きんぽうげきんぽうげ。
富安陽子さんの『かなと花ちゃん』を読みました。
加奈という女の子と、加奈が原っぱで拾った日本人形が2人だけの会話をしながら
縁日に行ったり、謎の仏師の家を訪ねたり、お菓子の家に遊びに行ったりするお話です。
少々ファンタジックな部分もあるのですが、読み進めていくと
「ああ、そうだったんだ」ってストンと腑に落ちるカタルシスがあってステキです。
個人的に、こういう構成の物語を書くのが非常にうまい作家さんは
この方と高楼方子さんと茂市久美子さんだと思ってる。
加奈と花ちゃんが行く原っぱとか縁日とか、生け垣に囲まれた街路とかは
うちの身近な光景なので目に浮かぶようでした。
夜のお寺の、背の高い杉木立に挟まれた階段を昇るときの空気の冷ややかさとか
濃い影とか、階段の上の灯籠のあかりだけがすごく鮮明に見えるとか。
(縁日のお店のおじさんがアセチレンランプを灯している描写を見て、
思わず手塚治虫の漫画に出てくるランプ氏を思い出して吹き出してしまった)
当たりくじを引き当てた加奈と花ちゃんが、お寺の本堂の中で体験したことは
おそらく人が立ち会ってはいけないことだったかもしれなくて、それはとても
(となりのトトロで草壁のお父さんが言うみたいに)「運がいいこと」だったんだなぁ。
くじで当たりを引くとは、本来はこういうことなのかもしれない…。
そして、鬼たちがお寺を出て遊び回っても余裕綽々な四天王のみなさま、さすがです。
よく仏師の人が、木の中には仏がいて自分は彫り出すだけと言いますが
今回のお話に出てきたおじいさんも同じことを仰っていて職人魂を感じました。
童子の人形の正体については読んでいる途中でわかりましたけど、
(というかきっと、わかるように演出されているんだろう)
加奈が童子に呼び掛けたときのくだりが、何だか夏目友人帳の露神様のエピソードとだぶって
ぶわーっと色んなものがこみ上げてきてしまった。
富安さんは民話や言い伝えや俗説や古典からの引用のタイミングと、
ストーリーへのからませ方が絶妙ですごいです。
青い目の人形については史実を知っているだけに泣けました。
富安さんが戦争について書くと、爆弾とか兵隊さんがどうとかいうよりも
そのとき町で生きていた人たちにスポットがあたっていることが多くて、
今とほぼ変わらない生活への思いが地続きで伝わってくるので頭の芯がじんじんします。
『盆まねき』を読んだときも、おじさんのこととか、話を聞いたなっちゃんのこととか考えてたら
脳みそのスペックが枯渇してウボアーってなっちゃったし。
あと、これは読んだわたしの想像ですけれども
たぶん『盆まねき』は富安さんのご実家の人々がモデルになっているような感じがする。
や、単に、以前に富安さんのトークセッションに参加したときに聞いたお話からの連想ですが…。
『盆まねき』は表紙イラストも素敵だなと思った本です。月がこんな風に見えるときってあるなと。
人形と女の子が会話しながら仲良くなる話で、わたしが今でも傑作と思っているのは
梨木香歩さんの『りかさん』ですけれども、
これにも青い目の人形アビゲイルのお話が載っていますね。
そしてもう、あれはアビィの傷と真っ直ぐさが直列回路に流れる電流みたいにビリビリ伝わってくるので
読み返すにはかなり体力が要ると思う。
本そのものはとてもいい本なのでおすすめしたい1冊です。
あ。『りかさん』で思い出しましたが
この本の続編というか、りかさんで主人公だった「ようこちゃん」が
大人になって「容子」として出てくる『からくりからくさ』という本もありまして
これはりかさんを読んだ後に読むのをおすすめしたいです。
とんとんからり、とんからりと、機織りの音が聴こえる本ですよ。
本日のお絵かき↓
※クリックで大きくなります
藤原時平。
描き始めるまではビジュアルがまったく思い浮かばなかったのですが、
いざ描き始めたら3分くらいでキャラデザできました。ふむ。
古今和歌集を語るうえで避けて通れない人です。
ご祝儀袋の水引みたいな、雅で繊細なイメージがある人なんだよなーとか考えつつ描いていたら
胸元の飾りがなんかそれっぽくなってしまった。。
*ブログ内のイラスト記事一覧はこちらです*
加奈という女の子と、加奈が原っぱで拾った日本人形が2人だけの会話をしながら
縁日に行ったり、謎の仏師の家を訪ねたり、お菓子の家に遊びに行ったりするお話です。
少々ファンタジックな部分もあるのですが、読み進めていくと
「ああ、そうだったんだ」ってストンと腑に落ちるカタルシスがあってステキです。
個人的に、こういう構成の物語を書くのが非常にうまい作家さんは
この方と高楼方子さんと茂市久美子さんだと思ってる。
加奈と花ちゃんが行く原っぱとか縁日とか、生け垣に囲まれた街路とかは
うちの身近な光景なので目に浮かぶようでした。
夜のお寺の、背の高い杉木立に挟まれた階段を昇るときの空気の冷ややかさとか
濃い影とか、階段の上の灯籠のあかりだけがすごく鮮明に見えるとか。
(縁日のお店のおじさんがアセチレンランプを灯している描写を見て、
思わず手塚治虫の漫画に出てくるランプ氏を思い出して吹き出してしまった)
当たりくじを引き当てた加奈と花ちゃんが、お寺の本堂の中で体験したことは
おそらく人が立ち会ってはいけないことだったかもしれなくて、それはとても
(となりのトトロで草壁のお父さんが言うみたいに)「運がいいこと」だったんだなぁ。
くじで当たりを引くとは、本来はこういうことなのかもしれない…。
そして、鬼たちがお寺を出て遊び回っても余裕綽々な四天王のみなさま、さすがです。
よく仏師の人が、木の中には仏がいて自分は彫り出すだけと言いますが
今回のお話に出てきたおじいさんも同じことを仰っていて職人魂を感じました。
童子の人形の正体については読んでいる途中でわかりましたけど、
(というかきっと、わかるように演出されているんだろう)
加奈が童子に呼び掛けたときのくだりが、何だか夏目友人帳の露神様のエピソードとだぶって
ぶわーっと色んなものがこみ上げてきてしまった。
富安さんは民話や言い伝えや俗説や古典からの引用のタイミングと、
ストーリーへのからませ方が絶妙ですごいです。
青い目の人形については史実を知っているだけに泣けました。
富安さんが戦争について書くと、爆弾とか兵隊さんがどうとかいうよりも
そのとき町で生きていた人たちにスポットがあたっていることが多くて、
今とほぼ変わらない生活への思いが地続きで伝わってくるので頭の芯がじんじんします。
『盆まねき』を読んだときも、おじさんのこととか、話を聞いたなっちゃんのこととか考えてたら
脳みそのスペックが枯渇してウボアーってなっちゃったし。
あと、これは読んだわたしの想像ですけれども
たぶん『盆まねき』は富安さんのご実家の人々がモデルになっているような感じがする。
や、単に、以前に富安さんのトークセッションに参加したときに聞いたお話からの連想ですが…。
『盆まねき』は表紙イラストも素敵だなと思った本です。月がこんな風に見えるときってあるなと。
人形と女の子が会話しながら仲良くなる話で、わたしが今でも傑作と思っているのは
梨木香歩さんの『りかさん』ですけれども、
これにも青い目の人形アビゲイルのお話が載っていますね。
そしてもう、あれはアビィの傷と真っ直ぐさが直列回路に流れる電流みたいにビリビリ伝わってくるので
読み返すにはかなり体力が要ると思う。
本そのものはとてもいい本なのでおすすめしたい1冊です。
あ。『りかさん』で思い出しましたが
この本の続編というか、りかさんで主人公だった「ようこちゃん」が
大人になって「容子」として出てくる『からくりからくさ』という本もありまして
これはりかさんを読んだ後に読むのをおすすめしたいです。
とんとんからり、とんからりと、機織りの音が聴こえる本ですよ。
本日のお絵かき↓

藤原時平。
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いざ描き始めたら3分くらいでキャラデザできました。ふむ。
古今和歌集を語るうえで避けて通れない人です。
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