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運ぶこと運ばれること。

2022.10.22 23:59|歴史
hakobuten2.jpg
太田記念美術館の「はこぶ浮世絵-クルマ・船・鉄道」に行ってきました。
江戸後期~近代にかけての輸送方法に着目して浮世絵に描かれた船、駕籠、飛脚、馬車、蒸気機関車、
仲居が運ぶ台の物から大原女が頭に乗せて運ぶ荷物まで
あらゆる「運ぶ」姿を見ることができました。

まずは人による輸送。
歌川国貞・歌川広重合作の「双筆五十三次」から「府中 あへ川歩行渡し」「平塚 馬入川舟渡」は
天秤棒を担いだ子どもと籠を持った女性、膳をはこぶ女性。
鈴木春信「路考娘」は、扇形の箱を運ぶ扇売り(地紙売り)。
菊川英山「江戸花美人合」は、雪の日に芸者の三味線を箱に入れて風呂敷に包んで運ぶ女性。
芸者さん本人ではなく送りの女性が運ぶんだなあと思いました。
月岡芳年「風俗三十二相 おもたさう 天保年間深川かるこ風ぞく」は片手で膳を担いで運ぶ軽子(仲居)の女性。
吉原では男性の仕事ですが深川では女性が担っていたようです。
歌川国貞「遊廓の賑わい」は、台の物(一分:約25000円)を2人がかりで運ぶ女性。
お座敷に出される料理は店からの注文を受けて仕出し屋が用意したそうです。ケータリング的な。
溪斎英泉「木曽街道続ノ壱 日本橋雪之曙」は、男性たちが坂道で押す大八車。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 武州千住」は、馬に乗せられた駄付もっこ。
人々も色んなものを運んでいますね。仕事によって運ぶ方法も道具も色々あっておもしろいです。

船。
歌川広重「名所江戸百景」シリーズから「小奈木川五本まつ」に描かれているのは行徳船。
江戸~行徳は行徳産の塩を江戸へ運ぶための航路で、家康の入府後すぐ開削されたそうです。
「四ツ木通用水引ふね」は飲料水を供給するための輸送用の水路が描かれています。
「浅草川首尾の松御厩河岸」は幕府の米蔵や馬小屋があった松御厩河岸を描いていて
吉原を出た人々がここの屋形船で首尾を語りあうことがあったとかなかったとか。
「綾瀬川鐘か淵」は筏師、「京橋竹がし」は竹を水に浮かべて運ぶ商人、
「鉄炮洲稲荷橋湊神社」は八丁堀の弁才船(大型船)の帆柱が中央にどーんと。
弁才船は溪斎英泉「江戸八景 芝浦の帰帆」にも描かれていて千石船とも呼ばれ、
約18万リットルの荷物を運べたそうです(想像がつかないな…)。
そんな弁才船などの物資の集積地を描いたのが歌川広重「日本湊尽 大坂安治川口」で
大型船から小舟まで様々な船が集まっていました。
葛飾北斎 『北斎漫画』初編は筏や渡し船、樽廻船、弁才船など船が描かれたページが開いてありました。
歌川広重「東都名所図会 隅田川渡しの図」は人を乗せて運ぶ小舟で、渡し賃はひとり16文だったそう。
歌川広重「東海道五拾三次之内 川崎 六郷渡舟」は六郷川と呼ばれた多摩川の「六郷の渡し」で
大きな橋を架けても洪水で流されてしまうために渡し舟になったそうです。

街道の輸送。
葛飾北斎「江之島」は、東海道を牛が客を乗せて運ぶ様子。
歌川広重「東海道五拾三次之内」から「平塚 縄手道」は東街道をゆく飛脚が描かれていて
並便で銀三分(約500円)、幸便の六日限で銀二匁(約3600円)ほどかかったそうです。
「平塚 馬入川舟渡しの図」は渡し舟を待つ人々、
「沼津 黄昏図」は大きな天狗面を背負って運ぶ行者と伊勢への抜参り比丘尼、
「藤枝 人馬継立」は荷物を宿場から宿場へリレーする仕事(問屋ごとに交代)の様子。
「草津 名物立場」は5人の男性による早駕籠で、かなり揺れるのか客も駕籠の紐に必死にしがみついていました。
百川子興「阿部川かわ越の図」は旅行者が人足を利用して川を渡る様子で
駕籠を使う場合は追加料金が取られたそうです。
葛飾北斎「東海道五十三次」から「藤澤」は大山詣の月参りをする人々を描いていて
阿夫利神社に奉納する太刀(奉納という文字が刀身に書いてある)を運んでいましたが
人々の身長の倍はある長さで、あれ本当にああいう大きさなのかな…というか重たくないのかな…。
歌川広重「大井川歩行渡」は東海道の難所の大井川で働く川越人足たちを描いた3枚組で、
輦台に乗せてもらうのですが台の大きさや手すりの有無で料金が変わるそうです(肩車で渡ると安い)。
歌川国貞・歌川広重「双筆五十三次 浜松」は馬に明荷を乗せて布団を敷いて座る客が描かれていて
乗懸といって馬の体の左右に荷物を下げてバランスを取ったそうです。
(余談ですがこの絵、「彫 竹」と彫師の署名があって横川竹二郎の仕事なのですな)
喜多川菊麿「三宝荒神の母子」は馬に箱を乗せて枠で3つに区切って
親子3人が乗れるようにしている様子が描かれています。
歌川広重「五十三次名所図会 四十三 桑名 七里の渡舩」は東海道の唯一の海路、七里の渡しで
当時は船で片道4時間かかったそうです。
かつて青函連絡船が青森~函館を約4時間で結んでいたからそんな感じなのかな…。
歌川国貞「東海道五十三次之内 京三條大橋」は頭に荷物を乗せて運ぶ大原女が描かれていました。

鉄道。
歌川芳員「亜墨利加国蒸気車往来」はThe illustrated london news(1860年6月16日号)に
載っている機関車の写真を参考にした可能性があるそうです。
歌川芳虎「亜墨利加国」は横浜開港間もない頃の作品で
馬車がいたり海に帆船がいたり空に気球が飛んでいたりするのですが
説明書きに「合衆の大国」とか「ヨーロッパの人が来て開拓して共和政治をやっている」とかあって
ちゃんとアメリカの歴史を調べて制作されているなあと。
歌川貞秀「横浜交易西洋人荷物運送之図」には横浜港に入る各国の船が描かれていて
国旗を見るとロシア、イタリア、オランダ、アメリカ、フランスなど様々。
歌川芳虎「東都八景之内 日本橋夕照」は日本橋を往来する馬車と人力車が描かれていて
東京~横浜間で乗合馬車が開業したのは1869年、人力車の開業は1870年らしい。
三代歌川広重「東海名所改正道中記一 日本橋伝信局 新橋迄十六町」は
すでに車道と歩道が分離されている伝信局前の様子。
小林清親「本町通夜雪」は夜間にガス灯に照らされる雪道を疾走する馬車が描かれていて
なんかあまりに急いでるっぽい描写だったので頭の中でクシコス・ポストが流れました。
歌川芳虎「東京蒸気車鉄道一覧之図」は1871年の出版なので新橋~横浜間開業の前年ですな、
新橋~横浜の鉄道の駅一覧を俯瞰で描いています。
三代歌川広重「東京名勝高縄鉄道之図」は海上に築いた2.7kmの高輪築堤の上を通行する機関車が描かれていて
ローマ字でタイトルが書かれていたり、機関車は想像図なので箱型をしていたりおもしろい。
昇斎一景「高輪鉄道蒸気車之全図」に描かれた機関車は車輪が小さかったり客車に屋根がなかったり。
歌川芳虎「東京蒸気車之図」には2両の機関車が描かれていますが
線路が単線なうえに画面の左右から中心に向かって走ってきていて、あのままだと衝突すると思う。
月岡芳年「高輪鉄道之図」は築堤の上を走る機関車にカウキャッチャーがついていて
たぶんアメリカ製なのではないかと。
三代歌川広重「六郷川蒸気車往返之全図」は渡し舟に乗る人力車(!)を描いています。
三代歌川広重「横浜新地蒸気車鉄道之真景」は1.4kmの堰堤の情景ですが
真景というタイトルにも関わらず機関車が客車に挟まれて走っていたりする想像図でおもしろい。
二代歌川国貞「東京高縄品川口蒸気車往来之図」は1872年9月、つまり開業の前後に出版されていて
機関車がだいぶ写実的になったり客車に上等中等下等とあったり
待合場の様子や石炭小屋まで描かれていたりします。
三代歌川広重「蒸気車出発時刻賃金附」は新橋駅舎を描いていますが
時刻表と運賃の一覧表がついているのが実用性がありますね。
朝8時から夕方6時まで計9本の列車が、徒歩で1日かかっていた新橋~横浜間を53分でつなぎ、
4歳まで無料で12歳までは大人の半額料金、上等1両2朱というのもこの頃設定されています。
三代歌川広重「横浜往返鉄道蒸気車ヨリ海上之図」の機関車はとても写実的で
おそらく160形機関車が参考にされているのではとのこと。
絵師たちが実際に機関車を目にして描く機会が増えてきたのでしょうな。
三代歌川広重「東海名所改正道中記四 川崎 六郷川鉄道 神奈川迄二り半」に描かれた橋は
西洋式で架けられた方丈型木橋とのこと。
あと機関車につながっていた客車が全部下等だったんですがそういう列車もあったんだろうか。
小林清親「高輪牛町朧月景」は夕景を行くカウキャッチャーつき機関車で
アメリカの石版画を参考にしている可能性があるとのこと。
小林清親「新橋ステンション」は今の汐留駅になる前の新橋駅の様子で
雨の夜に街灯が水にぬれた路石に反射する表現が美しい。
盛政「流行車つくし」は人力車や馬車、三声車、蒸気機関車などが描かれていますが
車夫や御者の顔がすべてウサギになっていておもしろかった。なぜだ。


hakobuten1.jpg
表参道はいつも賑やかですが、太田さんはいつも静かです。
道1本入るだけで嘘みたいな静けさ、人も少なくて有難かった。

harajukusta.jpg
原宿駅さん!!(ハヤトくんの声で)
いやあ様変わりしましたね…逆光でわかりにくくなっちゃったけど。
前の木造駅舎は既に解体済みですが木材などを再利用して現在の駅舎の隣に再現する予定だそうで
それも楽しみです。

この後は新橋に移動して旧新橋停車場などを見てきたのですが
長くなりますので次回記事に書きます。


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皆様いつもありがとうございます(^-^)/☆
 
 
> 明季蔾様

初コメありがとうございます!
室内飼いしてるおうちが多いと思うので
木登り写真が撮れる人はあまりいないかもですね。
そうなんです~自力で降りてきてくれれば助かりますね。。
和菓子の記事もお読みいただきありがとうございます!
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テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル:学問・文化・芸術

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