鬼神に横道なきものをその2。

歌舞伎座で「芸術祭十月大歌舞伎」から「大江山酒呑童子」を観てきました!
去年に京都の顔見世でやっていて、それは行けなかったのですが
今年は東京でやってくれるということで狂喜乱舞して行きましたよ~。
鬼が出てくる歌舞伎は何度か見た経験がありますが
酒呑童子がピンポイントで出る歌舞伎って1度も見たことないので!楽しみでした。(鬼推し民)

今日はここから。
がんばって早起きしたので無事に幕見席最前列に座れましたよ。
幕が上がる前にイヤホンガイドを聴いたのですが、
この演目は17代目中村勘三郎さんに演じてもらうために萩原雪夫氏が当て書きしたものだそうです。
萩原氏によると17代目に「南座の顔見世で後シテの出る松羽目ものの踊りを考えてくれ」と言われて
パッと思いついた能「大江山」をもとに作ることにしたとか。
この話を17代目のところへ持っていったとき、17代目はちょうど「茨木」の真柴の化粧をしていて
つい刷毛を間違えて顔をまっ白に塗ってしまった…などと微笑ましいエピソードもあるそうです。
ともあれ、そうして完成した大江山酒呑童子は17代目によって見事な工夫がほどこされ
上演後は中村屋のお家芸にもなったそうです。
京都公演に引き続き今回も酒呑童子を演じる中村勘九郎さんは
「いつかこれを歌舞伎座でやりたい」とずっとおっしゃっていたそうで、
18代目勘三郎さんの七回忌追善として今回のラインナップに加わったのでしょうか。
お蔭で関東民のわたしも拝見できました。ありがとうございました。(深々)
お囃子に続いて幕が上がりまして、現れた舞台奥の壁には巨大な松の木の絵がかかり、
雛壇にズラリと長唄囃子連中が並び、
全員が中村屋の家紋をつけた黄色の裃を身につけていて早くも泣ける。。
舞台上には小さな萩小屋がぽつんとあって、「これは童子の住まう黒屋敷です」とイヤホンガイドさん。
想像してくださいということですね。能が元になっているお芝居ですからね。
花道には山伏の格好をした平井保昌が歩いてきて、さらに頼光も歩いてきて
垂らした髪に紫色の着物と、勧進帳の義経のようないでたちです。
「我は一条朝に仕える源朝臣頼光」と、能のお芝居がそうであるように歌舞伎でも名乗りを上げまして
なぜここへ来たのかの理由を語ります。
大江山に住む酒呑童子という鬼の一団が都で暴れまわって女性をさらっていくので
朝廷からの命令を受けて退治しに来ました、
持ってきたこの神便鬼毒酒は鬼が飲めば力を失い、自分たちが飲めば千人力とのこと。
続いて頼光四天王がご登場~!渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武のおなじみの4人。
金時がはーくんでびっくりしたよ!はーくんの赤っ面見たことないから…初めてかな。
あと、山伏風にアレンジしてあるけどみんな能装束を着ています。これも勧進帳みたいですね。
頼光一行が酒呑童子の屋敷にたどり着きますが(花道から舞台に入るとそこはもう大江山という設定)
屋敷はもぬけの殻で童子はおるす。
仕方がないので屋敷の前にみんなで座って待つことにします。
まだかなまだかな…と待っていると、スッポンがするりと開いて(幕見席からなのでよく見える!)
しゅるりと酒呑童子がご登場したのですが、
美 少 年 。 (落ち着け)
童髪に白い顔に紅を濃くひいて、やばいよ美少年の拵えですよ、
着物をぴっちり着ているせいかすごく着痩せして小さく見えました。お兄さんが小さく見えるなんて!
かわいらしい笑顔で片手を額に当てて客席をぐるりと見回すので(夜空の月を眺めている設定)
一瞬、目が合ったとか思っちゃったけどたぶん思い込みです。遠いし。
屋敷の前にいる頼光一行に気づいて君たち誰?と尋ねまして
頼光は山伏の一行ですが道に迷ったので休ませてほしい、お酒もあるし、と答えると
お酒あるの~!??とめっちゃ喜びながら舞台へ足取りも軽くinしていきます。現金だな。。
神便鬼毒酒とも知らずに四天王にすすめられるがままにごくごく飲んじゃう童子、あーあ。
(ここの所作は蓋を杯に、扇をとっくりに見立てています)
すっかりヘベレケでいい気分になった童子に
頼光が「あなたはなぜここに住んでいるのか」と尋ねます。
童子は「空を飛ぶ力が欲しくて比叡の山へ修行に入り、雲の上から都を見下ろした。
遥か鳥取から富士山まで、そして大江山にたどり着いて住んでいる。
おれは酒が好きだから酒呑童子だあ」とかベラベラしゃべってしまって
プライバシーも何もありはしない^^;
お酒をふるまったのだから舞を所望するという頼光のお願いもきいてくれて
表が昼の松、裏が夜の三日月という洒落た柄の扇を手にひとさし舞ってくれますが
ここからがお兄さんの真骨頂。
盃持ったまま千鳥足でふらつきながらも長唄の三味線に合わせて軽快に、リズミカルに、
しかも踊りとしてはおもしろいってすごい…!
足をタタンタンて鳴らすときなんか勘三郎さんの高坏を思い出したよ。
途中で片身を脱いで童子格子の紫を見せたり(後見は中村小三郎さん)
見た目も飽きさせない工夫が感じられます。
童子の後は頼光が、ここへ来た理由を語りがてらひとさし舞いまして
役行者が鬼を改心させた話を語ってくれたりするけど、
童子は四天王にお酒つがせてて全然聞いてないの笑った(笑)。
やがて童子は酔っぱらって萩小屋に入っていってしまい、頼光一行が残されると
そこへ間狂言風の濯ぎ女たちが3人ご登場。
みんな酒呑童子にさらわれてきた人たちです。
姫君として乳母や使用人にかしずかれる人生を送ってきたわたしが濯ぎ女だなんて、とか
仕事を持っていた女性たちも都に帰りたいと訴えます。
(どうでもいいけど2人は江戸時代の風俗だけどひとりだけ平安時代の拵えだった)
女性たちの話を聞いた一行、鬼よますますけしからん、退治してくれるということで
全員、お着替えのために花道を去っていきました。
ここで雛壇の長唄囃子から座ったままで大薩摩の演奏が!2人三味線の唐草は珍しいそうです。
しばらくして花道に戻ってきた頼光一行、
お着替えして袖をたくしあげ刀を持っています。
童子が寝てしまった小屋にじり、じりと近づきます。起きろー!童子起きろー!!
そこへ小屋の簾がスルスル開いていって、中には赤い盃で顔を隠した人物が身を起こしていて
盃をゆっくり下ろすと赤鬼に変化した酒呑童子でした!
うおおお起きてた!黒髪ざんばら!角2本ある!!つよい!!うおおおおおおおお+゚+。:.゚(*゚Д゚*).:。+゚ +゚
童姿は小さくて本当に少年みたいに見えたのに本性を現したら大きくなったというか
いつものお兄さんの大きさ(なんだそれは)でした!
狩野元信の絵巻でも酒呑童子は童姿だと人間サイズで鬼の本性出すと巨人化するので
それを3次元でやってくれたお兄さんに大感謝…役者さんってすごい…変幻自在ッ…!
戦う前に名乗る習慣のある平安時代ですので、頼光さんたちは各自名前を名乗ってから
酒呑童子に斬りかかってきます。
おいおいおいおい6人でやるのか、相手は1人ですぞ!
茨木童子ら仲間の鬼たちがいるはずですが屋敷から出てくる気配もないし…
ハッΣ(゚Д゚;)まさかみんなもう倒されちゃったとかいう裏設定あります…?泣きたい。
バタバタ斬りかかってくる頼光たちを眼光でひるませ杖を振りながら圧倒する童子、
最初は戦いながらお酒飲んでたりして余裕があったけど
それ神便鬼毒酒なので結局、力がどんどん抜けてしまってジリジリ追い詰められていって
花道で一度膝をつきましたがそのまま足でダアン!と鳴らしながら頼光を舞台に押し戻したりして
精一杯抵抗したんですけど、
最後に頼光の刀(鬼切かな?)を額に受けてその場にバッタリと仏倒れてしまった。
しかも最後に四天王全員でグサーとかやるんですよ…えええもうしんでるじゃん…なぜそこまでするの…。
で、これが能ならここで演目が終わって頼光たちが去って行くでしょうけど、これは歌舞伎なので
なんと倒された童子が起きあがって扇を広げて
上手にいる頼光に「大」、下手にいる保昌に「入」の文字を大きく書いて
後見が出した3段に昇り目をカッと見開き、盃のお酒を一気飲みして幕切れでした!
なんというサービスショット、ありがとうございました!
見終えて席から立ち上がったら体中が凝り固まっていたのがわかりました…
松羽目ものは見てるこっちも肩に力が入りますなァ!
あとたぶん怒りのあまり拳握りしめて見てたせいかもしれない、頼光おまえら!!
6人でよってたかって1人の鬼をフルボッコにしやがってそれが武士のやることかああ(やることです)
後味はよくないけど美少年の酒呑童子とか舞う酒呑童子とか戦う酒呑童子とか大入り書く酒呑童子とか
いっぱい見られたので満足した…とても満足した……(*´Д`*)。
お兄さんを美少年と思ったのは初めてでしたが本当に美少年でした。ありがとうございました。
あとやっぱり題材的に京都で見たかったなあ、機会があれば京都で観劇したいです。

木挽町広場の菓匠花見にて。あけびと秋の路。
紅葉のグラデーションがすばらしいしあけびの作り方が最高にお見事だと思います!
味ももちろんおいしかったよ~ŧ‹”ŧ‹”( ‘ч’ )ŧ‹”ŧ‹”
…で。
最近本当にシンカリオンシンカリオンうるさくて申し訳ないので
今朝の39話感想は下に仕舞っています。↓相変わらずテンションおかしいですがご覧になりたい方はどうぞ。
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