地下室の女王陛下。
菅野雪虫さんの『女王さまがおまちかね』を読みました。
この作家さんの前作『羽州ものがたり』がとても好きなので
今度はどんな話かしらと思って読んでみたのですが、
ストーリーやキャラクターは違えど、子どもたちが大人の事情に巻き込まれ奮闘するという点では
2冊とも同じかなぁと思いました。
(巻き込まれると言っても、前作同様、主人公たちは別だん魔法使いでも何でもなくて
夏休みの宿題に四苦八苦するただの小学生なのですけれども)
前作は実際の事件をもとにした歴史小説でしたが
今回は「本」をテーマにしたリアル・ファンタジーでした。
読書感想文とか、図書館とか、本とか、お話を書くこととかがテーマになっていて
本好きの人は色々楽しめたり、ズキッときたり、えーこれないよって思ったり
うんうんこれわかるって頷けるような部分がたくさんあるのではないかと思います。
わたしはそんなんばっかりでした。
主人公3人の遠慮のない会話に気の置けなさが表れていて楽しいです。
特に荒太と現の男子コンビ。ちょっととっつきにくかった相手に憎まれ口を叩いているうちに
いつの間にか仲良くなっているのがいいなあー。
しかも感覚派と頭脳派だから、しっかり補い合えているし。
女王の世界へゆいを探しに行く男子2人の道中が、
小学校の先生と生徒みたいで笑ってしまった。
しかも揃って味オンチであることにますます笑った。
作中でゆいが「本を読み終えるとしばらくボーっとしてしまう癖がある」と言っていますが
この気持ち本当にわかるなぁ…。
あの、頭の中で色んな思いが交錯して言葉にならない感覚って
全然説明できないのですけど、妙に心地よい瞬間でもあるのですよね。
あれかな…。まず、読み終えたという達成感があるわけだ。
あと、読書という集中する行動から解放された爽快感もあるわけだ。
さらには世界をひとつ知ったなという満足感があるのかもしれないって思うわけだ。
ついでにこの硬派口調は、いい気になって乱用していると癖になって直らなくなるので
(女王の缶詰部屋みたいだ)そろそろ大概にしとこうってわけだ。
そして以前にここで書いた「日本のお話は下に降りると異界に通じている」シリーズに
新しい事例が加わりましたね~。
西洋料理店の地下室への階段を下りると女王のお城に通じている。※ただし梟の案内が必要
女王は主人公たちにとっては感じの悪い人のような描写になっていますが
わたしは(人格者と思っているわけではないですけども)彼女は嫌いではないです。
単に欲望のままに生きているだけかと思いきや、その後のキリヤさんをめぐる問答で
「わたしは望む者しか呼び寄せることはできない」とおっしゃっていて
ちょっと驚きました。
女王が呼び寄せる力よりも、現実の人の、城に来たいという思いの方が強いがゆえに
あの世界への扉が開いてしまうというのは女王ひとりのせいではないような気もするし。
女王のいる世界やお城については、ゆいたちの見た部分しか語られていなくて
詳細については大まかにしかわからないままですが、
でもそれがかえってあの世界の神秘性を際だたせているような気もします。
あの世界がいつできたのか、今後も存在し続けるのかどうか想像するのを
読み手に任せているところに好感が持てました。
壁が本棚だらけで本がぎっしり詰まっていて、城のふもとが崩れて本が溢れ出していて
紙が発明される前の本から現代のベストセラーまで所蔵しているとか、
本好きにはたまらない空間であることは間違いないのだけれども。
あと、冒頭とラストにちょっとだけ出てくる図書館司書さんの「できる司書オーラ」はすごい。
こういうところも手を抜かないのが菅野さんの真骨頂だと思います。
本日のお絵かき↓
※クリックで大きくなります
紀貫之(奥)と凡河内躬恒(手前)。
古今和歌集をともに編纂した者同士で、大親友でもあります。
この2人の仲の良さったら親密すぎるくらい親密でもだもだする~。
自分たちを織姫と彦星にたとえて歌交わしてたりするし。
君たち何故そんなに仲が良いのかと。ロミオとアルフレドかと。
*ブログ内のイラスト記事一覧はこちらです*
この作家さんの前作『羽州ものがたり』がとても好きなので
今度はどんな話かしらと思って読んでみたのですが、
ストーリーやキャラクターは違えど、子どもたちが大人の事情に巻き込まれ奮闘するという点では
2冊とも同じかなぁと思いました。
(巻き込まれると言っても、前作同様、主人公たちは別だん魔法使いでも何でもなくて
夏休みの宿題に四苦八苦するただの小学生なのですけれども)
前作は実際の事件をもとにした歴史小説でしたが
今回は「本」をテーマにしたリアル・ファンタジーでした。
読書感想文とか、図書館とか、本とか、お話を書くこととかがテーマになっていて
本好きの人は色々楽しめたり、ズキッときたり、えーこれないよって思ったり
うんうんこれわかるって頷けるような部分がたくさんあるのではないかと思います。
わたしはそんなんばっかりでした。
主人公3人の遠慮のない会話に気の置けなさが表れていて楽しいです。
特に荒太と現の男子コンビ。ちょっととっつきにくかった相手に憎まれ口を叩いているうちに
いつの間にか仲良くなっているのがいいなあー。
しかも感覚派と頭脳派だから、しっかり補い合えているし。
女王の世界へゆいを探しに行く男子2人の道中が、
小学校の先生と生徒みたいで笑ってしまった。
しかも揃って味オンチであることにますます笑った。
作中でゆいが「本を読み終えるとしばらくボーっとしてしまう癖がある」と言っていますが
この気持ち本当にわかるなぁ…。
あの、頭の中で色んな思いが交錯して言葉にならない感覚って
全然説明できないのですけど、妙に心地よい瞬間でもあるのですよね。
あれかな…。まず、読み終えたという達成感があるわけだ。
あと、読書という集中する行動から解放された爽快感もあるわけだ。
さらには世界をひとつ知ったなという満足感があるのかもしれないって思うわけだ。
ついでにこの硬派口調は、いい気になって乱用していると癖になって直らなくなるので
(女王の缶詰部屋みたいだ)そろそろ大概にしとこうってわけだ。
そして以前にここで書いた「日本のお話は下に降りると異界に通じている」シリーズに
新しい事例が加わりましたね~。
西洋料理店の地下室への階段を下りると女王のお城に通じている。※ただし梟の案内が必要
女王は主人公たちにとっては感じの悪い人のような描写になっていますが
わたしは(人格者と思っているわけではないですけども)彼女は嫌いではないです。
単に欲望のままに生きているだけかと思いきや、その後のキリヤさんをめぐる問答で
「わたしは望む者しか呼び寄せることはできない」とおっしゃっていて
ちょっと驚きました。
女王が呼び寄せる力よりも、現実の人の、城に来たいという思いの方が強いがゆえに
あの世界への扉が開いてしまうというのは女王ひとりのせいではないような気もするし。
女王のいる世界やお城については、ゆいたちの見た部分しか語られていなくて
詳細については大まかにしかわからないままですが、
でもそれがかえってあの世界の神秘性を際だたせているような気もします。
あの世界がいつできたのか、今後も存在し続けるのかどうか想像するのを
読み手に任せているところに好感が持てました。
壁が本棚だらけで本がぎっしり詰まっていて、城のふもとが崩れて本が溢れ出していて
紙が発明される前の本から現代のベストセラーまで所蔵しているとか、
本好きにはたまらない空間であることは間違いないのだけれども。
あと、冒頭とラストにちょっとだけ出てくる図書館司書さんの「できる司書オーラ」はすごい。
こういうところも手を抜かないのが菅野さんの真骨頂だと思います。
本日のお絵かき↓

紀貫之(奥)と凡河内躬恒(手前)。
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この2人の仲の良さったら親密すぎるくらい親密でもだもだする~。
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