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2017_05
31
(Wed)23:24

In This Corner of the World...

映画館に行くかどうしようかずーっと迷っていたのですが
先日、公式の「もうすぐ観客200万人」みたいなツイートを見かけまして
わたしが行くことでカウントが1つ進むならと思って
ようやく、映画『この世界の片隅に』を観てきました。
過去に原作は読みましたけど細かい部分はほとんど忘れていたので
観ながら色々と思い出していった感じでした。
あと事前情報で、ジープをスケッチする少年時代の大塚康生さんが登場してると聞いてそれも楽しみで
いざ見たら本当に1カットだけ登場してて一瞬だったけどしっかり確認できました。
監督補の浦谷さんがしのびこませたそうです(^ω^)遊び心ですね。

観てる間は夢中で、終わって劇場を出てからものすごいぐるぐる色んなこと考えたり妄想してたので
どうやって帰宅したのか記憶があやふやだったりしますが、以下に所感を。
相変わらずまとまりない上にネタバレしていますので未見の方はご注意ください。


色んな人が言ってますけど、まず生活描写が細かいです。
たらいの中のスイカのひんやり感とか、収穫したカボチャに顔描いたりとか
伯父さんの家にきょうだいで行くとき誰が何を言うか確認するのとか
すずさんが鉛筆の削りかすを床の穴に捨てたり(『太郎こおろぎ』を思い出した)とか
バイオリンを弾くように包丁とまな板を持ってお鍋に野菜を入れるのとか
道草を使った料理レシピ(『戦下のレシピ』を思い出した)を手順から何から細かく再現してたりとか。
一方でリンさんの香りが花だったりする作画が妙に色っぽくてドキドキしたし
風に吹かれるタンポポやその向こうに広がる山や青空もきれいだった。
(制作にあたり当時の天気と雲と気温を調べたという途方もない話を聞きまして…
春のシーンで蝶を飛ばそうと思ったら飛ばない気温だったとか
周作さんが海軍に行く日の呉市の天気を調べたら小雨だったので降らせたとか。
なにかの朝ドラで暦の大安を調べたみたいな話を見たけど、あれレベルだなって思った)
背景美術のディテールも細かくて、映画冒頭だけに限って挙げてもいいですが
船から三角州の雁木に降りるすずさんとか、周作さんと出会う相生橋とか
中島本町の賑やかさとか今はレストハウスになってる元大正屋呉服店とか
すずさんがばけもんに借りた単眼鏡で見る物産館とか広島城とか…
たぶんわたし半分も気づけてないと思うので次に見る機会があったらもうちょっと色々気づけたらいいなあ。
ってか今思ったけどロングショットばっかりだったね??作画班…(震)
人物のアップはそんなになくて全身図や景色がいっぱい見られる映画なんですね。

監督の片渕さんはジブリ時代からお名前は拝見してまして、
アリーテ姫を見たときにずいぶん淡々と物語を紡ぐ方だなあと思ったけど
(ゲド戦記の2巻がお好きとインタビューで語ってらして親近感を持ちました)、
このセカもその作風が貫かれていたなあと思う。
もともと原作がそんな風というのもあるけど、映画もどのエピソードに関しても割とあっさり描いてるというか
ドキュメンタリーほど硬派ではないけど演出の熱量が平行線で
どこかがクライマックス的な盛り上がりがないのが、なんだかすごく新鮮でした。
爆弾がふってくる畑にもモンシロチョウが当たり前のように飛んでいたりするし…。
そんな感じだから登場人物が感情をにじませたりするシーンはおお!ってなります。
おばあちゃんが「放っときゃ後で食べに来んさってよ」って縁側にスイカ置いとくのとか
すずさんの「しみじみニヤニヤしとるんじゃ~」につられて周作さんもニコ~ってなるのとか
やたらガハガハ笑う水原さんとか、水原さんに怒る癖がついてるすずさんとか
晴美さんがコロコロ笑いながらすずさんの手を引いてるあたりのシーンは
かわいいなあ微笑ましいなあとしみじみします。
逆に、広島に帰るって叫ぶすずさんと彼女を守ろうとする周作さんが怒鳴り合うシーンや
8月15日の放送を聴いて畑で大泣きするすずさんのシーンとかは感情爆発の最高潮で
のんさんも細谷さんもむっちゃくちゃ叫んでましたね。
径子さんがすずさんに晴美をかえせって言うとこも後で謝るのも胸がぎゅーってなってつらかった、
劇的じゃなくて、普段叫び慣れてない人が叫んだり感情押し殺しながらしゃべるときって
こういう声出るよなっていう生々しさがあった。うまく言えないけど。

キャストも関西の人が多かったみたいで、のんさんは兵庫だし
細谷さんや新谷さんや佐々木さんは広島、小野さんは高知、津田さんは山口、
渋谷さんは大阪のご出身だそうですね~。
新谷さんが広島言葉の指導役でテスト用に台本を全部収録されたとおっしゃってて→こちら
この映画はセリフ劇といってもいいくらい会話が多いので大変だったろうな…お疲れさまでした。
ほぼ別録りだったらしいけど役者さんの技量や演出の力で大変バランスのよい音響になってて
そういう意味でもすばらしいものを見せていただいたと思います。
一方で、のんさんのブログに監督とキャストの皆さんで
「この世界の片隅を見つめるポーズ」なる写真を撮った記事が載ってて
なんて愉快な人たちなんだ!って爆笑してしまった(笑)おもしろいこと考えるなあ。

原作者のこうの史代さん曰く「小動物みたい」なすずさんは人の機微に気づかない自分をぼんやりだと言っていたけど
あれだけ日常仕事してたら気づいてる暇なんてないと思う…。
朝起きてごはん作って洗濯して掃除してお昼ご飯作って縫い物して
夕方に買い物行って夕ご飯作ってお風呂沸かして次の日の準備して蒲団敷いて。。
家の人々としゃべる時間なんて寝る前くらいしかない日々の中で
周作さんと畑にいたり雨宿りしたりしたときとか、サンさんと洋服の片付けしてるときとか
時々ふと訪れる空き時間でやっと十円ハゲのこと気づいてもらえたり
町内の人間関係とか、径子さんの事情とか聞けたりするわけだし。
(というかリアルに考えても人間ってそんなに自分のこと話さないよね…タイミングが合えば話すかもしれないけど)
というか改めて当時の社会構造は壮絶だなと思いました…。
女性がある日唐突に家から遠く離れた場所へ嫁入りして、家事労働の一切合切をひとりでこなして
(姑は病弱で頼れないし舅と夫はやさしいけど仕事に行くだけで家の仕事をまったくやらない)、
戦争で物資が減らされてるから家事も工夫を余儀なくされて実験→失敗を繰り返して繰り返して
こんなことをしていたら身が持たないですよまじで…。
すずさんが家の住所を知らないことが家族の伝達ミスではなくすずさんのうっかりとして処理されたり
水原さんが入湯上陸で泊まりに来たとき周作さんが納屋をあてがって
すずさんに行火を持って行かせて家の鍵しめちゃうとこは「はあぁあー!?」って思った。。
その後すずさんも周作さんへの怒りを水原さんにぶちまけたり
汽車の中で怒ったり周作さんの靴下に細工して履けないようにしたりして
やられたらやり返すタイプというのがわかってそこはちょっとホッとしたけど…。
駅の夫婦ゲンカも2人とも全然遠慮してなくて、少し言い合えるようになったなと思えて
そこもちょっとホッとしました。
周作さんの横顔を描いて「軍事機密じゃ」って言ったり、街や防空壕の中で落書きしたり
水原さんに鉛筆や羽ペンもらってよろこぶところは絵描きだなあと思います。
いろんな人に絵を描いてあげるのがそれぞれとてもよいシーンでした。
(水原さんに描いてあげた海の波を跳ねるうさぎの絵が好き)
対空砲火を見て「絵の具があれば」と思ってしまうところは色んな意見があると思いますが…
あの後すずさん家に帰って描いたのかな。

周作さんは言い出しっぺの割にすずさんにどう接していいかわからないまま一緒に暮らしてるというか、
すずさんのお化粧を見抜けなかったり紙くずボールを竹刀で空振りしまくったりと
真面目で仕事できる人だけどいまいち頼りなくて、アップアップな印象があります。
お見合いもデートもしないでいきなり同居始めてるのでまあお互い様なんだけど。
あと周作さんなんで結婚式のとき拳握って何も食べなかったんだろうとか
持ち物のノートの端っこなんで切れてるんだっけ?と思って原作ネタバレをぐぐったら
あーそうだったそうだったと思い出しました。
もし覚えてたまま観ていたら、すずさんが花柄の茶碗を見つめるのとか
機銃掃射で破壊される紅とか見て硬直していたと思います。
確かわたし、原作読んでたときすずさんとリンさんの関係すごく好きだった気がするんですが
映画はなぜ削られてしまったんだろう…。
絵コンテまではできてるって片渕さんがインタビューでおっしゃってるので
そのうち完全版みたいなのとか作られたりするんだろうか。作ってほしいな。

戦争の描写は後半からどんどん顕著になっていく。
食べ物や生活用品がいつの間にか減って、電灯に黒い布をかけたりお米にお芋が混ざり始めたり
千人針さすとか、当たり前のように「闇で買っといで」ってセリフ出てきたり
空襲警報が鳴るようになって最初は緊張してたけど徐々に慣れて防空壕でお茶飲んでたりとか
でも慣れた頃にあっけなく訪れる別れとか…。
人々も、すずさんが憲兵にスケブとられて家族に笑われるあたりまではまだ余裕があったけど
晴美さんが亡くなったり(シネカリ演出めっちゃ怖かった)空襲と機銃掃射で笑顔がまったく見られなくなって
笑うのは戦後になってからだったような。
あと、映画冒頭から〇年〇月って月付がちょこちょこ出て時間の経過がわかるようになってるんですが
周作さんが「三ヶ月は戻れん」て言ったときや
「その9日後」ってテロップ出たとき待ってさっき何日って出たっけ??ってあわてて脳内計算して
呉市だってわかってても怖かったし、8月15日は唐突感がすごくありました。
三枝和子さんも『その日の夏』に書いてるけどあの正午の後だってご飯食べなきゃ生きられないわけでね…。
太極旗が上がるカットがすごくあっさりしてて、すずさんが日本という国の正体に気付くセリフがなかったり
戦後処理も淡々としていてビビった…機密文書燃やすシーンがほんとつらい…。
すみちゃんのお見舞いで両親のことやすみちゃんの体調を聞いて、すずさんはまだ何が起こるか知らないけれど
原爆症がどんなものか知っているわたしたちは何も言えなくなってしまうな…。
久々にお米を炊くのは楠公飯のシーン見た後だからおいしそう!って思ったし
電灯から黒い布外したり、すずさんと径子さんが占領軍の炊きだしを「うまー!」って食べるのとかも
それまでできなかったことができるようになっていく解放感みたいなのを強烈に感じた。
ばけもんも…無事だったんだね…!

すずさんと周作さんが広島市内で出会う女の子がお母さんの左手を握っていたから生きていた話…。
あの子が当時自分に起きた出来事をすずさんたちに語る言葉を持てる日がくるかはわからないけど
それを聞いた時のすずさんの気持ちとか考えてしまったし、
「晴美が小さかったときの服を」って真っ先に行動した径子さんが
一緒に暮らすうちにあの子に晴美さんを重ねるかもしれないし、晴美さんじゃないと思って接するだろうし
でも15日の時みたいに時々どこかでこっそり泣くかもしれないし
そんな径子さんを想像すると涙が出そうになったけど帰りの電車の中だったので我慢しました。
上映中は夢中すぎて泣くのも忘れてたのになあ…ほんとうに情報量の多い内容でした。
エンディングのその後エピと、3000人を超えるクラウドファウンディングのお名前一覧と
それに添うかたちで流れるリンさんの人生と、最後の最後に右手が手を振るのもじーんときた。
(こうのさんはすずさんが右手をなくした後は左手で背景のペン入れをしたとインタビューでおっしゃっていたね)

すずさんと周作さんが今も生きているとしたら2人とも90代なので
わたしの祖父母よりちょっと年上だなあとか考えてたら繋がってる感じしましたね…。
歳を重ねても変わらずケンカしたり笑ったりしてそうですが
今すぐじゃなくても数年後とか老後とか、のんさんと細谷さんが演じてくれたらいいなと思う。
そういえば先日、アニメ鬼平にのんさんがゲスト出演されていたけど
粂八がいない回だったので北條夫妻共演にはならなかったのね、ちょっと残念。
(そして細谷さんは今お休み中ですよね…元気に戻っていらっしゃいますように)



koui.jpg
とらやの更衣、今年は買えたぞー☆
映画でもすずさんが衣替えをしたり着物をリサイクルするシーンがあったな~とか考えつついただきました。
もう一つはなすび餅。
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2017_05
27
(Sat)23:24

まちがったいろ?そんなものはない。

ericcarle1.jpg
世田谷美術館のエリック・カール展に行ってきました。
アメリカの絵本作家エリック・カールさんの仕事を紹介する展覧会です。
絵本の原画はもちろん、カールさんのスケッチや習作や画材、影響を受けた作家の作品などもあって
カールさんの人生とお仕事をたどれる内容になっていました。
入口にカールさん(御年87歳!)からのビデオメッセージが上映されていて
白いお鬚もじゃもじゃの、気さくそうな青い目のおじいさまが
「日本のみなさん楽しんでくださいね~」とかニコニコと短く挨拶してくださっていてこちらも笑顔に(^^)。
ご本人によるとボストンにあるエリック・カール美術館はアメリカで唯一の絵本美術館だそうです。

とにかく絵本原画がすごかったです。
カールさんの絵本は大好きで家にある絵本はボロボロになるくらい読んでますけども
ナマ原画を見るのは初めてでどんなものかしらと楽しみでした。
びっくりしたのがどの原画も絵本よりずっと色鮮やかだったこと!
印刷と原画の差はわかっているつもりでしたがこんなに違うものかと…
美術館にいくといつも「これだから美術館通いはやめられないな」って思うんだけど
今回はいつにも増してズンときました。たぶん一生やめられないぞおおおお٩( ᐛ )و
代表作『はらぺこあおむし』の原画の前でやっぱりたたずんでしまいましたね…
りんごやオレンジの色が鮮やかであおむしも強烈な緑と赤で
本当はこんな色をしていたんだなって感動しました。
最終的に絵本になった原画のほかに別案原画も今回は展示されていて
月明かりに照らされるあおむしの卵の葉っぱが、完成原画は黒いんですけど
くっきり緑色のままの別案もあったようで、カールさんはより夜っぽさを強調したのかなと。
『ゆめのゆき』の最終原画と別案原画の比較もおもしろかった~。
仕事を終えた農夫が着替えて、やがてサンタクロースであると判明する絵本なのですが
別案では12/24の日付のカレンダーが決定稿では時計になっていたり
長靴だったのが黒い靴になっていたりして
より最後に「サンタだった!」みたいな驚きに向けてボルテージ上げる構成になってる印象を受けました。
使わなかった原画を捨てずにとっておくカールさんとっても慕わしい。

また、カールさんがこれまでに出版された絵本はほとんどが紙によるコラージュですが
『くもさん おへんじどうしたの』のクモは紙にクモの手足を描き、上から模様を色付けしたアクリル板を乗せたり
『ゆっくりがいっぱい』の雨に降られるナマケモノの雨粒がやっぱり別シートだったりして
立体感を出されているのを初めて知ってやっぱ美術館通いやめられねえなって改めて思いました。
著者の工夫がみられるっていうのがほんとに好きなので…!
『ぼくのエプロン』(未邦訳)はコラージュした紙の上にキャラクターの輪郭線を描いた透明シートを乗せていて
(フェルナン・レジェの作風に触発されたそうです)、
なんだかステンドグラスみたいな原画になっていておもしろかったです。
働いた後の少年がふっと帽子を上げる仕草の絵があったけど表情がとってもよくて!
カールさんはあまりキャラクターの表情を作らない人なので意外に思いました、
これぜひ邦訳して出版してくださらないだろうか。
あと絵本に必ずついてるエンドペーパー(遊び紙のページ)も絵の具だったりコラージュだったりして
やっぱり絵本よりずっとくっきりした色できれいでしたね。

カールさんの人生についての展示。
若い頃に制作されたニューヨークの街や地下鉄の風景のリノカットはシックでかっこよくて
ゴシック感あふれる建物などもおしゃれでした~この頃から版画で作ってらっしゃるんですね。
カバや虎、牛などのスケッチもあって相変わらず太っとい線でかっこいい。
フランツ・マルクやアンリ・マティス、パウル・クレーの作品がお好きだそうで
特に動物をよく描いたマルクの影響が強かったらしいです。
カールさんは青い馬を何度か絵本に登場させているけどあれはマルクの青い馬だったんですね…。
『えをかく かく かく』はそんなマルクに捧げられた絵本だそうで
あれは内容もすばらしいですがカバー折り返し部分に添えられた描く自由の宣言みたいな文章がすごく好き。
間違った色はなくてぴったりの色を自由に自分でさがす的な言葉にわたしはずっと救われて生きてきたので
誰かへの捧げものだったんだなあと思ってうれしかったしもっと好きになりました。
クレーへのオマージュとして制作された天使(最新作!)は紙や布、ダンボールに絵の具をべったり塗って
確かにクレーがコラージュ作ったらこうなりそう…と思った。
マグリットの「イメージの裏切り」を冒頭に据えた『ナンセンス・ショウ』(未邦訳)は
人面ライオンがライオン人間にサーカスさせられていたり人面馬に馬人間が乗っていたり
アヒルに人の足(ズボンと靴履いてる)がくっついててまさにシュールレアリスム。
また、モーツァルトの音楽がお好きだそうで
2001年にマサチューセッツで魔笛が舞台化された際には衣装や舞台セットのデザインを依頼されたそうで
そのデザイン画もあったのですがスケッチとかじゃなく切り絵で作っててぶれないなあと思ったし、
「very simple」という書きこみがすべてを物語っている気がしました。
そういえば『うたがみえる きこえるよ』はモーツァルトのメヌエットを意識したんじゃなかったっけ…
あれも絵から音楽が聴こえてくる絵本だよね。
レオ・レオニは画家としての先輩にあたり彼の紹介で絵本を出されたこともあるそうで
『巨人にきをつけろ!』はレオニに捧げた絵本なんだとか。
レオニのねずみ原画も展示されていて見比べることができました。やっぱりかわいいなー。
2人とも紙のコラージュで絵本を作るのは共通してるけど、レオニは色で遊んでいて
カールさんは色で研究してるみたいな感じがしますね。
いわむらかずおさんと共作した『どこへいくの? /Too see my friend』は
ページをめくっていくとアメリカの男の子と日本の女の子が絵本の真ん中で出会うようになっていて
周りに動物たちもいてすごく幸せな絵本だなあと。
和服に触発されて制作されたという「キモノ」もすてきでした~ちょっとこの柄の着物作ってほしい。

子どもが家庭から小学校へ上がる間には深い淵があって
そこに橋を架けたいとおっしゃっているカールさんが描いた赤と青の橋の絵が印象的で
橋は色がついてるけど淵のなかが白のままというのがちょっと新鮮だった。
淵や谷底って黒のイメージがあるので…ただの空間なのかもっていう視点を提供してもらった気がします。
最後に展示されていた絵の具だらけのスモックや絵筆などにもテンション上がったけど
絵の具がついたままの刷毛の毛先に赤や黄色模様のリボンをくるくるっとつけていて
オッシャレー!って叫びそうになった☆
画材の紹介展示にリボンつけるとか初めて見たよ!赤い刷毛は赤、青い刷毛は青って統一感もあって素敵。

ericcarle2.jpg
展示の終わりにあった撮影コーナー。
蝶の前に立つと背中からカラフルな羽が生えたような写真が撮れますよ!

ericcarle3.jpg
あおむし見つけた☆
美術館ボランティアさんの手作りだそうです。

ericcarle4.jpg
カールさん描きおろし新作イラストを使ったグッズもあったのでゲット!
カラフルな「ARIGATO」のコラージュとあおむしのツーショットです。中味はラムネ。
他にも「KONNICHIWA」「DAISUKI」のグッズがありましたよ~→こちら
2017_05
23
(Tue)23:46

だから今、僕はここにいる。

5/3にBSでやってたニッポンアニメ100の感想をそういえば書いてなかったなと思ったのですが
司会の上川隆也氏を始めゲストの皆さんがガチでとてもよかったというのが大部分です(笑)。
ランキングでタイトルが発表されるたびにワイプから
「あ~」「映画のやつ」「二期だ」「名作ですよ」とか聞こえてくるのがおっかしくて笑いまくったし、
ガルパンの聖地巡礼話とかごちうさの説明の難しさとか「ここに少ハリきますか!」とか
「君に届けは風早くんがかわいいアニメ」とか「うたプリBプロみんな見よう」などの
呼吸するかのようなアニメトークにめっちゃ加わりたくて
テレビにツッコミ入れたり同意しまくって楽しかったです。(家族はドン引いてたけど気にしない)
白蛇伝とかホルスの大冒険みたいな大御所からユーリやこの世界の片隅にのような最新作まで
ゲストさんもお客さんも知ってるの前提でストーリーもキャラや世界観の解説も全部すっとばされて
どんどん話が進んでいってましたね。
リミテッドアニメーションなど業界用語や監督やスタッフの名前も当たり前のように出されて
(カルピス劇場に富野さんが参加されてたとかビバップの菅野さんのNYイベントのこととか)
いちいちうなずいてばかりでした。
攻殻が基礎教養扱いで話がすすむ番組なんてアニメギガとかBSアニメ夜話以来じゃないのか…!
(でもってあの時も加藤夏希さんは出演されていた覚えがある)
そして全体通して上川さんが進行からコメントまで本当にすばらしい。
出崎ガンバを語ってくれたり化物語の螺旋階段からウテナの話をしてくれたり
井上さんがベン・ベックマンの話始めたらパッと「能力を持ってない」と指摘したり
与太郎の生アフレコした関さんに「すばらしい!」「かっこよかったです!」と惜しみない拍手を送り
原作ナウシカはハードSFとか、あの花を滂沱の涙を流してご覧になったとかさあ…なんという慕わしさ。
グレンラガンに出演されてたの知らなかったけど
一視聴者として見ていたのでアフレコ台本でネタバレくらって悲しかったってエピソードまじ…!
ちょっと次は上川さんがお好きなアニメについて3時間ぶっ通しで語る番組作ってほしい。
ランキングも色々と物議をかもしてますけれども
毎日こつこつとタイバニやラブライブやまどマギに入れた人が多かった結果だと思うので
作品の価値ランキングじゃないっていうか、
アニメ好きでもこの番組の存在や投票やってるの知らなかったり
ネット環境なくて投票できなかった人、知ってたけど興味なくて投票しなかった人とか当然いたわけで
そういう人が参加していたり投票方法や時期が違ったらまた別の結果になってたと思う。
人の好みは人の数ほどあることと、ランキングは必ずしも世論を反映していないことを知っとけばいいんでないかな。
あと上川さんも指摘してたけどオリジナルアニメが多くランクインしてたのもよかったな~。


ところで番組の後、上位にランクインしたアニメをいくつか放送してましたけど
タイバニと銀英伝とデジモンを見たら十数年ぶりにデジモンブームがやってきて
無印や02をだだっと見返してついでにtri.も見てしまいました。
あと2章で終わるんだなーどうなるのかな!
ちなみにどれくらいブームかといいますとネットのインタビュー記事や感想を読みあさったり
公式PVずっとつけてたり二次創作やMAD探したり
作業中のBGMがButter-FlyとBraveheartと春イ短調のエンドレスだったり
学校の近くを通りかかってホイッスルが聞こえると「ファ!?」ってなったり
空にヘリが飛んでるの見てトゲモンを思い出したりするくらいには中毒です。やばい。
あとウォーゲーム改めて見て思ったけどサマウォってやっぱりセルフリメイクだったんだな…
8月1日だったりとか、光子郎のいっけえーーがよろしくお願いしまあぁぁーすに見えたよ。

以下はtri.のとりとめない雑感。
(いつものように書いてたらありえないくらい長くなりすぎたので箇条書きにまとめました。それでも長いけど)

・折りたたみ携帯!(ちゃんと3年後ってことですね)(肩に挟んでしゃべるの懐かしいね)
・キャラデザがすっきりして(つり球っぽいと思ったら宇木さんだった)顔が眠そう、目が小さい、みんな足長くなったね
・バトルシーンの迫力がすごい
・バトルシーンに比べて日常シーンの作画がちょっと足りない
・てかストーリー都合みたいな展開や粗が目につく
・02ラストにちゃんと繋がるのかな
・スタッフ疲れてる?完成遅くなってもええんやで
・とはいえ懐古厨のツボを殴打したり傷をえぐる描写多し
・たとえば…
・Butter-Fly!
・平田さんのナレーション!
・なんだかんだ距離が近い太ヤマ
・兄貴のことで苦労するタケヒカ
・サッカー続けてる太一
・バンドもハーモニカも続けてるヤマト
・みんなを心配しまくる空
・光子郎が手伝ってる友人はロスのメール仲間かな
・丈先輩の受験
・インターナショナルミミ
・また歪みか
・またおまえかクワガーモン
・Brave heart!
・石田パパは今もテレビ局勤務かな
・太一のゴーグル姿再び(ゆがみ感知システム付き)
・タケルの文字Tシャツがサマーキャンプ
・オメガモンだー!
・あの手つなぎ後ろ姿は「怖いか」「怖くない…と言えばウソだ」ですよね??
・I wishとkeep on!
・「パソコンがないのが島根」「何年前の話だバカにすんな」
・八神兄妹まだ同室なんですか
・着替えとかどうしてるんだ
・太一が部屋の外出るんだろうね(自己完結)
・ミミちゃんオーガモンと戦うのつらかったろうな
・安定の歩く死亡フラグレオモン
・光子郎と烏龍茶
・パタモンとタケルのトラウマ
・タケルの携帯着信音がティーンエイジウルブス
・ヒカリさんの電波受信
・ガブモンには弱音を吐くヤマト
・電車と電信柱と郵便ポストと線路
・ホイッスル
・寝床奉行の丈
・安定の散り散り
・そして懐かしの場所をめぐる(ただしパートナーはシャッフル)
・エレキモ~ン!
・ダークマスターズまたおまえらか
・ホメオスタシスとイグドラシルはいつになったらケンカしなくなるのか
・アグモンとガブモンまじツートップ
・ピヨモンかっこよかったよ
・成長を感じたり新しかったり萌えポイントや疑問点もありました
・たとえば…
・空とヤマトのカップル関係どこ??(当時あまり納得いかなかったけどなかったことにされるとそれはそれでモニョる懐古厨)
・タケルが女性慣れしてヒカリの肩ポンしたり芽心の写メ撮ったり兄のライブに女子を何人か誘ったあげく(中止になっちゃうけど)「心配しなくてもお兄ちゃんがいちばん好きだよ」だの「ぼくの一番は…ねっ」だのあざとい
・そんな弟にヤマトも「何言ってんだよ」「巻き込むなよ」みたいな返事ができるようになってて感慨深い
・ミミの行動力が上がって臆せずバトルするわみんなを温泉に連れていくわ、DWでも歩くのを苦にしなくなったね
・空の手芸センスもぐんぐん上がって02ラストの片鱗が見えてる
・デジモンのデータっぽさが増した
・ネットワークも広大になった
・誰かが誰かを抱きかかえて横っ飛びに攻撃かわしたり誰かのピンチに敵の攻撃を味方の攻撃で粉砕するシーンが目立つけど前作こうでしたっけ(大好物)
・太一の進路はラストまでに決まるのか
・というか高校生活ですね…!
・墨をする独法エージェントとは
・光子郎とご両親の食事会はフレンチでフランス語かな
・「太一、でっかくなったなあ!」「おまえ小っちゃくなったなあ」
・映像技術の進歩で超絶気合いの入った進化シーンになって!卵に包まれるバンクもエフェクトもかっこいい
・ゴマモンの「きちゃった」かわいいかよ
・1年以上も会えてなかったのか…
・テイルモン姐さんの食レポ
・ケンカしたり情報収集したり
・被害と復興を考え始めた
・パートナーにしか言えないこと
・男2人で観覧車
・それを撮影するミミ
・さらにモニター越しに見守るアグガブ
・それは答えのない問いだよ太一
・率先して戦うヤマガブ
・アルファモンかっこよすぎ
・逃げちゃダメだ
・温泉話はちょっといたたまれなかった
・でも空が丈に送ったゴマモンの写真はかわいかった
・足湯で泳ぎ方講座とか
・「本命は兄貴と太一さんだから」とか
・手ぬぐい被って湯船浸かるガブモンあたりのかわいさやあざとさは異常
・「恐縮です~」
・「感染してもオーガモンはオーガモンでしょ?」
・スクーター免許とったヤマト
・乗せるのはタケルでも空でもなく太一
・「その時すべきことはきっちりわかるやつだった」「わかったうえで来られなかったのかも」「…わかってるよ」
・「いつまで選ばれし子どもでいなきゃならない?」
・ゴマモンおまえ丈のベッドで寝てんのかい
・和食作れるテントモン
・ミミと芽心が百合っぽい
・「来てませんが心配ないと思います」って光子郎が遠回しに言ったのに丈に伝わらなくて、太一からあっさり伝わるやつ
・バンドでヤマトの歯が輝く古典的イケメン演出の後にタケルも歯が光って、何この同人誌みたいなおフランス兄弟
・そしてドン引きするヒカリ
・てかバンド名変わりすぎ
・ヤマトの壁ドン
・からの舌打ち
・レオモンのキャラ崩壊
・メイクーモンあざとかわいい
・「ガブモンは何位だ!」
・ロゼモンえろかっこいい
・浴衣男子エンディングに丈先輩がいねえええ(温泉行かなかったから)
・芽心そんなに謝らなくてええんやで
・「究極進化できるやつが増えればオメガモンに頼る必要もなくなる、おまえも楽になるんじゃね?」
・別にヤマトだって街壊していいと思ってるわけじゃないもんね…
・02組の家行ったり姫川さんに確認するだけじゃなくもっと連絡とろうず、タケヒカは中学校同じだしマンション上下階の子いるじゃん
・進化した丈先輩
・パタモンの告白からの「「「えーーっ!」」」
・ヤマトにおんぶしてるガブモン
・「そういうキャラじゃない?」
・タケルのゲンドウポーズからの「兄さんがまたバンド解散するんじゃないかって」つらい
・後で自分にも言えなかったと知ってヤマトどう思ったかな
・「わたしは空のこと気にするよ」
・「変わらないよ」
・光子郎はんを諭すテントモン(櫻井孝宏の真骨頂)
・ハグ
・光子郎は諦めなかった
・「いつかなんて待ってたらあっという間に大人になっちまうよな」
・「小学生の時に経験した僕らに言いますか?」
・みんな夏服なのになぜヤマトとミミだけ長袖まくってるのか
・拳を押さえたタケル
・芽心よりタケルの方が大人に見えるのはレギュラー年数の差でしょうか
・黒いD-3??
・紋章持ってるんだ???
・賢じゃなかった、よかった
・エンディング歌っちゃうヤマト(ガブモン宛の歌詞)(アルバムver.の方が個人的に好き…キーボード入ると音が広がるねえ)
・サイレント映画風の姫川さんたちの過去
・デジタマに戻れなかったらそりゃ諦めきれないわな…
・そういえば西島先生の名前は大吾
・無印1話の逆パターンを子どもたちが経験してると思うと
・そしてみんなキャンプに余裕がある
・食べないでくださ~い
・たかいたか~い
・太一がやっと仕切りだしたのはDWだと迷わなくなるからかな
・空だけピヨモンと仲良くできてないの普通気づくだろおまえらいい加減にしろ
・何が正解かをタケルに聞こうとする兄貴たち
・パートナーのいないところでデジモンにパートナーについて語る子どもたちが本音出しまくり…本人がいないから言えることもあるよね
・「ヤマト…く~ん」「呼びすてにしてもいいのかなあ」からの「ヤマトー!」最高
・いいんだよって言ってやれよ太一
・ヤマトはアグモンの頭なでて「期待しすぎちまうんだ」って言ったぞ素直に
・やたら光子郎を呼ぶテントモンにミミが「きっと気が合うのよ!」天使
・パルモンの絵心
・黒ゲンナイがきもちわるい(絶許)
・バクモンと出会う前までリブートしちゃったの?
・つか02組のデジモンもリブートしてる可能性が…残り2章で出るのか果たして
・メイクーモンとロイヤルナイツがリブート回避したのか、それともあそこはDWじゃないのか
・プロットモンはこのままでっていうのわかるけど彼女ウィザーモンのこと忘れてるわけで、でもあのウィザーモンならそれでもいいとか言いそうで、あうあう
・ガブモンにできるか聞く→OK→放り投げる→プチファイヤー→抱っこ→ほめる(完璧)
・てかtriでのプチファイヤーの活躍ぶりときたら
・水中のヤマトのセリフは無印51話のガブモンのセリフへ18年越しに返答したような
・でも溺れて復活するとこはよくわからなかった
・からのウォーグレイモン&メタルガルルモンに騎乗しての浮上は胸アツ
・空は無印26話のピヨモンの気持ちを身をもって体験したのかな
・からのホウオウモンとセラフィモンとヘラクルカブテリモン
・夜空に舞うホウオウモンの美しさ
・空をがっちり受け止める丈先輩のパズー以上の腕力
・ボレロまだ?(ハピネットのCMには流れたけど)
・松澤アナご出演おめでとう~

お話が進むのがゆっくりで、今はまだ物語の途中で不明な点も多くて何とも言えませんが
無印や02を知る人のツボはしっかり押さえてる感じ。
でもいまいちこう、ツボな部分もありますがどうも違和感が拭えないというか、
好みの作り方ですけどそのシーン省けばもっと事件の細かい部分まで尺を割けるし
子どもたちの関係性や心情も掘り下げられたしセリフも増やせたんじゃないかなと思う箇所もある。
日常もバトルもやりたいのかもしれませんが各90~100分×6章ってことはTVシリーズ20話弱なのだから…
ともかくも今後の伏線回収でまた印象が変わるかどうかですね。
前の冒険は無理矢理だったけど今回は自分たちで選んでDWに行くっていうのがキーになってる気もするし。
triから入ったらまた別の感想だったかもしれないけど…とりあえず最後まで見届けてから総括します。
あと、個人的に無印時代から似合うなと思ってるパートナー同士のシチュエーションは
・太一とアグモン、タケルとパタモン、ヒカリとテイルモンは抱っこしたり抱きつかれたりしてる
・ヤマトとガブモン、光子郎とテントモンは背中合わせしてる
・空とピヨモン、ミミとパルモンは向かい合って手をつないでる
・丈とゴマモンは寄り添っている
なんですけど、triでもそんな感じが引き継がれていてよかったです。

子どもたちの声優さんは個人的になじんでる方と別方向から聞こえてくる方がいますが要は慣れだと思う、
デジモン先輩たちは続投なのでしっくり。
というか子どもたちは無印リアタイ視聴者でゲームでも遊んだ子ども時代を過ごされて
まさかの新作出演なんですね!長寿シリーズあるある。
花江さんが実写っぽいって言ってるのがすごくしっくりきたり
細谷さんが太一とヤマトを悟空とベジータに例えてるのがおもしろかったり
(おふたりとも自分の内面を見つめながらお芝居されてたっていうのがムズムズする)、
三森さんが空とヤマトの関係を突っ込んでて「せやなー!」って同意したり
3章のアフレコで榎木さんより松本さんの方が号泣してたっていうのも「パタモン…」って泣いた。
あとデジモン先輩たちは食事に行くと「ビール」「ビール」「ビール」って手が挙がるとか
テントモンは毎回口調指導の人が違うから荒っぽかったりはんなりだったりするとか
ゴマモンがかわいすぎて池田さんがアフレコ中の竹内さんをあやうく抱きしめかけたとか
色んな裏話があっちこっちから供給されて萌えがとまりません。どうもありがとう。
ハックモンの中の人10代ってほんと!!???渋かっこよすぎる。


和田光司さんの訃報は当時ポカンとしてしまって今もって実感がないですけど
どうぞお空の上でもゴキゲンな蝶になってきらめく風に乗って歌い続けてください。
水谷優子さんにもきっと届いているはず。
2017_05
19
(Fri)23:19

災いなるかなバビロン、そのもろもろの神の像は砕けて地に伏したり。

東京都美術館の「ブリューゲル『バベルの塔』展 16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて」に行ってきました。
ヒエロニムス・ボスに影響を受けたピーテル・ブリューゲル1世の版画や絵画、
ボスを始めネーデルラントの画家による作品が来日していて
圧巻は1フロアにピンスポットで展示されているブリューゲルの「バベルの塔」!
存在を知ってからずっとずっと本物を見たくてようやく念願かないました、関係者の皆様ありがとう。

まずはネーデルラントの美術史から。
16世紀に作られた木彫り彫刻はキリストや聖職者や天使のモデルが多くて
教会などの建物の装飾として飾られていたそうです。
ほとんど色落ちして茶色かったけど一部色が残っているものもあったし、
あと本を持っている人が多いのが印象的だった。
180度ぐるっと見られるように展示されていたけど、
後ろに回ってみると背中に空洞があったり平坦な板状になってるものが多くて
これは扉や壁についてたからなのかな?
これらの多くは19世紀に切り離され売却されてしまったんだそうで…
19世紀というと日本でも廃仏毀釈などの影響で美術品の売却があったけど
世界中どこでもそういうことが行われる時代や時期がありますね。

ネーデルラント絵画で初期に描かれ始めたのは油絵の人物画。
ディーリク・バウツ「キリストの頭部」はキリストのバストアップを描いたものですが
その後の美術史におけるキリストの顔や骨格は彼の絵をもとに描かれていくそうで
お手本になった絵なんですね…!
(ちなみにキリストに荊冠を初めてかぶせて描いたのもバウツなんだそうだ)
枝葉の刺繍の画家による「聖カタリナ」「聖バルバラ」が美しかった~!
2人とも片手に本を持ち、カタリナは剣を、バルバラは薄を持っていて
画家の通称のとおり刺繍のような筆致で描かれていて布絵かと見まごうほどの完成度です。やばし。
元々はどこかの扉絵だったと思われる「ノールトウェイクの聖ヒエロニムス」「聖アダルベルト」は
彫刻を絵に描いたのかな、そういう立体感がありました。
「風景の中の聖母子」と「本と水差し、水盤のある静物画」は表裏一体の絵画で
静物画はマリアの寓意を表現しているそうですけども
本のページがめくれる風で天使の来訪を表すとか…ほんとにこの時代の絵画は頭を使うな…!
「学生の肖像」は赤い帽子をかぶった制服姿の、ラテン語を学ぶ12歳の少年の絵で
手に持つ紙にはラテン語で”豊かなのは欲しない人 豊かでないのは守銭奴”という意味の言葉が書いてあって
当時の学習の様子とかもわかるんだなあ。

16世紀になると風俗画や風景画が増えてくるのですが
宗教モチーフが多めとはいえイタリアより前に風景画が描かれるようになっていたんですね。
ネーデルラントで最初の風景画家といわれるパティニールの「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」は
赤黒い火事と夜の森のコントラストの対比が強烈だった。
逃げる天使とロトたちはものすごくちっちゃく描かれてて
塩の柱にされてしまったロトの妻なんてロトたちよりも小さかったです。
(あとこういう時にタブーを破る役割というのはだいたい女性に振り分けられているな…)
「ロトと娘たち」はその後を描いたものですが
野宿するロトたちのところまで火の粉が降り注いでいるのが火事の規模を物語るようですごい。
「牧草を食べるロバのいる風景」あたりは宗教色はなさそうだったけど
遠近法も既に編み出されていてのどかな田園風景がすてき。
「オリュンポスの神々」は水浴場にいる神々の様子ですが
こちらはどことなくイタリアルネサンス期の絵画に近いような感じでした。

ヒエロニムス・ボスについてはほとんど知識がなくて絵も見るのは初めてで
今回来日した「放浪者(行商人)」「聖クリストフォロス」を見たときは色んな意味で「はじまりの絵だなあ」と思いました。
人物はもちろん動物や建物や風景などをとにかく描いてみる的な。
テーマがどうのというより当時の価値観やキリスト教の寓意などを1枚にごちゃっと描いてて
絵のそこここから色んなことが読み取れる。
そういうのはボスに限らないけど、今回のボスの絵は特にそういう面を強く感じました。
人間のほかに魚やカエルや猫や壺など謎モチーフのオンパレードですが
クリストフォロスの背景にある壺のツリーハウスはちょっと、かわいい。
版画の「樹木人間」とかも、壺みたいな帽子をかぶって体が木で足に小舟の靴を履いてる生き物がいて
なんだこりゃ?って首をかしげたくなるけど妙におもしろくて笑ってしまった。

そんなボスに基づいたり模倣したりする作家や版画もおもしろい。
「聖アントニウスの誘惑」や「様々な幻想的なものたち」とかは北斎漫画みたいな感じだし
「青い船」はカーニバルの青い船組合をモチーフだそうだけどテニルみたいな奇妙さもあるし
「ムール貝」は大きな貝がパカンと開いて中に人々がひしめいて
当時のことですから寓意があるんだと思うけどさっぱり想像がつきません。。
そんな中で台頭してきたのがブリューゲル1世だそうです。
イタリアから帰国したブリューゲルにヒエロニムス・コックという版画業者がボス風の版画を依頼したのが始まりで
彼は「第二のボス」「ボスの生まれ変わり」などと当時の書物に書かれたりしているとか。
(狩野探幽も永徳の再来とか言われた時期がありますけど似たようなものかしら)
ボス風ということで絵の雰囲気やモチーフは確かにボスっぽいけど
ボスほどの癖はあんまり感じなくて、
どちらかというとすっきりまとめているのが多くてそういうところはブリューゲルっぽい感じ。
農民や農村の風景をよく描いたのは版画というものが大衆向けだったからかもしれないけど
ブリューゲル本人が町に出かけてお祭などを観察するのが好きだったらしいので
彼の好みも反映されているのでしょうな。

そして「バベルの塔」。
ブリューゲルの晩年である1568年前後の制作とされる今作は
イタリアのコロッセオをモデルに当時としては珍しく建物を全面的に押し出して描かれた作品です。
(昔の西洋画って人物、というか聖書の登場人物や聖職者や身分の高い人の絵が多いと思う…絵画の出発点てそこなので)
絵そのものはそんなに大きくないのですが、実物を前にすると塔がとても立体的・威圧的に見えて
「でかっ!」って思ったのが最初の感想。
日本で暮らしてると石造りの建物を見る機会があまりないせいかどっしりして見えましたね…
塔の下の煉瓦は色褪せていて、上に積み上げられた煉瓦ほど真っ赤なのは
きっと相当の年月が経過しているからかな…年月も感じさせるのがリアルだなあ。
煉瓦を持ち上げる滑車が16世紀に実在した物だったり、風景の港はアントワープの海がモデルだったり
馬に乗って移動してる人がいたり洗濯物が干されていたり教会があったりと町っぽくなっていて
バベルの塔というはるか昔の物語の情景を描きながら
当時の建築技術や風俗が反映されているので時代考証が目的の絵ではないのかもしれぬ。
誰も見たことないわけだから身の回りの物を参考にするしかないよね…。
今となっては当時を知る貴重な資料になるので色んな面を持った作品でもあります。
よくこんな綺麗にとっといてくれたもんです。学芸員さんの努力のたまもの。

ブリューゲル1世は塔の絵を2枚描いていて、今回来日したのは2作目です。
1作目もいつか本物を見てみたいな…ウィーンにあって2作目より小さめらしいのですが。
あと、わたしがバベルのお話を知ったのはCLAMPの東京BABYLONなのですが
その後に宮崎駿氏のラピュタが今作をモデルにしていると聞いて初めて画集でこの絵を見て
「似てるわー!」と声出た覚えがあります。
宮崎さんはブリューゲルお好きだもんね。

「かくして主、彼の人々をここより全地に散らすが故、彼の人々町を創るを止む。ゆえにその名はバベルと呼ばる。
災いなるかなバビロン、そのもろもろの神の像は砕けて地に伏したり」
(旧約聖書創世記・第11章)

そしてこの冬にはブリューゲル展が同館で開催されるので楽しみだ~☆
子どもの遊戯は!来ますか!!(落ち着け)

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エスカレーターのとこにあった比較パネル。
東京藝術大学のチームが検証したそうですが、もしこの塔が実物大で実在したときの大きさは
塔の人物の平均身長を170cmとして計算すると510mほどになるそうで…!
通天閣や東京タワーより高くてスカイツリーよりは低めだけど
何せ幅がでかいので存在感がやばそう、ちなみに直径は高さ以上になるらしいです。

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展覧会公式キャラクターのタラ夫。
ブリューゲル「大きな魚は小さな魚を食う」からのキャラ化だそうです。
足が妙にリアルで一瞬、本当に人が入って立っているのかと思ってしまった。。

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大友克洋・河村康輔両氏による「INSIDE BABEL」。
調査に基づくバベルの塔の内部構造を大友氏が描き、河村氏がデジタルコラージュで合成しています。
塔をぱっくり切ったらこういう断面図ができそうっていうくらい、リアルで緻密でかっこよかった。


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都美を後にして東京藝術大学Arts&Science LABの「Study of BABEL」へ。
COI拠点のチームが科学分析をもとに立体化したバベルの塔がどーんと展示されていました☆
ちなみにさっき書いた、塔の高さの計算を510mとはじきだしたのも同チームで
この複製はその計算をもとに約1/150スケールの3mで再現されています。

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絵で見た人々や家、建築現場の道具などまで完璧に再現されている件。
色も絵の具を調べて塗ってあるそうです。

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教会に集まる人々。
こうやって3Dにしてくれると自分と対比できるのでスケールが想像しやすいですね…。
窓の青い液晶の中でチラチラしているのは「バベルの塔で働こう」というインスタレーションで、
会場のiPadで自分の顔を撮影すると液晶にデータが転送され、
まるで自分が塔で働いているような気分が味わえます。


あと、この日は国際博物館の日で東博常設展が無料だったので見に行きました。
2017tohaku70.jpg
勝川春章「東扇・初代中村仲蔵」かっこよすぎる!
忠臣蔵で斧定九郎が口から流した血が膝に垂れる演技がありますけど
あれを考案したのが彼だそうで、大好評となったため現代までその様に演じ伝えられてきています。
どうやって思いついたんだか…歌舞伎座で初めて見たときは驚いたもんです。

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西川祐信「婦女納涼図」。
京都の水辺で優雅にくつろぐ女性たちがとても素敵。

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上野駅エキュート内に展示されていた、
東京大学LEGO部が約46,000ピースのレゴブロックで再現したバベルの塔。
そういえばネットで情報見かけたなと思い出して帰りに見に行きましたらちょうどこの日までの展示でした!
ギリギリセーフで見られてよかったです。
2017_05
15
(Mon)23:49

神の猫たちは皆踊る。

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目黒雅叙園の「福ねこ展at百段階段」に行ってきました(ΦωΦ)☆
9人の現代作家さんによる絵画、立体、陶芸、人形、彫刻、写真などの猫作品を集めた展覧会です。
百段階段は都の有形文化財に指定されていて普段は撮影禁止なのですが
今回は全室撮影OK!ということで遠慮なく撮らせてもらいました。
おうちにかわいい猫たちの画像をお持ち帰りできるのは有難い。

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豪華絢爛なエレベーターを出たところで最初に目にするのは
写真家のアクセント氏による猫のアクション写真。
飛んだり跳ねたりしている猫の一瞬を切り取る「のら猫拳」シリーズが有名な方で
全身をバネのように伸ばしたり縮んだり、ひねったり大の字になったりしている猫たちが
生き生きとした写真で紹介されていました。
朝や昼、夕焼けなど時間帯も様々で逆光とかもあっておもしろい。

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アイツの裏拳!

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百段階段最初のお部屋、十畝の間はもりわじん氏による「招きたんと猫神様の世界」。

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巨大なケーキの上で好景気を招く親玉「好景気猫」。洒落がきいてておもしろい!
ケーキは作りものですが本物みたいな質感ですごくおいしそうで
展示室出たところでケーキ食べたくなりました。ぐうぅ。

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好景気猫の周りにズラリと並んだ、誕生日猫「招きたん」シリーズ。
1月1日から12月31日まで366匹の猫たちが様々な表情やポーズをとっています。
ひとつひとつ全部手作りで、笑ったり微笑んだり目が点だったり鼻水でてたりアカンベーしてたりと
同じ表情・同じポースがいっこもないのすごい!
(ちなみに写真がなぜ12月22日かというとあの人の命日だからです。こういう撮り方もあります。
自分の誕生日の猫さんもちゃんと撮ったけど)

以下、写真が多いのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆

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2017_05
11
(Thu)23:56

手のひらの宇宙その2。

kinbi1.jpg
東京国立近代美術館の「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」を見てきました。
写真は展示室の出口にあった写真撮影コーナーで
置かれている茶碗は初代長次郎の万代屋黒(複製)です。

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万代屋黒の名前に何となく聞き覚えがあったのですが、東博の茶の湯展に展示されてたのを思い出して
「利休が持ってたあの渋黒くんかあ!」って、ちょっと感慨深かったです。
この複製はアルミ合金製の509g(本物の万代屋黒は317g)で持ってみたら確かにずっしりきまして
お寺などで接待を受けたときにいただくお茶碗よりは重く感じました。
長次郎が利休のために作ったお茶碗を、レプリカとはいえ持てるのはドキドキしたし
映画で海老さんが使ってたこととかも考えるとやっぱりドキドキした。
本当に最近はさわれる展示が増えてありがたいことです。美術館の配慮に感謝。


樂家に関しては前回の茶の湯展と同様にほとんど知識のないままでしたが
(長次郎や宗入など一部の宗家の名前を知ってる程度です)、
展示室のパネルに人物紹介や歴史がコンパクトにまとまっていたので助かりました。
あとキャプションが非常にシンプルで、タイトル・作者・年代が書いてあるだけで
歴史的・美術史の観点からの説明がまったくなかったのも特徴のような。
わたしはよく、キャプションに説明が書いてあったら読んだりメモ取ったりしますけど
今回の展示は説明が欲しかったら要所要所に設置されてるパネルに書いてあるの読めばわかるようになってたし
メモ帳をしまって無心で作品と向き合うのも、たまにはいいなと思いました。

樂焼は聚楽第の近くで茶碗を作っていた長次郎という人が
秀吉から「樂」の印字を与えられたのが始まりだそうです。
ろくろや型を使わず手で土をこねる作風が当代まで貫かれているそうで、
言われてみれば磁器みたいなすっきり感がなくてしっとりというか、手の形が見える茶碗が多いなあと思った。
利休のために作ることの多かった長次郎の黒は、真っ黒というわけではなくかすかに薄い部分もあって
面影とか太夫黒なんかは微妙に褪せた部分があったりする。
禿も利休が持っていた茶碗で利休忌の時にだけ使われるらしくて
名前は、利休のそばにいつもいた茶碗ということで遊郭の太夫のそばにいる禿から取られたとか。
無一物や太郎坊などの赤楽茶碗も真っ茶色ってわけじゃなく白釉を残していたりして、
これも利休の好みだったのかな。
絵や模様をほとんど入れてないのも特徴的というか…ほんとにすっきりまとめてるんですね。
あと、長次郎の現存する作品でもっとも古いとされる二彩獅子像(1574年)もあって
彫刻を作る人だったこともわかります。
阿吽のお獅子は茶色く色落ちしてしまってたけど、お尻を高く上げてきゅーっと目をこちらに向けていて
沖縄のシーサーみたいな迫力があった。

樂家二代目の常慶は、長次郎とともに作陶を行っていた田中宗慶の子で
以降の樂家は世襲だったり養子だったりしつつ現代まで一子相伝で続けられてきています。
宗慶の三彩獅子香炉は緑や黄色がしっかり残っていて
口をくぱあと大きく開けて胴体がふっくらして、足を踏ん張って立っててかわいらしさ満載☆
茶碗の作り方も長次郎と似通っていて、いさら井などは利休好みの形ですね。
常慶は時代が古田織部と被っているためか、
黒木などは織部好みを反映して中央がぐにゃっとへこんでいたりして一気に変わった感じがする。
また彼は本阿弥光悦に作陶を教えた人であり、
樂家三代目の道入は光悦から教わっているので作風のつながりが見られるのも楽しいです。
道入の青山は漆黒の中央に大胆に白を残しているし
僧正は赤に市松模様のような小さな四角い金色がぽつぽつ入っていて素敵~これちょっと使ってみたい…!
2人の間に生きた光悦の樂茶碗も、村雲は飲み口がぐにゃっと飛び出てるし
雨雲は飲み口が真っ白で糸尻までの漆黒のグラデーションが美しいし
白樂の冠雪はしんしんと積もる雪が赤い点々で表現されていて
織部から江戸初期ルネサンスの時代を生きた人感がめっちゃ出てました。
光悦ってこういう人だったんだなー!同時代の人と見比べるとめっちゃ楽しい。
光悦が宗達の下絵(蓮)に百人一首を描いた和歌巻断簡とか
宗達の舞楽図屏風(醍醐寺)にも久々に再会できてうれしかったです☆

四代目の一入の時代には色々と工夫がされるようになって
黒の山里には棒を持った人物(ふっくらしてかわいい)が白いラインで描かれていたりする。
五代目の宗入は尾形光琳・乾山の父である宗謙の弟・三右衛門の子で光琳たちとはいとこにあたり、
また宗謙・三右衛門の祖母は本阿弥光悦の姉なので
樂家と尾形家と本阿弥家は親戚になるのですな~。
この頃は初代回帰というか、長次郎の作風を意識しながらも
亀毛の金粉とか見てるとモダンさも忘れてないように思うし、
近くに展示されていた乾山の染付松図茶碗と見比べるとお互いに影響し合っていたかなあとも思う。
六代目左入の霏々や七代目長入の赤樂などを見てると先代とそんなに変わってなくて
作風が落ち着いた時代だったのかも。
早逝した八代目得入の萬代の友は黒地に2匹の亀がゆったり泳いでいてかわいい。
九代目了入の巌や白釉筒茶碗はごつごつした崖のような肌をしているし
十代目旦入の不二之絵黒樂の大胆な白とか秋海棠の赤色に緑べったりな色使いがすごい!
彼は織部や瀬戸など様々な技法を取り入れた人だそうですね。
十一代目慶入の潮干は茶碗の底に貝殻をつけて焼き上げてて
新しい!使いづらそう!でも面白い!って気持ちが行ったり来たりしてワクワク。
十二代目弘入の家祖年忌は長次郎300回忌で茶碗を300個作ったときのひとつで
初代を意識したのか割と小ぶりでした。
赤楽の羅漢は樂印をあっちこっちに押しまくってて鈴木其一展で見た「秋草に鶉水月図」を思い出しました。
こういうデザインする人ってどこにでもいるんだな^^

近代以降になると渋さは押さえつつも色遣いがわっと賑やかになってくるのは
折から入ってくる印象派やキュビスムの影響とかもあったのでしょうか。
十三代目惺入の若草は黒地につくし模様がかわいいし、
十四代目覚入の緑釉栄螺水指は黒々としたサザエが立派でかっこいいし
綵衣は赤・黄・茶・黒が絶妙なバランスで配置されてるし
杉木立は白地にざくざくした赤模様がするどい木を思わせるし、覚入のデザインは模様がでっかいねえ。
最後に十五代樂吉左衛門(当代)の作品がどっさり展示されていて
東博の法隆寺宝物館みたいな、一作品につき一展示ケースで360度ぐるっと見られるようになってた。
長次郎を思わせる黒からカラフルで大きなデザイン性高いものまで、
伝統的なものと斬新なものとはっきり分けて作られている。
夜の航海シリーズや岑雲に浮かんでシリーズは実際の茶会で使われるとしたら
和服でも洋服でも様になりそうな雰囲気でデザイン性の高さを感じます。
そして次代を継がれる篤人さんの作品は、長次郎の黒が見えるような黒と
お父上の白とは違う色彩を連想するようなモダンさがおもしろかった。

特別展の後は常設展を鑑賞します。
kinbi3.jpg
この日は上村松園「母子」が展示されていると聞いていたのでワクワクしながら行きましたー!
はあぁあやっぱりきれいで柔らかくてあったかい…無言でボーっと見つめてしまったよ。
モデルは松園の孫である淳之さんと母のたねさんです。

kinbi4.jpg
工芸館の方にも行きまして、開催中の「動物集合」を鑑賞。
近現代の作家による動物をテーマにした作品を集めた展覧会です。
鳥、虫、馬、うさぎ、象など大きいのから小さいのまでたくさんの工芸品を見ましたが
目が行くのはやっぱり猫(笑)。
特に写真の結城美栄子「猫に小判」は最高にかわいかった!(撮影OKでした)

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志村ふくみさんの紬「鈴虫」。
秋の夜に聞こえる鈴虫の声を色にしたらこんなかなあ、きれいでした。


kenpou1.jpg
近美と工芸館の間にはさまれている国立公文書館では「誕生 日本国憲法」展を開催中で
無料だったので見てきました。
天皇の署名原本や憲法ができるまでの計画、議事録、草案、写真などから
憲法がどのように作られ施行されたのかをたどる内容です。
「あたらしい憲法のはなし」は教科書で読んだなあ…三権分立とか戦争放棄の挿絵とか。
「憲法改正草案に関する想定問答」には思わず吹き出してしまって。こんなのも考えられてたんですな…
答弁した金森徳次郎はNDL初代館長で納本制度を始めた人ですが
憲法制定にあたり大臣を務めていたのは知らなかった、勉強になりました。

kenpou2.jpg
個人的に一番ドキドキした憲法公布原議書。
最終的にこの文章でいきましょうと閣議決定されたもので
赤であちこち修正が入ってて細かく作られてるなあと思う一方、
なんだか淡々と事務的にも感じられました。
憲法できた!っていうととてもドラマチックに聞こえるけど(ドラマや映画で人がワーッと集まって歓声あげるみたいな)、
実際は小さな作業の積み重ねなんですよね。

おしまいにあった「日本国憲法は国立公文書館で大切に保存しています」の看板の頼もしさよ…
何気ないひとことですけど大切なことなので色んな人に公文書館の仕事を知ってほしいな。


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皆様いつもありがとうございます(^-^)/

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2017_05
07
(Sun)23:52

手のひらの宇宙。

2017tohaku58.jpg
東博で開催中の「茶の湯」展に行ってきました。
曜変天目茶碗が見たくて、でも展示物が小さいうえに混んでると聞いていつにするか迷っているうちに
曜変の展示がGWととともに終了すると知り泡をくって「待ってえええ」と飛んでいきましたよ。
わたしは茶道に関してはさっぱりですが(建仁寺の栄西が茶祖と呼ばれてるよね、くらいの知識)
きれいなお茶碗や茶室の道具、茶碗をめぐる人間模様などがわかりやすく解説されていて
楽しくて2時間以上ウロウロしてしまいました。
仁清や乾山など好きな陶芸家もいるのでまったく初心者ってわけでもなかったし。

先に行った人々から「曜変天目(稲葉)の前であなたはチューチュートレインにな~る」とか
半ば催眠術のような予言をされてどういうことだってばよ?と思ってたけど
いざ展示ケースを前にしたら自動的にそうなる自分に気づきました。
展示物が小さいという理由もあるけど、お茶碗の中とか側面とかあっちこっち見たい部分が多くて
背伸びしたりしゃがんだりケースの周りをグルグルせざるを得ない!
そもそも人多くて見づらいし、国宝だからみんな見たいだろうし
あの展示ケース人が集まってる~何だろう?みたいな人も寄って来たろうし(わたしだ)、
集団が発生してしまうのは仕方ないですな。
そんなシュールな会場でしたけどもお茶碗そのものはとても美しかったです。
漆黒の本体に白や水色や群青などのグラデーションが螺鈿のようにきらめいていて
宇宙とも星空とも深海ともいえない不思議な景色。
曜変の曜は星のことなので昔の人は星空のように感じてそう名付けたのかもしれない。
豊臣秀吉から秀次へ受けつがれたという油滴天目は
外側も内側も銀色に輝く粒でびっしり覆われていて、その規則性のバランスがすさまじい。
天目茶碗は職人の意図ではなく窯の中の偶発的な科学変化で生まれるそうですが
焼き上げてこんなの出来上がってたらそらびっくりしますわな…。
ちなみに室町時代の芸道書『君台観左右帳記』には「曜変 建盞の内の無上也」「建盞 ゆてきの次也」とあり、
曜変1番油滴は2番ということだったみたい。

お茶碗そのものも味わい深いのですが、
個人的にはやっぱり誰かの手を経てきた茶碗や茶道具に心惹かれます。
灰被天目の「夕陽」は黒にオレンジが点々として、同「虹」(伝足利義政所持)はうっすらレインボーが見えて
両方とも東大寺や酒井家を経て残ってきたものだそうです。
青磁輪花茶碗「馬蝗絆」は雨過天晴と呼ばれるほど美しい青磁の茶碗ですが
数か所に鎹が打たれた痛々しい姿になってしまっていて、
これは義政が愛用していた時ヒビが入ってしまったので宋に代わりの物をリクエストしたところ
これ以上の青磁は作れませんと鎹を打たれて送り返されてきたので
それならばと鎹を蝗に見立てて名付けてしまったとのこと。
義政さんてほんとそういう遊び心あるよなー!(将軍としてはああでこうだけども)
北野大茶会にも出されたという唐物肩衝茶入(北野)も義政所持だったらしいし
前田家伝来の木葉天目はお茶碗の中に葉っぱのような模様があっておもしろいし
唐物茶壺「松花」は信長→秀吉→家康と持ち主が変わってて
唐物茄子茶入「富士」に至っては足利氏の医師から信長がぶんどって→秀吉→家康ともたらされて
お前らわっかりやすいな…!ってなる。
三好長慶が所蔵していた三好粉引、釉薬のかけ残した地の茶色が刀の切っ先に見えるという
うっかりをプラスに変える見方は長慶さんのセンスですな…かっこいい。
作品の価値に加えて「あの人が持ってたもの」というのも大切な歴史なんだよね。

武野紹鴎・千利休師弟による侘茶の大成あたりからは展示にぐっと渋さが増します。
紹鴎が持っていたという緑色の点々が美しい白天目や、将軍の御成にも使われた備前水差「青海」は
さっきまでと違って白黒くっきりしてツルツルピカピカしてることもなくて
土の表情が何となく見える気もする。
利休の所持品コーナーはさらに黒が増えて、
樂家の初代・長次郎が利休のために作った黒樂茶碗の俊寛(利休命銘)やムキ栗(覚々斎原叟の命銘)なんかは
最たる黒のような気もします。
しかもムキ栗は四角いんだよね…なかなかないよねこういう形。
唐物茶壷「橋立」は信長から譲り受けたのち秀吉に何度も所望されながら最後まで譲らなかった壺で
地味で小さいけれどもそこが利休の好みだったのかなあ、などと。
利休の手紙もいくつかあって、
小田原攻めの従軍時に古田織部が送ってきた茶筒を受け取りましたという知らせや
沼田天目につけた「黄てんもくにて候 利」という鑑定書のような一筆や
2/14に堺へ船出するとき織部と三斎が見送りに来たという別れの手紙(2週間後に利休切腹)など
仕事や人生を物語る直筆にドキドキしました。
弟子の織部の所持品だった伊賀花入「生爪」は、いかにも織部好みに口が歪んでいて緑がだらっとしている。
なぜ爪の名前がついたかというと、織部がこれを手放すとき「爪をはがすような辛さ」と言って一筆添えたみたいで、
かなり太い字で書かれているのがかえっておかしくて笑ってしまった。
みんなそれぞれ大切にするものが異なっていて面白いですね。
あと、茶杓にも人柄が出るなあと思いました!
紹鴎の竹茶杓はゆるやかで、利休の茶杓は真っすぐなのや歪んでるのなどがあって
織部の小倉山は凸凹だし三斎(忠興)は「けつりそこなひ」と名付けてしまう自由さがある。
さらに下って小堀遠州の茶杓はすっきりしていましたね。

あと、当時はいわゆる「古筆切」というやつ…古い絵巻物や色紙をスパスパ切って
床の間や茶室に飾るのが流行したんですよね。
室町時代の足利将軍たち…義満や義教、義政あたりまでは水墨画や文人画などを掛けていたのが
紹鴎の頃からは漢詩などの古筆も掛け始めたのだそう。
(藤原定家の小倉色紙「あまのはら」を最初に茶室に掛けたのが紹鴎らしい)
史料クラスタとしてはおまえら何やっとんじゃー!と怒りたい気持ちもあるけど、
彼らは何でもかんでも切ってしまったわけではなくて
利休が双庵という人に出した「易元吉画巻跋」の添え状には
「墨跡が一段と見事なので切らずにそのまま飾るのがいい」という判断をして止めさせたりしている。
切られてしまったのはもう元に戻らないしその結果散逸しちゃったものとかあるけど
でも彼らが切って子孫が保存したから現代まで残ってきたものもあるし
当時の人々が何を考えて切ったり切らなかったりしてここまで残されてきたのかという一通りの歴史は
今となっては次世代の人たちのために必ず残しておかねばならぬ…ううむ。
ちなみに禅僧画家の玉澗が描いた「廬山図」は
佐久間将監が裁断したものと判明しているそうです。佐久間おまえちょっとそこ座r(ry

江戸時代の銘品も。
国宝の志野茶碗「卯花墻」は白い本体に赤い模様が縦横に入っていて
それを卯の花が咲く垣根に見立てているそうです。
樂家の初代・長次郎の赤茶碗や黒茶碗は手にすっぽりなじみそうな大きさで
万代屋黒などは落ち着いた漆黒が渋くてかっこいい。
(ちなみにこの茶碗は映画『利休にたずねよ』で
海老蔵さんと中谷美紀さんが実際にお茶を淹れて飲んだそうです。ひええ)
本阿弥光悦の赤楽茶碗は長次郎よりもふっくらとした半筒形で赤みが強い感じ。
そして仁清のあたりになると形がよりすっきりして色彩がぐっと華やかになるんですよ!
若松図茶壷や鱗波文茶碗の模様がすごく細かいし、鶴香合はかわいいし
特に玄猪香合は銀杏を添えて十文字に紐をかけた小箱を焼き物で見事に再現していて
銀杏が!紐が!こんな細かいのよくパキッとかしないで焼けるなおい!仁清やばい!!
隣に乾山の梅文香合もあって師弟で並んでるのうれしかったけど
時間をかけて眺めたのは断然、仁清の方でした…師匠すごい。
美濃焼の織部さげ髪香合とかミミズク香合とかもあってかわいかったな~。
あと最後に益田鈍翁のコレクションがいくつかあって
鈍翁と名乗る由来になった黒楽茶碗「鈍太郎」も展示されていました。
凸凹の黒いボディに地の茶色を満月のように残していて、名前の通り鈍く光る黒だった。
江戸時代が終わり近代になると大名家の茶道具を手に入れた財界人たちによる茶会がブームになり、
鈍翁が主催した茶会「大師会」は今も年に一度行われているそうです。
(そういえば東博庭園に建っている応挙館は鈍翁の品川の自宅から移築したものですな)


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岐阜県の陶芸美術館が再現した古田織部の茶室「燕庵」。撮影可でした。
本物は京都の茶道藪内流宗家の敷地内にありますが、
これは初代宗家の妻が織部の妹だったことからの縁だそうです。

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柱がぐにゃりと曲がってるとことか、すごく織部って感じ。
あと窓を少しずらして配置してあるのも織部の工夫だそう。


特別展の後は本館の茶の美術も鑑賞してきました。
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中国の灰被天目。渋いです。銀河の中に一等星がぽつぽつ見えるみたいな。

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志野茶碗、銘「振袖」。
ススキが薄く描かれていて優美です。

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美濃焼の織部向付。
「うぎゃあ」とか言いたくなる形がすごくおもしろいです。

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同じく美濃焼の織部開扇向付は骨まで細かい!

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野々村仁清の色絵牡丹図水指。
大きな牡丹と緻密な模様がホレボレしてしまう…かっこいい。

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仁阿弥道八の色絵桜樹図透鉢はやっぱり美しい☆

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景徳鎮の天啓赤絵羅漢図反鉢はそこ反らすんだ!ってデザイン。

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東博本館の庭園に移築されている転合庵。
小堀遠州が茶入「於大名」を披露するために京都の六地蔵に建てた茶室で、
その後何人かの持ち主を経てここに寄贈されたそうです。
普段は扉が閉められて外観のみの見学ですが、この日は内部も見学できました。
ちなみに茶入「於大名」も茶の湯展で見られまして
耳付茶入というそうですが、猫耳みたいな取っ手がついててかわいかった。

あと、茶の湯展に関連して近代美術館の樂家展も見てきたのですが
長くなりますので次回記事にて書きたいと思います☆
2017_05
03
(Wed)23:45

遣唐使と仏教アートの旅その2。

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奈良&京都旅行2日目です。1日目はこちら
今日もいっぱい歩くので、朝ごはんをしっかり食べてレッツゴー!

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奈良公園を抜けて東大寺に歩いてきたら
南大門手前の駐輪場に自転車ではなく鹿さんたちが駐輪していた件。
地面の上で朝日も当たってポカポカするのでしょうか、おはようございます☆
園内では早起きの鹿さんがすでにお客さんから鹿せんべいをもらってもりもり食べたりしていた。

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ナンダイモーン!
今日は奈良国立博物館に快慶展を見に行くのですが、
その前に慶派の人々が手がけた金剛力士像を見に来ました。つまり第2会場です。

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快慶とその工房が手掛けたという阿形さま。

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吽形さま。
ここには何度も訪れていますが、
このおふたりの間に立って双方から睨まれるともう感極まって言葉なんか出てこないですね、
今回も無事にお会いできてうれしいです本当にありがとうございます!
慶派の技術と800年の歴史と圧倒的感謝と感動。やばし。

東大寺金剛力士像は近年に調査された像内納入文書によると
制作の総指揮を運慶がとり、快慶や湛慶を始め慶派の仏師たちがおよそ2ヶ月で仕上げたもの。
ノミを入れてからわずか2週間で台座と基本的な体格を作ってあとは補正・修正と彩色だったそうで
(できた当時は赤い肌に緑や青の裳をつけていたらしい)
ものすごいスピード仕事だったのよな…。
みんなちゃんと寝てごはん食べてたかしら、本当にお疲れさまでした。

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東大寺に行くといつも会う猫さまに今回も会えました!
近づくと逃げられてしまうので遠くからこっそり観察。癒されますありがとうございます。

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というわけで奈良博の快慶展に向かいますよ~第1会場!
南大門が第2会場なら昨日の安倍文殊院は第3会場かな、そしてやっと第1会場(笑)。

以下、写真が多いのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆

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