粋がる絵師と旅する絵師。
昨日、森アーツセンターの「没後150年 歌川国芳」展と、
サン美の「殿様も犬も旅した広重 東海道五拾三次」展をはしごしてきました☆
週末なのでどちらも混んでいましたけど、それでも十分楽しかったです!
国芳のエネルギッシュな絵と、広重の雄大な絵がまとめて見られて感激でした。
国芳展はさすが人気絵師の展覧会というか、没後150年記念というか、
ありとあらゆる彼の錦絵や肉筆画をここぞとばかりに展示しまくって
入口や出口に置かれたパネルも大きく引き延ばされていて、
「これ以上はないくらいにやってやる!」的な主催者側の気合いをひしひしと感じました。
他の絵師の展覧会ってもうちょっと落ち着いた雰囲気な感じが個人的にはしているのですけど
相手が国芳だと、主催する側も「よっしゃ、やるでえ!」とハイになってしまうのかな…。
とにかく絵に負けないくらいエネルギッシュな展示構成でした。
たぶん国芳が自分で個展をプロデュースしたらこんな感じになるのかも。
武者絵の力強さに圧倒されたり、鯉や鯨や妖怪や龍や骸骨の巨大さにびっくりしたり
役者絵の見栄にうっかり惚れかけたり、肉筆美人画にやっぱり惚れかけたりと
何かと心臓がジャンプしまくる絵ばかりで、見終わった頃はくたくたでしたけども
100m走を全速力で走り抜けた後のような爽快感がありました。
いやーすごいパワフルだった。
水滸伝シリーズの武松と燕青の勇姿が見られて感激でした。(ゆさは彼ら2人と宋江のファン)
名刃シリーズの大雲彦六鉄山はかなりの惨劇を描いたものですが
妙に色気のある絵でぞくりとした。国芳ってこんな目した男の人とか描けるんだ…!
「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」はいつ見ても
ジュゼッペ・アルチンボルドの野菜の顔の人を思い出します。おもろい。
「金魚づくし」で筏に乗る金魚のかわいさったら、
思わずミュージアムショップで金魚のストラップを買ってしまうほどだったよね!!
江戸時代後期には金魚の飼育が流行したそうですが、国芳も飼っていたのかな…。
そして国芳と言えば猫絵!
着物を着た猫たちが遊びに興じたり、役者の顔真似をしているのが何とも愛くるしいです。
荷宝蔵壁のむだ書…これ描いた国芳も国芳ですが、彫師もよく彫ったなぁと思う(^ ^;)。
なまじ武者絵の刺青を彫るより、こういう絵の方がはるかに難しそうだ。
国芳は色の使い方が他の浮世絵師に比べて独特というか、
一目見てギョッとするような画面を創り出しているなぁと思います。
中間色やグラデーションをあまり使わずに、原色と原色をいくつもぶつかり合わせている感じ。
どぎついんだけど、それが不協和音的な効果をかもし出して妙に気持ちいいというか
逆にスッキリさせてしまっているのがすごいと思う。
配色のセンスがいいのだなー。
うちの母が国芳の色を見て「ダリみたいな画面を作る人ね」と言っていたのですが
そういえばダリの絵も配色センスが抜群なような希ガス。
音声ガイドの山本耕史さんの解説も楽しかったです。
たまに国芳の弟子になりきって江戸弁でしゃべっていたりした。萌え。
そんなこんなで精神的にものすごくお腹いっぱいになって、お昼ご飯をもりっと食べて
サントリー美術館の広重展へ移動。
五拾三次をまとめて見られるということでわくわくして行ったのですが、
こちらも想像以上に良かったです。
広重の風景画は1枚だけでも十分に美しいのですが、同じテーマでこれだけの枚数が揃うと
やっぱり迫力が倍増しますね。
名所江戸百景もそうでしたが、これはシリーズ物の力だよなぁ。
たぶんわたしが江戸時代に生きていたら、1枚1枚出ようがまとめて出版されようが
夢中で買い占めていたと思う。
国芳展を見てきた後だからかもしれませんが、広重の描く人々のゆったりした表情や
青空のグラデーションや、空白のある画面構成にものすごく癒されました(笑)。
はああぁマイナスイオンや…マイナスイオンに満ちておるー(*´∀`*)。
特にこの五拾三次シリーズの世界に流れる時間は、本当にのんびりしている気がします。
みんなマイペースに旅を楽しんでいる感じ(^ ^)。
(とはいえ、時折雨に降られたり、突風が吹いて傘を飛ばされたり、暴れ川の前でシュンとしたり
宿場の客引きにズルズル引きずられていったりする人もいますが・笑)
あと、各地の景勝地とか名物がたくさん描かれているのも面白さのひとつですね。
こりゃ確かに旅行ガイドブック代わりになるわ…!
当時は何日も歩いて旅をしたわけですから、
ただ歩いているだけじゃやっぱりみんな面白くないから
美しい物やおいしい物のひとつやふたつは見て&食べてみたい!ってなるのが人情だよなーと思った。
個人的にステキと思ったのが、四日市の伊勢路の絵。
伊勢参りをする人々に混じって、首にお賽銭をつけたワンちゃんが描かれた絵です。
何らかの事情でお参りできない飼い主に代わって伊勢参りに来る犬が
当時は何匹かいたようで、
彼らは旅人や宿場の人々に面倒を見てもらいながら伊勢神宮にやって来て、お参りをして
やっぱり人々にかわいがられつつ飼い主のもとへ戻っていったそうです。
今回の絵でも、元気にシッポを振る白いワンちゃんと
「どこから来たの?」「感心だねぇ」とか言っていそうな笑顔の旅人の姿が描かれていて
とても穏やかな気持ちになりました。
(そういえば永尾まるさんが『猫絵十兵衛』の中で
これに似たお話を描いていたことをたった今思い出しました。
あれはかつて伊勢参りをした犬エピの猫Ver.だったのかもしれない…)
国芳に元気をもらって広重に癒された、たいへん楽しい時間でありました。
調子に乗って図録を2冊とも買ってしまったので、持って帰ってくるのが大変でしたけど
幸せだからこれでいいのだー。
あ、どちらの展覧会でも、お客さんたちの顔がみんなニコニコしていたのが印象的でした。
浮世絵には人をニコニコさせる力がありますね。
本日のお絵かき↓
※クリックで大きくなります
広重&国芳。
同い年で同じ歌川派で、同じ時期に活躍した2人。
お師匠や兄弟子のアシスタントとかしてたこともあって、合作もいくつか残されています。
広重は何となく茶髪っぽい感じがします。真っ黒ではなく光が当たると茶色に見える髪のイメージ。
逆に国芳は真っ黒なイメージ。
*ブログ内のイラスト記事一覧はこちらです*
サン美の「殿様も犬も旅した広重 東海道五拾三次」展をはしごしてきました☆
週末なのでどちらも混んでいましたけど、それでも十分楽しかったです!
国芳のエネルギッシュな絵と、広重の雄大な絵がまとめて見られて感激でした。
国芳展はさすが人気絵師の展覧会というか、没後150年記念というか、
ありとあらゆる彼の錦絵や肉筆画をここぞとばかりに展示しまくって
入口や出口に置かれたパネルも大きく引き延ばされていて、
「これ以上はないくらいにやってやる!」的な主催者側の気合いをひしひしと感じました。
他の絵師の展覧会ってもうちょっと落ち着いた雰囲気な感じが個人的にはしているのですけど
相手が国芳だと、主催する側も「よっしゃ、やるでえ!」とハイになってしまうのかな…。
とにかく絵に負けないくらいエネルギッシュな展示構成でした。
たぶん国芳が自分で個展をプロデュースしたらこんな感じになるのかも。
武者絵の力強さに圧倒されたり、鯉や鯨や妖怪や龍や骸骨の巨大さにびっくりしたり
役者絵の見栄にうっかり惚れかけたり、肉筆美人画にやっぱり惚れかけたりと
何かと心臓がジャンプしまくる絵ばかりで、見終わった頃はくたくたでしたけども
100m走を全速力で走り抜けた後のような爽快感がありました。
いやーすごいパワフルだった。
水滸伝シリーズの武松と燕青の勇姿が見られて感激でした。(ゆさは彼ら2人と宋江のファン)
名刃シリーズの大雲彦六鉄山はかなりの惨劇を描いたものですが
妙に色気のある絵でぞくりとした。国芳ってこんな目した男の人とか描けるんだ…!
「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」はいつ見ても
ジュゼッペ・アルチンボルドの野菜の顔の人を思い出します。おもろい。
「金魚づくし」で筏に乗る金魚のかわいさったら、
思わずミュージアムショップで金魚のストラップを買ってしまうほどだったよね!!
江戸時代後期には金魚の飼育が流行したそうですが、国芳も飼っていたのかな…。
そして国芳と言えば猫絵!
着物を着た猫たちが遊びに興じたり、役者の顔真似をしているのが何とも愛くるしいです。
荷宝蔵壁のむだ書…これ描いた国芳も国芳ですが、彫師もよく彫ったなぁと思う(^ ^;)。
なまじ武者絵の刺青を彫るより、こういう絵の方がはるかに難しそうだ。
国芳は色の使い方が他の浮世絵師に比べて独特というか、
一目見てギョッとするような画面を創り出しているなぁと思います。
中間色やグラデーションをあまり使わずに、原色と原色をいくつもぶつかり合わせている感じ。
どぎついんだけど、それが不協和音的な効果をかもし出して妙に気持ちいいというか
逆にスッキリさせてしまっているのがすごいと思う。
配色のセンスがいいのだなー。
うちの母が国芳の色を見て「ダリみたいな画面を作る人ね」と言っていたのですが
そういえばダリの絵も配色センスが抜群なような希ガス。
音声ガイドの山本耕史さんの解説も楽しかったです。
たまに国芳の弟子になりきって江戸弁でしゃべっていたりした。萌え。
そんなこんなで精神的にものすごくお腹いっぱいになって、お昼ご飯をもりっと食べて
サントリー美術館の広重展へ移動。
五拾三次をまとめて見られるということでわくわくして行ったのですが、
こちらも想像以上に良かったです。
広重の風景画は1枚だけでも十分に美しいのですが、同じテーマでこれだけの枚数が揃うと
やっぱり迫力が倍増しますね。
名所江戸百景もそうでしたが、これはシリーズ物の力だよなぁ。
たぶんわたしが江戸時代に生きていたら、1枚1枚出ようがまとめて出版されようが
夢中で買い占めていたと思う。
国芳展を見てきた後だからかもしれませんが、広重の描く人々のゆったりした表情や
青空のグラデーションや、空白のある画面構成にものすごく癒されました(笑)。
はああぁマイナスイオンや…マイナスイオンに満ちておるー(*´∀`*)。
特にこの五拾三次シリーズの世界に流れる時間は、本当にのんびりしている気がします。
みんなマイペースに旅を楽しんでいる感じ(^ ^)。
(とはいえ、時折雨に降られたり、突風が吹いて傘を飛ばされたり、暴れ川の前でシュンとしたり
宿場の客引きにズルズル引きずられていったりする人もいますが・笑)
あと、各地の景勝地とか名物がたくさん描かれているのも面白さのひとつですね。
こりゃ確かに旅行ガイドブック代わりになるわ…!
当時は何日も歩いて旅をしたわけですから、
ただ歩いているだけじゃやっぱりみんな面白くないから
美しい物やおいしい物のひとつやふたつは見て&食べてみたい!ってなるのが人情だよなーと思った。
個人的にステキと思ったのが、四日市の伊勢路の絵。
伊勢参りをする人々に混じって、首にお賽銭をつけたワンちゃんが描かれた絵です。
何らかの事情でお参りできない飼い主に代わって伊勢参りに来る犬が
当時は何匹かいたようで、
彼らは旅人や宿場の人々に面倒を見てもらいながら伊勢神宮にやって来て、お参りをして
やっぱり人々にかわいがられつつ飼い主のもとへ戻っていったそうです。
今回の絵でも、元気にシッポを振る白いワンちゃんと
「どこから来たの?」「感心だねぇ」とか言っていそうな笑顔の旅人の姿が描かれていて
とても穏やかな気持ちになりました。
(そういえば永尾まるさんが『猫絵十兵衛』の中で
これに似たお話を描いていたことをたった今思い出しました。
あれはかつて伊勢参りをした犬エピの猫Ver.だったのかもしれない…)
国芳に元気をもらって広重に癒された、たいへん楽しい時間でありました。
調子に乗って図録を2冊とも買ってしまったので、持って帰ってくるのが大変でしたけど
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