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視点を疑う。 

2018, 03. 15 (Thu) 23:54

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森美術館の「レアンドロ・エルリッヒ展 見ることのリアル」に行ってきました~☆
ブエノスアイレス出身の現代美術家レアンドロ・エルリッヒ氏の大規模個展です。
早く行かないと混んでしまう!と思っていたのになかなか行けなくて
やっと行ったらやっぱり混雑していて、でもそれが全然気にならないくらい展示に余裕があって
いやむしろ人が多い方が楽しめる展示だらけでかえってよかったのかもしれません。
写真撮影も可だったのでいっぱい撮ってきました!楽しかったー(´▽`)♪

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入口は明るいですが、ここからでもわかるけど中は真っ暗のようです。
歩くとぎしぎし音がする。

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タイトルと作品素材のみのシンプルなキャプションがありました。
ほほう、この先にあるのは「反射する港」という作品なのね。

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真っ暗な道を進んでいくと、室内に木造の船着き場がありまして
その中に浮かんでいたボートたち。
水があるように見えますが、実は水は一滴もなくボートが宙に浮いているだけで
ボートの下にある反射するボートも実は立体物で作られています。
室内の暗さと、ゆらゆら揺れているボートの効果で水があるように見えるのでした。

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反対側から。
ボートの上からはみ出したオールの影まで作られているんですよ!細かい!
しかもボートの揺れ方は実際の揺れ方を計算して揺らしているのだそうで、
道理でリアルな動きに見えるわけです…たぶんバルカローレを歌ったらちょうどよいリズム。

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展示室を出ると、今度は説明書きのキャプションがありました。
この展覧会は作品を見た後に説明書きが読めるような順路になっていまして、
まず何も考えずに作品を見て色々感じたり考えたりして
その後に制作背景やエルリッヒ氏の意図や思考をキャプションで知って
へえなるほどなぁと再び見に行くと違った視点で鑑賞できたりして、
それがとても楽しかったです。
自分の視点とアーティストの視点が重なったりすれ違ったりする体験はすごく刺激になりますね。

以下、写真が多いのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆
 
 
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次の展示室。「雲がある…」と思ったらシンプルに「雲」というタイトルの作品でした。
フランス、ドイツ、イギリス、日本の4つの国がガラスと白インクのみで表現されています。

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横面から見るとこんな感じ。
ガラスを何枚も重ねて立体感を出しているのですね。

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雲で表現された日本。
雲は形を変えてゆくものですが、よく考えたら日本も、いや世界の大陸や島も
太古の昔に長い時間をかけてぶつかったり離れたりしながら今の形になったわけで
そういう意味では大陸も雲のようなものなのかもしれないな…。
小笠原の西ノ島とかみたいに突如海から出てくるとか、これから変わることだってあるかもしれないよね。
地球は生きてる。

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「教室」。
本展のための新作で、ガラスの向こうに廃校の教室が再現されています。
中に映っている亡霊のような人たちは…?

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鑑賞者たち自身でした!
あたかもガラスの向こう側にある教室の机や椅子に鑑賞者が座っているかのように
手前の机の位置が調整されているのですね。
机の高さが小さくて、何だか小学校や中学校時代を思い出して懐かしくなり
色んな位置に座ってはしゃいでしまいました。童心に戻れる展示。

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「隣人」。
マンションのドアが置いてあるだけのこれまたシンプルな展示です。
扉を開けることはできないけど、反対側に回ることはできます。同じようにドアとチャイムがあります。

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覗き穴の景色。
この作品は二次元ですが、穴からは向こうの景色があるように見えます。
じーっと見ているとふいに誰かが現れそうな…というか誰かが向こうから覗き返してきそうな…
あやうい雰囲気。。どきどき。

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「日中の白い飛行」と、、

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「夜間の黒い飛行」はセットの作品。
飛行機の窓から見える景色が2分ほどでループします。
飛行機に乗っているかのような錯覚もさることながら、飽きずにボーっと見てしまう中毒性がある。

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「シンボルの民主化」の写真。
3年前にエルリッヒ氏がブエノスアイレスに設置した大型作品の様子です。
オベリスクの先端部分を切り取って地上に下ろしてしまった…かのように見える作品で
実際はオベリスクの先端部を覆い隠しているだけだそうです。
いいなーめっちゃ楽しそう、東京タワーとか使ってやってほしい!(笑)

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「眺め」。
サッシの向こう側に何か見えるので覗いてみますと。

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ブエノスアイレスのマンションに住む人々の生活が映像で流れています。
最初は「わーごはん食べたり着替えたり色んなことしてる」って楽しんでいたけど
しばらくすると何だか見続けているのが申し訳なくなってくる。
窓が開いていたら外から簡単に見られてしまう危うさを自覚させてくれるなあ…。
あとこれ、サッシを手で開いた隙間から見ることになるので
映画『裏窓』のジェームズ・スチュアートや『張込み』の大木実さんみたいな気分が味わえますぞ。

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「部屋(監視)」。
25台のモニターには室内を様々な角度から撮影した映像が延々と投影されております。
さっきの「隣人」と同じく誰も来ないし何も起こらない、殺風景なモノクロの部屋は少し不安をかきたてる。

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かつてイギリスが国内に監視カメラ200万台(市民14人に1人の計算)を設置したと発表したことが
エルリッヒ氏がこの作品を制作するきっかけになったのだそう。
そういえば日本も街を歩いているとカメラばかりだなあ、とふと思いました。
「現代社会で何にも写らないでいることは不可能である」という内容の話が
CLAMPさんの漫画『xxxHoLic』にもあったよね。

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「失われた庭」。
レンガで囲われた人口の庭をガラス窓から眺める作品です。

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最初は何となく庭を見ていましたが、ふと向こうのガラスに誰かいることに気づいて
それが自分の顔とわかったときの驚きたるや!
正確には斜めの対角線上の窓に自分がいて、向かって正面の窓には
わたしの隣で庭を覗きこんでいる鑑賞者が写っています。
たぶん鏡か何かで斜めに写るようになってるんだと思うけど…科学的でわくわくに満ちた作品^^

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「エレベーター」。
既発表作品ですが、今回の展覧会のために上下ボタンを日本のメーカーのものに再制作したそう。

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エレベーターの扉は開きませんが、窓から覗きこむ人がみんな「えっ」「わー」「怖っ」って言ってて
何があるんだろうと覗いたらこの景色!
外側と思っていたのに窓を覗くとエレベーターの外側が見えるという…
つまり鑑賞者が立つ場所は内側に見立てられているわけで、外側と内側を反転した作品なのです。
(この作品を発表した1995年の展覧会で「会場のエレベーターに入ること」という規定があり、
それにエルリッヒ氏が反発してこうなったらしい)
下を覗いているとどこまでもどこまでも続く底なしのようで、地球の中心まで行けそうな錯覚を起こしそうになる。
芥川龍之介が羅生門で「黒洞々たる夜があるばかり」と結んでいるけど、あれを思い出すような。
ちなみに上も覗けまして、同じようにどこまでもどこまでも続いていた…いったいどこまで行けるんだろうこの箱。

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「試着室」。
色々見てきてだんだんわたしもエルリッヒ氏という人がわかってきたのか、
ただの試着室ではなさそうな雰囲気を入場前に感じ取りまして
「さあなんでも来い」とわくわくしながら入場。
そしたら、、

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目の前は鏡。ふむ。
椅子が隣にも映ってるから隣も鏡で、いや待て、なぜ隣に人がいるんだ…などと
入ったそばからさっそく混乱。

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よく見ると鏡のない壁とある壁がランダムに設置されているらしいとわかり、
手でたたいたり足でまたいでみたりしながら個室の中を移動。
この写真も、手前とその奥は鏡がなくて一番奥には鏡があるので結構頭を使います…。

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定番の合わせ鏡ですが、定番じゃないのは自分の姿が映るのが一番手前の鏡ではなく
いくつも奥の鏡だったりするところ。
椅子がまるで鏡に映っているかのような絶妙な位置に置かれているので
自分が映らないとびっくりしちゃうよね…人間の脳って本当に簡単にだまされますね。

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ヨロヨロと出口に到着。
迷路とも迷宮とも違う意味でもう二度と出られないかと思った…出られてよかった。でも楽しかった^^

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「グローバル・エクスプレス」。
電車の窓から見える風景が映像でループしているのですが、景色は日本や海外の風景です。
これぞリアル「世界の車窓から」(笑)。
風景だけではなく隣を並走する電車なども映ったりします。
写真だと止め絵でよくわからないので、動画を一部Twitterに上げました→こちら
(光ってしまってわかりにくいかもしれませんが、雰囲気だけでもどうぞ)

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「美容院」。
先に入った人たちがやはり楽しそうなので、さあ何があるのかと入ってみたら。

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椅子に座っても自分の顔が映らない、てか鏡の向こうに自分がいない!何回目だこれ。。
手を伸ばしてわかったのですがこれ鏡が取っ払われて向こうの部屋の現実空間が見えているのです。
(なので自分以外の人が向かい側に座ると、まるで鏡の向こうに自分以外の顔が映っているみたいな
不思議な状況ができあがる)

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というわけで隣の部屋へ行ってみますと。

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こちらでは鏡があって、自分の姿も映りました。
どうやらこの美容室は2つの部屋がくっついて並んでいて、真ん中の壁の席には鏡がなくて
壁側の席には鏡がついているという構造になっているみたい。
だから真ん中の壁の席に座ると、遠いけど合わせ鏡が見えるんですな。

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「建物」。
SNSやポスターなど展覧会の宣伝物で一番よく見かけたインスタレーションで、実際に見るのも楽しみでした。
建物の下に人がいて、建物に人がいっぱいぶら下がって、さらに建物の上に人が立ってる(笑)。

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横から見るとこう。
床に設置されたファサードに寝そべると、斜めに設置された巨大な鏡に映って
まるで建物にぶら下がっているように見えるのです。
ぶら下がるだけじゃなく、欄干に座ったり、逆さまに落っこちるポーズなど
皆さん思い思いに楽しんでいらっしゃいました。

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「建物」の模型。
下に寝そべる人々が上の鏡に映っているの、わかりますでしょうか。

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「建物」の写真。
どうすれば「あぶねー!」「危機一髪!」みたいなポーズに見えるかみんな楽しみながら考えている感じで
その時間もひっくるめてアートなんだなあと思いました。
ものづくりは楽しい時間なのだよね。

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過去にエルリッヒ氏が各地で発表された作品の写真と模型もありました。
こちらは「溶ける家」。
2015年のパリ協定の際に制作されたもので、溶けるパリの家によって
地球温暖化のため溶ける南極や北極の氷を表現したのだそうです。
また、別題を「わたしの子どもたち(Mes Enfants)」といい、溶ける家(Maison Fond)と発音が似ているため
未来の子どもたちへの影響も同時に表現しているそうです。
テーマもさることながら家の溶けっぷりも見事ですな…。

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ラピュタみたい、と思った「根こそぎ引っ張られて」。
人間が建てた家の下には土があり植物の根があり、
またその家に住む人たちの歴史も積み重なっているもの、というテーマを表現したもの。

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「ファーニチャー・リフト」。
梯子のみによって支えられたフランス窓が宙に浮いて見えます。
エルリッヒ氏いわく「引っ越し中」なのだそうで、
じゃあこれはここからもうすぐ撤去されるのか、それとも建物の他の部分がこれからここに移動してくるのか。
どちらにしろ過程と完成図を想像すると楽しい^^

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「タワー」。
下から人が窓を覗きこんでおりますが、
上階にいる人が逆さまになって宙に浮いているように見えるそうです。
(実際は強化ガラスの上にいる人たちが鏡の反射で見えるだけのよう)
会場にあったのはこの模型のみでした。再現するには天井の高さが足りなかったのかも。

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「エレベーターの迷路」。
こちらも合わせ鏡ですが、試着室と同じで鏡があったりなかったりするので
自分が映るのはきっと奥の奥にある鏡なんだろうなあ。あと向こう側が見える。

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「回転木馬:適切な時に、適切な場所にいるという任務」。
メリーゴーランドのタイトルですが回るのは馬ではありません、家具です(笑)。
壁がとっぱらわれ寝室、台所、バス・トイレ、リビング、玄関など室内が見える一軒家がグルグル回っているのですが
ダイニングでは椅子が、寝室では枕が、バスではトイレや洗面台が、台所では調理台が
メリーゴーランドの木馬のようにぴょんぴょんするんです!
やっぱり写真だとわかりにくいので動画をご覧ください→こちら
個人的にこれが本当に楽しくて一番長く眺めていたと思います^^ お部屋のメリーゴーランドいいね☆

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スイミング・プールの模型!金沢21世紀美術館にある作品ですね。
(過去にわたしも訪れたことがあります→こちら

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模型見ると余計にまた行きたくなる、金沢行きたい~~!
このプールはシンプルな構造ですが、だからこそハマる。本当にすばらしい作品です。

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今度はなんだ!と思ったら実は出口でミュージアムショップの本棚だったという。。
まんまとエルリッヒ氏ワールドにハマっている!
というか梯子といい整然と並ぶ本といい、エルリッヒみあるデザインの本棚だわ。

いや~~~~~~楽しかったです…!
一見何でもなさそうな写真が実は現実から少しぶれていたり、鏡の仕掛けにびっくりしたり
単純に現実のループだったり、イメージを何度も裏切られたりアハ体験の連続で頭がくらくら。
エルリッ氏の作品は日常生活で見慣れたものが使われていることが多いから
ふいにいつもと違ったアプローチで突きつけられると戸惑うけど
頭の中で価値観がドッタンバッタン大騒ぎするのは快感でもあるんですよね。
日常的なものや現実の秩序について疑問を持つこと、疑って別の視点で想像すること、
そして再考すること、などをエルリッヒ氏はずっと続けてきたのだな…。
ほんとにほんとに楽しかったです。これからも楽しみなアーティストさんです。

ご本人による展覧会紹介動画はこちら→森美術館のスペシャル動画

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スカイデッキで夜景も見てきたのですが
エルリッ氏に感化した後で東京タワーを見ると
あのてっぺんを覆い隠して地上のどこかにてっぺんをドンと置くみたいなアートを
どなたかやってくれないかなって思う、今も。

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次に六本木に来る目的はきっとこれです!楽しみ。
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