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以上、ゲゲゲの先生へ。でした。

2018.10.19 23:56|舞台鑑賞
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東京芸術劇場で佐々木蔵之介さん主演の舞台「ゲゲゲの先生へ」を観てきました☆
蔵さんと付き合いの長い前川さんが脚本を担当されると聞いて楽しみに行きましたらば
水木しげる氏の短編をオマージュしつつ、人間も妖怪も神様もSFも現代批判も詰め込んで
次々に現れては消える現象(あえてそう言います)が目くらましのようでした。あっという間の休憩なし2時間だった。
仕事帰りだったので寝ちゃったらどうしようと思ってたけど杞憂に終わりました。ホッ。
わたし前川さんの本は空ヲ刻ム者に続いて2度目ですけど
今回も相変わらず怒涛のセリフ劇で飽きさせない工夫も随所にあって
演劇としてのレベルがかなり高かったように思います。
かぶりつき席でもないのに夢中で観てしまったのはセリフが引っ張ってくれたのかも。

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夜の芸劇。初めてだよ。わくわく。

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天井高くて吹き抜けも広いよ。わくわく。

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公演は2階のプレイハウスにて。
劇場内はほどよい広さで役者さんとの距離も近くて、かといって圧迫感もなくて
ライブ感がビリビリ伝わってきました。
サザンシアターともパルコとも歌舞伎座とも違う、上演中はその世界観をぎゅっと濃縮するような空間で
思いっきり浸れてよかったです。いい劇場だ。


以下、ネタバレを含む感想です。これから観劇の方はご注意ください。
大丈夫な方はクリックしてどうぞ~。↓
 
 
蔵さんの舞台を見るのはマクベス以来3年振りで、現代劇を見るのも久々だったので
必要最低限の大道具と小道具で背景が次々に変化していくのが何だかとても新鮮でした。(歌舞伎の見過ぎ)
舞台上にあるのは一間の座敷で、ちゃぶ台と箪笥と障子、あとは腰かけられる低さの柱っぽいもののみと
割と殺風景。
ところがいざ劇が始まるとこれらが実にいい働きをします。
特に障子!大小さまざまな障子がとてもよかった。
蔵さん演じる根津さんの住む家の障子としての役割がメインなのですが、
場面転換のたびに右へ左へ、やたら激しくザザーー!っと動かされて
病院の壁になったりビルになったりこの世とあの世の境目で開け閉めされたりと色んな役割がありました。
障子にこんなに意味を持たせる舞台ってあまりないんじゃないの…?て思ったし
障子が動くと「あっ今場面変わったんだ」ってわかるので気持ちも切り替えられて助かりました。
根津さんの自分語りで、過去から現在へ場面が変わるときも障子がザザッと動いて
回想シーンにいた花子さんやおばばがそのまま現代にもいて根津さんや男女と会話を始める演出は
まさに演劇ならでは。
現代劇は想像力が要るのだ…。

ものすごくおっかない夢を見た蔵さんが、夢から覚めると客席をチラ見して「何見てんのよ」って指さす幕開け!爆笑!
ねずみ男がモデルという根津さんは飄々としてつかみどころがなくて何とも言えない存在感がありました^^
詐欺師なので頭がよく、お金が好きで、でもダラダラするのも遊ぶのも好きで
「人間いつか死ぬ」とライトに考えている割には詐欺がやめられなかったり
食べなくても生きられるのに食べてしまったり友達が見えなくなると寂しがったりして
人間と妖怪の思考が混ざり合って人間にも妖怪にも見えるキャラクターです。
人間と妖怪の魂を半分ずつもっているから肉体的にも精神的にもこの世とあの世を反復横跳びしやすいのかな…。
渡柄杓のことを知っていたり、少年時代から変な丸い輪をくぐって死んだ友達に会いに行ったり
コケカキイキイの正体を何となく言い当てたりもするので昔から素養はあったんだろうな。
人間たちにコケカの言葉をフィーリング翻訳で伝えて、後でわかるわけないでしょ!と白状したけど
コケカが根津さんに対してそれは違うみたいに怒ったりしてなかったのを見ると
彼女の言いたいことはちゃんと伝えられる人だと思うし、
自分を頼ってきた男女が父親に追われていると知ると、追って来た父親を一度信じさせた後出し抜いて
「アタシ詐欺師だから裏切るよ」ってセリフ決めてむちゃくちゃかっこよかったです。
人前でもしょっちゅうおならするし下ネタ言うし、言ってることの半分以上は嘘で服装もだらしないけど
本家のねずみ男もだいたいこんな感じだよなあと思って笑えましたね。
強欲だけど狡猾ではなく、お金好きだけど執着はなく、世の中に責任がないから容赦ない批判をぶっ刺してくる。
一緒にいるのは大変だけど視点はおもしろいから気になってしまうみたいな人かなあ、
すごく複雑な内面を持つ役だなと思いました。おもしろかったです、蔵さん。

その根津さんが、家に泊めた男女に自分の生い立ちを語るシーンが秀逸でして!
(言い忘れましたが作品の舞台は今から30年後の日本で、子どもが生まれなくなり人口が減ったので
妊婦と子どもを政府が管理するとお触れが出たので町から逃げてきた若い男女が
根津さんの家に迷い込んでくるところから始まります)
「聞いてくれ」って男女と客席に向けて話し始めるのでメタっぽいんですけど、
舞台上にわーっと役者さんたちが出てきて一気に騒がしくなって、その中で根津さんがひらひら動きながら
「若い頃はスリをして(言いながらすれ違う人から財布を奪う)」「万引きもやったし(同じく鞄、ジャケットなどを奪う)」
「食べ物も(同じくペットボトルを以下略)」などの一連の作業をやってのけるんですけど
あれものすごく緻密に計算されてると思う…!
スタントマンとやられ役の呼吸みたいな見事さが役者陣にありましたよ。
タイミングが悪いと台無しになりそうなスリルもあるから経験と勘が物を言いそう、すごいものを見ました。

人でないものたちもいい味出してる。
松雪泰子さんの花子さんはハーフではなく純妖怪(?)なので
(いやプライドのある方だから精霊って言わなきゃ怒られそう)、
自分たちはここにいてもいなくてもどっちでもいい、とかストレートに考えていて
時々自分たちの領域にふらりと迷い込む人間たちをおもしろがってからかったり
気まぐれに助けてやったりする雪の精霊です。
(迷い人の周辺の空気を彼女が冷やすと、「あれ道間違えたかな」って人間が自分で気づくっていうの素敵)
わたしも花子さんに道教えてもらったり熱中症治してもらったりしたい。
ていうか松雪さん細い!顔小さくて細っそい!!立ち姿も座り姿もめちゃめちゃ綺麗でした…!
根津と再会してハグされるシーンは松雪さんを抱える蔵さんがすごく大きく見えたもん。
男女に自分語りするシーンでは家具の小さな箪笥に腰かけて
器用に向きを変えたり箪笥に馬乗りになったり、クルクルとポーズを変えていてすばらしいバランス感覚。
あの身体能力には驚かされます。鍛えてらっしゃるんだろうなあ。
おばばとグルになって根津さんをやりこめて人魂のてんぷら食べさせちゃうけど
あれすらも彼女にとっては日常でコーヒー飲むみたいな些細な事なんだろうな…。
そう!白石加代子さまのおばばがとにかくすごい。
詐欺師時代の根津さんが訪ねて行った日本家屋で出会って
根津さんは息子と勘違いされたのでちょうどいいやと利用しようと乗ったら実は…という流れなんですが、
最初はいるのかいないのかわからないくらいに気配を消して登場なさって
一見、普通のおばあちゃんなんですけど
根津さんと会話するうちにどんどん声色もトーンも変わってあっこれやばいやつ…と根津さんが思う頃には
もう逃げられなくなっていたっていう。こわわ。
気づいたら舞台上で誰よりも存在感があって白石さんが何か言うだけで聞いてしまうし見てしまうんです!
百物語のときもたったひとりで客席の全部を引きつけていらしたけど今回も引力がすごかった。
たぶん砂かけ婆がモデルだと思うんですけど、雨を降らすこともできるみたいで
野外フェスに大雨降らせに行ったりもするみたい。(おばば曰く「その方が盛り上がるんだよ!」ですって)
豆蔵さんのかわいさよ。天井下がりだったり垢なめだったり家鳴りだったり、やることがたくさんありそうですね。
演じる森下さんは前川さんが主宰する劇団イキウメの方だそうです。
3人で根津さんに人魂のてんぷら(with猫魂)食べさせて魂下ししたあと
「猫魂が定着したら猫好きになるかな」「猫語がわかるようになるとか」「猫アレルギーになるとか」なんて
ケタケタ笑い合うのがザ・妖怪の会話って感じでかわいかったです。
その後、三太くんが根津さんを助けてほしいって言ってくれたので根津さんは魂を戻してもらえるけど…。
あ。三太くんは根津さんが少年時代に丸い輪をくぐって会いに行っていた男の子です。
虐待されて子どものまま亡くなったのでずっと賽の河原にいたみたいですが
劇の後半で15歳の若手実業家に生まれ変わって登場したのでめっちゃびっくりしました(笑)。
彼にコケカキイキイの言葉がわかるのは生まれ変わる前の余波なのでしょうか…。
この劇における妖怪の考え方は、基本的には水木テイストを踏襲していて
「気づいたらそう生きていた」「そういう風にできている」「存在意義はわからない」
「人がいない場所にはいないけど、そのとき自分がどうしているかは興味がない」みたいな、完全に感性の存在で
生死も何もかも軽々と超越してしまっているような、なるようになるさ精神なのがすごく水木さんだなと思う。
あと、村祭の踊りだといって青年団長さんがドクドクに扮して現れたときはうおおおって叫びそうになった、
まさかまさかパプアニューギニアの彼らが、放送中の鬼太郎6期にもチラッと出た彼らが~!
水木さんの回想マンガにはだいたい出てきますよね。不気味でかわいいよね。

手塚とおる氏がおもしろすぎてずっと笑ってました。
この方テレビでお見掛けしてもおもしろいけど、ナマで見たらもっとおもしろかったですね。
錬金術をやろうとする農夫の手慣れた感、もうずっと諦めずにやってるんだろうな…。
大きな甕を前にして「ガマの油!」「はい!」「イワシの頭!」「はい!」「ヤモリの目!」「はい!」と
妻と一緒に色んなものを手際よく入れていくんですけど
(最後に入れる薬缶のときのセリフは毎回違うらしくて、わたしが見に行ったときは「水素水!」って言ってた)
結局いつも失敗してるらしい。
根津さんが言うには「あの夫婦は錬金術を始めてから幸せそう」とのこと。
ぬらりひょんをイメージしたという山田市長は欲のかたまりで水木マンガによくいるタイプの人相ですな~。
人々がデモで掲げるプラカードに水木マンガの山田さんの絵が描いてあって笑ってしまった。
根津さんによってコケカキイキイの生贄にされ、ドクドクに連れて行かれてフガフガ病になってしまうのも
水木テイストの結末だなあと思う。
そんな市長から逃げてきた男女を演じる水上京香さんと水田航生さん、
根津さんや妖怪たちに最初はびっくりしたり振り回されながらも徐々に肝が据わって
最後にはあの家に住みついてしまう過程を丁寧に演じていらっしゃいました。
要さんは父親に見つかって水木ビンタされてもやり返したり
親の決めた婚約者に「傷物」と言われて「人をモノみたいに言わないで!」ときちんと怒りを表明していて
強いなあと思ったけど、強くならざるを得なかった人なのかもしれないな…とも。
根津さんや花子さんと話しているときの方が楽しそうに見えましたのでね。彼女の素はこっちかなと。
忠さんは今のところ、要さんを愛する以外に力になれそうな部分がないけれど
とにかく一緒にいてあげてくれって思う、今はそれだけ。
あと池谷のぶえさん!ファンになりました(笑)。
しっかり者の児童福祉施設の職員さんから錬金術をやる農家の女性、果てはコケカキイキイまで
役の振り幅がでかすぎて頭が追いつきませんでした。
コケカキイキイ不気味でかわいいよ~~!デルココ、デル。あデルココ、デル!(手拍子)
ええじゃないかを彷彿とさせるコケカ音頭、音頭は鎮魂のほかに神様への捧げものとしての意味もあるから
コケカさん喜んだんじゃないですかね。
彼女が登場したとたんに巨大・破壊活動・人語通じないのトリプルでスペクタクル感が5割増して
ぞわぞわっと怖かったです…クライマックスきたお…!
ステージのど真ん中に無表情で立つ姿が神々しいやら恐ろしいやら、
神は有難いものではなく鎮めるものであるというのを久々に強く意識しました。
生贄をもらったので街からは去ったけど、また別の場所に訪れて同じことを繰り返すんだろうか。

そんなスペクタクルがあっても終幕は最後まで水木テイストって感じのユルさで
あ~水木マンガってこんな感じだわって思いました。
根津さんは長いこと花子さんやおばばに会えていなかったけど、
要さん忠さんが来て2人も妖怪を否定しなかったから、また見えるようになり再会できてよかったです。
「久しぶり」「その感覚全然ないのよ」「俺は20年待ったよ」「そういうとこ人間よね」のやりとりが素敵^^
おばばも「うるさいね」って言うけどまんざらでもなさそうな表情が気持ちを物語っていたね。
蔵さんが「俺も最後は来んねん!」とおっしゃったという意味がわかった。じんわり、いいラストでした。

カーテンコールは2回☆
ステージにずらりと並んだ役者さんは20人もいなくてえっほんとに…?ってなりました、
蔵さんと白石さん以外は2役3役こなす人が多かったんだよね。
蔵さんがホッチキスの本体かと思うくらいに深々とお辞儀されて、何だか恐縮してしまいました。
おもしろいもの見せてもらってこっちこそお辞儀したいよ。

わたし現代劇はあまり見るほうじゃないので、見慣れた方にとってはよくある演出なのかわかりませんが
演劇ってこんなこともできるんだ!と色々発見できた舞台でした。
セットがギリギリまで縮小されているので、能狂言のような想像力の要る内容でしたが
最小限の道具と効果音と役者の演技で今どんなシーンかちゃんとわかるようになってるのすごいと思う。
作り手がこちらの想像力を信じて最大限に引き出せるよう巧みにセリフ配置してくれていたというか…
前川さんは構成力の塊かな!?
暗転することなく次から次へと目まぐるしく場面が変化していったり戻ってきたりするのは
とても映像的でもありマンガ的でもあり、現代劇だなあと思いました。
そういえばこれは水木さんの短編がヒントになっているんだった…
「丸い輪の世界」「錬金術」「コケカキイキイ」の3編だそうです。読んでみたい。

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あまりに楽しかったので台本買ってしまった。芸劇は販売してくれるからいいよね~。
帰りの電車の中でさっそく読んだら割と忠実というか、アドリブはあまりなかったんだなと気づいて
前川さんてこんなにセリフで遊べる人なんですね…それを再現した蔵さんたちもすごい。


そういえば根津さんが言いかけた友達…病的に人間の味方をやってる友達は今も人間を助けているのか、
それともあの世界にはもういないのか、さて。さて。
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テーマ:演劇・劇団
ジャンル:学問・文化・芸術

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Author:ゆさ
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