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ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


これまでの150年、次の150年。

  1. 2022/12/10(土) 23:57:25_
  2. 文化・美術
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上野公園の秋です。
黄色に染まった銀杏が地面に散り敷いて絨毯みたいになっていました。

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東博平成館で「国宝-東京国立博物館のすべて」を鑑賞します。
東博が所蔵する国宝89件を順番に紹介するのと、東博150年の歴史を所蔵品からたどる展覧会です。
チケットは日時指定の予約制で、マスクの着用と消毒と検温必須。

展示室は2部屋が国宝の展示、2部屋が東博150年の展示になっていまして
いつもでしたらどの展示もゆっくり見るのですが、今回は国宝の展示に関しては流し見。
展示品の半分以上は過去に本館の国宝室で見たり写真を撮ったりしておりますので
初めて見るものは細かく見て、あとは「ああ今日もお元気ですね何よりです」とご挨拶するにとどめました。
展示品に再会できるのって本当にうれしいことなので^^
舟木本洛中洛外図屏風や地獄草紙や餓鬼草紙にまた会えてうれしかったし
竹生島経は見たことがなかったので見られてよかったです。
小野道風の秋萩帖や元永本古今和歌集や寛平御時后宮歌合も相変わらず綺麗。七弦琴や龍首水瓶も。
東大寺山古墳や江田船山古墳、文祢麻呂墓からの出土品はたぶん初めて見たけど
太刀や鏡、耳飾りや沓、墓誌、骨壺や金壺などが残っているのですね。
片輪車蒔絵螺鈿手箱も光琳の八橋蒔絵螺鈿硯箱もいい感じに並んでいました。
刀剣は童子切と三日月にだけ挨拶して、あとはゆっくり見せてもらいました。
というか、要するに所蔵展示なのに写真撮影もできないってどういうことかな。

東博150年の展示は初めて見るものがいっぱいあって勉強になったのでレポしたいと思います。
以下、長いのと写真がありますのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆
 
 
 
最初にあったのは一曜斎国輝「古今珎物集覧」(1872年)を壁一面に大きく引き伸ばしたものと
名古屋城の金鯱(オス)の実物大レプリカ。
東博の前身になった帝室博物館を建てるための資金を集めようと
1872年3月に文部省博物局が湯島聖堂大成殿で博覧会を開催しており、その様子を再現したものです。
当時撮影された写真も展示されていて、金鯱には「貢納名古屋藩」と貼り紙がしてあって
本当に名古屋から湯島までえっちらおっちら持ってきたんだなあ…!
ちなみにこの金鯱一対はオスが湯島博覧会に、メスがウィーン万博に出品されていますが
太平洋戦争の名古屋空襲で2尾とも焼けてしまいました…ほんと戦争なんてするもんじゃないわ。
古今珎物集覧の錦絵の実物(3枚組)もありまして、陳列品で人気だったものが描かれていました。

隣には湯島博覧会に出品された記録のある鎌倉時代の笙(銘:鈴虫)、篳篥(銘:蜩)、龍笛(銘:占月丸)や
江戸時代の法螺貝蒔絵鞍や雲龍蒔絵螺鈿鐙(ともに町田久成寄贈)もありましたが
この5品が展示されている展示ケースが!150年前のものだそうです!!
屋根つきでシックな色合いのおしゃれなケースで、少し塗装が剥げていたり
ガラスが少し歪んでいたりネジが丸見えだったりと、年月や年代を感じさせるものでした。
アンティークっぽくていいなあ~今の展示ケースは黒で真四角ですっきりしてますからね。
土佐光信「清水寺縁起絵巻」(1517年)も湯島に出品された記録があるそうです。
河鍋暁斎「東京名所之内明治十年上野公園地内国勧業博覧会開場之図」(1877年)や
三代歌川広重「東京名所上野公園地内国勧業博覧会美術館之図」(1877年)、
「東京名所上野公園内国勧業第二博覧会美術館図」(1881年)は
上野公園で開催された博覧会の様子を紹介したもので、
三代広重の絵は日本における「美術館」の文字の初出資料といわれています。
町田久成が書いた山下門内博物館「博物館」扁額は
博物館の事務局が上野に移転する前、内山下町にあったときに玄関先に掲げられていたもの。
とてもデザイン的で幾何学的なフォントで「博物館」と刻まれていておもしろかったです。
ジョサイア・コンドルによる「上野博物館遠景之図」は上野に建設された帝室博物館の外観デザインの絵で
絵葉書とかにもなってますよね。
上野公園で採取されたという砲弾(四斤山砲)は彰義隊戦争遺物として収蔵されたようで
木材につきささったまま展示されていた。

今回は150年の歴史を紹介するからでしょうか、キャプションにその展示品を購入・収蔵した年や
寄贈された場合は寄贈者の名前も書かれていたりしておもしろかったです。
丹生都比売神社に伝来した「舞楽面 陵王」(鎌倉時代)は1872年という最初期に収蔵されていて
狩野永徳の下絵つきの「芦穂蒔絵鞍鐙」は1874年寄贈、仁清の「色絵月梅図茶壺」も1878年と割と早め。
小早川秀秋所用と伝わる「陣羽織 猩々緋羅紗地違鎌模様」は1883年寄贈、
初代宮川香山「褐釉蟹貼付台付鉢」は1881年購入、鈴木長吉「鷲置物」(1892年)は1894年寄贈。
このあたりのものは本館で見たことがあるので、おお~あなたたち結構早めにやってきたのね…などと感慨深く。
黒田清輝「瓶花」(1912年)は制作後に黒田本人から寄贈されたそうです。
「吉野山蒔絵見台」(江戸時代)は1873年のウィーン万博に出品された帰り道に
この見台を積んだ船ニール号が伊豆半島沖で座礁し沈没してしまい、1年後に引き上げられました。
1年も海に沈んでいたとは思えないほど傷ひとつなく美しく残っていました…。
様々な来歴をもつものが博物館にはありますね。

帝室博物館時代。
「帝室博物館」門標(1903年)は博物館に17年つとめ総長になった股野琢によるもので
帝室博物館の文字がどどーんと刻まれていてかっこよかったです。
(ちなみに股野の後を継いで総長になったのが森林太郎です)
宮内省から1906年に引き継いだ鳳輦は孝明天皇が新造した内裏への遷幸に使っていて
明治天皇が東京へ来たときにも乗っていたもの。
同じく宮内省から引き継いだ内親王女房装束(表着・五衣)は静寛院宮(和宮)の持ち物。
直刀 無銘(1947年引継)は水龍剣とも呼ばれる直刃で刀身に龍が彫られていました。
1889年引継の宮川長春「風俗図巻」はパリ万博に出品されたもの。
1938年引継ぎの渡辺省亭「赤坂離宮花鳥図画帖」(1906年頃)は
1909年に東宮御所(後の赤坂離宮)として建設された迎賓館の大食堂に飾られた七宝焼の花鳥画の下絵で
鳥と植物を組み合わせて描いた淡い色使いの美しい絵たち。
螺鈿槽箜篌(19世紀)は正倉院所蔵のものを模造しています。ハープみたいに大きかった。

竹内久一「執金剛神立像(模造)」(1891年)は
博物館が行った模造事業の一環として東大寺・法華堂の同像を忠実に再現したもので
口をくわっと開けた生き生きとした姿で彩色もされていました。
1911年寄贈の三代安本亀八「生人形 徳川時代花見上臈」は日英博覧会に18体出品されたうちの1体で
人形のからだは作者によるもので着用している打掛や帯は江戸時代のものだそうです。
キリン剝製標本(1908年)は1907年にドイツから上野動物園にやってきたキリンのファンジの剥製で
現在は科博に収蔵されていて、久しぶりに東博で展示されたのですね。
(ファンジとともに日本に来たグレーの剥製は既に廃棄され残っていないそうです)
仁清「銹絵山水図水指」と龍泉窯の「青磁貼花牡丹唐草文花瓶」(13~14世紀)は
ともに関東大震災が発生した際に展示されており、揺れに耐え切れず倒れて派手に割れたようです。
被災当時の写真もありまして、他にもたくさんの陶器が割れたようで痛々しかった…。
展示品は修復されていますが、仁清の水指はともかく龍泉窯の花瓶は
丸く割れた胴体の割れ目がはっきり残ってしまっていてつらい。
震災で倒壊した本館はその後建て直され、現在の本館ができあがります。
「本館屋根瓦 鬼瓦(朱雀)・軒丸瓦・軒平瓦」は復興本館の南側に掲げられていたもので
さすが鬼瓦で、翼を広げた巨大な朱雀が表現されていてかっこよかったです。
野間清六「くちなわ物語」(1940年)は1940年の正倉院御物特別展の様子を記録したもので
大仏や牛車や琵琶などの展示物の周りに赤い導線が引かれて蛇のようにものすごく長い長い行列が描かれていました。
展示物より人を描いた作品ですな。(会期中は40万人を動員したそうです)
建築家の横河民輔から1937年に寄贈された中国陶磁コレクションから青磁輪花鉢(12~13世紀)、
横河邸は太平洋戦争の空襲で被災しており、たまたま博物館が空襲されなかったことで助かった鉢なのですな。
宮崎県西都市の西都原古墳群から1912年の発掘調査で出土した埴輪子持家(5世紀)、
1940年に宮崎県から引き継いだそうです。
一休和尚像は1942年に弁護士の岡崎正也から寄贈されたもの。
カンボジアのアンコール・トムのナーガ上のブッダ坐像(12世紀)は
当時ベトナムのハノイにあったフランス極東学院との文化財交換で東博にやってきたもの。
確かこれ東洋館にあるクメール彫刻コレクションのうちのひとつでは。過去に見たことがあります。

戦後にフランスから寄贈返還された松方コレクションの浮世絵版画は
鳥居派や懐月堂、春信、清長、歌麿、写楽、国政、北斎、国芳とほぼ年代順に展示されていて
これもだいたい本館で見たことあるので東博の浮世絵コレクションてほぼ松方コレクションなのかもしれない。
「国立博物館」門標(1947年)は宮内省から文部省に移管され国立博物館と改称したときのもので
(東京国立博物館と改称したのは1952年)、初代博物館長だった安倍能成の揮毫。
「金銅八仏種子五鈷鈴」(12世紀)は1947年に、岸田劉生「麗子微笑」(1921年)は1948年に購入。
毛利家に伝来した「縫箔 紅白段草花短冊八橋模様」は1948年に一括所蔵となったもの。
織田有楽斎や紀伊国屋文左衛門が持っていたという朝鮮の「大井戸茶碗 有楽井戸」(16世紀)は1949年に寄贈。
豊臣秀吉の指料だった「朱漆金蛭巻大小」(16世紀)は1952年に購入。
酒井抱一「夏秋草図屛風」は1961年に文化財保護委員会より引き継いだそうです。
法隆寺宝物の「摩耶夫人および天人像」は1878年に法隆寺から皇室に献納され戦後に東博へ所蔵されていて
普段は法隆寺宝物館に常設されているので平成館で見るのはちょっと貴重。
饕餮文瓿(前13~前11世紀)は1968年寄贈。過去に東洋館で見たな…。
ベルギーのレンベルトゥス・ドドネウスによる「草木誌」(1644年)は1659年に江戸幕府に献上されたもので
徳川吉宗が研究したらしく吉宗直筆と推定される「寅年」の付箋がついていました。
相国寺の春屋妙葩所用と伝わる「九条袈裟」(14~15世紀)は1978年に文化庁から引継いだもので
彩色も細かい模様も綺麗に残っていて、いやそもそも布がしっかり残っているのすごい。
美濃焼の「志野茶碗 銘 振袖」(16~17世紀)は1981年に購入。何度も見た碗です。
青森県つがる市木造亀ヶ岡から出土の遮光器土偶(縄文時代)は1990年に文化庁からの引継ぎ、
たまに考古室に展示されることがありますね。
明珍宗察「自在龍置物」(1713年)は1998年に購入。

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一番最後の展示室にあった、金剛力士立像(平安時代)と見返り美人図(レプリカ)のみ撮影可でした。

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今年新しく収蔵品になった金剛力士立像。
滋賀県のお寺に安置されていたそうですが1934年の室戸台風で門ごと大破してしまい、
修復されてよみがえりました。
博物館の活動のひとつに文化財の収集と修復がありますが、こちらはそれを紹介するものです。

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阿形さま。

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吽形さま。
いや~おふたりともかっこいいですね…!(仁王像大好き)
この2体は数百もの細かい部品が組み合わさってできていまして、
修復ではすべてチェックして足らない部品は足したそうです。(指や顔の一部が見つからなかったとのこと)
バラバラだったなんてとても思えないくらい綺麗に修復されていて感動しました。
これからも折に触れて本館で展示してくれるとうれしいなあ。また会いたい。

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お背中も拝見させていただきました。
正面のムキムキなお胸やお腹に比べるとすっきりしたお背中ですね^^

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見返り美人図(レプリカ)を撮影する人たち。
本物は本館に展示されたとき何度か撮影したのであえて離れた場所から見ていました。
今回初めて見返り美人を見た鑑賞者の人もいらっしゃるかもしれないなあ。本物もいつか見に来てね。

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出口にありました。次の150年には東博はどうなっているでしょう。


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ゆりの木で150周年記念デザートプレートをいただきました。
シャルロットマロンとショコラオランジュ、季節のフルーツ(柿)、ロゴ入りクッキー。
ケーキも柿も柔らかくてとろっとしておいしかったです☆

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150周年記念特性ロゴ入りクッキー。すごい細かい文字まできちんと読める。
サクサクしてバターたっぷりでおいしかったです☆

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ミュージアムショップでうっかり目が合ってしまって値段も見ずにレジへ持って行って
連れて帰ってきてしまいました…遮光器土偶フェイスクッション。
いやこの特大の目がSo cuteだったのと△のおくちがSo yabai(そんな単語はない)だったので…。
あと古今珎物集覧のクリアファイルと見返り美人の365日キーホルダー。

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Yabaiおくち!!!!!!!(落ち着いて)
いや、口じゃないかもしれないんですけど…土偶ってはっきりわかってないことばかりだから。
なんか「ニャ~ン」て声が聞こえた気がしてしまったんですよね(耳鼻科へ行け)。

nekosamaokuchi.jpg
ええと、その、このお口にそっくりだな~って思ってしまってね…!
土偶ニャンコ説。


あとこの日は本館の展示も鑑賞してきたのですが、
長くなりますので次回記事にて書きます。
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