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ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


作家であるよろこび。

  1. 2016/08/20(土) 23:57:45_
  2. 文化・美術
  3. _ tb:0
  4. _ comment:2
kamataka1.jpg
鎌倉文学館にて特別展「たかどのほうこの世界」を見てきました。
「子どもたちへ 未来へ」というシリーズ企画展になっていて
過去にかこさとし、神沢利子、いとうひろし、西巻茅子、斉藤洋と開催されて、高楼さんで6回目です。
高楼さんはたかどのほうこと高楼方子の表記があって今回はひらがななんだなあと思っていたら
展示の内容がたかどのほうこ名義の本が多かったし、
言われてみればチラシや看板に使われている絵もまあちゃん、つんつく先生、へんてこもりで
全部ひらがな名義のだったね。

展示室入口にあったのがデビュー作「ココの詩」の初版と生原稿の束と表紙の原画と
執筆に使われた万年筆だったからもーー!
表題と、第6章「モロ」の部分が少しだけ読めました。
こ、この束から高楼さんの作家生活が始まったんだっ……!と思うと感慨深くて
穴が開くほどじーーっと見つめてきてしまった。
高楼さんのお姉さまである千葉史子さんの描かれたココの表紙画は
初版は色鉛筆なのですが今年刊行された新装版は油彩で描かれたのでしょうか。
「時計坂の家」は色鉛筆というかクレヨンというか原色が強めに出ていて
「いたずらおばあさん」はサインペンみたいなタッチで
「とおいまちのこ」は絵の具とクレヨンがシンプルにやさしく使われている。
やっぱり原画を見るとタッチが感じられて絵に奥行きが見えるなあ。

「まあちゃんのながいかみ」「へんてこもりにいこうよ」「つんつくせんせい」などのシリーズは
高楼さんご本人の軽快なタッチの表紙や挿絵がずらり。
「ゆかいな3人きょうだい」の挿絵は、原画にガーゼみたいな布が使われていて
カーテンやハタキやテーブルクロスなどが表現されていました。
わたしたぶんこの本読んだことないので印刷がどうなってるかわからないけど
先に原画を見られたのはよかったです。
また、まあちゃんとお母さんが自転車で空を飛ぶシーンの絵はかなりの修正跡がみられて
高楼さんの制作過程なども伝わってきました。
出久根育さんによる「ルチアさん」「わたしたちの帽子」の表紙がひたすらきれいで
白黒の挿絵の繊細さも生原画を見られてよかったです。
これ、印刷でどこまで出てるんだろうか…!
佐野洋子さんが「ぼんぞうののぞきだま」で絵を担当されてるの知らなかった!
画材がどう見てもクレヨンで、書きなぐったようにも見えるのにおもしろくて強烈な印象に残りました。

読者さんから贈られたプレゼントがすごい、
まあちゃんの手遊び人形にへんてこもりのキャラクターたちのリースに
つんつく先生とくまのゆめのドールハウスの精密さといったら!
これ全部手作りらしいのですがどんだけ手間暇と時間かかってるのか…愛はすごい。
あと、展示室1から2へは階段で降りていくのですが
フレーベル館から出た「こどもかるた」のいくつかが手すりの辺りに貼りつけてあって
頭文字をみたら「たかどのほうこ」になってたし、
階段を上がろうとしたら足元につんつく先生と子どもたちの切り抜きが段に沿って貼ってあって
遊び心を感じました。
個人的に残念だったのは「みどりいろのたね」がなかったことかな…
あれひらがな名義だし、太田大八さんの絵が生き生きとしてるし
「つまるやつか、つまらんやつか、一度ぼくをなめてみるがいい!」は児童文学史上屈指の名ゼリフだと思う。

kamataka2.jpg
お庭に出てみました。まあちゃんがいたー!
この日は雨が降ったり止んだり変な天気でしたけど、お庭にいる間は止んでて良かった。

kamataka3.jpg
お庭の一角に大きな樹があって、
その下にはまるぼを始めへんてこもりシリーズの仲間たちがいます!

kamataka4.jpg
木の上で本読んでる子もいたよ。

kamataka5.jpg
鎌倉文学館といえばバラ園!
雨で濡れていたけどきれいな花がいくつも咲いていました。


bebe.jpg
ランチは鎌倉駅近くのチーズ工房「Latteria BeBe」にて。
写真はデザートのアイスケーキです。ナッツや干しイチゴなどが入ってすごくおいしかった。
しらすと海苔のパスタをいただいたら思ったよりしらすと海苔の量が多くて口の中がえらいことになった、
おいしかったけど^^


cssatt1.jpg
鎌倉から移動して、横浜美術館にも行きました。
開催中のメアリー・カサット展が目的です。没後90年を記念した回顧展。

cssatt2.jpg
チケットやポスターにもなっている「子どもを沐浴させる母親」。
展示室にあった本物はやさしい色で光がいっぱいに溢れていてやっぱりこの人印象派だなあと思ったし
(この絵は第5回印象派展の出品作でもある)、
肌に青を使うのはルノワールもやっていたよね。

カサットの画家としての出発は、故郷のアメリカで基礎を学んだのちにパリへ渡って
国立美術学校には入れなかったのでルーヴルを始めヨーロッパ各地の美術館を旅して回りながら
様々な古典絵画をスケッチして独学で学んでいったそうです。
スペインで描いた「バルコニーにて」は目鼻立ちのくっきりした女性が描かれ、
「刺繍するメアリー・エリソン」は風俗画のようなモチーフ。
(エリソンはカサットの友人でもあったそうです)
サロンに入選した後にエドガー・ドガのパステル画を見て衝撃を受けてからは
ドガに誘われて印象派展にも出品していくようになります。
「私はショーウィンドウに鼻をおしつけ、ドガの芸術のすべてを吸収しようとした。
その絵が私の人生を変えてしまった。芸術を、自分が見たいと思うように見るようになった」と
のちにカサットは語っているそうです。
乳母とベビーカーに乗った赤ちゃんが描かれた「庭の子どもたち」や
「浜辺で遊ぶ子どもたち」などは透明感のある質感でモネやルノワールを連想しました。
「踊りの稽古場にて」などバレリーナたちの舞台裏を描いたドガの作品も近くに展示されていて
エッチング作品「ルーブル美術館考古展示室にて、メアリー・カサット」は版画雑誌「昼と夜」のための制作で
美術館を訪れたカサット姉妹の知的な姿がすごくかっこいい。
ドガには、カサットがぴんと背筋を伸ばした人に見えたんだろうな。

カサットは家族をモデルにたくさん絵を描いていて
姉のリディアや兄のアレクサンダー、母親のキャサリンや父のロバート、
きょうだいの配偶者や子どもたちなどがモデルになっています。
母キャサリンの肖像は、銀髪で黒服に白いショールをかけた女性が凛と腰かけていて
子どもたちの芸術活動を応援したかっこいいお母さんの姿が力強かった。
タペストリーを編む作業中の姉リディアの絵はピンクに花柄の普段着が素敵だし、
口髭の兄アレクサンダーは印象派の絵をよく集めて
死後にペンシルヴェニア州美術館に寄贈したので館のコレクション形成にも一役買ったらしい。
家族以外の女性たちの絵もありました。
代表作の「桟敷席にて」はマチネ(昼興行)を観劇する黒服の女性の横顔をどーんと描いていて
(劇場はコメディ・フランセーズではないかといわれている)、
熱心に劇に見入る女性は心底楽しんでいる様子。
閉じた扇に赤が入ってて植物の柄かなとか、ピアスに白が入れてあって輝いてるのとか
ちょっとした部分が素敵です。
アン・シャーロット・ガイヤールの肖像は髪を結いあげ真珠の首飾りにピンクの肩出しドレスを着て扇を広げて
ちょっと横目の笑顔なのが印象的。
「ふたりの姉妹」は今回数少ないパステル画の作品で
横顔と扇を広げた正面顔の2人の女性がすっきりとしてきれい。
また、今回は出品されてないけど(というかすでに現物は失われて写真しか残ってないのだけど)
1892年のシカゴ万博にて、女性がすべてを運営する女性館というパビリオンがあったそうで
そこの大壁画(3.7m×17.7m)をカサットが描いたようです。
現代の女性というテーマで「知識と科学の実を取る若い女性たち」「名声を追い求める女性たち」「芸術・音楽・舞踊」の3点。
特に知識~の壁画は果樹園でりんごを収穫する女性たちが描かれたことから反発もあったらしいですが
テーマだけでもなんだかブルーストッキングや平塚らいてうの元始女性は~のような信念を感じるから
保存しておいてほしかったなあ!

カサットは版画もたくさん制作したそうです。
エッチングやアクアチントの作品は家族を描いたものが多く、
午後のお茶や読書や編み物、楽器を奏でたりバルコニーに出たりするのから外出風景まで様々。
「オペラ座の桟敷席にて」は着飾った女性が光り輝いているみたいに見えるし
「桟敷席の黒衣の女性」はさっきの桟敷席の油彩画の人をエッチングにした感じ。
また、日本の浮世絵を見て色彩版画にもチャレンジしたらしく
生涯に10点の版画を制作しています。
絵を描いて板を作るのまではカサット本人がやって、摺るのは専門家に頼んだとか。
「湯あみ」は歌麿のテーマを欧米風に引用した洋服の女性と赤ちゃんの絵で
これは過去にボス美のジャポニスム展でも見たな~。
「沐浴する女性」は上半身裸の後ろ姿で
背中のラインの色気とか衣擦れとか水がちゃぷんと音を立てるのまで聞こえてきそう。
カサットの浮世絵目録をもとに復元したコーナーには喜多川歌麿や葛飾北斎の錦絵がありました。
特に歌麿と鳥居清長が気に入ったみたいでよく集めていたとか。

晩年にたくさん描かれた母子像はお子様のむっちりもっちり感とずっしり感が伝わってきます、よい。
よくある聖母子像だと赤ちゃんはマリアにおとなしく抱かれてたりじっとしてる絵が多いと思いますけど
カサットの描くお子様はちっともじっとしてないね(笑)。
お母さんの顔をむにゅってつかんだり、あらぬ方へ手足を伸ばしたり
抱っこされてるというより膝に乗ってるだけみたいな感じで
気をつけてないと次の瞬間には落っこちてしまいそう。
理想や形式的な絵画ではなく、カサットが見てきたきょうだいの子どもたちそのままの姿なのだろうな。
「母の愛撫」「愛撫」は会話が聞こえてきそうだし
「母親とふたりの子ども」はペンシルヴェニア州議会議事堂の女性待合室の装飾として依頼されたものの
州とカサットの軋轢により友人に売却されたという訳あり絵。
母と2人の子の絵ですが、母と1人の子はこちらに背を向けていて1人の子は正面を向いていまして
カサットは自分の最高傑作のひとつと豪語したようです。
「果実をとろうとする子ども」はさっきの女性館のテーマの一部をクローズアップして描いたもので
赤ちゃんが裸だから聖母子像を踏襲しながら現代性をもたせたということなのかな。
おもしろかったのが、画商ヴォラールが陶芸家アンドレ・メテと当時の作家たちのコラボ企画で
メテの陶磁器に画家たちがそれぞれ絵を描いていくというのがあったとかで、
カサットも参加して大きな花瓶に手をつなぐ4人の子どもたちを描いた作品が展示されてましたが
制作中にはだいぶ苦労したことをヴォラールへの手紙に書いたとのこと。

「アーティストである喜びと比べられるものが一体あるというのか?」メアリー・カサット
(1924年1月 ウィリアム・イヴィンスへの手紙より)

カサットと同時代に活躍した女性の画家たちの作品もありました。
アメリカの女子デザイン学校の校長をしていたエミリー・サーティンの「題名不詳」は
アトリエにいる数人の人々と中央に置かれたイーゼルに鳥がとまっている絵で、
まるで画家がアトリエで絵を描いてたら窓から鳥が飛んでキャンバスにとまったかのような一瞬。
ベルト・モリゾはカサットとも仲が良かったみたいで手紙のやりとりもしていたらしく、
浮世絵展を見たカサットは「あなた絶対見に行ったほうがいい!」と書き送ったりしたそうです。
うつむいて縫い物をする女性は緑色の服が鮮やかだし
赤ちゃんのパステル画の、ざっと描いてるけど完成度の高さがわかるのとか、やっぱりすごい。
34歳で亡くなったエヴァ・ゴンザレスはマネに師事したそうで、
なるほど出展作の「妹ジャンヌ・ゴンザレスの肖像」は胸に花をつけた黒髪の人物がはっきりしているけど
背景はマネの「笛を吹く少年」みたいに灰一色でした。
マリー・ブラックモンは第4・5・8回印象派展に出品した実力派画家でしたが
夫に活動を反対され消耗してからは描くのをやめてしまったようです(1890年頃のこと)。
「お茶の時間」はその10年前の作品で、屋外でお茶と葡萄を楽しみながら読書をする女性がすてきで
スーラみたいな白い点描もみられるやさしい絵でした。
エリザベス・ブグローは1868年にサロンに初入選した画家で
夫のウィリアムが神話をテーマに描く画家だったためか、本人も神話や宗教画をよく描いたそうです。
展示されていた「羊飼いのダヴィデ」、ライオンを倒して仔羊を守った少年ダヴィデが完全に勝利者のポーズで
ルーベンスやカラヴァッジョのようなリアルなタッチでした。
メアリー・フェアチャイルド・マクモニーズはカサットとともにシカゴ万博女性館の壁画を担当した画家で
カサットの現代の女性に対して彼女のテーマは「原始の女性」だったらしい。
「そよ風」はサロンにも出品されたかなり大きな絵で、
古代ギリシャ風の衣装を着た女性がスカートを大胆にひるがえしながら舞っているかのよう。
真っ青な背景が多くのバラやスズランの装飾に彩られているのもすてきでした。


美術館のコレクション展もよかったです。
カサット展に合わせてか、一部が女性の画家や写真家によるテーマ展示になっていました。
いくつかの作品は動画で見られます。→こちら
カサットが壁画を描いたシカゴ万博に出品されたという渡辺幽香「幼児図」は洋画なせいか
色がはっきりしていて目を引き付けられました。
ヘレン・ハイドの色彩版画を一度にあんなに見たのは初めてでしたが
親子とか生活風景とか、身近なモチーフを選んでやさしい色彩で表現した人だったんだな…ほのぼの。
上村松園「楚蓮香之図」は優美だし、片岡球子「富士」はゴージャスなカラフルさ。
北久美子「夢想植物園」はpixivにあってもおかしくないような絵だったし
松井冬子「世界中の子と友達になれる」が妖しくて美しかったなあ。
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comment

  1. 2016/08/24(水) 12:29:22 |
  2. URL |
  3. hippopon
  4. [ 編集 ]
鎌倉文学館の入り口に前田さんと言う家があって、
そこの人、閉館の時間にはいってゆくんですよ。
岩崎邸もそうだけど、サンルームがあるでしょ。
ベランダに温室ビニールはって冬にはそうできたら
最高なんですけど。
塔の上で寒いのが解消されるかと思って。

Re: タイトルなし

  1. 2016/08/24(水) 23:53:14 |
  2. URL |
  3. ゆさ
  4. [ 編集 ]
> hippopon様

美術館や博物館の近くに住んでる人たちっていいですよね…。
朝早くとか閉館とかに行けるんだ。

鎌倉の冬は寒いので何か対策できたらいいですねえ。
 
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