図書室と5つの物語。
『ぐるぐるの図書室』を読みました。
まはら三桃さん、菅野雪虫さん、濱野京子さん、廣嶋玲子さん、工藤純子さんの5人の作家さんたちが
デビュー10周年記念に書きおろした放課後の学校図書室が舞台のリレー短編集です。
皆さま2006年にデビューされたので「2006年組」と呼ばれているそう。
工藤純子さんは読んだことないけど、他の作家さんはずいぶん前から読んでた気がしていて
去年で10年だったと聞いて「おおっそんなに経つ…いやでもまだ10年…」とか
何だか長いような短いような不思議な気持ちに。
どの作家さんも深いお話作りをされるのでこれからもゆっくり追いかけていこうと思います。
とりあえず工藤純子さんの本を今度読んでみよう。
5つのお話に共通しているのは、
・主人公たちが全員同じ学校に通う小学5年生
・放課後の図書室の扉に茜色のきれいな貼り紙を見つけて入室する
・白い服の司書から図書室の仕事を頼まれたり本を薦められたりする
の3点。
あとはそれぞれの作家さんの持ち味が存分に発揮されています。
日常の学校や図書室が舞台だったり、まったく違う世界でのお話もあって
キャンディボックスやクッキー缶の色々な味を楽しむような気分で読みました。
茜色の紙が見えるのは誰でもというわけではなく、
本を読む子とも限らず全然興味のない子でも見える子は見えるっていう
決して本好きな子ばかりではないのが現実感ありますね。
見えるのは「いま、その本を必要としている子」たちで、他にも見える子がきっといて
この本はたまたまこの5人の場合を書いたんだろうなと思う。
(ランガナタンが言った「すべての人にその本を」みたいな感じの)
子どもたちは過去と未来を行き来したり、妖怪のためにご飯を作ったり、秘境で絶体絶命になりかけたり
わかり合える相手を探してみたり、書きかけの読書感想文のために大冒険をしたりして
本を通した体験を終えるとみんな少しだけ元気になっているのがいいなと。
しかも冒険の始まりがすべて1冊の本であるというところに
ビブリオ・ファンタジーとかドラクエのぼうけんの書とか二ノ国のマジックマスターみたいなロマンを感じる☆
人生の節目に本があるって素敵だ。
ひとくちに小学5年生といっても主人公たちの性格や人間性は様々で
ひたすら元気な子や何となくふわふわしてる子、責任感の強い子や厭世的な子まで様々。
ただどことなく地に足が着くか着いてないかみたいな危うさとか、
目の前の出来事をストンと受け入れて大冒険するにはギリギリ可能な子たちな感じは
共通しているように思いました。
だからこそ誰かの助けが必要で、それが彼らの場合は本だったってことかもしれなくて
それをあの司書さんは見抜いて彼らに声をかけたのかもしれない。
何という理想のレファレンス!
図書館で働いてると完璧なレファレンスなんて都市伝説じゃないかと思いがちですが
こういう物語や夜明けの図書館とか読んでるとやっぱりがんばろう…!って思う。
狂言回しの司書さんの口調がどのお話も同じように描いてあるのはあえて統一されたんだろうな。
(この本の発売後に行われたトークセッションで(遠くて行けなかった)、
図書室も扉は木なのか、ガラス張りなのか、何階にあるのかなど話し合われたと聞いた)
彼女のいでたちが背が高くて黒のロングヘアに白いワンピースという描写で、
白いワンピースの人といえば竹下文子さんの『青い羊の丘』にもそんな人が出てたな…と
ふと思い出しました。
主人公たちにだけ見えてるっぽかったけど他の子たちはどうなのかな、
茜色の紙が見えれば司書さんのことも見えて、紙が見えなかったらやっぱり見えないとかなのかな…
そもそも人間なのかどうかもわかりませんけども
(人でないとしたら精霊なのか神様なのか妖怪なのかどう呼べばいいのかもわからないけど)、
人間誰でも人生の中で一度はこういう人に出会う、みたいな雰囲気の人に感じました。
図書館や本の神様がどんな形をしているかというのはたまに妄想しますが、
日本にそういう神っていましたっけ…思金神とかは知恵の神だしな…。
(書物が御神体みたいな神社ってないですよね)
西洋だと書物や図書館の守護聖人はアレクサンドリアのカタリナとかローマのラウレンティウスですかね。
巻末に5人の作家さんたちによる座談会が掲載されていて、
本との出会いや、どんな本を読んできたか、これからの読書の展望みたいなトークが交わされていました。
空想することがお好きだったという工藤さんが「子どもの頃に授業中に色んなことを想像しても
他のクラスメイトはやってないから「自分は変なのかも」と思っていたけど、
読書好きのお友達ができて一緒に物語を書いたらとても気持ちよかった」とおっしゃっていたり
菅野さんが「読んだ本を友達にプレゼンするときちょっと盛って面白く話した」とおっしゃるのとか
わ、わかる…!と同意しまくり。
まはらさんの「わからないところはとりあえずそのままにして読み進めてもいい、読書に訓練は必要」とか
濱野さんの「講演などで本は読まなきゃいけないものではなく読まなくても生きていけると話すけど
同時に読書をしないのはもったいないと伝えています」とか
名言もたくさん飛び出していた。
菅野さんの「わたし絵本もマンガも大好き!どのジャンルにもどんどん手を出して!」にも全力で頷いた。
この年齢にならなきゃ読んじゃいけないとか、この年齢でこれ読むのはみっともないとかたまに聞くけど
そんなのはないんだよー!
本は本だしその人はその人、あなたはあなただよって伝えたい。。
あと、まはらさんが「弓道がテーマの小説『たまごを持つように』を書いたとき弓道の取材をしたけど
弓を引く感触を探る気持ちで書くためにあえてその場では引かなかった」みたいなお話をされていて
それはわたしも何となくわかる気がしました。
歴史もののお話を書くために色々調べはするけど、必ず意識するのが書く対象の年齢なんです。
わたしたちは未来人ですから歴史上の人たちがどう生きて死んだかある程度わかっているけど、
ご当人は自分がどうなっていくのかまったく知らないわけです。
なのでうっかり「その人物がその時までに経験してないこと」を書かないように結構、神経使います。
結果を知ってるとどうしても伏線張りたくなったりしますけどね…
ニヤリとするくらいはやってもいいけど、できるだけやらずに描きたいなあといつも思います。
リアリティとフィクションのバランスって難しい。
まはら三桃さん、菅野雪虫さん、濱野京子さん、廣嶋玲子さん、工藤純子さんの5人の作家さんたちが
デビュー10周年記念に書きおろした放課後の学校図書室が舞台のリレー短編集です。
皆さま2006年にデビューされたので「2006年組」と呼ばれているそう。
工藤純子さんは読んだことないけど、他の作家さんはずいぶん前から読んでた気がしていて
去年で10年だったと聞いて「おおっそんなに経つ…いやでもまだ10年…」とか
何だか長いような短いような不思議な気持ちに。
どの作家さんも深いお話作りをされるのでこれからもゆっくり追いかけていこうと思います。
とりあえず工藤純子さんの本を今度読んでみよう。
5つのお話に共通しているのは、
・主人公たちが全員同じ学校に通う小学5年生
・放課後の図書室の扉に茜色のきれいな貼り紙を見つけて入室する
・白い服の司書から図書室の仕事を頼まれたり本を薦められたりする
の3点。
あとはそれぞれの作家さんの持ち味が存分に発揮されています。
日常の学校や図書室が舞台だったり、まったく違う世界でのお話もあって
キャンディボックスやクッキー缶の色々な味を楽しむような気分で読みました。
茜色の紙が見えるのは誰でもというわけではなく、
本を読む子とも限らず全然興味のない子でも見える子は見えるっていう
決して本好きな子ばかりではないのが現実感ありますね。
見えるのは「いま、その本を必要としている子」たちで、他にも見える子がきっといて
この本はたまたまこの5人の場合を書いたんだろうなと思う。
(ランガナタンが言った「すべての人にその本を」みたいな感じの)
子どもたちは過去と未来を行き来したり、妖怪のためにご飯を作ったり、秘境で絶体絶命になりかけたり
わかり合える相手を探してみたり、書きかけの読書感想文のために大冒険をしたりして
本を通した体験を終えるとみんな少しだけ元気になっているのがいいなと。
しかも冒険の始まりがすべて1冊の本であるというところに
ビブリオ・ファンタジーとかドラクエのぼうけんの書とか二ノ国のマジックマスターみたいなロマンを感じる☆
人生の節目に本があるって素敵だ。
ひとくちに小学5年生といっても主人公たちの性格や人間性は様々で
ひたすら元気な子や何となくふわふわしてる子、責任感の強い子や厭世的な子まで様々。
ただどことなく地に足が着くか着いてないかみたいな危うさとか、
目の前の出来事をストンと受け入れて大冒険するにはギリギリ可能な子たちな感じは
共通しているように思いました。
だからこそ誰かの助けが必要で、それが彼らの場合は本だったってことかもしれなくて
それをあの司書さんは見抜いて彼らに声をかけたのかもしれない。
何という理想のレファレンス!
図書館で働いてると完璧なレファレンスなんて都市伝説じゃないかと思いがちですが
こういう物語や夜明けの図書館とか読んでるとやっぱりがんばろう…!って思う。
狂言回しの司書さんの口調がどのお話も同じように描いてあるのはあえて統一されたんだろうな。
(この本の発売後に行われたトークセッションで(遠くて行けなかった)、
図書室も扉は木なのか、ガラス張りなのか、何階にあるのかなど話し合われたと聞いた)
彼女のいでたちが背が高くて黒のロングヘアに白いワンピースという描写で、
白いワンピースの人といえば竹下文子さんの『青い羊の丘』にもそんな人が出てたな…と
ふと思い出しました。
主人公たちにだけ見えてるっぽかったけど他の子たちはどうなのかな、
茜色の紙が見えれば司書さんのことも見えて、紙が見えなかったらやっぱり見えないとかなのかな…
そもそも人間なのかどうかもわかりませんけども
(人でないとしたら精霊なのか神様なのか妖怪なのかどう呼べばいいのかもわからないけど)、
人間誰でも人生の中で一度はこういう人に出会う、みたいな雰囲気の人に感じました。
図書館や本の神様がどんな形をしているかというのはたまに妄想しますが、
日本にそういう神っていましたっけ…思金神とかは知恵の神だしな…。
(書物が御神体みたいな神社ってないですよね)
西洋だと書物や図書館の守護聖人はアレクサンドリアのカタリナとかローマのラウレンティウスですかね。
巻末に5人の作家さんたちによる座談会が掲載されていて、
本との出会いや、どんな本を読んできたか、これからの読書の展望みたいなトークが交わされていました。
空想することがお好きだったという工藤さんが「子どもの頃に授業中に色んなことを想像しても
他のクラスメイトはやってないから「自分は変なのかも」と思っていたけど、
読書好きのお友達ができて一緒に物語を書いたらとても気持ちよかった」とおっしゃっていたり
菅野さんが「読んだ本を友達にプレゼンするときちょっと盛って面白く話した」とおっしゃるのとか
わ、わかる…!と同意しまくり。
まはらさんの「わからないところはとりあえずそのままにして読み進めてもいい、読書に訓練は必要」とか
濱野さんの「講演などで本は読まなきゃいけないものではなく読まなくても生きていけると話すけど
同時に読書をしないのはもったいないと伝えています」とか
名言もたくさん飛び出していた。
菅野さんの「わたし絵本もマンガも大好き!どのジャンルにもどんどん手を出して!」にも全力で頷いた。
この年齢にならなきゃ読んじゃいけないとか、この年齢でこれ読むのはみっともないとかたまに聞くけど
そんなのはないんだよー!
本は本だしその人はその人、あなたはあなただよって伝えたい。。
あと、まはらさんが「弓道がテーマの小説『たまごを持つように』を書いたとき弓道の取材をしたけど
弓を引く感触を探る気持ちで書くためにあえてその場では引かなかった」みたいなお話をされていて
それはわたしも何となくわかる気がしました。
歴史もののお話を書くために色々調べはするけど、必ず意識するのが書く対象の年齢なんです。
わたしたちは未来人ですから歴史上の人たちがどう生きて死んだかある程度わかっているけど、
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