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ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


平安の正倉院。

  1. 2017/02/15(水) 23:21:03_
  2. 歴史
  3. _ tb:0
  4. _ comment:4
kasuga1.jpg
東博にて「春日大社 千年の至宝」展を見てきました。
大社の創建から歴史、古文書、本地仏、奉納された神宝や武具、芸能、式年造替まで
あらゆる視点から春日大社を紹介する展覧会です。
金地螺鈿毛抜形太刀が見たくて行ったのですが、他の武器も結構かっこよかったり
春日権現験記絵が予想以上におもしろくてわーいたーのしー!ってテンション上がって
結局2時間近く滞在してしまった。
割と混んでいたのでお互いに譲り合いながらの鑑賞でした。最前列は亀の歩み。

春日大社といえば鹿、ということで最初は鹿さんの展示から。
御使いである鹿さんは様々な形で表現されています。
江戸時代の鹿図屏風は大社周辺に生息する鹿をほぼ等身大に描いたもので
のっぺりとしたタッチがのんびりして宗達みたいな雰囲気。
鹿島立神影図は鹿島神宮からタケミカヅチを乗せて春日の地に降り立った鹿さんの絵で
これは繰り返し描かれてきたモチーフのようで、複数展示されていました。
春日山と三笠山のふもと、鹿さんからいましも降りようとしているタケミカヅチは赤い束帯姿で
髭を生やした顔は唇を引き結んでいて割と恰幅のいいお姿。
大社においては普段、紙垂で顔を隠してお祈りされるとのことですが
今回は展覧会ということで直接お顔を見ることができるという、なかなかレアな機会です。
また、フツヌシ(タケミカヅチと対の神)と一緒に鹿に乗ってきたという掛軸もあって
2柱の神様のポージングがそっくりというかほぼ同じで
こういう風に描くみたいなルールとかあったのかな…。
また、春日鹿曼荼羅なるものも初めて知りました。
立派な鞍と鈴をつけた鹿さんの背中に榊の木が乗り紙垂が垂れている絵は
鎌倉時代の制作で現存最古。
鳥居を描いたものもあって、遠く京都から大社を遥拝するのに使われたとか
春日講の本尊として使われたものなどもあるそうです。

大社についての記録。
続日本紀の18巻にタケミカヅチが鹿に乗って春日へ来たという内容の記述があったり
延喜式に大和国286座のひとつとして春日大社の名前があったりして
この頃から歴史上にもぽつぽつ登場してくるのですね。
小右記の一条天皇の春日詣でとか、一条~崇徳(今上って書いてある)までの行幸記とか
御堂関白記では道長と一緒に女車が同行したとか(女性たちのお参りですね)、
藤原忠実が15歳のとき春日祭で上卿をつとめたことが栄華物語に書いてあったり
藤原の皆さんによる記録が多め。
藤原頼長の日記「台記」には1136年11月の春日詣でにて長櫃を持参し宝物を納めたとあって
そうして人々が納めてきた宝物の一部がここに展示されているんだなあと思うと
胸が熱くなってきた。

春日大社の本殿はひとつではなく第一~第五まで5つありそれぞれに神様が祀られていて
そのうち本殿第2殿が実物大で展示室に再現されていました→こちら
春日大社の監修だそうで、上野にいながら春日詣でできる…!
御簾に取り付けられた蝶や花の形をした金具が雅だったし
青いビーズが連なったような瑠璃燈籠が吊られておごそかな雰囲気。
(近くには室町~江戸期の金具や燈籠も展示されていました)
左右の御間塀には獅子牡丹図と神馬牽引図の2図が描かれていて
これらは去年まで実際に本殿に奉納され、
先日の式年造替の時に撤去された絵なのだそうです。
あと鎌倉時代の獅子や狛犬もいて、彼らも最近まで第一~第四殿に飾られていたけど式年造替にて撤下。
第一殿ペアは足をしっかり着いてどっしり構えているけど
二殿ペアはちょっと首をかしげてて、三殿はちょっと空を見上げてる感じで
四殿に至っては阿が立ち上がろうとして吽は座ったままという、
だんだんアクションが足されてくるのがおもしろかったです。

奉納された宝物類。
緑地彩絵琴箱は琴を入れる箱で、内部にシンプルな花鳥画が描かれていて
琴の展示はなかったけどどんなのが入ってたのかな…。
鏡台や笥、笏など普段の生活に使われそうなものも。
武器は梓弓、鏑矢、鎧、刀などたくさんあって
奉納された時代とともに形が少しずつ変わっていってるのも見どころで
時代ごとの流行や武器に対する思いも伝わってくるようでした。
藤原頼長が奉納した金地螺鈿毛抜形太刀は武器だけど武器として使うことは一切想定してないと思う。
鞘の装飾がほぼ純金と螺鈿で作られていて、1000年近く経つのに遠くからでも輝いて見える!
尻尾の長い猫が雀を追いかけて捕まえて満足☆みたいなストーリー性があって
狩りのポーズとか下がった耳とか雀を押さえた肉球とかすごくリアルで
この螺鈿職人は猫をきちんと観察して再現する能力が桁違いにカンストしている!
あるいは頼長たんの監修が入ってるかもしれぬ…彼のそばには猫がいましたからね。
(平安時代に猫好きはたくさんいましたが頼長は少年時代に飼い猫の葬式を行うほどの猫クラスタです)
そういえば日光東照宮の眠り猫の裏側には竹林に遊ぶ雀がいて
猫が寝ているから雀は安心して遊んでいられる、みたいな意味だったような。
小鳥遊と書いて「たかなし」と読む名字がありますが、そういうとこからきてたりするのかな…。

10柱の春日ゆかりの神と本地仏が描かれた春日本迹曼荼羅は
仏像の姿を借りて神を表現したものです(平安時代からの風習)。
たとえば春日神は不空羂索観音、二殿は薬師菩薩、三殿は地蔵菩薩、四殿は十一面観音、
若宮は文殊菩薩…などの姿で描かれます。
空海も八幡神の姿で表現されたりするけど、あれに近いのかな…神仏習合の極み。
文殊菩薩騎獅像および侍者立像は獅子に乗った文殊菩薩に善財童子などの侍者が付き従っており
つまり若宮ご一行なわけですな。
春日神鹿御正体も彫刻作品で、鹿さんの彫刻も見事なんだけど
鹿さんが背中に乗せている丸い御正体には春日の5柱の神が仏の姿で描かれていた。
また、神の全身図を描くのは本地仏と一緒にいるor本地仏そのものに変化している場合ですが
そのほかは体の一部を描くのみだったそうで、
興福寺の天狗草紙には春日神が烏天狗に日に三度甘露を振りかけたところ救われたという話が載っていて
絵巻に烏天狗たちの姿は描かれているけど神は手だけでした。
(ちなみに大社に縁のある人や信仰した人は春日野の地下にある春日野地獄に落ちて
春日神が毎日水を注いで助けてくれるらしい。すごい)

大社に伝わる芸能。
若宮おん祭を始め大社には様々な舞楽や能が奉納されます。
鼉太鼓(左方。複製)は源頼朝が奉納し今もおん祭で実際に使われる太鼓を忠実に再現していて
見上げるような大きさでよくここまで運んでこられたなあと思う、
いつか雅楽の演奏で使われてるとこ見てみたい…!
蘭陵王や納曽利をはじめ数々の舞楽で着用される面や装束も豪華で美しく、
鼻高で外国人がモデルとされる地久や鯉口をしている貴徳面など初めて見るのもあったし
興福寺に伝わる新鳥蘇面は唐招提寺の仏像修理をした印勝作ということがわかっているらしい。
太平楽の装束の肩喰が麒麟と狻猊で帯喰が龍と獅子なの最高にかっこいい!

春日権現験記絵巻。
皇室の名宝展や大神社展でもいくつか見たけど、さすがに今回の出品数はかなり多め。
春日の神々がどんな存在か、どんな力を持つ神かを物語とともに生き生きと描いてくれていて
人々が神々をどんな風に捉えていたかがダイレクトに伝わってくる。
地蔵菩薩の姿で牛車に乗った第三殿が御簾からチラリと顔をのぞかせていたり
十二単姿の第四殿が教懐という人の腰痛を治してあげて、雲に乗って帰ったり
僧侶に化けてきた何者かの正体を見抜いて追い払ったりと大活躍する様子が
細かく丁寧な筆致で描かれています。
ほとんど江戸時代の制作ですが、
1927年制作の13巻は童子姿で現れた第四殿が学問所を見学していく様子が描いてある。
藤原基通が平家都落ちの際に難を逃れたり
藤原光弘が竹林で十二単姿の第四殿に会ったり
藤原忠実が春日詣での際に11~12歳くらいの童子の姿をした春日神を見かけたりするとか
藤原氏の氏神らしい一面も。
興福寺の狛近真が大社に舞を奉納した「狛近真事」とか
貞慶から仏舎利を譲られる明恵を描いた「明恵上人事」みたいな
春日大社に関わった人や信仰した人なども絵巻になっています。
1301年に盗難に遭った神鏡を取り返す様子は
盗賊たちを追いかけて斬り殺したり3つぶんどったりする武人たちは白い衣装を返り血で真っ赤に染めてて
これ…奉納した絵巻だよな?って、ちょっとびっくり。
個人的に特に紀州本第六巻のおもしろさが振り切れてて好きー!
地獄に落ちた興福寺の狛行光を春日神が助けるという内容で
(興福寺も藤原氏とゆかりの深いお寺ですな)、
地獄の閻魔様のところへ直接赴いて行光を許してください~と直談判する春日神のフットワークの軽さよ。
閻魔様も春日神も顔の部分が霞で隠れて衣服だけが見えていて、
行光を冥府から連れだした後も春日神は後ろ姿で描かれているのとか徹底してますけど
チラリと見える横顔はハンサムメンの香りがして絵師も絶対引き目鍵鼻を意識して描いてると思う。
救済された行光は春日神とともに地獄見学ツアーをするのですが
六道の責め苦の場面に笏を向けて「ほらご覧」とでも言ってそうな雰囲気の春日神は
なんだか無邪気なようで少し怖くもありました。
あとヒラヒラなびく束帯がそりゃ…イイですよね…(突然の萌え語り)。

kasuga2.jpg
春日大社万燈籠を再現したコーナーは撮影ができます。
ほのかなライティングはおごそかで厳粛な儀式の場のよう。

kasuga3.jpg
黒かったり金色だったり。

kasuga4.jpg
燈籠の円窓部分にはひとつひとつ異なる彫刻がほどこされています。
写真は鹿さん、と、松かな?
笠が花びらだったりするのもオシャレです。

特別展の後は、いつものように本館も鑑賞。
kasuga5.jpg
春日大社展に関連して鹿の彫刻作品がいくつか展示されていました。
写真は竹内久一「神鹿」。背中に宝珠を乗せています。
さっき見た御正体の鹿さんを彷彿とさせるような美しさ、白は神様の色ですね。

kasuga6.jpg
こちらは森川杜園「牝牡鹿」。
1893年のシカゴ万博に出品した作品で、森川さん当時73歳!
鹿の制作を得意とした人だそうで…葛飾北斎も高村光雲もかくやというほどのご活躍、かっこいい。

konparu1.jpg
本館特集展示も見に行きました。「奈良・金春家伝来の能面・能装束」。
南北朝時代から春日大社に芸能を奉納してきた金春流ゆかりの品々が展示されています。
写真は天冠と中啓。
雅楽や能に使われる冠はキラキラひらひらしていてすごく好き。
中啓は女性が主人公の能に使われる扇で表に玄宗と楊貴妃、裏に花々の花戦さ模様。

konparu2.jpg
女性面の迫力。泥眼と般若。

konparu3.jpg
鬼神面。
どれもすごく綺麗に残っていて大切に伝えられてきたんだな…。
金春流の能は1度しか見たことがなくて(ちなみに道成寺)もっと見に行きたいなあと思っています。
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comment

No title

  1. 2017/02/18(土) 00:38:58 |
  2. URL |
  3. hippopon
  4. [ 編集 ]
こんばんは
お能もお稽古お能だと下手くそで死ぬそうになる。

選ぶと長い、高い、、

その点娯楽だから歌舞伎は楽でいいですよね。
昔はお化けの話ばかりで好きになれなかったけどww

一番は時間の速度が変わるのですき。
クラッシックコンサートも同じ
もうずっといけてないけど、、

Re: No title

  1. 2017/02/19(日) 18:05:31 |
  2. URL |
  3. ゆさ
  4. [ 編集 ]
> hippopon

伝統芸能のチケットもピンキリですね~。
勉強会みたいなのは行ったことなくて…
本当はそういう人たちにお金が入った方がいいのですが…なかなか行けないです。

個人的にお化けは歌舞伎より能の方が多いイメージかな。

コンサートわたしもずっと行けてないです!
ピアノとか聴きに行きたいな~。

No title

  1. 2017/02/19(日) 21:08:35 |
  2. URL |
  3. 橘右近大夫
  4. [ 編集 ]
こんばんは。いつも樂しく拜見させて戴いてをります。

僕も、行きました!! ニャデンに心が奪はれました。あの金地螺鈿毛抜形太刀の装飾は凄いですね。毛抜形太刀と言ふのも我が國の日本刀と呼ばれる刀になる直前の方ですから、非常に興味深いのに、あの猫ちやんの可愛い姿、ずつと見て居たくなりました。

Re: No title

  1. 2017/02/19(日) 23:53:57 |
  2. URL |
  3. ゆさ
  4. [ 編集 ]
> 橘右近大夫様

ニャデンかわいいですよねーわ~い\(^o^)/
太刀の装飾ほんとにすごくて、猫かわいいし雀はあわれだしストーリー性があって
何よりあそこまで綺麗に保存されてることに感動しました!!

かすかに弓なりで、現代の日本刀より直刀に近い形でしたね~。
あの頃の刀をなかなか見る機会ないのでワクワクしました。
 
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