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ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


博物学と月の文化。

  1. 2016/11/23(水) 23:59:48_
  2. 文化・美術
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
odanao.jpg
サントリー美術館で開催中の「小田野直武と秋田蘭画」に行ってきました。
直武は平賀源内を調べているときに知って好きになった絵師で画集はよく見ていますけども
そういえばあまりナマで見てないなーと思っていたらこの機会ですよ!
企画してくださった方々ありがとうございます(^v^)。
そして直武が仕えていた秋田の殿様がこれまた博物学大好き藩主で
自分も調査するし物集めるし絵も描くしで、ほんと当時の秋田どうなってんの?という印象を持ってたけど
今回の展覧会で当時は他にも博物学を愛した大名たちがいたことを知って
色んな意味で勉強になりました。
言われてみれば木村蒹葭堂の周辺があんなに盛り上がってたのに大名が知らないわけないよね…
てかああいうのを最初に入手するのはだいたいお偉いさんだよね、
平賀源内が博物学に首つっこむきっかけを作ったのも高松のお殿様だし。

メインビジュアルにもなっている不忍池図、実際に見たら結構大きくてびっくりしました。
背景は遠近法で、タッチは大和絵で、植物などは唐風という
まさに和洋中の融合を見た気分。
手前の鉢とかこれ、地面に置いたとき土をこする音が想像できるくらいリアルだよ!
3匹の蟻がいると聞いてよくよく見ると、ほんとだ芍薬の蕾に小さく小さく描いてありましたし
空には小さく遠く鳥が飛んでいるし、間近に見ないとわからないことがたくさんある絵だなと思いました。
(余談ですが最近のリアル不忍池はミニリュウが出ることで有名らしいね…
ポケモントレーナーの皆さま不忍池を、また文化都市上野をどうぞよろしくお願いします←突然のダイマ)

直武が12歳の頃に描いたという神農図や17歳の時の大徳明王像図もあって
その頃はまだ大和絵風のタッチなんだけど
(英一蝶の模写で、水面に映った子鬼を鍾馗が睨みつける鍾馗図がおもしろかった)、
秋田を訪れた平賀源内に出会って解体新書に関わるようになってからタッチが一変、
西洋の極細にめざめて太く大胆に描くことをまったくしなくなっていきます。
解体新書の扉絵も何度も見てますが相変わらず細かいな~。
眼鏡絵の品川沖夜釣や寛永寺吉祥閣などもこんな細い線一体どうやって引いてるんだよ…。
笹に白兎図は、大和絵にはあまり例がない影をウサギにつけてるし
鷹図は鳥を細部まで描きこむだけではなく落ちた羽やフンまで描いてるし
ヨンストン動物図譜からの緻密なライオン模写は東洋の獅子図として仕上げつつも思いっきりライオン。
鱒図は松平頼恭(平賀源内の上司)が描いたのと構図がほぼ一致しているので
これは源内に原本を見せてもらった可能性があるのかしら…写真みたいな絵でした。
あと塗り残しの絵ということで桔梗図の写生が展示してあって親近感を覚えました、
わたしも途中まで塗って放置してる絵が何枚かあるので…(;^ω^)。

直武が仕えた佐竹義敦(曙山)という人もたいへんな蘭学好きで色々書いたり描いたりしておりまして
重要文化財の松に唐鳥図は太い松の木に赤い鸚鵡がとまっていて、これはまあよくある構図ですが
背景に西洋風の景色が描かれていて、完璧ではないけど遠近法も使われている。
写生帖は瓶に入った小型ドラゴンみたいな絵のページが開かれていたけど
これは一体何を見て描いたのでしょうな…?傍らに謂れも記されていたけどよくわからなかった。
直武の蓮図と並んで紅蓮図があったのですけど、構図がそっくりで
たぶんどちらかがどちらかの構図を模倣したんだと思うけど
こういうところからも2人の仲の良さが伝わってきます。
あとたまに「源義敦画」って署名がしてあって源氏なんだ~へー!って思った。
博物大名ネットワークなるパワーワード…。
蘭癖大名といわれた熊本藩主・細川重賢の毛介綺煥は鯨の歯や瓶入りのワニのスケッチ、
昆虫胥化図は昆虫が羽化して成虫になるまでの過程を克明に記録したもので
図鑑とか参考にしたかもしれないけどよく観察した結果できた絵に見えたな…。
重賢は曙山とも交流があったらしく、
忙しい政務の合間をぬって研究していたお殿様たちを想像すると楽しい。
九州にはオランダとの貿易拠点だった長崎があり海外文化が比較的手に入れやすかったため、
他にも福岡や薩摩の大名たちが博物学に傾倒していますが
有名なのは高松藩主の松平頼恭や平戸藩主の松浦静山でしょうか。
そしてだいたいそこらへんの人々を漁っていると木村蒹葭堂の名前が出てくる…大坂名物コレクターめ。

当時のお江戸の蘭学や蘭画についても。
杉田玄白らが出版した解体新書の隣には原書のターヘル・アナトミア。(*´︶`*)
宇田川榛斎『医範提綱』の附図である医範提綱内象銅版図は亜欧堂田善が刻した日本初の銅版解剖図で
タッチといい陰影といい、むちゃくちゃ細かくて立体的。
(ちなみに医範提綱は解体新書で厚腸・薄腸と訳された用語を大腸・小腸と言い換えた書物でもあるそうです)
平賀源内が栗山孝庵に宛てた手紙があって、
「お約束の武助(直武の通称)画2幅、昨日取り寄せましたよ」とか
「讃州の堺屋源吾(源内の甥で源内焼を学んだ人)は武助と同様に自分が取り立てました」とか
事務的報告の中にも源内の人格が垣間見えるようでおもしろいです。
源内の蔵書を再現したコーナーはアンボイナ島奇品集成、大絵画本、ヨンストン動物画譜などがあり
こんな本がひしめきあっている本棚ぜひ眺めてみたい…。
源内が企画した展覧会の図録、物類品隲(挿絵:宋紫石)はベレインブラーウのページが開かれてたよー!
紫石が描いていた南蘋派の絵画もたくさん展示されていて、
モチーフは牡丹や梅、壺、鳥、猫など中国でめでたいとされるものが多かったかな。
紫石からも学んだらしい直武は当時こういう絵をたくさん見たんだろうな…。
宋紫石の富嶽図、ごつごつリアルの岩の向こうに真っ白い富士山があってめっちゃきれいだった!
石川大浪・孟高兄弟が模写したファン・ロイエン筆花鳥図は大きな掛軸、
紙をめいっぱい使ってあふれんばかりの花を思い切り描いていて迫力あった。
松林山人の牡丹猫図、正午牡丹(真昼に咲く花)というやつで
中国では富貴の全盛期を象徴するおめでたい画題なのだとか。
佐々木原善の名花十友図は10人の友を10人の花にたとえた文学的な絵で
蓮やあじさい、梅や牡丹など様々な花がリアルに細かく描かれていました。
あと源内関係者として鈴木春信の文を読む女や春信に学んだ歌川豊春の浮絵などもありましたが
びっくりしたのが展示室の最後にあった手柄岡持の外山御苑(尾張徳川家の戸山荘の大名庭園)図。
朋誠堂喜三二という名前の方が有名かもしれませんがまさかこの展覧会で会うとは思わなかった、
さらりとしたスケッチすてきだったー!
喜三二は秋田藩の江戸留守居役(外交官のようなもの)で直武の上司にあたるのよね。

こうして見てくると直武と出会った司馬江漢が蘭画沼に落ちていく(笑)のもよくわかるというか。
江漢の不忍之池は遠近法がダイレクトに使われていながら
「日本製」とわざわざ書き入れるところに江漢の意地を感じる。
異国工場図はラウケン『人間の職業』から錫細工師の絵を模写したもので
江漢もきっと蘭書からたくさん学習したんだろうなと思う。
江ノ島稚児淵眺望は過去に見たことがあるので久し振りだった~。
秋田蘭画は直武と曙山がいなくなってから忘れられていくけど
近代になって角館出身の平福百穂が『日本洋画曙光』で取り上げてから少しずつ研究が進んでいって
現在に至るそうです。
(平福百穂といえば岩波書店の壺形マークをデザインしたあの人ですな)

midtownchi.jpg
ミッドタウンはクリスマスモード。あっちこっちにクリスマスツリーがありました。
夜はイルミネーションが綺麗だそうな。

shibutsuki1.jpg
また、先日終了しましたが
渋谷区立松濤美術館の「月―夜を彩る清けき光」の後期も同じ日に見てきました。
前期も先月行きましたので、まとめて感想いきます。

絵巻や屏風や浮世絵、蒔絵、陶器、刀の鍔や三所物、甲冑などにみる月の意匠の良品が揃っていて
竹取物語と源氏物語のモチーフがやっぱり多かったように思います。
江戸時代の竹取物語図屏風、かぐや姫は有職風ですが天人は唐風で描かれていましたね。
狩野常信の紫式部・黄蜀葵・菊図は3幅セットで
トロロアオイと菊の掛軸に挟まれた紫式部は松の生い茂る石山寺で物語を執筆する姿、
十五夜の月は琵琶湖の波間に映っていて空にはありません。想像するのでしょう。
源氏物語「浮舟」の絵。匂宮と浮舟が舟に乗っているのを銀色の有明の月が照らす場面。
勝川春章の雪月花。月は石山寺の紫式部、花は桜と小野小町、雪は簾を上げる清少納言で
これもよくあるモチーフ。
海北友雪の徒然草絵巻、前期は32段の扉を開けてお客を見送った後にしばし月を見あげる女性が、
後期は239段の、婁宿にあたる8/15と9/13に浜辺で月見を楽しむ人々が
どちらもほのぼのと描かれていました。

仏教を守る神として描かれた月天像。
前期は下弦の月を手にした月天。月天子とも呼ばれ、密教の十二天像のひとりだそうです。
後期は両手で蓮に乗る月(中に兎がいる)を大切そうに持つ月天。
両方とも瓔珞をたっぷりつけた仏像のようなデザインでした。

武蔵野図屏風、金地に山々と秋草が美しくてさて月はどこ?と探すと
秋草の中に銀色の月が沈んでおりました。
田中訥言の日月図屏風、左隻には川の上に浮かぶ銀の半月、右隻には波の上に浮かぶ太陽。
伝俵屋宗達の伊勢物語図色紙「西の対」は男が縁側で寝そべり観月中。色っぽい。
狩野栄信の定家卿春秋図は3幅セットで
春の朧月に照らされる桜の狩衣を着た定家を、桜と紅葉の掛軸が挟んでいて美しい。
鈴木春信の在原業平は浮摺も相まっておしゃれ、
喜多川歌麿の石山秋の月は、歌麿にはめずらしく風景画。
歌川広重の名所江戸百景がいくつか、彼の描く月はなんでもきれい、
というか広重の風景画はやさしくてきれいだと改めて。
歌川国芳の小倉擬百人一首からは安倍仲麻呂、凛々しく立つ名古屋山三郎の頭上に月。
岡本秋暉の波間月痕図、友人と隅田川の草堂で宴をした折に夜空を見て即興で描いた月で
ゆらめく月を水墨でさらさらっと描いていた。
橋本雅邦の布袋観月図は松の間から月がチラ見。
鈴木其一の草花図は紅葉と秋草の短冊セット、紅葉の合間に月が見えています。
司馬江漢の月下柴門美人図は夜にたたずむ女性ですが空に月はなく、
代わりに月光に照らされる女性の着物から月を連想するもの。
富岡鉄斎の読書立志図は唐風の建物に丸窓が開いて窓辺で月光に照らされる書物が美しい、
水墨画だけど窓に吊るされている行灯だけに赤色が入ってるのも印象的でした。
一宮長常の月兎漕舟図、波に浮かぶ三日月の小舟を漕ぐうさぎは一寸法師のようでかわいらしかった。
情感たっぷりの月岡芳年の月百姿、やっぱり大好きだ~!

陶器や武具における月もたくさん。
田毎の月図鐔は西垣永久が70歳のときの制作ですが
信州は冠着山の山腹の田畝のひとつひとつに三日月の月影が映り込んでいるもので
それを小さな鍔の中に作っちゃうのすごい。
頼政鵺退治図三所物は源頼政の鵺退治がモチーフ、
目貫は鵺と頼政、小柄は鵺と対峙する頼政、笄は天皇から獅子王を賜った頼政が歌を詠む姿で
月は頼政の頭上に輝いていました。
制作した後藤程乗って幕府に仕えた職人ですよな…さすがにかっこいい。
半月がついた黒漆塗頭形兜は賤ケ岳の戦いに出陣した武人が着用したものと伝わり、
右側に銃弾か何かでへこんだ跡が残っていた。
黒漆塗二枚仏と日月文軍配はいずれも江戸時代の作で、ど真ん中に三日月。
染付吹墨月兎文皿、うさぎと月のモチーフがかわいい。
尾形乾山の定家詠十二ヶ月和歌花鳥図角皿は何度も見てるけど飽きない!

月フェチとしてはルナティックという言葉の魅力にも惹かれるものがありますし
狼男や魔女やドラキュラなども大好物ですが、
月を愛する文化には落ち着いた静けさがあって好きです…月読の沈黙のような。
趣向がとてもすばらしく静謐なタイトルにお月見を愉しむような展覧会でした。よかった。

shibutsuki2.jpg
松濤美術館は中央が吹き抜けになっていて地下に噴水があり、1階に橋がかかってるのですが
前期の訪問時にたまたまパントマイムのパフォーマンスに遭遇。
橋に来た人が見えない壁に阻まれて進めないみたいな演出で、
ドアや窓がついてるみたいでガチャって開けて向こう側には行けるけど
その先にも壁があったり、さっき来たところにまた壁ができてて通れないとか
たっぷり1時間ほど色々見せてくれて楽しかったです。

shibutsuki3.jpg
壁があって通れないなー…みたいなアクション。
ドアノブがあるんだけど鍵かかってるとか、つかんで回すのとか
手が一定の位置から動かないからそこにドアがあるように見えました。

shibutsuki4.jpg
エントランスと丸窓の外でもパフォーマンスをやっていた。
鑑賞者が通り過ぎても一切乱れることなく、「壁があるなあ…」みたいなアクションをしながら
ちょっとずつちょっとずつ前進して地下への階段に消えていきました。
パントマイム見るの久しぶりだったけどおもしろかったー!
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