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この秋の展示室その2。

前々回記事の続き。
東博平成館でやまと絵展を見た後で、本館の展示も見てきました。

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特集「仏画のなかのやまと絵山水」。
特別展に合わせて日本美術の中から様々なやまと絵が展示されていまして、
まずは中古の仏画から。
下村観山・本多天城・溝口禎次郎模「阿弥陀聖衆来迎図(模本)」(1896年)。
原本は平安時代後期の作品で、阿弥陀如来を中心に楽器を奏でる仏たちが描かれています。
周囲に岩山や松、からまる蔓などがやまと絵風に描かれています。

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糺晴岱模「一遍聖絵(模本)」巻第三(1840年)。
原本は1299年に法眼円伊により制作されたもので、一遍が熊野を訪れた場面が描かれます。

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模本「東大寺大仏殿縁起(模本)」巻中(19世紀)。
原本は東大寺にあり、芝琳賢という芝座(興福寺一乗院絵所)の絵師が1536年に制作したものです。
室町時代の南都のやまと絵がどんなものだったか感じられます。

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田中訥言模「平等院鳳凰堂壁画(模本)」中品上生図(19世紀)。
原本は平安時代半ばの制作、平等院創建当時のものを写しています。
鳳凰堂内の四面の壁には四季の絵が描かれていて、これは北面に描かれた春の景色。

以下、写真が多いのでたたんであります↓クリックで開きますのでどうぞ☆
 
 
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田中親美模「本願寺本三十六人家集 赤人集(模本)」20世紀。
原本は西本願寺にある国宝で、12世紀に制作されたものです。
唐紙を継いで景色を表現する色変わりですね。色の組み合わせが美しいです。

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伝俵屋宗達「桜山吹図屏風」(17世紀)。
貼り付けた色紙の多くは1605年頃のものとされ、絵は20年後くらいのものとされています。
垂直線を引いて山々を表現する画風はいつもの宗達文法。

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柳橋水車図屏風(16~17世紀)。
橋と蛇篭と月というモチーフから宇治川にかかる宇治橋を描いたものとわかります。
画面をドーンと横切る宇治橋がダイナミックです。
筆者不詳ですがこれだけ金色を使っているところをみると注文主は相当のお金持ちではないかな。

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土佐一得「源氏物語図屏風」(16世紀)。
たくさん貼られた小さな色紙には源氏物語の名場面と詞書が描かれています。
背面の秋草も繊細でとても雅です。

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土佐光起「粟穂鶉図屏風」(17世紀)。
秋草の野にウズラが遊んでいます。つがいや親子かな?いっぱいいてかわいい。
ウズラが遊ぶ様子は古来から多く描かれてきた画題だそうです。

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土佐光起・土佐光成「秋郊鳴鶉図」(17世紀)。
絵師の親子の合作です。落款に「鶉 土佐法眼常昭」「菊 土佐将監光成」とあります。
光起はウズラの名手として知られていたようです。

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住吉具慶「源氏物語絵巻」(17~18世紀)。
具慶は住吉家の2代目で、中世からのやまと絵の表現を継承しています。
同じく分家の板谷家もやまと絵師として代々幕府の御用をつとめていました。

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「源氏物語図」紅葉賀・乙女(19世紀)。
紅葉賀は住吉広尚、乙女は板谷桂舟広隆という、住吉家と板谷家の合作です。
雛遊びをする紫の上も紅葉を用意する秋好中宮もやまと絵の画風で描かれています。

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土佐光吉「源氏物語図色紙」(16~17世紀)より、野分の詞書。
金銀泥や金銀箔を用いた料紙に描かれ、公家たちの寄合書ではないかと推察されています。
美しい料紙を見るとどうやって作ったのか気になる…制作現場を見てみたい。

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土佐光則「雑画帖」上帖(17世紀)。
年中行事や芸能や花鳥を色紙に描いて画帳にしたものです。
モチーフや構図はやまと絵によくあるパターンで、細部まで細かくきれいに描きこまれていました。

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伝俵屋宗達「扇面散図屏風」(17世紀)。
富士山や紅葉など、季節の景色を描いた開いた扇と、閉じた扇を屏風に散らしています。
宗達は扇屋を営んでいたので、扇絵はお手の物ですね。扇の形を活かしたデザインばかりです。

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狩野山楽「車争図屏風」(1604年)。
京都で暮らした人が描く京都の景色だなあ、通りの様子やお祭の風俗などがリアルです。
(その割には建物が結構隠れてるけども…)
牛車がたくさん描かれていますがデザインが少しずつ違っていて細かい。

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狩野探幽「鸕鷀草葺不合尊降誕図」(17世紀)。
夫のヒコホホデミに本来の姿を見られたトヨタマヒメが海へ去った後の様子を描いていて
姫の姿は見えませんが打ち寄せる波が姫の感情を表現しているようで、ちょっと劇的。

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狩野晴川院養信「源氏物語図屏風(胡蝶)」(19世紀)。
秋好中宮が春の仏事を行う様子を描いていて、
佐竹本三十六歌仙のパターンが転用されているそうで、狩野派の学習内容についても知ることができます。

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酒井抱一「四季花鳥図巻」巻下(1818年)。
秋~冬の花や鳥たちを描いていて、右→左へと季節が動いていきます。
絵の具の発色がとてもよいです。お高いんだろうなあ。プリンスだもんな抱一^^

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冷泉為恭「囲碁図」(19世紀)。
醍醐天皇と寛蓮が黄金の枕を賭けて対局する逸話を描いています。
為恭はやまと絵の復古を行った人でもあり、古典の学習に力を入れていたそうです。

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田中訥言「舞楽図」(18世紀)。
陵王と還城楽を舞う舞人を描いています。
彼も古典への回帰をめざした復古やまと絵派の祖といわれています。

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四季草花図屏風(17世紀)。
伊年印があるので俵屋宗達の工房で制作されたものでしょうか。
四季の草花が構図も色彩もバランスよく配置されています。

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円山応瑞「耕作図屏風」(19世紀)。
耕作図もやまと絵によくある画題で、さすが円山派で人々も景色も丁寧にリアルに描いていますね。

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正親町天皇「詠草」(16世紀)。
台紙の風景には葦手が表現されているので平安時代を意識したのでしょうか。

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後陽成天皇「調度手本(三社託宣)」(17世紀)。
三社とは天照大神、八幡台菩薩、春日大明神の託宣を書いたもので
当時天皇を取り巻いていた能書家たちによる寄合書のお手本だそう。
書もすごいですが料紙もすごい、金銀砂子や金銀箔の上に金銀泥で下絵を描いています。
神様はきらきらしたものがお好きなのかな。

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本阿弥光悦「芥子下絵和歌巻」(1633年)。
胡粉と雲母で芥子坊主を描き、新古今和歌集11巻の詞書と歌を散らし書きにしています。
制作年が晩年なので、本人も集大成のような気持ちで描いていそう。


やまと絵のほかに本館展示も見てきました。
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伝顔輝「寒山拾得図」(14世紀)。
ニタリと笑う2人がとても生々しい。織田信長が顕如に贈ったという逸話のある作品です。

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河鍋暁斎「豊干禅師」(19世紀)。
この絵ではみんな起きて活動していますが、
寒山拾得の師である豊干と、弟子たちと、虎がぐっすり眠る四睡図がわたしは大好きなんだよな~。

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国宝「法華経方便品(竹生島経)」(11世紀)。
竹生島に伝来したため島の名前で呼ばれます。
跋文を書いた松花堂昭乗は源俊房の書と鑑定していますが、現在は疑問視されているそうです。

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法華経 安楽行品(久能寺経)(12世紀)。
駿河国久能寺に伝わった装飾経で、30巻のうちのひとつです。
各巻末には結縁者の名が記され、これは待賢門院の名前があります。

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伝狩野元信「果子図(書院の間天袋)」(16世紀)。
もともとは京都の大仙院の方丈障壁画だったもので、柿・柘榴・枇杷・レンコンがそれぞれ描かれています。
牧谿の水墨画風ですが彩色もほどこされています。

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園城寺霰釜(15~16世紀)。
松平不昧治郷の愛用品で、表面に「園」「城」「寺」の文字と唐草紋、
周囲にぐるりと突起が表現されています。

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長次郎「黒楽茶碗 銘 尼寺」(16世紀)。
楽家の長次郎といえば黒、漆黒というより光を当てると光る黒ですね。きれい。

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吉野山蒔絵見台(18世紀)。
満開の桜に満ちた吉野山の風景を表現しています。
1873年のウィーン万博の帰国船が沈没した際に海に沈みましたが、
1年後に引き上げられ、現在は修復されています。

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坂東三津江所用「襦絆 紅縮緬地将棋駒模様」(19世紀)。
歌舞伎「双蝶々曲輪日記」に登場する放駒長吉役に使用されたと考えられています。
将棋の駒に「坂東」、抱き茗荷紋(坂東三津江の家紋)を意識した蝶々の形など
持ち主を連想させるデザインです。

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坂東三津江所用「羽織 白呉絽地龍波濤模様」より背の部分(19世紀)。
歌舞伎「寿曽我対面」の工藤祐経役に使用された衣装です。
龍の目がガラス製☆

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坂東三津江所用「小忌衣 浅葱天鵞絨地菊水模様」(19世紀)。
舞台で武将や貴人の役を演じる際に部屋着として使用するもので、
坂東三津江が末姫(徳川11代将軍家斉の娘)の前で演じた「時今也桔梗旗挙」の
小田春永(織田信長)役で着用したという衣装です。

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尾形光琳「小袖白綾地秋草模様」(冬木小袖)(18世紀)。
江戸で光琳のパトロンだった深川の材木屋・冬木家にて制作されたもので
当時は小袖の模様を絵師に描いてもらうことが流行したそうです。
去年まで修復されていましたが、今年めでたく公開となったのですね。よかったです☆

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こちらは本館1階にいるミクさん。
冬木小袖の修理プロジェクトで寄付を募った際に登場していました。

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隣には冬木小袖を着たねんどろいどミクさんがいました。
これもう買えないのかな?ショップには見当たりませんでした。

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鈴木春信「風流江戸八景 浅草晴嵐」(18世紀)。
男性の足元に銀杏が舞い散っているので秋ですね。
背面の襖の画中画も美しいです。

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歌川広重「東都御殿山・真乳山図」(19世紀)。
桜の名所として有名な御殿山と、待乳山の雪景色を描いています。
先週、太田さんで肉筆画を見たときも思いましたが広重の雪景色はホッとします。

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小袖 水浅葱平絹地近江八景模様(18世紀)。

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色紙短冊蒔絵歌書箱(17世紀)。
水戸徳川家に伝来したもので、前面と背面に近江八景をそれぞれ友禅染で表現しています。
江戸時代後期には名所めぐりが流行しましたので、小袖にもその影響があったのでしょうね。

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特集展示・日本の伝統模様「秋草」。
昔から絵画や工芸に表現されてきた秋草を様々な作品の中に見る特集です。
銅鏡、見台、水滴、書箱などの中に菊、ススキ、萩、桔梗などの秋草が表現されていました。

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こちらは唐織。
能に使われる装束で女性役や子役が着用するそうです。
撫子や桔梗、女郎花などの秋草が様々な色糸で織られています。

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博覧会事務局編「博覧会列品目録」人造物部二(1873年)。
1983年4月に開催された博覧会の出品目録です。
ウィーン万博に出品した残りの作品や収蔵品、個人蔵の品などがあります。
町田久成や田中芳男といった東博関係者の名前もみえます。

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家(チセ)模型(19世紀)。
ウィーン万博に出品されたもので、北海道アイヌによる家(チセ)の骨組模型です。
正方形で入口が向かいに2か所ありますね。

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ミュージアムショップにいたねんどろいど見返りミクさん。
他にもクリアファイルとかひざ掛けなどが販売されていて、
売り上げの一部は文化財修復に寄付されます。気になる方はどうぞ☆
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