熊蜂の飛行。
恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を読んで、久々に音楽、特にピアノ曲が聴きたくなって
部屋中のCDとか動画サイトで音源を漁りまくっていたゆさです、こんばんは。
(この記事も聴きながら書いています)
同書は浜松市のピアノコンクールを舞台に、4人の主人公と彼らをとりまく人々の心の動きが
ピアニストたちの演奏とともに描かれていく小説です。
あちこちで話題になってますしわたしの周辺でも好意的な感想が多かったので楽しみで、
パッと開いたら2段組みで500ページ超えててうおお?ってなったけど
読み始めたらあっという間でした。おもしろかった。
タイトルはたぶん、主役の1人である塵くんの父親が養蜂家であることと
三次予選前に塵くんが散歩中に見かけた冬の雷からきているのかな。
その後、塵くんが調律師さんに言った「天まで届く音にして」のセリフには心の奥底までしびれた。
ピアニストたちの来歴や思考やパフォーマンスが細かく描写されているので
彼らの弾き方もピアノの鍵盤からあふれでる音色も全部違って聴こえてくる感じがするし、
主催者や審査員、調律師、記者や家族など様々な視点の言い分やコンクールの在り方もさりげなく語られて
群像劇になっていますね。
わたし自身も学生時代にピアノを習ってましたし、合唱ですがコンクールに参加した経験もあるので
予選前のピアニストたちの気持ちとかめちゃめちゃわかってしまってムズムズしたし
付き添ってくれたレッスンの先生や部活顧問の先生はこんなこと考えてたかもしれないなと思ったし
審査員の先生方がルールを取るか音楽を取るかの試されてる感とかものすごく想像ついちゃって
そこも読んでて面白かったです。
楽譜通りに弾くのは正しいけど自分が弾く意味とか考えちゃうし
年齢とかメンタルとか審査員の好みとか意識しちゃうのわかるし
そういう緊張感と無縁のコンテニストを見ると、焦ったり打ちのめされたりするけど
本番の時間はあっという間にやってきて過ぎ去っていく。
一次、二次、三次と予選がすすむ中で
登場人物たちがコンクールの雰囲気に慣れたり新たな課題を発見してもがく姿は抱きしめたくなります。
がんばってるよお~君たち。
ホフマンが塵くんをギフトと表現していたとき、なんとなく意味の想像はついて
読み進めていくうちに「やっぱりな」みたいな確信に変わったのは
学生時代にコンクールで彼みたいな人たちを何度か見た経験があるからかもしれない。
ギフトの概念を知ったのはル=グウィンの『ギフト』からですけども
『ピアノの森』の海くんや『少年ノート』のユタカくんや『陰陽師 瘤取り晴明』のときの源博雅みたいな、
ストレートに音楽を信じていて人々に演奏したいと思わせてしまう演奏ができる塵くんは
とても危ういし魅せられてしまいます。
コンクールに1人か2人はああいう人がヒョッと出てきますよな…コンクールであることを忘れて
「あの人の音好き」とか「すごい」としか言えない演奏をする人たち。
そういう瞬間があるからコンクールって楽しいんですよな^^
高島さんは『葬送』のショパンみたいな緊張感があったし
栄伝さんとアナトールさんは君嘘の公生くんやかをりさんを思い出した。
特に栄伝さんは内省的すぎるほど内省的で
そんなに考え込まなくて大丈夫だよとか、余計なお世話ですが声をかけたくなったというか
だから彼女が肩の力を抜いて弾けるレベルまで自力でたどり着けたときは「よかったー!」ってなって
本を持ったまま部屋の中をぐるぐる回ってしまった。。
そして彼らのいいところは本番前に思いつめるほど思い詰めてても
本番ではきっちりパフォーマンスできるところなんですよ…そういう人たちだから上位に残っていくんですけど。
ピアノの調律や音響についても書かれていて、
以前に宮下奈都『羊と鋼の森』を読んだこともあるので
クールなプロフェッショナルがピアニストたちの要望を聞いて会場の音響と合わせて調整していくのが
ワクワクしましたね~。
浅野さんの「お望みどおり、何でもするよ」の一言が頼もしい。
ピアノをなるべくステージの前の方に置きたいとか、いや奥に並べたいとか
観客がぎっしりの会場は思った以上に音を吸収するとか
床が少しくぼんだところでは音の響きが違うみたいなところは「そう、そうなの!」って思わず声に出ちゃったよ。
ちょっとしたことで音響ってずいぶん変わりますのでね…
そしてそれは容赦なく審査員の耳に影響する。音響とても大事。うん。
(そういえば去年の本屋大賞が『羊と鋼の森』で、今年が表題作ですから
2年続けて音楽関係の本が受賞したんですね。
この2冊が、クラシック音楽業界が少しでも盛り上がる一助になってくれるといいな)
コンクールの結果も頼むから全員受からせてやってくれよってなりましたね…仕方ないんだけど。
(とか思ってたら恩田さんもインタビューで似たようなこと答えてらしてホッとした→こちら)
宮下奈都『よろこびの歌』、中田永一『くちびるに歌を』、二ノ宮知子『のだめカンタービレ』、
武田綾乃『響け!ユーフォニアム』などを読んでいたときや
ミュージカル『コーラス・ライン』などを観たときも登場人物全員に肩入れしてしまって
みんなこんなにがんばってるんだから報われてほしい…とか、祈るような気持ちでした。
発表の瞬間てすごくストレスたまるけどカタルシスでもあるよね。
終盤で、塵くんが海辺で巻き貝と渦巻雲を眺めながら
ホフマンとの思い出を追想しつつフィボナッチ数列をつぶやくところは
『天と地の方程式』のラストをふと思い出して、
そういえば雷の音って音階であらわせるんだろうか?と気になってぐぐってみたら
何人か音階で聞こえるとおっしゃってる意見がヒットしてひえぇってなった。
余談ですが、音楽について書いたり描いたりしたものを見るといつも
ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの『ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド』に
こんなことが書かれているのを思い出します。
「音楽:きわめて重要なもので、常に善であり、おそらく魔法でもあり、
特に竪琴で奏でた場合にはその傾向が強い。どうやら闇の王は音痴らしい」
闇の王が音痴かどうかは知らないけど、
言われてみれば小説や映画で歌がうまい悪役キャラクターがパッと思いつかないけど誰かいましたっけ…。
ミュージカルやディズニーの悪役みたいな、ストーリーの筋として歌を歌うんじゃなくて
「歌がうまい設定」になってる悪キャラ。
あと、歌を歌うと物が修復できるとか世界が救われるみたいな
歌がストーリーのキーポイントになってる物語も結構ありますけど、
そのときに歌う役割というのはだいたい女声に振り分けられてる気もする。
男声だと夢の守り人のユグノあたりが思いつきますが他にもいるかなあ。
週末に西の方へ旅をしてきますのでちょっと留守にします~Twitterには出没しています。
帰って来たらレポ書くですよ☆
部屋中のCDとか動画サイトで音源を漁りまくっていたゆさです、こんばんは。
(この記事も聴きながら書いています)
同書は浜松市のピアノコンクールを舞台に、4人の主人公と彼らをとりまく人々の心の動きが
ピアニストたちの演奏とともに描かれていく小説です。
あちこちで話題になってますしわたしの周辺でも好意的な感想が多かったので楽しみで、
パッと開いたら2段組みで500ページ超えててうおお?ってなったけど
読み始めたらあっという間でした。おもしろかった。
タイトルはたぶん、主役の1人である塵くんの父親が養蜂家であることと
三次予選前に塵くんが散歩中に見かけた冬の雷からきているのかな。
その後、塵くんが調律師さんに言った「天まで届く音にして」のセリフには心の奥底までしびれた。
ピアニストたちの来歴や思考やパフォーマンスが細かく描写されているので
彼らの弾き方もピアノの鍵盤からあふれでる音色も全部違って聴こえてくる感じがするし、
主催者や審査員、調律師、記者や家族など様々な視点の言い分やコンクールの在り方もさりげなく語られて
群像劇になっていますね。
わたし自身も学生時代にピアノを習ってましたし、合唱ですがコンクールに参加した経験もあるので
予選前のピアニストたちの気持ちとかめちゃめちゃわかってしまってムズムズしたし
付き添ってくれたレッスンの先生や部活顧問の先生はこんなこと考えてたかもしれないなと思ったし
審査員の先生方がルールを取るか音楽を取るかの試されてる感とかものすごく想像ついちゃって
そこも読んでて面白かったです。
楽譜通りに弾くのは正しいけど自分が弾く意味とか考えちゃうし
年齢とかメンタルとか審査員の好みとか意識しちゃうのわかるし
そういう緊張感と無縁のコンテニストを見ると、焦ったり打ちのめされたりするけど
本番の時間はあっという間にやってきて過ぎ去っていく。
一次、二次、三次と予選がすすむ中で
登場人物たちがコンクールの雰囲気に慣れたり新たな課題を発見してもがく姿は抱きしめたくなります。
がんばってるよお~君たち。
ホフマンが塵くんをギフトと表現していたとき、なんとなく意味の想像はついて
読み進めていくうちに「やっぱりな」みたいな確信に変わったのは
学生時代にコンクールで彼みたいな人たちを何度か見た経験があるからかもしれない。
ギフトの概念を知ったのはル=グウィンの『ギフト』からですけども
『ピアノの森』の海くんや『少年ノート』のユタカくんや『陰陽師 瘤取り晴明』のときの源博雅みたいな、
ストレートに音楽を信じていて人々に演奏したいと思わせてしまう演奏ができる塵くんは
とても危ういし魅せられてしまいます。
コンクールに1人か2人はああいう人がヒョッと出てきますよな…コンクールであることを忘れて
「あの人の音好き」とか「すごい」としか言えない演奏をする人たち。
そういう瞬間があるからコンクールって楽しいんですよな^^
高島さんは『葬送』のショパンみたいな緊張感があったし
栄伝さんとアナトールさんは君嘘の公生くんやかをりさんを思い出した。
特に栄伝さんは内省的すぎるほど内省的で
そんなに考え込まなくて大丈夫だよとか、余計なお世話ですが声をかけたくなったというか
だから彼女が肩の力を抜いて弾けるレベルまで自力でたどり着けたときは「よかったー!」ってなって
本を持ったまま部屋の中をぐるぐる回ってしまった。。
そして彼らのいいところは本番前に思いつめるほど思い詰めてても
本番ではきっちりパフォーマンスできるところなんですよ…そういう人たちだから上位に残っていくんですけど。
ピアノの調律や音響についても書かれていて、
以前に宮下奈都『羊と鋼の森』を読んだこともあるので
クールなプロフェッショナルがピアニストたちの要望を聞いて会場の音響と合わせて調整していくのが
ワクワクしましたね~。
浅野さんの「お望みどおり、何でもするよ」の一言が頼もしい。
ピアノをなるべくステージの前の方に置きたいとか、いや奥に並べたいとか
観客がぎっしりの会場は思った以上に音を吸収するとか
床が少しくぼんだところでは音の響きが違うみたいなところは「そう、そうなの!」って思わず声に出ちゃったよ。
ちょっとしたことで音響ってずいぶん変わりますのでね…
そしてそれは容赦なく審査員の耳に影響する。音響とても大事。うん。
(そういえば去年の本屋大賞が『羊と鋼の森』で、今年が表題作ですから
2年続けて音楽関係の本が受賞したんですね。
この2冊が、クラシック音楽業界が少しでも盛り上がる一助になってくれるといいな)
コンクールの結果も頼むから全員受からせてやってくれよってなりましたね…仕方ないんだけど。
(とか思ってたら恩田さんもインタビューで似たようなこと答えてらしてホッとした→こちら)
宮下奈都『よろこびの歌』、中田永一『くちびるに歌を』、二ノ宮知子『のだめカンタービレ』、
武田綾乃『響け!ユーフォニアム』などを読んでいたときや
ミュージカル『コーラス・ライン』などを観たときも登場人物全員に肩入れしてしまって
みんなこんなにがんばってるんだから報われてほしい…とか、祈るような気持ちでした。
発表の瞬間てすごくストレスたまるけどカタルシスでもあるよね。
終盤で、塵くんが海辺で巻き貝と渦巻雲を眺めながら
ホフマンとの思い出を追想しつつフィボナッチ数列をつぶやくところは
『天と地の方程式』のラストをふと思い出して、
そういえば雷の音って音階であらわせるんだろうか?と気になってぐぐってみたら
何人か音階で聞こえるとおっしゃってる意見がヒットしてひえぇってなった。
余談ですが、音楽について書いたり描いたりしたものを見るといつも
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言われてみれば小説や映画で歌がうまい悪役キャラクターがパッと思いつかないけど誰かいましたっけ…。
ミュージカルやディズニーの悪役みたいな、ストーリーの筋として歌を歌うんじゃなくて
「歌がうまい設定」になってる悪キャラ。
あと、歌を歌うと物が修復できるとか世界が救われるみたいな
歌がストーリーのキーポイントになってる物語も結構ありますけど、
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