In This Corner of the World...
映画館に行くかどうしようかずーっと迷っていたのですが
先日、公式の「もうすぐ観客200万人」みたいなツイートを見かけまして
わたしが行くことでカウントが1つ進むならと思って
ようやく、映画『この世界の片隅に』を観てきました。
過去に原作は読みましたけど細かい部分はほとんど忘れていたので
観ながら色々と思い出していった感じでした。
あと事前情報で、ジープをスケッチする少年時代の大塚康生さんが登場してると聞いてそれも楽しみで
いざ見たら本当に1カットだけ登場してて一瞬だったけどしっかり確認できました。
監督補の浦谷さんがしのびこませたそうです(^ω^)遊び心ですね。
観てる間は夢中で、終わって劇場を出てからものすごいぐるぐる色んなこと考えたり妄想してたので
どうやって帰宅したのか記憶があやふやだったりしますが、以下に所感を。
相変わらずまとまりない上にネタバレしていますので未見の方はご注意ください。
色んな人が言ってますけど、まず生活描写が細かいです。
たらいの中のスイカのひんやり感とか、収穫したカボチャに顔描いたりとか
伯父さんの家にきょうだいで行くとき誰が何を言うか確認するのとか
すずさんが鉛筆の削りかすを床の穴に捨てたり(『太郎こおろぎ』を思い出した)とか
バイオリンを弾くように包丁とまな板を持ってお鍋に野菜を入れるのとか
道草を使った料理レシピ(『戦下のレシピ』を思い出した)を手順から何から細かく再現してたりとか。
一方でリンさんの香りが花だったりする作画が妙に色っぽくてドキドキしたし
風に吹かれるタンポポやその向こうに広がる山や青空もきれいだった。
(制作にあたり当時の天気と雲と気温を調べたという途方もない話を聞きまして…
春のシーンで蝶を飛ばそうと思ったら飛ばない気温だったとか
周作さんが海軍に行く日の呉市の天気を調べたら小雨だったので降らせたとか。
なにかの朝ドラで暦の大安を調べたみたいな話を見たけど、あれレベルだなって思った)
背景美術のディテールも細かくて、映画冒頭だけに限って挙げてもいいですが
船から三角州の雁木に降りるすずさんとか、周作さんと出会う相生橋とか
中島本町の賑やかさとか今はレストハウスになってる元大正屋呉服店とか
すずさんがばけもんに借りた単眼鏡で見る物産館とか広島城とか…
たぶんわたし半分も気づけてないと思うので次に見る機会があったらもうちょっと色々気づけたらいいなあ。
ってか今思ったけどロングショットばっかりだったね??作画班…(震)
人物のアップはそんなになくて全身図や景色がいっぱい見られる映画なんですね。
監督の片渕さんはジブリ時代からお名前は拝見してまして、
アリーテ姫を見たときにずいぶん淡々と物語を紡ぐ方だなあと思ったけど
(ゲド戦記の2巻がお好きとインタビューで語ってらして親近感を持ちました)、
このセカもその作風が貫かれていたなあと思う。
もともと原作がそんな風というのもあるけど、映画もどのエピソードに関しても割とあっさり描いてるというか
ドキュメンタリーほど硬派ではないけど演出の熱量が平行線で
どこかがクライマックス的な盛り上がりがないのが、なんだかすごく新鮮でした。
爆弾がふってくる畑にもモンシロチョウが当たり前のように飛んでいたりするし…。
そんな感じだから登場人物が感情をにじませたりするシーンはおお!ってなります。
おばあちゃんが「放っときゃ後で食べに来んさってよ」って縁側にスイカ置いとくのとか
すずさんの「しみじみニヤニヤしとるんじゃ~」につられて周作さんもニコ~ってなるのとか
やたらガハガハ笑う水原さんとか、水原さんに怒る癖がついてるすずさんとか
晴美さんがコロコロ笑いながらすずさんの手を引いてるあたりのシーンは
かわいいなあ微笑ましいなあとしみじみします。
逆に、広島に帰るって叫ぶすずさんと彼女を守ろうとする周作さんが怒鳴り合うシーンや
8月15日の放送を聴いて畑で大泣きするすずさんのシーンとかは感情爆発の最高潮で
のんさんも細谷さんもむっちゃくちゃ叫んでましたね。
径子さんがすずさんに晴美をかえせって言うとこも後で謝るのも胸がぎゅーってなってつらかった、
劇的じゃなくて、普段叫び慣れてない人が叫んだり感情押し殺しながらしゃべるときって
こういう声出るよなっていう生々しさがあった。うまく言えないけど。
キャストも関西の人が多かったみたいで、のんさんは兵庫だし
細谷さんや新谷さんや佐々木さんは広島、小野さんは高知、津田さんは山口、
渋谷さんは大阪のご出身だそうですね~。
新谷さんが広島言葉の指導役でテスト用に台本を全部収録されたとおっしゃってて→こちら
この映画はセリフ劇といってもいいくらい会話が多いので大変だったろうな…お疲れさまでした。
ほぼ別録りだったらしいけど役者さんの技量や演出の力で大変バランスのよい音響になってて
そういう意味でもすばらしいものを見せていただいたと思います。
一方で、のんさんのブログに監督とキャストの皆さんで
「この世界の片隅を見つめるポーズ」なる写真を撮った記事が載ってて
なんて愉快な人たちなんだ!って爆笑してしまった(笑)おもしろいこと考えるなあ。
原作者のこうの史代さん曰く「小動物みたい」なすずさんは人の機微に気づかない自分をぼんやりだと言っていたけど
あれだけ日常仕事してたら気づいてる暇なんてないと思う…。
朝起きてごはん作って洗濯して掃除してお昼ご飯作って縫い物して
夕方に買い物行って夕ご飯作ってお風呂沸かして次の日の準備して蒲団敷いて。。
家の人々としゃべる時間なんて寝る前くらいしかない日々の中で
周作さんと畑にいたり雨宿りしたりしたときとか、サンさんと洋服の片付けしてるときとか
時々ふと訪れる空き時間でやっと十円ハゲのこと気づいてもらえたり
町内の人間関係とか、径子さんの事情とか聞けたりするわけだし。
(というかリアルに考えても人間ってそんなに自分のこと話さないよね…タイミングが合えば話すかもしれないけど)
というか改めて当時の社会構造は壮絶だなと思いました…。
女性がある日唐突に家から遠く離れた場所へ嫁入りして、家事労働の一切合切をひとりでこなして
(姑は病弱で頼れないし舅と夫はやさしいけど仕事に行くだけで家の仕事をまったくやらない)、
戦争で物資が減らされてるから家事も工夫を余儀なくされて実験→失敗を繰り返して繰り返して
こんなことをしていたら身が持たないですよまじで…。
すずさんが家の住所を知らないことが家族の伝達ミスではなくすずさんのうっかりとして処理されたり
水原さんが入湯上陸で泊まりに来たとき周作さんが納屋をあてがって
すずさんに行火を持って行かせて家の鍵しめちゃうとこは「はあぁあー!?」って思った。。
その後すずさんも周作さんへの怒りを水原さんにぶちまけたり
汽車の中で怒ったり周作さんの靴下に細工して履けないようにしたりして
やられたらやり返すタイプというのがわかってそこはちょっとホッとしたけど…。
駅の夫婦ゲンカも2人とも全然遠慮してなくて、少し言い合えるようになったなと思えて
そこもちょっとホッとしました。
周作さんの横顔を描いて「軍事機密じゃ」って言ったり、街や防空壕の中で落書きしたり
水原さんに鉛筆や羽ペンもらってよろこぶところは絵描きだなあと思います。
いろんな人に絵を描いてあげるのがそれぞれとてもよいシーンでした。
(水原さんに描いてあげた海の波を跳ねるうさぎの絵が好き)
対空砲火を見て「絵の具があれば」と思ってしまうところは色んな意見があると思いますが…
あの後すずさん家に帰って描いたのかな。
周作さんは言い出しっぺの割にすずさんにどう接していいかわからないまま一緒に暮らしてるというか、
すずさんのお化粧を見抜けなかったり紙くずボールを竹刀で空振りしまくったりと
真面目で仕事できる人だけどいまいち頼りなくて、アップアップな印象があります。
お見合いもデートもしないでいきなり同居始めてるのでまあお互い様なんだけど。
あと周作さんなんで結婚式のとき拳握って何も食べなかったんだろうとか
持ち物のノートの端っこなんで切れてるんだっけ?と思って原作ネタバレをぐぐったら
あーそうだったそうだったと思い出しました。
もし覚えてたまま観ていたら、すずさんが花柄の茶碗を見つめるのとか
機銃掃射で破壊される紅とか見て硬直していたと思います。
確かわたし、原作読んでたときすずさんとリンさんの関係すごく好きだった気がするんですが
映画はなぜ削られてしまったんだろう…。
絵コンテまではできてるって片渕さんがインタビューでおっしゃってるので
そのうち完全版みたいなのとか作られたりするんだろうか。作ってほしいな。
戦争の描写は後半からどんどん顕著になっていく。
食べ物や生活用品がいつの間にか減って、電灯に黒い布をかけたりお米にお芋が混ざり始めたり
千人針さすとか、当たり前のように「闇で買っといで」ってセリフ出てきたり
空襲警報が鳴るようになって最初は緊張してたけど徐々に慣れて防空壕でお茶飲んでたりとか
でも慣れた頃にあっけなく訪れる別れとか…。
人々も、すずさんが憲兵にスケブとられて家族に笑われるあたりまではまだ余裕があったけど
晴美さんが亡くなったり(シネカリ演出めっちゃ怖かった)空襲と機銃掃射で笑顔がまったく見られなくなって
笑うのは戦後になってからだったような。
あと、映画冒頭から〇年〇月って月付がちょこちょこ出て時間の経過がわかるようになってるんですが
周作さんが「三ヶ月は戻れん」て言ったときや
「その9日後」ってテロップ出たとき待ってさっき何日って出たっけ??ってあわてて脳内計算して
呉市だってわかってても怖かったし、8月15日は唐突感がすごくありました。
三枝和子さんも『その日の夏』に書いてるけどあの正午の後だってご飯食べなきゃ生きられないわけでね…。
太極旗が上がるカットがすごくあっさりしてて、すずさんが日本という国の正体に気付くセリフがなかったり
戦後処理も淡々としていてビビった…機密文書燃やすシーンがほんとつらい…。
すみちゃんのお見舞いで両親のことやすみちゃんの体調を聞いて、すずさんはまだ何が起こるか知らないけれど
原爆症がどんなものか知っているわたしたちは何も言えなくなってしまうな…。
久々にお米を炊くのは楠公飯のシーン見た後だからおいしそう!って思ったし
電灯から黒い布外したり、すずさんと径子さんが占領軍の炊きだしを「うまー!」って食べるのとかも
それまでできなかったことができるようになっていく解放感みたいなのを強烈に感じた。
ばけもんも…無事だったんだね…!
すずさんと周作さんが広島市内で出会う女の子がお母さんの左手を握っていたから生きていた話…。
あの子が当時自分に起きた出来事をすずさんたちに語る言葉を持てる日がくるかはわからないけど
それを聞いた時のすずさんの気持ちとか考えてしまったし、
「晴美が小さかったときの服を」って真っ先に行動した径子さんが
一緒に暮らすうちにあの子に晴美さんを重ねるかもしれないし、晴美さんじゃないと思って接するだろうし
でも15日の時みたいに時々どこかでこっそり泣くかもしれないし
そんな径子さんを想像すると涙が出そうになったけど帰りの電車の中だったので我慢しました。
上映中は夢中すぎて泣くのも忘れてたのになあ…ほんとうに情報量の多い内容でした。
エンディングのその後エピと、3000人を超えるクラウドファウンディングのお名前一覧と
それに添うかたちで流れるリンさんの人生と、最後の最後に右手が手を振るのもじーんときた。
(こうのさんはすずさんが右手をなくした後は左手で背景のペン入れをしたとインタビューでおっしゃっていたね)
すずさんと周作さんが今も生きているとしたら2人とも90代なので
わたしの祖父母よりちょっと年上だなあとか考えてたら繋がってる感じしましたね…。
歳を重ねても変わらずケンカしたり笑ったりしてそうですが
今すぐじゃなくても数年後とか老後とか、のんさんと細谷さんが演じてくれたらいいなと思う。
そういえば先日、アニメ鬼平にのんさんがゲスト出演されていたけど
粂八がいない回だったので北條夫妻共演にはならなかったのね、ちょっと残念。
(そして細谷さんは今お休み中ですよね…元気に戻っていらっしゃいますように)

とらやの更衣、今年は買えたぞー☆
映画でもすずさんが衣替えをしたり着物をリサイクルするシーンがあったな~とか考えつついただきました。
もう一つはなすび餅。
先日、公式の「もうすぐ観客200万人」みたいなツイートを見かけまして
わたしが行くことでカウントが1つ進むならと思って
ようやく、映画『この世界の片隅に』を観てきました。
過去に原作は読みましたけど細かい部分はほとんど忘れていたので
観ながら色々と思い出していった感じでした。
あと事前情報で、ジープをスケッチする少年時代の大塚康生さんが登場してると聞いてそれも楽しみで
いざ見たら本当に1カットだけ登場してて一瞬だったけどしっかり確認できました。
監督補の浦谷さんがしのびこませたそうです(^ω^)遊び心ですね。
観てる間は夢中で、終わって劇場を出てからものすごいぐるぐる色んなこと考えたり妄想してたので
どうやって帰宅したのか記憶があやふやだったりしますが、以下に所感を。
相変わらずまとまりない上にネタバレしていますので未見の方はご注意ください。
色んな人が言ってますけど、まず生活描写が細かいです。
たらいの中のスイカのひんやり感とか、収穫したカボチャに顔描いたりとか
伯父さんの家にきょうだいで行くとき誰が何を言うか確認するのとか
すずさんが鉛筆の削りかすを床の穴に捨てたり(『太郎こおろぎ』を思い出した)とか
バイオリンを弾くように包丁とまな板を持ってお鍋に野菜を入れるのとか
道草を使った料理レシピ(『戦下のレシピ』を思い出した)を手順から何から細かく再現してたりとか。
一方でリンさんの香りが花だったりする作画が妙に色っぽくてドキドキしたし
風に吹かれるタンポポやその向こうに広がる山や青空もきれいだった。
(制作にあたり当時の天気と雲と気温を調べたという途方もない話を聞きまして…
春のシーンで蝶を飛ばそうと思ったら飛ばない気温だったとか
周作さんが海軍に行く日の呉市の天気を調べたら小雨だったので降らせたとか。
なにかの朝ドラで暦の大安を調べたみたいな話を見たけど、あれレベルだなって思った)
背景美術のディテールも細かくて、映画冒頭だけに限って挙げてもいいですが
船から三角州の雁木に降りるすずさんとか、周作さんと出会う相生橋とか
中島本町の賑やかさとか今はレストハウスになってる元大正屋呉服店とか
すずさんがばけもんに借りた単眼鏡で見る物産館とか広島城とか…
たぶんわたし半分も気づけてないと思うので次に見る機会があったらもうちょっと色々気づけたらいいなあ。
ってか今思ったけどロングショットばっかりだったね??作画班…(震)
人物のアップはそんなになくて全身図や景色がいっぱい見られる映画なんですね。
監督の片渕さんはジブリ時代からお名前は拝見してまして、
アリーテ姫を見たときにずいぶん淡々と物語を紡ぐ方だなあと思ったけど
(ゲド戦記の2巻がお好きとインタビューで語ってらして親近感を持ちました)、
このセカもその作風が貫かれていたなあと思う。
もともと原作がそんな風というのもあるけど、映画もどのエピソードに関しても割とあっさり描いてるというか
ドキュメンタリーほど硬派ではないけど演出の熱量が平行線で
どこかがクライマックス的な盛り上がりがないのが、なんだかすごく新鮮でした。
爆弾がふってくる畑にもモンシロチョウが当たり前のように飛んでいたりするし…。
そんな感じだから登場人物が感情をにじませたりするシーンはおお!ってなります。
おばあちゃんが「放っときゃ後で食べに来んさってよ」って縁側にスイカ置いとくのとか
すずさんの「しみじみニヤニヤしとるんじゃ~」につられて周作さんもニコ~ってなるのとか
やたらガハガハ笑う水原さんとか、水原さんに怒る癖がついてるすずさんとか
晴美さんがコロコロ笑いながらすずさんの手を引いてるあたりのシーンは
かわいいなあ微笑ましいなあとしみじみします。
逆に、広島に帰るって叫ぶすずさんと彼女を守ろうとする周作さんが怒鳴り合うシーンや
8月15日の放送を聴いて畑で大泣きするすずさんのシーンとかは感情爆発の最高潮で
のんさんも細谷さんもむっちゃくちゃ叫んでましたね。
径子さんがすずさんに晴美をかえせって言うとこも後で謝るのも胸がぎゅーってなってつらかった、
劇的じゃなくて、普段叫び慣れてない人が叫んだり感情押し殺しながらしゃべるときって
こういう声出るよなっていう生々しさがあった。うまく言えないけど。
キャストも関西の人が多かったみたいで、のんさんは兵庫だし
細谷さんや新谷さんや佐々木さんは広島、小野さんは高知、津田さんは山口、
渋谷さんは大阪のご出身だそうですね~。
新谷さんが広島言葉の指導役でテスト用に台本を全部収録されたとおっしゃってて→こちら
この映画はセリフ劇といってもいいくらい会話が多いので大変だったろうな…お疲れさまでした。
ほぼ別録りだったらしいけど役者さんの技量や演出の力で大変バランスのよい音響になってて
そういう意味でもすばらしいものを見せていただいたと思います。
一方で、のんさんのブログに監督とキャストの皆さんで
「この世界の片隅を見つめるポーズ」なる写真を撮った記事が載ってて
なんて愉快な人たちなんだ!って爆笑してしまった(笑)おもしろいこと考えるなあ。
原作者のこうの史代さん曰く「小動物みたい」なすずさんは人の機微に気づかない自分をぼんやりだと言っていたけど
あれだけ日常仕事してたら気づいてる暇なんてないと思う…。
朝起きてごはん作って洗濯して掃除してお昼ご飯作って縫い物して
夕方に買い物行って夕ご飯作ってお風呂沸かして次の日の準備して蒲団敷いて。。
家の人々としゃべる時間なんて寝る前くらいしかない日々の中で
周作さんと畑にいたり雨宿りしたりしたときとか、サンさんと洋服の片付けしてるときとか
時々ふと訪れる空き時間でやっと十円ハゲのこと気づいてもらえたり
町内の人間関係とか、径子さんの事情とか聞けたりするわけだし。
(というかリアルに考えても人間ってそんなに自分のこと話さないよね…タイミングが合えば話すかもしれないけど)
というか改めて当時の社会構造は壮絶だなと思いました…。
女性がある日唐突に家から遠く離れた場所へ嫁入りして、家事労働の一切合切をひとりでこなして
(姑は病弱で頼れないし舅と夫はやさしいけど仕事に行くだけで家の仕事をまったくやらない)、
戦争で物資が減らされてるから家事も工夫を余儀なくされて実験→失敗を繰り返して繰り返して
こんなことをしていたら身が持たないですよまじで…。
すずさんが家の住所を知らないことが家族の伝達ミスではなくすずさんのうっかりとして処理されたり
水原さんが入湯上陸で泊まりに来たとき周作さんが納屋をあてがって
すずさんに行火を持って行かせて家の鍵しめちゃうとこは「はあぁあー!?」って思った。。
その後すずさんも周作さんへの怒りを水原さんにぶちまけたり
汽車の中で怒ったり周作さんの靴下に細工して履けないようにしたりして
やられたらやり返すタイプというのがわかってそこはちょっとホッとしたけど…。
駅の夫婦ゲンカも2人とも全然遠慮してなくて、少し言い合えるようになったなと思えて
そこもちょっとホッとしました。
周作さんの横顔を描いて「軍事機密じゃ」って言ったり、街や防空壕の中で落書きしたり
水原さんに鉛筆や羽ペンもらってよろこぶところは絵描きだなあと思います。
いろんな人に絵を描いてあげるのがそれぞれとてもよいシーンでした。
(水原さんに描いてあげた海の波を跳ねるうさぎの絵が好き)
対空砲火を見て「絵の具があれば」と思ってしまうところは色んな意見があると思いますが…
あの後すずさん家に帰って描いたのかな。
周作さんは言い出しっぺの割にすずさんにどう接していいかわからないまま一緒に暮らしてるというか、
すずさんのお化粧を見抜けなかったり紙くずボールを竹刀で空振りしまくったりと
真面目で仕事できる人だけどいまいち頼りなくて、アップアップな印象があります。
お見合いもデートもしないでいきなり同居始めてるのでまあお互い様なんだけど。
あと周作さんなんで結婚式のとき拳握って何も食べなかったんだろうとか
持ち物のノートの端っこなんで切れてるんだっけ?と思って原作ネタバレをぐぐったら
あーそうだったそうだったと思い出しました。
もし覚えてたまま観ていたら、すずさんが花柄の茶碗を見つめるのとか
機銃掃射で破壊される紅とか見て硬直していたと思います。
確かわたし、原作読んでたときすずさんとリンさんの関係すごく好きだった気がするんですが
映画はなぜ削られてしまったんだろう…。
絵コンテまではできてるって片渕さんがインタビューでおっしゃってるので
そのうち完全版みたいなのとか作られたりするんだろうか。作ってほしいな。
戦争の描写は後半からどんどん顕著になっていく。
食べ物や生活用品がいつの間にか減って、電灯に黒い布をかけたりお米にお芋が混ざり始めたり
千人針さすとか、当たり前のように「闇で買っといで」ってセリフ出てきたり
空襲警報が鳴るようになって最初は緊張してたけど徐々に慣れて防空壕でお茶飲んでたりとか
でも慣れた頃にあっけなく訪れる別れとか…。
人々も、すずさんが憲兵にスケブとられて家族に笑われるあたりまではまだ余裕があったけど
晴美さんが亡くなったり(シネカリ演出めっちゃ怖かった)空襲と機銃掃射で笑顔がまったく見られなくなって
笑うのは戦後になってからだったような。
あと、映画冒頭から〇年〇月って月付がちょこちょこ出て時間の経過がわかるようになってるんですが
周作さんが「三ヶ月は戻れん」て言ったときや
「その9日後」ってテロップ出たとき待ってさっき何日って出たっけ??ってあわてて脳内計算して
呉市だってわかってても怖かったし、8月15日は唐突感がすごくありました。
三枝和子さんも『その日の夏』に書いてるけどあの正午の後だってご飯食べなきゃ生きられないわけでね…。
太極旗が上がるカットがすごくあっさりしてて、すずさんが日本という国の正体に気付くセリフがなかったり
戦後処理も淡々としていてビビった…機密文書燃やすシーンがほんとつらい…。
すみちゃんのお見舞いで両親のことやすみちゃんの体調を聞いて、すずさんはまだ何が起こるか知らないけれど
原爆症がどんなものか知っているわたしたちは何も言えなくなってしまうな…。
久々にお米を炊くのは楠公飯のシーン見た後だからおいしそう!って思ったし
電灯から黒い布外したり、すずさんと径子さんが占領軍の炊きだしを「うまー!」って食べるのとかも
それまでできなかったことができるようになっていく解放感みたいなのを強烈に感じた。
ばけもんも…無事だったんだね…!
すずさんと周作さんが広島市内で出会う女の子がお母さんの左手を握っていたから生きていた話…。
あの子が当時自分に起きた出来事をすずさんたちに語る言葉を持てる日がくるかはわからないけど
それを聞いた時のすずさんの気持ちとか考えてしまったし、
「晴美が小さかったときの服を」って真っ先に行動した径子さんが
一緒に暮らすうちにあの子に晴美さんを重ねるかもしれないし、晴美さんじゃないと思って接するだろうし
でも15日の時みたいに時々どこかでこっそり泣くかもしれないし
そんな径子さんを想像すると涙が出そうになったけど帰りの電車の中だったので我慢しました。
上映中は夢中すぎて泣くのも忘れてたのになあ…ほんとうに情報量の多い内容でした。
エンディングのその後エピと、3000人を超えるクラウドファウンディングのお名前一覧と
それに添うかたちで流れるリンさんの人生と、最後の最後に右手が手を振るのもじーんときた。
(こうのさんはすずさんが右手をなくした後は左手で背景のペン入れをしたとインタビューでおっしゃっていたね)
すずさんと周作さんが今も生きているとしたら2人とも90代なので
わたしの祖父母よりちょっと年上だなあとか考えてたら繋がってる感じしましたね…。
歳を重ねても変わらずケンカしたり笑ったりしてそうですが
今すぐじゃなくても数年後とか老後とか、のんさんと細谷さんが演じてくれたらいいなと思う。
そういえば先日、アニメ鬼平にのんさんがゲスト出演されていたけど
粂八がいない回だったので北條夫妻共演にはならなかったのね、ちょっと残念。
(そして細谷さんは今お休み中ですよね…元気に戻っていらっしゃいますように)

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