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ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


秩父町出はづれ来れば機織の唄ごゑつづく古りし家並に。

  1. 2021/08/07(土) 23:53:08_
  2. 文化・美術
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ちちぶ銘仙館に行ってきました。
秩父銘仙を始め秩父の織物の展示や染め織り技術の体験などができる施設です。
存在はだいぶ前から知っていたのですが、最近思い出してやっと行きました。

車で行ける距離だったので車で行ったのですが、長瀞~秩父間がめちゃめちゃ渋滞で
すごい時間がかかってしまった…。
あそこ国道なのに1車線しかないからなあ、せめて2車線ほしい。

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入口。
建物は1930年に建設された旧埼玉県秩父工業試験場だそうです。

感染対策はマスクの着用と館内のあちこちに置かれた消毒液。
玄関から部屋中の窓まであらゆる場所が開けられていて換気もばっちり。
たぶん混んでないだろうなと思ってましたが、わたしのほかに数人、見学者がいた程度で
人との距離も充分取れました。

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館内写真撮影OK!ありがとうございま~す(^O^)。

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坂本宗太郎氏の胸像。
横瀬村の生まれで、地元での織物工場の経営や織物工業組合の代表をつとめ、
秩父銘仙のほぐし捺染技術(埼玉県伝統的手工芸品に指定)の特許を取った人だそうです。
(ほぐし捺染については後述します)

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廊下を進むとギャラリーがあります。着物を展示してあるところです。

以下、写真が多いのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆
 


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扉の向こうはモダンな洋間。
モニターでは養蚕や銘仙の製法についての解説映像が流れていました。

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反対側には銘仙の夏着物の展示。
麻などの素材でできているのか、向こう側が透けて見えて涼しそうです。
子どもさん用のお着物もかわいい。

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傘を撮りたくて反対側に回ってみた。きれいだ~。
銘仙を着たお人形さんもいらっしゃいました。

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お着物も素敵だったのですが帯に釘付けになってしまった、
秩父のゆるキャラ、ポテくまが帯になっている!ちゃんとみそポテト持ってるよ~かわいい。

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織り機。
割と新しいものだと思いますが今も使えるのかな。

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こちらは縦糸だけの状態。模様が入っています。

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こちらは横糸が入った状態。布がしっかりして模様もくっきりします。

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佐久間良子さんと新井茂子さんがモデルになっている秩父銘仙のポスターが貼ってあった。
佐久間さんの背景は秩父銘仙会館です。

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秩父銘仙の生地で作った着物を着たバービー人形たちがいた。
小さなお着物用に柄も小さくデザインしてありました。ちゃんとお人形さんのための着物だった。

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試着して写真撮影ができる銘仙が置いてありましたが、
消毒液は置いてあるとはいえ不特定多数の人が触れているかなと思ったのでやめました。
こういう状況でなければ喜んで体験するんですけどね…またの機会に。

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出窓には花が置いてあり、向かいの建物が見えます。
こういう洋間で銘仙を着て椅子に座って優雅に窓の外を眺めたいなあ…。
銘仙は近代の着物なので洋間が合うと思う。

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入口に戻って来ました。次は外の回廊に向かいます。

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回廊に出る直前で立ち止まる。
この建物はこういう洋間がしれっとあります。おしゃれだ。

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外の看板に「旧埼玉県繊維工業試験場秩父工場」と書いてあって、
こういうの見るとリアルにお仕事で使われていた建物なのだな…と歴史を感じます。
1998年に埼玉県野工業試験場の再編・統合で廃止になったのだそうです。

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まずは建物の真ん中あたりにある展示資料室へ。
秩父銘仙の歴史や技術、生糸の製法や現代の銘仙についてなど
総合的に紹介されています。

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そもそも「銘仙」の名前はどこからきたのか、語源はよくわかっていないらしいですが
1890年代に百貨店で販売された際には「優良品を選んだ」という意味で「銘撰」の字があてられたらしい。
他にも目専、目仙、綿繊、璽織などの字で書かれることがあるそうです。
秩父で銘仙が作られるようになったのは近代で、
他にも足利や桐生、伊勢崎、八王子などでも作られていて五大生産地と呼ばれたそう。
埼玉では飯能や所沢でも作られたようですが、現代に生産を継続しているのは秩父のみ。

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秩父銘仙大売り出しの広告。
1925年10月に上野と銀座の松坂屋でセールが開催されたようです。

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秩父銘仙の歴史年表。(部分)
生糸の生産開始からちちぶ銘仙館のリニューアルオープンまで1300年ほどの歴史が!
秩父織物が使われていた記録や秩父夜祭との関わり、銘仙の誕生と最盛期、
生産の縮小から織物協同組合の結成、後継者育成事業に至るまで
色んなことがあったんですな…。
現在の秩父銘仙事業は埼玉県と秩父の市民の活動により継続されているのですね。

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竹久夢二と銘仙。
彼の描いたモダンな着物のデザインは銘仙がヒントになっているものが多いようです。

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あっ右から読むのか!と思った秩父銘仙織元案内(1920年)。
織屋と代表者の名前、その店が得意とする織物が並べられています。
全盛期にはこれだけの業者がひしめきあっていたんですね。

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養蚕の紹介。
蚕の育て方と生糸や絹糸を作り出すまでの工程が紹介されています。
手前に並んでいる道具は桑切包丁と繭盆、回転まぶし。

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埼玉県のブランド繭「いろどり」。
日本と中国産の繭をかけあわせていて、摩擦に強く、コシのある糸だそうです。

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製糸。
繭を選んで糸を取り、糸の束にするまでの作業工程について紹介されています。
収繭・乾燥・貯蔵・選繭・煮繭・繰糸・揚げ返し、こんなにあるんだなあ!
鍋でグツグツ煮る繭から糸を取るところはテレビか何かで見た覚えがありますが
ひとつひとつの工程を細かく説明してくれています。

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左が繭「いろどり」、右が玉繭(蚕が2頭以上入った繭)。
玉繭は糸が絡まって取り出すのが大変だそうですが、そのぶん、太い糸が取れるのだそうです。
大きさがこんなに違うんですね。蚕が2頭いれば労働力も2倍だもんなあ。

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織りと染め。
蚕を育てて糸を取り、いよいよ糸を染めて織っていく工程です。
秩父銘仙の特徴は織り上がった布に捺染するのではなく先に経糸を染めてから模様を作っていくところにあり、
これを「ほぐし織(ほぐし捺染)」というそうです。

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綛揚げ機。
柄を染めやすいように糸を一定の長さや重さに巻くことができる道具。

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左が整経(経糸だけをそろえた状態)、右が仮織(経糸だけの状態に仮糸を織り込んだもの)。
どちらもサンプルです。
仮織りは捺染工程の際に糸がばらけないように行うもので、
製織の際には仮糸を手でほぐして取り除きます。(なので、ほぐし捺染の名前がついている)

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型紙。
和紙を何枚も何枚も柿渋で重ね合わせた丈夫なもの。紗と漆で補強もされています。

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左が捺染、右が製織。
横糸を管に巻いて通して織っていきます。この工程はいわゆる「機織り」などと同じです。
横糸が通されると柄がはっきりしますね。

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秩父織物の変遷。
地味な色が多かった明治に比べて昭和になると明らかに柄物が増えていきます。
技術の進歩。

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丹前地、男物、女物の布の比較。

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織り機がありました。居坐機。
5世紀頃から使われている形のもので、秩父太物は今でもこの織り機が使われているとか。

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高機。
織り手が両足をかけて操作しながら作業するもので、この発明により生産量が増大したとか。
銘仙は現在は機械化がすすんでいますが、手織りを好む工房では今も使われるそうです。

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やっぱり捺染と製織では色が全然違うなあ…と思って見ていたらこんな貼り紙があって
本物の玉虫が右下のビニールの中に展示してあった!ここまでする。。

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織り機の周りをまわってみるとわかりますが、横糸を通すだけで本当にガラッと変わる。
そして玉虫の色というのもわかります。この糸、きれいな糸だな…。
(染色や光の照り返しで玉虫のように色が変わることを玉虫効果というそうです)

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秩父銘仙保存活動の5期生の3年間の活動報告。
柄を考えて織り上げるまでの工程を体験、皆さん4~7反ほど織りあげたそうです。

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生徒さんの作品。
これ全部同じ柄なんですけど、横糸を変えるだけでこんなに印象が変わるんだなー!
着物おもしろい、銘仙おもしろい。すごく科学的だ。色彩マジックだ。

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同じ柄で、こっちは糸の色を変えてあるパターン。
色が変わるだけで全然違う着物に見えるからおもしろいですね。

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図案の展示もありました。
デザイン画や実際に織り上げた布の一部を貼りつけて、見本帳にしたものです。

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三越の名前がある。。
三越も呉服店なので銘仙をたくさん販売していたのですよね。
確か銘仙の復刻や展示などもやっていたはず。

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現在も銘仙の生産を続けている企業や工房、銘仙関連施設の紹介。
着物以外のファッション小物を制作したり新しくブランドを立ち上げたり、海外でも活動していたりと
どのお店も幅広くご活躍していらっしゃる様子。
秩父銘仙を販売しているお店は黄色い旗が目印だとか。

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あの花・ここさけの女の子たちのパネルがあった!
みんな銘仙を着てる~~おしゃれだ!と思って近づいたら、

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ほっほ~う、では捺染室に行ったときに探してみましょう。
こういうの大好き。

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展示資料室の奥にあった染場・染め体験室。
染め教室の生徒さんたちが実際に使うとのことなので、わたしは触らずに見学だけ。
奥の方で今まさに体験していらっしゃる人がいました。予約をすれば体験できるみたい。

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その隣にある手織り体験室。
捺染が済んでいるものに横糸を通していく作業を体験するところです。
こちらも予約すれば体験できます。

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糸繰り室。繭から糸を取るための部屋です。
繭を乾燥させて煮つめ、糸を取り出すまでの工程が機械により行われます。
こちらは体験ではなく職人さんによる実演が見られる日があるそうです。

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秩父神社の御札があった。
標本瓶の中にある繭は交雑種比較試験をしたもので、
原種に比べて丈夫で繭も大きくなり、収穫も大きいそうです。
蚕の繭は1年間しかもたないので、毎年かけあわせていると性質が異なってくるので調査を行う必要があり、
その交雑種比較試験を行ったのが養蚕試験場秩父支部(現在の農林総合センター)だとか。

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捺染室。
経糸を染める部屋です。ほぐし捺染の体験もできます。

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あったー!さっき展示資料室のパネルで仁藤菜月ちゃん(右から2番目の子)が着ていた銘仙柄。
色は菜月ちゃんが着てた着物の方が濃いけど、あれはたぶん横糸を通してあるからで
これはまだ捺染の段階だからこの色なんだろうな。

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加藤式仮織機。
秩父の明升堂という会社が1970年代に製造したもので、
捺染をほどこすときに柄や模様が崩れないように仮織りするための機械です。

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型彫室。
染める時に使う型紙を作る部屋です。型染め体験などもできるそうです。

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丈夫そうな型紙がたくさん。模様だけじゃなくて文字もありますね。

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体験が終わったばかりだったようで、洗った雑巾が干してありました。
みんなが使い込んで色んな色だらけになった雑巾て、なんだか好き。

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整経場。繭から取れた糸を揃えるための部屋です。

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整経機。
経糸を織り機にかける前の準備機で、経糸を一定の本数や長さで巻き取ります。

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イタリー式撚糸機(部分)。
糸に撚りを加える機械で、できた糸は縮緬の織物などに使われます。

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はーーーっ堪能した…楽しかったおもしろかった勉強になった…!と
お腹いっぱいになった気持ちで本館を出たら、目の前にこんなものが。
秩父川瀬祭(秩父神社の夏季例大祭)で使われる山車の倉庫ですな。
銘仙館のある熊木町は笠鉾で、それはそれは華やかだそうです。
秩父夜祭とあわせて一度見てみたいお祭だったりする。
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