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知の連鎖。 

2018, 09. 10 (Mon) 23:55

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上野の森美術館の「世界を変えた書物」展に行ってきました。
金沢工業大学の工学の曙文庫が所蔵する科学技術や工学に関する初版本コレクションを
100冊ほど展示している展覧会です。
過去に金沢(2012)や名古屋(2013)や大阪(2015)で開催され、ずっと巡回を待っていたんですけど
やっと関東に来てくれましたよ~!
しかもこの規模で入場無料!写真撮影可!なのが更にうれしい。
ほんとにいいの?むしろ払うよ!?ってレベルで楽しかったです。
直筆はあまりなくてほとんど刊本ですが、学問や書物の歴史を通読できるので
学者、研究者、歴史ファン、初版本や装丁やフォントが好きな人も絶対楽しいと思いました。
会期が今月末までと短いので気になる方ぜひに!

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最初の展示室がこれです!
東洋文庫のモリソン書庫みたいに壁いっぱいに本棚が備え付けられ
すべての棚にKIT所蔵の書籍が詰まっているという夢空間。
お触り禁止のため手に取って読むことはできませんが背表紙見てるだけでも楽しいよ!

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やべ~~~~~何冊あるんだ!!?!?
正直、本の並べ方は全然なってないし全集と単行本混ざって凸凹してるし
分類見てもたぶんNDCじゃなく独自分類なのでどういう系統で並べてるのかよくわかんないけど
装丁の凝った古書がもっさりある空間はそれだけでワクワクします!
昔の人が書いた書物が今も残っていて読める…知の有機体だよ。たまりません。

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これだけの稀覯書を一度に持ってきちゃう企画者さんたちどうかしてる、ありがとうございます。
間に展示ケースがあって本がいくつか開いてありましたよ。

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アインシュタインの自筆研究ノート。
達筆でぜんぜん読めないけど、本文脇のスペースに書きこみがあったり二重線で消した跡があったり
彼の研究の一部が垣間見えます。あと意外と字がちっちゃい。

以下、気になった書物をご紹介していきます。
写真が多いのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆
 
 
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カルロ・フォンタナ「ヴァチカン寺院とその起源について」(1684年・初版)
システィーナ礼拝堂の建築や彫刻について。

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グラハム・ベルの自筆書簡と写真(1880年7月)
誰に宛てたものかはキャプションにも書いてなかったけど、サラサラした筆記体がきれい。

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ウィトルウィウス「建築十書」(1521年・初版)
レオナルド・ダ・ヴィンチがウィトルウィウス的人間として描いている、あのウィトルウィウスさんです。
彼は紀元前の人ですが、この本は彼の書物を活字にして印刷・出版したものですね。

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オーヴィル・ライトの自筆署名(1929年4月)
アメリカ航空協会競技認可証に記入されています。自信たっぷりの大きな字だった。

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マリー・キュリーの写真と自筆署名。
年代は不明ですが表情を見る限り晩年に近いかも。

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隣の展示室に入ります。
ここのコンセプトは「知の森」ということで壁に木の影が投影されていました。

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鑑賞者が歩いて壁に影ができることもあります。知の森を行く人間。たぎる。

ここでは基本的に書物が刊行年順に並べられているので、
書物をたどっていくと、先に刊行された書物からその後どんな風に研究が進んだのかが
後の書物を見るとわかるようになっています。
刊行から時間が経ってもう古いとされる研究書を残しておく必要があるのは里程標になるからなのだな。
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アリストテレス「ギリシャ語による著作集」(1495年・初版)
ヴェネツィアで出版されたもの。

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イシドールス「語源学」(1472年・初版)
こういう絵図はたまらなく好き。

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アルキメデス「四辺形、円の求積法」(1503年・初版)
アルキメデスの著書で最初に印刷出版された本です。

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レギオモンタヌス「アルマゲスト」(1496年・初版)
天動説を唱えたプトレマイオスの著作をラテン語に抄訳して出版したもの。

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ニコラス・コペルニクス「天球の回転について」(1543年・初版)
この辺りの本から著者が生きている頃に出版されるものが出てきますね。

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アイザック・ニュートン「自然哲学の数学的原理(プリンキピア)」(1687年・初版)
万有引力の発表をはじめニュートンの三法則や慣性の法則、作用・反作用の法則などを論じたもの。

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ヨハネス・ケプラー「新天文学」(1609年・初版)
惑星が太陽を中心とした楕円軌道を公転することについて発見した研究です。

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ルネ・デカルト「方法序説」(1637年・初版)
「Cogito ergo sum(我思う、故に我在り)」はここから。
彼は数学者でもあり、この本では幾何学の空間座標についての概念を示しています。

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クリスティアン・ホイヘンス「振り子時計」(1673年・初版)
振り子時計の軌跡の形を発見し遠心力の研究とともにまとめた本で
ニュートンの万有引力の発見はホイヘンスの研究が元になっているそうです。

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ガリレオ・ガリレイ「新科学対話」(1638年・初版)
彼はこの本を書き上げたあとで両目が見えなくなっています。

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ウィテロ「数学者ウィテロによる光学」(1535年・初版)
著者は13世紀の人で、これはヨーロッパで最初に出版された光学書。
ケプラーはこの本を読んで光学研究を始めたそうです。

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ヨハネス・ケプラー「天文学の光学的部分を扱うウィテロへの補遺」(1604年・初版)
人間の目にものが見える仕組みの発見について書かれ、
望遠鏡の光学理論からカメラについても言及しているとか。

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ロバート・フック「微細物誌」(1665年・初版)
植物の細胞を発見し「Cell(セル)」と名付けた人です。
挿絵はすべて本人によるエッチングで描かれています。精密!

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ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ「色彩論」(1810年・初版)
ニュートンが色彩を物理現象としてとらえていることに反発し、
色彩は人間の生理学的な機能に依存していると唱えたもの。

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オットー・リリエンタール「飛行術の基礎となる鳥の飛翔」(1889年・初版)
鳥の飛び方を飛行機に応用する研究について書かれたもの。
飛行実験中に亡くなった人ですが、彼が作り続けたグライダーは同時代を生きたライト兄弟に影響を与えています。

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ウィルバー・ライト「航空実験」(1901年・初版)
ノースカロライナでグライダーにエンジンを搭載した動力飛行を行った際の記録です。

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合衆国大統領調査委員会「スペース・シャトル チャレンジャー号の事故に関する大統領調査委員会報告」(1986年・初版)
今回展示されている書物の中でもっとも新しいもの。
空飛ぶ夢を追いかけた人たちの著書のあとに空を飛ぶことへの警告のような報告書をもってくるあたり
この展示構成、ぶっとんでるな。

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出品されている初版本のレプリカ。触ってページをめくることができます。
かなり精密に作られたレプリカで手触りなどもそのまんまみたいで、
ダーウィンの種の起源の初版本をめくりましたが当時の人もこれ読むときドキドキしたのかな…。
あとエウクレイデスの原論のレプリカは寄贈だそうですが某書店の名前のシールが貼ってあって笑った。

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どんどんいくよ~ゲオルギウス・アグリコラ「金属について」(1556年・初版)
鉱山や鉱物を観察し、現場で働く人たちの話も聞いてまとめたものです。
この内容は中国から日本へ伝わり、その影響で江戸時代には金山ブームが起きたとか。
平賀源内さんも秩父に金属を掘りに来たけどこういうところからも影響があったんだろうか。

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ロバート・ボイル「懐疑的科学者」(1661年・初版)
四大元素から賢者の石を作るという錬金術を否定し、元素は極微粒子であると主張したもの。

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アントワーヌ・ラヴォアジェ「化学用論」(1789年・初版)
ボイルが始めた化学用論を発展させ、検討・実験を行いまとめたもの。
空気中のある気体を「酸素」と名付けたのも彼だそうです。

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ジャン・テニエ「磁石の本性とその効果の価値について」(1562年・初版)
磁石を取り上げて様々な理論を論じていますが、そのほとんどは盗作によるものという問題の書。
しかし当時はよく読まれた本だったそうです。
よく捨てられずに残ったもんだ…偽書も歴史の一部だよね。

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トーマス・エジソン「ダイナモ発電機の特許説明書」(1884年)
ダイナモの原理を利用して発電機をつくり、さらに効率を上げた発電機を開発して
特許を取る際に説明するために書いたもの。

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ゲオルグ・オーム「数学的に取り扱ったガルヴァーニ電池」(1827年・初版)
電流の抵抗の式をE=IRで表せること(オームの法則)を示したもの。

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ハインリヒ・ヘルツ「非常に速い電気的振動について」(1887年・初版)
電磁波の存在と、電波の発受信を実証したことについての史上初の報告書。
周波数に彼の名前がつけられているのはこの功績によりますね。

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ヴィルヘルム・レントゲン「新種の輻射線について」(1896年・初版)
陰極線の実験中にX線を発見し、第一報と第二報の講演内容をまとめたもので
レントゲン写真もこのとき初めて人々に公表されたそうです。

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マリー・キュリー「放射性物質の研究」(1903年・初版)
ラジウムについての学位論文。
ここで気づいたのですが今回展示されている本の著者はほぼ男性で女性は彼女一人でした。
科学史の背景を考えさせられる。
(キュリー夫妻の娘のイレーヌも放射線研究の科学者で論文出してるし、
アインシュタインとかも妻が論文の査読できるようなレベルの人だったと思いますが
そういうエピソードとか紹介したらおもしろいのになあ)

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湯川秀樹「素粒子の相互作用について」(1935年・初版)
中間子の存在を予言したもので、後にイギリスのセシル・パウエルにより発見・実証されています。

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合衆国戦略爆撃調査団「広島、長崎に対する原子爆弾の効果」(1946年・初版)
アメリカの調査団による原爆の被害状況、爆発の状況などの調査報告書。

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ゲオルグ・リーマン「幾何学の基礎にある仮説について」(1867年・初版)
三次元空間が曲がると四次元空間になることなど、幾何学全般についての論文。
これがなければ四次元ポケットもなかったかもしれないと考えるとまさに世界を変えた書物だなと(笑)。

ここからは東京会場のみの特別出展。
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アルブサマル「占星術」(1488年・初版)
アラビアの占星術家だった著者の、写本として最初に出版されたもの。
現代でもなじみのある星座の挿絵がおもしろい。

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ジョルジョ・ヴァザーリ「最も優れた画家、彫刻家、建築家の生涯」(1568年・増補改訂版)
ルネサンス期における著名な芸術家たちの列伝書。
今となってはこの本でしか人生がわからない芸術家もたくさんいるようです。
本文はまったく読めませんがミケランジェロやラファエロの名前を見つけてちょっと楽しかった^^

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ヨハネス・ヘヴェリウス「天文機械(上巻)」(1673年・初版)
自宅の庭に天文台を作ってしまった著者の、観測器のデザインと観測方法について書かれたもの。
下巻にはその機械を使った実験データが書かれていたようですが
発売直前に原稿が火事で燃えてしまいほとんど残っていないとか。。

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ブレーズ・パスカル「液体の平衡および空気の質量の測定についての論述」(1663年・初版)
大気力学とパスカルの原理について述べたもの。

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セバスティアン・ル・プレストル・ド・ヴォーバン 「要塞都市の攻撃と防御」(1737年・初版)
築城技術や攻城技術についてまとめたもので、星型要塞についても書いてあります。
函館市の五稜郭も彼の理論を参考にしたといわれています。

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チャールズ・ダーウィン「種の起源」(1859年・初版)
彼の業績については大英自然史博物館展で大まかに学びましたが
そういえばあちらには原稿が展示されていたなあ。

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アレクサンダー・フレミング「アオカビ培養基(ペニシリウム)の抗菌作用」(1929年・初版)
ペニシリン発見についての記録。
てっきり左手の法則の人かと思ったらあちらはジョン・フレミングさんなのだね。気をつけます。

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ジェームズ・ワトソン、フランシス・クリック「核酸の分子的構造」(1953年・初版)
DNAの分子構造が二重螺旋であることを提唱したもの。

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NASA「アポロ11号の任務記録、月面への第一歩」(1969年・初版)
7月に人類初の月面着陸に成功した際の交信記録。
先年亡くなったアームストロング船長の「これは小さな一歩だが人類にとっては大きな一歩」の言葉も
このタイプスクリプトによって公表されています。

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最後の展示室にはこんなモニュメントが。

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今回展示されている資料のテーマや業績をダンボールで構築しリンクさせたオブジェ。
個人的にこのあたりがツボでした。

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こちらは本に見立てた木の板を天井まで積み重ねたオブジェ。
たまにページが印刷してあって、これ展示してあった図書の中味ですね。

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出口にある撮影スポットには巨大初版本が!
大きな本の隣に立つと自分が小さくなったようで、何だか妖精気分が味わえます。楽しい。
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