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2016_10
30
(Sun)23:50

待ちこがれし喜びの光。

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サントリー美術館にて「鈴木其一」展を見てきました。
おおまかに前期後期に分かれていたので2回行きまして、
本人の初期から晩年まで、そして同時代の絵師たちの作品もたくさん見られてよかったです。
日曜美術館効果もあってか、会期が迫るごとにどんどん混雑して
正直こんなに混むと思っていなかったわたしは其一を甘く見ていたよ…。
酒井抱一の弟子というだけではなく、ひとりの絵師として評価されている証拠でもあって
何だかうれしくなりました。
其一は割と作品数が確認されている絵師のひとりなので可能ならまた回顧展やってほしいですな、
できれば師匠と一緒に(笑)。

まずは其一の周辺から。
師の酒井抱一の作品がいくつか展示されてて、
「桜に小禽図」や「雪中檜に小禽図」など良質な小品がありました。
当たり前だよって言われそうですが、改めて抱一の絵を見て思うのは本当に抱一しか描けない粋というか
彼が美しいとする世界観がしっかり完成されてて構図も色彩も絶妙なバランスを保っている。
其一に隙があるってわけじゃないけど抱一みたいな完成度の絵を描ける人ってどれくらいいるのかな、
いやあマジかっこいいわ…。
其一が描いた「抱一上人像」の本物を前からずっと見たかったのですが
今回、展示されていてうれしかったです^^
丸顔で大きな目のおじいちゃん抱一かわいい(^ω^)。
冬に亡くなった師匠をしのぶような、表装の上下のススキがとても品がある。
また、其一の兄弟子に鈴木蠣潭という人がいて
其一は彼が若くして亡くなった後に鈴木家に入り家督を継ぐのですが、
その蠣潭の掛軸もいくつか。
亡くなる前年に描かれた「大黒天図」は、甲子の日に大黒天をまつる行事にちなみ描かれたと伝わり
ジャムおじさんみたいなやさしい顔の大黒さまが水墨でサラリと描かれているし
白薔薇図扇面は大きな白薔薇がハラリと散る図で余情を感じます。
こんな人たちの絵を其一は間近に見て修行時代を過ごしたのだな…。
当時の文人たちとの交流の名残もいくつかありまして、
「蓮に蛙図」は大きな蓮の葉にちょこんと乗った蛙の絵に太田南畝が賛を入れています。
「文政三年諸家寄合描図」は師の抱一や谷文晁、渡辺崋山、小鸞ほか総勢72人の絵師たちが
大きめの掛軸にみっちり寄せ書きした賑やかな掛軸。
中央に抱一が宝珠を描き、近くに其一が蟹を、文晁は蝶を、小鸞は漢詩を寄せていました。
この年は抱一の還暦にあたるためお祝いの席でワイワイ描かれたりしたのかも、なんて想像するの楽しい。

さて其一。一番多かったのは掛軸で、画題も様々でしたね。
本阿弥光甫を意識したかと思われる「藤花図」は紫の花の一部に紅色の花があったり
まっすぐに咲く「向日葵図」や可憐な花を咲かせた「林檎図」もかわいかった。
「雨中菜花楓図」の葉の下にモンシロチョウが雨宿りしてるのを見つけて思わず微笑んだり
「雪中檜図」で木に積もった雪がドサーと落ちる音が聞こえるような気がしたり
どの絵にもちょっとした工夫がされているように思いました。
其一は白椿が好きだったようで、鶯や茶椀や花鋏と一緒に描いてる絵が素敵でしたな~。
かと思えば「三社図」(伊勢神宮・春日大社・石清水八幡宮)で建築をしっかり描いてたり
「浅草節分図」で観世音菩薩の大提灯をでかでかと描いたりと、風俗画も色々あるようです。
歴史画もあって、「源三位頼政図」は平家物語にもある深山の歌からの着想で
弓矢をかまえてかしずく頼政がとてもかっこいいし、
「足柄山秘曲伝授図」は源義光が豊原時秋に笙を教えるエピソードの絵画化だし、
昔から描かれてきた画題を自分もやってみるみたいなリスペクト作品もよかった。
ファインバーグ・コレクション展で見た「大江山酒呑童子図」に再会できたのもうれしかった~、
相変わらず超細かくて童子が美青年に描かれてるのが本当にツボ!!

屏風が大きなのから小さなのまでたくさんありました。
メトロポリタン美術館蔵で今回の目玉ともなっている「朝顔図屏風」はかなり大きめサイズで
両面いっぺんにどーん!と展示されているまん前に立つと
奥行きが無限に続いているかのような錯覚を覚えてクラクラしてしまった。
これチームラボとかに動画作ってほしいな…きっと無限に増え続けては枯れていくに違いない。
夏秋草渓流図屏風」は右から左へ季節が移ろっていくもので
金に緑に青に茶色、と原色が強烈な絵だけあって
しゃがんで下から見上げると屏風から水が流れ出てくるような錯覚を覚えてしまってやっぱりクラクラ…
これもぜひチームラボに動画を(ry
「群鶴図屏風」もファインバーグ・コレクション展で見たので久々の再会、
手術用のメスにたとえられる其一の鋭さが垣間見えるし、
「三十六歌仙・檜図屏風」は光琳百図を踏襲した構図で学習とリスペクトを感じたし、
「松に波濤図屏風」は近年、其一のものと発見されたらしい水墨画で
波のくるくるうねうね感は光琳の描く波とそっくり。
「四季花鳥図屏風」は無数の植物が季節を問わず咲き乱れたファンタジーの庭園のような絵で
こんな庭あったらいいのに…!で素で思いました。

襖絵もきれいで、特に「萩月図襖」がむっちゃきれいだった!
銀色の月に照らされた萩がわずかに霞んでいるのとか…こんな月光が見える表現わたしもやってみたいよ…!
「松島図小襖」は宗達や光琳の松島図を彷彿とさせる小さな屏風で
島が点々と遠近法で描かれて大波小波が踊っていて雄大でした。
「風神雷神図襖」の前にはなぜか人が少なかったけど、
実物は4面×2の計8面もあるので少し離れたところから見ないと全体の雰囲気が掴めないとわかって
わたしも少し離れて見たり、近づいて細部を見たりしました。
お手本にしたのは抱一や光琳のそれだと思いますが、
この襖の風神は雷神を見てるけど雷神は下を向いていました。何か意図があったのかな。

描表装ってあまり展覧会で特集される機会はないと思うんだけど
(日本美術の展覧会で1点か2点はだいたいあって気がつくことはあるんだけど)、
其一は結構制作しているのでまとめて展示されていました。
ただ単に表装を飾りつけるのではなく、
絵と関連づけて表装も含めて丸ごと1つの作品に仕上げているのが粋だなと思います。
個人的に一番気に入ったのが「月に秋草図」、
ノコンギクやススキを表装に描き、月を絵に描いてまるで窓辺を思わせるような1枚で
徳島藩蜂須賀家に伝わったものらしい。
派手さがなくて渋いのが、何となく武家の雰囲気に合ってる気がして其一と蜂須賀さんの趣味が伺えます。
「夏宵月に水鶏図」の、紫陽花に降る雨を上下に配したセンスや
其一50歳の時の作品「三十六歌仙図」の波模様と扇子のデザイン性とか
「業平東下り図」の四季の草花とか。
あと息子の守一と一緒に制作した「秋草に鶉水月図」の表装は
親子が使っていた66種類の落款を画面全体に散りばめるように押しまくってて
えー、なんだあ、かわいいなあこの親子!って萌えてしまった。すてき。

其一の人物像や仕事ぶりがわかる資料として、直筆の手紙がいくつか展示されていました。
すべてパトロンの松澤孫八に送った手紙で、
尾形光琳の「王義之図」の鑑定を依頼されて「是」と返答したのとか
「今年の春はさむくて手がかじかむ」とか「撫子の花を送ります」など季節を感じるものとか、
「この前の三十六歌仙図は光琳ではないと思う」「光琳の松島図が売れ残ってるけどいかが?」
「画表具、あと3日でできます」みたいな鑑定や事務報告とか、
「袋戸の群青はすれると白くなっちゃうけど、筆とかで撫でれば元に戻ります」など
絵師の知恵袋みたいなものまでありました。
かわいいなと思ったのが「蕪の漬物をありがとう。今年は漬物が少ないから頼もうと思っていました」の記述がある手紙。
漬け物大好き其一さん^^
(そういえば其一が松澤さんに岩群青を大量に注文した手紙が残ってるけど
あれは夏秋草渓流図に使われたんだろうか…?)

其一は屏風や掛軸に限らず、様々な媒体に絵を描いていて
絵巻を制作したり、絵馬を奉納したり、扇子や香包や凧に絵を描いたりしていたようです。
紅葉と桜がぎっしり描きこみを背景にした般若の凧や、達磨の怖いドアップの凧は
本物の展示だけではなく吹き抜けの展示室に天井から吊るしてあっておもしろかったです。
鶯草図香堤包は金地の包み袋に三つ葉のクローバーが描かれていてかわいいし、
四季歌意図巻は在原業平・柿本人麻呂・西行・藤原定家の4人を
それぞれ春夏秋冬に配して季節の景色とともに人物たちを小さく描いてるし、
十二ヶ月図扇や十二ヶ月花鳥図扇面のセットは草花だけではなく曲水の宴や方相氏など季節の行事もあった。
ちょっとおもしろかったのが能の絵のコーナー。
ガラスケースの手前に縁側のような板が設けられ、能舞台みたいな展示になっていました。
こういう雰囲気の中に翁図や猩々舞図とかあると楽しいね!
道成寺図と釣鐘図はセットのような二品、
特に釣鐘図はシテと鐘ならともかく鐘だけ描いてる絵ってめずらしいような。
菊慈童図がめっちゃかわいかったんだけど、其一の能画の人物はお人形さんみたいですね~。
「羅陵王舞楽面図」はつくねんと置かれた蘭陵王の面を描いた掛軸で
西洋画でいうところの静物画のようなものでしょうか、
よくよく見ると面の両目に白いまつげが描かれていたのが個人的な萌えポイント^^

そういえば河鍋暁斎が能や狂言をテーマにした絵をいくつか残しているのですが
(暁斎は狂言を習っていて自分で舞う人でもありました)、
最近知ったのですが其一の次女・阿清が1857年に暁斎と結婚してるんですね。
其一と暁斎の交流については特に何か残っているわけではないけど
暁斎も風神雷神図を描いてるし、影響受けた部分もあったかもしれないな…(2人は36歳差)。
ちなみに阿清さんも絵を描く人だったそうだ。


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限定ショップで衝動買いした其一マスキングテープ。
「秋草に月図」の一文字に描かれていたうさぎがモチーフです。
うさぎの形が微妙に異なっててかーわーいーいー!

あと、今月は東博本館へも行きました。
酒井抱一の夏秋草図屏風が久しぶりに展示されているのです。
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やっぱりいいな~。
夏に降る湿っぽい雨と風、草木が雨に打たれる音と、風にそよぐ音が聞こえてくるような。
一橋治済の依頼により光琳の風神雷神図屏風(同じく東博所蔵)の裏に描かれたもので
現在は保存のため別々に仕立てられています。
サン美の其一展は本日までですが実はこの屏風も本日までの展示でしたね、
たまたま重なっただけだろうけど師弟一緒に撤収っていうのが、ちょっとエモい。

tohakusotatsu.jpg
宗達の龍樹菩薩像もありました。
インドの龍樹(ナーガールジュナ)を描いた掛軸で、着想は中国の版本だそうです。
宗達はメリハリのあるタッチにのっぺりぺったりした着色で立体感はあまりないけど
見てると気持ちが落ち着く絵を描く人だなあと思う。

この宗達を光琳が見つけて、光琳を抱一が見つけて、
其一が抱一の見つけたものを大切にしながら制作していたことを思うと
改めて不思議なつながりの絵師たちだなあと思います。
好きで描いてたっていうのもあるでしょうけど、好きだけでは描けないのが絵師でありまして
(画材に紙にアトリエ、先達やパトロンがなくては続けるのが難しい職業です)、
そういう意味ではとても幸運な人々だったし、
掘り起こされた方も果たして自分の絵の行く末をどこまで想像していたのか…
魅力は尽きない。
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2016_10
26
(Wed)23:43

秋の安芸と出雲の旅その3。

広島・出雲旅行3日目です。2日目はこちら
今回は出雲大社とその周辺をレポします☆

朝起きてすぐ、旅館の露天風呂を堪能(* ˘ω˘ *)
朝風呂とか久し振りでした…のぼせる手前まで浸かってしまってしあわせ。(お風呂だいすき)
あと、お風呂の壁に貼ってあった「出雲方言見立番付」がおもしろかった、
1位は「だんだん(ありがとう)」でした。
素敵なお風呂とお布団、昨日のアイスとおにぎりのおもてなし。だんだん。

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お風呂の後は朝の玉造温泉街をぶらぶらしました。
写真は玉湯川にかかる勾玉橋、大きな勾玉がくっついていて温泉街でも有名な橋です。
この4つは日本一大きい勾玉といわれているとか。

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玉湯川の中には足湯がいくつか設置されていますが、前日の雨でほとんど水没していたため入れず。
看板がおもしろすぎてツボった(笑)これ前はあったかなあ、覚えてない。

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温泉街の川沿いには籔内佐斗司さん氏による三種の神器や根の国訪問、佐太大神誕生、恋山など
神話をテーマにした銅像「神話の情景オブジェ」が8種類設置されています。
前に来た時はなかったから数年内に設置されたのでしょうね。

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因幡の白兎と大国主。
籔内氏はせんとくんをデザインした方だから人物の顔にもどことなく面影がありますね。

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ヤマタノオロチがむちゃくちゃかっこよかった!
手前にスサノヲの人形が立っていますがこの単品撮影の迫力がたまらんかったので。

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朝ごはん!とても豪華な和食ごちそう様です。
お米は仁多米コシヒカリでその場で炊きたてをいただけました。だんだん。

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玉造温泉に別れを告げて、あやのさんの運転で出雲へ向かいます。
宍道湖沿いを走る走る!この湖を見ると島根に来たって感じします。わくてか☆
(帰路でわかったのですが宍道湖って松江の中心街まで続いてるんですね…広いですね)

以下、写真が多いのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆

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2016_10
22
(Sat)23:30

秋の安芸と出雲の旅その2。

広島・出雲旅行2日目です。1日目はこちら
今回は宮島・弥山の様子をお届けします☆

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ホテルで朝ごはんを食べてエネルギー充填。いざ!

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フェリー乗り場で宮島弥山エンジョイチケット(フェリーとロープウェー往復チケットがセットになってるの)を買って乗船、
お船から弥山を眺めます。
この辺りまで近づいた頃が一番、観音様の横顔っぽく見えると思う。
天気予報は曇ときどき雨でしたが午前中はまだ明るくて雨も降ったり止んだりで
降ったら雨宿りがてら休憩して止んだら行動していました。(折り畳み傘を開くのがめんどくさい人)

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宮島に到着!まずはフェリー桟橋にほど近い階段から要害山に登ります。
毛利元就の宮尾城、もとい厳島古戦場跡。
厳島の戦いは、当時元就が仕えていた大内氏が家臣の陶晴賢に滅ぼされた後に
数万の晴賢軍をわずか3500人ほどの毛利軍が蹴散らしてしまった奇襲戦です。
(大河ドラマで風間トオルさんの大内義隆がとても気の毒な最期を迎えたのを鮮明に覚えてる)

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あっという間に宮尾城本丸跡に到着。山というより丘っぽい感じ。
ここからは塔の岡(陶晴賢の本陣があった場所)が丸見えです。

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今伊勢神社もあった。
伊勢神宮を勧請した神社で、この辺りは伊勢町と呼ばれているそうです。

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階段を降りていたら鹿さんに遭遇☆おはようございます。
今日も1日はりきって旅をしてまいります~。

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2016_10
18
(Tue)23:59

秋の安芸と出雲の旅その1。

ブロともであり得がたいソウルメイトでもあるあやのさんと一緒に広島・出雲に行ってきました☆
今回から3回に分けてレポしていきます(^∀^)。

まずは1日目。大久野島と広島市内と、ちょこっと宮島です。
特に大久野島は前から行ってみたかったので念願叶ってうれしかった^^

大久野島は瀬戸内海にある周囲4.3kmの広島県の島で
およそ700羽の野生のアナウサギが島中に生息していることからうさぎ島とも呼ばれるそうです。
島には民家はなく住民もいなくて、いるのはレジャーや観光目的の人や島内スタッフだけだそう。
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夜行バスと電車で忠海駅に着いて、歩いて忠海港へ。
島までは港からフェリーに乗っていきます。
乗り場前にある休憩所ではフェリー往復チケットやうさぎグッズが買えたり
手荷物を預けたりすることができます。
小さなイートインもあってお菓子や飲み物も買えるよ。

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うさぎのごはんをゲット。島には売っていないのでここで買っていきます。
1袋で充分かなと思ったのですが、後々わたしはこの選択を後悔することになるのであった…^^;

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時間になったのでフェリー乗り場へ。
本数は1時間にほぼ1本しかないので、島へ行かれる方は
休憩所や大久野島ホームページで時刻表をチェックしてから予定をたてる方がいいと思う。

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乗船時間は約15分、島が見えてきたよー。
乗客は家族連れやカップルなど様々、
マイ自転車を持ち込んでたスパッツ姿の人は島に着くやいなやシャーっと走って出ていってしまったから
サイクリングやジョギング目的の人もいるんだろうな。

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やっほー大久野島だ!2番桟橋に着きましたよ~。
桟橋の向こうに停まっている青いバスは宿泊施設までの無料送迎バスです。
宿泊者だけではなく日帰りの観光客も乗せてもらえます。

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フェリーを降りるとさっそくうさぎ発見!
桟橋の近くにもかなりの数がピョンピョン跳んでいてテンションめっちゃあがった、
うさぎ島だ~~うさぎ島に来たぞお!!

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2016_10
13
(Thu)23:44

お布団のインターセプターその2。

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今年もこの季節がやってきました(笑)。
朝晩が涼しくなって人間が毛布や羽毛布団などを出してきますと
猫様によってたちまち独り占めされてしまいます。
寝る頃にはすでにベッドの上で陣取られているため、一旦お立ち退きいただけなくてはならないのですが
「せっかくいい気持ちで寝てたのに…ムニャァ」みたいな顔されるのでちょっと心苦しい。

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猫様の暖への執念は時としてすさまじい。
この日の娘にゃんこは椅子の上にあった何かの上で暖を取っていました。

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レッグウォーマーでした。。
たまたま脱いで置いたのを見つけて、やれ暖かやと肉球を乗せたようです。

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「すみません使いたいのですが…」と声をかけても知らん顔。
「わたしからこの暖を取り上げるというの?」とでも言いたそうな。
ここで暖を取るくらいならお布団に行ってくだされ~。

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仕返しにお尻をモフモフさせてもらいました。
本人はお尻撫でられてもあまり嫌じゃないみたいなので、全然仕返しになってないんだけど。

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今月はハロウィンがあるので、各地でハロウィンのディスプレイやイベントが見られて楽しいです。
写真はシャトレーゼの限定和菓子。黒猫・かぼちゃ・オバケのセット☆
ジャックオーランタンやオバケはよく見かけるけど
黒猫のお菓子ってなかなかないので見つけた時はうれしかった!
オバケは、ちょっとわかりにくいですが目の下に「◡」の形の口の凹みがつけられているので笑顔です。


そういえば今夜は十三夜ですね。
曇っていたのでお月様は撮っていませんが、雲の隙間からお月見しました。
なるべく空を見上げる人生を送りたい。
2016_10
09
(Sun)23:58

長い時間と波、そしてあっという間の先の、解放。

左右社の『〆切本』を読みました。
夏目漱石から現代作家までによる、〆切に関する随筆や手紙や日記を集めたアンソロジーです。
タイトルと表紙見たとたんに笑える気持ちと笑えない気持ちが同時におこって
なかみを読んでやっぱり笑って震えて胸が苦しくなって元気出た。
仕事や趣味でものを書いてる人にはものすごくクる本だと思います。とてもおすすめ。


扉を開くと真っ先に掲載されているのが白川静による「締切」の漢字の解説だったから
そこから!?ってなったし、かえって企画した編集部の本気度もよくわかった。
(ちなみに締は祭卓の足を結んで締めるの意、切は七(切断した骨)に刀を加える→切るの意)
白川さんも〆切に追われたことあったんだろうか…このアンソロには載ってないけども。

ざっと引用するだけでも悲喜交々なのですが
「ああ、いやだ、いやだ。小説なんか書くのはいやだ」田山花袋
「精神的にも肉体的にも直きに疲労する。だから二十分とは根気が続かない」谷崎潤一郎
「〆切が五日のところ十五日迄延ばしたのですが、とうてい書く気が出ず上京して断りました」梶井基次郎
「純粋な考え方からすれば、むろん断るべきであった」江戸川乱歩
「第一回分四十枚ばかりを書いた。結末がどうなるかという見通しは全然ついていないのである」江戸川乱歩
「書けないときに書かすと云うことはその執筆者を殺すことだ」横光利一
「どうしても書けぬ。あやまりに文芸春秋社に行く」「どうしてもといわれるが、筆が進まぬ」高見順
「かんにんしてくれ給へ。どうしても書けないんだ」吉川英治
「才能がないのではないかと、悲観するのは、新しい小説にとりかかる前、いつも感じる気持ちである」遠藤周作

やばいお腹痛くなってきた。(中断)
あと泉鏡花は「昼よりも夜の方が余程筆が早い」と書いているように夜型だったらしいのですが
この時間帯なら書けるみたいなのも確かにあると思うし、
坂口安吾が「眠るべからざる時に眠りをむさぼる。その快楽が近年の私には最も愛すべき友である」とか
木下順二が「フォークナーか誰かは、鉛筆を何本も削ってばかりいるというのではなかったか」と書いてたり
仕事がつらくて2~3時間はボンヤリしちゃう菊池寛とか
原稿の合間にオペラや文楽へ出かけてしまう有吉佐和子とか
仕事以外のことをやってしまうというのもよくある話だと思う。
試験勉強期間は部屋の掃除や本棚の整理がはかどるとか。(わたしだ)

"〆切はゴムのように延びず"というのは、わたしが高校時代に在籍した部活の格言でしたが
まあ当然ですが延ばした事例はいくらでもあるようで、
島崎藤村は「来年一ぱいには全部を書き終りたいと思ひます。丁度一年だけ後れる訳になります」とか
〆切を1年も延ばしたつわものだったりする。
長谷川町子は「カツオの表情がどうも気に入りません。描き直すので1時間だけ待っていただけませんか」と
配達の人を玄関先に待たせて仕上げたらしい4コマを描いています。
(そういえばサザエさんに出てくる伊佐坂先生はいつも〆切に追われてますね)
ただ、個人的にすごく怖かったのはそのあとのコマで
原稿を描きなおした長谷川さんがボツ原稿を破ったら、なんと破ったのは描きなおした方(!)で
仕方ないのでボツ原稿をそのまま渡したという話…
思い出したくもないですがわたしも似たような経験があるのでほんとに怖かった、
人間、慌ててると手が滑って何するかわからないから気をつけましょうもの書きの皆様…。

長谷川さんで思い出したけど、漫画家さんの〆切前の悲鳴はしょっちゅう耳にしますけど
このアンソロには載ってないけど、武内直子が前に描いてたエッセイ漫画に
セーラームーンの原稿間に合わないどうしようって編集(おさぶさん)に電話したら
「ええ~っノート(付録)だけで本編のないなかよしが200万部も書店に並ぶなんてやだ~!」と泣かれて
どうにかこうにか仕上げたみたいな話があったね…。
手塚治虫は逃亡の常習犯で映画館や駅やホテルに探しに来られては連れ戻されたらしいし
藤子不二雄コンビは眠いときはペンを手に突き刺しながら原稿描いたそうだし
鳥山明も「あと1コマで終わる!」とか言ってる自画像を漫画に描いたことあるし
きっと昨日も今日もどこかで漫画家と編集者の奮闘が起きてるのでしょうね…
漫画家の皆様お疲れさまです。いつも面白い漫画をありがとうございます。
そういえば先月、こち亀が連載終了するというので秋元治がテレビに出てたけど
「常に原稿をいくつかストックしておいて落とさないようにしていた」とおっしゃってて
すげぇ本当にこういう人いるんだって思った。
〆切前に仕上げる作家というと国木田独歩や川端康成、三島由紀夫などを聞いたことがある。
逆に伝説並の遅筆だったのは、トットてれびでもやってたけど向田邦子ですね…
〆切過ぎてから書くとかザラだったらしい。

「仕事はのばせばいくらでものびる。
しかしそれでは、死という締切までにでき上る原稿はほとんどなくなってしまう」外山滋比古

編集者とのやり取りも。
「様子をみにきたのですよといはれてほろりとする」林芙美子とか、
「ただいま大宮でカンヅメになり仕事中です」と手紙に書いた太宰治とか
「カンヅメなるものを非難拒否していたが、やむにやまれずカンヅメされることを受諾」した高見順とか
相当やり合ってきた時間を彷彿とさせる文章が。。
執筆中に体調を崩す人もいて、パブロフの犬というか職業病だったり仮病(?)だったり様々。
寺田寅彦は書くときに頭痛や胃痛がしたそうですが
「大した事はなく、遊んで居ればいゝといふ誠に我儘病で慚愧の至り」と編集に手紙を出しています。
井上ひさしは原稿の依頼を引き受けてからの行動を缶詰病と呼んでいて
最初は「傑作を書く」などと言ってハイになり、次に睡眠をむさぼり、やがて放浪癖が目立ち、
しまいには「次号廻しにしてください」「殺してください」などと言い始めますが
ホテルなどに缶詰にされると全快するらしい。
梅崎春生と編集者の「ほんとに風邪ひいたんですか」「ほんとだよ」のやり取りみたいに
本当に体調を崩しても疑われることもあったとか、
何本も連載抱えてた松本清張が「ゲラ入れだけでも徹夜になる」とかぼやいてるの見ると
延ばしてあげてほしいとも思ってしまうけど、
編集者も「原稿依頼はたいてい多少のサバを読んである」「ほどよいところに締切日を置く」(高田宏)とか
ちゃんと考えて依頼してることがわかる文章も載ってて、もどかしいですね…。
(岡崎京子は6日もサバを読まれたことがあるそうな)
ちなみに高田宏は「書くことも、編集することも、相手に惚れなかったら、はじまらないのではないか」という
名言も書き残している。(川本三郎の章から)

外山滋比古の章に原稿性発熱(〆切になっても一字も書けず発熱して気分が悪くなり、
またの機会にと断られると熱が下がる遅筆の作家の事例)なる言葉があって、
それを左右社さんが栞に作ってしまったのが→こちら
これちょっと現物欲しい。

作家はサボってるわけではないし、編集者も意地悪してるわけではなくて
お互いに仕事に対する情熱やポテンシャルがぶつかってしまうだけであって
それがうまくはたらけばいいけど、ドツボにはまってしまった時にきっと
こういう文章たちが生まれてくるんだろうなと思いながら読んでいたら
幸田文の「私というものが認められることは全然なかったから、"私に"といって、
書くようにすすめられた時は本当にうれしかったのでした」とか
三浦綾子の「一気に十八枚口述して、何とか〆切に間に合わす」(晩年は彼女の夫が書き取ってた)とか
米原万里の、何でもいいというよりはテーマと枚数と〆切を与えられて書くと
「嘘みたいに仕事がはかどる」「不自由な方が自由になれる」みたいな文章も載ってるから
書くことの奥深さを知る本でもありました。
「終わりが間近に迫っているという危機感が、知に、勇気ある飛躍を促し、
ときに驚異的な洞察をもたらす」(大澤真幸)もよくわかるし…。

「自分の中では、なに、たまたまさ、
潮が引けば、じきに元の、暇に恵まれた日々に戻るさね、という考えがある」大沢在昌


ドラマ「夏目漱石の妻」を毎週、拳を握りしめながら見てるんですが
あれの漱石は精神病で書けないみたいになってて〆切に関する話は特に出てないような。
ちなみに漱石は吾輩は猫であるを書いている最中に
「猫は明日から奮発してかくんですが、かうなると苦しくなりますよ。だれか代作が頼みたい位だ。
然し十七八日までにはあげます。君と活版屋に口をあけさしては済まない」
と書いた葉書を、高浜虚子宛に送っているそうです。
弱音を吐きながらも弟子に気を使わせないようにする漱石せんせいは逞しい。
2016_10
05
(Wed)23:53

襲名の秋。

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歌舞伎座にて芸術祭十月大歌舞伎を観てきました。
中村橋之助さんが八代目中村芝翫を、息子さんたちがそれぞれ橋之助・福之助・歌之助を襲名なさる公演で
運良く初日のチケットも取れて有難や~。
役者さんの襲名披露公演を舞台で見るのは四代目猿之助さんの巡業以来で
歌舞伎座での役者さんの襲名を見るのは初めてでしたが、
テレビ局のカメラや取材の人数がハンパないし、インタビューされてるお客さんもいっぱいいたし
歌舞伎座でお着物のお客さんは珍しくありませんがあの日は妙に着物率が高かった。
たぶん団体でお着物とかお召しの人たちがたくさんいたんだと思う。

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まったくそんな予定なかったけど流れで入場がほぼ一番乗りになっちゃってわーいと劇場入りしたら
スタイリッシュな祝い幕!佐藤可士和さんのデザインだそうです。
佐藤氏は他にも手ぬぐいとか、今回の襲名にあたり諸々デザインとか担当なさっているらしい。
(配り物の扇子の絵は山口晃さんが描いているそう)

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花道セッティングが好きなので見ていたら桟敷席のカーテンがざわざわっと開いて
芸者さんたちが入っていらっしゃった!
初日は新橋組合総見の日でもあったようです。黒の引き着がズラリと並ぶ様は壮観。
襲名ってスゴイな…。

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2階ロビーには祝い幕を入れる箱がでーんと。
そんなに大きくはなくて、本当に幕を仕舞うわけではないそうですが
こういうのも作られるのですね。

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壁にはお祝いの絵馬がたくさん。
ざっと見ただけでも大竹しのぶ、北大路欣也、竹中直人、仲間由紀恵、西村雅彦、野田秀樹、若村麻由美…
襲名ってスゴイな!!

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今回はここから。舞台にも花道にも近くてラッキーでした。
芝翫さんが勇壮に登場したり、松禄さんが外郎を売りながら歩いて来たり
玉さまが優雅にひとさし舞って引っ込んで行ったりしました(*´ `*)。


幕が開いて、まずは歌舞伎十八番「外郎売」。
初演(1718年)は二代目市川團十郎です。
二代目が持病の咳が止まらず困っていたときに小田原の透頂香(通称:外郎)を飲んだら治ったらしくて
お店へのお礼にと宣伝も兼ねて「外郎売」のお芝居を作ったのが始まり。
(外郎はもともとは薬の名前で、お菓子の外郎が売られ始めたのは近代になってからです)
主役の外郎売が芝居の中盤でたたきだす早口言葉の口上が見どころで
現代ではこのセリフを俳優養成所やアナウンサーの研修などで引用することもあるそうだ。

浅黄幕が切って落とされると、箱根のとある神社にズラリと集まった人々のご登場。
真ん中にいる工藤祐経は大名や遊女たちに囲まれて宴会をしているところで
(頼朝さまからの覚えもよろしいですな~みたいなことも言われたりする)、
実はこれから登場してくる曽我兄弟の父親を殺した人だったりします。
歌六さん、貫禄のある佇まいで敵役ですがかっこいい☆
お酌している大磯の虎と化粧坂少将も七くんと児太くんでたいへん美しくて
特に七くんの襟足はなんだありゃ、
「着物姿の基本は襟足!うなじの色気が着物の醍醐味!」などと普段から力説しているわたしですが
いざ美しい人がうなじを見せている場面に出くわすと目のやり場に困ってどうしたらいいかわからなくなります。
神は七くんをなぜあのように作りたもうた…!
右近ちゃんの舞鶴も梅丸くんの喜瀬川もかわいすぎか。
と、そこへ花道から外郎売が商売のために声を張り上げるのが聞こえて
余興がほしいと言う工藤のために小林朝比奈と妹の舞鶴が呼びます。
亀寿さんが衣装をめっちゃ着込んで派手な隈取りしてるから倍近く大きく見えてハックリョク~。

呼ばれて花道から出てきたのが外郎売(名前を聞かれて松緑って名乗っちゃっておもしろかった)、
実は曽我兄弟の弟の五郎が変装した姿です。
外郎売は「寿曽我対面」が元になっている、いわゆる曽我もので
そこから一場面を抜粋してアレンジを加えたのが「外郎売」ということになります。
身をやつしてはいてもメイクと眼光は血気盛んな若者そのもので
松緑さん~~~~~かっこいいぞ!
「急いでこれへいらしゃんせ」と虎と少将が呼びつけまして(実は曽我兄弟と虎・少将は恋人同士)、
舞台の上へのしのしと歩いてくる外郎売。
ああ、ただの商人というより武者の貫禄がまったく隠せてないよ(笑)そこがいいんだけど。

中央までやって来ると松緑さんは客席に向かって両膝をつき、
「芝翫さん、橋之助さん福之助さん歌之助さん、襲名誠におめでとうござりまする。
このめでたい公演に市川宗家よりお許しをいただきまして、外郎売を勤めさせていただきます」と
深々とお辞儀しちゃった。拍手ー!
さっそく売り文句の口上を述べるのかと思いきや、
茶道珍斎とあれこれおしゃべりしてるうちに止まらなくなってスイッチオンしたみたいで
「そりゃそりゃそりゃ回ってきた回ってきた~」のところで待ってました!と絶妙なタイミングで大向こうが入り
とざいとーざーい、に続いて「そもそも早口の始まりは~」キター!+゚+。:.゚(*゚Д゚*).:。+゚ +゚
外郎の歴史や効能について武具馬具武具馬具とか麦ごみ麦ごみなど早口言葉を交えながら
10分くらい一人でしゃべってるんですが
どこで息継ぎしてるのかもわからない、朗々となめらかに、立て板に水のように、
初日のご愛敬でちょっと危なげなところもありつつ「ホホ敬って申す~」とよどみなく言いきった瞬間に
客席からワーッと割れんばかりの拍手がおきた!!
スゲー噂には聞いていましたが実際に目の前で役者さんが披露されるとドキドキ感が違ったし
千穐楽に向けてどんどんよどみなくなっていくと思うとそれもドキドキするし
何より松緑さんがかっこよすぎた。
大薩摩連中の演奏もよかったですよ~。

茶道珍斎は遊女たちを口説くため舌が回るようになりたいと外郎を一服たべますが
全然うまく早口言葉が言えなくて、
どうしようかな~とか言っちゃう吉之丞さんめっちゃかわいかった。
五郎は親の仇を目の前にしているので次第にカッカしてきて「覚悟しろ~」みたいなことを言い出すと
五郎の兄・十郎が工藤の手下たちに追われながら花道をやって来て
「今はその時期ではない」と弟を制止します。
亀三郎さん扮する十郎は裃に長袴の目元涼やかな超イケメンでした!気をしっかり持たないと虜にされそう。
それでも五郎は収まらず、工藤の手下たちに止められながらグギギ…と悔しそうで
勢いあまって飛び出そうとするのを十郎兄貴が手刀ひとつで止めててかっこよすぎました。
工藤が「じゃあおまえ後でここに来いや」と再会を約束して
最後は全員、それぞれの場所でポーズして絵のような幕切れ。ありがとうございました!

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幕間。
芝翫さんの襲名なので久々にめで鯛焼きを買いました。あんこと紅白餅の絶妙なハーモニー。

この後、売店に行こうとして通路を歩いていたら
1階席花道脇の一番後ろが梨園の人々ゾーンになっていて
全員はわからなかったけど芝翫さんのお母様の雅子さんや、前田愛さん、七緒ちゃん哲くん、
あとたぶん関係者の奥様方とか、ロビーで忙しそうに動き回る三田寛子さんを見ました。
わたしあまり詳しくないんですけど襲名披露中ってひょっとして寛子さん毎日いらっしゃるんだろか…。


幕があがって、次は口上。
金屏風や襖に水墨の龍がうねうねと描かれた背景がむちゃくちゃかっこよかったです。
七くんの「叔父といとこたちの襲名は本当にうれしい。小さいに兄いにと慕ってくれる後輩をよろしくお願いします」とか
玉さまの「幸ちゃん(芝翫さんの本名の幸二)」呼びとか
菊之助さんの「芝翫さんとは住んでるところが近いんです」とか
病気をおして懸命に語る我當さん(呂律が聞き取れなかったけど強い声だった)とか
菊五郎さんの「先代芝翫から六代目菊五郎の話をよく聞いた」とか
吉右衛門さんと東蔵さんの「先代芝翫から色々教わりました。芝居も競馬も」とか
児太郎くんの「父の福助(芝翫さんのお兄さま)も懸命にリハビリに励んでおります」とか
梅玉さんの「まだつい橋之助さんって呼んじゃう」とか、随所にポカポカした雰囲気でほのぼの。
芝翫さんの「とても大きな名跡ですが、名を汚さぬように精進いたします」という決意と
橋之助を継ぐ国生くんの「3人で一層、芸道に励みます」という頼もしい言葉や
最後に藤十郎さんの「歌舞伎をいついつまでも末永くご愛顧賜りますように」との
祈りのこもった言葉で幕切れとなりました。

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幕間にあさり炊き込みご飯。
と、とらやで買った御好梨木饅(1780年初出)。果物の梨は大好物ですがお菓子の梨も好き~。


続いて芝翫さんが主役を勤める「熊谷陣屋」。
吉右衛門さんと海老蔵さんが主役を演じた舞台を見たことがあるのですが
今回は芝翫さんの襲名公演なので「芝翫型」で演じられるとのこと。
「大芝翫」とも呼ばれた幕末の役者・四代目中村芝翫がつけた型で
團十郎の「團十郎型」とは少し違っていると数年前のインタビューにもありました。→こちら
わたしが見たことあるのは團十郎型で、首実検で制札を下げたり最後に花道の引っ込みがあるのですが
芝翫型では制札を上げたり、花道ではなく舞台の上で幕切れだったりします。
服装もちょっと違って、天鵞絨の着物に赤地錦の裃をつけて
顔も真っ赤に塗って芝翫隈といわれる隈取をほどこしたものだったり
出家後の僧侶になった姿が有髪だったりちょこちょこ違いが。
團十郎型は壮年の渋さがありますが、芝翫型は勇ましさが強調されているように感じました。

熊谷陣屋は直実が敦盛を殺した(ことになっている)あたりから出家の決心をするまでの話で
この演目で直実が何歳の設定なのかは不明ですけど
史実の直実は50代で出家していますので、いま芝翫さんが直実を演じると年相応なのかもなあと思った。
荒事の團十郎型と違ってどちらかというと抑制したセリフ回しで
花道で聞き慣れている「16年は夢だ、夢だ」のセリフも舞台で言うとしみじみ感があるし
直実の顔は赤いのに型は全体的にトーンが暗い。
だから制札を上げての見得が派手に見えるのかな…。
後半、雛壇がくるりと回り竹本葵太夫の語りになってから色々どんでん返しがあってのクライマックスでは
夫婦2人舞台に並んで花道に行かずに幕切れなので、
團十郎型とは異なる悲しみといたわりの表現が芝翫型にはあったと思う。
そして随所で成駒屋、八代目、神谷町!などいつになく大向こうが多くて盛り上がりました。
芝翫さん襲名本当におめでとう~~!

魁春さんの相模はつつましく愛情にあふれた人で
夫から子の首を受け取るのとか気の毒すぎて見てられなかったし
なんでや~小次郎ちゃんなんでこんな目に遭うんや~~!ってわたしも一緒に泣きたくなった。
菊之助さんの藤の方はきりっとした美人、敦盛の敵討ちのために斬りかかる勇猛さと凛々しさと
(この芝居の敦盛は後白河院の子という設定なので)気品も漂って
子を返せと叫ぶ声は劇場中に響いていてそうだそうだ~!とか応援したかった。かっこよかった。
弥陀六も相変わらず食えないおじいちゃんですけど今回は腹に一物感がすごい、
歌六さんは隠し事をする人を演じると誰にも負けないというか
隠し事がバレたときの表情とか良くも悪くも豹変する演技にものすごい説得力があると思う。
吉右衛門さんの義経との「目でやり合う」感がすごくて
互いに何かひとつズレたら刀抜くんじゃないかと思った、
大ベテラン同士のぶつかり合いは鎬を削るどころじゃないぜ!
からの、義経が直実に言う「堅固で暮らせよ」は精いっぱい声を絞り出した感があったな…。
義経の後ろに歌昇くん、右近ちゃん、福之助さん歌之助くんがおっかない顔でドレミファと並んで壮観。

勢揃いしての引っ張りの幕切れでは
最後の最後、幕が閉まる寸前に芝翫さんが両目を閉じくっと天を仰いでいました。
熊谷陣屋は子どもが酷い目に遭うので好きにはなれない演目だけど
一方で直実が「こうした方がいいに違いない」と想像して動くのとか、それを利用した義経とか見てると
封建社会や武家システムを批判してるような気もするから苦手というのも何か違う。
作者の並木宗輔は仮名手本忠臣蔵も書いてて一筋縄ではいかない芝居づくりの人だし、
それを二代目や四代目は各々の思想で再現しようとしたのかもしれないな…
ひとつのお芝居に色んな型があるの面白いし、時代や人によっても表現は変わるし
込められた思いもきっとひとつひとつ違うんだろうなとかぽつぽつ考えました。


続いて玉三郎さんによる「藤娘」。
正直に白状しますと一番楽しみにしていた演目だったりします(笑)。
江戸時代に大津で販売されていたお土産絵「藤かつぎ娘」がモチーフといわれていて
初演では連続舞踊のひとつで、絵から藤の精が出てきて踊るという内容だったのを
六代目菊五郎が独立した舞踊にしたのだそうです。(当時の舞台装置は小村雪岱が担当)
先代の七代目芝翫さんは女形だったので藤娘も何度か踊られたらしく
それで今回玉三郎さんも藤娘を、というお話があったとご本人のサイトにコメントがありました。
(あとシン・ゴジラ見に行かれたそうで…ゴジラをこんな美しい言葉で褒める方初めて見た)

柝が入ると徐々に照明が落ちて、劇場内は真っ暗に。
幕が上がる気配は何となくわかったものの、舞台に何があるのかもわからないまま
キキキキ、キッ…と柝が入ってワクワクしていたらパーーッと照明がついて
舞台いっぱいに枝を伸ばし花を咲かせた大きな藤と松の樹のセットの下に
藤の振袖をまとった玉さまがスッとポーズきめて立っていた!!
大和屋!の大向こうとともにわーっと嵐のような拍手が起きたよ、綺麗ー!!\(^o^)/
伴奏の長唄連中は、たいていの舞台では雛壇に乗って演奏しますが
舞台と一体感を出すためという六代目菊五郎の意向にしたがい床に座っての演奏で
その中にたったひとりの藤の精がたたずむ様はもはや錦絵。
あれぜひ舞台写真にして売っていただきたい…買ったことないけどあれならたぶん買う。

そのあと繰り広げられた舞踊はもう何を言えばいいのか…めくるめく美しさと神秘のオンステージ。
ままならぬ男性のつれなさを踊りに託しながらときどき樹の後ろに隠れてお色直しして
また出てきて踊るたびに客席から「ああ」とも「おお」ともつかぬどよめきが聞こえて
この世のものとは思えない夢のような一幕。
わたし踊りのことは全然わからないけど玉さまが妖精も天使も超越してるのはわかった、
マジたまんない、何も言えない。
お酒が入ってからの酔っぱらい演技(藤の精はお酒好きらしい)は
六代目による藤音頭です…というイヤホンガイドさんの解説もどうにかこうにか耳に入る程度には
ボーっとしていたように思います。
映像でしか見たことなかった玉さまの藤娘が目の前にいるのがうれしかったけど
見てるうちにうれしいとか素敵とかの気持ちさえも感じなくなって、あれは何だったんだろうとか
花道でひとさし舞ってするりと引っ込んで行かれて幕が下りてもしばらく頭がフワフワして現実感がなくて
イヤホンガイド返したり駅に降りて電車に揺られたりしてるうちに
夢から醒めるってこんな気分かな…とか、そんなことを考えたひとときでした。
よくドラマとかで物事に心酔して何話しかけても上の空な登場人物とかいるけど
ああなる人ほんとにいるのかなって思ったけど、いました!身をもって知った。
こんなに観劇後に引きずったの初めて!夢のような時間ってこの世に存在するんですね…。


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ライトアップ歌舞伎座。
初日おめでとうございます。皆様ご無事に千穐楽まで走り続けられますように。

実はまだ芝翫さんとお呼びするのが慣れなくて
この記事を書いてるときも何度か橋之助さんと打ってしまう始末なんですけど、
今回、芝翫さん演じる幕末の型の熊谷直実を通じて
わたしは幕末も四代目もまったく知らないのにあー今舞台にいるのは四代目なんだなって気持ちになって
その瞬間はわたしが慣れ親しんだ「橋之助さん」ではなくてものすごく「芝翫さん」だったなあと思った、
早く慣れたい。
2016_10
01
(Sat)23:56

甘い魔術師。

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新宿高島屋で開催されていた「WAGASHI 若き匠たちの挑戦(通称:ワカタク)」に行ってまいりました。
全国各地の和菓子店の若旦那たちが新しい和菓子を創作・提案するイベントの第8弾です。
なかなか参加できずにおりますが、今回は久し振りに新宿に戻って来るとのことで
何とか時間作って行ってきたよ。
本当はイートインも行きたかったけど(餡子の味見したかった)時間がなかった~次こそは。。

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そして今回は、前回は勇気がなくてできなかったお菓子リクエストをお願いして
目の前で作っていただきました!
富山の和菓子店・引綱香月堂の御主人によるお手製お菓子!ヒャッホウ。
引綱さんはアニマル和菓子の猫をいただいてから本当にファンになってしまって
次のワカタクでは絶対にリクエストするぞーと決心していたのですが
いざお会いしたら緊張してしまって「ええと、2匹の猫をお願いします」としか言えなかった。。
それでも引綱さんは「はいわかりました~」と明るく答えてくださって
どんな子たちができあがってくるのかなとワクワクしていたら、

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えっミケ?

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わーーーーー!白猫&三毛猫!!+゚+。:.゚(*゚Д゚*).:。+゚ +゚
売り場にいた猫ちゃんたちはみんな白猫だったので
てっきり白猫コンビを作っていただけるのかと思ったらとんでもなかった。
あんまりびっくりしたので「あ、あの、うち、三毛猫いるんです…」と申し上げるのがやっとで
引綱さんに「ほんとですか?ピンときたのかなあ」とニコニコおっしゃっていただいて感動は2倍。
これを10分足らずで作ってしまわれるんですよ何という技術、何という匠の技。

引綱さんは猫の他にも猫&ペンギン、ペンギン&カッパ、ゾウやライオンなど
リクエストによっては種を超えたペア和菓子とか作ってくださいます!
もちろん単品リクエストもOKだそうですよ。

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ずらりと並んだお菓子の中から悩みに悩んで選んでゲット。
高林堂さんの和マカロン(ローズ&ラズベリー味)、彩雲堂さんの有明の月、
引綱香月堂さんの猫ちゃんたち。

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有明の月は百人一首に収録されている素性法師の
「今来むと言ひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな」がモデルです。
夜空に浮かんだ月は哀愁を帯びて美しい。
今回のワカタクのテーマは"恋する和菓子"なので
他にも恋愛に関する短歌や詩、歌詞などからイメージしたお菓子がたくさんありました。

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猫ちゃんたちかわいい~~お花持ってるしこのピッタリ感マジたまんねえ。
お鼻とお口がモフモフしてそうなリアリティでぷにぷに触りたくなってしまう。

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「これはわたしかしら?」そうですあなたです。かわいいでしょ。

和菓子は中味の餡子なども楽しむというのがマナーなので
見た目を楽しんでから真っ二つに切ってからいただくことにしてるのですが今回は
こんな仲良さそうな2匹を真っ二つなんていやだあー!ってなって
一飲み一息にいただきました。
喉に詰まらせないために一生懸命もぐもぐやったら口の中がカオスになりましたが
お茶も飲んだので生きてます安心してください。お茶は偉大。
てか三毛猫がOKだと知ってたらミケ&ハチワレで作ってくださいってお願いできたのにな…
どこまでリクエストしていいのかわかりませんが、次はもうちょっと勇気出して交渉してみよう。


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あと新宿マルイアネックスでカードキャプターさくらの期間限定ショップが開店中だったので
ちょっと覗いて来ました。
ショップの中には魔法陣があってレリーズできます。ポーズとりたい方ぜひ。

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パティスリー・スワロウテイルさんによるコラボケーキをゲット!
木之本桜をイメージしたさくらケーキです。
アニメのオープニングとかで使われてるピンクの衣装がモデルで
羽と桜と赤いリボンはチョコレート、さくら風味のムースの中には大きなチェリーが入っていました。
かわいくておいしい、スワロウテイルさんの本気。

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再現度がむちゃくちゃ高すぎるクロウカードのプリント柄クッキーは
食べたらしっとりしていました。
和菓子もだけど洋菓子も色んなもの表現できますよね~お菓子文化ばんざい\(^o^)/