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つゝしりうたう笛の音に、鼓のしらべ打ちそえて、立ちぞあがれる旦開野が、態も体も美しき。 

2018, 03. 28 (Wed) 23:54

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太田記念美術館の「江戸の女装と男装」展に行ってきました。
吉原俄や天下祭の手古舞、歌舞伎の女形、神話や小説の登場人物、見立絵やつし絵などの文化から
江戸時代の異性装を紹介する展覧会です。
アキレウスやジャンヌ・ダルク、シュバリエ・デオン、ジョルジュ・サンド、オスカル・フランソワほか
歴史やフィクションを問わず異性装の文化はたくさん見られますけども
太田記念さんは浮世絵の美術館なので浮世絵の中にその描写を探るというわけですな。
異性装の作品はよく見かけますが意外にも太田さんでもこれだけまとめて展示するのは初めてだそうで
もっとやっているイメージが勝手にありましたけど、そうでもなかったのか。
(たぶんわたしが役者絵を見すぎてるんだと思う)

まずは祭礼における異性装から。
江戸時代の吉原の年中行事にある俄(樋口一葉のたけくらべにも出てくるね)では
女性の芸者が吉原の街を練り歩く際に鳶職の格好をして獅子舞を踊ったり
男役も含めてすべての役を女性が演じる即興芝居などが行われておりまして
そのお祭に関する錦絵はたくさんあるようです。
菊川英山「青楼仁和嘉全盛遊」には男髷にたっつけ袴をはいた芸者さんたちが、
落合芳幾「仲之町仁和賀一覧之図」や「獅子王二和賀全盛遊」には男装の獅子舞が
それぞれ描かれています。
歌川国貞「美人合 俄」は手古舞の女性と真っ黒い獅子のドアップで
手古舞は鈴やコウモリが描かれたおしゃれな着物を着ていて素敵。
(手古前は手棍前(祭礼で山車を組み立て先導した鳶職人のこと)が由来ともいわれているそうだ)
喜多川秀麿「青楼仁和嘉」には「だい」「ほん」という名前の芸者さんが
助六と白酒売りを演じた様子が描かれていて何だか楽しそう。
非日常から浮かび上がるのは吉原男芸者の存在。
月岡芳年「風俗三十二相」より「にあいさう」は黒船来航前の俄の芸者を描いたものです。
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展覧会のポスターにも使われていますね。
梅堂国政「勇肌祭礼賑」は九代目團十郎・五代目菊五郎・初代左団次・四代目福助の神田祭で
福助は女形なので手古舞の格好をしています。
あとは、吉原芸者の男装だけではなく少年の女装も。
石川豊信「若衆三幅対」は3人の少年を描いていますが、みな女髷に振袖羽織を着て刀をさしています。
うち一人は陰間で、髪型が崩れないように編笠をかぶり手で押さえている姿ですが
これは実際の陰間が客と外歩きをするときそうしていたからだそうです。
錦絵からわかる文化ってたくさんありますけど、これはその一例でしょうね。
文化といえば、歌川国貞・広重の合作「双筆五十三次 新井」は
新井の景色を背景に関所を通る少年の着物を改め婆がチェックしている様子の絵で、
これは男装した女性が江戸を出て行かないように取り締まる制度(入り鉄砲に出女というやつ)を
描いているんですな。
背景が広重で国貞が人物を描いています。それぞれの得意分野だねえ。
歌川国芳「祭礼行列」は江戸の山王祭附祭の様子を描いたものと思われますが
大原女や女伊達や藤娘などの異性装のほかに独楽の擬人化や鬼の念仏に扮した人々など
もはや何でもありの扮装が描かれていて楽しい!コスプレイベントみたい。
あ。附祭は奉行所から指名された町が山車行列の合間に仮装行列や踊りなどの出し物を披露するもので
歌川芳艶「新材木町附祭」では大鯉とその鯉を演じた人が描かれていたり
喜撰法師と茶屋女、小野小町の出し物など演目も様々あったことがわかります。

神話や物語の中の異性装。
トップバッターはやっぱり小碓皇子、月岡芳年は月百景「賊巣の月」に
女装して熊襲の館へ忍び込み天幕から中をうかがう皇子の姿を描いていて
鋭いまなざしの横顔にホレボレするし、
同じく芳年の月百姿「五條橋の月」、薄衣を纏って稚児の扮装をした牛若丸はいつ見ても美少年よね…!
弁慶に追い回されて五条橋を跳躍する姿が華麗で雅で美しい。
歌川国貞「対牛楼」、市村座の八犬伝の舞台に取材していて
女装した犬坂毛野が勇ましく仇討ちを果たす場面ですが
毛野の着ている着物が…子犬がいっぱいいる柄なんですがこれは…!!(´ω`)カワユイ
歌川国芳「里見八犬伝」からは仇討ちを果たした毛野が小文吾と離れ離れになる場面を描いていて
毛野は女装を解きかけているので振袖姿で舟をこいでおりました。すごいな。漕ぎにくくないかそれ。
同じく国貞「弁天小僧菊之助」、これも歌舞伎に取材していて
白浪五人男の弁天小僧が女装をとき「おれァ尻尾を出しちゃうぜ」のセリフをまくしたてる場面。かっこいい。
同じく国貞「しらぬひ譚」は白縫大尽に男装した若菜姫と千種に女装した鳥山秋作のバトルで
歌舞伎だから両方とも男性が演じているわけで、もう何がなんだか。
月岡芳年「阪額女」、建仁の乱で活躍した板額御前を描いた絵で
すっきりと髪をまとめ真っ赤な鎧に弓を構えて白馬に乗っています。白馬に乗った王女様かっこいい。
歌川広重「巴御前」なにこれ超かっこいい…!!
平家物語の馬の鞍で敵の首をねじきった、まさにその瞬間の姿を絵にしているのですが
巴の髪や鎧が大きく揺れて馬の躍動感もあって迫力満点だし
何より墨の色がすごくて、広重の筆さばきが暴れまわっている。
なんかこの展覧会は広重の魅力を再発見しておりますぞ…!かっこいい広重せんぱい。

歌舞伎の女形。
鈴木春信がよく絵にしていた三代目瀬川菊之丞、
今回は東洲斎写楽の「田辺文蔵女房おしづ」がおりました。
曽我物の歌舞伎で菊之丞が演じたおしづを、雲母摺の大首絵にしたもの。
歌川国政「一味斎娘おその」も、歌舞伎の毛谷村に登場するおそのに扮した菊之丞で
あの勇ましいドジッ娘ちゃんを菊之丞がどう演じたのか見てみたくなるような作品。
勝川春好「三代目瀬川菊之丞の女助六」は遊女っぽい衣装に病鉢巻した菊之丞にもびっくりですが
助六に女性バージョンがあったことにもびっくりしたよ!
揚巻は登場するのかしら…女なのか男なのか。女だったら百合になってしまうのか。(落ち着け)
鳥居清満「路考」、路考は二代目菊之丞の俳号で
縁側に振袖姿で灯を持って座る二代目をしっとりと描いた作品。素敵。
代々の岩井半四郎を描いた絵もあって、
歌川豊国「清和二代遨源氏」には四代目が、国貞の「楽屋錦絵」シリーズには五代目が、
「不二都久葉あいあい傘」には六代目がそれぞれ描かれておりました。
中でも目千両といわれた五代目半四郎の楽屋錦絵はお化粧中の半四郎もギョロ目でかわいいし
幕が少しめくられて客席がチラリと見えているのがわくわくしますね。
豊原国周「人丸於六 澤村田之助」は舞台で盗賊の格好をする田之助の絵で
かわいくこっち見てる視線がずるい。
田之助は16歳で立女形になり大活躍、しかし病気で四肢を失っていきながらなお舞台に立ち続けて
33歳で亡くなるのですが、今回は国周の描いた死絵もありました。
辞世と経歴の下にバストアップの田之助、両手を着物の袖で隠してあるのは国周の配慮でしょうか…。
(田之助は五代目菊五郎が伊勢だか大阪だかへ出張中だったとき「下に女が訪ねてきてるよ」って言われて
下りて行ったら田之助だった、という話が大好き)

見立て絵とやつし絵。
鳥居清長「やつし寒山拾得」は手紙を読む男女に置き換えられて
鈴木春信「やつし費長房」は鶴に乗って手紙を読む女性のかわいらしさもすばらしいし
絵の隅の鈴木春信画に加えて「森下里朝彫」「小川八調摺」と、彫師摺師の名前があったことに
むちゃくちゃ興奮してほわあぁぁああ!って声出るところでした、あぶなかった。。
画工や版元以外の名前が刻まれている錦絵ってほんと少ないので…ありがとう残してくれてありがとうこの出会いに感謝。
喜多川歌麿「見立六歌仙」は平安時代の歌人たちを当世美人に置き換えていて
黒主:おひさ、小町:花扇、康秀:おせよ、業平:おみや、遍照:豊雅、喜撰:おきた、が
それぞれ綺麗な着物を着て歌を披露しております。
同じく歌麿「高名美人見たて忠臣蔵 弐たんめ」も、松切の場面における加古川本蔵と桃井若狭助が
それぞれおせよといつ富という女性に置き換えられています。
鳥文斎栄之「見立五人の茶屋女」は雁金五人男に出てくる侠客を女性に置き換えていて
女性たちは尺八を持ち背景の暖簾にはそれぞれの家紋が。
西村重長「やつし琴高」は中国の琴高仙人を女性に置き換えていまして
手紙を読む女性の乗った鯉が川を行く様子はゆったりとして気ままな感じ。
勝川春扇「やつし玄徳雪中訪孔明」は三顧の礼における劉備・関羽・張飛と諸葛孔明が女性になっていて
演義のうえでは季節は春ですが、この絵では雪景色になっていました。
あーやっぱりわたしこの頃の錦絵が一番好きだ…紅絵や水絵から一気にカラーになった
できたばかりの頃の錦絵。
江戸後期のような派手さはないけど雅の文化の影響が色濃く残ってほどよく上品なのがいい。

風俗文化を考えつつ着物の模様や髪型などファッション表現の緻密さにも見とれる贅沢な企画でした。はふぅ☆
絵だと男装なのか女装なのかよくわからないのでその場合は髷を見るとよい、というのは
こちらの記事で学芸員さんが答えてくださってますけども
記事の後半でも触れられているように描かれた異性装は祭礼や芸能や創作が中心なので
実際の日常生活の中で男装や女装なさっていた人がどんな風に生きていたのかということまでは
この展示からはわかりませんでした。
男性同士の恋人で、見つかるといけないから女装してお相手と暮らしていた人とか
女に生まれて男装していたらある日乱暴されて子どもを産み、万引きを重ねて島流しになった人とか
江戸時代にも日常で異性装の人がいたという記録はいくつか残っているので紹介されたらよかったけども…。
藤原頼長の台記とまではいかなくても記録はやっぱりリアルタイム感があるから難しいのかな、
あとは差別の歴史とも向き合う必要があるしなあ。


で。
美術館の地下には手ぬぐいのかまわぬさんが出店しておられるので
毎回ちらっと覗きに行くのですけども、
今回は久し振りに出逢い☆がありましたのですよ。
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見てくださいーーーーーーー鳥獣戯画のお花見手ぬぐい(^◇^)☆
春の新作だそうで、絵柄を見た瞬間にハートを鷲掴みにされたのでレジに持って行きました。
お会計をしながら店員さんが「夏にも新しい柄が出ますよ」とかおっしゃるもんだから僕はわたしは、、
ああああああおのれよくもさらっと新作宣伝したな…!そりゃするか!!
夏には江戸の悪展があるけどあれ気になってるんよな…
行ったらきっとかまわぬさんにも寄るから絶対に新作目にするしウワアァ…!
でもかわいい…鳥獣戯画もかまわぬさんのデザインも…本能には逆らえない…☆
果たして夏のゆさは本能に負けて散財するのか。乞うご期待。
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