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2017_07
12
(Wed)23:07

夜間飛行。

ちょっと今までにないくらい留守にしましたがわたしは元気です。
某所の〆切にも無事に間に合い、今年も課題をひとつクリアしました…なんで毎年ギリギリになるんだ。ああもう。


ところで。。
meary.jpg
スタジオポノック第一回長編『メアリと魔女の花』を観てきました。
メアリー・スチュアート「小さな魔法のほうき(The Little Broomstick)」を原作として
麻呂さんこと米林宏昌さんが監督をつとめた映画です。
他にもジブリの制作部にいたスタッフさんが多数参加されているので
画面は全体的にジブリ色が強い感じになってましたけど、
ストーリーは原作(特に後半部分)を膨らませて米林テイストになってたように思います。
お説教のないジブリとでも言えばいいのかな…重量感がなくてふわっと、でも締めるとこきっちり、みたいな。

以下、原作と映画のネタバレを大量に含む映画感想です↓
未見の方はご注意ください~大丈夫でしたらクリックで開きますのでどうぞ☆
 
 
ジブリの制作部が解散して3年経ちましたが
去年の終わり頃でしたか、米林さんが新作を発表されると聞いたときは飛びあがりそうになったし
マロさん諦めてなかった…!って体が震えました。
ポスターの雰囲気からジブリっぽさとジブリじゃないっぽさが同時に読み取れてちょっと混乱したけど
新しいスタジオを立ち上げたということでああ、そのスタジオの雰囲気なのねって思ったし
米林さんが監督されたアリエッティマーニーもすごく好きな映画ですから
観に行くことは公式発表時から決めていたし楽しみでもありました(´∀`)☆
とにかくね~まだ続けてくれるっていうのがシンプルにうれしかったね。うむ。

で、実際に映画を見たら絵はジブリだけど演出と思想は米林さん、みたいな印象を受けました。
メアリのキャラデザはメイちゃんみたいだしほうきの飛び方はキキの動きにそっくりだし
赤い煉瓦館やその周辺(ロケ地はシュロップシャー州)や森の緑がジブリの色だし
ピーターとの関係が完全に耳すまのあれだし
エンドア大学のある雲はラピュタの竜の巣を連想させるし
魔法がキラキラしたりシュバッ!ってなる光の動きや弾け方はハウルの魔法みたいだったし
動物たちの大行進はぽんぽことかもののけ姫を思い出すし
大きな木の根っこを鹿に乗っていくシーンはアシタカを乗せたヤックルっぽかったし
誰かを助けに行くために行動するとかその犠牲で1度帰るとかまた雲の上に戻るとか
終盤でバルスみたいな大崩壊が起こるのとか、
作画や映像処理や後半のオリジナル展開がジブリ映画をかなり意識しているように感じた。
米林さんやスタッフの皆さんが長年培った技術を惜しみなく出してきたのがわかったし
クライマックスでキャラクターが画面の中で暴れまわる動かし方もそうだった。
(最終的な原画の枚数がアリエッティもマーニーも超えた9万3000枚になったらしいですね)
メアリとピーターが必死に手を繋ごうとするシーンにすごくエネルギーを感じたけどあれはどなたの原画だろう、
思わず2人の手をしっかり繋げてあげたくなってスクリーンに手を伸ばしかけてしまい
あやうく膝に置いてたバッグ落としそうになりました。
誰かと誰かが手を繋ぐときの動きに関してジブリ関係者の作画の質感は神がかってると思うんだ…個人的に。
(そういえば米林さんは千と千尋で千尋がハクの手をそっと触るシーンの原画を描いた人でしたっけ)

「帰れない、わたしひとりじゃ」とか「帰ろう!みんなで一緒に!」とか
帰ることに関して名言の多いメアリ・スミス嬢でしたが
家に帰るってある意味究極のエネルギー源のように思う。
「逃げよう」ではなく「帰ろう」っていうのがとてもポジティブに聞こえました。
でも呪文の神髄の本を隠し持ってるのが校長にバレそうになって
(本を見つけるのが原作みたいに本棚じゃなくて校長室の隠された扉に夜間飛行の手でうっかり触って
隠し扉を開いて手に入れるのはロマンだと思ったよ)、
「その子の花なんです。わたしより才能があって」ってピーターの住所渡しちゃうとこはちょ、個人情報!!ってなった。
ちゃんと後でピーターに謝ってたけどあれは心底ヒヤッとしましたよ、情報漏洩ダメ、ゼッタイ。
(実際ろくなことにならなかったし)
あと「退屈」「わたしには一生いいことなんて起きない」「魔法なんていらない」とか
要所要所で自分の気持ちを言語化するキャラクター造形なのは
たぶん米林キャラの特徴なんだなって最近やっと飲み込めてきた気がする。
(メアリだけじゃなくピーターも「みんな変わりたいと思ってるんだ」みたいなこと言うしね)
ジブリのキャラクターって割と、表情や態度で気持ちを表現することが多いので
こちら(観客)にも行間を読み取る能力が必要だったりしますけど、
アリエッティやマーニーの時も思ったけど米林さんはあえて人物に説明セリフを言わせますよね。
ラストで「わたしにはもういらないの」って夜間飛行の花をぽいって放るとことかは
無言でぽいってやっても表情とか手の振り方とか、作画の工夫次第では
あ、この子もう魔法使うつもりないんだなって伝わりそうだし観客の心に委ねることもできたと思うんですが
米林さんはあえて言語化して「メアリはこういう子なんです」って強調したかったんだろうか。

ピーターは最初メアリを一目見るなり「赤毛の子猿」とか、メアリにも猿にも失礼なことを言う子で
アン・シャーリーの髪をにんじんと言ったギルバートみたいなやつなんですが
後半はかわいそうなくらい巻き込まれてました^^;
原作だと自主的に自分ちの猫を探しに行ってドクター・デイの家でメアリと出会うけど、
映画は誘拐されるわ実験されちゃうわ、完全にとばっちりだったよね。。
あっ、パーカーの胸にギブを入れてあげてる姿はかっこよかったです(ついでみたいに言うな)。
大学の実験に協力したのは大人になりたがってたことを考えるとまあわかるんですが
最終的には諦めたってことでいいのかな…地道にがんばる的な。
そしてピーターを助けようと炎の中を走り回るメアリはイケメンでした。
最後に2人で協力して解除魔法を使うシーンは
米林さんこれがやりたかったんだろうなって思うくらい素晴らしく熱の入った画面作りで
手のこととか含めてあそこが一番盛り上がってたような。
ラストで赤い館村に帰るときのほうきはメアリじゃなくてピーターが運転してると思っていいのかな?
でもって、キャッキャしてるのでうっかり忘れそうになりますが
2人はエンドア大学を大崩壊させたことをこの先どういう風に受け止めて生きていくんだろう…
というのは、たぶんラピュタのラストを見慣れた人間の考えることなのでしょう。
原作では冒険の記憶をなくしている2人ですがエンディングを見る限り映画では覚えていそうだよね。

猫のティブとギブの関係は原作ではきょうだいだったのが恋人同士みたいにメアリに言われてますが
映画では特に誰も言及してないから好きに想像していいのかな。
黒かったり灰色になったりしながらメアリを導くように森を歩いたり、ベッドでフシャー!って毛を逆立てたり
ほうきくんの尻尾に爪と腕力だけでしがみついてたり(もはやジジ並み)、
彼らは見どころシーン満載☆
禁固室で再会して2匹でニャ~ンって頬ずりするシーンがあったかくてかわいかった(Φ∀Φ)ニャーン
マンブルチューク校長とドクター・デイの狂気は原作とはちょっと違うように見えたのは
映画ではバックボーンが追加されたせいかもしれない。
シャーロットさんがエンドア大学を逃げ出してからたぶん数十年近く経過してると思うけど
それでもあきらめずに実験し続けていたんだね。
回想シーンで失敗したっぽい様子と、実験に失敗したピーターを化け物呼ばわりしたときはゾッとした。
原作では校長とグルだったフラナガンさんがすごくいい人というか、ただの仕事一筋さんになってたのは
いい役割を与えられたなあと思う、ああいう用務員みたいなおっちゃんは面白いですね。
クライマックスでメアリのほうきに包帯グルグル巻いて持って来てくれたのは職務に忠実だった結果ですけど
そういう人が結果的に誰かを救うシチュエーションは大好き。
「日が沈み月が昇り、月が沈んで日が昇ったらまた会おう」ってすごい早口で言うのかわいかった^^
庭の一部になっちゃってる庭師のゼベディさんの朴訥とした雰囲気とか
メアリの落としたコップを床に落ちる寸前でナイスキャッチできるポテンシャルのバンクスさんとか
赤い館の人々の存在感も何だかんだありました。
そして、原作の人物像からもっともバックボーンが追加されたシャーロットさん。
映画の冒頭で墜落していった赤毛の魔女と、メアリがどこかで出会うだろうことは何となく想像ついたけど
そうかバンクスさんじゃなくてシャーロットさんの方でしたか。
(原作ではメアリより前にほうきに乗るのはマージョリーバンクスさんです)
「メアリには魔女の血が流れていない」と校長が言ってたけど
もしかしたらシャーロットさんとの血の繋がりがあるのかもしれないね。
昔の家で「お帰りなさいませ」ってドアが開いたのも、あの家がメアリをシャーロットさんの血縁と認識したからだろうし。
そして赤毛の魔女が優秀だというのは原作でも言及されていたはず。

キーアイテムである夜間飛行の花は原作から忠実に再現されてますね…
紫色のつりがね形、銀色のライン、大きく飛び出しためしべ。
エキスがべたーっとしてるのはたぶん誇張でしょうけど、淡く光ってるのとか魔法の植物っぽい雰囲気だし
何よりあの紫色がきれい!色彩設計さんや仕上げの人々がいい仕事してる。
メアリに「ほうきくん」と呼ばれるほうきはディズニーアラジンの魔法の絨毯みたいなキャラになってて
しゃべらないけどエンジン全開で飛び回ったりぴょんぴょん跳ねたりするのがかわいい、
動きで感情や心があるみたいに見えました。
檻から解放された動物たちが扉をぶち破るシーンの地響き感はすごい、サイの角が強かった。
原作で牡鹿さんがかっこよくメアリの危機を救うシーンがあるんですが映画ではカットされてた…尺か、尺なのか。

杉咲花さんはマーニーの彩香ちゃん役がとてもかわいかったけど
今回のメアリもかわいくてかっこよかったなあ。
神木くんは文句なしにかっこよかった~アリエッティの翔くんは体が弱い子だったので静かでしたけど
ピーターは元気に笑う子で神木くんってあんな風にも笑えるんだなって発見がありました。
余談ですが神木くんが「7年振りに米林監督とお仕事を~」って公式サイトのコメントに書いてて
アリエッティが…7年前…!!って戦慄した。そんなに経つのね。(そしてマーニーからも3年経ってる震)
天海さんと大竹さんの大物感がやばいし、満島さんも渡辺さんもハマってたし
佐藤さんと小日向さんはめっちゃ楽しそうでした(笑)。
あとメアリがシャーロットさんの昔の家に帰ったとき、
ランプから「お帰りなさいませ、お嬢様」って大谷育江さんの声がおっしゃったのでファッ!ってなって
鑑賞後にパンフレットを見てティブ役でもあったと知ってさらにファー!!ってなりました。
大谷さんがピカチュウとチョッパー以外の動物を演じるなんて、な、何年振りですか…!?
声優音感のある方は事前情報入れずに行くとびっくりするかもです、わたしは声出そうになった。あわわ。
村松さんの音楽もケルティックな雰囲気があったり(ダルシマーが印象的だった)、
セカオワの主題歌も耳によくなじむ素敵な曲だった。
セカオワはキャラ化されて映画のどこかに登場しているらしい噂を聞いたけど見つけられませんでした、
どこにいるのかなあ。

エンディングのクレジットがジブリ映画で見たことある人のお名前ばかり、
脚本の坂口さん、音楽の村松さん、作画の稲村さん山下さん大塚さん田中さん安藤さん橋本さん、
背景の男鹿さん武重さん吉田さん(でほぎゃらりーという背景美術会社を作ったそうだ)、
映像の奥井さんにアフレコ演出の木村さん、きりがない!
最後に感謝として高畑勲・宮崎駿・鈴木敏夫というクレジットもありました。
そういえば公開前の特番で鈴木さんと高畑さんが映画をご覧になった様子が放送されてて
(宮崎さんは「おれは見ない」とおっしゃったらしい)、
鈴木さんが「若い映画だ」、高畑さんが「見やすい、シンプルそのものになっていた」と評されていて
ほんとそれなって思った。
画面の描きこみのバランスがちょうどよくて起承転結があってキャラクター造形も重たくなくて
「荒々しくて率直で未完成」な、新しいスタジオの第一歩の見本のような作品だと思う。
2作目も公開されたら観に行きますけど、次はもう少し肩の力を抜いてもいいんじゃないかな。

あ。
公開前特番で思い出したけど、番組内で紹介されてた
宮崎さんが米林さんに送った書きなぐりのメモがめっちゃおもしろかった(笑)。
絵コンテを見たけどおたすけ原画は設定資料とか見ても描けないから
打開策として監督(米林さん)がレイアウトとラフ原画を描いて打合せして渡せばなんとかなるっていう
経験とゴリ押しからくるエールみたいな感じで、あぁ安定の宮崎さんだなって思いました。
あと、末尾の一節がすごい雑だけど一番言いたいことはこれなんじゃないかって気がした…
以下引用します。
「自分に何度か経験があるが急場でいちばん作品世界を理解しているのは演出。何が要り何がなくてもイイと判るのも演出。
現実に、ぼくはカリオストロからもののけと急場をしのいできた。
カリオストロの時計塔の内部なんか、いくら打合せてもムダ。描いちまうのがいちばん速い。
マロ、描け!それがいちばん早くいちばん確実。(中略)さいわい原画がたまってない、今のうちにやっちゃいな。 宮崎」
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