ぼくを読んでくれる?
北川チハル『だれもしらない図書館のひみつ』(汐文社)を読みました。
夜長森図書館という架空の学校図書館を舞台に、そこで働く司書さんと
夜になると動き出す本たちと、本が好きなとある読者たちのお話です。
職業柄、図書館とか博物館がテーマになっている物語は見つけるとチェックするので
この本も例外ではなかったのですが、
図書館から本が消えていく展開が怖すぎて途中で読めなくなってしまって
1週間くらい伏せて置いていまして、
でもやっぱり続きが気になったので思い切って再度ページを開いたら
そこからワーーーーーッと幸せな世界になってあっという間に読んでしまった。
わたしが読めなくなった辺りが怖さのピークだったみたいです^^;
いや棚から本がなくなるっておっかないんですって!図書館員にとってはホラーでしかありません。
蔵書検索で「貸出可」となっている図書が、請求記号に沿って並べているはずの図書が
該当の棚に行っても置かれてない!
こちらは仕事にならないし、利用者さんは読みたい本が読めないしでダブルパンチなわけです。
そういうときはだいたい、他の人が閲覧席で読んでいるとか貸出手続前に持ち歩いているとか
「新着図書」や「きょう返却された本」の棚に置かれているとか、破損して修理中のため事務室にあるとか
理由は様々考えられるのですけども、
一番多いのはやっぱり請求記号とは別の棚に置かれてしまっている場合かな…。
読んだ人が、戻す場所がわからなくてヒョイっと置いてしまうとか
職員がうっかり(本当にうっかり!)返却ミスをしてしまうとか。。
職員のミスはちゃんと仕事しろ!って感じですけど
もし利用者さんで、読んだ本をどこに戻したらいいかわからなくなってしまったら職員に声をかけてほしい…
別に怒らないから…職員が責任をもって元の場所に戻しますから…!
とまあ、そういうわけで年1回の蔵書点検がとても大切になってくるわけです…。
図書館によく行かれる方は図書館が年に1度、1週間ほどの休館日を設けているのをご存知だと思いますが
あれは図書館にある資料を全部チェックするための作業を行っているからだったりします。
(なので、建物はお休みだけど職員は出勤しているんですよ~)
どの本が図書館にあって、どの本が貸出中で、きちんと請求記号順に並んでいるかを
1冊1冊すべて確認するわけです。
最近はバーコード化してだいぶ作業も楽になりましたが、ベテランの先輩のお話を聞くと
貸出カード時代は本当に大変だったといいますから…技術は進歩しています。
ええと、本の話に戻ろうね。。
夜長森図書館にはマザー・ブックというオルゴール人形が置かれているのですが
夜になり館内に誰もいなくなると、そのマザー・ブックがひとりでに鳴り出して
図書館にいる本という本に魔法をかけて動けるようにしてくれます。
人間が見ていないところでおもちゃや博物史料が動く、という映画をいくつか知っていますが
本が動き出すというのもワクワクします☆
中でも絵本コーナーの本たちは賑やかで、自分は子どもたちに人気があるとか
誰それさんの家にお泊りにいって帰ってきたばかりだとかおしゃべりしていて楽しそう。
そんな中、あまり子どもたちに読まれない『ひかげのきりかぶ』という絵本がいまして、
こちらがこの物語の主人公くんです。
ひかげには文章がなく、絵だけの絵本なので
手に取ってもらっても「つまらない」と言われて棚に戻されてしまうことが多かったりして、
他の絵本がお泊りに行って帰ってきたというのを聞いて羨ましく思ったり
今日こそ誰かが読んでくれるかなあ…と、その時間を心待ちにしていたり
「地味」などと言われて心がどしゃぶりになってしまう毎日を過ごしています。
そもそも自分がどんなお話か、ひかげは知らないらしいのでした。
(この物語の本たちは、誰かに読んでもらって初めて、自分がどんなお話か知るという設定です)
そんなひかげが、あるときから図書館に起こった事件の真っただ中に放り込まれます。
絵本コーナーから絵本が1冊、2冊…と消え始めるのです。(こわい)
司書さんが探しても見つからず、子どもたちは「読みたい本が今日もないよ~」と残念そうで
絵本たちも心配になって、図書館から絵本を連れていく「絵本さらい」の仕業ではないかと騒ぎ始めます。
しかも最初にいなくなった絵本『ヒマワリとはつこい』のバーコードが館内から見つかって
「人気者をねたんだのでは」とひかげが疑われる事態になってしまい、
ひかげはぶるぶる震えるばかりでしたが
『ヒーローマン』の絵本が庇ってくれて事なきを得ます。
ヒーローは子どもたちに大人気の絵本で、ひかげのことも知らずに「新入り?」と聞いてしまうような本ですが
ひかげがヒーローよりずっと前から図書館にいることを知ると「すまなかった」と謝って
握手をしてくれる素敵な本です☆
「あの握手は、ぼくをハッピーにしてくれたんだ」というのが、ひかげを庇った理由でした。かっこいー!
そんなヒーローマンもある日行方不明になってしまいます。。(こわい)
絵本たちは夜に館内のパトロールを始めますが、『火の玉オニ』と一緒に行動していたひかげは
お手洗いで『火の玉オニ』が目の前で絵本さらいに攫われるのを見てしまって
気絶してしまったりするのですけど、
絵本たちや子どもたちと過ごした時間を思い出して、その時間を守りたい、取り戻したいと勇気をだして
見知らぬ本にみんなの目覚めタイムをもらって絵本さらいに攫ってもらうことにするくだりが
もはや怖さのピーク。。
この辺りで読めなくなっちゃったんですよね…ひかげが健気すぎて、絵本さらいが怖すぎて。
ひかげの冒険が始まります。
お手洗いに隠れて、ワンピースにバッグを持った姿の絵本さらいがやってきたときに
そのバッグに飛び込んでみんなを探しにゆきます。すごいな…!
図書館の外に出たのが感覚でわかったのもつかの間、ヒュルヒュルっと大きな風にさらわれて
図書館の屋上に連れて行かれて出会ったのが森の木っこたちで、
彼らが人間に化けて絵本を攫ってきていたことを知ります。
「わたしたち、本、すき」「もっと、近くで、みたい」「もって、かえりたい」ということで
バーコードを切り取って絵本を図書館から持ち出していたらしい。
木っこたち、屋上に落ち葉を敷いて小枝でテーブルを作って図書館みたいなレイアウトを作っているのが
とても微笑ましくて^^
そこでひかげは、攫われた絵本たちが丁寧に飾ってあるのを見つけます。
その理由が「人間は、よごす」「人間は、やぶる」「わたしたち、やさしくする」というもので
色んな意味でグサッときてしまった。。
(この物語には子どもたちが絵本を楽しんで読む描写のほかに
興奮のあまり床に落としたり踏んだりする様子もごまかさずに書かれていまして
この作者はよくご存知だ…!と思ったのでした。
著者略歴を拝読したら元保育士さんということだったので、そういう場面をご覧になっていたのかな)
ひかげが読み聞かせをすると木っこたちはキャッキャと喜んで拍手をしてくれたので
思い切って「ぼくを読んでくれる?ぼく、字がないんだけど」って言ったときのドキドキが
ものすごく伝わってきて泣きそうになりました。
こんな切ない願い事ってありますか??ないよ(T_T)。
今までずっと地味だとか言われてきて、拒否されるかもしれないって思いながらお願いを言うのって
ものすごく勇気の要ることだと思うので
木っこたちが「読みたい!」って飛び跳ねてくれたときもやっぱり涙が出そうになったし
ひかげがどんな絵本か気づいてくれて「すき」「こんな本、はじめて」って言ってくれたの、もう号泣。。
よかったなーひかげーー!!。゚(゚´ω`゚)゚。
木っこたちがまた図書館から絵本を連れてくると言い出したときに
「本当に絵本が好きなら攫わないで」って胸を痛めながら懸命に対話を試みるところも
ひかげの話を聞いてわかってくれて一緒に図書館へ帰る協力をしてくれる木っこたちもみんな素敵だ!
ひかげほんとに…がんばったな…!
木っこたちが残した手紙で、屋上で司書さんの読み聞かせが始まることになるラストシーンは本当に幸せ。
(お互いが見えない者同士が手紙を介して繋がるっていう展開にめちゃくちゃ弱いのです)
見えない読者がいるロマン…!
そこでやっと、ひかげが司書さんにページをめくってもらえるのですけど
同じ絵ばかりでつまんない、という子どもたちの前で司書さんが何度も繰り返してページをめくっていると
ゴウくんという子が「わかった!」と気づいてくれるシーンも本当に幸せ。
ゴウくん本当にありがとうな~。
あと、読み終えたときにごくごく短い感想をTwitterに呟いたのですが
作者の北川さんから直々にメッセージをいただいてしまいました!→こちら
さらに主人公の『ひかげのきりかぶ』からもいただいてしまいました→こちら
SNSをやっていらっしゃる作家さんはたくさんいるので
今までにもRTいただいたり直接メッセージくさだったり、わたしからお伝えしたりすることはありましたけど
作家さんとしてではなく主人公さんとして送ってくださった方は初めてで
素敵だー!!って動揺してしまって
かなり大慌てな返信を送ってしまいました…北川さんすみませんその節は…。
誰とでも気軽にコミュニケーション取れるのがSNSのいいところですな。
夜長森図書館という架空の学校図書館を舞台に、そこで働く司書さんと
夜になると動き出す本たちと、本が好きなとある読者たちのお話です。
職業柄、図書館とか博物館がテーマになっている物語は見つけるとチェックするので
この本も例外ではなかったのですが、
図書館から本が消えていく展開が怖すぎて途中で読めなくなってしまって
1週間くらい伏せて置いていまして、
でもやっぱり続きが気になったので思い切って再度ページを開いたら
そこからワーーーーーッと幸せな世界になってあっという間に読んでしまった。
わたしが読めなくなった辺りが怖さのピークだったみたいです^^;
いや棚から本がなくなるっておっかないんですって!図書館員にとってはホラーでしかありません。
蔵書検索で「貸出可」となっている図書が、請求記号に沿って並べているはずの図書が
該当の棚に行っても置かれてない!
こちらは仕事にならないし、利用者さんは読みたい本が読めないしでダブルパンチなわけです。
そういうときはだいたい、他の人が閲覧席で読んでいるとか貸出手続前に持ち歩いているとか
「新着図書」や「きょう返却された本」の棚に置かれているとか、破損して修理中のため事務室にあるとか
理由は様々考えられるのですけども、
一番多いのはやっぱり請求記号とは別の棚に置かれてしまっている場合かな…。
読んだ人が、戻す場所がわからなくてヒョイっと置いてしまうとか
職員がうっかり(本当にうっかり!)返却ミスをしてしまうとか。。
職員のミスはちゃんと仕事しろ!って感じですけど
もし利用者さんで、読んだ本をどこに戻したらいいかわからなくなってしまったら職員に声をかけてほしい…
別に怒らないから…職員が責任をもって元の場所に戻しますから…!
とまあ、そういうわけで年1回の蔵書点検がとても大切になってくるわけです…。
図書館によく行かれる方は図書館が年に1度、1週間ほどの休館日を設けているのをご存知だと思いますが
あれは図書館にある資料を全部チェックするための作業を行っているからだったりします。
(なので、建物はお休みだけど職員は出勤しているんですよ~)
どの本が図書館にあって、どの本が貸出中で、きちんと請求記号順に並んでいるかを
1冊1冊すべて確認するわけです。
最近はバーコード化してだいぶ作業も楽になりましたが、ベテランの先輩のお話を聞くと
貸出カード時代は本当に大変だったといいますから…技術は進歩しています。
ええと、本の話に戻ろうね。。
夜長森図書館にはマザー・ブックというオルゴール人形が置かれているのですが
夜になり館内に誰もいなくなると、そのマザー・ブックがひとりでに鳴り出して
図書館にいる本という本に魔法をかけて動けるようにしてくれます。
人間が見ていないところでおもちゃや博物史料が動く、という映画をいくつか知っていますが
本が動き出すというのもワクワクします☆
中でも絵本コーナーの本たちは賑やかで、自分は子どもたちに人気があるとか
誰それさんの家にお泊りにいって帰ってきたばかりだとかおしゃべりしていて楽しそう。
そんな中、あまり子どもたちに読まれない『ひかげのきりかぶ』という絵本がいまして、
こちらがこの物語の主人公くんです。
ひかげには文章がなく、絵だけの絵本なので
手に取ってもらっても「つまらない」と言われて棚に戻されてしまうことが多かったりして、
他の絵本がお泊りに行って帰ってきたというのを聞いて羨ましく思ったり
今日こそ誰かが読んでくれるかなあ…と、その時間を心待ちにしていたり
「地味」などと言われて心がどしゃぶりになってしまう毎日を過ごしています。
そもそも自分がどんなお話か、ひかげは知らないらしいのでした。
(この物語の本たちは、誰かに読んでもらって初めて、自分がどんなお話か知るという設定です)
そんなひかげが、あるときから図書館に起こった事件の真っただ中に放り込まれます。
絵本コーナーから絵本が1冊、2冊…と消え始めるのです。(こわい)
司書さんが探しても見つからず、子どもたちは「読みたい本が今日もないよ~」と残念そうで
絵本たちも心配になって、図書館から絵本を連れていく「絵本さらい」の仕業ではないかと騒ぎ始めます。
しかも最初にいなくなった絵本『ヒマワリとはつこい』のバーコードが館内から見つかって
「人気者をねたんだのでは」とひかげが疑われる事態になってしまい、
ひかげはぶるぶる震えるばかりでしたが
『ヒーローマン』の絵本が庇ってくれて事なきを得ます。
ヒーローは子どもたちに大人気の絵本で、ひかげのことも知らずに「新入り?」と聞いてしまうような本ですが
ひかげがヒーローよりずっと前から図書館にいることを知ると「すまなかった」と謝って
握手をしてくれる素敵な本です☆
「あの握手は、ぼくをハッピーにしてくれたんだ」というのが、ひかげを庇った理由でした。かっこいー!
そんなヒーローマンもある日行方不明になってしまいます。。(こわい)
絵本たちは夜に館内のパトロールを始めますが、『火の玉オニ』と一緒に行動していたひかげは
お手洗いで『火の玉オニ』が目の前で絵本さらいに攫われるのを見てしまって
気絶してしまったりするのですけど、
絵本たちや子どもたちと過ごした時間を思い出して、その時間を守りたい、取り戻したいと勇気をだして
見知らぬ本にみんなの目覚めタイムをもらって絵本さらいに攫ってもらうことにするくだりが
もはや怖さのピーク。。
この辺りで読めなくなっちゃったんですよね…ひかげが健気すぎて、絵本さらいが怖すぎて。
ひかげの冒険が始まります。
お手洗いに隠れて、ワンピースにバッグを持った姿の絵本さらいがやってきたときに
そのバッグに飛び込んでみんなを探しにゆきます。すごいな…!
図書館の外に出たのが感覚でわかったのもつかの間、ヒュルヒュルっと大きな風にさらわれて
図書館の屋上に連れて行かれて出会ったのが森の木っこたちで、
彼らが人間に化けて絵本を攫ってきていたことを知ります。
「わたしたち、本、すき」「もっと、近くで、みたい」「もって、かえりたい」ということで
バーコードを切り取って絵本を図書館から持ち出していたらしい。
木っこたち、屋上に落ち葉を敷いて小枝でテーブルを作って図書館みたいなレイアウトを作っているのが
とても微笑ましくて^^
そこでひかげは、攫われた絵本たちが丁寧に飾ってあるのを見つけます。
その理由が「人間は、よごす」「人間は、やぶる」「わたしたち、やさしくする」というもので
色んな意味でグサッときてしまった。。
(この物語には子どもたちが絵本を楽しんで読む描写のほかに
興奮のあまり床に落としたり踏んだりする様子もごまかさずに書かれていまして
この作者はよくご存知だ…!と思ったのでした。
著者略歴を拝読したら元保育士さんということだったので、そういう場面をご覧になっていたのかな)
ひかげが読み聞かせをすると木っこたちはキャッキャと喜んで拍手をしてくれたので
思い切って「ぼくを読んでくれる?ぼく、字がないんだけど」って言ったときのドキドキが
ものすごく伝わってきて泣きそうになりました。
こんな切ない願い事ってありますか??ないよ(T_T)。
今までずっと地味だとか言われてきて、拒否されるかもしれないって思いながらお願いを言うのって
ものすごく勇気の要ることだと思うので
木っこたちが「読みたい!」って飛び跳ねてくれたときもやっぱり涙が出そうになったし
ひかげがどんな絵本か気づいてくれて「すき」「こんな本、はじめて」って言ってくれたの、もう号泣。。
よかったなーひかげーー!!。゚(゚´ω`゚)゚。
木っこたちがまた図書館から絵本を連れてくると言い出したときに
「本当に絵本が好きなら攫わないで」って胸を痛めながら懸命に対話を試みるところも
ひかげの話を聞いてわかってくれて一緒に図書館へ帰る協力をしてくれる木っこたちもみんな素敵だ!
ひかげほんとに…がんばったな…!
木っこたちが残した手紙で、屋上で司書さんの読み聞かせが始まることになるラストシーンは本当に幸せ。
(お互いが見えない者同士が手紙を介して繋がるっていう展開にめちゃくちゃ弱いのです)
見えない読者がいるロマン…!
そこでやっと、ひかげが司書さんにページをめくってもらえるのですけど
同じ絵ばかりでつまんない、という子どもたちの前で司書さんが何度も繰り返してページをめくっていると
ゴウくんという子が「わかった!」と気づいてくれるシーンも本当に幸せ。
ゴウくん本当にありがとうな~。
あと、読み終えたときにごくごく短い感想をTwitterに呟いたのですが
作者の北川さんから直々にメッセージをいただいてしまいました!→こちら
さらに主人公の『ひかげのきりかぶ』からもいただいてしまいました→こちら
SNSをやっていらっしゃる作家さんはたくさんいるので
今までにもRTいただいたり直接メッセージくさだったり、わたしからお伝えしたりすることはありましたけど
作家さんとしてではなく主人公さんとして送ってくださった方は初めてで
素敵だー!!って動揺してしまって
かなり大慌てな返信を送ってしまいました…北川さんすみませんその節は…。
誰とでも気軽にコミュニケーション取れるのがSNSのいいところですな。
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