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ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


夢見る巫女。

  1. 2012/05/20(日) 23:37:37_
  2. 絵本・児童書
  3. _ tb:0
  4. _ comment:2
菅野雪虫さんの『天山の巫女ソニン』シリーズを読みました。
全5巻+外伝という質量ながら、先がすごく気になる展開で次々に一気読みしてしまいました。
菅野さんの本を読んでいるといつも、レッカー車に牽引されている故障車みたいな気分になる。
(安心して引っ張って行ってもらう的な意味で)

巨山・江南・沙維の3つの国と、巫女たちの住まう天山が存在する世界を舞台に、
沙維国の七番目の王子であり、生まれつき言葉がしゃべれない少年イウォルと
巫女の才能がないと見なされある日突然天山から下りることになった少女ソニンの物語です。
イウォルと手を繋ぐと、なぜか彼の声が聞こえるソニンは
イウォルと交流する中で幾度もやっかいごと(主に国家レベル^ ^;)に遭遇したり
江南の王子クワンや巨山の王女イェラと出逢って心を通わせながら
やがて3つの国に起きようとする戦争を止めるために行動することになります…。

1巻のあらすじを見たときはすわ壮大な大スペクタクルファンタジーかしらと思ったのですが
魔法も魔物も出てこないし、奇妙な自然現象が起こるわけでもないので
(あるとすれば巫女たちの見る夢くらいだ)、
特に何ということはなくするりと入り込んで楽しむことができました。
いわゆる魔法使いのような人が英雄的なことを成し遂げるのではなく、
ごくごく一般の力しか持たない人たちが協力して、それぞれのできることを精一杯やりながら
必死に良い方向へ繋げていこうとするのもとても好感が持てます。
「まずはこうしてみよう」とか「これはダメだったから次はこうしてみよう」とか、
主人公たちが辿っていく過程がひとつひとつ丁寧に書かれているから
かなりリアリティもあるし。
巫女たちが見る「夢」が要所要所でキーポイントになっていますが
あれもただ見て話すだけではダメで、
「何を見たのか」「その場所はどこで、いつの出来事か」「そう思うのはなぜか」というのを
見てきた巫女が鮮明にわかりやすく説明できなくてはいけなくて、
そのためには夢に見た物の名前を知ることと、説明する経験が大切なのだ…という内容の描写には
ものすごい説得力を感じた。

ソニンとイウォルは、「根本的にちぐはぐな部分があるけど、
育った環境のせいか考え方が全然違うので
お互いに何でも『へーそうなんだ』って受け入れているからうまくいく」みたいな印象なのですが。
2人とも口喧嘩が下手なので、片方が自己主張しているときもだいたい片方が黙ってるし。
でも譲れないことはテコでも譲らないし。
いいコンビだと思います。
これがソニンとクワンになると、「ソニンが素直でもクワンが素直にならないから
話がややこしくなる」みたいな印象です。
ソニンがリアンと仲良くなってからは態度が柔らかくなったような気もしますが…。
逆にイウォルとクワンは、性格から何から正反対なので早々と打ち解けてしまった感じ。
クワンとイェラの場合は、作中にも「虎と狼が睨み合うよう」と書いてありましたが
「2人とも素直じゃなくて策士だからその凸凹がそのまま表に出ている」という印象です。
こいつには負けねぇ!!みたいなオーラをひしひしと感じる(笑)。

そんな一癖も二癖もある主人公軍団を差し置いて(笑)ゆさはサウォル王子のファンだったりしますが、
彼の兄でヘタレなパロル国王ももちろん好き。
あと、2巻に出てくる書庫番のおじいさん(ソニンが白じいさんと呼んでいる人)に
個人的にフォーリンラブです。
だって、それ、「図書館の老人」って書くだけでロマンじゃねぇか…!

時代背景は近世のアジア(たぶん韓国)あたりではないかと思います。
電気や自動車はないけど通信手段に手紙が使われていて、
食べ物も飴に煮物にうどんに焼き魚に丼物に、わりと何でもある感じ。
魚を塩漬けにして長持ちさせる習慣があって、そのために塩の取引でもめたりするのも
塩の道を彷彿とさせて面白いです。
こういう世界をモデルにしたファンタジーだと、
「あまり通信手段が発達していなくて一般人が気安く遠方へ旅行できるわけでもないので、
定住者にとって旅人や商人や旅芸人などは外部からの重要な情報源」みたいな設定を
よく見かけるけど、
ソニンの世界では隣国の噂があっという間に流れてきたり
沙維国でクワン王子の似顔絵が売られていたりするから、
人の口さえ達者ならそこまで情報が伝わりにくい世界でもなさそうだと思いました。
クライマックスでムサが名犬ラッシーのようなことをやっていたけど、
わずか数日で縦断しているので、三国合わせてもそんなに大陸面積が広くないのかもしれない。
国境を越えるのも、日本でいう都道府県を横断するような感覚なんだろうな。

あと、だから何ってわけじゃないけど、外伝を読んだときに
イェラの頑なさの理由のひとつがインナーマザーだったことが何かストンと納得がいきました。。
(あえて言えば『女王さまがお待ちかね』の女王様もそこにカテゴライズされそうだ)
で、イェラにとって父王が、王位継承者の立場としても子どもの立場としても
二重の意味で立ち向かう相手だとしたら、
(菅野さんもかつくらのインタビューでおっしゃっていましたが)そのへんはある意味ものすごく
『風の谷のナウシカ』のヴ王とクシャナの関係だなぁという気がなきにしもあらず。
そして『羽州ものがたり』のジオとカラスの関係にも似ているかなぁ、とも。
トラウマ返しというカタルシス。



ごはんは1日2食の時代。※クリックで大きくなります
歌人シリーズその22。21はこちら

夕暮れ時。
友則が帰った後の貫之邸です。夕御飯を食べながら夫婦の会話。

一子「今日、凡河内の北の方と一緒だったんだけど、あなた躬恒さんのこと聞いた?」
貫之「聞いた。甲斐行きだろ。7日後に発つんだって」
一子「急な話?」
貫之「いや。2月には除目が下りてたんだが、親戚か誰か亡くなったらしくて。落ち着くまで、上が待ってくれたんだよ」
一子「あらまあ…。何か差し上げた方がいいんじゃないかしら。東国だし、きっと寒いわよ。着る物か何か…」
貫之「そうだなー。おやじの袷からいくつか見繕って、綿たっぷり詰めるか」
一子「いいわね」
貫之「北の方と子どもは一緒に行くのかな」
一子「ううん、残るって聞いたわ。ご不安でしょうし、わたし、何でも相談に乗るつもりなの」
貫之「よろしくな」
一子「ええ。そうだ、牡丹ちゃん、今年は2週はいるつもりですって。躬恒さんに会いたがってたから、お忙しそうでなかったら、出発前にお招きしてくれる?」
貫之「わかった。がんばるなあ、牡丹のやつ」
一子「がんばりすぎて疲れないようにしてもらわないとね。来年に会えなかったらさみしいわ」

貫之の両親は、貫之が少年だった頃に亡くなっています。
妻の一子と、春の牡丹と秋の萩が、今の貫之の大事な家族です(^ ^)。
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テーマ : 児童書    ジャンル : 本・雑誌

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comment

No title

  1. 2012/05/21(月) 09:30:57 |
  2. URL |
  3. ぴゆう
  4. [ 編集 ]
お久しぶりーー!
復活しましたァ~
ノソノソと。
へへ
これからも宜しくニャン

Re: No title

  1. 2012/05/23(水) 00:50:15 |
  2. URL |
  3. ゆさ
  4. [ 編集 ]
> ぴゆう様

うわああぁあお帰りなさーーーいっ淋しかったです!!
近いうちに必ず遊びに行きますね!

こちらこそ、これからもよろしくです~ヽ(*^∀^*)ノ
 
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Author:ゆさ
猫に熱烈な愛をそそぐ本の蟲
歴史やアートも溺愛中
最近は新幹線とシンカリオンも熱い
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