まちがったいろ?そんなものはない。

世田谷美術館のエリック・カール展に行ってきました。
アメリカの絵本作家エリック・カールさんの仕事を紹介する展覧会です。
絵本の原画はもちろん、カールさんのスケッチや習作や画材、影響を受けた作家の作品などもあって
カールさんの人生とお仕事をたどれる内容になっていました。
入口にカールさん(御年87歳!)からのビデオメッセージが上映されていて
白いお鬚もじゃもじゃの、気さくそうな青い目のおじいさまが
「日本のみなさん楽しんでくださいね~」とかニコニコと短く挨拶してくださっていてこちらも笑顔に(^^)。
ご本人によるとボストンにあるエリック・カール美術館はアメリカで唯一の絵本美術館だそうです。
とにかく絵本原画がすごかったです。
カールさんの絵本は大好きで家にある絵本はボロボロになるくらい読んでますけども
ナマ原画を見るのは初めてでどんなものかしらと楽しみでした。
びっくりしたのがどの原画も絵本よりずっと色鮮やかだったこと!
印刷と原画の差はわかっているつもりでしたがこんなに違うものかと…
美術館にいくといつも「これだから美術館通いはやめられないな」って思うんだけど
今回はいつにも増してズンときました。たぶん一生やめられないぞおおおお٩( ᐛ )و
代表作『はらぺこあおむし』の原画の前でやっぱりたたずんでしまいましたね…
りんごやオレンジの色が鮮やかであおむしも強烈な緑と赤で
本当はこんな色をしていたんだなって感動しました。
最終的に絵本になった原画のほかに別案原画も今回は展示されていて
月明かりに照らされるあおむしの卵の葉っぱが、完成原画は黒いんですけど
くっきり緑色のままの別案もあったようで、カールさんはより夜っぽさを強調したのかなと。
『ゆめのゆき』の最終原画と別案原画の比較もおもしろかった~。
仕事を終えた農夫が着替えて、やがてサンタクロースであると判明する絵本なのですが
別案では12/24の日付のカレンダーが決定稿では時計になっていたり
長靴だったのが黒い靴になっていたりして
より最後に「サンタだった!」みたいな驚きに向けてボルテージ上げる構成になってる印象を受けました。
使わなかった原画を捨てずにとっておくカールさんとっても慕わしい。
また、カールさんがこれまでに出版された絵本はほとんどが紙によるコラージュですが
『くもさん おへんじどうしたの』のクモは紙にクモの手足を描き、上から模様を色付けしたアクリル板を乗せたり
『ゆっくりがいっぱい』の雨に降られるナマケモノの雨粒がやっぱり別シートだったりして
立体感を出されているのを初めて知ってやっぱ美術館通いやめられねえなって改めて思いました。
著者の工夫がみられるっていうのがほんとに好きなので…!
『ぼくのエプロン』(未邦訳)はコラージュした紙の上にキャラクターの輪郭線を描いた透明シートを乗せていて
(フェルナン・レジェの作風に触発されたそうです)、
なんだかステンドグラスみたいな原画になっていておもしろかったです。
働いた後の少年がふっと帽子を上げる仕草の絵があったけど表情がとってもよくて!
カールさんはあまりキャラクターの表情を作らない人なので意外に思いました、
これぜひ邦訳して出版してくださらないだろうか。
あと絵本に必ずついてるエンドペーパー(遊び紙のページ)も絵の具だったりコラージュだったりして
やっぱり絵本よりずっとくっきりした色できれいでしたね。
カールさんの人生についての展示。
若い頃に制作されたニューヨークの街や地下鉄の風景のリノカットはシックでかっこよくて
ゴシック感あふれる建物などもおしゃれでした~この頃から版画で作ってらっしゃるんですね。
カバや虎、牛などのスケッチもあって相変わらず太っとい線でかっこいい。
フランツ・マルクやアンリ・マティス、パウル・クレーの作品がお好きだそうで
特に動物をよく描いたマルクの影響が強かったらしいです。
カールさんは青い馬を何度か絵本に登場させているけどあれはマルクの青い馬だったんですね…。
『えをかく かく かく』はそんなマルクに捧げられた絵本だそうで
あれは内容もすばらしいですがカバー折り返し部分に添えられた描く自由の宣言みたいな文章がすごく好き。
間違った色はなくてぴったりの色を自由に自分でさがす的な言葉にわたしはずっと救われて生きてきたので
誰かへの捧げものだったんだなあと思ってうれしかったしもっと好きになりました。
クレーへのオマージュとして制作された天使(最新作!)は紙や布、ダンボールに絵の具をべったり塗って
確かにクレーがコラージュ作ったらこうなりそう…と思った。
マグリットの「イメージの裏切り」を冒頭に据えた『ナンセンス・ショウ』(未邦訳)は
人面ライオンがライオン人間にサーカスさせられていたり人面馬に馬人間が乗っていたり
アヒルに人の足(ズボンと靴履いてる)がくっついててまさにシュールレアリスム。
また、モーツァルトの音楽がお好きだそうで
2001年にマサチューセッツで魔笛が舞台化された際には衣装や舞台セットのデザインを依頼されたそうで
そのデザイン画もあったのですがスケッチとかじゃなく切り絵で作っててぶれないなあと思ったし、
「very simple」という書きこみがすべてを物語っている気がしました。
そういえば『うたがみえる きこえるよ』はモーツァルトのメヌエットを意識したんじゃなかったっけ…
あれも絵から音楽が聴こえてくる絵本だよね。
レオ・レオニは画家としての先輩にあたり彼の紹介で絵本を出されたこともあるそうで
『巨人にきをつけろ!』はレオニに捧げた絵本なんだとか。
レオニのねずみ原画も展示されていて見比べることができました。やっぱりかわいいなー。
2人とも紙のコラージュで絵本を作るのは共通してるけど、レオニは色で遊んでいて
カールさんは色で研究してるみたいな感じがしますね。
いわむらかずおさんと共作した『どこへいくの? /Too see my friend』は
ページをめくっていくとアメリカの男の子と日本の女の子が絵本の真ん中で出会うようになっていて
周りに動物たちもいてすごく幸せな絵本だなあと。
和服に触発されて制作されたという「キモノ」もすてきでした~ちょっとこの柄の着物作ってほしい。
子どもが家庭から小学校へ上がる間には深い淵があって
そこに橋を架けたいとおっしゃっているカールさんが描いた赤と青の橋の絵が印象的で
橋は色がついてるけど淵のなかが白のままというのがちょっと新鮮だった。
淵や谷底って黒のイメージがあるので…ただの空間なのかもっていう視点を提供してもらった気がします。
最後に展示されていた絵の具だらけのスモックや絵筆などにもテンション上がったけど
絵の具がついたままの刷毛の毛先に赤や黄色模様のリボンをくるくるっとつけていて
オッシャレー!って叫びそうになった☆
画材の紹介展示にリボンつけるとか初めて見たよ!赤い刷毛は赤、青い刷毛は青って統一感もあって素敵。

展示の終わりにあった撮影コーナー。
蝶の前に立つと背中からカラフルな羽が生えたような写真が撮れますよ!

あおむし見つけた☆
美術館ボランティアさんの手作りだそうです。

カールさん描きおろし新作イラストを使ったグッズもあったのでゲット!
カラフルな「ARIGATO」のコラージュとあおむしのツーショットです。中味はラムネ。
他にも「KONNICHIWA」「DAISUKI」のグッズがありましたよ~→こちら
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。 ジャンル : 学問・文化・芸術
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