夏の地獄めぐり。

三井記念美術館で開催中の「地獄絵ワンダーランド」展に行ってきました。
地獄と極楽を描いた絵巻、掛軸、版本、彫刻などから日本の死生観・来世観をたどる展覧会です。
灼熱のビル街から自動ドアで涼しい館内に入ったというのに
水木しげる御大の釜茹で絵に迎えられるというなかなかロックな趣向です。嫌いじゃない。

先日、奈良博の源信展に行きましたけど関東でも地獄絵が見られるということで楽しみにしていて
サイトでチケット情報を見たら相互割引をやっていると書いてあったので、
源信展の半券を持って行ったら200円引きにしていただけました。有難や。
逆に三井記念美の半券を奈良博に持って行っても割引になるそうですよ。
そして最初の展示室で出迎えてくれるのも水木御大の作品。
「のんのんばあと地獄めぐり」の絵本の原画がズラリと並んでいました。
文字通り、水木少年とのんのんばあが地獄や六道をめぐる絵なのですが
少年は「うへー」とか引いてたりするんですけど、なんだかんだ2人とも楽しそうだった。
阿鼻叫喚地獄の絵に犬が描いてあったのを見て
先日の源信展で見た聖衆来迎寺の六道絵にも確か犬がいたなと思い出したり
炎の表現が地獄草紙みたいだなって思ったり…
後の展示を見ても思ったんですけど御大は各地の地獄絵や六道絵をたくさん見て描いたんだろうなと
見ればすぐわかるくらいのレベルで再現されていたと思うし、
わたしもやっとそういうのがわかるところまで来られたのかなあとちょっと思いました。
あとやっぱり現代の人ですから原画がきれいだ…
関係者の皆様にはなるべくこのクオリティでがんばって保存していってほしい。
(ところで御大が旅立たれてもうすぐ2年になりますがあの世からの原稿はまだ届かないのかしら…
御大が何をご覧になったのか気になる。虹色のゾウリムシ(by太宰治)はいるのかなあ)
往生要集3冊、遣宋完本・建長五年版と呼ばれる現存する最古の写本もあって
源信展で見たのは補遺本だったからこっちの方がオリジナルに近いんだろうか。
この本より前の地獄美術は東大寺二月堂本尊の光背に描かれた地獄図とか
平安初期の胎蔵界曼荼羅、中尊寺経の見返しに描かれた六道絵などだそうですが
源信が往生要集を書くうえで六道描写の参考にした「正法念処経」も合わせて展示してあって
(ちなみに正法念処経は地獄草紙の典拠でもある)
源信の思考過程などもわかっておもしろかった。
往生要集は発行後も絵入本や版本など色んな形で伝えられていくのは奈良博でも見たけど
京都の八田華堂金彦の挿絵はゆったりとした線で、でもやっぱり炎は迫力があった。
六道や八大地獄の絵、相変わらずこれでもかと責め苦が用意されている。
掛軸や絵巻で揃っている例がこんなに多いとは…たくさん見せてもらいました。
聖衆来迎寺の六道絵を模写した掛軸、さすが模本で色がきれいに残っていますが
先日原本を見たのでわかるんですが再現率むちゃくちゃ高くないですか、
絵師が特に書かれてなかったけどどういう人が描いたんだろうか。
佐太天神宮の北野天神絵巻には日蔵商人with不動明王の地獄めぐりが描かれ
太政威徳天となった道真に会ったりするんですが
途中で業火に焼かれる醍醐天皇が下着一枚になっちゃっててこれは…あんまりじゃないかな…^^;
長寶寺縁起の慶心尼と不動明王の地獄めぐりは
閻魔王宮で額にハンコを押されて終わりっていうのがおもしろいし、
さらに後日談では本堂で青いクモを見つけた慶心尼がなぜかパッタリ倒れてまた地獄へ行って
閻魔に「あなたハンコ作りなさい」と言われて目が覚めたら青い舎利を手に持っていて
それを使って閻魔王大実判を作ったっていう。
絵巻には慶心尼がハンコを作ったり、他のお坊様が閻魔王像を彫ってる描写があって
さらにそのハンコの実物も展示されていた!
長寶寺では毎年5/18に閻魔像の御開帳がありお参りすると額にハンコを押してもらえるそうで
やばい…行ってみたい…!!
富山の立山曼荼羅、立山連峰は死者の魂が集まり地獄と極楽が共存すると考えられているそうで
この曼荼羅は勧進の絵解きなどで使われた形式だそうですけど描いた人がすごい、
藩主の松平乗全が自ら筆を取ったものらしい。
すみずみまで細かく、色遣いが美しく、確かな描写力で山の緑や人々の生活、その中にある六道や極楽、
空には飛天が舞い赤い太陽と白い月が雲とともに出ている。
藩主って忙しいイメージですけど一体どんだけ時間かけて描いたのか、すごい人がいたもんです。
閻魔大王の姿も様々。
中山寺の六道絵の閻魔様が、このての絵にしては珍しく白い顔の閻魔様でおおって思ったのと
餓鬼道の真ん中に右上を見つめて手を合わせる獄卒を発見して、おやっと思ったら
彼の近くにいる死者たちも揃って手を合わせていたのが気になった。
右上は色落ちしてしまっているんだけどかすかに仏様の頭っぽいのが残っていたから
来迎でも描かれてたのかしら。
當麻寺の十王図の閻魔様と、誓願寺の地蔵十王図の閻魔様が
机の上で手を組むポーズでお仕事してる姿が完全に一致しててどっちか参考にしたのかな?
それともわたしが事例を知らないだけで閻魔様をああいうポーズで描いた絵はどこかにあるのかな。
あと、閻魔様は密教に輸入されると閻魔天にメタモルフォーゼするらしく
閻魔天曼荼羅なるものが存在するのを初めて知りました。
甲冑を身に着けた忿怒相で水牛に乗ってるっていう…すごい、こんな閻魔様見たことない。
河鍋暁斎の「閻魔・奪衣婆図」がもう、むちゃくちゃおもしろくて
閻魔様が短冊をつるそうとする地獄太夫の踏み台にされているのですが
あとこの閻魔様、四つ足だし髪がクルクルパーマになって口をくわっと開けていて
何となくですが唐獅子図屏風のお獅子みたいに見えるんだよね。意識したんだろうか。
奪衣婆は奪衣婆で、若衆に髪をとかしてもらってまんざらでもない顔をしちゃって、
あの天下の奪衣婆がですよ!本来ならその若衆くんの着物をひっぺがすのが仕事でしょうあなた…
ほんっと暁斎っておもしろい人だなと思う。
暁斎もそうですが、江戸時代は地獄をおちょくった作品が出版されまくった時代でもあります。
基本的に六道絵のイメージは繰り返されているけどそれらを踏まえたアレンジがもう、すごい。
山東京伝作・絵の『小野篁地獄往来』おもしろそうだ~~全部読みたかった。
烏帽子姿の篁が閻魔様が不在の地獄・六道・極楽をめぐるお話なのですが
獄卒がちょんまげ結って江戸町人風の風俗だったりするのがおもしろいです。
八代目市川團十郎の死絵で、地蔵菩薩に扮した八代目が閻魔大王を懲らしめているのとか
児雷也に扮して賽の河原の鬼を追い払うとか(対岸の子どもたちからは投石の応援まである)
先輩役者たちの顔をした仏様たちに蓮台に乗せられそうになってるとことか
もはや何でもあり。
八代目みたいな役者だったら地獄に行っても強いぜ安心しな!とか、絵師たちの声が聞こえるような気もする。
東覚寺の地蔵・十王図はデフォルメがすごくて、地蔵も十王もみんな目がでかくて閻魔は髭ボーボーで
とにかくゆっる~い表現がおっかしくて笑ってしまいました^^
芹沢銈介から柳宗悦に寄贈されたという十王図には十王たちの傍らにそれぞれ小さく本地仏が描かれて
十王たちも素朴な表現でかわいかったです。
孝子善之丞感得伝は信濃の善之丞くんという少年が病気の父親を助けるために地獄へ行く話ですが
5コマ漫画みたいな構成だし絵もゆるかわいいしでコミック読んでる気分になりました。楽しい!
彫刻もいくつかあって、室町時代の閻魔・司命・司録坐像は
閻魔様の黒目が小さくて口をくわっと開けて、するどさがあったように思う。
壬生狂言「餓鬼相撲」と「賽の河原」で使用される閻魔と地蔵のお面は
閻魔が真っ赤で地蔵が白という、遠目でも役割がはっきりわかりそうな色をしている。
鎌倉時代の十王坐像は、銘がないので十王のどなたかはわからないけど
中国の官人の服を着て口をかっと開けているから閻魔様イメージかもしれない。
木喰上人の木造閻魔・白鬼・十王坐像は閻魔と奪衣婆だけ歯をむき出しにして
笑っているのか威嚇しているのか…。
びっくりしたのが厨子入りの閻魔王坐像、わずか4cmの閻魔様!!
所有する正明寺によると善光寺別当の興金上人が閻魔王宮の仏事に招かれ
庭の松の木で彫ったその像を賜ったという言い伝えがあるそうです。
たとえ4cmでも腕まくりしてやる気満々な閻魔様まじ閻魔様、彫った職人の名前をぜひ知りたいですね。
とまあ、そんなこんなで地獄絵のイメージが強烈すぎて
極楽絵も最後にちょこっとあったけどあまり印象に残ってない(笑)。
あっでも、刺繍でできた阿弥陀三尊来迎図はすごいと思いました!
金の糸で来迎の全身図が作られていて…三尊の髪だけは人間の髪が縫い込まれているそうですが。
またそういうやつか。髪を縫い込むとか血で赤を塗るとか、やる人はやるんだよね。
阿弥陀二十五菩薩来迎図は阿弥陀様以外の仏様がみんな楽器を持っていらして
賑やかな音楽が聞こえてきそうな雰囲気。
法如(中将姫)の肖像画は背景に二上山があり、そこへ帰っていく阿弥陀如来一行の帰り来迎が印象的。

ミュージアムショップにあったいったんメモに爆笑^^ 即買いました。
暁斎の「閻魔と鵜飼図」のポスカもあったのでゲット。展示はされないみたいですがおもしろい図だったので。
あと。

秋葉原のハニトーカフェが今日から夏目友人帳のコラボメニューを期間限定で出すと聞いて
ランチがてら行ってきました。
あまりこういうイベントに行くことって普段はないんですけど(混んでるから)、
今回はメニューを見て食べたくなったお料理があったんです。

これ~~夏目・田沼・柴田が作ったオムチャーハン!
6期3話のお泊り会 in 田沼家で男子高校生3人が夕ごはんを作るんですが
原作では炒飯だったけどアニメでは柴田が「オムライスなら任せろ」って勝手に卵焼いて乗っけたんだよね(笑)。
おかげで米とふわふわ卵を楽しめました…おいしかったよ、おまえら(何)。
夏目友人帳は劇中にこれっていう食べ物があまり描かれないので
(あえて挙げるとしたら七辻屋のおまんじゅうくらいか)、
コラボカフェとかやってもだいたいイメージフードとかドリンクが多くて
それはそれでオシャレでかわいいのが多くて楽しいんですけど、
あのオムチャーハンはガチで劇中に登場した食べ物だったし
作ってる3人がわちゃわちゃ会話してるシーンもすごくよかったので
それが再現されたのは本当にうれしい。
(で、食べてたら柴田や夏目があれこれ話し始めて以下怖い話展開になるお約束)
夏目は同級生たちといる時が一番遠慮なくしゃべってる気がします…高校生トークいいよね。
柴田また出ないかなァ緑川さんが準レギュラーと思ってるっておっしゃってたし、確か。

ニャンコ先生パンケーキ!チョコで肉球が描いてある(=^ω^=)。
今回のコラボは1メニューにつき缶バッジとポストカードがついてきます。先生かわゆ~。

テーブルにいた黒ニャンコ先生。
他のテーブルにも白ニャンコ先生や黒ニャンコがちょこんと乗っていたり
大きめの椅子には先生クッションがあったり、レジにはエプロンをつけたニャンコ先生がいましたよ~。
お店中に先生がいる光景はちょっと、すごい。
8月いっぱいなのでまた行きたいなあ、藤原家のごはんプレートも食べたいです。
あと、この日は国立公文書館の「ふしぎなふしぎな百人一首」も見てきたのですが
長くなりますので次回記事にてレポしたいと思います。
クリックで拍手お返事。↓
皆様いつもありがとうございます(^-^)/☆
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