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水辺の画家。

2019.06.25 23:57|文化・美術
Daubigny1.jpg
損保ジャパン日本興亜美術館のシャルル=フランソワ・ドービニー展に行ってきました。
バルビゾン派から印象派の時代を生きた画家ドービニーの回顧展です。
ドービニーについてはまったく詳しくないし、
フォロワーさんに教えてもらうまでは展覧会が開催されていることも知らなかったのですが
「緑がすごい」と絶賛する声と画家を紹介するアニメーションがとてもかわいくて(しかも内容しっかりしてる)
おもしろそうだから行ってみよう~となったのでした。

Daubigny2.jpg
フォトスポットとして大きく引き伸ばされていた絵。
「ヴァルモンドワの森の中(ル・ソスロン)」(1877年)カミーユ・ピサロ美術館蔵
展示室に本物が展示されていました。

Daubigny3.jpg
女性たちのアップ。近づいて見るとタッチがざらざらっとしています。
近くではよくわからなくても遠くから見ると何が描いてあるかわかるっていうのが
彼の後にやって来る印象派の画家たちに通じるような気もする。

Daubigny4.jpg
入口にいたドービニーおじさんとカエルちゃん。
アニメーション作家の城井文さんがデザインされたキュートな2人です。

ドービニーは19世紀フランスのど真ん中を生きた人で、風景画家だった父親の影響で自分も絵を描き始め、
最初はイタリアやベルギーなどを旅行して風景を描きサロンに出品などしていたようですが
「印象を荒描きした未完成」と酷評され落選してからはサロンに出すことはなくなり、
バルビゾン派の画家たちと交流したり、各地を旅しながら絵を描いていたようです。
船による川下りの旅をよくしていたので風景の絵を多く残していまして、今回展示されている作品もですが
とにかくひたすら「水」「木」「空」「ときどき街」という感じの絵が多い。
特に水の表現がすばらしくて、印象派ほど明るい色ではないんですけど
展示されていた絵はどれもほぼ、画面の手前に池や川や沼や湖をメインに描かれていて
展示室の真ん中に立つと湖に囲まれているような気持ちになりました。
まるで湿地帯やオアシスにいるかのような…ああいう感覚は初めてでした。
色んな方面から「すばらしい」と言われている緑ですが、チラシやポスターを見ても素敵だなと思ってましたが
実際に本物を見たらチラシよりもずっと色彩に溢れていました。本当に綺麗だった。
川辺や水辺の濃い緑が水分をふくんでいるのがわかるし、
それが水に映って揺らめいているのがまた美しいのです。
自宅兼アトリエを建てたオワーズの町の河畔の絵をよく描いていたようで
(自宅にベルト・モリゾやセザンヌを招いて一緒に食事をしたこともあるそうです)、
「オワーズ」の名前のつくタイトルの絵がいくつかあって
河畔の絵が多かったですが畑や湿地なども訪れて描いていたみたい。
(ちなみにオワーズはゴッホやガシェ博士も滞在していた街です)
人々の生活感あふれる描写も多く、洗濯したり釣りをしたり散歩したり景色を眺めたりする人たちが描かれていて
どの人もみんな表情がはっきりせずぼやかされている。
「風景の中にぽつぽつと人々がいる」みたいな作品が多いからかな…歌川広重みたい。
(ちなみにこの傾向は画家として出発し始めた頃からそうだったようで、
若い頃に描いている「聖ヒエロニムス」も人物画ではなく歴史的風景画であって
十字架に聖書を広げたヒエロニムスがぽつんと描かれていて、どう見てもメインは雄大な渓谷の景色だった)

1857年にアトリエ船ボッタン号を入手してからは
セーヌ川やオワーズ川など各地の川へ出かけて、川下りをしながら絵を描く生活をしていたようです。
ボッタン号を大きく描いた絵がありましたが、大きなマストが2本あり、帆はとてもカラフルで
寝泊まりできる小屋を乗せた小型船でとても牧歌的。
こんな船でのんびり川下りをしながら好きな絵を描けたら最高ですね!
(ドービニーはこの船で英仏海峡まで行ったこともあるようです)
夏はヴィレールヴィル、冬はパリ(モネやピサロと交流している)、それ以外の季節は船の旅という
なんという理想的な生活+゚+。:.゚(*゚Д゚*).:。+゚ +゚
道理で川や池の絵が多いわけだ…そして水の表現が突出して美しいわけですな。
版画集『船の旅』はそんなボッタン号での旅がどんなものだったかをエッチングでまとめたもので
船を川につけるところ、出発前の食事、綱を引っ張る見習水夫、船上のランチ、
夜の航行や宿屋さがし、蒸気船とすれ違う、釣りをする見習水夫、干地に跳ねる魚たちなどなど
船の中や付近で見かけた景色を片っ端からスケッチしていて
しかも風景ではなく人々がメインなので表情とかしぐさとかすごく細かく描いてあります。
風景メインに小さい人ばっかり描いてる人じゃなかったんだな…。
(余談ですがこの『船の旅』、版画家オーギュスト・ドゥラートルが手掛けているのですが
再版防止のため所蔵している美術館が全点は貸し出さないとしているそうです。
今回は15点展示されていましたが、これで全部ではないんだな…他のも見てみたいです)

晩年の作品は水の描写にどんどん力が入っているように感じました。
「ブドウの収穫」や「ケリティ村の入口」などは畑に赤や黄色の花が咲き、収穫する人々も建物に当たる光も明るくて
さっきまでの心地よいジメジメしっとり感から急に太陽の下へ出たような印象。
「山間風景」は川の急流の絵で、これまでゆったり流れて空や樹などを映していた川の水が
真っ白なしぶきを上げて流れていて水音まで聞こえてきそうでした。
どうしたどうした?って思ったんですけど、この絵の発表が1873年で
翌年に第1回印象派展が開かれることを思い出してちょっと腑に落ちた。
これからは影の色に黒を使うことなく、その影の色で塗る画風が好まれるようになるんですな…。
ただまあ、「オワーズ川のほとりの村」とか「川辺の風景」などを見ると
相変わらず濃い緑や黒が使われているので、明るい絵ばかり描いていたわけではなかったこともわかります。
そんなドービニー、晩年もボッタン号で船旅を続けていたようですが
1877年のセーヌ川ルーアンまでの旅が最後の航海になっています。
翌年のパリ万博には9点が出品され、遺作671点は3日で完売したそうです。
ドービニーはその後に活躍する印象派の画家たちにも好まれたようで
モネやルノワールがそれぞれ描いた「ラ・グルヌイエール」(セーヌ川の水浴場を描いた絵)は
ドービニーへのオマージュだそうですし、
ドービニーが亡くなった2年後の1890年にはゴッホがドービニーの家を訪れて庭を絵に描いているそうです。
過去の先人をリスペクトしながら新しい人たちが文化を奏でてゆくのだなあ…いいなあ。

家族や交友関係の紹介もあって、特にカミーユ・コローと仲が良く、
一緒に絵を描いたりアトリエに招いて交流していたようです。
ドービニーのアトリエ兼自宅であるメゾン・アトリエ・ド・ドービニーには
コローが部屋の壁に描いた絵が残っているそうです。
パネル展示されていたアトリエの写真を見ると、青い空の下に大きな木があり子どもたちが過ごしているというものらしい。
ドービニーも娘セシルの部屋の壁に『ラ・フォンテーヌ』を模した絵を描いたりしているそうです。
セシル・ドービニーは静物画家で、花や果物をよく描いたそうな。
ドービニーがセシルを描いた絵が展示されていましたが、
青い空の下に大きな木があって、それより小さな果樹の木があり白い花が満開になっていて
さらにその果樹の木の下にセシルがいるという絵なので人物描写がとても小さいです。
表情ははっきり描かれておらず、わかるのはセシルが紅い服を着ていることだけ。
また、息子のカール・ドービニーも風景画家で
父親と一緒に船に乗って旅をしながら絵を描くこともあったようです。
『船の旅』に描かれている見習水夫はカールがモデルという説があるそうです。
そんなカールの絵も展示されていて、「川岸」も「オワーズ河畔の釣り人」も水と木がメインで遠くに青空と街で
お父さんの絵にそっくりでした。

特別展の最後に常設スペースもありました。
ゴーギャンの「アリスカンの並木路、アルル」は道に沿って植わっている木々が紅葉していて
葉っぱがたくさん道に散って赤や黄色に染まっていて綺麗だったし、
セザンヌの「リンゴとナプキン」も赤や緑や黄など色とりどりのリンゴが綺麗でした。
グランマ・モーゼスは初めて見る画家で、絵本のような素朴なタッチと彩色がかわいらしく、
「古い格子の家」の市松模様の壁がとてもモダンでおしゃれでした。
東郷青児は何度見ても金属のようなつるりとしたタッチがすごくて…あれどうやって塗ってるのかなあ…。
PCを使わずCG描けてるみたいな感じがします。デパートとかに飾られているとすぐ見ちゃう。
goghhima.jpg
ゴッホのひまわりも初めて見まして(写真はレプリカ)、
あ~これが映画業火の向日葵で大変な目に遭った絵かと(笑)。
ゴッホといえばひまわり、というくらいですから見たとき自分がどんな感想を持つかも興味あったのですが
ええと、ちょっと自分でもびっくりしたんですけど「わあすごい」とはならなかったですね…。
筆のタッチは荒々しく残っているけど、今まで見てきたどのゴッホの絵よりも静かな雰囲気の絵で
わたしの記憶にあるゴッホの絵のようなほとばしるようなエネルギーは感じず、「静物画」という印象でした。
厚塗りで立体的で、ものすごい大真面目な静物画というか…。
あれかな、画集とかテレビとかで見慣れてしまってあまり驚かなかったのかな。
それとも、わたしゴッホの絵は結構見てるほうですけど、ひまわりはそんなに数を見てないので
よくわかってないだけかな…ゴッホはひまわり描く時いつもこんな感じなのかしら。

もしかしたら別の感想をもつかもしれないので、機会があれば時間を置いて改めて見に行きたいです。


tocho1.jpg
美術館の自動ドアを出たらまっすぐ前に都庁!えっこっから見えるんや!!
見えてしまったからには仕方ないので(なにが)建物めざして近くまで行ってみますよ。

というわけで、続きはシンカリオン75話感想の中です。↓

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ジャンル:学問・文化・芸術

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Author:ゆさ
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歴史やアートも溺愛中
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