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ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


手のひらの宇宙。

  1. 2017/05/07(日) 23:52:26_
  2. 文化・美術
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2017tohaku58.jpg
東博で開催中の「茶の湯」展に行ってきました。
曜変天目茶碗が見たくて、でも展示物が小さいうえに混んでると聞いていつにするか迷っているうちに
曜変の展示がGWととともに終了すると知り泡をくって「待ってえええ」と飛んでいきましたよ。
わたしは茶道に関してはさっぱりですが(建仁寺の栄西が茶祖と呼ばれてるよね、くらいの知識)
きれいなお茶碗や茶室の道具、茶碗をめぐる人間模様などがわかりやすく解説されていて
楽しくて2時間以上ウロウロしてしまいました。
仁清や乾山など好きな陶芸家もいるのでまったく初心者ってわけでもなかったし。

先に行った人々から「曜変天目(稲葉)の前であなたはチューチュートレインにな~る」とか
半ば催眠術のような予言をされてどういうことだってばよ?と思ってたけど
いざ展示ケースを前にしたら自動的にそうなる自分に気づきました。
展示物が小さいという理由もあるけど、お茶碗の中とか側面とかあっちこっち見たい部分が多くて
背伸びしたりしゃがんだりケースの周りをグルグルせざるを得ない!
そもそも人多くて見づらいし、国宝だからみんな見たいだろうし
あの展示ケース人が集まってる~何だろう?みたいな人も寄って来たろうし(わたしだ)、
集団が発生してしまうのは仕方ないですな。
そんなシュールな会場でしたけどもお茶碗そのものはとても美しかったです。
漆黒の本体に白や水色や群青などのグラデーションが螺鈿のようにきらめいていて
宇宙とも星空とも深海ともいえない不思議な景色。
曜変の曜は星のことなので昔の人は星空のように感じてそう名付けたのかもしれない。
豊臣秀吉から秀次へ受けつがれたという油滴天目は
外側も内側も銀色に輝く粒でびっしり覆われていて、その規則性のバランスがすさまじい。
天目茶碗は職人の意図ではなく窯の中の偶発的な科学変化で生まれるそうですが
焼き上げてこんなの出来上がってたらそらびっくりしますわな…。
ちなみに室町時代の芸道書『君台観左右帳記』には「曜変 建盞の内の無上也」「建盞 ゆてきの次也」とあり、
曜変1番油滴は2番ということだったみたい。

お茶碗そのものも味わい深いのですが、
個人的にはやっぱり誰かの手を経てきた茶碗や茶道具に心惹かれます。
灰被天目の「夕陽」は黒にオレンジが点々として、同「虹」(伝足利義政所持)はうっすらレインボーが見えて
両方とも東大寺や酒井家を経て残ってきたものだそうです。
青磁輪花茶碗「馬蝗絆」は雨過天晴と呼ばれるほど美しい青磁の茶碗ですが
数か所に鎹が打たれた痛々しい姿になってしまっていて、
これは義政が愛用していた時ヒビが入ってしまったので宋に代わりの物をリクエストしたところ
これ以上の青磁は作れませんと鎹を打たれて送り返されてきたので
それならばと鎹を蝗に見立てて名付けてしまったとのこと。
義政さんてほんとそういう遊び心あるよなー!(将軍としてはああでこうだけども)
北野大茶会にも出されたという唐物肩衝茶入(北野)も義政所持だったらしいし
前田家伝来の木葉天目はお茶碗の中に葉っぱのような模様があっておもしろいし
唐物茶壺「松花」は信長→秀吉→家康と持ち主が変わってて
唐物茄子茶入「富士」に至っては足利氏の医師から信長がぶんどって→秀吉→家康ともたらされて
お前らわっかりやすいな…!ってなる。
三好長慶が所蔵していた三好粉引、釉薬のかけ残した地の茶色が刀の切っ先に見えるという
うっかりをプラスに変える見方は長慶さんのセンスですな…かっこいい。
作品の価値に加えて「あの人が持ってたもの」というのも大切な歴史なんだよね。

武野紹鴎・千利休師弟による侘茶の大成あたりからは展示にぐっと渋さが増します。
紹鴎が持っていたという緑色の点々が美しい白天目や、将軍の御成にも使われた備前水差「青海」は
さっきまでと違って白黒くっきりしてツルツルピカピカしてることもなくて
土の表情が何となく見える気もする。
利休の所持品コーナーはさらに黒が増えて、
樂家の初代・長次郎が利休のために作った黒樂茶碗の俊寛(利休命銘)やムキ栗(覚々斎原叟の命銘)なんかは
最たる黒のような気もします。
しかもムキ栗は四角いんだよね…なかなかないよねこういう形。
唐物茶壷「橋立」は信長から譲り受けたのち秀吉に何度も所望されながら最後まで譲らなかった壺で
地味で小さいけれどもそこが利休の好みだったのかなあ、などと。
利休の手紙もいくつかあって、
小田原攻めの従軍時に古田織部が送ってきた茶筒を受け取りましたという知らせや
沼田天目につけた「黄てんもくにて候 利」という鑑定書のような一筆や
2/14に堺へ船出するとき織部と三斎が見送りに来たという別れの手紙(2週間後に利休切腹)など
仕事や人生を物語る直筆にドキドキしました。
弟子の織部の所持品だった伊賀花入「生爪」は、いかにも織部好みに口が歪んでいて緑がだらっとしている。
なぜ爪の名前がついたかというと、織部がこれを手放すとき「爪をはがすような辛さ」と言って一筆添えたみたいで、
かなり太い字で書かれているのがかえっておかしくて笑ってしまった。
みんなそれぞれ大切にするものが異なっていて面白いですね。
あと、茶杓にも人柄が出るなあと思いました!
紹鴎の竹茶杓はゆるやかで、利休の茶杓は真っすぐなのや歪んでるのなどがあって
織部の小倉山は凸凹だし三斎(忠興)は「けつりそこなひ」と名付けてしまう自由さがある。
さらに下って小堀遠州の茶杓はすっきりしていましたね。

あと、当時はいわゆる「古筆切」というやつ…古い絵巻物や色紙をスパスパ切って
床の間や茶室に飾るのが流行したんですよね。
室町時代の足利将軍たち…義満や義教、義政あたりまでは水墨画や文人画などを掛けていたのが
紹鴎の頃からは漢詩などの古筆も掛け始めたのだそう。
(藤原定家の小倉色紙「あまのはら」を最初に茶室に掛けたのが紹鴎らしい)
史料クラスタとしてはおまえら何やっとんじゃー!と怒りたい気持ちもあるけど、
彼らは何でもかんでも切ってしまったわけではなくて
利休が双庵という人に出した「易元吉画巻跋」の添え状には
「墨跡が一段と見事なので切らずにそのまま飾るのがいい」という判断をして止めさせたりしている。
切られてしまったのはもう元に戻らないしその結果散逸しちゃったものとかあるけど
でも彼らが切って子孫が保存したから現代まで残ってきたものもあるし
当時の人々が何を考えて切ったり切らなかったりしてここまで残されてきたのかという一通りの歴史は
今となっては次世代の人たちのために必ず残しておかねばならぬ…ううむ。
ちなみに禅僧画家の玉澗が描いた「廬山図」は
佐久間将監が裁断したものと判明しているそうです。佐久間おまえちょっとそこ座r(ry

江戸時代の銘品も。
国宝の志野茶碗「卯花墻」は白い本体に赤い模様が縦横に入っていて
それを卯の花が咲く垣根に見立てているそうです。
樂家の初代・長次郎の赤茶碗や黒茶碗は手にすっぽりなじみそうな大きさで
万代屋黒などは落ち着いた漆黒が渋くてかっこいい。
(ちなみにこの茶碗は映画『利休にたずねよ』で
海老蔵さんと中谷美紀さんが実際にお茶を淹れて飲んだそうです。ひええ)
本阿弥光悦の赤楽茶碗は長次郎よりもふっくらとした半筒形で赤みが強い感じ。
そして仁清のあたりになると形がよりすっきりして色彩がぐっと華やかになるんですよ!
若松図茶壷や鱗波文茶碗の模様がすごく細かいし、鶴香合はかわいいし
特に玄猪香合は銀杏を添えて十文字に紐をかけた小箱を焼き物で見事に再現していて
銀杏が!紐が!こんな細かいのよくパキッとかしないで焼けるなおい!仁清やばい!!
隣に乾山の梅文香合もあって師弟で並んでるのうれしかったけど
時間をかけて眺めたのは断然、仁清の方でした…師匠すごい。
美濃焼の織部さげ髪香合とかミミズク香合とかもあってかわいかったな~。
あと最後に益田鈍翁のコレクションがいくつかあって
鈍翁と名乗る由来になった黒楽茶碗「鈍太郎」も展示されていました。
凸凹の黒いボディに地の茶色を満月のように残していて、名前の通り鈍く光る黒だった。
江戸時代が終わり近代になると大名家の茶道具を手に入れた財界人たちによる茶会がブームになり、
鈍翁が主催した茶会「大師会」は今も年に一度行われているそうです。
(そういえば東博庭園に建っている応挙館は鈍翁の品川の自宅から移築したものですな)


2017tohaku60.jpg
岐阜県の陶芸美術館が再現した古田織部の茶室「燕庵」。撮影可でした。
本物は京都の茶道藪内流宗家の敷地内にありますが、
これは初代宗家の妻が織部の妹だったことからの縁だそうです。

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柱がぐにゃりと曲がってるとことか、すごく織部って感じ。
あと窓を少しずらして配置してあるのも織部の工夫だそう。


特別展の後は本館の茶の美術も鑑賞してきました。
2017tohaku63.jpg
中国の灰被天目。渋いです。銀河の中に一等星がぽつぽつ見えるみたいな。

2017tohaku64.jpg
志野茶碗、銘「振袖」。
ススキが薄く描かれていて優美です。

2017tohaku65.jpg
美濃焼の織部向付。
「うぎゃあ」とか言いたくなる形がすごくおもしろいです。

2017tohaku66.jpg
同じく美濃焼の織部開扇向付は骨まで細かい!

2017tohaku67.jpg
野々村仁清の色絵牡丹図水指。
大きな牡丹と緻密な模様がホレボレしてしまう…かっこいい。

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仁阿弥道八の色絵桜樹図透鉢はやっぱり美しい☆

2017tohaku69.jpg
景徳鎮の天啓赤絵羅漢図反鉢はそこ反らすんだ!ってデザイン。

2017tohaku62.jpg
東博本館の庭園に移築されている転合庵。
小堀遠州が茶入「於大名」を披露するために京都の六地蔵に建てた茶室で、
その後何人かの持ち主を経てここに寄贈されたそうです。
普段は扉が閉められて外観のみの見学ですが、この日は内部も見学できました。
ちなみに茶入「於大名」も茶の湯展で見られまして
耳付茶入というそうですが、猫耳みたいな取っ手がついててかわいかった。

あと、茶の湯展に関連して近代美術館の樂家展も見てきたのですが
長くなりますので次回記事にて書きたいと思います☆
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