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前回記事の続き。東博の後に出光美術館の「開館50周年記念 美の祝典III」に行ってきました。
国宝「伴大納言絵巻」の展示がそれぞれI期:上巻、II期:中巻、III期:下巻で
4月にI期を見てII期は行けなかったけど、今回何とか絵巻のラストは見られましたぞ!
火事シーンのある上巻の迫力には欠けるけど、下巻も人がたくさん出てきて相変わらずの賑わいで
色んなことを想像しながら鑑賞しました。
これを描いた絵師は本当に人間をよく観察している…骨格レベルで。

下巻は「伴善男が応天門に放火して逃げたのを見た」と証言した舎人夫婦が
朝廷に連行される場面から始まります。
尋問する2人の判官はおっかない顔で仕事してて
彼らの前で証言中の舎人は背中を丸めていて萎縮しているのが伝わってきます。
善男の逮捕状が出されて検非違使たちがぞろぞろと伴邸に向かうシーン、
隊長の後ろに30人ほどの武装した人々が続いて、馬に乗っている人もいて
正直、こんなに人数要るのかなあと思ってしまうくらい物々しい雰囲気。
先頭は緊張感が漂っていて声をかけあったりしてるみたいだけど
後ろの方の人はよそ見したりしてて雑談が聞こえてきそうなユルさで
まじめに仕事しろよって突っ込みそうになった^^;

伴邸の門前で検非違使たちを出迎えた家司は気が弱そうなおじいちゃんで
裸足なのはなぜだろう…びっくりして何か履くのも忘れちゃったんだろうか。
善男の逮捕に大泣きする邸宅の女性たちの図は悲しさ爆発、
うつむいて顔を隠して泣くのが絵巻ものに描かれる女性像のパターンですが
上を向いて大泣きする人や床に突っ伏している人、寝所にこもって泣いている人(善男の妻)、
呆然となっちゃって膝を抱えたまま溢れ出る涙を拭おうともしない人など、とにかく生々しくて
泣き声(それも大声)が聞こえてきそうだった。
朝ごはんが部屋の中央に用意されてるけど誰も箸つけてなさそう、というかそれどころじゃなさそう。
すさまじい悲しみの描写でした。
絵巻には善男を逮捕する描写はないのですが
女性たちの泣き顔を見てすでに検非違使たちは仕事を済ませたのだなあとわかるような仕掛けは
現代のドラマにも時々使われますね。
絵巻のラストで検非違使たちに警護されながら進んでいく八葉車は
例によってぎぃ、ぎぃと音が聞こえてきそうなリアリティ。
善男本人は車から体半分が見えているだけで顔は描かれていません。
そしてここでも検非違使さんたちはマイペースですね…先頭は任務完了して胸張ってますが
後ろの人たちは雑談してそう(笑)仕事が終わった安堵感もあるのかな。

前回の鑑賞時と同様、有難いことにそんなに混んでなくてゆっくり見られました。
事件発生から犯人逮捕までの人間模様とドラマはたいへん見ごたえがあって
出光美術館の機会提供に感謝します。
また10年後に見られるかどうかわからないし…。
そういえば善男が連行されたのは8月3日で、伊豆へ流罪にされたのが9月22日以降ですから
秋の終わりだったわけで当時は寒くなり始める季節ですな。
そう考えるとラストシーンは木枯らしが吹いているようにも見える。

あと、ふと思い出したので余談になりますけれども。
小野篁がいっとき、善男と職場が同じで上司と部下だったことがあるんですけど
善愷訴訟事件(法隆寺の僧善愷が壇越を告訴して弁官5人が処罰された事件)のとき
善男が明法博士たちとけんけんがくがくに議論してて
(篁も助言をしたけど後年になって「あれは間違いでした」と言ってる)、
あの事件も伴大納言絵巻を制作するうえでヒントになってるような気がする。
また、小野篁の書道の弟子だった紀夏井という人が応天門の変のとばっちりを受けて
土佐へ流罪になりまして(異母弟が善男の共謀者として捕まったらしい)現地で客死していますが
彼は身長が6尺3寸(約190㎝)の巨漢だったことも付け加えておきます。
6尺2寸(約188㎝)の師匠と6尺3寸の弟子…平安時代とは。。


他にもすばらしい作品がたくさんあったよ~。
喜多川歌麿「更衣美人図」は夏の盛りに着物をゆったりと羽織る女性の図で
唇にはすっかり有名になった笹色紅がついています。
葛飾北斎「春秋二美人図」は2対の掛軸で
菜の花と桜、女郎花と紅葉をバックにそれぞれ晴れ着姿の女性が立ってます。
いつも思うけど北斎せんせいの描くお着物は袖がきっちり真四角というか
歌麿や春信の着物みたいにふわっとしてなくて、分厚いしっかりした生地っぽい感じがする…。
歌川豊広「真崎稲荷参詣図」は石浜神社に参詣するために隅田川で涼む女性たち、
鳥文斎栄之「舟遊図」は満月の柳橋界隈の屋形船で遊女たちが楽しむ様子をそれぞれ描いていました。

江戸名所図屏風は上野から増上寺までの江戸の鳥瞰図で
江戸市中のほか寺社や市場、橋、元吉原、木挽町歌舞伎や浄瑠璃などの様子も。
不忍池に舞い降りている白い鳥は1629年4月に飛来した鳥鵜(ペリカン)ではないかと言われているそうな。
遊女歌舞伎図はほとんど色のない白描ですが人々がぎっしり集まった芝居小屋は熱気がすごそう、
茶屋のかか(主役)が柱の陰にいて、猿若が目立っている珍しい構図。
英一蝶「四季日待図巻」、日待は正月・5月・9月に人々がお籠りをして日の出を礼拝する行事で
年月が経つと遊びが中心の行事に変わっていったようです。
絵巻は一応、神棚にお供えはあるしお祈りをしている人も描かれてるけど
ほとんどは飲めや歌えの宴会の様子で、障子に踊る人々の影が映ってておかしくて笑ってしまったけど
提灯に源氏香(ひとつひとつ違う形)が描いてあるのは教養のしるしのような気がしてさすがに一蝶。

尾形光琳筆と伝わる「禊図屏風」、伊勢物語65段で天皇に仕える女性に恋して
「もう恋はしないぞ」と川でお祓いをする男(在原業平)の図なのですが
遠近法などない、という構図のため川というより滝に見えるよ。。
同じく伝光琳の「鹿蒔絵硯箱」が美しくてあら~素敵ねって近づいたら
すぐ隣に「蝦蟇仙人硯箱」(すごい顔の蝦蟇仙人がそのまま彫ってある)があって戸惑いを覚えました、
光琳せんせいはふいにこういうの作ったりするからコメントに困る。
「深省茶椀絵手本」おととしの仁清・乾山展にも展示されていたな~。
松竹梅や鹿や馬…乾山が茶椀に絵を描くときのために光琳が残したのですよ、
また見られてうれしいです。
「蹴鞠布袋図」も去年に京博で見てかわいいなあと思ったものでした。
俵屋宗達の伊勢物語(嵯峨本)「武蔵野図」「若草図」の色紙は
キャプションによると異本などを参考にしたのでは?との解説。
宗達・光悦による「蓮下絵百人一首和歌断簡」は関東大震災であらかた焼けてしまったもので
これも去年に京博で藤原俊成の歌を見たけど、出光には参議等・平兼盛・壬生忠見が残ってるのですね…
よくぞ残ってくれました、すばらしい。

野々村仁清「色絵扇面散文茶椀」、お茶椀に色とりどりの扇がヒラヒラしていてきれいだったし
「色絵梅花文四方香炉」もひさびさの再会だー!
蓋の上に立体ウサギがいて、香炉のボディの左右に阿吽の象がにゅっと顔をつきだしているという
作業工程がまったく想像できない作品です。
(いや、そもそもわたし工芸の作業とか全然詳しくないんだけど)
この造形が約400年もの間失われることなくこの世に存在しているのが信じられない!
小川破笠の作品は初めて見ましたけど、
春日野蒔絵硯箱」「柏に木菟蒔絵料紙箱」(両方とも重要文化財☆)の立体感がすごい、
蒔絵や陶板や螺鈿でできてる鹿やミミズクが浮かび上がって見えてきます。

酒井抱一コーナーほんと美しい…!
「紅白梅図屏風」は2か所のケースをいっぱいに使ったぜいたくな展示、
銀地の一対の屏風に赤と白の梅の木が向かい合うように描かれています。
抱一の銀色はきれいだなー。
「八ツ橋図屏風」も光琳の同作品を意識してか、大きな屏風に橋と燕子花が大胆に配置してあるし
「十二ヶ月花鳥図貼付屏風」のデザイン性と空間の使い方には惚れそうですよ…。
「風神雷神図屏風」も去年の琳派展以来の再会で久し振り久し振り、
相変わらずひょうきんでちょっとバランス崩れた表情の神様たちはいつも楽しそうです。
そして恥ずかしながら今回初めて気づいたのが
風神の腰帯と雷神の太鼓を通してる棒(?)がピンク色だということでした。
画集とかでは色が飛んでしまってるのでな~しかし何度か見てるはずなのになあ、
わたしもまだまだ修行が足りませんな。
(ちょっと気になったのが、屏風の前にいたマダムたちが言ってた「綺麗すぎる」のことば…
絵の具が綺麗に残ってることの何がいけないのか、わたしにはわからないけど
ふと「この屏風が100年後や200年後はどうなってるだろう」と思ってしまいました。
綺麗に残ってくれますように)

鈴木其一の「四季花木図屏風」、桜や紅葉はもちろん、牡丹やタンポポに藤に桔梗まで
春夏秋冬の様々な草花が咲き乱れてる~こんなお庭あったら欲しい!
燕子花の根元に流れる水文の美しさに息を飲みました。抱一の線より細い。
「秋草図」は30代の頃の作品で、秋の七草(桔梗→朝顔に変えてる)を描いたもの。
今は掛軸になってるけど引き手の跡があるらしいので元々は戸袋絵だったのではないかとのこと。
あと、其一は光琳の「富士図扇面」(骨は外されて掛軸にされてる)に
「祝琳」と落款を入れてしまったらしくて、ちゃっかりしてるなあと思った。


ginzakuma.jpg
銀座熊本館にも寄ったよ~あじさいくまモンかわゆす。
着ぐるみのくまモンもときどき出現して握手とかできるらしくて
(スケブのメッセージは確か復帰後に本人が直筆したものだったと思う)、
運が良ければ会えるのかなあとトトロみたいなことを考えました。
そして熊本のデコポンゼリーは本当においしい。
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イラストボード展示2016。

仏のほほえみ。

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