国寺が所蔵していますが
さすがに書院の壁を持ってくるわけにはいかなかったか~。
京都で見られますので気になる方はどうぞ。(わたしは3回くらい観た希ガス)
発見から83年ぶりに若冲筆と確認された孔雀鳳凰図の鳳凰は
旭日鳳凰図や老松白鳳図と同じく羽にハート模様がついてる☆
おそらく動植綵絵と同時期かその前に描かれたと考えられているらしく、
確かに構図と書き込みと緻密さがそのまんまでした。
孔雀も老松孔雀図と構図がそっくりなので前段階として描かれた可能性もあるのかな。
ニワトリの掛軸もいっぱいあったし、巨顔の達磨図は迫力あるし
乗興舟は何度も見てるけど相変わらずの黒に引き込まれる。
菜蟲譜のタイトルのフォントがおもしろくて、蟲とか手塚治虫さんが描いたみたいなレタリングで
内容もまさに青物問屋の息子って感じで野菜と虫たちのオンパレード。
カブトムシみたいな茄子がいるなと思ったら、後半で本当にカブトムシが出てきた(笑)。
花鳥版画のオウムちゃんはかわいいおもちゃに囲まれて下を向いててほんとにかわいい。
三十六歌仙図屛風は歌人たちが田楽を作っている様子の水墨画で
若冲と蕪村展では六歌仙図だったけどこちらは屏風で空間が広くなって人数も増えたので
歌人たちのおふざけ度が増している感じ(笑)。
江戸時代に流行した「歌仙豆腐」(三十六歌仙に見立てた36種類の豆腐料理を作る)遊びが
元になっているとか、
歌人たちが演奏する楽器を豆腐に置き換え、本来の田楽図に見立てたという説があるそうです。
石燈籠図屛風は無心にならなければ集中できそうもないくらいの細かすぎる点描で
しかも屏風サイズっていうところとこれを描いた時絵師は80代だったと知って
この人本当、もっと生きてたらどこまで行ったのかと改めて。。
象と鯨図屏風(これも80代の作品)も若冲と蕪村展以来、ひさしぶりの再会でした!
相変わらずクルクル巻いた白象の鼻と鯨の波がかわいいのう、愛しいやつらめ。
蓮池図は4面の襖に蓮池の様子を描いた水墨画で
京都で大火に遭った若冲が大坂の西福寺に避難していたときに奉納したもの。
ほとんど蓮が咲いてないのですが、ぽつぽつと芽やつぼみが描かれているのを見ると
映画ナウシカのラストでチコの実が芽吹いていたカットを思い出しますな。
海外からもいくつか里帰り。
METの月梅図は月光に照らされる梅の木が華やかで、
デンバー美術館の菊花図は筋目描きがダイレクトに観察できました。
エツコ&ジョー・プライスコレクションも来日中ですよ~☆
プライス氏が23歳のときふらりと入ったお店でジャケ買いしたという葡萄図を始め、
細密画から水墨画まで一通りございます。
目がいっちゃってる虎図の、細かい体毛のふさふさ感とか柔らかそうな肉球とか最高ですね。
紫陽花双鶏図のニワトリちゃんはすごいポーズで紫陽花の中を生き生きと歩いてる。
雪芦鴛鴦図は2羽のおしどりが水の中に頭突っ込んでるんだけど
水中から顔が透けて見えるのでこの池の水は澄んでいるに違いない。
鳥獣花木図屏風は楽しい!
仙台市博物館の「若冲が来てくれました」展以来の再会で
今回はガラス越しでしたけど、それでもうれしかった!
実在と想像上のいきものたちがカラフルに存在するさまは、動物園かノアの方舟か。
この屏風の前は本当に賑やかで皆さん楽しんでいらっしゃって
動物の名前を当てたり色遣いを見たり枡目を数えだす人など様々。
ガラスに張りつきながら「じゅ~かちょうじゅうず~びょ~ぶじ~けん」て歌ってる子がいて
それからずっとわたしの頭の中もびじゅチューンになった。
一日中どの絵の前も人だらけで最前列で見るのはなかなか困難ですが、
会場スタッフさんの呼びかけでじわじわ進みますので隙間に入れてもらえれば前列に出られるかも…
あと、とにかく書き込みが細かいので
単眼鏡とかオペラグラスを持っていくと細かい箇所まで観察できると思います。
ふと、初めて若冲の絵を見たのはいつだっけと思い返してみましたが全然覚えてない。。
わたしが物心つく頃にはすでにブームがやってきていて
当たり前のように画集や研究書が書店にあふれていたような気がする。
教科書だったか画集だったか、ポスターだったかネットだったか思い出せないのですが
それでも初めて見たときは衝撃だったな…。
頭の中を「???????」が駆け巡って
「どう描いたの」「どう塗ったの」「絵の具は」「つか絵なの?」「何これ」ほか無数のことばを
同時に口にしようとして口が混乱したのを覚えてます。
ちなみに見たのはニワトリで、群鶏図か南天雄鶏図あたりだった気がする…。
わたしだいたい絵を見るときは顔や手元、花や光源に目がいくのですが
あのニワトリは目も鶏冠も首も羽も、何より強烈な原色までもがバーン!と自己主張してて
一瞬、どこ見たらいいのかわからなくなってやっぱり混乱したっけな…。
若冲の絵は見た瞬間に多くを語りたくなりますが、後は無言で見つめてしまうような感じがする。

ロビーにはチームラボの「Nirvana」が展示されていました~。
樹下鳥獣図屏風の動物たちが歩いたり飛んだり羽ばたいたりするインスタレーションです。
日本科学未来館のチームラボ展以来の再会ですが、
あのときは壁いっぱいの巨大スクリーンに投影されていた屏風が今回はかわいらしい大きさでした。

鳳凰と仲間たち。

白象と仲間たち。

麒麟がいたの初めて気づいたよ!小さい屏風になったおかげ。
大きいスクリーンの展示もたいへん楽しいけど、
小さいスクリーンだと自分の目線の高さにてっぺんがきてくれるから全体図がわかって面白い。

午後は講堂にて講演会を拝聴。
山下裕二氏の軽快な進行で辻惟雄氏、エツコ&ジョー・プライス夫妻のよもやま話を伺いました。
プライス氏や辻氏の若かりし頃のお写真やご自宅の展示室などをスライドで見せていただいて
自然光を取り入れたコレクション部屋はとてもモダンだったし、
若冲の葡萄図を若冲とは知らずに買ったことや
近づいたり遠ざかったりして絵のディテールを見ながら
絵から絵師が語りかけてくるのを待ってて、というメッセージが心にじんときました。
今年で若冲の享年と同い年という辻氏が『奇想の系譜』を上梓したとき、
実は動植綵絵をご覧になっていなかった(!)ことや
プライス氏が探していた紫陽花双鶏図がアメリカに渡ってしまう前に古美術商から借り出して
「見納めだ」とか言って後輩にお見せしたらしいエピソードがおもしろかった。
その後輩(笑)の小林忠氏も客席にいらっしゃって、山下氏に呼ばれて飛入り参加されて
東博時代に鳥獣花木図を展示しようと上司に申し出たら却下されてしまったお話をなさってて
これ何度も聞いてる話だけど聞くたびに笑いが起きる(笑)。
最後にみなさまのお好きな動植綵絵を挙げることになって
プライス氏は迷わず菊花流水図を挙げていらして
(最初は白黒画集で見たけどフルカラーの本物を見たとき泣いてしまったそうです)、
辻氏は「毎回好きな絵が変わるんです…」とおっしゃりながら群鶏図、
小林氏も「ぼくも辻先生と同じでいつも変わります」とおっしゃりながら蓮池遊魚図、
山下氏は「あえて」芦雁図とのことでした。
あと「今日だけ、講演会はがきを提示すれば展示室に再入場できます」と特典をもらったので
せっかくなので行ってきました。
待ち時間はなかったけど相変わらず混雑していたし、自分のペースで見るのは困難でしたが
1階では改めて展示室の中央に立って若冲の視点を堪能。楽しかった~!

続いて1階のレストランIVORYへ。
若冲展の期間限定デザートがいただけるというのでやって来ました。

宇治抹茶のモアローショコラ、国産丹波種黒豆・きなこのアイスクリーム、
宇治の和紅茶はほんのり酸味がありました。
ショコラはナイフで切ったらとろりとチョコレートが出てきた~あったかいフォンダンショコラみたい☆

ほうじ茶マカロンに鶏(*´︶`*)
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