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2019_11
09
(Sat)23:54

この世界の果ての誓い守りとおす。

小野不由美『白銀の墟 玄の月』全4巻を読み終えました。
十二国記シリーズの最新刊で、番外編が中心の短編集を除くと18年ぶりの本編新作で
18年も待ったので期待しすぎかなと思いつつ読んだらとんでもありませんでした。
1・2巻が先月に発売されて、3・4巻が今日発売だったのですけど
先月に1・2巻を読んだら長い長い状況説明ばかりで何も話が進まないまま終わってしまって
待って待ってこんな状態であと1ヶ月待つの、マジで??ってなりまして
でも発売日まで待つしかなくてあまりの苦行に耐えきれなくて今日手に入れて一気に読みました。
1・2巻と同じくまったく話が進まなくて、ページが残り少なくなっていくのに解決の兆しがまるで見えなくて
残りのページ量を何度も確認しながら大丈夫だろうか一区切りするだろうかと不安になって
何度も最後のページをめくりそうになってそのたびに必死に耐えて
でも残り100ページくらいからそんなことも気にならないくらい一気に話が進んで
「わー!」「わー!!」「うわーー!!!」とか叫びそうになりながら読んでました。
これは18年かかるわ…1・2巻の伏線も過去シリーズに繰り返し描かれてきた設定も
全部全部活かされ回収されていく様が鮮やかすぎて見事でした。
小野主上お疲れさまでした。本当にありがとうございました。

とにかく胸がいっぱいなので以下、ネタバレを含む感想を遠慮なく書いています。
未読の方はご注意ください。
(あと、近いうちにまた読み返す予定なので加筆するかもしれません)



これでもかというくらい多くの人があっけなく去っていくし、何度も何度も絶望にたたき落とされるし
もうダメかも、という底から一転、ラストまで一気になだれ込む怒濤のような展開。
読み終えてしばらくはボーっとしてしまって、これまでのシリーズのこととか思い出してしまったし
さみしいけどこれからやっと戴の歴史が始まるのだという期待と
おそらくまだ全部描かれてはいないだろう摂理のあれこれが気になってしまう感。
小野主上は波のインタビューで「すべての王と麒麟を書くつもりはない」とおっしゃっていたので
世界観についても同じかもなあ、とは思っています。
(というかあのインタビューすごかったな…小野主上が自作を語るの久々に見たし
相変わらずこれでもかとストイックな物語作りをなさっているのがビシバシ伝わってきました。
泰麒が川端訳のセドリックというのは初めて聞いた気がします!
ナルニアの影響というのは楽俊のモデルがリーピチープであるとの話だろうか、
荻原規子氏がどこかのインタビューでおっしゃっていたやつ)

18年も時間があったのと、既刊における世界観の説明と、十二国記における人物の描かれ方から考えて
阿選が謀反を起こした理由は想像できたし、3巻で気持ちを吐露する描写を見ても想像の範囲を超えていなくて
「やっぱりね」と思いましたけど、でもだからこその地獄感がありました。
驍宗と姓がおなじで、年も地位も近くて、馴れあうつもりはなくてライバルとして見ていて
一緒に戴のために働くはずだったのにいつの間にか驍宗より先に手柄をたてることを考えてしまって
驍宗がそうじゃないとわかったときの、自分の独り相撲だったのかと思ってしまう気持ち。
昇山で選ばれなかったとき自分がどうなってしまうかわかるから行かなかったけど
でも選ばれたのは驍宗で、それでも驍宗のことは嫌いになれなくて
代わりに泰麒を憎んでしまったりする気持ち。
驍宗の生死が不明なうちは国をほったらかしてボーっとしてたのに
生きているとわかったとたんにああまたこれで競い合えるって排除しようとする気持ち。
めちゃくちゃ人間味のある人でした。でもだからって国民を巻き込むな。そういうところが「王」ではないんだな…。
同じ姓の王が二代続くことはない問題も、琅燦に言われなくても知っていて
(これ前に楽俊も言ってたけどあまり知られていない慣例でしたっけ?)、
だから泰麒に王だと指名されても信じずに、むしろそれを利用して
泰麒が絶望する顔が見たいって思ってしまう気持ちもなあ…。
鈴が『風の万里~』で言ってた「本人について考えてもみないで勝手に絶望していく」のセリフとか
思い出してしまったし、
かつてアニメ化で昇紘や斡由がめちゃくちゃ手ごわい悪役になったみたいに
阿選もアニメ化したらそんな風になりそうな気がします。脚本次第ではあるけど。

個人的に一番気になっていた琅燦が生きていてくれてホッとしたのと、
彼女の好奇心が阿選に謀反を起こさせるきっかけのひとつであることもわかって
戴の混乱の原因は彼女にもあるよなあ、と思いました。
阿選が謀反を起こしたのは小さなきっかけの積み重ねだったと思うけど
彼女のひとことも確実にそのうちのひとつではあると思う。口調もいちいち挑発的だし。
クライマックスで泰麒を「やっぱり化物だ」と評したのは武者震いというか、
事例採取のために典型やセオリーを集めていたら例外を目にしてしまった研究者の目線であって
驍宗と泰麒が戻ってきたことを喜んでるばかりじゃないよね。
あのセリフを聞いて思ったのは琅燦は観察する人だということでした。自分の興味だけで動く人。
泰麒は、琅燦は敵ではないと最後まで思っていたけど、確かにその通りですけど
たぶん彼女は自分の知識欲を満たすために必要な人物の側にいようとしているだけなんだな。
冬官長の地位もそのために必要だったんだろうし。マッドな学者め!好き。
耶利の主人が琅燦かどうかは今後明かされることはあるのかな…?
泰麒が問いかけても耶利は答えなかったからわかりませんけど、琅燦じゃなくても黄朱の誰かとか
あとさらにバックに更夜の影を見た気がしました。
想像の余地を残して明言しないのがこのシリーズの良さでもある。

泰麒強くなったねー!
まさか18年ぶりに帰ってきた彼が不屈の精神と知略と政治力と名言と大人びた雰囲気と
人々をあざむく知恵と王のために暴力をふるう決断力を引っさげて登場するとは思わなかったよ。
いや、『黄昏~』の後半で李斎と話してるときの口ぶりから聡明なのは伝わってきてたけど
今回、自分の状況と戴のトップを利用して国民を救おうとするえげつない成長の仕方してたじゃないですか、
1巻から知略がフルスロットルですごかったよ。
特に後半、驍宗が生きていると判明してからの泰麒は陽子が覚醒したときのような凄みがあって
元々そういう素質があったかはわからないけど、確実に育った環境と逆境が影響していて
しかもそれらが「今の」泰麒にとっての武器になっているのがもう、しんどい。
泰麒が3巻で「先生」と呟くのたまらなかったし、
阿選にむりやり叩頭しようとしたときはやめてやめてダメだよ~~って泣きそうになった。。
額に杭を打ち込まれるような苦痛とか…おま…おまえ…頭割れたらどうするつもりだったんや…。
4巻クライマックスは『風の海~』のクライマックスを彷彿とさせるのでぜひ映像で見たいな!
黒麒麟であることが移動手段としては他の麒麟よりも簡単だけど
政治の場においては金髪でないことで不利になってしまう状況を考えて
だったら王と麒麟がいなくなるほか戴が前に進む方法がないという考えに至ってしまって
そのために人を殺してまで処刑台の驍宗のもとへ駆けつける泰麒の姿はとても衝撃的でした。
「何が起こったんだ」ほんとこのセリフのまんまですよ。
あれは前例ないよな…「使令を使うのではなく自ら手を下」した麒麟は彼が初めてじゃないのかな。
「すべての麒麟は人を殺した経験がある。本人の代わりに使令がやるから自覚がないだけ」も
確かにそうだなあと思うし、
思えば泰麒は蓬莱でずっと彼らに守られながら殺戮を繰り返していて、そのことも深く受け止めていて
すべてを引き受けていくと決めたんですな…。
傲濫も汕子もいない中で(結局最後まで出てこなかったよね)自分で剣を取って走って
王と麒麟を守るために饕餮が敵を蹴散らすような展開にはならず最後まで彼らがいない状態で戦った。
牢に閉じ込められている正頼に会うために夜中に忍び込んで牢屋番を殴ったりしましたけど
(項梁がとどめ刺したけど)(「甘い。ためらうな」めっちゃしびれました)、
あれも躊躇しながらの行動で、その後の処刑台での行動ももちろんものすごい苦しみの中だったろうけど
驍宗も動揺するどころか「耐え忍ぶに不屈、行動するに果敢」であっさり片付けちゃってて、そういうとこだよこの主従。。
なぜ血を流してまでその人でなければだめなのか、というのはもはや仁ではなく感情だと思うので
泰麒は獣としての性より人としての感情を優先することができたということでしょうか。
転変して国民の前で驍宗とともにある姿を見せるシーンは本当にドラマチックだし
背に驍宗を乗せるという、『風の万里~』の陽子と景麒のようなこともしてくれて
もうこっち(読者)は頭がいっぱい。
すごいところまで来たなあ泰麒…回復して角も元に戻ったようでよかったです。

驍宗さま函養山にいたんですね。
恩を覚えていて食糧や鈴や玉を流す轍囲の民と、それと知らずに受け取る驍宗の構図が奇跡のようでした。
落盤ってことは今も山から出られてない?仙とはいえ7年も飲まず食わずとか無理じゃね??って思ったけど
瀕死の状況から数々の出来事が重なった結果命をつなぐことができて本当によかったです。
『風の海~』で驍宗が昇山に失敗したから将軍もやめて戴にも戻らないみたいなことを言い出したとき、
意地っ張りな人だなあと思ったのですが、今回、阿選も同じ気持ちだったと知って
そうか驍宗がそうしようとしたのは国民のためだったんだなって思いました。
自分は恥をかくことに慣れていないとわかっているから、このまま戴に戻ったら自分が何をするか想像つくから、
国民を傷つけないために、暴走した自分から国民を守るために戻らないという選択をしようとした。
驍宗は阿選とライバルでいるのも楽しかったろうけど、何より自分が戴の将軍であることをわきまえていて
阿選は驍宗を見つめるあまりそれができなくなった人だった。
轍囲の話でも思いましたが、その道を選べるか選べないかが驍宗と阿選の違いなんだろうなと。
驕王の命令に背いて出奔しても、あてもなくさまよっていたわけではなくて
黄海で才国の昇山を見かけたり朱旌の人々から騶虞の捕まえ方を教わったりと
どこに行っても経験を積むことを忘れない人ですなあ。
暗闇で黒い騶虞を捕まえて麒麟を思い出すの『風の海~』のときみたいで素敵でした。
饕餮の傲濫が赤犬くんなら騶虞の羅睺は黒猫ちゃんだ!
李斎と驍宗が再会するまでの数ページが心臓バクバクで早く、早くあと少しじゃん…!てページめっちゃめくって
「…驚いた。李斎か」ってなったときいよっしゃあああ!!!ってなったよね☆
思いっきり膝ついた霜元も、7年間生きていると信じて探し続けた李斎も本当にお疲れ様でした…。
そして泰麒との再会の「蒿里か」「大きくなったな」にも泣いた…。
子どもの姿の記憶しかなくてもあの状況で自分のもとへ来てくれたのが誰なのかすぐわかるんだなあ。

王旗と麒麟旗の並びで泣きそうに。
とりあえず希望の持てる結末ではありましたが、たくさんの仲間が…あまりにも多くの人が…。
虎嘯や夕暉がそうなれたように朽桟も癸魯も余沢も夕麗もこれからの戴のために必要な人だったのに…。
(いつだったか小野主上が言ってた「書かれていないところでたくさんの人が死んでいる」がこんな形で出てくるとは)
項梁と去思が生きててよかったです…項梁ほんと大変だったな泰麒のそばにいても、離れていても…!
去思もよくがんばりました。よく無事で雁にたどり着いた。
機会があるならたくさんのものを失ってしまった戴がこれから復興していく物語も読みたいです。
泰麒や戴のその後、陽子たちのその後、天の摂理。気になることは山積み。
最後の戴史乍書の「十月鴻基において阿選を討つ」一文ですませているところがいいですね。
十二国記の史書は相変わらずいい仕事をします。
『月の影~』でも「偽王舒栄を討たしむ」で終わってて、直接の描写はないですしね。
(アニメ版ドラマCDではやったけどね)

延主従が来てくれたときの安心感がすごい!毎回いいところで登場しますなあ。
ト書きに「延国からの使者」ってあったけどこれ絶対本人たち来ちゃってるでしょってなったら当たったもんね、
あの2人は本当に本当にほんっっっとうに、部下を遣わさないで自分たちで行っちゃうよね!好き!!
(海を挟んですぐのご近所さん同士なので行きやすくはあるんだろうけど
王様と麒麟がお出かけするって結構なハードルなのに
それをヒョイッとやっちゃうのがあの2人らしさだなあと思います)
尚隆の「引き受けた」のひとことでああもう大丈夫だって心の底から思えたし
『黄昏~』で六太が李斎と泰麒にとらを貸して見送ってくれたこととかも思い出しちゃったし
それを頼んだのは陽子だし、もうもう、みんなで支えてがんばってここまで来た感がありましたわ…。
泰麒も元気になったら姿を見せてあげてほしい。六太に。陽子と景麒に。

李斎で思い出した!飛燕~~初登場からずっと好きでしたしこれからもずっと好きですよ飛燕…。
せめて、せめてあと一度でいいから泰麒に撫でられてからお別れしてほしかった。。

落穂拾いのような短編集が来年に出るということですが、
今回の4冊で出てこなかった人たちが数人、登場する予定とのことで楽しみです。
今度はどんな人々が見た戴が描かれるのかな。
十二国記は群像劇なので視点がコロコロ変わりながら物語が進むのが少し読みにくい時もあるのですけど
今回は戴国の様々な立場の人々の視点で描かれていて、様々な思考や計略や思い込みや勘違いがわかって
そりゃこれだけ多くの人がいたらこうなるよねって思いました。
みんな色々考えて行動するからこじれるんだよね…。
よかれと思ってやったこと、熟慮の末にやったこと、動転してふとやってしまったこと、自分の身かわいさにやること。
あらゆる人々の行動が物事を複雑化し、そしてあっけなく結末を迎えたりするんだな。

山田画伯の絵もすばらしく冴えわたっていて、ページをめくって挿絵が現れるたびにドキドキしていました。
2巻で琅燦がピンで描かれたのすごくうれしかったし、
4巻最初の、驍宗が羅睺を調伏するときの挿絵は国芳の水滸伝を思い出すような大迫力だったし
驍宗のもとへ駆けつける泰麒と耶利の冷徹なまでの凄まじい表情と動きには凍りつきました。
小野主上の原稿を読んで画伯が筆をふるい、主上もまた画伯の描くキャラを見て別のお話に登場させたりするそうで
おふたりあっての十二国記だなあと、改めて。
そういえば十二国記画集は第二弾も計画中という話はどうなったのかな…。
過去に開催された原画展で確かそんな噂を聞いたのですが。
本編同様、いつまでも待ちますので発売してくだされ新潮社さん~。
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