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Since sensations are the root of my work, I believe I am impenetrable.

2023.10.08 14:52|文化・美術
前々回記事の続き。
アーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)にて、企画展を見てきました。

Sensation_1.jpg
現代美術家が石橋コレクションと共演するジャム・セッションシリーズの4回目、
石橋財団コレクション×山口晃「ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」。
山口晃氏の展覧会なのですが、氏の作品と石橋コレクションを照らし合わせる形で
展示が構成されています。
タイトルにあるサンサシオン(Sensation)はフランス語で感覚、感触、気持ちなどの意であり、
詩人の春山行夫が鬼頭鍋三郎らと名古屋で結成した美術グループの名前であり、
アルチュール・ランボーが詠じた詩のタイトルであり、
ポール・セザンヌがよく口にした「感情になる前の感覚」でもあります。
今回、山口氏がセッションするのはセザンヌと雪舟なので、この言葉が選ばれたようです。

Sensation_2.jpg
前々回記事にも書きましたがこちらの展示では写真撮影に加えてスケッチができます。
普段はスケッチは禁止されていますが、山口氏がお願いして今回のみOKになったそうです。

Sensation_3.jpg
そんな顛末が得意げに描かれていました。かわいいね。

Sensation_32.jpg
最初の作品「汝、経験に依りて過つ」(2023年)の部屋に来たら
展示の入口に係員さんが立っていて、このご案内を示されました。
え…なんか怖いなって思って階段を登ったら。

Sensation_4.jpg
?????(゚Д゚;)
斜めに撮ってるんじゃないですよ、展示の部屋の入口がこうなってるんですよ。
係員さんに「あのー、ここ入っていいんですか?」って尋ねたら
「どうぞ!そういう展示ですので。足元にはくれぐれもご注意ください」って返ってきたので
思い切って入ってみることに。
(こういう展示が苦手な方や入れない方は回避して次の展示に進めますので、係員さんに声をかけてね)

Sensation_5.jpg
部屋全体が斜めに傾いていて、真っすぐ立っていられない。。
たぶん10~20度くらい傾いていたと思います。
写真は壁に背中をつけてほとんど座り込みながら撮りました。
でも写真だけ見ても全然傾いてるようには見えないですね。撮るの失敗しただけみたいに見える。
ほんとに傾いてたんだよおおおおおお(゜○゜)。

Sensation_6.jpg
斜めの部屋を出たところに山口氏の解説(すずしろ日記No.156)が貼ってありました。
過去にとしまえんに行かれた際に、部屋が斜めになっているアトラクションがあって
それをもとに制作してみたのだそう。
視覚と感覚が平行であれば安定して立っていられるけど
どちらかがズレると視覚に引きずられて重心を取り損なうわけで
まさに「経験に依りて過つ」のタイトル通りだなと。

展示はこんな感じに、山口氏のすずしろ日記の解説つきですすみます。
以下、写真が多いのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆
 
 
Sensation_7.jpg
サンサシオンとタイトルにあるように、石橋コレクションからセザンヌの作品がいくつか展示されてました。
こちらは「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」(1904-06年頃)。

Sensation_8.jpg
山口氏が↑の絵を模写した「セザンヌへの小径(こみち)」(2023年)。
近くには色の置き方などを分析した方眼紙も展示されていました。
氏曰く、見ている対象ではなく見ている感覚(サンサシオン)を絵画にするために
存在を描きつつものを見せないこと、を目指したとのこと。
氏がセザンヌの絵を見続けることで感じた感覚について長々とパネルに描いておいででしたが
ふわふわした筆致でそのものの位置を印象付けるのがセザンヌの魅力と思っておられる様子。

Sensation_9.jpg
セザンヌへの愛を語ったパネル。
もうね、セザンヌ賛歌というべきか、賛辞しか書かれていないんですが
細部まで分析しつつセザンヌへのラブレターになっているところが何とも氏らしくて笑ってしまった。

Sensation_10.jpg
雪舟「四季山水図」(室町時代)(重要文化財)。
山口氏は雪舟も大好きだそうで、精神に変容を促す絵とパネルで言っています。

Sensation_11.jpg
そんな雪舟についての山口氏の覚書き。
最初はよくわからなかったそうですが、東博の秋冬山水図の冬図を見て突然目覚めたのだそうな。
おはようございます。(違)

Sensation_12.jpg
山口晃「オイル オン カンヴァス ノリバケ」(2023年)。
溶き油で描くことで西洋の油彩画と東洋のぼかしが共存できるのではないかと試みたようです。

この隣にあった読経についてのパネルの中に、読経は脳髄をゆするから脳天がムズムズする、
サザエさんのタラちゃんが法事でお経を聞いてキャーッて踊り出すのはそれではないかみたいなことが書いてあって
こういうところでタラちゃんが出てくるもののたとえが氏は本当におもしろいなと思います。
踊り出すタラちゃんにサザエさんは確か「お経を聞くとしびれちゃうんだ、どういうんだろこの子」って呆れてましたが
お経を聞くとわたしもムズムズすることがあるので、あのタラちゃんの気持ちはちょっと、わかる。

Sensation_16.jpg
「アウトライン アナグラム」(2023年)。撮影禁止だったインスタレーションです。
さっきの雪舟の四季山水図が、半円形の大きなスペースにジオラマというかパノラマのように紙で立体再現されていました。
ギリギリまで落とされた照明のなか、モノクロの世界が紙の立体物で奥行きをもって再現されていて
薄ぼんやりと霧が湧いているようにも見えたのですがたぶん気のせい。
雪舟のぼかしが霧を誤認させるくらい見事なんだと思います。
空間全体がぼやあっとして見えて湿気まで感じたのはそのせいだと思う。

Sensation_13.jpg
山口晃「ランドルト環」(2023年)。
こんな雅なランドルト環があったらめっちゃ見ちゃって視力検査どころじゃないかもしれない(笑)。

Sensation_14.jpg
山口晃「モスキートルーム」(2023年)。
天井も壁も床も真っ白な部屋に入ると、なにもありませんでした。

Sensation_15.jpg
唯一、壁のこの書き込みを除いては。
この部屋に入って、視界が真っ白になるところで立ち止まって眼球の丸さを感じてほしいとのこと。
わたしはこういう場所に入ると飛蚊症(良性)が見えるのですが、氏もどうやらそうらしいですな。

Sensation_17.jpg
『月刊モーニング・ツー』(講談社)に連載されている「趣都」日本橋編の原稿。
首都高と日本橋の歴史や建築、技術的意義について氏の視点から語られています。

Sensation_18.jpg
第1回のページ。
最後まで展示されているのかと思いきや、「なぜ首都高ばかり悪者にされるんでしょう」
「理由は一言に尽きる」「何ですか」のページで途切れてしまっていて、ええっ教えて!ってなった。。

Sensation_19.jpg
山口晃「日本橋南詰盛況乃圖」(2021年)。
2021年7月にリニューアルした銀座線日本橋駅の地下通路に設置されたパブリックアートの原画です。
木製の日本橋の上に旅館みたいな建物群がいっぱい並んでておもしろいんですよね。
江戸時代から現在までの景色が入り混じる、山口氏独自の世界。

Sensation_20.jpg
山口晃「テイル オブ トーキョー」(2023年)。
ウィスキーメーカーのグレンモーレンジィの依頼で制作されたものです。
人間と建物が3つのスケールで描かれていて、小人と巨人がいたり建物のパーツが大小様々だったりします。

Sensation_21.jpg
山口晃「善光寺御開帳遠景圖」(2022-23年)。
2022年の善光寺御開帳の様子です。

Sensation_22.jpg
山口晃「来迎圖」(2015年)。
これ有名なやつで何度か見たことがありますが、いつ見ても色塗りが終わってないな…。
氏曰く、氏の作品は線画の時点で完成しているから色はつけるだけ、なんだそうですが
ちょっと半端に見えてしまうんですよね。
たぶんモノクロならモノクロ、白描なら白描、カラーならカラーっていうのが
わたしの絵画についての常識だからだと思います。氏は違うのだよね。

Sensation_23.jpg
山口晃「さんさしおん」(2023年)。
なんのこっちゃと思わわると思いますが、別の角度から見ると「さんさしおん」の文字が完成します。
ぜひ会場で。

Sensation_24.jpg
山口晃「盧山吟行」(2023年)。
これが正面です。繰り返します。これが正面です(笑)。

Sensation_25.jpg
山口氏の画材やスケッチ、お手持ちの小物などが展示されているケースが4つ。
おそらく氏の机まわりのものが持ち込まれているように思います。
鍵善さんのミニ菊寿糖があって、たぶんちこちこの名残だなと思ってニッコリしました。ためいきちゃんかわいかったなあ。

Sensation_27.jpg
山口晃「東京圖1・0・4輪之段」(2018-2023年)。
大河ドラマ「いだてん」のオープニングタイトルバックの原画です。
これめちゃめちゃ大きいんですが鉛筆と水彩絵の具だからかいい感じに肩の力が抜けてて
見てて疲れないのすごいと思う。
いだてん、スポーツと政治にクドカン節がどかんと乗っかったぶっとび大河でしたが
昨今の近代史ドラマにしてはよくやったと思います。
視聴率など制作側は気にしなくていいのです。評価は高まっていくと思う。
オープニングで山口氏の細かくて賑やかな絵の中を勘九郎さんが走っていくの好きだったなあ。

Sensation_28.jpg
上野公園の部分。

Sensation_26.jpg
山口晃「馬からやヲ射る」(2019-23年)。
2021年のパラ五輪公式ポスターの原画です。
口で絵を描く人、釣り場にいるダウン症の人、障害者施設での運動会、段差の超えられない人を支える車いすの人。
山口氏の妻が骨折したとき、エレベーターは遠いけど彼女のために席を譲ってくれた人は義足だったこと。
「毎日がパラリンピック」と訴える氏の絵は社会そのもの。

Sensation_29.jpg
山口晃「当世壁の落書き 五輪パラ輪」(2021年)の一部。
五輪など勘弁してくれと思っていた自分にポスターの依頼が来たときはエ~となったそうで
毒まんじゅうだ翼賛案件だなどと思いつつも引き受けたのは戦争画やあいとりややまゆり園などのことを考えたからで
何もせずに来ちゃった…という反省のもと制作されたのがあのポスターだったそうです。
わたしは氏のご自分の意見をしっかり言うところが好きですが、
氏が「柔らかく書いたつもり」だったコメントもチェックが入ったり大変だったらしい。美術界そういうとこやぞ。

Sensation_30.jpg
浅井忠「縫物」(1902年)。
隣に山口氏が日本の近代絵画について感じたことを書いた紙が貼ってあって
外部のものを移動させただけという北村透谷の言葉を引用しながら
洋画を見るための評価軸がないことを気にしておられました。

Sensation_31.jpg
関連作品展示「洛中洛外図屏風」(17世紀)。
山口氏の鳥瞰図は洛中洛外図を思わせるものがたくさんありますね。
ご本人も「昔の人が屏風に金色の雲を描いた理由がよくわかる(間を埋めるため)」とおっしゃっていたしね。
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テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル:学問・文化・芸術

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