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わたしだけの時間。

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アーティゾン美術館に行ってきました。
旧ブリヂストン美術館で2015年から長期工事に入り2020年に館名変更しリニューアルオープン、
ArtizonはArtとHorizonを組み合わせた造語だそうです。

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目的はこちら。
石橋財団コレクション選 特集コーナー展示「読書する女性たち」です。
財団が所蔵する近代絵画の中から読書をしている女性たちを描いた作品を展示するもので
開催情報は先月得ていたのですがもう楽しみすぎてたまりませんでした。ありそうでなかったテーマだと思う。

チケットは日時指定の予約制で、当日券は余分があれば当日でも買えるようですが
予約していった方が300円も安いので前日に予約。
スマホでQRコードを読み取って入館します。半券はもらえませんでした。

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写真撮影は非営利かつ私的目的で可。ありがとうございます!
(あと現在開催中の企画展ではスケッチもできるらしい、詳細は後日書きます)

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展示室は4~6階の3フロアにありまして、
入口でチケットを読み取るとエレベーターで6階に上がってくださいと言われましたので
いったん6階に上がってからエスカレーターで4階へ。
なぜかって?コレクション展示は4~5階で、「読書する女性たち」は4階だからです☆
やった~読書する人たちいっぱい見られる、あとロゴがめっちゃ優雅。

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特集展示はこの一部屋。
このお部屋の中の人たちみんな本読んでるんだってワクワクしながら入りましたら。

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おおっ読んでる!

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すごいみんな読んでる(^○^)☆

以下、写真が多いのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆
 
 
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ポール・ガヴァルニ『写生』(1857~58年)より、古書店で本を探す男性のリトグラフ。
パリのセーヌ川沿いには17世紀頃からBouquiniste(古書店)があったそうです。
17世紀のパリでは識字率が上がり始め、19世紀には地域差も性差もほぼなく90%ほどの人が
公的な証明書に署名ができたとのこと。

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ポール・ガヴァルニ『写生』(1857~58年)より、上と同じく書店で本を探す男性のリトグラフ。

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ポール・ガヴァルニ『仮面と素顔』(1852年)より「共産派」というタイトルのリトグラフ。
昔々の書物といえば聖書に代表される宗教書で、読書は主に権力者の男性のものでしたが
印刷術の発明以降は小説など娯楽の本も増えて
17世紀には市民の男性や女性が本を読む姿が絵に描かれるようになります。

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アルベール・ベナール「読書する女」(マルティ版『レスタンプ・オリジナル』(1895年刊)第9号所収)。
女性が窓辺で本を読む様子のエッチングです。
窓辺で読む女性といえばフェルメールの『手紙を読む女』などが有名ですが、本も窓辺で読んでいたのかな。

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メアリー・カサット『娘に読み聞かせるオーガスタ』(1910年)。
これたぶん、過去のメアリー・カサット展ではお目にかかれなかったので見られてうれしい、
しかもカサットの描く読書の絵!
カサットが晩年を過ごしたフランスのル・メニル=テリビュのボーフレーヌ館の庭園で描かれたものだそうです。
お母さんはきっと一生懸命に読み聞かせているけど娘ちゃんは飽きてしまっているのかむくれ顔。
それともお母さんの方が読書に夢中になってやっぱり飽きてしまったのかな。
カサットの描く子どもは親の言いなりになってなくて素敵です。

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ジョージ・スミス「婦人像」(1866年)。
こりゃまた絵に描いたような(描いてるけど)理想像ですな…カサットの母子像の後に見ると余計に。
18~19世紀のヨーロッパでは女性が読書をする姿が画題として好まれ、よく描かれるようになったそうです。
きちんと正装した女性が立ったまま読書していて、たぶん自然な様子ではなくモデルさんでしょうけど
何の本を読んでいるのかな。
読書をする人の絵を見ると本のタイトルが気になります。

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山下新太郎「読書」(1908年)。
西洋で学んで日本の男性画家たちも、読書をする女性たちを描いています。
山下は1908年にソルボンヌ大学近くの部屋を借りて3つの作品を制作し(これはそのうちのひとつ)、
翌年5月のサロンに入選しています。作品は3作とも読書をする女性がモデルとのこと。
ベラスケスが好きで色彩が暗くなってしまったため、色彩研究を進めた結果だそうです。
確かに陰影はくっきりしていますが色彩が豊かで鮮やかな作品です。

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和田英作「読書」(1902年)。
パリ南郊のグレー=シュル=ロワンで共同生活を送っていた浅井忠とともに描いたもの。
(浅井が同じ女性を描いた「読書」は東博にあります→こちら
モデルの女性は20歳前後で、2人の「愚劣日記」によれば
小説を読む彼女のそばで子どもが泣いているのを見てお払い箱にしたとのこと。
いや、この人だって子どもの世話でくたびれていて
本読むときだけでも解放されたかっただけかもしれないじゃん…許してやりなよ本読むくらい…。

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満谷国四郎「坐婦」(1913年)。
パリのアカデミー・ジュリアンのジャン= ポール・ローランスの教室へ通って
明るい画風を目指していた頃に描かれた作品で、翌年の滞欧作品展に出品されたもの。
女性が椅子に深く座って本を読んでいます。奥の果物と花瓶は静物画みたいな雰囲気。

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遠山五郎「婦人読書図」(1922年)。
腰かけた女性がうつむいて本を読んでいます。大きいサイズで薄いから雑誌でしょうか。
20世紀初頭は日本でも女性雑誌が多く創刊されていますが、
女性が読書や書きものをすると家政がおろそかになると言われ風刺画が描かれることもありました。
家父長制と良妻賢母がさかんに叫ばれた時代でしたのでね…なんて、窮屈。

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清水多嘉示「憩いの読書」(1928年)。
作者はもともと画家でしたがのちに彫刻家に転身したそうです。
こちらは帝展出品作で、陰影がくっきりしてとても立体的。
ベッド?ソファ?に腰かけて頬杖をついて、とてもくつろいだ格好の読書です。いいなあ。

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坂本繁二郎「読書の女」(1923年)。
作者は青木繁と同じ年・同じ都市生まれで(1882年久留米市)主に九州で活躍していますが
こちらはフランス滞在中に描いたもの。
自然を多く描いた画家ですが人物画も手掛けたようです。
主線がほとんどなく陰影だけで女性の読書姿をとらえています。色彩、特に白が美しいですな。

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安井曾太郎「読書」(『文藝春秋』第25巻第8号(1947年9月号)表紙絵)。
紙のコラージュで、グワッシュ、色鉛筆、チョークで手を加えています。
こういう読書の表現があるのだなあとおもしろく鑑賞しました。右脇の赤鉛筆で描かれた植物?かわいい。
わたしこの作者は近美の「金蓉」でしか知らなかったのですがコラージュで雑誌の表紙の仕事とかしてたのだな…。
あと広辞苑初版の装丁とかもしてるらしい。

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アンリ・マティス「樹間の憩い」(1923年)。
長椅子に腰かけた女性は本を開いて膝に乗せたままです。
女性がこうして物思いにふける画題も男性画家たちによって好まれ描かれています。
女性が小説を読んでいると、家政はおろか教育にも悪影響であると考えた男性たちが
本を読まず置いたままにする女性を描くのは自然な流れだったようです。
テレビばかり見てないでお手伝いしなさいとか、ゲームばかりしてないで勉強しなさいとか子どもに言うのに近い気もする。
要はコントロール欲なんだよな。

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アンリ・マティス「オダリスク」(1926年)。
マティスは1920年代にオダリスクやアラベスクを主題に多数の制作を行っており、これもその1枚でしょうか。
こちらの女性も本を読まずに膝に置いています。
マティスの、というか当時の男性芸術家の作品へのジェンダー規範の反映については
近年ようやく研究されるようになってきていますが、この作品はどう評価されているのかな。
なんてったってまずヌードであるところが、そういうことだと思うけども。

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ヘンリー・ムア「本を持つ女」(『生誕80年記念版画集』より)(1976年)。
作者は彫刻家ですが画家でもあり(WW2では戦争画家だった)リトグラフも制作したようです。
ものすごく大きな本を膝に乗せた女性の版画ですが、読んでいてふと顔を上げたのか、
さっきのマティスの絵と同じように物思いにふけっているのか…さてさて。

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ジェームズ・ティソ「もの思い」(1881年)。
この女性は完全に物思いにふけってるのですね…。
いえあの、思考する女性を描くことがダメなのではなくて
女性は本を置いて家政に専念しなさいという思想が見え隠れするのがこすいなあというか…。
エッチングが本当にすばらしいだけに。

いや~~~おもしろかった!
ヴァージニア・ウルフが『自分ひとりの部屋』で
「女性が小説を書くには生活できるお金(年収500ポンド)とひとりになれる部屋を持たなければ」と書いてますけど
女性に家政をさせようとする男性から逃れて読書するためにも女性にはひとりになれる部屋が必要だと思う。
あとなんとなく宇野木めぐみ『読書する女たち』(藤原書店)を思い浮かべながら鑑賞していたら
展示室でいただいた無料冊子(14p)の参考文献に挙げてあってさすが!と思いました。
企画したのは賀川恭子学芸員だそうです~~フランス美術がご専門だそうで
道理でキャプションにパリの話題が多かったわけだ。とても勉強になりました。
読書する女性たちのテーマとてもよいと思うので、今度はコレクションだけでなく
このテーマで広く集めて企画展をやってほしいな。
今回は女性画家がカサットだけだったので女性画家の描いた読書女性の絵とか
読書する男性の絵とかもっと見たい!どんな共通点や違いが見えてくるのか見比べてみたいです。

この後は5~6階の展示も見てきたのですが、長くなりますので次回以降に書きますね☆
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