2017-04-07 (Fri)
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科博の「大英自然史博物館展」に行ってきました☆
始祖鳥を始めとする約8000点ともいわれる同館のコレクションから
選りすぐりの180点が世界中を巡回しています。
意外ですが同館に関するまとまった展覧会は今回が初めてなのだそうで…
大英博物館の展示は割と行われてるイメージあるけども。

スタッフさんからの「フラッシュを焚かなければ撮影OKです」との案内に僥倖を覚えて
デジカメを手にワクワクしながら展示室に入ります。
まずは、こんなものを収集してる博物館ですよ~みたいな、大まかな展示品の紹介。
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ジョン・オーデュボン『アメリカの鳥』より、ショウジョウトキとイヌワシの絵。
オーデュボンは19世紀初頭の野鳥画家で、
この本は北米に生息するほぼすべての鳥を可能な限り等身大で描いているそうです。
写真だと大きさが伝わりにくいかもしれませんが原画は巨大でした。すごい迫力。

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レオポルド・ブラシュカ&ルドルフ・ブラシュカによるタコのガラス模型。19世紀の超絶技巧です。
生きているタコの色を保存し研究するための資料として作られたものだそう。

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呪われたアメジスト。
所有者に不幸をもたらすとか、川に投げ込んだのに発見されて戻ってきたとか
色々といわくのある宝石らしい。
こういうの怖いけどワクワクしてしまう自分がいます^^
照明が暗くてうまく撮れなかった…装飾には12星座のアイコンもついていました。

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集団で交尾中に何らかの原因で窒息死したと思われる三葉虫。
えらい姿が化石になってしまったもんです。子孫を残すのも命がけ。

以下、写真とともに展示内容の一部を紹介しています↓クリックで開きますのでどうぞ☆


ここからは順を追って、大英自然史博物館ができてから現代に至るまでの歴史が
展示物とともに紹介されていきます。
同館は、医師でコレクターのハンス・スローンの博物コレクション約8万点を基にして
大英博物館から独立する形で1881年に設立されました。
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そんなスローンコレクションの一部。亀の化石や中国茶、植物の種や大粒のサファイアなど色々ありました。
大きく写ってるのはアジア水牛の角で、スローンへの治療代として渡されたものだそう。
なんで治療代に水牛の角!?と思ったら解説パネルに
「当時は博物学が流行して個人が標本などをやたら集めていた」みたいなことが書いてあって
それならこの角も「珍しい物ですどうぞ」みたいな感じで患者からもらったんだろうか…などと想像。
コレクターがオタクなら渡す方もオタクだ。いやはや。

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グスターバス・ブランダーの肖像画と彼が収集した貝殻の化石。
大英博物館の学芸員と評議員を勤めた人物で、博物コレクションもたくさんあるそう。

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スローンコレクションのひとつ、ゾウムシの指輪。
西インド諸島はイスパニョーラ島のゾウムシが指輪にされてしまっていました。
周りの小さな文字は「小さな物の中に展開されるすばらしい光景」と刻まれているとか。

そんなこんなでコレクションがどんどん増えてしまったので
当時、別の博物館で働いていたリチャード・オーウェンという解剖学者がその職場を辞めて
コレクションを管理する場所が必要だと評議会を説得し、大英自然史博物館が誕生します。
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テラコッタのライオン像。
オープンから100年、博物館の屋根に飾られたもので現在は2代目にバトンタッチしたとか。
後ろに建物の写真もあって、塔が2つある立派な建築です。

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オープン当時の目玉展示だった、ハチドリの模型。
もともとガラスケースの中に入っててさらに展示ケースに入れられているので
光が乱反射してうまく撮れてませんがご容赦を。
たくさんのハチドリが花に群れる様子がリアルに再現されています!羽の色もきれいだった。

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猫のミイラ。
2000年以上も昔に古代エジプトで作られ、バステト神に捧げられたものと伝わります。
どういう経緯があって博物館にやってきたのかな…気になる。

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プリニウスの博物誌。
この時代の書物は大変貴重なのですが、やたらでかくて重たい。

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植物学者カール・リンネの二名法(2つの単語で表すこと)に基づき命名された植物の押し花。
チャルメルソウやキセワタ、キク科の植物が並んでいて、
これらはリンネが最初に学名を名付けた植物たちだそうです。
目の前の自然物をなんと呼ぶか決めないと分類もできないし論文書くのも大変なわけで、
そう考えると研究はまず名づけから始まるんだなあ。

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リチャード・オーウェン(大英自然史博物館初代館長)とモアの写真。
オーウェンは大型爬虫類に「Dinosauria(恐竜)」という分類名をつけた人ということで有名ですが、
彼のところに持ち込まれた骨のかけらを絶滅した大型鳥の大腿骨だと予測して
4年後に発見された鳥(モアと命名)の多数の骨格とオーウェンの研究した骨が一致したことから
モアに関する論文も残しているそう。

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モアの全身骨格。羽毛も展示されていました。
オーウェンが見た骨とは別の個体ですが、迫力はきっとこんな感じだったろうなあ。
展示ケースの隣にはCGで再現されたモアの映像も流れていて、ズシンズシンという足音も迫力あった。

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紀元前に噴火したイタリアのヴェスヴィオ火山から収集された岩石。
あの大災害についてはヤマザキマリ氏がどこかで漫画に描いていた気がする。

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アンモナイトなど貝類の化石。
測量技師だったウィリアム・スミスが地質を研究するうえで化石を参考にしたそうですね。
ちなみにカキ類の化石には「悪魔の足の爪」という物騒な別名があるらしい、
名付けた人にはそう見えたんだろうか。

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ウィリアム・スミスが作った世界初の地質図(1815年)。
測量の仕事中に岩石に層があることに気づき、
出土する化石を観察・調査して年代を特定していったのだそうです。
人間何がきっかけでどういう事象に気づくかわからないね…いやはやすごい。

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化石ハンターのメアリー・アニングが採集した魚類(2億年前)の全身化石。
魚というよりイルカやシャチのように見えますが哺乳類ではないんですねえ。
アニングは12歳で化石を発見してからハンターとしての仕事を始め、
植物や魚類をはじめ翼竜や海竜などの化石もじゃんじゃん発見したらしいです。

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フランスで発掘された手斧。約40万年前のものだそうです。
太古の人類が生きていたこと、また道具を使っていたことを証明した石器なんだね。

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チャールズ・ダーウィンの『進化論』手稿。本能についてのページです。
初めて知ったのですが、ダーウィンは祖父が博物学者とウェッジウッド創始者で
父親が医師という裕福な家庭で研究に専念できた人なんですね。
研究には資金と時間と環境が必要ということを改めて思いました。

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ダーウィンが飼育していた小さなガラパゴスゾウガメ。
1831年に測量船ビーグル号で世界を回ったダーウィンは
ガラパゴス諸島で見たゾウガメを気に入り飼育していたそうです。
この亀も、本来なら島で生を終えるはずだったのがダーウィンに拾われたために
「ダーウィンの亀」としてハクづけされ今日まで残ることになるとは思わなかったろうなあ。
目がくりくりしてかわいい。

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推定200歳と伝わるアルダブラゾウガメ。
ゾウガメの中でも最高齢記録だそうですが、生き物としても最高齢と思う。

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ダーウィンの専門はフジツボだったらしい。
父親がフジツボの研究をしていたのを見て自分でも調べてみたら
彼にとって大変な魅力のある生き物だったみたいで、
「ぼくの大好きなフジツボについて書きます」みたいな手紙を誰かにしょっちゅう送ってたみたい。
何だかほのぼの^^

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鳥類学者ジョン・グールドが飼っていたインコ。
グールドはダーウィンが持ち帰った鳥を調査して「嘴の形が違うけどみんなフィンチという種類のインコ」と伝えたところ
ダーウィンが「この鳥たちは、今は別々の種だけど
元をたどれば同じ種だったんじゃない?」という仮説を立てるに至ったそうです。

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ダーウィンと同時期に活動した博物学者アルフレッド・ウォレスの地質線を説明したパネル。
地域ごとの生き物を調査して分布線を引く作業を最初に行ったのが彼だそうで
ダーウィンは彼からもらった手紙を読んで『進化論』をまとめようと思ったそうな。

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大英自然史博物館初の女性研究員となったドロシア・ベイトが磨いたヤギの化石。
博物館で働きたいと門をたたき、剥製作りや化石磨きから基礎を学んで
とうとう「これは新種のヤギの化石です」という内容の論文を書くに至った努力の人です。
よく「弟子にしてくれるなら掃除でもなんでもやります」みたいなやり取りをファンタジー小説とかで見るけど
あれを実行した人なのかな…たくましい。

そして今回の目玉展示へ。
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ジュラ紀の始祖鳥(ロンドン標本)です!すごい!ほんとに来てる!!

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ちっちゃい。かわいい。
よくここまで壊れずに無事来てくれました、運んでくれました、すごい。感動。
ああ教科書で見た標本があの本物がっ!!
始祖鳥の個体はいくつか発見されていますが
脳と三半規管の形がわかるのは今のところこのロンドン標本だけだそうな。
骨はもちろん羽毛も尾羽の跡もくっきり残ってて、嘴には牙があってこれは…どういう生き物なのか…。
始祖鳥と名付けられてはいますがこの生き物が鳥なのか爬虫類なのか、空を飛べたのか飛べなかったのかは
未だに論争が続いているよね。
展示ケースの隣には、モアのとこと同じようにCG再現された始祖鳥の映像があって
カカカッと甲高い声で鳴きながら優雅に飛ぶ様子が流れていました。
鳴き声も骨格や嘴の形とかからわかったりするんだろうか。

そういえばこいつが発見された影響で、
ティラノサウルスは羽毛フサフサだったんじゃないか説が今は出てきているそうですね…
羽まみれのティラノを想像すると、ちょっと、かわいい。

続いては探検家たちによってもたらされた博物学のコーナーです。
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18世紀にジェームズ・クックのエンデバー号に乗ったジョセフ・バンクスのタカラガイコレクション。
彼は船でアフリカやオセアニア、インドネシアなどを訪ねた際に
植物や貝類をい~っぱい持ち帰って来たらしい。

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バンクスが採集した植物をもとに画家のシドニー・パーキンソンが制作した植物画譜。
下絵を描いて彩色し、銅板に写して印刷する手法をとったようです。
線が細くてむちゃくちゃきれい。

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1872年に海洋調査船チャレンジャー号が深海5000m付近で見つけてきた生き物たち。
深海500m以下には生物は存在しないと考えられていた当時に
微生物に貝類、ヒトデ、石、堆積物まで発見されたのですから大騒ぎになったろうなあ。
報告書は50巻にも及んだらしく編集した人もさぞ大変だったでしょう。。

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1901年のロバート・スコット南極遠征隊による南極探検の採集物。
手前の炭木化石はかつて南極に森林が広がっていたことを、
奥の裸子植物の葉化石は大陸移動の証拠となったことをそれぞれ証明する植物だそう。
このときスコット隊は南極点を目指していましたが、
ノルウェーの探検隊に先を越されまいと無理にペースを上げて遭難死しているのは
なにかの番組で見た覚えがあるなあ。
(ノルウェー隊に比べてイギリス隊は寒さに対する装備が甘かったのが原因らしい、無理もない)

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微化石で作られたクリスマスカード。
微古生物学者のアーサー・アーランドが1912年のクリスマスに同僚に贈ったものだそうです。
アーランドも同僚も微古生物オタクだったろうからこういうの楽しかったろうな。

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ウォルター・ロスチャイルドが飼っていたヒクイドリ。青い色が美しいです☆
銀行一家に生まれたロスチャイルドは動物研究にハマりまして
生涯で集めたコレクションが膨大な量になってしまったので
自分で博物館を建てて公開したというレジェンドなエピソードを持つ人。
(博物館は彼の死後、大英自然史博物館の別館になった)
ペットを剥製にしてコレクションにするくらいですから相当ハマってたとしか思えない、すごい。

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ウォルターの弟であるチャールズ・ロスチャイルドが研究したペスト菌媒介のノミ。
チャールズはもともと微生物研究者で特にノミの研究をよくしていたそうです。
彼の死後は娘のミリアム・ルイザが研究を引き継ぎ論文もたくさん書かれたとか。

博物館と日本との関わりも。
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深海調査船チャレンジャー号は日本にもやってきたらしく、
彼らが神奈川や神戸で採集していったウミエラとチョウチンアンコウの標本もありました。

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海藻学者キャスリーン・ドゥルーが研究したアマノリ類。
海苔の糸状体を発見し親交のあった九州大学の教授に手紙を送った人で、
彼女の研究をもとに日本の海苔養殖が飛躍的に進んだらしい。
その功績を称えて毎年4月になると熊本でドゥルー祭が開かれるそうです。

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古植物学者マリー・ストープスが収集した植物の化石。
ストープスは1907年から1年半ほど北海道で白亜紀の古植物調査を行った人で
日本には今も彼女の研究を引き継いでいる植物学者たちがいるそう。

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江戸時代~近代にかけて佐賀や鹿児島に落下した隕石も。
手前の小城隕石は鍋島家から博物館に寄贈されたそうです。

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デジタル・ミュージアムの取り組みについての紹介も。
研究にはオリジナル資料が欠かせませんが、資料は劣化しますので
近年はデジタル複製したものを展示したりネット上に公開することが増えてきましたね。

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ウィリアム・スミスの地質図を用いたインタラクティブコンテンツ。
指で自由に拡大縮小できるのでいっぱい動かしてしまった^^ 画像はドーバー海峡の辺り。
鑑賞や研究発表やプレゼンなど多方面で使えるデジタルデータは今後ますます必要とされていくだろうな。

続いて、生物多様性の保護に向けての取り組み。
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昆虫コレクション。
ゾウムシやクワガタを始め角を持ったハエ、光沢を利用して保護色使うプラチナコガネとか見てると
人間が発見して名付けて分類して、研究までできてる昆虫ってものすごく少ないと思う。
分単位で1種ずつ絶滅していってるみたいな話を聞くけど
知らないまま気づかないまま一生見ることのない虫たちがたくさんいるんだろうな。

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絶滅した動物たちのコーナーは胸が痛みます。サーベルタイガー。
ドラえもんの映画で見た覚えがあるなあ。
他にも当時の環境が原因で絶滅したオオツノジカやオオナマケモノ、
人間が絶滅させたフクロオオカミ(羊を守るために駆除されたらしい)の剥製などがありました。

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ドードー鳥の模型。
モーリシャス島に人類が上陸してからわずか90年後に絶滅しており、
剥製も残っていないためこの模型も想像図でしかないそうです。
アリスでは体を乾かすためといってコーカスレースとかやってたっけ…
せめて物語の中では自由に生きてほしい。

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ロンドン塔で飼育されていたバーバリーライオンの頭蓋骨。
国王のペットとして飼われていたバーバリーライオンですが近代に数が激減し、
絶滅したと思われていたのが最近になって個体が数十頭発見されたんでしたっけ。

最後に、最近の博物館の活動についても。
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宝石類の収集。
マントルの岩石やダイヤモンド、金塊と宝の地図までありました。
昼間は緑色で夜のろうそくの下では赤紫色に変わるアレキサンドライトの
色が変わるところとか見てみたかったなあ。

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ピルトダウン人事件について。
20世紀初頭にアマチュア考古学のチャールズ・ドーソンによって発見された類人猿の化石が
実際は現代人とオランウータンの骨を使って捏造したものだと50年後の研究で判明した事件です。
着色したり鑢でけずったり、砂利をつめたりされていたため誰も気がつかなかったようですが
ドーソンが何をしたかったのかはよくわからないらしい。
再調査の重要性を改めて感じました…前回より技術が進化して新事実を発見することだってあるのだ。

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ネアンデルタール人のゲノム。
分析の結果、彼らとホモサピエンスのDNAは99%一致しているらしい。
これも自然史研究の一環ですし研究方法と合わせて保存していかなくてはならないものだねえ。

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「終わりに」のパネルがとても深かった。

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科博の自然史資料コレクション。
チャレンジャー号報告書とかリンネのアーカイブとか、海外の研究から日本の本まで一部を展示してあります。
大英自然史博物館の歴代館長たちの仕事についても紹介されていました。

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ショップに猫ミイラのキューピーがいたから買ってしまった☆
キューピーさんは本当に仕事選ばないね!

すごいものたくさん見ていっぱい勉強して頭も心もパンパンでしたが
科博の常設展にも始祖鳥がいると聞いて地球館の恐竜コーナーだけ寄ることにしました。
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ベルリン標本の始祖鳥(レプリカ)。ロンドン標本より小さいです。

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標本から再現された骨格。かわいい。

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デイノニクスの骨格レプリカはぐるぐる回して様々な方向から観察できます。
「焼き鳥」というあだ名があるらしい(笑)。
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