年末の展示室。

前回記事の続き。
東博の国宝展のほかに、本館と東洋館の展示も見てきました。
こちらは東洋館でやっていた特別企画「未来の博物館」デジタル技術×日本美術体験のコーナーです。

エントランスにある「夢をかなえる8K」。
SHARP協賛の大画面に拡大された仏像やお茶碗を調査したり鑑賞したりできるというものです。

まずは「みほとけ調査」をやります。
混雑緩和のため整理券を出してもらって、スマホの特設サイトで順番待ちを確認。
順番が来たら館内に入って体験となります。

大画面の前に懐中電灯のような手持ちのライトが置いてあって、それを手に取ると体験開始。
映し出された重要文化財の菩薩立像(鎌倉時代)を照らして鑑賞します。
会場にセンサーがついていて画面に近づくと仏像が拡大され、離れると縮小されます。
また左に動くと左回りに回転し、右に動くと右回りに回転します。

なのでお背中も見られるよ!
衣の金泥や彩色、截金、目や唇に水晶が使われているのもわかりました。

顔から足元までの調査項目をすべて調べ終わると調査終了となります。
お疲れ様でした。

続いて「ふれる・まわせる名茶碗」を体験します。
以下、写真が多いのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆

会場に並んでいる6つの白い碗から好きなものをひとつ選んで、画面の前に立ちます。

すると、こんな風に画面の中でお茶碗を拡大できます。
実はこの白いお茶碗たち、実物の文化財の形と重さを再現したハンズオンコントローラーで
手に取ったお茶碗の模様や形が大画面で鑑賞できるわけです。
こちらは志野茶碗の振袖(16~17世紀)。

油滴天目(12~13世紀)。重要文化財。

馬蝗絆(13世紀)。重要文化財。

有楽井戸(16世紀)。重要美術品。
体験できるお茶碗は全部で6つですが、こちらは10分の制限時間がありますので
わたしは4つ目を鑑賞したところで時間切れになりました。
他の2つは楽茶碗の尼寺(16世紀)と黄瀬戸胴紐茶碗(16世紀)。

本館へ。
1階11室の入口でさっそく、先ほど東洋館で拡大鑑賞した菩薩立像の実物にお会いしました!
さっきあんなに拡大して隅々まで拝見したはずなのに
いざ本物を見ると画像と全然違って見えるのなぜでしょうね、
2Dと3Dの違いかもしれませんが…8Kとはいえやっぱり質感を視覚で伝えるのは難しいんだな…。
本物を見る方が何というかこう、木の手触りまで想像できるというか…(この像は木造です)。

こちらは体験できなかった尼寺。
初代長次郎の黒楽茶碗で手の形にフィットするように凸凹しているのが特徴ですが
これ体験してたとしてもたぶん実物を見たときの質感にはかなわないかもしれないな…。
文化財を画像や映像で撮影しておくことはアーカイブの観点からも大切ですけど
やっぱり本物を保存して未来につなげることが大切だなあと思いました。まる。
そのほかの展示も充実しておりましたよ。

愛染明王坐像と厨子(13世紀)。
この厨子、過去に見なかったっけ…と思ったら去年に同じ場所で見ておりました。
今回は愛染明王像つきで拝見できてよかった。奈良の内山永久寺に伝来したものです。

東博150年記念「未来の国宝」企画のひとつで展示されていた青磁盤(11~12世紀)。
世界に90点ほどしか存在せず、日本でもこれくらいしか事例がないっぽい。
箱の墨書きに「康成」とあり、川端康成の旧蔵品であることを示しています。

内証仏法相承血脈譜(12世紀)。
最澄が自身に至るまでの仏法の系譜を記したものの写しです。
達磨から始まってるのがちょっとすごい。

慶滋保胤書状(10世紀)。
出家後の書状で、『伝』や『文句記』を借りて書写したことなどを記しています。

北野天神縁起絵巻断簡(14世紀)。
柘榴天神と呼ばれる段を描いたもので、道真の亡霊に対して天台座主の尊意が時平を守りますが
怒った道真が柘榴を食べて吹くとそれが炎になり、尊意がそれを水で消しています。
マジック?ファンタジー?絵師の想像力がすごい。

明智光秀書状(1578年)。
丹波攻略の際に筒井順慶を参陣させるため、出陣後のスケジュールを記したものです。
順慶は光秀の与力だったのでこの頃はあっちこっちの戦いに参加してめちゃくちゃ忙しかった時期ですな。

火事装束の緋羅紗地注連縄模様、羽織の紺木綿地雷神模様刺子、頭巾の金革紺萌黄黄段羅紗(19世紀)。
大名火消の妻のための装束で、つまり女性が身に着けた火事装束です。
大名火消は江戸初期に編成されていてその装束は後期にはかなり派手なものになっていたようで
火を消すというよりも威厳を表すものだったのかな。
女性用があるということは妻もこういう装束を着て現場にいたのかもしれない。

尾形乾山「紅葉に菊流水図」(18世紀)。
紅葉の木の下に流れる川と、川下に咲く菊の花。
川の模様が、お兄ちゃんの光琳がよく描いたものとそっくりです。

狩野山雪「双龍図」(17世紀)。
昇龍と降龍が向かい合っていて、風と雲の動きも凄まじそうです。
全身が見えてないのがかえって迫力を出している感じがする。

伝土佐光吉「源氏物語色紙」(17世紀)より、「野分」の色紙。
とても豪華な仕上がりで、お公家さんたちの注文ではないかと考えられているとか。

円山応瑞「鯉魚図襖」(18世紀)。
ゆったりと泳ぐ2匹の鯉が写実的に描かれています。
署名の筆跡がお父さんの応挙にそっくりです。円山四条派と交流のあった沼津の植松家に伝来。

ユニークだなと思った椿椿山・野口幽谷所用印(19世紀)。
落款に使用したものだと思いますが本当に種類が多い、絵師っていくつも持ってるんだよねえこういうの。
幽谷の弟子の松林桂月から東博に寄贈されたものだそうです。

手前から三条実美・岩倉具視、大久保利通、西郷隆盛、勝海舟、島津久光、徳川斉昭の詩や歌の書。
さらにこの向かいには佐久間象山、吉田松陰、有栖川宮熾仁親王の書の巻物が展示されていました。
どうしたどうしたこんな大盤振る舞い、150周年でちょっと気が大きくなったのかな?

厚板 金紅片身替詩歌模様(17世紀)。
金春家に伝来したもので重要文化財に指定されています。
和漢朗詠集から引用した6つの詩歌を繻子地に織り込んだ贅沢なデザインで
華やかな元禄文化を思わせます。

菱川師宣「北楼及び演劇図巻」(17世紀)。
寛文末から元禄までの北楼(吉原)と芝居小屋の光景を描いた絵を集めて絵巻にしたもので
各絵の最後に年紀の異なる署名と落款があります。
当時の吉原の様子や芝居小屋の裏表がわかる資料でもある。

鈴木春信「紅葉舞」(18世紀)。
紅葉の舞い散る中、両手に傘を持って舞い踊る女性を描いています。
こういう踊りが当時流行していたようで、春信はそれを描いたのかな。

帯 紺鬱金縞地花蝶模様天鵞絨(18世紀)。
縞の中に花と蝶の模様が細かく織られていて美しいです。
右側にちょこっと見えているのは小袖 黒綸子地遠州模様(19世紀)。こちらも刺繍が細かい。

この日は1日中東博にいたので、博物館を出たらすっかり暗くなっていました。
ライトアップされた本館と表慶館がきれい。

前回記事で最初に載せた写真と同じ場所でパチリ。
外灯に照らされる銀杏の木がとても幻想的でした。ちょうど月も入ってくれた。
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